(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】耐プラズマコーティング層を形成する方法、装置、部品及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220426BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220426BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/302 101G
H01L21/302 101M
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/31 D
C23C14/06 K
(21)【出願番号】P 2020199787
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】201911227763.9
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520473236
【氏名又は名称】アドバンスド マイクロ-ファブリケーション エクウィップメント インコーポレイテッド チャイナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ドゥアン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,グオ
(72)【発明者】
【氏名】シャン,スン
(72)【発明者】
【氏名】シンジェン,チェン
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143188(JP,A)
【文献】特開2003-095649(JP,A)
【文献】特表2019-515139(JP,A)
【文献】特開2019-183278(JP,A)
【文献】特開平07-228866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品上に耐プラズマコーティング層を形成するための装置であって、以下の特徴を含む:
真空チャンバ;
前記真空チャンバ内に位置する、第一コーティング材料源、第二コーティング材料源及び部品。前記第一コーティング材料源は、酸素原子及びイットリウム原子を含み、第二コーティング材料源は、イットリウムフッ化合物、アルミニウムオキシ化合物又はジルコニウムオキシ化合物のいずれかものを含む。前記部品は、第一コーティング材料源及び第二コーティング材料源に対向して配置される;
第一コーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起するための、第一励起装置;
第二コーティング材料源内の原子を励起するための、第二励起装置;
第一コーティング材料源内で励起されたイットリウム原子、酸素原子と、第二コーティング材料源内で励起された原子との間で衝突が発生し、化学反応が発生して部品上に堆積し、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を形成する。
【請求項2】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記第一コーティング材料源はY
2O
3、Y(OH)
3及び高温で分解された生成物がY
2O
3である化合物であることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマ性コーティング層を形成する装置であって、前記イットリウムフッ化合物は、YF
3、Y(CO
3)F又は高温で分解された生成物がYF
3となる化合物を含み、前記耐プラズマ性コーティング層に含まれるイットリウム系オキシフッ化物は、イットリウムオキシフッ化物であり、前記安定相のイットリウム系オキシフッ化物は、YOF、Y
5O
4F
7、Y
6O
5F
8、Y
7O
6F
9又はY
17O
14F
23の少なくとも1種を含む。
【請求項4】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記アルミニウムオキシ化合物は、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト又は擬ベーマイトを含み、前記耐プラズマコーティング層に含まれるイットリウム系多元素金属酸化物は、イットリウムアルミニウム酸化物であり、前記イットリウム-アルミニウム酸化物は、Y
3Al
5O
12、YAlO
3又はY
4Al
2O
9を含む。
【請求項5】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記ジルコニウムオキシ化合物がジルコニア又は水酸化ジルコニウムであり、前記耐プラズマコーティング層に含まれるイットリウム系多元素金属酸化物がイットリウム・ジルコニウム酸化物であり、前記イットリウム・ジルコニウム酸化物がZraY1-aO2(0.5<a<1)を含むことを特徴とする耐プラズマコーティング層形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記第二コーティング材料源は、アルミニウムオキシ化合物またはジルコニウムオキシ化合物であり、前記耐プラズマコーティング装置は以下のことをさらに含み:第三コーティング材料源であり、前記第三コーティング材料源はフッ素含有化合物、アルミニウムオキシ化合物またはジルコニウムオキシ化合物を含み、かつ前記第二コーティング材料の材料とは異なる;第三の励起装置であり、第三コーティング源内の原子を励起するために使われて、第一コーティング材料源から励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二コーティング材料源及び第三コーティング材料源から励起された原子とが化学反応して形成される耐プラズマ性コーティング層は、イットリウム系オキシフッ化合物又はイットリウム基複合金属酸化物であり、前記イットリウム系オキシフルオロ化合物は、イットリウムアルミニウムフルオロ酸化物またはイットリウムジルコニウムフルオロ酸化物を含み、前記イットリウム基複合金属酸化物は、イットリウムアルミニウムジルコニウム酸化物を含む。
【請求項7】
請求項6に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記第一励起装置、第二励起装置又は第三励起装置はプラズマボンバード装置であり、前記プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマは、アルゴンプラズマ及び酸素プラズマの少なくとも一つを含む。
