(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】IP6K阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 209/96 20060101AFI20220426BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20220426BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20220426BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220426BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220426BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20220426BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20220426BHJP
C07D 471/10 20060101ALI20220426BHJP
C07D 491/052 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C07D209/96 CSP
A61K31/403
A61K31/436
A61K31/437
A61K31/44
A61K31/505
A61P3/10
A61P9/04
C07D401/12
C07D403/12
C07D471/10 101
C07D491/052
(21)【出願番号】P 2019554003
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018014502
(87)【国際公開番号】W WO2018182051
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2017066579
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌志
(72)【発明者】
【氏名】原 亮磨
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 功介
(72)【発明者】
【氏名】古川 英紀
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 健
(72)【発明者】
【氏名】河西 静夫
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-97282(JP,A)
【文献】特表2006-510598(JP,A)
【文献】特表2011-516512(JP,A)
【文献】JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2009年04月17日,Vol. 284, No. 16,pp. 10571-10582
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/96
A61P 9/04
A61P 3/10
A61K 31/403
A61K 31/437
C07D 401/12
C07D 471/10
C07D 403/12
C07D 491/052
A61K 31/436
A61K 31/44
A61K 31/505
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
[式中、
環Aは、置換されていてもよい芳香環を示し;
Xは、CHまたはNを示す。]
で表される化合物またはその塩。
【請求項2】
環Aが、
(a) ハロゲン原子、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC
1-6アルキル基、
(e) C
1-6アルコキシ基、
(f) C
3-10シクロアルキル基、および
(g) C
7-16アラルキルオキシ基
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、C
6-14芳香族炭化水素環または5ないし14員芳香族複素環である、
請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項4】
4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項5】
2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項6】
4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項7】
4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項8】
4-(4-クロロ-2-メトキシフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項9】
4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項10】
4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項11】
4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項12】
4-((3,5-ジフルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項13】
4-(4-クロロ-2-フルオロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
【請求項14】
請求項1記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
【請求項15】
イノシトールヘキサキスリン酸キナーゼ阻害剤である、請求項
14記載の医薬。
【請求項16】
心不全および糖尿病から選ばれる疾患の予防または治療剤である、請求項
14記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシトールヘキサキスリン酸キナーゼ(Inositol hexakisphosphate kinase)(本明細書中「IP6K」と略記する場合がある)阻害作用を有し、心不全、糖尿病等の疾患の予防または治療剤として有用であると期待される複素環化合物に関する。
【0002】
(発明の背景)
IP6Kはイノシトールピロリン酸(inositol pyrophosphate)を生成することにより多くの細胞内シグナリングに関与する分子である(非特許文献1、2)。イノシトールピロリン酸は高エネルギーの低分子であり、その生成は2種類の酵素により仲介されることが知られている。その2種類とは5キナーゼ活性を有するIP6K(非特許文献3-5)および1キナーゼ活性を有するジホスホイノシトールペンタキスリン酸キナーゼ(diphosphoinositol pentakisphosphate kinases)(PPIP5K(非特許文献6-8))である。
IP6Kの5キナーゼ活性はmyo-イノシトール(1,3,4,5,6)-ペンタキスリン酸(myo-inositol (1,3,4,5,6)-pentakisphosphate)(InsP5)から5-PP-InsP4を、InsP6 から5-PP-InsP5(5-InsP7(非特許文献9)、以下IP7と記す)を、1-PP-InsP5から1,5-PP2-InsP4 (InsP8)をそれぞれ生成する。この内、IP7はIP6Kによって生成され最も研究されているイノシトールピロリン酸であり、ターゲットタンパクに直接結合することにより、またはピロリン酸化(IP7のピロリン酸部分のβ-リン酸をターゲットタンパクのリン酸化済みセリン残基に転移する)という機序により多くの生物反応を制御している(非特許文献10)。5PPIP5Kによって生成されるIP7は1-InsP7であるが、哺乳類におけるIP7のほとんどの部分は5-isomerである5-InsP7であると考えられている(非特許文献3、11)。
哺乳類にはIP6K1, IP6K2, およびIP6K3の3つのIP6Kサブタイプが存在し(非特許文献1)、最近のノックアウトマウスを用いた研究からそれぞれの分子の生理的な役割および創薬標的としての可能性が提唱されている。IP6K1のノックアウトマウスは肝臓、脂肪および筋肉中のAktシグナルが亢進しており、高脂肪食負荷条件において、耐糖能の改善、インスリン感受性の亢進、および筋肉量の増加が確認されている(非特許文献12)。一方、IP6K2によって生成されるIP7はガン細胞の遊走や腫瘍転移において主要な仲介分子として機能すると報告されており、ガン細胞においてIP6K2を欠損させることで細胞の浸潤や転移が抑制されることが確認されている(非特許文献13)。また、IP6K2はIP7を生成することにより細胞死を促進する作用が確認されており、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患との関連性が指摘されている(非特許文献14)。IP6K3は筋肉に高発現する分子であり、その遺伝子発現が絶食や糖尿病状態で誘導され、ノックアウトマウスは血糖および血中インスリン濃度が低く、耐糖能およびインスリン感受性が亢進し、寿命が長いことが確認されている(非特許文献15)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Cell Mol Life Sci 66, 3851-3871, doi:10.1007/s00018-009-0115-2 (2009).
【文献】Adv Enzyme Regul 51, 74-82, doi:10.1016/j.advenzreg.2010.08.003 (2011).
【文献】J Biol Chem 284, 1863-1872, doi:10.1074/jbc.M805686200 (2009).
【文献】Curr Biol 9, 1323-1326 (1999).
【文献】Chem Biol 15, 274-286, doi:10.1016/j.chembiol.2008.01.011 (2008).
【文献】J Biol Chem 282, 30763-30775, doi:10.1074/jbc.M704655200 (2007).
【文献】J Biol Chem 282, 30754-30762, doi:10.1074/jbc.M704656200 (2007).
【文献】Nat Chem Biol 8, 111-116, doi:10.1038/nchembio.733 (2012).
【文献】Adv Biol Regul 57, 203-216, doi:10.1016/j.jbior.2014.09.015 (2015).
【文献】Biochem J 452, 369-379, doi:10.1042/BJ20130118 (2013).
【文献】Biochem J 327 ( Pt 2), 553-560 (1997).
【文献】Cell 143, 897-910, doi:10.1016/j.cell.2010.11.032 (2010).
【文献】Proc Natl Acad Sci U S A 112, 1773-1778, doi:10.1073/pnas.1424642112 (2015).
【文献】Mol Neurobiol 53, 5377-5383, doi:10.1007/s12035-015-9470-1 (2016).
【文献】Sci Rep 6, 32072, doi:10.1038/srep32072 (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、IP6K阻害作用を有し、心不全、糖尿病等の疾患の予防または治療剤として有用であると期待される複素環化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、下記の式(I)で表される化合物またはその塩(本明細書中、化合物(I)と称する場合がある。)が、IP6K阻害作用を有することを見出し、更なる研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1] 式:
【0007】
【0008】
[式中、
環Aは、置換されていてもよい芳香環を示し;
Xは、CHまたはNを示す。]
で表される化合物またはその塩。
[2] 環Aが、
(a) ハロゲン原子、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、
(e) C1-6アルコキシ基、
(f) C3-10シクロアルキル基、および
(g) C7-16アラルキルオキシ基
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、C6-14芳香族炭化水素環または5ないし14員芳香族複素環である、
上記[1]記載の化合物またはその塩。
[3] 4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[4] 4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
[5] 2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[6] 4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[7] 4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[8] 4-(4-クロロ-2-メトキシフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[9] 4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸またはその塩。
[10] 4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
[11] 4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸またはその塩。
[12] 上記[1]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
[13] イノシトールヘキサキスリン酸キナーゼ(IP6K)阻害剤である、上記[12]記載の医薬。
[14] 心不全および糖尿病から選ばれる疾患の予防または治療剤である、上記[12]記載の医薬。
[15] 哺乳動物に対して上記[1]記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における心不全および糖尿病から選ばれる疾患の予防または治療方法。
[16] 哺乳動物に対して上記[1]記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるイノシトールヘキサキスリン酸キナーゼを阻害する方法。
[17] 心不全および糖尿病から選ばれる疾患の予防または治療剤を製造するための、上記[1]記載の化合物またはその塩の使用。
[18] 心不全および糖尿病から選ばれる疾患の予防または治療に使用するための、上記[1]記載の化合物またはその塩。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物は、IP6K阻害作用を有し、心不全、糖尿病等の疾患の予防または治療剤として有用であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例9の化合物の、単結晶X線構造解析により得られた分子構造を示す図である。
【
図2】
図2は、ラット肝臓、筋肉および脂肪における化合物97投与によるIP7レベルを示す図である。
【
図3】
図3は、糖尿病モデルラットにおける経口投与後24時間までの血漿グルコースを示す図である。
【
図4】
図4は、糖尿病モデルラットにおける経口投与後24時間までのグルコースAUC(曲線下面積)を示す図である。
【
図5】
図5は、耐糖能異常ラットにおける化合物9投与後120分までの血糖を示す図である。
【
図6】
図6は、耐糖能異常ラットにおける化合物9投与後の空腹時血糖を示す図である。
【
図7】
図7は、耐糖能異常ラットにおける化合物9投与後120分までのグルコースAUCを示す図である。
【
図8】
図8は、耐糖能異常ラットにおける化合物9投与によるグルコースAUCと筋肉中IP7レベルの相関を示す図である。
【
図9】
図9は、耐糖能異常ラットにおける化合物9投与によるグルコースAUCと肝臓中IP7レベルの相関を示す図である。
【
図10】
図10は、雄性CSQ TGマウスにおける化合物97と化合物9投与後の生存率を示す図である。
【0011】
(発明の詳細な説明)
以下、本明細書中で用いられる各置換基の定義について詳述する。特記しない限り各置換基は以下の定義を有する。
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、エチル、2-ブロモエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、プロピル、2,2―ジフルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、イソプロピル、ブチル、4,4,4-トリフルオロブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、5,5,5-トリフルオロペンチル、ヘキシル、6,6,6-トリフルオロヘキシルが挙げられる。
本明細書中、「C2-6アルケニル基」としては、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニルが挙げられる。
本明細書中、「C2-6アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、5-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニルが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、アダマンチルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC3-10シクロアルキル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC3-10シクロアルキル基が挙げられる。具体例としては、シクロプロピル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、ジフルオロシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリール基」としては、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリルが挙げられる。
本明細書中、「C7-16アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、フェニルプロピルが挙げられる。
【0012】
本明細書中、「C1-6アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、4,4,4-トリフルオロブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルキルオキシ基」としては、例えば、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキルチオ基が挙げられる。具体例としては、メチルチオ、ジフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、4,4,4-トリフルオロブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキル-カルボニル基」としては、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、3-メチルブタノイル、2-メチルブタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキル-カルボニル基が挙げられる。具体例としては、アセチル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイルが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルコキシ-カルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec-ブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリール-カルボニル基」としては、例えば、ベンゾイル、1-ナフトイル、2-ナフトイルが挙げられる。
本明細書中、「C7-16アラルキル-カルボニル基」としては、例えば、フェニルアセチル、フェニルプロピオニルが挙げられる。
本明細書中、「5ないし14員芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、ニコチノイル、イソニコチノイル、テノイル、フロイルが挙げられる。
本明細書中、「3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基」としては、例えば、モルホリニルカルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピロリジニルカルボニルが挙げられる。
【0013】
本明細書中、「モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基」としては、例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、N-エチル-N-メチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基」としては、例えば、ベンジルカルバモイル、フェネチルカルバモイルが挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基」としては、例えば、1ないし7個、好ましくは1ないし5個のハロゲン原子を有していてもよいC1-6アルキルスルホニル基が挙げられる。具体例としては、メチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、4,4,4-トリフルオロブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニルが挙げられる。
本明細書中、「C6-14アリールスルホニル基」としては、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニルが挙げられる。
【0014】
本明細書中、「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい複素環基、アシル基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオカルバモイル基、置換されていてもよいスルファモイル基、置換されていてもよいヒドロキシ基、置換されていてもよいスルファニル(SH)基、置換されていてもよいシリル基が挙げられる。
本明細書中、「炭化水素基」(「置換されていてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」を含む)としては、例えば、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルケニル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基が挙げられる。
【0015】
本明細書中、「置換されていてもよい炭化水素基」としては、例えば、下記の置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
[置換基群A]
(1)ハロゲン原子、
(2)ニトロ基、
(3)シアノ基、
(4)オキソ基、
(5)ヒドロキシ基、
(6)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、
(7)C6-14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフトキシ)、
(8)C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)、
(9)5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、
(10)3ないし14員非芳香族複素環オキシ基(例、モルホリニルオキシ、ピペリジニルオキシ)、
(11)C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセトキシ、プロパノイルオキシ)、
(12)C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ)、
(13)C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ)、
(14)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシ、ジメチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ)、
(15)C6-14アリール-カルバモイルオキシ基(例、フェニルカルバモイルオキシ、ナフチルカルバモイルオキシ)、
(16)5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、
(17)3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、モルホリニルカルボニルオキシ、ピペリジニルカルボニルオキシ)、
(18)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、トリフルオロメチルスルホニルオキシ)、
