(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】計時器用の文字盤
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
G04B19/06 A
G04B19/06 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020115398
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2020-07-03
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ジャンルノー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-66378(JP,U)
【文献】特開昭62-59887(JP,A)
【文献】特開2002-214365(JP,A)
【文献】特開2000-158897(JP,A)
【文献】特開平6-102365(JP,A)
【文献】米国特許第4884256(US,A)
【文献】実開昭49-126062(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用文字盤(1)を製造する方法であって、前記
計時器用文字盤はレリーフ部を有し、前記レリーフ部は、ベース(3)上に並置された様々に異なるレベルの基本ピース(10,11;20,21;30,31;41,42,43,44;50,51,52)からなるアセンブリとして製造され、これにより前記レリーフ部は、前記基本ピースの上面(4,5)によって形成され、当該方法は、
a)機械加工により半完成の基本ピースを製造するステップと、
b)前記上面に規定の美的外観を与えるために、前記ステップa)の後に前記基本ピースの前記上面を処理するステップと、
c)前記処理後の基本ピースを規定のジオメトリの輪郭に沿ってカットするステップと、
d)前記ステップc)の後に得られた前記基本ピースを、エッジ同士を突き合わせて前記ベース(3)上に並置することにより組み付けるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップb)は、装飾を形成するために、前記
上面を研磨、エナメル加工、または構造化するステップであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レリーフ部は、前記
ベース(3)の表面全体に及ぶことを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記レリーフ部は、水平基準面から測定して第1のレベル(A1)に位置する平坦な多角形の中央面(4)と、前記第1のレベルに略等しいレベル(A1’)から前記
中央面(4)の外側の第2のレベル(A2)まで及ぶ複数の
傾斜面(5)と、によって規定され、前記第2のレベルは前記第1のレベルよりも低く、前記
傾斜面の数は前記多角形の中央面(4)の辺の数に対応する、ことと、
前記基本ピースの1つは、その上面が前記多角形の中央面(4)を形成するとともに前記多角形の面(4)の辺の数に対応する数の側面を有する
第1のピース(10)であり、
前記
第1のピース(10)は、前記ベース(3)の中央に取り付けられ、
前記傾斜面(5)の各々は、前記
第1のピース(10)の前記側面に並置される
前記傾斜面を有する第2のピース(11)を前記ベース(3)上に組み付けることにより形成される、こと、を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記レリーフ部は、水平基準面から測定して第1のレベル(A1)に位置する平坦な多角形の中央面(4)と、前記第1のレベルに略等しいレベル(A1’)から前記
中央面(4)の外側の第2のレベル(A2)まで及ぶ複数の
傾斜面(5)と、によって規定され、前記第2のレベルは前記第1のレベルよりも低く、前記傾斜面の数は前記多角形の面(4)の辺の数に対応しており、
前記レリーフ部は、2つの基本ピースによって形成され、そのうち、
第1の基本ピースは、その上面が前記多角形の中央面(4)を形成するとともに前記多角形の面(4)の辺の数に対応する数の外側面を有する
第1のピース(10)であり、
第2の基本ピースは、その上面が前記複数の傾斜面(5)によって形成されるとともに前記多角形の面(4)の辺の数に対応する数の内側面を有するリング(31)である、ことと、
前記
第1のピース(10)は、前記ベース(3)の中央に取り付けられ、
前記傾斜面(5)は、前記第1の
ピース(10)に並置される前記
リング(31)を前記ベース(3)上に組み付けることにより形成される、こと、を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記レリーフ部は、水平基準面から測定して第1のレベル(A1)に位置する平坦な円形の中央面