【請求項8】
請求項6に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置であって、前記第一励起装置、第二励起装置、又は第三励起装置は、電子銃ヒーター、抵抗ヒーター、レーザーヒーター、RF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つである。
【請求項9】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成するための装置であって、前記耐プラズマ性コーティング層が、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物のみを含む。
【請求項10】
請求項1に記載の部品上に耐プラズマプラズマコーティング層を形成する装置であって、前記耐プラズマコーティング層がさらに金属酸化物及び/又は金属フッ化物を含む。
【請求項11】
部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、その特徴は、以下のことを含む:
請求項1に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置を提供すること;
第一励起装置を用いて第一コーティング材料源に第一励起プロセスを実施し、第一コーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させると同時に、第二励起装置を用いて第二コーティング材料源に第二励起プロセスを実施し、第二コーティング材料源内の原子を励起させること;
第一コーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二コーティング材料源内で励起された原子との衝突により化学反応が起こり、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層が部品上に堆積形成されること。
【請求項12】
請求項11に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記第一励起プロセス及び第二励起プロセスが、それぞれイオンスパッタリングプロセス及び高温蒸発プロセスのいずれかである。
【請求項13】
請求項12に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記第一励起プロセス及び/又は第二励起プロセスがイオンスパッタリングプロセスである場合には、第一励起装置及び/又は第二励起装置がプラズマボンバード装置であり、プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマがアルゴンプラズマ及び酸素プラズマの少なくとも一つを含む。
【請求項14】
請求項12に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記第一励起プロセス及び/又は前記第二励起プロセスが高温蒸発プロセスである場合、前記第一励起装置及び/又は前記第二励起装置は、電子銃ヒーター、抵抗線ヒーター、レーザーヒーター、RF誘導ヒーターの少なくとも一つである。
【請求項15】
請求項13に記載の部品上の耐プラズマコーティング層の形成方法であって、その特徴は、前記第一励起プロセスと第二励起プロセスはイオンスパッタリングプロセスであり;第一励起プロセスのパラメータは、プラズマがアルゴンイオンであり、衝撃エネルギーが5kW~20kWであり;第二励起プロセスのパラメータは、プラズマがアルゴンイオンであり、衝撃エネルギーが5kW~20kWである。
【請求項16】
請求項12に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記第一励起プロセス及び第二励起プロセスは、いずれも高温蒸発プロセスであり;前記第一励起プロセスのパラメータは:温度が2400℃より高い;第二励起プロセスのパラメータは:温度が1400℃より高い。
【請求項17】
請求項11に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記部品を加熱して、前記イットリウム原子、酸素原子及び金属原子間、又は前記イットリウム原子、酸素原子、金属原子及びフッ素原子間を衝突させて化学反応を起こし、前記部品上に安定相を形成するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を堆積させることをさらに含む。
【請求項18】
請求項17に記載の部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法であって、前記部品を加熱する温度範囲が25℃~500℃である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の分野に関し、特に、部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法、装置、部品及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチングプロセスは集積回路の分野で重要な役割を果たしている。プラズマエッチングチャンバ内の過酷な腐食環境下にある部品には、かなりの耐プラズマ腐食性が要求される。このため、ある特許では、プラズマエッチングチャンバ内の部品の表面を酸化イットリウム又はフッ化イットリウムの耐プラズマコーティング層でコーティングしてワークを保護することが提案されており、良好な耐プラズマ腐食効果が得られている。しかし半導体のハイエンド工程(10nm以下)の進歩に伴い、プラズマエッチング工程においてF/Oプラズマを使用する割合は絶えず向上し、プラズマエッチング性能は絶えず強化され、同時にプラズマと接触する部品は、1.より高い表面緻密性を有し、同時にCF4及び/又はO2プラズマ腐食に耐えることができ、しかも材料構造はできるだけ変化せず、チャンバエッチング環境の安定性を維持すること、2.より短い表面初期化時間、より長い耐用寿命により、チャンバのメンテナンスコストを削減することが要求される。
【0003】