(19)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ)、
(20)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルチオ基、
(21)5ないし14員芳香族複素環基、
(22)3ないし14員非芳香族複素環基、
(23)ホルミル基、
(24)カルボキシ基、
(25)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル-カルボニル基、
(26)C6-14アリール-カルボニル基、
(27)5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、
(28)3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、
(29)C1-6アルコキシ-カルボニル基、
(30)C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、1-ナフチルオキシカルボニル、2-ナフチルオキシカルボニル)、
(31)C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、
(32)カルバモイル基、
(33)チオカルバモイル基、
(34)モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、
(35)C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、
(36)5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル、チエニルカルバモイル)、
(37)3ないし14員非芳香族複素環カルバモイル基(例、モルホリニルカルバモイル、ピペリジニルカルバモイル)、
(38)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルホニル基、
(39)C6-14アリールスルホニル基、
(40)5ないし14員芳香族複素環スルホニル基(例、ピリジルスルホニル、チエニルスルホニル)、
(41)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキルスルフィニル基、
(42)C6-14アリールスルフィニル基(例、フェニルスルフィニル、1-ナフチルスルフィニル、2-ナフチルスルフィニル)、
(43)5ないし14員芳香族複素環スルフィニル基(例、ピリジルスルフィニル、チエニルスルフィニル)、
(44)アミノ基、
(45)モノ-またはジ-C1-6アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ)、
(46)モノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、
(47)5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、
(48)C7-16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ)、
(49)ホルミルアミノ基、
(50)C1-6アルキル-カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ)、
(51)(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例、N-アセチル-N-メチルアミノ)、
(52)C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例、フェニルカルボニルアミノ、ナフチルカルボニルアミノ)、
(53)C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、プロポキシカルボニルアミノ、ブトキシカルボニルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、
(54)C7-16アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基(例、ベンジルオキシカルボニルアミノ)、
(55)C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、
(56)C1-6アルキル基で置換されていてもよいC6-14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ、トルエンスルホニルアミノ)、
(57)ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、
(58)C2-6アルケニル基、
(59)C2-6アルキニル基、
(60)C3-10シクロアルキル基、
(61)C3-10シクロアルケニル基、及び
(62)C6-14アリール基。
【0016】
「置換されていてもよい炭化水素基」における上記置換基の数は、例えば、1ないし5個、好ましくは1ないし3個である。置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
本明細書中、「複素環基」(「置換されていてもよい複素環基」における「複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、(i)芳香族複素環基、(ii)非芳香族複素環基および(iii)7ないし10員複素架橋環基が挙げられる。
【0017】
本明細書中、「芳香族複素環基」(「5ないし14員芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環基が挙げられる。
該「芳香族複素環基」の好適な例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルなどの5ないし6員単環式芳香族複素環基;
ベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル、ピラゾロピリジニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピラジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、フロピリミジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピラゾロトリアジニル、ナフト[2,3-b]チエニル、フェノキサチイニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、プリニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニルなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環基が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「非芳香族複素環基」(「3ないし14員非芳香族複素環基」を含む)としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環基が挙げられる。
該「非芳香族複素環基」の好適な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、テトラヒドロイソチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロイソオキサゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニル、アゼピニル、オキセパニル、アゾカニル、ジアゾカニルなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環基;
ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル、ジヒドロナフト[2,3-b]チエニル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、4H-キノリジニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジニル、テトラヒドロベンゾアゼピニル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロフェナントリジニル、ヘキサヒドロフェノチアジニル、ヘキサヒドロフェノキサジニル、テトラヒドロフタラジニル、テトラヒドロナフチリジニル、テトラヒドロキナゾリニル、テトラヒドロシンノリニル、テトラヒドロカルバゾリル、テトラヒドロ-β-カルボリニル、テトラヒドロアクリジニル、テトラヒドロフェナジニル、テトラヒドロチオキサンテニル、オクタヒドロイソキノリルなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環基が挙げられる。
【0019】
本明細書中、「7ないし10員複素架橋環基」の好適な例としては、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニルが挙げられる。
本明細書中、「含窒素複素環基」としては、「複素環基」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。
本明細書中、「置換されていてもよい複素環基」としては、例えば、前記した置換基群Aから選ばれる置換基を有していてもよい複素環基が挙げられる。
「置換されていてもよい複素環基」における置換基の数は、例えば、1ないし3個である。置換基数が2個以上の場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
本明細書中、「アシル基」としては、例えば、「ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基およびカルバモイル基から選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10シクロアルケニル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、5ないし14員芳香族複素環基および3ないし14員非芳香族複素環基から選ばれる1または2個の置換基」をそれぞれ有していてもよい、ホルミル基、カルボキシ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルフィノ基、スルホ基、スルファモイル基、ホスホノ基が挙げられる。
また、「アシル基」としては、炭化水素-スルホニル基、複素環-スルホニル基、炭化水素-スルフィニル基、複素環-スルフィニル基も挙げられる。
ここで、炭化水素-スルホニル基とは、炭化水素基が結合したスルホニル基を、複素環-スルホニル基とは、複素環基が結合したスルホニル基を、炭化水素-スルフィニル基とは、炭化水素基が結合したスルフィニル基を、複素環-スルフィニル基とは、複素環基が結合したスルフィニル基を、それぞれ意味する。
「アシル基」の好適な例としては、ホルミル基、カルボキシ基、C1-6アルキル-カルボニル基、C2-6アルケニル-カルボニル基(例、クロトノイル)、C3-10シクロアルキル-カルボニル基(例、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル、シクロヘプタンカルボニル)、C3-10シクロアルケニル-カルボニル基(例、2-シクロヘキセンカルボニル)、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C6-14アリールオキシ-カルボニル基(例、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル)、C7-16アラルキルオキシ-カルボニル基(例、ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル)、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-カルバモイル基(例、ジアリルカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-カルバモイル基(例、シクロプロピルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル)、チオカルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-チオカルバモイル基(例、メチルチオカルバモイル、N-エチル-N-メチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-チオカルバモイル基(例、ジアリルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-チオカルバモイル基(例、シクロプロピルチオカルバモイル、シクロヘキシルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-チオカルバモイル基(例、フェニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-チオカルバモイル基(例、ベンジルチオカルバモイル、フェネチルチオカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環チオカルバモイル基(例、ピリジルチオカルバモイル)、スルフィノ基、C1-6アルキルスルフィニル基(例、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル)、スルホ基、C1-6アルキルスルホニル基、C6-14アリールスルホニル基、ホスホノ基、モノ-またはジ-C1-6アルキルホスホノ基(例、ジメチルホスホノ、ジエチルホスホノ、ジイソプロピルホスホノ、ジブチルホスホノ)が挙げられる。
【0021】
本明細書中、「置換されていてもよいアミノ基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、C1-6アルキルスルホニル基およびC6-14アリールスルホニル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいアミノ基が挙げられる。
置換されていてもよいアミノ基の好適な例としては、アミノ基、モノ-またはジ-(ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル)アミノ基(例、メチルアミノ、トリフルオロメチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、ジブチルアミノ)、モノ-またはジ-C2-6アルケニルアミノ基(例、ジアリルアミノ)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキルアミノ基(例、シクロプロピルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、モノ-またはジ-C6-14アリールアミノ基(例、フェニルアミノ)、モノ-またはジ-C7-16アラルキルアミノ基(例、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ)、モノ-またはジ-(ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル)-カルボニルアミノ基(例、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニルアミノ基(例、ベンゾイルアミノ)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルボニルアミノ基(例、ベンジルカルボニルアミノ)、モノ-またはジ-5ないし14員芳香族複素環カルボニルアミノ基(例、ニコチノイルアミノ、イソニコチノイルアミノ)、モノ-またはジ-3ないし14員非芳香族複素環カルボニルアミノ基(例、ピペリジニルカルボニルアミノ)、モノ-またはジ-C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基(例、tert-ブトキシカルボニルアミノ)、5ないし14員芳香族複素環アミノ基(例、ピリジルアミノ)、カルバモイルアミノ基、(モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル)アミノ基(例、メチルカルバモイルアミノ)、(モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル)アミノ基(例、ベンジルカルバモイルアミノ)、C1-6アルキルスルホニルアミノ基(例、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ)、C6-14アリールスルホニルアミノ基(例、フェニルスルホニルアミノ)、(C1-6アルキル)(C1-6アルキル-カルボニル)アミノ基(例、N-アセチル-N-メチルアミノ)、(C1-6アルキル)(C6-14アリール-カルボニル)アミノ基(例、N-ベンゾイル-N-メチルアミノ)が挙げられる。
【0022】
本明細書中、「置換されていてもよいカルバモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいカルバモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいカルバモイル基の好適な例としては、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-カルバモイル基(例、ジアリルカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-カルバモイル基(例、シクロプロピルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルバモイル基(例、フェニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-カルバモイル基(例、アセチルカルバモイル、プロピオニルカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-カルバモイル基(例、ベンゾイルカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環カルバモイル基(例、ピリジルカルバモイル)が挙げられる。
【0023】
本明細書中、「置換されていてもよいチオカルバモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいチオカルバモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいチオカルバモイル基の好適な例としては、チオカルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-チオカルバモイル基(例、メチルチオカルバモイル、エチルチオカルバモイル、ジメチルチオカルバモイル、ジエチルチオカルバモイル、N-エチル-N-メチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-チオカルバモイル基(例、ジアリルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-チオカルバモイル基(例、シクロプロピルチオカルバモイル、シクロヘキシルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-チオカルバモイル基(例、フェニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-チオカルバモイル基(例、ベンジルチオカルバモイル、フェネチルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-チオカルバモイル基(例、アセチルチオカルバモイル、プロピオニルチオカルバモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-チオカルバモイル基(例、ベンゾイルチオカルバモイル)、5ないし14員芳香族複素環チオカルバモイル基(例、ピリジルチオカルバモイル)が挙げられる。
【0024】
本明細書中、「置換されていてもよいスルファモイル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基およびモノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基から選ばれる1または2個の置換基」を有していてもよいスルファモイル基が挙げられる。
置換されていてもよいスルファモイル基の好適な例としては、スルファモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、N-エチル-N-メチルスルファモイル)、モノ-またはジ-C2-6アルケニル-スルファモイル基(例、ジアリルスルファモイル)、モノ-またはジ-C3-10シクロアルキル-スルファモイル基(例、シクロプロピルスルファモイル、シクロヘキシルスルファモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-スルファモイル基(例、フェニルスルファモイル)、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-スルファモイル基(例、ベンジルスルファモイル、フェネチルスルファモイル)、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルボニル-スルファモイル基(例、アセチルスルファモイル、プロピオニルスルファモイル)、モノ-またはジ-C6-14アリール-カルボニル-スルファモイル基(例、ベンゾイルスルファモイル)、5ないし14員芳香族複素環スルファモイル基(例、ピリジルスルファモイル)が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「置換されていてもよいヒドロキシ基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基、C7-16アラルキル-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環カルボニル基、3ないし14員非芳香族複素環カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、5ないし14員芳香族複素環基、カルバモイル基、モノ-またはジ-C1-6アルキル-カルバモイル基、モノ-またはジ-C7-16アラルキル-カルバモイル基、C1-6アルキルスルホニル基およびC6-14アリールスルホニル基から選ばれる置換基」を有していてもよいヒドロキシ基が挙げられる。
置換されていてもよいヒドロキシ基の好適な例としては、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基(例、アリルオキシ、2-ブテニルオキシ、2-ペンテニルオキシ、3-ヘキセニルオキシ)、C3-10シクロアルキルオキシ基(例、シクロヘキシルオキシ)、C6-14アリールオキシ基(例、フェノキシ、ナフチルオキシ)、C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ)、C1-6アルキル-カルボニルオキシ基(例、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、ピバロイルオキシ)、C6-14アリール-カルボニルオキシ基(例、ベンゾイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルボニルオキシ基(例、ベンジルカルボニルオキシ)、5ないし14員芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ニコチノイルオキシ)、3ないし14員非芳香族複素環カルボニルオキシ基(例、ピペリジニルカルボニルオキシ)、C1-6アルコキシ-カルボニルオキシ基(例、tert-ブトキシカルボニルオキシ)、5ないし14員芳香族複素環オキシ基(例、ピリジルオキシ)、カルバモイルオキシ基、C1-6アルキル-カルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ)、C7-16アラルキル-カルバモイルオキシ基(例、ベンジルカルバモイルオキシ)、C1-6アルキルスルホニルオキシ基(例、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ)、C6-14アリールスルホニルオキシ基(例、フェニルスルホニルオキシ)が挙げられる。
【0026】
本明細書中、「置換されていてもよいスルファニル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基、C7-16アラルキル基、C1-6アルキル-カルボニル基、C6-14アリール-カルボニル基および5ないし14員芳香族複素環基から選ばれる置換基」を有していてもよいスルファニル基、ハロゲン化されたスルファニル基が挙げられる。
置換されていてもよいスルファニル基の好適な例としては、スルファニル(-SH)基、C1-6アルキルチオ基、C2-6アルケニルチオ基(例、アリルチオ、2-ブテニルチオ、2-ペンテニルチオ、3-ヘキセニルチオ)、C3-10シクロアルキルチオ基(例、シクロヘキシルチオ)、C6-14アリールチオ基(例、フェニルチオ、ナフチルチオ)、C7-16アラルキルチオ基(例、ベンジルチオ、フェネチルチオ)、C1-6アルキル-カルボニルチオ基(例、アセチルチオ、プロピオニルチオ、ブチリルチオ、イソブチリルチオ、ピバロイルチオ)、C6-14アリール-カルボニルチオ基(例、ベンゾイルチオ)、5ないし14員芳香族複素環チオ基(例、ピリジルチオ)、ハロゲン化チオ基(例、ペンタフルオロチオ)が挙げられる。
【0027】