(4’)と、前記第1のレベルに略等しいレベル(A1’)から前記
中央面(4’)の外側の第2のレベル(A2)まで及ぶ円錐面と、によって規定され、前記第2のレベルは前記第1のレベルよりも低く、前記レリーフ部は、2つの基本ピースによって形成され、そのうち、
第1の基本ピースは、その上面が前記円形の中央面を形成する円柱体(20)であり、
第2の基本ピースは、その上面が前記円錐面によって形成されるリング(21)である、ことと、
前記円柱体(20)は、前記ベース(3)の中央に取り付けられ、
前記円錐面は、前記第1の基本ピース(20)に並置される前記第2の基本ピース(21)を前記ベース(3)上に組み付けることにより形成される、こと、を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記レリーフ部は、前記
ベース(3)の一部に位置する局所レリーフ部(50,51)である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
計時器用の文字盤(1)であって、当該文字盤はレリーフ部を有し、前記レリーフ部は、ベース(3)上に並置された様々に異なるレベルの基本ピース(10,11;20,21;30,31;41,42,43,44;50,51,52)からなるアセンブリとして形成されており、これにより前記レリーフ部は、前記基本ピースの上面(4,5)によって形成され、さらに、前記基本ピースはエッジ同士を突き合わせて並置されている、文字盤。
【請求項9】
前記レリーフ部は、
前記ベース(3)の表面全体に及ぶ、請求項8に記載の文字盤。
【請求項10】
前記レリーフ部は、
前記ベース(3)の一部に位置する局所レリーフ部(50,51)である、請求項8に記載の文字盤。
【請求項11】
当該文字盤は、直線エッジを有するレリーフ部を含み、前記エッジのそれぞれは、2つの隣接する基本ピースの頂線間の接合部によって規定される、請求項8~10のいずれか一項に記載の文字盤。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の文字盤を備える、計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に腕時計用である計時器用の文字盤に関し、より具体的には、可視面にレリーフ部を含み、研磨および/またはエナメル加工された、この種の文字盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば平坦な円形部の外側に円錐部または錐体部で構成されたレリーフ部を有する文字盤を製造することは、よく知られている。この種の文字盤は、一般的に、3次元形状を得るために石またはセラミックのような文字盤の母材に機械加工を施すことと、それに続く研磨および/またはエナメル加工工程によって形成される。よく直面する1つの問題は、これらの研磨およびエナメル加工工程によって、機械加工後にレリーフ面の間のエッジが丸みを帯びることにより、時計の美的効果が損なわれることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題を克服する、計時器用文字盤を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のため、本発明は、計時器用文字盤を製造する方法を提案し、その文字盤はレリーフ部を有し、レリーフ部は、ベース上に並置された様々に異なるレベルのピースからなるアセンブリとして製造され、これによりレリーフ部は、それらのピースの上面によって形成される。この方法は、
a)機械加工により半完成ピースを製造するステップと、
b)それらの上面に規定の美的外観を与えるために、ステップa)の後にピースの上面を処理するステップと、
c)処理後のピースを規定のジオメトリの輪郭に沿ってカットするステップと、
d)ステップc)の後に、得られたピースを、ベース上に並置することにより組み付けるステップと、を含む。
【0005】
ベースまたは基板上にピースを組み付ける前に、機械加工およびカットされたピースに対して、特に研磨および/またはエナメル加工工程によって、表面処理ステップを適用することにより、本発明は、文字盤を形成する様々なピース間の接合部において直線エッジを有するレリーフ部を形成することを可能とする。
【0006】
本発明は、さらに、好ましくは時計用である計時器用の文字盤に関し、この文字盤は、ベース上に並置された様々に異なるレベルのピースからなるアセンブリとして形成されたレリーフ部を備え、これによりレリーフ部は、それらのピースの上面によって形成される。
【0007】