このようなニーズに対応するために、酸化イットリウムとフッ化イットリウムの保護効果は限られていて、実際の需要をさらに満たすことができない場合には、CF4とO2プラズマ腐食に同時に耐性があり、耐用寿命が長く、表面緻密性が高く、チャンバエッチング環境の安定性を維持できる耐プラズマコーティング層材料をどのように提供するかが、プラズマエッチング性能をさらに向上させるための重要な発展方向となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明で解決される技術的課題は、耐プラズマコーティング層がプラズマによって腐食されるのを低減し、プラズマエッチング環境の安定性を向上させるために、部品上に耐プラズマコーティング層を形成する方法、部品上に耐プラズマコーティング層を形成する装置、部品及びプラズマ処理装置を提供することである。
【0005】
上述の技術的課題を解決するために、部品上に耐プラズマコーティング層を形成するための装置は真空チャンバであり、第一コーティング材料源、第二コーティング材料源及び部品が真空チャンバ内に位置する;第一コーティング材料源は酸素原子及びイットリウム原子を含み、第二コーティング材料源はイットリウムフッ化合物、アルミニウムオキシ化合物又はジルコニウムオキシ化合物のいずれかを含む;部品は第一コーティング材料源及び第二コーティング材料源に対向して配置される;第一励起装置は、第一コーティング材料源内のイットリウム原子と酸素原子を励起する;第二励起装置は、第二コーティング材料源内の原子を励起する。第一コーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二コーティング材料源内で励起された原子とが衝突し、化学反応を起こし、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を部品上に堆積して形成する。
【0006】
一実施形態では、第一コーティング材料源は、Y2O3、Y(OH)3および高温で分解生成物がY2O3である化合物である。
【0007】
一実施形態では、イットリウムフッ化合物は、YF3、Y(CO3)Fおよび高温で分解生成物がYF3である化合物であり、耐プラズマコーティング層が含む。イットリウム基オキシフッ化物はイットリウムオキシフッ化合物である;安定相のイットリウムオキシフッ化合物は、YOF、Y5O4F7、Y6O5F8、Y7O6F9又はY17O14F23の少なくとも1種を含む。
【0008】
一実施形態では、アルミニウムオキシ化合物は、アルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイトまたは擬ベーマイトを含み、耐プラズマコーティング層に含むイットリウム基複合金属酸化物はイットリウムアルミニウム酸化物であり、Y3Al5O12、YAlO3またはY4Al2O9を含む。
【0009】
一実施形態では、ジルコニウムオキシ化合物は、ジルコニアまたは水酸化ジルコニウムを含み、耐プラズマコーティング層に含むはイットリウム基複合金属酸化物がイットリウム酸化物であり、ZraY1-aO2(0.5<a<1)を含む。
【0010】
一実施形態では、第二コーティング材料源は、アルミニウムオキシ化合物またはジルコニウムオキシ化合物であり、耐プラズマコーティング層の装置は、第三コーティング材料源内のフッ素化合物、アルミニウムオキシ化合物またはジルコニウムオキシ化合物を含み、しかも第三コーティング材料源の材料は、第二コーティング材料の材料とは異なる;第三励起装置は第三コーティング材料源内の原子を励起するために使われて、第一コーティング材料源から励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二コーティング材料源及び第三コーティング材料源から励起された原子との化学反応により形成される耐プラズマコーティング層は、イットリウム系オキシフッ化合物又はイットリウム基複合金属酸化物であり、イットリウム系オキシフッ化合物は、イットリウムアルミニウムフルオロ酸化物またはイットリウムジルコニウムフッ酸化物を含み、イットリウム基複合金属酸化物は、イットリウムアルミニウムジルコニウム酸化物を含む。
【0011】
一実施形態では、第一励起装置、第二励起装置、または第三励起装置はプラズマボンバード装置であり、プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマはアルゴンイオンおよび酸素イオンのうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
一実施形態では、第一励起装置、第二励起装置、または第三励起装置は、電子銃ヒーター、抵抗ヒーター、レーザヒーター、RF(無線周波数)誘導ヒーターのうちの少なくとも一つである。
【0013】
一実施形態では、耐プラズマコーティング層は、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物のみを含む。
【0014】
一実施形態では、耐プラズマコーティング層は、金属酸化物および/または金属フッ化物をさらに含む。
【0015】
本発明は、部品上に耐プラズマコーティング層を形成するための方法を提供するために部品上に耐プラズマコーティング層を形成するための装置を提供することを含む;第一励起装置を用いて第一コーティング材料源に対して第一励起プロセスを行い、第一コーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させると同時に、第二励起装置を用いて第二コーティング材料源に対して第二励起プロセスを行い、第二コーティング材料源内の原子を励起させる;第一コーティング材料源によって励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二コーティング材料源によって励起された原子とが衝突して化学反応を起こし、安定相のイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を部品上に堆積形成する。
【0016】
一実施形態では、第一励起プロセスおよび第二励起プロセスは、それぞれイオンスパッタリングプロセスおよび高温蒸発プロセスのいずれかである。
【0017】
一実施形態では、第一励起プロセス及び/又は第二励起プロセスがイオンスパッタリングプロセスである場合には、第一励起装置及び/又は第二励起装置がプラズマボンバード装置であり、プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマがアルゴンイオン及び酸素イオンの少なくとも一つを含む。
【0018】
一実施形態では、第一励起プロセスおよび/または第二励起プロセスが高温蒸発プロセスである場合、第一励起装置および/または第二励起装置は、電子銃ヒーター、抵抗線ヒーター、レーザヒーター、およびRF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つである。
【0019】