本明細書中、「置換されていてもよいシリル基」としては、例えば、「置換基群Aから選ばれる1ないし3個の置換基をそれぞれ有していてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C3-10シクロアルキル基、C6-14アリール基およびC7-16アラルキル基から選ばれる1ないし3個の置換基」を有していてもよいシリル基が挙げられる。
置換されていてもよいシリル基の好適な例としては、トリ-C1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、tert-ブチル(ジメチル)シリル)が挙げられる。
【0028】
本明細書中、「炭化水素環」としては、例えば、C6-14芳香族炭化水素環、C3-10シクロアルカン、C3-10シクロアルケンが挙げられる。
本明細書中、「C6-14芳香族炭化水素環」としては、例えば、ベンゼン、ナフタレンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルカン」としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンが挙げられる。
本明細書中、「C3-10シクロアルケン」としては、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンが挙げられる。
本明細書中、「複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子をそれぞれ含有する、芳香族複素環および非芳香族複素環が挙げられる。
【0029】
本明細書中、「芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の芳香族複素環が挙げられる。該「芳香族複素環」の好適な例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジンなどの5ないし6員単環式芳香族複素環;
ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾピリジン、チエノピリジン、フロピリジン、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、オキサゾロピリジン、チアゾロピリジン、イミダゾピラジン、イミダゾピリミジン、チエノピリミジン、フロピリミジン、ピロロピリミジン、ピラゾロピリミジン、オキサゾロピリミジン、チアゾロピリミジン、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、ナフト[2,3-b]チオフェン、フェノキサチイン、インド-ル、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、カルバゾール、β-カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジンなどの8ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)芳香族複素環が挙げられる。
【0030】
本明細書中、「非芳香族複素環」としては、例えば、環構成原子として炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1ないし4個のヘテロ原子を含有する3ないし14員(好ましくは4ないし10員)の非芳香族複素環が挙げられる。該「非芳香族複素環」の好適な例としては、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、チアゾリン、チアゾリジン、テトラヒドロイソチアゾール、テトラヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピリジン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロピリミジン、テトラヒドロピリダジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、モルホリン、チオモルホリン、アゼパニン、ジアゼパン、アゼピン、アゾカン、ジアゾカン、オキセパンなどの3ないし8員単環式非芳香族複素環;
ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイソチアゾール、ジヒドロナフト[2,3-b]チオフェン、テトラヒドロイソキノリン、テトラヒドロキノリン、4H-キノリジン、インドリン、イソインドリン、テトラヒドロチエノ[2,3-c]ピリジン、テトラヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロキノキサリン、テトラヒドロフェナントリジン、ヘキサヒドロフェノチアジン、ヘキサヒドロフェノキサジン、テトラヒドロフタラジン、テトラヒドロナフチリジン、テトラヒドロキナゾリン、テトラヒドロシンノリン、テトラヒドロカルバゾール、テトラヒドロ-β-カルボリン、テトラヒドロアクリジン、テトラヒドロフェナジン、テトラヒドロチオキサンテン、オクタヒドロイソキノリンなどの9ないし14員縮合多環式(好ましくは2または3環式)非芳香族複素環が挙げられる。
本明細書中、「含窒素複素環」としては、「複素環」のうち、環構成原子として少なくとも1個以上の窒素原子を含有するものが挙げられる。
【0031】
以下に、式(I)中の各記号の定義について詳述する。
【0032】
環Aは、置換されていてもよい芳香環を示す。
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における「芳香環」としては、C6-14芳香族炭化水素環(好ましくはベンゼン)および5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール))が挙げられる。
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における「芳香環」は、好ましくは、ベンゼンまたは5ないし6員単環式芳香族複素環(好ましくはピリジン、ピリミジン、ピラゾール)である。
【0033】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における「芳香環」は、炭化水素環または複素環と縮合していてもよい。
【0034】
環Aで示される「置換されていてもよい芳香環」における「芳香環」は、下式
【0035】
【0036】
(式中、Xは、CHまたはNを示す。)の置換基に加えて、置換可能な位置に1ないし5個(好ましくは1ないし3個)の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、上記置換基群Aが挙げられる。置換基が複数存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。
【0037】
環Aは、好ましくは、それぞれ置換されていてもよい、C6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)または5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール))である。
【0038】
環Aは、より好ましくは、
(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、
(e) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)、
(f) C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、および
(g) C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、C6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)または5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール)、当該芳香族複素環は、3ないし8員単環式非芳香族複素環(例、ジヒドロピラン)と縮合していてもよい(例、ジヒドロピラノピリジン))である。
【0039】
環Aは、さらに好ましくは、
(1)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、および
(e) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)、または
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、
(d) C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、および
(e) C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよい5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール)、当該芳香族複素環は、3ないし8員単環式非芳香族複素環(例、ジヒドロピラン)と縮合していてもよい(例、ジヒドロピラノピリジン))
である。
【0040】
環Aは、さらにより好ましくは、
(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、トリフルオロメチル)、および
(c) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、ベンゼンまたは5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン)である。
【0041】
環Aは、さらに一層好ましくは、
(1)(a) ハロゲン原子(例、塩素原子)、および
(b) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されたベンゼン、または
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(b) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、トリフルオロメチル)
から選ばれる1~3個の置換基で置換された5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン)
である。
【0042】
環Aは、特に好ましくは、1~3個のハロゲン原子(例、塩素原子)で置換されたピリジンである。
【0043】
Xは、CHまたはNを示す。
【0044】
化合物(I)の好ましい態様としては、以下の化合物が挙げられる。
【0045】
[化合物A]
環Aが、
(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、
(e) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)、
(f) C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、および
(g) C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、C6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)または5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール)、当該芳香族複素環は、3ないし8員単環式非芳香族複素環(例、ジヒドロピラン)と縮合していてもよい(例、ジヒドロピラノピリジン))であり;かつ
Xが、CHまたはNである、
化合物(I)。
【0046】
[化合物B]
環Aが、
(1)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) カルバモイル基、
(d) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、および
(e) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよいC6-14芳香族炭化水素環(例、ベンゼン)、または
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) シアノ基、
(c) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、
(d) C3-10シクロアルキル基(例、シクロプロピル)、および
(e) C7-16アラルキルオキシ基(例、ベンジルオキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されていてもよい5ないし14員芳香族複素環(好ましくは、5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン、ピリミジン、ピラゾール)、当該芳香族複素環は、3ないし8員単環式非芳香族複素環(例、ジヒドロピラン)と縮合していてもよい(例、ジヒドロピラノピリジン))
であり;かつ
Xが、CHまたはNである、
化合物(I)。
【0047】
[化合物C]
環Aが、
(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、
(b) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、トリフルオロメチル)、および
(c) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい、ベンゼンまたは5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン)であり;かつ
Xが、CHまたはNである、
化合物(I)。
【0048】
[化合物D]
環Aが、
(1)(a) ハロゲン原子(例、塩素原子)、および
(b) C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)
から選ばれる1~3個の置換基で置換されたベンゼン、または
(2)(a) ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子)、および
(b) ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基(例、トリフルオロメチル)
から選ばれる1~3個の置換基で置換された5ないし6員単環式芳香族複素環(例、ピリジン)
であり;かつ
Xが、CHまたはNである、
化合物(I)。
【0049】
[化合物E]
環Aが、1~3個のハロゲン原子(例、塩素原子)で置換されたピリジンであり;かつ
Xが、CHまたはNである、
化合物(I)。
【0050】
化合物(I)の具体例としては、例えば、後述の実施例1~115の化合物が挙げられる。
【0051】
化合物(I)が塩である場合、そのような塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合には、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が挙げられる。
【0052】
本発明化合物の製造法について以下に説明する。
【0053】
以下の製造方法における各工程で用いられた原料や試薬、ならびに得られた化合物は、それぞれ塩を形成していてもよい。このような塩としては、例えば、前述の本発明化合物の塩と同様のもの等が挙げられる。
【0054】
各工程で得られた化合物が遊離化合物である場合には、自体公知の方法により、目的とする塩に変換することができる。逆に各工程で得られた化合物が塩である場合には、自体公知の方法により、遊離体または目的とする他の種類の塩に変換することができる。
【0055】
各工程で得られた化合物は反応液のままか、または粗生成物として得た後に、次反応に用いることもできる、あるいは、各工程で得られた化合物を、常法に従って、反応混合物から濃縮、晶出、再結晶、蒸留、溶媒抽出、分溜、クロマトグラフィーなどの分離手段により単離および/または精製することができる。
【0056】
各工程の原料や試薬の化合物が市販されている場合には、市販品をそのまま用いることができる。
【0057】
各工程の反応において、反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは10分~8時間である。
【0058】
各工程の反応において、反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常-78℃~300℃、好ましくは-78℃~150℃である。
【0059】
各工程の反応において、圧力は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載が無い場合、通常1気圧~20気圧、好ましくは1気圧~3気圧である。
【0060】
各工程の反応において、例えば、Biotage社製InitiatorなどのMicrowave合成装置を用いることがある。反応温度は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載がない場合、通常室温~300℃、好ましくは50℃~250℃である。反応時間は、用いる試薬や溶媒により異なり得るが、特に記載の無い場合、通常1分~48時間、好ましくは1分~8時間である。
【0061】
各工程の反応において、試薬は、特に記載が無い場合、基質に対して0.5当量~20当量、好ましくは0.8当量~5当量が用いられる。試薬を触媒として使用する場合、試薬は基質に対して0.001当量~1当量、好ましくは0.01当量~0.2当量が用いられる。試薬が反応溶媒を兼ねる場合、試薬は溶媒量が用いられる。
【0062】
各工程の反応において、特に記載が無い場合、これらの反応は、無溶媒、あるいは適当な溶媒に原料化合物を溶解または懸濁して行われる。溶媒の具体例としては、実施例に記載されている溶媒、あるいは以下が挙げられる。
アルコール類:メタノール、エタノール、tert-ブチルアルコール、2-メトキシエタノールなど;
エーテル類:ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタンなど;
芳香族炭化水素類:クロロベンゼン、トルエン、キシレンなど;
飽和炭化水素類:シクロヘキサン、ヘキサンなど;
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなど;
ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、四塩化炭素など;
ニトリル類:アセトニトリルなど;
スルホキシド類:ジメチルスルホキシドなど;
芳香族有機塩基類:ピリジンなど;
酸無水物類:無水酢酸など;
有機酸類:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など;
無機酸類:塩酸、硫酸など;
エステル類:酢酸エチルなど;
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトンなど;
水。
上記溶媒は、二種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0063】
各工程の反応において塩基を用いる場合、例えば、以下に示す塩基、あるいは実施例に記載されている塩基が用いられる。
無機塩基類:水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなど;
有機塩基類:トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、イミダゾール、ピペリジンなど;
金属アルコキシド類:ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシドなど;
アルカリ金属水素化物類:水素化ナトリウムなど;
金属アミド類:ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジドなど;
有機リチウム類:n-ブチルリチウムなど。
【0064】
各工程の反応において酸または酸性触媒を用いる場合、例えば、以下に示す酸や酸性触媒、あるいは実施例に記載されている酸や酸性触媒が用いられる。
無機酸類:塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、リン酸など;
有機酸類:酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸など;
ルイス酸:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、ヨウ化亜鉛、無水塩化アルミニウム、無水塩化亜鉛、無水塩化鉄など。
【0065】
各工程の反応は、特に記載の無い限り、自体公知の方法、例えば、第5版実験化学講座、13巻~19巻(日本化学会編);新実験化学講座、14巻~15巻(日本化学会編);精密有機化学 改訂第2版(L. F. Tietze,Th. Eicher、南江堂);改訂 有機人名反応 そのしくみとポイント(東郷秀雄著、講談社);ORGANIC SYNTHESES Collective Volume I~VII(John Wiley & Sons Inc.);Modern Organic Synthesis in the Laboratory A Collection of Standard Experimental Procedures(Jie Jack Li著、OXFORD UNIVERSITY出版);Comprehensive Heterocyclic Chemistry III、Vol.1~Vol.14(エルゼビア・ジャパン株式会社);人名反応に学ぶ有機合成戦略(富岡清監訳、化学同人発行);コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(VCH Publishers Inc.)1989年刊などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
【0066】
各工程において、官能基の保護または脱保護反応は、自体公知の方法、例えば、Wiley-Interscience社2007年刊「Protective Groups in Organic Synthesis, 4th Ed.」(Theodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著);Thieme社2004年刊「Protecting Groups 3rd Ed.」(P.J.Kocienski著)などに記載された方法、あるいは実施例に記載された方法に準じて行われる。
アルコールなどの水酸基やフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、メトキシメチルエーテル、ベンジルエーテル、tert-ブチルジメチルシリルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテルなどのエーテル型保護基;酢酸エステルなどのカルボン酸エステル型保護基;メタンスルホン酸エステルなどのスルホン酸エステル型保護基;tert-ブチルカルボネートなどの炭酸エステル型保護基などが挙げられる。
アルデヒドのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルアセタールなどのアセタール型保護基;1,3-ジオキサンなどの環状アセタール型保護基などが挙げられる。
ケトンのカルボニル基の保護基としては、例えば、ジメチルケタールなどのケタール型保護基;1,3-ジオキサンなどの環状ケタール型保護基;O-メチルオキシムなどのオキシム型保護基;N,N-ジメチルヒドラゾンなどのヒドラゾン型保護基などが挙げられる。
カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチルエステルなどのエステル型保護基;N,N-ジメチルアミドなどのアミド型保護基などが挙げられる。
チオールの保護基としては、例えば、ベンジルチオエーテルなどのエーテル型保護基;チオ酢酸エステル、チオカルボネート、チオカルバメートなどのエステル型保護基などが挙げられる。
アミノ基や、イミダゾール、ピロール、インドールなどの芳香族ヘテロ環の保護基としては、例えば、ベンジルカルバメートなどのカルバメート型保護基;アセトアミドなどのアミド型保護基;N-トリフェニルメチルアミンなどのアルキルアミン型保護基、メタンスルホンアミドなどのスルホンアミド型保護基などが挙げられる。
保護基の除去は、自体公知の方法、例えば、酸、塩基、紫外光、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム、テトラブチルアンモニウムフルオリド、酢酸パラジウム、トリアルキルシリルハライド(例えば、トリメチルシリルヨージド、トリメチルシリルブロミド)を使用する方法や還元法などを用いて行うことができる。
【0067】
各工程において、還元反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素テトラメチルアンモニウム、リチウムトリ-sec-ブチルボロヒドリドなどの金属水素化物類;ボランテトラヒドロフラン錯体などのボラン類;ラネーニッケル;ラネーコバルト;水素;ギ酸;トリエチルシランなどが挙げられる。炭素-炭素二重結合あるいは三重結合を還元する場合は、パラジウム-カーボンやLindlar触媒などの触媒を用いる方法がある。
【0068】
各工程において、酸化反応を行う場合、使用される酸化剤としては、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)、過酸化水素、tert-ブチルヒドロペルオキシドなどの過酸類;過塩素酸テトラブチルアンモニウムなどの過塩素酸塩類;塩素酸ナトリウムなどの塩素酸塩類;亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩類;過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩類;ヨードシルベンゼンなどの高原子価ヨウ素試薬;二酸化マンガン、過マンガン酸カリウムなどのマンガンを有する試薬;四酢酸鉛などの鉛類;クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジョーンズ試薬などのクロムを有する試薬;N-ブロモスクシンイミド(NBS)などのハロゲン化合物類;酸素;オゾン;三酸化硫黄・ピリジン錯体;四酸化オスミウム;二酸化セレン;2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