本発明の他の特徴および効果は、添付の図面を参照して非限定的な例として提示される、好ましい実施形態についての以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、現在知られているような、レリーフ部を有する時計用文字盤を示している。
【
図2】
図2は、本発明の方法により形成される文字盤の構成ピースを示している。
【
図3】
図3a~3cは、本発明の方法による文字盤組み立てステップを示している。
【
図4】
図4は、本発明の方法により形成される文字盤の他の例を示している。
【
図5】
図5は、
図3cの文字盤を製造するための代替の実施形態を示している。
【
図6】
図6は、異なるレベルを有するベースを備える、本発明の方法により形成される文字盤を示している。
【
図7】
図7は、ネガティブレリーフ部を有する、本発明の方法により形成される文字盤を示している。
【
図8】
図8は、局所レリーフ部を有する、本発明の方法により形成される文字盤を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
現状技術で知られているような文字盤1の例示を
図1に示している。この文字盤は、例えば文字盤の脚(図示せず)によって、時計ムーブメントの上に配置されるためのベースまたは基板3に対して例えば接着することにより取り付けられた、平坦な下面2を有するワンピース部品9を備える。上面はレリーフ部を有し、レリーフ部は、この場合はベース3の平面である水平基準面から測定して第1のレベルA1に位置する平坦な中央部4と、第1のレベルA1から文字盤1の外側の第2のレベルA2に傾斜した12個の面5と、を含み、第2のレベルA2は第1のレベルA1よりも低い。この文字盤を製造するための現在知られている方法は、例えば金属、石、またはセラミックで構成された円柱部品を機械加工することである。機械加工の後に、傾斜面5および中央面4を研磨する。研磨工程において、レリーフ部の面の間のエッジが丸みを帯びて不明確になり、文字盤の美観が損なわれる。部品9の材質によっては、この方法は、さらに、レリーフ部の上面をエナメル加工する工程を含むことがあり、この工程は、特に文字盤が金属で構成されている場合に適用される。この場合も、エナメル加工工程は、エッジを丸める効果がある。
【0010】
本発明の方法により同じ文字盤を形成するためには、上面を有する半完成の基本ピースを形成するために、機械加工により、いくつかの別個のピースを最初に製造する。基本ピースの上面は、このような基本面に規定の美的外観を与えるために、処理される。これらの基本ピースの上面は、例えば、研磨および/または場合によってはエナメル加工される。これらの上面には、さらに、コート・ド・ジュネーブ、スティップル、サーキュラグレイン、サンドブラスト、サテン仕上げなどのような装飾を形成するために、構造化処理を施すこともできる。それらの上面の処理を経たら、基本ピースは、次に、規定のジオメトリの輪郭に沿ってカットされ、次に、好ましくはエッジ同士を突き合わせてベース3上に並置することにより組み付けられる。
【0011】
本発明の方法の一実現形態により形成される基本ピースのセットを、
図2に示している。これらの基本ピースのセットは、厚さA1および12個の直線側面を有する
第1のピース10と、さらに、
この第1のピース10の側面の幅に相当する幅の側面を有する12個の同一の
第2のピース11と、を含む。
これらの第2のピース11の上面は、厚さA1’とA2との間で傾斜している。厚さA1とA1’は等しいこともあり得るが、好ましくは、A1’はA1よりも、わずかに、例えば数十マイクロメートル、小さいか大きい。基本ピース10および11は、研削、レーザアブレーション、超音波援用機械加工、および/またはレーザ切断のような、それ自体が周知である機械加工技術を用いて製造することができる。次に、それらの上面に規定の美的外観を与えるために、バレル研磨、平盤研磨、または細粒砥石研磨のような周知の現状技術を用いて、この場合は研磨である表面処理を
上記第1、第2のピース10および11の上面4および5に施す。
【0012】
ピース10および11が金属またはセラミックで構成される場合には、それらのピースの上面は、全体的または部分的に、エナメル加工工程を交互に受けることができる。
【0013】
一実施形態によれば、基本ピース10および11を得るために、
図1に示す現状技術の方法で用いるワンピース部品9を、従来の方法による機械加工によって製造し、研磨し、そして、例えばレーザ切断によってカットする。
【0014】
その上面4および5が研磨および/またはエナメル加工されて得られた基本ピース10および11は、次に、
図3a~3cに示すように、それらを時計のベース3上に配置することにより、エッジ同士を突き合わせて組み付けられる。基本ピース10および11は、それ自体が周知の方法によって、好ましくは接着によって、またはピンなどによる機械的連結によって、またはそのような方法の組み合わせによって、ベース上に固定される。