一実施形態では、第一励起プロセスおよび第二励起プロセスは、いずれもイオンスパッタリングプロセスである;第一励起プロセスのパラメータは、プラズマがアルゴンイオンであり、衝撃エネルギーが5kW~20kWであること;第二励起プロセスのパラメータは、プラズマがアルゴンイオンであり、衝撃エネルギーが5kW~20kWである。
【0020】
一実施形態では、第一励起プロセスおよび第二励起プロセスは、いずれも高温蒸発プロセスである;第一励起プロセスのパラメータは、温度が2400℃より高い;第二励起プセスのパラメータは、温度が1400℃より高い。
【0021】
一実施形態では、更に部品を加熱して、イットリウム原子、酸素原子及び金属原子の間、又はイットリウム原子、酸素原子、金属原子及びフッ素原子の間を衝突させて化学反応を起こし、安定相を形成するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を部品上に堆積させることも含まれる。
【0022】
一実施形態では、部品を加熱する温度範囲は、25℃~500℃である。
【0023】
それに対応して、本発明はまた、部品本体に安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を有する部品を提供する。
【0024】
それに対応して、本発明はまた、部品を付けるプラズマ処理装置を提供する。プラズマ環境である反応キャビティと反応キャビティに耐プラズマコーティング層が配置される部品、この耐プラズマコーティング層が安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含み、耐プラズマコーティング層はプラズマ環境内に曝される。
【0025】
一実施形態では、プラズマ処理装置が誘導結合プラズマ処理装置である場合、その部品は、セラミックプレート、内側ブッシュ、ガスノズル、ガス分配プレート、気管フランジ、静電チャックアセンブリ、カバーリング、フォーカスリング、絶縁リングおよび基板保持フレームのうちの少なくとも一つを含む。
【0026】
一実施形態では、プラズマ処理装置が容量結合プラズマ処理装置である場合、その部品は、シャワーヘッド、上部接地リング、移動リング、ガス分配プレート、ガス緩衝プレート、静電チャックアセンブリ、下部接地リング、カバーリング、フォーカスリング、絶縁リング、および基板保持枠のうちの少なくとも一つを含む。
【0027】
先行技術と比較して、本発明の実施形態の技術方案は以下の有益な効果を有する:
本発明の技術方案により提供された部品に耐プラズマコーティング層を形成する方法においては、前記第一の励起装置を用いて第一のコーティング材料源に対して第一の励起プロセスを施すことにより、前記第一のコーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させると同時に、前記第二の励起装置を用いて第二のコーティング材料源に対して第二の励起プロセスを施すことにより、前記第二のコーティング源内の原子を励起させ、第一のコーティング材料源内で励起された前記イットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源で励起された原子との間で衝突が発生し、化学反応が起こり、部品に堆積し、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を形成する。部品が酸素及び/又はフッ素を含むプラズマ環境に曝露される際に、前記イットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物は、安定相構造を有するため、前記イットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物がプラズマ中の酸素及びフッ素の耐プラズマコーティング層表面への吸着、拡散及び更なる腐食を制止することができ、耐プラズマコーティング層が腐食される確率を低減するのに有利である一方、耐プラズマコーティング層がプラズマ環境中で飽和状態に達するまでの時間を短縮して、チャンバ内の酸素プラズマ及びフッ素プラズマ環境の安定性を維持するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、イオンスパッタリングプロセスを用いて部品に耐プラズマコーティング層を形成する装置の写真図である。
【
図2】
図2は、高温蒸発プロセスを用いて部品に耐プラズマコーティング層を形成する別の装置の写真図である。
【
図3】
図3は、部品に耐プラズマコーティング層を形成するための本発明の装置の写真図である。
【
図4】
図4は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明の別の装置の写真図である。
【
図5】
図5は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明の更に別の装置の写真図である。
【
図6】
図6は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明のプロセス流れ図である。
【
図7】
図7は、本発明により形成された耐プラズマコーティング層のX線回折図(XRD)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
背景技術の説明のように、酸化イットリウムとフッ化イットリウムは部品に対する保護効果が限られており、実際の需要を満たすことができず、特にCF
4とO
2プラズマに対する耐食性を両立することができない。このため、本発明は、プラズマ腐食に対応できる部品の耐プラズマコーティング層を提供することを目的とし、以下に、詳細な説明をする:
図1は、イオンスパッタリング技術を用いて部品に耐プラズマコーティング層を形成する装置の写真図である。
【0030】
図1を参照し、真空チャンバ100;前記真空チャンバ100にY
xO
yF
zターゲット101と部品102が置かれ、前記Y
xO
yF
zターゲット101と部品102と対向して配置される;真空チャンバ100内に置かれたプラズマボンバード装置103は、Y
xO
yF
zターゲット101をボンバードし、イットリウム原子、酸素原子およびフッ素原子を生成し、ボンバードされたイットリウム原子、酸素原子およびフッ素原子がY
xO
yF
zターゲット101の表面に堆積し、耐プラズマコーティング層11を形成する。
【0031】
上記装置内のプラズマボンバード装置103中のアルゴンプラズマを用いてYxOyFzターゲット101の表面をボンバード処理することにより、YxOyFzターゲット101中のイットリウム原子、酸素原子及びフッ素原子をボンバードさせ、ボンバードされたイットリウム原子、酸素原子及びフッ素原子はYxOyFzターゲット101の表面に堆積して耐プラズマコーティング層11を形成する。