【0069】
各工程において、ラジカル環化反応を行う場合、使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物;4-4’-アゾビス-4-シアノペンタン酸(ACPA)などの水溶性ラジカル開始剤;空気あるいは酸素存在下でのトリエチルホウ素;過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。また、使用されるラジカル反応試剤としては、トリブチルスタナン、トリストリメチルシリルシラン、1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、ジフェニルシラン、ヨウ化サマリウムなどが挙げられる。
【0070】
各工程において、Wittig反応を行う場合、使用されるWittig試薬としては、アルキリデンホスホラン類などが挙げられる。アルキリデンホスホラン類は、自体公知の方法、例えば、ホスホニウム塩と強塩基を反応させることで調製することができる。
【0071】
各工程において、Horner-Emmons反応を行う場合、使用される試薬としては、ジメチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチルなどのホスホノ酢酸エステル類;アルカリ金属水素化物類、有機リチウム類などの塩基が挙げられる。
【0072】
各工程において、Friedel-Crafts反応を行う場合、使用される試薬としては、ルイス酸と酸クロリドとの組み合せ、あるいはルイス酸とアルキル化剤(例、ハロゲン化アルキル類、アルコール、オレフィン類など)との組み合わせが挙げられる。あるいは、ルイス酸の代わりに、有機酸や無機酸を用いることもでき、酸クロリドの代わりに、無水酢酸などの酸無水物を用いることもできる。
【0073】
各工程において、芳香族求核置換反応を行う場合、試薬としては、求核剤(例、アミン類、イミダゾールなど)と塩基(例、有機塩基類など)が用いられる。
【0074】
各工程において、カルボアニオンによる求核付加反応、カルボアニオンによる求核1,4-付加反応(Michael付加反応)、あるいはカルボアニオンによる求核置換反応を行う場合、カルボアニオンを発生するために用いる塩基としては、有機リチウム類、金属アルコキシド類、無機塩基類、有機塩基類などが挙げられる。
【0075】
各工程において、Grignard反応を行う場合、Grignard試薬としては、フェニルマグネシウムブロミドなどのアリールマグネシウムハライド類;メチルマグネシウムブロミドなどのアルキルマグネシウムハライド類が挙げられる。Grignard試薬は、自体公知の方法、例えばエーテルあるいはテトラヒドロフランを溶媒として、ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと、金属マグネシウムとを反応させることにより調製することができる。
【0076】
各工程において、Knoevenagel縮合反応を行う場合、試薬としては、二つの電子求引基に挟まれた活性メチレン化合物(例、マロン酸、マロン酸ジエチル、マロノニトリルなど)および塩基(例、有機塩基類、金属アルコキシド類、無機塩基類)が用いられる。
【0077】
各工程において、Vilsmeier-Haack反応を行う場合、試薬としては、塩化ホスホリルとアミド誘導体(例、N,N-ジメチルホルムアミドなど)が用いられる。
【0078】
各工程において、アルコール類、アルキルハライド類、スルホン酸エステル類のアジド化反応を行う場合、使用されるアジド化剤としては、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、トリメチルシリルアジド、アジ化ナトリウムなどが挙げられる。例えば、アルコール類をアジド化する場合、ジフェニルホスホリルアジドと1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を用いる方法やトリメチルシリルアジドとルイス酸を用いる方法などがある。
【0079】
各工程において、還元的アミノ化反応を行う場合、使用される還元剤としては、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、水素、ギ酸などが挙げられる。基質がアミン化合物の場合は、使用されるカルボニル化合物としては、パラホルムアルデヒドの他、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、シクロヘキサノンなどのケトン類が挙げられる。基質がカルボニル化合物の場合は、使用されるアミン類としては、アンモニア、メチルアミンなどの1級アミン;ジメチルアミンなどの2級アミンなどが挙げられる。
【0080】
各工程において、光延反応を行う場合、試薬としては、アゾジカルボン酸エステル類(例、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、アゾジカルボン酸ビス(2-メトキシエチル)など)およびトリフェニルホスフィンが用いられる。
【0081】
各工程において、エステル化反応、アミド化反応、あるいはウレア化反応を行う場合、使用される試薬としては、酸クロリド、酸ブロミドなどのハロゲン化アシル体;酸無水物、活性エステル体、硫酸エステル体など活性化されたカルボン酸類が挙げられる。カルボン酸の活性化剤としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCD)などのカルボジイミド系縮合剤;4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド-n-ハイドレート(DMT-MM)などのトリアジン系縮合剤;1,1-カルボニルジイミダゾール(CDI)などの炭酸エステル系縮合剤;ジフェニルリン酸アジド(DPPA);ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP試薬);ヨウ化2-クロロ-1-メチル-ピリジニウム(向山試薬);塩化チオニル;クロロギ酸エチルなどのハロギ酸低級アルキル;O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩(HATU);硫酸;あるいはこれらの組み合わせなどが挙げられる。カルボジイミド系縮合剤を用いる場合、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの添加剤をさらに反応に加えてもよい。
【0082】
各工程において、カップリング反応を行う場合、使用される金属触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、塩化1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)などのパラジウム化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)などのニッケル化合物;塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)などのロジウム化合物;コバルト化合物;酸化銅、ヨウ化銅(I)などの銅化合物;白金化合物などが挙げられる。さらに反応に塩基を加えてもよく、このような塩基としては、無機塩基類などが挙げられる。
【0083】
各工程において、チオカルボニル化反応を行う場合、チオカルボニル化剤としては、代表的には五硫化二リンが用いられるが、五硫化二リンの他に、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド(Lawesson試薬)などの1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィド構造を持つ試薬を用いてもよい。
【0084】
各工程において、Wohl-Ziegler反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、N-ヨードコハク酸イミド、N-ブロモコハク酸イミド(NBS)、N-クロロコハク酸イミド(NCS)、臭素、塩化スルフリルなどが挙げられる。さらに、熱、光、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤を反応に加えることで、反応を加速させることができる。
【0085】
各工程において、ヒドロキシ基のハロゲン化反応を行う場合、使用されるハロゲン化剤としては、ハロゲン化水素酸と無機酸の酸ハロゲン化物、具体的には、塩素化では、塩酸、塩化チオニル、オキシ塩化リンなど、臭素化では、48%臭化水素酸などが挙げられる。また、トリフェニルホスフィンと四塩化炭素または四臭化炭素などとの作用により、アルコールからハロゲン化アルキル体を得る方法を用いてもよい。あるいは、アルコールをスルホン酸エステルに変換の後、臭化リチウム、塩化リチウムまたはヨウ化ナトリウムと反応させるような2段階の反応を経てハロゲン化アルキル体を合成する方法を用いてもよい。
【0086】
各工程において、Arbuzov反応を行う場合、使用される試薬としては、ブロモ酢酸エチルなどのハロゲン化アルキル類;トリエチルホスファイトやトリ(イソプロピル)ホスファイトなどのホスファイト類が挙げられる。
【0087】
各工程において、スルホン酸エステル化反応を行う場合、使用されるスルホニル化剤としては、メタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物などが挙げられる。
【0088】
各工程において、加水分解反応を行う場合、試薬としては、酸または塩基が用いられる。また、tert-ブチルエステルの酸加水分解反応を行う場合、副生するtert-ブチルカチオンを還元的にトラップするためにギ酸やトリエチルシランなどを加えることがある。
【0089】
各工程において、脱水反応を行う場合、使用される脱水剤としては、硫酸、五酸化二リン、オキシ塩化リン、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、アルミナ、ポリリン酸などが挙げられる。
【0090】
化合物(I)は、化合物(1)または(4)より以下の方法で製造することができる。
【0091】
【0092】
[式中、RはC1-6アルキル基を、Yはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を、Lは脱離基(例、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子))を、Pは保護基を示し、その他の各記号は前記と同意義を示す。]
【0093】
化合物(2)は、例えば、カリウムtert-ブトキシドのような適切な塩基の存在下、化合物(1)とアクリル酸メチルを反応させて製造することができる。
化合物(3)は、例えば、化合物(2)を加熱して脱炭酸反応を行うことにより製造することができる。塩化リチウム、塩化ナトリウムのような適切な塩、もしくは水酸化ナトリウムのような適切な塩基を反応系に加えても良い。
化合物(6)は、化合物(1)から化合物(3)の製造方法に準じて、化合物(4)から製造することができる。
化合物(3)は、例えば、アルコール存在下、化合物(6)の一酸化炭素挿入反応により製造することもできる。使用されるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)等が挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。さらに、1, 3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等のリガンドを反応に加えても良い。
化合物(7)は、化合物(3)の還元反応により製造することができる。
化合物(10)は、化合物(7)と化合物(8)の光延反応により製造することができる。または、水素化ナトリウムやカリウムtert-ブトキシドのような適切な塩基存在下、化合物(7)と化合物(9)を反応させることにより製造することもできる。その際、反応にヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムのような添加剤を加えても良い。
化合物(10)は、化合物(7)の窒素原子を適切な保護基で保護して化合物(11)とした後、化合物(11)と化合物(8)の光延反応を行い化合物(12)とし、化合物(12)の脱保護反応を行うことにより製造することもできる。
化合物(I)は、化合物(10)の加水分解反応により製造することができる。
化合物(1)、(4)、(8)および(9)は、自体公知あるいはそれに準じた方法により製造することができる。
【0094】
化合物(I)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体を含有する場合には、これらも化合物(I)として含有されるとともに、自体公知の合成手法、分離手法(例えば、濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)によりそれぞれを単品として得ることができる。例えば、化合物(I)に光学異性体が存在する場合には、該化合物から分割された光学異性体も化合物(I)に包含される。
【0095】
光学異性体は自体公知の方法により製造することができる。具体的には、光学活性な合成中間体を用いる、または、最終物のラセミ体を常法に従って光学分割することにより光学異性体を得る。
光学分割法としては、自体公知の方法、例えば、分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー法等が用いられる。
【0096】
1)分別再結晶法
ラセミ体と光学活性な化合物(例えば、(+)-マンデル酸、(-)-マンデル酸、(+)-酒石酸、(-)-酒石酸、(+)-1-フェネチルアミン、(-)-1-フェネチルアミン、シンコニン、(-)-シンコニジン、ブルシン等)と塩を形成させ、これを分別再結晶法によって分離し、所望により、中和工程を経てフリーの光学異性体を得る方法。
【0097】
2)キラルカラム法
ラセミ体またはその塩を光学異性体分離用カラム(キラルカラム)にかけて分離する方法。例えば、液体クロマトグラフィーの場合、ENANTIO-OVM(東ソー社製)あるいは、CHIRALシリーズ(ダイセル化学工業社製)等のキラルカラムに光学異性体の混合物を添加し、水、種々の緩衝液(例、リン酸緩衝液等)、有機溶媒(例、エタノール、メタノール、2-プロパノール、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸、ジエチルアミン等)を単独あるいは混合した溶液として展開させることにより、光学異性体を分離する。また、例えば、ガスクロマトグラフィーの場合、CP-Chirasil-DeX CB(ジーエルサイエンス社製)等のキラルカラムを使用して分離する。
【0098】
3)ジアステレオマー法
ラセミ体の混合物を光学活性な試薬と化学反応によってジアステレオマーの混合物とし、これを通常の分離手段(例えば、分別再結晶、クロマトグラフィー法等)等を経て単一物質とした後、加水分解反応等の化学的な処理により光学活性な試薬部位を切り離すことにより光学異性体を得る方法。例えば、化合物(I)が分子内にヒドロキシまたは1,2級アミノを有する場合、該化合物と光学活性な有機酸(例えば、MTPA〔α-メトキシ-α-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸〕、(-)-メントキシ酢酸等)等とを縮合反応に付すことにより、それぞれエステル体またはアミド体のジアステレオマーが得られる。一方、化合物(I)がカルボキシ基を有する場合、該化合物と光学活性アミンまたはアルコール試薬とを縮合反応に付すことにより、それぞれアミド体またはエステル体のジアステレオマーが得られる。分離されたジアステレオマーは、酸加水分解あるいは塩基性加水分解反応に付すことにより、元の化合物の光学異性体に変換される。
【0099】
化合物(I)は、結晶であってもよい。
化合物(I)の結晶は、化合物(I)に自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
ここで、結晶化法としては、例えば、溶液からの結晶化法、蒸気からの結晶化法、溶融体からの結晶化法等が挙げられる。
【0100】
該「溶液からの結晶化法」としては、化合物の溶解度に関係する因子(溶媒組成、pH、温度、イオン強度、酸化還元状態等)または溶媒の量を変化させることによって、飽和していない状態から過飽和状態に移行させる方法が一般的であり、具体的には、例えば、濃縮法、徐冷法、反応法(拡散法、電解法)、水熱育成法、融剤法等が挙げられる。用いられる溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム等)、飽和炭化水素類(例、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等)、エーテル類(例、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例、アセトニトリル等)、ケトン類(例、アセトン等)、スルホキシド類(例、ジメチルスルホキシド等)、酸アミド類(例、N,N-ジメチルホルムアミド等)、エステル類(例、酢酸エチル等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、2-プロパノール等)、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは二種以上を適当な割合(例、1:1ないし1:100(容積比))で混合して用いられる。必要に応じて種晶を使用することもできる。
【0101】
該「蒸気からの結晶化法」としては、例えば、気化法(封管法、気流法)、気相反応法、化学輸送法等が挙げられる。
【0102】
該「溶融体からの結晶化法」としては、例えば、ノルマルフリージング法(引上げ法、温度傾斜法、ブリッジマン法)、帯溶融法(ゾーンレベリング法、フロートゾーン法)、特殊成長法(VLS法、液相エピタキシー法)等が挙げられる。
【0103】
結晶化法の好適な例としては、化合物(I)を20~120℃の温度下において、適当な溶媒(例、メタノール、エタノール等のアルコール類等)に溶解し、得られる溶液を溶解時の温度以下(例えば、0~50℃、好ましくは0~20℃)に冷却する方法等が挙げられる。
このようにして得られる本発明の結晶は、例えば、ろ過等によって単離することができる。
得られた結晶の解析方法としては、粉末X線回折による結晶解析の方法が一般的である。さらに、結晶の方位を決定する方法としては、機械的な方法または光学的な方法等も挙げられる。
【0104】
上記の製造法で得られる化合物(I)の結晶は、高純度、高品質であり、吸湿性が低く、通常条件下で長期間保存しても変質せず、安定性に優れることが期待される。また、生物学的性質(例、体内動態(吸収性、分布、代謝、排泄)、薬効発現等)にも優れ、医薬として有用であり得る。
【0105】
化合物(I)のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により化合物(I)に変換する化合物、すなわち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして化合物(I)に変化する化合物をいう。化合物(I)のプロドラッグとしては、化合物(I)のアミノ基がアシル化、アルキル化、りん酸化された化合物[例、化合物(I)のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物等];化合物(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、りん酸化、ほう酸化された化合物(例、化合物(I)の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等);化合物(I)のカルボキシル基がエステル化、アミド化された化合物[例、化合物(I)のカルボキシル基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物等]等が挙げられる。これらの化合物は自体公知の方法によって化合物(I)から製造することができる。
また、化合物(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような、生理的条件で化合物(I)に変化するものであってもよい。
【0106】
本明細書中、化合物(I)、化合物(I)のプロドラッグを纏めて「本発明化合物」と略記する場合がある。
【0107】
化合物(I)は、水和物、非水和物、溶媒和物、無溶媒和物のいずれであってもよい。
また、化合物(I)は、同位元素(例、2H、3H、11C、14C、18F、35S、125Iなど)などで標識または置換された化合物であってもよく、同位元素で標識または置換された化合物は、例えば、陽電子断層法(Positron Emission Tomography,PET)において使用するトレーサー(PETトレーサー)として用いることができ、医療診断などの分野において有用であり得る。
1Hを2H(D)に変換した重水素変換体も、化合物(I)に包含される。
互変異性体も、化合物(I)に包含される。
化合物(I)は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
化合物(I)は、PETトレーサーとして用いてもよい。
【0108】
本発明化合物は、優れたIP6K阻害作用を有することから、この作用に基づく安全な医薬としても有用であり得る。
例えば、本発明化合物を含有してなる本発明の医薬は、毒性(例、急性毒性、慢性毒性、遺伝毒性、生殖毒性、心毒性、癌原性)が低いことが期待でき、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒト等)に対して、IP6Kが関与する疾患の予防または治療剤として用い得る。
【0109】
具体的には、本発明化合物は、糖尿病(例、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満型糖尿病)、心血管疾患(例、心不全、不整脈、虚血性心疾患、心臓弁膜症、動脈硬化)、肥満症(例、悪性肥満細胞(malignant mastocytosis)、外因性肥満(exogenous obesity)、過インスリン性肥満症(hyperinsulinar obesity)、過血漿性肥満(hyperplasmic obesity)、下垂体性肥満(hypophyseal adiposity)、減血漿性肥満症(hypoplasmic obesity)、甲状腺機能低下肥満症(hypothyroid obesity)、視床下部性肥満(hypothalamic obesity)、症候性肥満症(symptomatic obesity)、小児肥満(infantile obesity)、上半身肥満(upper body obesity)、食事性肥満症(alimentary obesity)、性機能低下性肥満(hypogonadal obesity)、全身性肥満細胞症(systemic mastocytosis)、単純性肥満(simple obesity)、中心性肥満(central obesity)等)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)、摂食亢進症(hyperphagia)、高脂血症/脂質異常症(例、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、食後高脂血症)、高リン血症 (Hyperphosphatemia)、低リン血症(hypophosphatemia)、高カリウム血症(Hyperkalemia)、高血圧症、糖尿病性合併症[例、神経障害、腎症、網膜症、糖尿病性心筋症、白内障、大血管障害、骨減少症、糖尿病性高浸透圧昏睡、感染症(例、呼吸器感染症、尿路感染症、消化器感染症、皮膚軟部組織感染症、下肢感染症)、糖尿病性壊疽、口腔乾燥症、聴覚の低下、脳血管障害、末梢血行障害]、メタボリックシンドローム(高トリグリセライド(TG)血症、低HDLコレステロール(HDL-C)血症、高血圧症、腹部肥満および耐糖能不全から選ばれる3つ以上を保有する病態)、筋肉減少症、情動障害、性機能障害、うつ病、不安症、神経症、動脈硬化症、膝関節炎、急性腎障害、緑内障、虚血性疾患、心筋梗塞、脳卒中、認知症、神経変性疾患(Neurodegenerative diseases)[例、筋萎縮性側索硬化症]、ミトコンドリア病 (mitochondria disease)、網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa)、緑内障 (glaucoma)、骨粗しょう症(Osteoporosis)、真菌感染症等の予防・治療剤として用いることができる。
【0110】
糖尿病の判定基準については、2010年に日本糖尿病学会から「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告」が報告されている。
【0111】
この報告によれば、糖尿病とは、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dL以上、非絶食血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dL以上、HbA1c(国際標準値)が6.5%以上のいずれかを示す状態である。但し、HbA1c(国際標準値)(%)は国際標準化されたNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)相当値として、従来のJDS(Japan Diabetes Society)値で表記されたHbA1c(JDS値)(%)に0.4%を加えた値で表記する。また、上記糖尿病に該当せず、かつ、「空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dL未満または75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dL未満を示す状態」(正常型)でない状態を、「境界型」と呼ぶ。