【0015】
好ましくは、第1のピース10を最初に取り付けて、続いて、第2のピース11を、第1のピース10の側面および2つの隣接する第2のピース11の面に並置して取り付ける。研磨および/またはエナメル加工されたピース10および11は、隣接する基本ピースのすべての隣接界面で隙間のない接触が実現するように、厳しい寸法公差で形成される。従って、この方法により、直線エッジ12を有するレリーフ状に文字盤1を形成することが可能となり、それらのエッジ12のそれぞれは、2つの隣接する基本ピース10、11の頂線12a、12b間の接合部によって規定される。
【0016】
図4は、本発明の方法により製造される文字盤の他の例を示しており、この場合、レリーフ部は、2つの基本ピース、すなわち、厚さA1を有する円柱ピース20と、A1’とA2との間でレリーフ部を形成する円錐ピース21と、を組み付けることにより形成され、A2はA1’よりも小さい(A1とA1’との比は、
図2および3a~3cに示す実施形態について説明されたものと同じである)。2つのピース20と21は、別々に製造される。上面4’および5’を、研磨および/またはエナメル加工してから、最終的な形状にカットする。次に、ピース20および21を、ベース3上に組み付ける。
【0017】
図5は、12個の傾斜面を有する文字盤、すなわち、
図1~3に示すのと同じ文字盤であるが、
第1のピース10とリング31である2つのピース10および31を組み付けることにより形成される文字盤の例を示している。A1’とA2との間に12個の傾斜面5を有するリング31は、ワンピース部品として、好ましくは
図1に示す部品9をレーザカットすることにより形成される。次に、
第1のピース10および
リング31の上面4および5を研磨および/またはエナメル加工してから、ベース3上に組み付ける前に最終的な形状にカットする。
【0018】
一実施形態によれば、ベース3は、いくつかのレベルを有し、レリーフ部を規定するピースの厚さは、これらのレベルの高さを考慮に入れる。
図6は、本発明の方法により組み立てられた文字盤を示しており、これは、
図2および3a~3cの文字盤と同じ外観を有するが、平行6面体10はベース3の中央隆起部に取り付けられている。ベースの中央部のレベルは、ピース11が取り付けられるベースの外側部分33のレベルよりも高い。
【0019】
また、本発明の方法により、ネガティブレリーフ部を形成することも可能である。一例を
図7に示している。この文字盤は、ベース3上に取り付けられた4つのピース40~43を含み、これにより、文字盤の外側の厚さA1と、A1よりも小さい文字盤の中央の厚さA2と、の間にレリーフ部を形成している。
【0020】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。レリーフ部は、必ずしも文字盤の表面全体に及ぶものではない。本発明の方法により形成される局所レリーフ部の一例を、
図8に示している。レリーフ部は、円錐ピース51で囲まれた中央円柱ピース50を含み、これらのピースは、平坦な文字盤52に設けられた円筒孔53に組み込まれている。従って、レリーフ部の組み付けは、ピース50、51、および52を製造し、続いて、それらのピースを研磨および/またはエナメル加工し、形状にカットしてから、ピースをベース3上に組み付けることにより、実現する。
【符号の説明】
【0021】
1 文字盤
2 (ワンピース部品9の)下面
3 ベース(基板)
4 (ワンピース部品9の)中央部/(ピース10の)上面
4’ (ピース20の)上面
5 傾斜面/(ピース11の)上面/(リング31の)上面
5’ (ピース21の)上面
9 ワンピース部品
10 第1のピース(基本ピース)
11 第2のピース(基本ピース)
12 直線エッジ
12a (第1のピース10の)頂線
12b (第2のピース11の)頂線
20 円柱ピース
21 円錐ピース(リング)
31 リング(基本ピース)
32 (ベースの)中央隆起部
33 (ベースの)外側部分
40 (ネガティブレリーフ部の)ピース
41 (ネガティブレリーフ部の)ピース
42 (ネガティブレリーフ部の)ピース
43 (ネガティブレリーフ部の)ピース
50 (局所レリーフ部の)中央円柱ピース
51 (局所レリーフ部の)円錐ピース
52 平坦な文字盤(ピース)
53 円筒孔
A1 (中央部4の)第1のレベル/(第1のピース10の)厚さ/(円柱ピース20の)厚さ/(ピース40~43の)外側の厚さ
A1’ (第2のピース11の)内側の厚さ/(円錐ピース21の)内側の厚さ
A2 (傾斜面5の外側の)第2のレベル/(ピース11の)外側の厚さ/(円錐ピース21の)外側の厚さ/(ピース40~43の)中央の厚さ