【0032】
理論的には、耐プラズマコーティング層11の組成及び相(物質)は、YxOyFzターゲット101と一致しているはずですが、実際に発明者らは、励起の過程でYxOyFz(約1000oC)が分解してY2O3とYF3の二つの相(物質)を形成することを見出した。また、YF3(融点1387oC)の融点はY2O3(融点2410oC)よりもはるかに低いため、YF3中のイットリウム原子やフッ素原子が励起された時、Y2O3中のイットリウム原子や酸素原子が励起されていない。YxOyFzの一部が消耗された場合、当業者らは通常、形成された耐プラズマコーティング層11はYOFであると考えるであろうが、実際には、耐プラズマコーティング層11はYF3のみである可能性がある。耐プラズマコーティング層11がYF3耐プラズマコーティング層である部品をプラズマ環境に適用すると、YF3はプラズマ環境中の酸素を吸着しやすくなり、耐プラズマコーティング層の表面を飽和させるためには、長時間に渡って大量の酸素プラズマを消耗する必要があり、プラズマ処理装置のランニングコストが大幅に増加する。また、YF3はプラズマ環境中の酸素を吸着するため、プラズマ環境の安定性が悪くなる。
【0033】
図2は、高温蒸発プロセスを用いて部品に高温蒸発して耐プラズマコーティング層を形成する別の装置の写真図である。
【0034】
図2を参照し、真空チャンバ200;真空チャンバ200内に配置されたY
2O
3源201;真空チャンバ200内にフッ素原子を供給するフッ素源供給部204;Y
2O
3源201に対向して配置された部品202;真空チャンバ200内に配置された電子銃203は、Y
2O
3源201を加熱するために使用され、Y
2O
3源201中のイットリウム原子及び酸素原子を励起させ、励起されたイットリウム原子、酸素原子およびフッ素原子が部品202の表面に耐プラズマコーティング層21を形成する。
【0035】
上記装置を用いて、部品202の表面を高温蒸発させるプロセスで、発明者らは、イオン化されたF原子のエネルギーが低く、Y2O3原子、分子との衝突は化学反応を起こすには不十分であるため、前記耐プラズマコーティング層21は、実際に大部分がY2O3膜層であって、Y2O3膜層の表面に少量のフッ素原子(原子百分比8%程度)を物理的に吸着するだけであって、安定なYOF相(物質)を形成していないことを見出した。一方、耐プラズマコーティング層21を含む部品をプラズマ環境に適用すると、Y2O3膜層は吸着したフッ素プラズマに腐食されやすくなり、耐プラズマコーティング層の表面を飽和させるためには、長時間に渡って大量のフッ素含有プラズマを消耗する必要があり、プラズマ処理装置のランニングコストが大幅に増加する。また、Y2O3膜層はプラズマ環境中のフッ素プラズマを吸着し、プラズマ環境中のフッ素を変化させる、すなわち、プラズマ環境の安定性が悪くなる。
【0036】
以上のように、上述装置では、部品に安定相構造を有するフルオロイットリウム化合物を含む耐プラズマコーティング層を形成することができず、上記耐プラズマコーティング層をプラズマ環境に適用すると、いずれもプラズマ中の酸素やフッ素を吸着しやすいので、上述の耐プラズマコーティング層は、要求されているフッ素と酸素プラズマに対する耐食性、プラズマ処理装置中のプラズマ環境の安定運転時間の低減、エッチングチャンバ環境の安定性の向上を同時に満たすことができない。
【0037】
上述の技術課題を解決するために、本発明の技術方案は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する装置を提供するものであって、酸素原子及びイットリウム原子を含む第一のコーティング材料源と、金属原子と金属原子以外の酸素原子及びフッ素原子のいずれかを含む第二のコーティング材料源と、第一のコーティング材料源と第二のコーティング材料源と対向して配置される部品とを含む真空チャンバと、第一のコーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起するための第一の励起装置と、第二のコーティング材料源内の原子を励起するための第二の励起装置とを備えており、前記第一の塗料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二の塗料源内で励起された原子との間で衝突が発生し、化学反応が起こり、部品に安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を形成する。前記装置により形成された耐プラズマコーティング層をプラズマ環境に適用すると、耐プラズマコーティング層のプラズマによる腐食を低減するのに有利で、エッチングチャンバ環境の安定性を向上させる。
【0038】
本発明の上述の目的、特徴、及び有益な効果をより明確に理解するために、添付図面に合わせて、本発明の具体的な実施形態を以下に詳細な説明をする。
【0039】
図3は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明の装置の写真図である。
【0040】
図3を参照し、真空チャンバ300;第一のコーティング材料源301と第二のコーティング材料源302及び部品303が前記真空チャンバ300に配置されている;前記第一のコーティング材料源301は、酸素原子及びイットリウム原子を含む;前記第二のコーティング材料源302は、イットリウムフルオロ化合物、アルミニウムオキシ化合物、又はジルコニウムオキシ化合物のいずれかを含む;前記部品303は、第一の塗料源301及び第二の塗料源302に対向して配置されている;第一の励起装置304は、第一のコーティング材料源301内のイットリウム原子及び酸素原子を励起するために使用される;第二の励起装置305は、第二のコーティング材料源302内の原子を励起するために使用される;前記第一のコーティング材料源301によって励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源によって励起された原子との間で衝突が発生し、部品303の表面で化学反応が起こり、耐プラズマコーティング層31を形成し、前記耐プラズマコーティング層31には安定相のイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む。
【0041】