【0112】
2006年のWHO(世界保健機構)からの報告によれば、糖尿病とは、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dL以上、または、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が200mg/dL以上を示す状態である。
【0113】
また、上記報告によれば、耐糖能不全(IGT:Impaired glucose tolerance)とは、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が126mg/dL未満であり、かつ、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dL以上200mg/dL未満を示す状態である。さらに、WHOの報告によれば、空腹時血糖値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が110mg/dL以上126mg/dL未満の状態であり、もし測定値があるならば、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値(静脈血漿におけるグルコース濃度)が140mg/dL未満である状態をIFG(Impaired Fasting Glucose)と呼ぶ。
【0114】
本発明化合物は、上記した報告により判定される糖尿病、境界型、耐糖能不全又はIFG(Impaired Fasting Glucose)の予防又は治療剤としても用いられる。さらに、本発明化合物は、境界型、耐糖能不全又はIFG(Impaired Fasting Glucose)から糖尿病への進展を防止することもできる。
【0115】
心不全の臨床状態は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)が重症度に応じて表1に示す4段階に分類している。
【0116】
【0117】
また、AHA/ACCステージ分類(American Heart Association/American College of Cardiology)が、重症度に応じて表2に示す4段階に分類している。
【0118】
【0119】
NYHA分類とAHA/ACCステージ分類との対応関係は概ね以下の表3に示す通りとされている。
【0120】
【0121】
本発明化合物は、上記した報告により判定される心不全、心拍出量の低下、虚血性心不全または非虚血性心不全、非代償性心不全、急性心不全、急性非代償性心不全の予防又は治療剤としても用いられる。
本発明化合物は、心不全の対象において、駆出率(ejection fraction)低下を改善する、または駆出率を増加させることにも用いることができる。
【0122】
本発明化合物は、また、心不全の対象において、心機能の増悪の抑制または憎悪の進行を抑制することができる。本発明化合物はではまた、心不全の対象において、心臓の負荷を軽減することができ、心肥大を抑制することができ、間質繊維化を抑制することができ、およびアポトーシス増加を抑制することができる。
【0123】
本発明化合物は、代謝症候群(メタボリックシンドローム)の予防・治療剤としても有用である。代謝症候群の患者では、単一の生活習慣病を発症している患者に比べて心血管疾患を発症する率が著しく高いことから、代謝症候群を予防・治療することは心血管疾患を予防するために極めて重要である。
代謝症候群の判定基準が、1999年にWHOから、2001年にNCEPから発表されている。WHOの判定基準によれば、高インスリン血症または耐糖能異常を基本条件に、内臓肥満、異常脂質血症(高TGまたは低HDL)、高血圧のうち2つ以上を持つ場合に代謝症候群と診断される(World Health Organization: Definition, Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus and Its Complications. Part I: Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, World Health Organization, Geneva, 1999)。米国の虚血性心疾患の管理指標であるNational Cholesterol Education Program のAdult Treatment Panel IIIの判定基準によれば、内臓肥満、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症、高血圧、耐糖能異常のうち3つ以上を持つ場合に代謝症候群と診断される(National Cholesterol Education Program: Executive Summary of the Third Report of National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adults Treatment Panel III). The Journal of the American Medical Association, Vol. 285, 2486-2497, 2001)。
【0124】
本発明化合物は、上記した各種疾患(例、心筋梗塞等の心血管イベント)の2次予防および進展抑制にも用いられる。
【0125】
ここで、上記疾患の「予防」とは、例えば、当該疾患に関連する何らかの因子により、発症の危険性が高いと予想される当該疾患を発症していない患者あるいは発症しているが自覚症状のない患者に対し、本発明の化合物を含む医薬を投与すること、あるいは当該疾患治療後、当該疾患の再発が懸念される患者に対し、本発明の化合物を含む医薬を投与することを意味する。
【0126】
本発明の化合物を含有する医薬は、医薬製剤の製造法として自体公知の方法(例、日本薬局方記載の方法等)に従って、本発明化合物を単独で、または本発明化合物と薬理学的に許容される担体とを混合した医薬組成物として使用し得る。本発明の化合物を含有する医薬は、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠、バッカル錠等を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、放出制御製剤(例、速放性製剤、徐放性製剤、徐放性マイクロカプセル剤)、エアゾール剤、フィルム剤(例、口腔内崩壊フィルム、口腔粘膜貼付フィルム)、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、経皮吸収型製剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、貼付剤、坐剤(例、肛門坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等として、経口的または非経口的(例、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内、腹腔内、腫瘍内部、腫瘍の近位、病巣等)に安全に投与し得る。
本発明化合物の、本発明の医薬中の含有量は、医薬全体の約0.01重量%~約100重量%である。該投与量は、投与対象、投与ルート、疾患等により異なるが、例えば、糖尿病の患者(体重約60kg)に対し、経口剤として、1日当たり、有効成分(化合物(I))として約0.01mg/kg体重~約500mg/kg体重、好ましくは約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重、さらに好ましくは約1mg/kg体重~約30mg/kg体重を、1日1回~数回に分けて投与し得る。
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、医薬素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用い得る。
本発明の医薬組成物が徐放性製剤である場合の投与量は、化合物(I)の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、投与対象動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、サル、ヒト等の哺乳動物)、投与目的により種々異なるが、例えば、非経口投与により適用する場合には、1週間に約0.1から約100mgの化合物(I)が投与製剤から放出されるようにすればよい。
【0127】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0128】
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α-トコフェロール等が挙げられる。
【0129】
各種疾患の予防・治療に際し、本発明化合物は、他の薬剤と共に用い得る。以下、本発明化合物と他の薬物の併用時に使用する医薬を「本発明の併用剤」と称する。
【0130】
例えば、本化合物は、以下の薬剤(併用薬剤)と併用し得る。
(1)糖尿病治療剤
インスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌またはイーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤;インスリン亜鉛;プロタミンインスリン亜鉛;インスリンのフラグメントまたは誘導体(例、INS-1)、経口インスリン製剤)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは塩酸塩)、ロシグリタゾンまたはその塩(好ましくはマレイン酸塩)、メタグリダセン(Metaglidasen)、AMG-131、バラグリタゾン(Balaglitazone)、MBX-2044、リボグリタゾン(Rivoglitazone)、アレグリタザール(Aleglitazar)、チグリタザール(Chiglitazar)、ロベグリタゾン(Lobeglitazone)、PLX-204、PN-2034、GFT-505、THR-0921、WO2007/013694、WO2007/018314、WO2008/093639またはWO2008/099794記載の化合物)、α-グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート)、ビグアナイド剤(例、メトホルミンまたはその塩(好ましくは塩酸塩)、ブホルミンまたはその塩(例、塩酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩))、インスリン分泌促進剤[スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、グリピザイド、グリブゾール)、レパグリニド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物]、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(例、アログリプチン(Alogliptin) またはその塩(好ましくは安息香酸塩)、ヴィルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、サクサグリプチン(Saxagliptin)、テネリグリプチン(Teneligliptin)、リナグリプチン(Linagliptin)、アナグリプチン(Anagliptin)、メログリプチン(Melogliptin)、デュトグリプチン(Dutogliptin)、PF-00734200、ALS2-0426、TA-6666、TS-021、KRP-104、トレラグリプチン(Trelagliptin)またはその塩(好ましくはコハク酸塩))、β3アゴニスト(例、N-5984)、GPR40アゴニスト(例、ファシグリファム(fasiglifam)、WO2004/041266、WO2004/106276、WO2005/063729、WO2005/063725、WO2005/087710、WO2005/095338、WO2007/013689またはWO2008/001931記載の化合物)、GLP-1受容体アゴニスト[例、GLP-1、GLP-1MR剤、リラグルチド(Liraglutide)、エキセナチド(Exenatide)、AVE-0010、BIM-51077、Aib(8,35)hGLP-1(7,37)NH2、CJC-1131、Albiglutide]、セマグルチド(semaglutide)、アミリンアゴニスト(例、プラムリンチド)、ホスホチロシンホスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸ナトリウム)、糖新生阻害剤(例、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グルコース-6-ホスファターゼ阻害剤、グルカゴン拮抗剤、FBPase阻害薬)、SGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害剤(例、イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、AVE2268、TS-033、YM543、TA-7284、Remogliflozin、ASP1941)、SGLT1阻害薬、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、BVT-3498)、アジポネクチンまたはその作動薬、IKK阻害薬(例、AS-2868)、レプチン抵抗性改善薬、ソマトスタチン受容体作動薬、グルコキナーゼ活性化薬(例、Piragliatin、AZD1656、AZD6370、TTP-355、WO2006/112549、WO2007/028135、WO2008/047821、WO2008/050821、WO2008/136428またはWO2008/156757記載の化合物)、GIP(Glucose-dependent insulinotropic peptide)等。
【0131】
(2)糖尿病性合併症治療剤
アルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゾポルレスタット、フィダレスタット、CT-112、ラニレスタット(AS-3201)、リドレスタット)、神経栄養因子およびその増加薬(例、NGF、NT-3、BDNF、WO01/14372に記載のニューロトロフィン産生・分泌促進剤(例えば、4-(4-クロロフェニル)-2-(2-メチル-1-イミダゾリル)-5-[3-(2-メチルフェノキシ)プロピル]オキサゾール)、WO2004/039365記載の化合物)、神経再生促進薬(例、Y-128)、PKC阻害剤(例、ルボキシスタウリン メシレート(ruboxistaurin mesylate))、AGE阻害剤(例、ALT946、ピラトキサチン、N-フェナシルチアゾリウム ブロマイド(ALT766)、ALT-711、EXO-226、ピリドリン(Pyridorin)、ピリドキサミン)、GABA受容体作動薬(例、ギャバペンチン、プレギャバリン)、セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(例、デュロキセチン)、ナトリウムチャンネル阻害薬(例、ラコサミド)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン)、ソマトスタチン受容体作動薬(例、BIM23190)、アポトーシスシグナルレギュレーティングキナーゼ-1(ASK-1)阻害薬等。
【0132】
(3)心不全治療薬
(i)β受容体拮抗薬
カルベジロール、メトプロロール、アテノロール等。
(ii)利尿薬
ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、フロセミド、インダパミド、ベンドロフルアジド、シクロペンチアジド、ブメタニド、エタクリン酸等。
(iii)強心薬
ジゴキシン、ドブタミン等。
(iv)抗アルドステロン薬
スピロノラクトン、エプレレノン等。
(v)心拍数低下薬
イバブラジン等。
(vi)静注強心薬
h-ANP等。
(vii)その他
リラキシン等。
【0133】
(4)その他
(viii)Ca感受性増強薬
MCC-135等。
(ix)Caチャネル拮抗薬
ニフェジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、塩酸ロメリジン、ベシル酸アムロジピン等。
(x)抗血小板薬、抗凝固薬
ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン等。
(xi)HMG-CoA還元酵素阻害薬
アトロバスタチン、シンバスタチン等。
(xii)尿酸低下薬
プロベネシド、アロプリノール、フェブキソスタット等。
(xiii)アルファ遮断薬
ドキサゾシン等。
(xiv)経口吸着薬
クレメジン等。
(xv)高カリウム血症治療薬
カルチコール等。
(xvi)高リン血症治療薬
セベラマー、炭酸ランタン等。
(xvii)代謝アシドーシス改善薬
重炭酸ナトリウム等。
(xviii)活性型ビタミン
【0134】
併用に際しては、本発明化合物と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明化合物および併用薬物を、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
併用の投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明化合物と併用薬物とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)本発明化合物および併用薬物を同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明化合物および併用薬物を別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明化合物および併用薬物を別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明化合物および併用薬物を別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)本発明化合物および併用薬物を別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明化合物を投与した後の併用薬物の投与、またはその逆の順序での投与)等が挙げられる。
本発明の併用剤における本発明化合物および併用薬物との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
例えば、本発明の併用剤における本発明化合物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01~約100重量%、好ましくは約0.1~約50重量%、さらに好ましくは約0.5~約20重量%程度である。
【0135】
本発明の併用剤における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01~約100重量%、好ましくは約0.1~約50重量%、さらに好ましくは約0.5~約20重量%程度である。
本発明の併用剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1~約99.99重量%、好ましくは約10~約90重量%程度である。
また、本発明化合物および併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
【0136】
併用薬物は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。併用薬物としての1日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、感受性差、投与の時期、間隔、医薬製剤の性質、調剤、種類、有効成分の種類等によって異なり、特に限定されないが、薬物の量として通常、例えば、経口投与で哺乳動物1kg体重あたり約0.001~約2000mg、好ましくは約0.01~約500mg、さらに好ましくは、約0.1~約100mg程度であり、これを通常1日1~4回に分けて投与する。
本発明の併用剤を投与するに際しては、本発明化合物と併用薬物とを同時期に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は投与する有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、併用薬物を先に投与する場合、併用薬物を投与した後1分~3日以内、好ましくは10分~1日以内、より好ましくは15分~1時間以内に本発明化合物を投与する方法が挙げられる。本発明化合物を先に投与する場合、本発明化合物を投与した後、1分~1日以内、好ましくは10分~6時間以内、より好ましくは15分~1時間以内に併用薬物を投与する方法が挙げられる。
【実施例】
【0137】
本発明は、更に以下の実施例、試験例および製剤例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【0138】
実施例のカラムクロマトグラフィーにおける溶出は、特に言及しない限り、TLC(Thin Layer Chromatography,薄層クロマトグラフィー)による観察下に行った。TLC観察においては、TLCプレートとしてメルク(Merck)社製の60 F254を用い、展開溶媒として、カラムクロマトグラフィーで溶出溶媒として用いた溶媒を用いた。また、検出にはUV検出器を採用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいて、NHと記載した場合はアミノプロピルシラン結合シリカゲルを、Diolと記載した場合は3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)プロピルシラン結合シリカゲルを用いた。分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において、C18と記載した場合はオクタデシル結合シリカゲルを用いた。溶出溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。
【0139】
1H NMRの解析にはACD/SpecManager(商品名)ソフトウエアなどを用いた。水酸基やアミノ基などのプロトンピークが非常に緩やかなピークについては記載していないことがある。
MSは、LC/MSにより測定した。イオン化法としては、ESI法、または、APCI法を用いた。データは実測値(found)を示す。通常、分子イオンピークが観測されるがフラグメントイオンとして観測されることがある。塩の場合は、通常、フリー体の分子イオンピークもしくはフラグメントイオンピークが観測される。
旋光度([α]D)における試料濃度(c)の単位はg/100mLである。
元素分析値(Anal.)は計算値(Calcd)と実測値(Found)として示す。
【0140】
実施例の粉末X線回折によるピークは、線源としてCuKα線を用い、Ultima IV(Rigaku Corporation,Japan)を使って室温において測定されるピークを意味する。測定条件は以下のとおりである。
Electric pressure/Electric current:40 kV/50 mA
Scan speed:6 degree/min
Scan range of 2 Theta:2-35 degree
実施例の粉末X線回折による結晶化度はHermans法により算出した。
実施例のX線結晶構造解析は、株式会社リガク製 XtaLAB P200 により回折データを測定した。直接法 (SIR2008(Burla, M. C.; Caliandro, R.; Camalli, M.; Carrozzini, B.; Cascarano, G. L.; De Caro, L.; Giacovazzo, C.; Polidori, G.; Siliqi, D.; Spagna, R. SIR2008: Program for the Solution of Crystal Structures from X-ray Data; CNR Institute of Crystallography: Bari, Italy, 2007.))で初期位相を求め、full-matrix 最小二乗法 (SHELXL-2014/7(Sheldrick, G.M. Acta Cryst. A 2008, 64, 112-122.))を用いて構造を精密化した。非水素原子に非等方性温度因子を、水素原子に等方性温度因子を与えた。
【0141】
以下の実施例においては下記の略号を使用する。
mp:融点
MS:マススペクトル
M:モル濃度
N:規定度
CDCl3:重クロロホルム
DMSO-d6:重ジメチルスルホキシド
CD3OD:重メタノール
1H NMR:プロトン核磁気共鳴
LC/MS:液体クロマトグラフ質量分析計
ESI:electrospray ionization、エレクトロスプレーイオン化
APCI:atomospheric pressure chemical ionization、大気圧化学イオン化
TFA:トリフルオロ酢酸
【0142】
実施例1
(1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0143】
A) ジメチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-3,5'-ジカルボキシラート
メチル 2-オキソインドリン-5-カルボキシラート(57.4 g)、カリウムtert-ブトキシド(1.68 g)とジメチルスルホキシド(300 ml)の混合物にアクリル酸メチル(81 ml)を40℃で1時間かけて加えた。その際、内部温度は60℃まで上昇した。反応混合物を窒素雰囲気下60℃で30分間かき混ぜた後、カリウムtert-ブトキシド(20.3 g)を10分間隔で4回(全量で81 g)を加えた。反応混合物を窒素雰囲気下60℃で1時間かき混ぜた後、10℃-15℃にて6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチル-ヘキサン(1:4)で洗浄し、標題化合物(72.0 g)を得た。
MS: [M-H]- 330.0.
【0144】
B) メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
ジメチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-3,5'-ジカルボキシラート(105 g)、水(5.71 ml)、塩化ナトリウム(18.5 g)とジメチルスルホキシド(400 ml)の混合物を150℃で5時間かき混ぜた後、反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで洗浄し、標題化合物(55.2 g)を得た。
MS: [M-H]- 272.0.
【0145】
C) メチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(I)とメチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(II)
メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート (3.05 g)のテトラヒドロフラン(75 ml)溶液に水素化ホウ素ナトリウム(0.844 g)を0℃で加えた後、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物に室温で1規定塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(I)(1.35 g)と標題化合物(II)(110 mg)を得た。
標題化合物(I)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.60-1.82 (6H, m), 1.87-2.03 (2H, m), 3.71-3.78 (1H, m), 3.81 (3H, s), 4.59 (1H, d, J = 4.0 Hz), 6.92 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.82-7.86 (2H, m), 10.65 (1H, d, J = 1.0 Hz).; MS: [M-H]- 274.0.
標題化合物(II)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.56-1.73 (6H, m), 1.98-2.02 (2H, m), 3.68 (1H, brs), 3.83 (3H, s), 4.83 (1H, d, J = 4.1 Hz), 6.97 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.88 (1H, dd, J = 8.2, 1.3 Hz), 8.02 (1H, d, J = 1.0 Hz), 10.78 (1H, brs).; MS: [M-H]- 274.0.
【0146】
D) メチル (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、2.87 ml)、トリフェニルホスフィン(1.43 g)とテトラヒドロフラン(20 ml)の混合物に2,4-ジクロロフェノール(0.711 g)を室温で加えた後、メチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(1.00 g)のテトラヒドロフラン(20 ml)溶液を加えた。室温で終夜撹拌後、混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(1.37 g)を粗精製物として得た。
MS: [M-H]- 418.1.
【0147】
E) (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(1.37 g)、テトラヒドロフラン(15 ml)とメタノール(15 ml)の混合物に2規定水酸化ナトリウム水溶液(16.3 ml)を室温で加えた。混合物を50℃で終夜かき混ぜた後、減圧下濃縮した。残留物を水で希釈し、水層を酢酸エチルで洗浄後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製した後、得られた固体をメタノール/水から結晶化し、標題化合物(320 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.69 (2H, dd, J = 11.1, 6.2 Hz), 1.82-1.98 (4H, m), 2.23-2.37 (2H, m), 4.85 (1H, brs), 6.94 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.37 (2H, s),7.62 (1H, s), 7.85 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.89 (1H, s), 10.72 (1H, s), 12.68 (1H, brs).
【0148】
実施例3
(1r,4r)-2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0149】
A) メチル (1r,4r)-2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.287 ml)、トリフェニルホスフィン(143 mg)とテトラヒドロフラン(4 ml)の混合物に2,4,6-トリクロロフェノール(86 mg)とメチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(100 mg)を室温で加え、同じ温度で60時間かき混ぜた。反応混合物に室温で水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(260 mg)を粗精製物として得た。
MS: [M-H]- 452.0.
【0150】
B) (1r,4r)-2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-2'-オキソ-4-(2,4,6-トリクロロフェノキシ)-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(165 mg)、テトラヒドロフラン(2 ml)とメタノール(2 ml)の混合物に2規定水酸化ナトリウム水溶液(1.81 ml)を室温で加え、50℃で終夜かき混ぜた。反応混合物を減圧下濃縮した後、残留物に水と酢酸エチルを加えた。水層を分離し、6規定塩酸で中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣を加熱したエタノールで洗浄し、標題化合物(115 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.67-1.89 (4H, m), 1.99-2.09 (2H, m), 2.19 (2H, d, J = 5.6 Hz), 4.53-4.63 (1H, m), 6.91-7.00 (1H, m), 7.73 (2H, s), 7.88 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.06 (1H, s), 10.79 (1H, s), 12.68 (1H, brs).
【0151】
実施例4
(1r,4r)-4-((3,5-ジフルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0152】
A) メチル (1r,4r)-4-((3,5-ジフルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(1.50 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(50 ml)の混合物に水素化ナトリウム(60%油性、436 mg)を0℃で加え、同じ温度で30分間かき混ぜた後、2,3,5-トリフルオロピリジン(1.09 g)を加えた。室温で10時間かき混ぜた後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、標題化合物(500 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.77-1.95 (6H, m), 2.33-2.34 (2H, m), 3.85 (3H, s), 5.28-5.27 (1H, m), 6.99-7.01 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.90-7.94 (2H, m), 7.98-8.02 (1H, m), 8.09 (1H, s), 10.86 (1H, s).
【0153】
B) (1r,4r)-4-((3,5-ジフルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-((3,5-ジフルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(500 mg)、テトラヒドロフラン(10 ml)と水(10 ml)の混合物に水酸化リチウム一水和物(216 mg)を室温で加え、窒素雰囲気下50℃で3時間かき混ぜた後、反応混合物を濃縮した。残渣に3規定塩酸を加えてpH=3.0になるように調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、標題化合物(260 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD)δ1.90-1.97 (4H, m), 2.10-2.12 (2H, m), 2.41-2.43 (2H, m), 5.35-5.41 (1H, m), 7.00-7.02 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.55-7.59 (1H, m), 7.92 (1H, s), 7.93-8.01 (1H, m), 8.16 (1H, s).
【0154】
実施例9
(1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0155】
A) メチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート (26 g)とテトラヒドロフラン(300 ml)の混合物にボラン-テトラヒドロフラン錯体(1 mol/lテトラヒドロフラン溶液、95 ml)を0℃で加え、同じ温度で20分間かき混ぜた。反応混合物に0 ℃で水と1規定塩酸(8 ml)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(14.6 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.58-1.84 (6H, m), 1.86-2.06 (2H, m), 3.65-3.87 (4H, m), 4.60 (1H, d, J = 3.9 Hz), 6.92 (1H, dd, J = 8.6, 1.3 Hz), 7.73-7.90 (2H, m), 10.65 (1H, s).; MS: [M-H]-274.0.
【0156】
B) メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
水素化ナトリウム(60%油性、3.71 g)とテトラヒドロフラン(200 ml)の懸濁液にメチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート (8.50 g)を0℃で加え、同じ温度で30分間かき混ぜた後、3,5-ジクロロ-2-フルオロピリジン(6.15 g)を加えた。室温で 終夜かき混ぜた後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(11.9 g)を得た。
MS: [M+H]+ 421.1.
【0157】
C) (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(100 g)、メタノール(500 ml)とテトラヒドロフラン (500 ml)の混合物に2規定水酸化ナトリウム水溶液(475 ml)を加え、55℃で5時間かき混ぜた。反応混合物に室温で2規定塩酸(475 ml)を加え、15℃-25℃で1時間かき混ぜた。生じた析出物をろ過により集め、メタノール/水(1:1、200 ml)で洗浄し、白色固体を得た。得られた固体を80℃でジメチルスルホキシド(300 ml)に溶かし、ろ過により不溶物を取り除いた後、ジメチルスルホキシド(60 ml)を加えた。ろ液に50℃に保ちながらエタノール(630 ml)を加えた後、水(180 ml)を50℃-60℃で加えた。混合物を同じ温度で30分間かき混ぜた後、ゆっくりと室温まで冷却し、さらに氷冷しかき混ぜた。混合物をろ過し、ろ過物をエタノール-水(1:1、200 ml)で洗浄し、標題化合物(80 g)を得た。標題化合物の結晶データを表4に、単結晶X線構造解析により得られた分子構造を
図1に示す。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d
6) δ1.78-2.09 (6H, m), 2.18-2.35 (2H, m), 5.28-5.40 (1H, m), 6.92 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.84 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.95 (1H, s), 8.15-8.26 (2H, m), 10.72 (1H, s), 12.64 (1H, brs).; MS: [M-H]
- 404.9.; Anal. Calcd for C
19H
16N
2O
4Cl
2:C, 56.04; H, 3.96; N, 6.88. Found: C, 55.67; H, 4.12; N, 7.10.; mp 302 ℃.
【0158】
【0159】
実施例14
(1r,4r)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(1.00 g)とテトラヒドロフラン(60 ml)の混合物に水素化ナトリウム(60%油性、436 mg)を0℃で加え、同じ温度で30分間かき混ぜた後、3,5-ジクロロ-2-フルオロピリジン(723 mg)を加えた。室温で8時間かき混ぜた後、N,N-ジメチルホルムアミド(60 ml)を加え、さらに室温で12時間かき混ぜた。反応混合物を氷冷した水に注いだ後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、白色固体を得た。得られた固体、テトラヒドロフラン(20 ml)と水(20 ml)の混合物に水酸化リチウム一水和物(130 mg)を室温で加え、50℃で3時間かき混ぜた後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に3規定塩酸を加えてpH=3.0に調整した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、標題化合物(1.00 g)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOD) δ1.84-1.85(2H, m), 2.03-2.11 (4H, m), 2.46-2.48 (2H, m), 5.43-5.44(1H, m), 7.00-7.02 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.92-7.93(1H, d, J = 2.4 Hz), 7.98-8.00 (1H, t, J = 8.0, 1.2 Hz), 8.09-8.11 (1H, t, J = 8.0, 1.2 Hz), 8.12 (1H, s).
【0160】
実施例15
(1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0161】
A) メチル (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液, 0.315 ml)、トリフェニルホスフィン(157 mg)とテトラヒドロフラン(2 ml)の混合物に2,4-ジクロロフェノール(78 mg)を室温で加えた後、メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(110 mg)のテトラヒドロフラン(2 ml)溶液を加え、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(116 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.81-1.99 (6H, m), 2.21 (2H, dd, J = 12.9, 7.0 Hz), 3.82 (3H, s), 4.70-4.76 (1H, m), 6.95 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.27-7.34 (1H, m), 7.34-7.45 (1H, m), 7.58 (1H, d, J = 2.6 Hz), 7.83-7.92 (2H, m), 10.76 (1H, brs).; MS: [M-H]- 418.1.
【0162】
B) (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(115 mg)、2規定水酸化ナトリウム水溶液(1.35 ml)、テトラヒドロフラン(2 ml)とメタノール(2 ml)の混合物を50℃で終夜かき混ぜた後、減圧下濃縮し、残渣に水と酢酸エチルを加えた。水層を分離し、6規定塩酸で中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をジイソプロピルエーテルで洗浄し、標題化合物(25.0 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.78-1.98 (6H, m), 2.20 (2H, d, J = 9.5 Hz), 4.66-4.83 (1H, m), 6.92 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.25-7.33 (1H, m), 7.34-7.43 (1H,m), 7.59 (1H, d, J = 2.4 Hz), 7.84 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.90 (1H, s), 10.70 (1H, s), 12.64 (1H, brs).
【0163】
実施例16
(1r,4r)-4-((3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0164】
A) 3-クロロ-5-シクロプロピル-2-メトキシピリジン
シクロプロピルボロン酸(1.26 g)、5-ブロモ-3-クロロ-2-メトキシピリジン(2.50 g)、トルエン(30 ml)と水(3 ml)の混合物に酢酸パラジウム(II)(126 mg)、トリシクロヘキシルホスフィン(315 mg)とリン酸三カリウム(7.16 g)を加え、窒素雰囲気下100℃で終夜かき混ぜた。混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(1.20 g)を得た。
MS: [M+H]+ 184.3.