本実施の形態では、安定相のイットリウム基オキシフッ化物がイットリウムオキシフッ化物である場合、第一コーティング材料源301に酸素原子とイットリウム原子とを含み、第二コーティング材料源302がイットリウム-フルオロ化合物であること。理由としては、第一コーティング材料源301が酸素原子とイットリウム原子とを含む場合、第二コーティング材料源301の質量を大きくなり、前記第二コーティング材料源302がフッ素原子とイットリウム原子とを含む化合物である場合、汚染源を導入しない一方で、第二コーティング材料源302の質量が第一コーティング材料源302の質量と同等であることになり、第一コーティング材料源301中のイットリウム原子・酸素原子と、フッ素原子・イットリウム原子と衝突した場合、フッ素原子・イットリウム原子、及びイットリウム原子・酸素原子のいずれも跳ね返ってこないので、イットリウム原子・酸素原子と、フッ素原子・イットリウム原子との化学反応を促進し、安定相のオキシフルオロ化合物の形成を促進するためである。
【0042】
本実施形態では、第一のコーティング材料源301の材料はY2O3であって、第二のコーティング材料源302の材料はYF3である。
【0043】
他の実施形態では、第一コーティング材料源の材料は、Y(OH)3と、高温で分解生成物がY2O3である化合物とを含む;第二コーティング材料源は、Y(CO3)Fと、高温で分解生成物がYF3である化合物を含む。
【0044】
本実施形態では、第一励起装置304及び第二励起装置305は共にプラズマボンバード装置であって、前記プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマはアルゴンプラズマである。
【0045】
他の実施形態では、プラズマはアルゴンイオンと酸素イオンとの混合イオンまたは酸素イオンである。
【0046】
本実施の形態では、プラズマボンバード装置304は、第一のコーティング材料源301をボンバードする装置であって、前記第一のコーティング材料源301内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させ、前記プラズマボンバード装置305は、第二のコーティング材料源302をボンバードするための装置であって、前記第二のコーティング材料源302内のイットリウム原子及びフッ素原子を励起させ、励起された前記イットリウム原子、酸素原子及びフッ素原子の間で衝突が発生し、部品303の表面で化学反応が起こり、耐プラズマコーティング層31を形成し、前記耐プラズマコーティング層31には、安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物を含む。部品31が酸素及び/又はフッ素を含むプラズマ環境に曝露される際に、前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物は化学反応により形成されるので、イットリウムオキシフルオロ化合物は安定相構造を有して、イットリウム原子、酸素原子とフッ素原子の間は、フッ素原子或いは酸素原子を簡単に酸化イットリウム或いはフッ化イットリウムの表面に吸着させることではなくて、化学結合によって連結されているので、耐プラズマコーティング層はフッ素と酸素プラズマ環境に曝露されると、構造の安定性をより容易に維持でき、同時に、前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物中の酸素元素及びフッ素元素の濃度が比較的高い(YOFを例にすると、F及びOのモル原子百分比は33%からある)ため、安定相のイットリウムフルオロ化合物がプラズマ環境中の酸素と/フッ素プラズマへの吸着、拡散と更なる腐食を少なくなり、耐プラズマコーティング層を安定に維持する一方で、エッチング環境中のフッ素及び酸素プラズマを安定に維持することができ、プラズマ処理装置によるウェハエッチングの安定性を向上させるのに有利である。
【0047】
本実施形態では、安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物の材料は、YOF、Y5O4F7、Y6O5F8、Y7O6F9、またはY17O14F23のうちの少なくとも一つを含む。
【0048】
一実施形態において、耐プラズマコーティング層31は、安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物のみを含む。
【0049】
別の実施形態において、前記耐プラズマコーティング層31は、部品303の表面に配置されたイットリア層(前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物がイットリア層の表面に配置されている)と、前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物に配置されたイットリア層を更に含む。前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物の表面にはフッ化イットリウム層を有して、フッ化イットリウム層中のフッ素原子の含有量は、安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物中のフッ素原子の含有量よりも高いので、プラズマ環境の中に耐プラズマコーティング層31の表面へのフッ素の吸着、拡散及び更なる腐食を更に低減するのに有利であって、エッチング環境におけるF/O比がより高い工程、例えば高アスペクト比を有するメモリデバイスのプロセス工程に適用する。
【0050】
他の実施形態では、耐プラズマコーティング層は、部品の表面に配置されるフッ化イットリウム層と(前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物がフッ化イットリウム層の表面に配置される)、前記安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物の表面に配置される酸化イットリウム層とを含む。
【0051】
プラズマ環境中のフッ素プラズマが多い場合、前記耐プラズマコーティング層の最外層はフッ化イットリウムである;プラズマ環境中の酸素プラズマが多い場合、前記耐プラズマコーティング層の最外層は酸化イットリウムである。
【0052】
他の実施形態では、第二のコーティング材料源はオキシアルミニウム化合物である場合、形成された耐プラズマコーティング層にはイットリウム-アルミニウム酸化物である安定相のイットリウム基複合金属酸化物を含む;又は、第二のコーティング材料源はオキシジルコニウム化合物である場合、形成された耐プラズマコーティング層には、イットリウムジルコニウム酸化物である安定相のイットリウム基複合金属酸化物を含む。
【0053】
図4は部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明の別の装置の写真図である。