【0165】
B) 3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-オール
3-クロロ-5-シクロプロピル-2-メトキシピリジン(2.10 g)のN,N-ジメチルホルムアミド(30 ml)溶液にピリジン塩酸塩(13.2 g)を加え、100℃で2時間かき混ぜた。反応混合物に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をへキサン-トルエン(1:1)混合溶液で洗浄し、標題化合物(820 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 170.3.
【0166】
C) メチル 5'-クロロ-2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-3-カルボキシラート
5-クロロ-1,3-ジヒドロ-2H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン(23.0 g)、カリウムtert-ブトキシド(784 mg)とジメチルスルホキシド(200 ml)の混合物に、窒素雰囲気下、アクリル酸メチル(37.2 ml)を40℃で30分間かけて滴下して加えた後、反応混合物をゆっくりと60℃まで加熱した。同じ温度で1時間かき混ぜた後、カリウムtert-ブトキシド(46.1 g)を10分間隔で6回に分けて加え、30分間かき混ぜた。反応混合物を室温に冷却した後、酢酸エチルで希釈し、氷水を加えた。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(13.7 g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.84-1.94 (2H, m), 2.006-2.10 (1H, m), 2.34-2.72 (3H, m), 3.68 (3H, s), 7.27-7.32 (2H, m), 10.79 (1H, s), 12.15 (1H, s).
【0167】
D) 5'-クロロ-4H-スピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2',4(1'H)-ジオン
メチル 5'-クロロ-2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-3-カルボキシラート(13.7 g)、ジメチルスルホキシド(140 ml)と水(11 ml)の混合物に塩化リチウム(9.45 g)を加え、130℃で24時間かき混ぜた。反応混合物に室温で氷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(10.2 g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ2.03-2.09 (4H, m), 2.54-2.60 (2H, m), 2.69-2.76 (2H, m), 7.32-7.37 (2H, m), 10.86 (1H, s).
【0168】
E) メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
5'-クロロ-4H-スピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2',4(1'H)-ジオン(5.50 g)、メタノール(50 ml)とN,N-ジメチルホルムアミド(50 ml)の混合物に[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(1.61 g)とトリエチルアミン(6.12 ml)を加え、一酸化炭素雰囲気下(0.5 Mpa)100℃で6時間かき混ぜた。反応混合物をセライトろ過した後、ろ液を減圧下半分の容量まで濃縮した。濃縮物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (3.76 g)を得た。
MS: [M+H]+ 275.1.
【0169】
F) メチル 5'-ブロモ-2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-3-カルボキシラート
5-ブロモ-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2(3H)-オン(2 g)とジメチルスルホキシド(20 ml)の混合物に、カリウムtert-ブトキシド(0.068 g)を室温で加え、同じ温度で10分間かき混ぜた後、アクリル酸メチル(2.64 ml)を40℃-45℃で1時間かけて滴下して加えた。反応混合物を同じ温度で2時間かき混ぜた後、カリウムtert-ブトキシド(3.16 g)を45℃で30分間かけて加え、70℃で2時間かき混ぜた。反応混合物に氷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、標題化合物(1 g)を得た。
MS: [M+H]+ 353.2.
【0170】
G) 5'-ブロモ-4H-スピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2',4(1'H)-ジオン
メチル 5'-ブロモ-2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-3-カルボキシラート(24 g)とジメチルスルホキシド(72 ml)の混合物に水酸化ナトリウム(2.73 g)の水(72 ml)溶液を室温で加え、130℃で2時間かき混ぜた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をn-ペンタンで洗浄し、標題化合物(14 g)を得た。
MS: [M+H]+ 295.1.
【0171】
H) メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
5'-ブロモ-4H-スピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-2',4(1'H)-ジオン(0.50 g)、メタノール(1 ml)とN,N-ジメチルホルムアミド(2.5 ml)の混合物にトリエチルアミン(0.47 ml)を室温で加え、アルゴンで脱気操作を行った後、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(0.139 g)、酢酸パラジウム(II)(0.038 g)を加えた。混合物を一酸化炭素ガス雰囲気下(300 psi)100℃で24時間かき混ぜた後、セライトろ過を行い、ろ液を減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (0.235 g)を得た。
MS: [M+H]+ 275.2.
【0172】
I) メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(I)とメチル(1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(II)
メチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(1.71 g)とテトラヒドロフラン(50 ml)の混合物に水素化ホウ素ナトリウム(0.472 g)を0℃で加え、同じ温度で30分間かき混ぜた。反応混合物に0℃で1規定塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(カラム:CHIRALPAKOJ(MC001)、移動相:へキサン/エタノール(70/30、v/v))で精製し、標題化合物(I)(1.05 g)と標題化合物(II)(0.57 g)を得た。
標題化合物(I)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.50-1.67 (2H, m), 1.74-2.06 (6H, m), 3.72 (1H, d, J = 3.3 Hz), 3.85 (3H, s), 4.67 (1H, d, J = 2.8 Hz), 7.28 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.94 (1H, d, J = 8.2 Hz), 10.92 (1H, brs).
標題化合物(II)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.52-1.71 (2H, m), 1.75-2.04 (6H, m), 3.75 (1H, d, J = 2.8 Hz), 3.84 (3H, s), 4.59 (1H, d, J = 3.7 Hz), 7.26 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.92 (1H, d, J = 8.2 Hz), 10.87 (1H, brs).
【0173】
J) メチル (1r,4r)-4-((3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
トリフェニルホスフィン(285 mg)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.571 ml)、3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-オール(184 mg)とトルエン(5 ml)の混合物にメチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(150 mg)を室温で加えた後、同じ温度で16時間かき混ぜた。反応混合物に室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(38.4 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 428.1.
【0174】
K) (1r,4r)-4-((3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-((3-クロロ-5-シクロプロピルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(38.4 mg)、2規定水酸化ナトリウム水溶液(0.135 ml)、テトラヒドロフラン(3 ml)とメタノール(1 ml)の混合物を50℃で5時間かき混ぜた後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣に水と酢酸エチルを加え、水層を分離した後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(L-Column 2 ODS, 移動相:水/アセトニトリル(0.1%TFA含有系))で精製し、標題化合物(18.0 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ0.56-0.69 (2H, m), 0.87-1.02 (2H, m), 1.75-1.95 (3H, m), 2.15-2.48 (6H, m), 5.39 (1H, d, J = 2.9 Hz), 7.35 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.40 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.89 (1H, d, J = 2.0 Hz), 8.17 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.84 (1H, brs).
【0175】
実施例29
(1r,4r)-4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.031 ml)、3-クロロ-2-ヒドロキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン(31.6 mg)とトルエン(0.5 ml)の混合物にメチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソスピロ[シクロへキサン-1,3’-インドリン]-5'-カルボキシラート(0.028 g)のトルエン(0.5 ml)懸濁液を80℃で加えた後、同じ温度で3時間かき混ぜた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水で反応を停止した後、有機層を分離し、60℃で空気を吹きつけて濃縮した。残渣をHPLC(Actus Triart C18, 移動相:水/アセトニトリル(10 mM 重炭酸アンモニウム系))で精製した。得られた画分を60℃で空気を吹きつけて濃縮した。残渣、テトラヒドロフラン(0.3 ml)とメタノール(0.3 ml)の混合物に2規定水酸化ナトリウム(0.50 ml)を加え、50℃で3時間かき混ぜた。混合物を6規定の塩酸で中和した後、HPLC(Actus Triart C18, 移動相:水/アセトニトリル(10mM 重炭酸アンモニウム系))で精製し、標題化合物(12.1 mg)を得た。
【0176】
実施例81
(1s,4s)-4-((5-クロロ-3-メチルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0177】
A) メチル (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-メチルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
トリフェニルホスフィン(285 mg)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.571 ml)とトルエン(5 ml)の混合物に5-クロロ-3-メチルピリジン-2-オール(156 mg)を室温で加えた後、メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(150 mg)を加え、同じ温度で16時間かき混ぜた。混合物に室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(289 mg)を粗精製物として得た。
MS: [M+H]+ 402.1.
【0178】
B) (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-メチルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-メチルピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(289 mg)、2規定水酸化ナトリウム水溶液(3.60 ml)、テトラヒドロフラン(4 ml)とメタノール(4 ml)の混合物を50℃で1時間かき混ぜた後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣に水と酢酸エチルを加え、水層を分離した後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(L-Column 2 ODS, 移動相:水/アセトニトリル(0.1% TFA含有系))で精製し、標題化合物(36.9 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.69 (2H, brs), 2.04 (4H, brs), 2.23 (3H, brs), 2.36 (2H, brs), 5.32 (1H, brs), 7.31 (1H, brs), 7.71 (1H, brs), 7.87-8.19 (2H, m), 10.96 (1H, brs), 12.73 (1H, brs).
【0179】
実施例83
(1s,4s)-4-(4-クロロ-2-メトキシフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.612 ml)、トリフェニルホスフィン(305 mg)とテトラヒドロフラン(10 ml)の混合物に4-クロロ-2-メトキシフェノール(184 mg)とメチル(1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(160 mg)を室温で加えた後、同じ温度で16時間かき混ぜた。混合物に室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製した後、得られた固体をジイソプロピルエーテル―酢酸エチルで洗浄し、白色固体を得た。得られた固体、2規定水酸化ナトリウム(3.46 ml)、テトラヒドロフラン(4 ml)とメタノール(4 ml)の混合物を50℃で3時間かき混ぜた後、減圧下濃縮した。残渣に水と酢酸エチルを加え、水層を分離した後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(L-Column 2 ODS, 移動相:水/アセトニトリル(0.1% TFA含有系))で精製し、標題化合物(22.5 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.69-1.98 (6H, m), 2.07-2.30 (2H, m), 3.80 (3H, s), 4.39-4.72 (1H, m), 6.86-6.96 (2H, m), 7.00-7.13 (2H, m), 7.83 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.88 (1H, s), 10.68 (1H, s), 12.62 (1H, brs).
【0180】
実施例87
(1s,4s)-4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
【0181】
A) メチル (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート
水素化ナトリウム(60%油性、65.4 mg)とテトラヒドロフラン(5 ml)の懸濁液にメチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(150 mg)を0℃で加え、同じ温度で30分間かき混ぜた後、5-クロロ-2,3-ジフルオロピリジン(98 mg)を加えた。室温で終夜かき混ぜた後、混合物に0℃で飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(189 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 405.1.
【0182】
B) (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-((5-クロロ-3-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-インドール]-5'-カルボキシラート(189 mg)、2規定水酸化ナトリウム水溶液(2.33 ml)、テトラヒドロフラン(4 ml)とメタノール(4 ml)の混合物を50℃で3時間かき混ぜた後、減圧下濃縮し、残渣に水と酢酸エチルを加えた。水層を分離し、6規定塩酸で中和した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた固体をジエチルエーテル-へキサンで洗浄し、標題化合物(101 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.71-2.09 (6H, m), 2.18-2.37 (2H, m), 5.24-5.44 (1H, m), 6.92 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.84 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.94 (1H, s), 8.03 (1H, dd, J = 10.1, 2.0 Hz), 8.09 (1H, d, J = 2.0 Hz), 10.70 (1H, s), 12.61 (1H, brs).
【0183】
実施例97
(1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0184】
A) メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
リチウムトリ-sec-ブチルボロヒドリド(1.02Mテトラヒドロフラン溶液、7.15 ml)とテトラヒドロフラン(20 ml)の混合物にメチル 2',4-ジオキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(1.0 g)のテトラヒドロフラン(20 ml)溶液を-60℃--70℃で加えた。反応混合物を-70℃で1時間かき混ぜた後、-70℃で飽和塩化アンモニウム水溶液と飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をエタノール-ジエチルエーテルで洗浄し、標題化合物(740 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.49-1.72 (2H, m), 1.73-2.09 (6H, m), 3.64-3.77 (1H, m), 3.86 (3H, s), 4.67 (1H, d, J = 2.8 Hz), 7.22-7.34 (1H, m), 7.87-7.99 (1H, m), 10.45-11.30 (1H, m).; MS: [M+H]+277.3.
【0185】
B) 1'-tert-ブチル5'-メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-1',5'(2'H)-ジカルボキシラート
二炭酸ジ-tert-ブチル(9.66 g)、炭酸水素ナトリウム(4.96 g)、メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(8.15 g)とテトラヒドロフラン(300 ml)の混合物を室温で24時間かき混ぜた後、テトラヒドロフラン(200 ml)を加えて、さらに16時間かき混ぜた。反応混合物を減圧下濃縮した後、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をへキサンで洗浄し、標題化合物 (10.2 g)を得た。
MS: [M+H]+ 377.3.
【0186】
C) 1'-tert-ブチル5'-メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-1',5'(2'H)-ジカルボキシラート
アゾジカルボン酸ジエチル(5.49 ml)のテトラヒドロフラン(10 ml)溶液を1'-tert-ブチル 5'-メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-1',5'(2'H)-ジカルボキシラート(8.70 g)、3,5-ジクロロピリジン-2-オール(5.69 g)、トリフェニルホスフィン(9.09 g)のテトラヒドロフラン(150 ml)懸濁液に0℃で加えた後、室温で4時間かき混ぜた。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製した後、得られた固体をへキサンで洗浄し、標題化合物(7.80 g)を得た。
MS: [M+H]+ 522.2.
【0187】
D) メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
1'-tert-ブチル 5'-メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-1',5'(2'H)-ジカルボキシラート(10.3 g)と10%塩酸メタノール溶液(500 ml)の混合物を50℃で16時間かき混ぜた後、減圧下濃縮した。残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル-テトラヒドロフランで抽出した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をへキサンで洗浄し、標題化合物(8.26 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.61-1.84 (2H, m), 1.94-2.21 (4H, m), 2.25-2.40 (2H, m), 3.86 (3H, s), 5.27-5.44 (1H, m), 7.31 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.90-8.01 (1H, m), 8.17-8.20 (1H, m), 8.21-8.29 (1H, m), 10.91-11.06 (1H, m).
【0188】
E) (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(14.8 g)、1規定水酸化ナトリウム水溶液(150 ml)、メタノール(150 ml)とテトラヒドロフラン(150 ml)の混合物を60℃で5時間かき混ぜた後、1規定塩酸(150 ml)と水を加え、室温で1時間かき混ぜた。生じた析出物をろ過により集めた後、得られた固体をエタノール/水から結晶化し、標題化合物(12.7 g)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.61-1.82 (2H, m), 1.94-2.20 (4H, m), 2.27-2.46 (2H, m), 5.35 (1H, d, J = 3.2 Hz), 7.31 (1H, s), 7.95 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.17-8.20 (1H, m), 8.21-8.25 (1H, m), 10.68-11.32 (1H, m), 12.31-13.10 (1H, m).; MS: [M-H]- 405.9.; Anal. Calcd for C18H15Cl2N3O4, C; 52.96. H; 3.70, N; 10.29. Found. C; 52.97, H; 3.62, N; 10.31.; mp 282-283℃.