【0054】
本実施の形態では、第一の励起装置400は抵抗ヒーターである;第二の励起装置305は生成されたプラズマがアルゴンイオンであるプラズマボンバード装置である。
【0055】
他の実施形態では、第一の励起装置400は、電子銃ヒーター、レーザヒーター、およびRF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つ、または、抵抗ヒーターと電子銃ヒーター、レーザヒーター、およびRF誘導ヒーターのうちの一つまたは複数との組み合わせであって、前記第二の励起装置はプラズマボンバード装置である。
【0056】
他の実施形態では、第一の励起装置はプラズマボンバード装置であって、第二の励起装置は、電子銃ヒーター、抵抗線ヒーター、レーザヒーター、及びRF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つである。
【0057】
本実施形態では、前記プラズマは、アルゴンイオンと酸素イオンとの混合物、または酸素イオンである。
【0058】
本実施形態では、前記第一のコーティング材料源301はイットリアであって、前記第二のコーティング材料源302はアルミニウムオキシ化合物であって、且つアルミニウムオキシ化合物がアルミナである。前記抵抗ヒーター401は、第一のコーティング材料源301を加熱し、第一のコーティング材料源301内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させるために使用される;プラズマボンバード装置305は、第二のコーティング材料源302をボンバード処理し、前記第二のコーティング材料源302内のアルミニウム原子及び酸素原子を励起させ、励起されたイットリウム原子、酸素原子及びアルミニウム原子の間で衝突が発生し、部品303の表面で化学反応が起こり、耐プラズマコーティング層31を形成し、前記耐プラズマコーティング31にはイットリウム・アルミニウム酸化物であるイットリウム基複合金属酸化物を含む。部品31が酸素及び/又はフッ素を含むプラズマ環境に曝露される際に、イットリウム・アルミニウム酸化物の構造が安定しているので、イットリウム酸化物はプラズマ中の酸素及び/又はフッ素を吸着しにくくなり、プラズマ環境が更に安定になるので、プラズマによるウェハエッチングの安定性を向上させるのに有利である。
【0059】
他の実施形態では、前記アルミニウムオキシ化合物は、水酸化アルミニウム、ベーマイトまたは擬ベーマイトを含む。
【0060】
他の実施形態では、第二のコーティング材料源はイットリウムフルオロ化合物である場合、部品表面に形成された耐プラズマコーティング層はイットリウム系オキシフッ化物であって、前記イットリウム基オキシフッ化物はイットリウムフルオロ化合物である;または、第二のコーティング材料源の材料はオキシアルミニウム化合物またはオキシジルコニウム化合物である場合、部品表面に形成された耐プラズマ性コーティングはイットリウム基複合金属酸化物であって、前記イットリウム基複合金属酸化物はイットリウムジルコニウム酸化物である。
【0061】
図5は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明の更に別の装置である。
【0062】
本実施の形態では、前記第一のコーティング材料源301は酸化イットリウムであって、前記第二のコーティング材料源302はオキシアルミニウム化合物またはオキシジルコニウム化合物であって、前記耐プラズマコーティング層装置は、フッ素含有化合物、オキシアルミニウム化合物またはオキシジルコニウム化合物を含む且つ第二のコーティング材料とは異なる材料を有する第三のコーティング材料源600と、第三のコーティング材料源600内の原子を励起するための第三の励起装置502とを更に備えており、第一のコーティング材料源301で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源302及び第三のコーティング材料源600で励起された原子との間で化学反応が起こり、イットリウムアルミニウムフッ素酸化物又はイットリウムジルコニウムフッ素酸化物を含むイットリウム基オキシフッ化物や、イットリウムアルミニウムジルコニウム酸化物を含むイットリウム基複合金属酸化物を形成する。
【0063】
第一の励起装置500、第二の励起装置501、および第三の励起装置502は、いずれも抵抗ヒーターである。
【0064】
他の実施形態では、前記第一の励起装置、第二の励起装置、および第三の励起装置は、電子銃ヒーター、レーザヒーター、及びRF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つであってもよいし、又は、抵抗ヒーターと電子銃ヒーター、レーザヒーター、及びRF誘導ヒーターのうちの一つまたは複数との組み合わせであってもよい。
【0065】
本実施形態では、抵抗ヒーター500は、第一のコーティング材料源301を加熱し、第一のコーティング材料源301内のイットリウム原子及び酸素原子を励起するために使用される;前記抵抗ヒーター501は、第二の塗料源302を加熱するために使用され、第二のコーティング材料源302内の原子を励起させ、前記抵抗ヒーター502は、第三の塗料源600を加熱するために使用され、前記第三のコーティング材料源600内の原子を励起させ、第一のコーティング材料源301内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源302及び第三のコーティング材料源600で励起された原子との間で衝突が発生し、部品303の表面に化学反応が起こり、耐プラズマコーティング31を形成し、前記耐プラズマコーティング層31には安定相のイットリウム基オキシフッ化物またはイットリウム基複合金属酸化物を含む。部品31が酸素及び/又はフッ素を含むプラズマ環境に曝露される際に、イットリウム系オキシフッ化物又はイットリウム系多価金属酸化物の構造が比較的安定であるため、イットリウム基オキシフッ化物またはイットリウム基複合金属酸化物はプラズマ中の酸素及び/又はフッ素を吸着しにくくなり、更なる腐食しにくくなり、チャンバ内のプラズマ環境が安定化するまでの時間を短縮することができ、エッチングチャンバ内のプラズマ環境の安定性を向上させるのに有利である。
【0066】
図6は、部品に耐プラズマコーティング層を形成する本発明のプロセス流れ図である。
【0067】