【0189】
実施例98
(1r,4r)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0190】
A) メチル (1r,4r)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.65 g)、トリフェニルホスフィン(2.14 g)、3,5-ジクロロピリジン-2-オール(908 mg)、メチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(901 mg)のテトラヒドロフラン(10 ml)溶液を45℃で48時間かき混ぜた。反応混合物を減圧下濃縮した後、残渣にメタノール(5 ml)を加えた。生じた析出物をろ過により集め、標題化合物(470 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 422.1.
【0191】
B) (1r,4r)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-((3,5-ジクロロピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(300 mg)の水(5 ml)/テトラヒドロフラン(5 ml)溶液に水酸化リチウム一水和物(149 mg)を室温で加えた後、同じ温度で24時間かき混ぜた。混合物を1規定塩酸でpH=4になるように調整し、生じた析出物をろ過により集めた。得られた析出物をHPLC(Boston Green ODS, 移動相:水(0.225% ギ酸含有)/アセトニトリル)で精製し、標題化合物(146 mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ1.70-1.79 (2H, m), 1.79-2.00 (2H, m), 2.10-2.21 (2H, m), 2.21-2.45 (2H, m), 5.15-5.25 (1H, m), 7.30 (1H, d, J = 8.0 Hz), 7.95 (1H, d, J = 8.0 Hz), 8.19 (1H, d, J = 2.4 Hz), 8.24 (1H, d, J= 2.4 Hz), 10.99 (1H, s), 12.83 (1H, brs).
【0192】
実施例101
(1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0193】
A) メチル (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
メチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(40 mg)と2,4-ジクロロフェノール(28.3 mg)のテトラヒドロフラン(5 ml)溶液にトリフェニルホスフィン(45.6 mg)とアゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.114 ml)を加え、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物 (21 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 421.1.
【0194】
B) (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1s,4s)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(21 mg)、メタノール(2 ml)とテトラヒドロフラン(2 ml)の混合物に1規定水酸化ナトリウム水溶液(1 ml)を加え、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物を1規定塩酸で中和し、生じた白色固体をろ過により集めた後、エタノール-水で洗浄し、標題化合物(19 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.70 (2H, d, J = 5.3 Hz), 1.96-2.14 (4H, m), 2.30 (2H, d, J = 17.6 Hz), 4.84 (1H, brs), 7.27 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.36 (2H, s), 7.59 (1H, s), 7.92 (1H, d, J = 8.1 Hz), 10.92 (1H, s), 12.80 (1H, brs).
【0195】
実施例102
(1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
【0196】
A) メチル (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート
メチル (1s,4s)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(40 mg)、2,4-ジクロロフェノール(28.3 mg)とテトラヒドロフラン(5 ml)の混合物にアゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.152 ml)とトリフェニルホスフィン(57.0 mg)を加え、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、標題化合物(40 mg)を得た。
MS: [M+H]+ 421.1.
【0197】
B) (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
メチル (1r,4r)-4-(2,4-ジクロロフェノキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(21 mg)、テトラヒドロフラン(1 ml)とメタノール(1 ml)の混合物に1規定水酸化ナトリウム水溶液(0.5 ml)を加え、室温で終夜かき混ぜた。反応混合物を1規定塩酸で中和し、生じた白色固体をろ過により集めた後、水-エタノールで洗浄し、標題化合物(20 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.66-1.97 (4H, m), 2.14 (2H, brs), 2.21-2.37 (2H, m), 4.64 (1H, brs), 7.29 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.36 (2H, s), 7.58 (1H, s), 7.94 (1H, d, J = 8.3 Hz), 10.95 (1H, s), 12.76 (1H, brs).
【0198】
実施例115
(1s,4s)-4-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)オキシ)-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボン酸
トリフェニルホスフィン(285 mg)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.9 mol/lトルエン溶液、0.571 ml)とトルエン(5 ml)の混合物に室温で3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-オール(214 mg)とメチル (1r,4r)-4-ヒドロキシ-2'-オキソ-1',2'-ジヒドロスピロ[シクロヘキサン-1,3'-ピロロ[3,2-b]ピリジン]-5'-カルボキシラート(150 mg)を加え、同じ温度で16時間かき混ぜた。反応混合物に室温で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、淡黄色油状物を得た。得られた油状物、2規定水酸化ナトリウム水溶液(4.01 ml)、テトラヒドロフラン(4 ml)とメタノール(4 ml)の混合物を50℃で3時間かき混ぜた後、反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣に水と酢酸エチルを加え、水層を分離した後、6規定塩酸で中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を分離し、水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(L-Column 2 ODS, 移動相:水/アセトニトリル(0.1% TFA含有系))で精製し、標題化合物 (30.6 mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ1.61-1.90 (2H, m), 1.92-2.22 (4H, m), 2.25-2.47 (2H, m), 5.50 (1H, brs), 7.31 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.95 (1H, d, J = 8.2 Hz), 8.41 (1H, s), 8.58 (1H, s), 10.97 (1H, s), 12.73 (1H, brs).
【0199】
実施例化合物を以下の表5に示す。表中のMSは実測値を示す。上記の実施例に示した方法またはそれらに準じた方法に従って、以下の表中の実施例2、5~8、10~13、17~28、30~80、82、84~86、88~96、99、100、103~114 の化合物を製造した。
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
試験例1
IP6K 酵素阻害アッセイ
方法
ヒトIP6K1ならびにヒト IP6K2 酵素は、ヒト IP6K1 (1-441)遺伝子またはヒト IP6K2 (1-426) 遺伝子をSf-9昆虫細胞に形質導入し、GSTアフィニティカラムによって精製し、調製した。ヒトIP6K3 酵素は、ヒト IP6K3 (1-410)遺伝子をBL21 (DE3) 大腸菌に形質導入し、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アフィニティカラムによって精製し、調製した。ラットIP6K3ならびにマウス IP6K3 酵素は、ラット IP6K3 (1-401)遺伝子またはマウス IP6K3 (1-396) 遺伝子をFreeStyleTM293 細胞に形質導入し、GSTアフィニティカラムによって精製し、調製した。酵素は-70℃で保存した上で使用した。被検化合物のIP6K 酵素阻害活性は ADP-GloTM Kinase Assay (Promega社製) を用い以下の実験法で測定した。最初にアッセイバッファー (20 mM HEPES (pH 7.5)、6 mM MgCl2、0.01% Tween-20、1 mM DTT) で希釈した被検化合物を384ウェルプレートに2μLずつ添加した。次に、ATP・IP6基質混合溶液 (ヒト IP6K1、IP6K2、IP6K3: ATP・IP6 = 135μM・45μM、ラット IP6K3: ATP・IP6 = 300μM・4.5μM, マウス IP6K3: ATP・IP6 = 150μM・15μM)を2μLずつ添加した。そして、アッセイバッファーで希釈した IP6K 酵素溶液を2μLずつ添加し、酵素反応を開始した。室温にて所定時間 (ラット IP6K3 のみ 120 分、 それ以外は 60 分)インキュベーションした。室温でインキュベーション後、Promega 社プロトコールに従い調製した ADP-Glo 溶液を384ウェルプレートに3μLずつ添加し、室温にて30分間反応させた。その後、Kinase-Detection 溶液を384ウェルプレートに6μLずつ添加し、室温にて60分間反応させた。反応後、プレートリーダーEnvision (PerkinElmer社製) にて発光強度を測定した。各化合物の阻害活性は、酵素なしのウェルの発光強度を100 %阻害とする相対活性値として算出した。その結果を表6に示す。
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
試験例2
ラットにおける組織IP7低下効果
方法
20週齢の雄性Zucker fattyラット(武田ラビックスより入手)にvehicle (0.5%メチルセルロース)、化合物97(実施例97の化合物)を1、3、10 mg/kgで経口投与した後、6および24時間後の肝臓、骨格筋(ひらめ筋)、脂肪(副睾丸脂肪)中のIP7レベルを測定した。
IP7測定方法
抽出1
凍結保存した組織について、組織100 mgあたり1.0 mLの1N 水酸化ナトリウム/0.2 M エチレンジアミン四酢酸水溶液を加え、ジルコニアビーズにて4 ℃条件下で粉砕し、氷上に1時間静置した。粉砕液0.4 mLあたり0.1 mLの25% 酢酸を加えて混合した後、遠心した(15000 rpm、5分、4 ℃)。その後、上清を限外濾過にかけた (13000 rpm、5分、4 ℃; microcon YM-3 membrane centrifugal filter unit (Millipore))。通過画分を回収し、等量の1.5% 酢酸/1.5% オクチルアミン水溶液を加えVortexにて攪拌した後、0.05 mL量をLC/MS/MSにインジェクションした。
抽出2
凍結保存した組織について、組織100 mgあたり0.3 mLの3.6% 過塩素酸を加え、ジルコニアビーズにて4 ℃条件下で粉砕した。その後、添加した3.6% 過塩素酸0.3 mLあたり0.1 mLの30% 塩化カリウム水溶液を加えて混合した後、遠心した(15000 rpm、5分、4 ℃)。その後、上清を限外濾過にかけた (13000 rpm、5分、4 ℃; microcon YM-3 membrane centrifugal filter unit (Millipore))。通過画分を回収し、等量の1.5% 酢酸/1.5% オクチルアミン水溶液を加えVortexにて攪拌した後、0.01mL量をLC/MS/MSにインジェクションした。
抽出1および抽出2の手法で除タンパク処理したサンプルは、Nexera UHPLC sytem(島津製作所)とQTRAP(登録商標) 5500 mass spectrometer system (SCIEX)とを組み合わせたLC/MS/MSシステムで測定した。使用したカラムはTriat PEEKカラム(30×2.1 mm、3mm、GLサイエンス)、溶媒Aは0.1% アンモニア/0.01%オクチルアミン/10 mM エチレンジアミン四酢酸水溶液、溶媒Bは0.01% アンモニア/0.002%オクチルアミン/メタノール溶液を用いた。流速を毎分0.7 mL、カラム温度を50度とし、溶媒Aに対する溶媒Bの比率を以下のように設定してイノシトールポリリン酸のクロマトグラフィー上での分離を行った。サンプルを注入後0-0.5分は2%のアイソクラティック、0.5-2分は2%から50%へのグラジエント、2-5分は50%から90%へのグラジエント、5-6分は90%のアイソクラティック、6-8分は2%のアイソクラティックで行った。溶出液は質量分析にてネガティブイオンモードでイオン化し、表7にあるMRM条件にて測定対象分子のイオン強度を計測した。機器の設定条件は、イオンスプレー電圧は4500V、ターボプローブ温度は400度、ヒートガスは毎分40L、カーテンガスは窒素を用い毎分12L、multiplierは2100V、declustering potential は-80V、collision cell exit potentialは -11Vである。
【0230】
【0231】
測定で得られたマスクロマトグラムはMultiQuant ver 3.0(SCIEX)で面積値を計算した。
結果
結果を
図2に示す。化合物97は、肝臓、筋肉および脂肪における用量依存的かつ持続的なIP7レベルの低下を示した。
*p<0.025 vs vehicle-treated rat by one-tailed Williams' test
#p<0.025 vs vehicle-treated rat by one-tailed Shirley Williams test
【0232】
試験例3
糖尿病ラットにおける非絶食高血糖低下効果
方法
糖化ヘモグロビン、体重および非絶食血糖を均一にした12週齢の雄性Zucker fattyラット(n=6、正常対照としてZucker leanラット (n=4)、 日本チャールス・リバー株式会社より入手)にvehicle (0.5%メチルセルロース)、化合物97を3または10 mg/kg、metforminを150 mg/kgで経口投与した後24時間までの血糖値を測定した。
結果
結果を
図3および
図4に示す。化合物97は非絶食下の高血糖に対し持続的な低下効果を示し、化合物97 10 mg/kg投与群では有意な血糖低下作用(24時間までのglucose AUCの低下)が確認された。
Mean±SD、n=6(ZF)および4(ZL)
ZF: Zucker fatty
ZL: Zucker lean
Compd 97: 化合物97
Met: Metformin
#p<0.025 vs vehicle-treated ZF rat by Shirley Williams test
【0233】
試験例4
耐糖能異常ラットにおける耐糖能改善作用と組織IP7の低下
方法
糖化ヘモグロビンおよび体重を均一にした17週齢の雄性Zucker fattyラット(n=6, 武田ラビックスより入手)にvehicle (0.5%メチルセルロース)、または化合物9(実施例9の化合物)を0.3、3、および30 mg/kgで経口投与し16時間絶食した。その後、絶食血糖を測定した後、経口よりグルコースを負荷し(2 g/kg)、120分までの血糖値を測定した。120分の採血後、即座に組織(ひらめ筋および肝臓)を採取し組織中IP7含量を測定した。
結果
結果を
図5~
図9に示す。耐糖能異常ラットにおいて、化合物9の投与は3 mg/kgから絶食血糖を低下させ、0.3 mg/kgより耐糖能を改善した(0-120分までのglucose AUC)。この時の耐糖能改善効果 (0-120分までのglucose AUC)は筋肉(ひらめ筋)および肝臓中のIP7低下とよく相関していた。
Mean±SD、n=6.
*p<0.025 vs vehicle-treated ZF rat by one-tailed Williams' test
#p<0.025 vs vehicle-treated ZF rat by one-tailed Shirley Williams test
【0234】
試験例5
心不全モデルマウスにおける寿命延長効果
方法
拡張型心筋症モデルである雄性CSQ TGマウス(6週齢)にVehicle (0.5%メチルセルロース液)、化合物97(10 mg/kg)、化合物9(10 mg/kg)を1日1回経口投与した(n=21)。正常対照として同腹より得たnon-Tgマウス(n=5)を用いた。
結果
結果を
図10に示す。Kaplan-Meier survival curveより、CSQ TGマウスの寿命はいずれの化合物も有意な寿命延長効果を示した。
Compd 9: 化合物9,Compd 97: 化合物97
n = 21(CSQ TGマウス)、n = 5(non-TGマウス)
化合物9, log-rank χ2 = 5.7672 *P < 0.05;
化合物97, log-rank χ2 = 5.9304 *P < 0.05。
【0235】
製剤例 1(カプセルの製造)
1)実施例1の化合物 30 mg
2)微粉末セルロース 10 mg
3)乳糖 19 mg
4)ステアリン酸マグネシウム 1 mg
計 60 mg
1)、2)、3)および4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填する。
【0236】
製剤例 2(錠剤の製造)
1)実施例1の化合物 30 g
2)乳糖 50 g
3)トウモロコシデンプン 15 g
4)カルボキシメチルセルロースカルシウム 44 g
5)ステアリン酸マグネシウム 1 g
1000錠 計 140 g
1)、2)、3)の全量および30gの4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの4)および1gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり実施例1の化合物30mgを含有する錠剤1000錠を得る。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明の化合物は、IP6K阻害作用を有し、心不全、糖尿病等の疾患の予防または治療剤として有用であると期待される。
【0238】
本出願は、日本で出願された特願2017-066579(出願日2017年3月30日)を基礎としておりその内容は本明細書に全て包含されるものである。