図6を参照し、ステップS1:前記部品に耐プラズマコーティングを形成する装置を提供する;ステップS2:前記第一の励起装置を用いて第一のコーティング材料源に対して第一の励起プロセスを行い、第一のコーティング材料源内のイットリウム原子及び酸素原子を励起させると同時に、第二の励起装置を用いて第二のコーティング材料源に対して第二の励起プロセスを行い、第二のコーティング材料源内の原子を励起させる;ステップS3:第一のコーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源内で励起された原子との間で衝突が発生し、化学反応が起こり、安定相のイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層が部品に堆積して形成する。
【0068】
前記第一の励起プロセス及び第二の励起プロセスは、それぞれイオンスパッタリングプロセスと高温蒸発プロセスのいずれかである。
【0069】
前記第一の励起プロセス及び/又は第二の励起プロセスがイオンスパッタリングプロセスである場合、前記第一の励起j装置及び/又は第二の励起装置はプラズマボンバード装置であって、前記プラズマボンバード装置によって生成されるプラズマは、アルゴンプラズマと酸素プラズマの少なくとも一つを含む。
【0070】
前記第一の励起プロセスおよび/または第二の励起プロセスが高温蒸発プロセスである場合、第一の励起装置及び/又は第二の励起装置は電子銃ヒーター、抵抗線ヒーター、レーザヒーター、RF誘導ヒーターのうちの少なくとも一つである。
【0071】
一実施形態において、前記第一の励起プロセスおよび第二の励起プロセスは、共にイオンスパッタリングプロセスである;前記第一の励起プロセスのパラメータには、アルゴンイオンであるプラズマ、5kW~20kWであるボンバードエネルギーを含む;前記第二の励起プロセスのパラメータには、アルゴンイオンであるプラズマ、5kW~20kWであるボンバードエネルギーを含む。
【0072】
別の実施形態において、前記第一の励起プロセスおよび第二の励起プロセスは共に高温蒸発プロセスである;前記第一の励起プロセスのパラメータには、2400℃を超える温度を含む;前記第二の励起プロセスのパラメータには、1400℃を超える温度を含む。
【0073】
前記第一のコーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源内で励起された原子との間で化学反応が発生することにより、イットリウムオキシフルオロ化合物を形成する。その原理的な解釈としては、イットリウム原子、酸素原子、金属原子、フッ素原子はそれぞれイオンスパッタリングまたは高温蒸発で活性化させ、高い初期エネルギー(異なる励起方式で得られる)を有して、また、高真空雰囲気(<10-4Pa、これらの粒子の平均自由行程は飛行距離よりも大きい)で直線に沿って自由に飛び、エネルギーを担持した粒子が出会うと、大量の衝突が発生して、化学反応を促進し、形成された分子流が部品に衝突して表面に堆積して耐プラズマコーティング層を形成するまで飛び続ける。形成された耐プラズマコーティング層がイットリウムオキシフルオロ化合物である場合、Y2O3にF2を導入するのに比べて、イットリウム酸素とイットリウムフッ素粒子の初期エネルギーが高く(いずれも励起されて、分子/原子状態を形成する)、粒子衝突のエネルギー変換(Y2O3とYF3の相対分子量はそれぞれ225.8と145.9であって、F2の相対分子量38とO2の相対分子量32よりはるかに大きいため、有効な衝突が発生することでエネルギー交換を高くする)が高く、Y2O3+YF3 →YOF化学反応の発生を促進した。
【0074】
前記第一のコーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、前記第二のコーティング材料源内で励起された原子との間で化学反応が発生することにより、安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を形成することができる。部品が酸素及び/又はフッ素を含むプラズマ環境に曝露される際に、イットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム系オキシフッ化物は安定相を有するため、イットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物の構造安定性をより良く維持することができ、安定相のイットリウムオキシフルオロ化合物がチャンバ内のプラズマ中の酸素及び/フッ素に吸着・拡散及び更なる腐食されることが困難になり、チャンバ内のプラズマ環境の相対的な安定性を維持できるので、プラズマのウェハエッチングに対する安定性を更に向上させるのに有利である。
【0075】
本実施形態では、前記部品を加熱することにより、第一のコーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と第二のコーティング材料源内で励起された原子にエネルギーを供給して、第一のコーティング材料源内で励起されたイットリウム原子及び酸素原子と、第二のコーティング材料源内で励起された原子との間で化学反応をより容易に発生させて、安定相のイットリウム基複合金属酸化物又はイットリウム基オキシフッ化物を部品に堆積するのに有利である。
【0076】
本実施形態では、前記部品を加熱する温度範囲は、25℃~500℃である。
【0077】
図7は、本発明により形成された耐プラズマコーティング層のX線回折図(XRD)である。
【0078】
なお、1はYOFの標準ピークで、2は耐プラズマコーティング層のピークである。
【0079】
1と2を比較すると、耐プラズマコーティングのピーク2はYOFの標準ピーク1に比べてよく適合しており、本発明で提案したYOF耐プラズマコーティング層の形成方法が有効で、前記1のYOF標準ピークに対応する相(物質)が面心立方格子構造のYOFであること、すなわち耐プラズマコーティングが面心立方格子構造のYOFであることを示している。
【0080】
また、本発明は、部品を更に提供しており、上記方法により形成された安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含む耐プラズマコーティング層を有する部品本体を含む。
【0081】
また、本発明は、上記部品のプラズマ処理装置を更に備えており、プラズマ環境である反応チャンバと、前記反応チャンバ内に配置された安定相を有するイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含有する且つ前記プラズマ環境に曝露される耐プラズマコーティング層を有する部品とを含む。
【0082】
プラズマ処理装置が誘導結合プラズマ処理装置である場合、前記部品は、セラミックプレート(window)、インナーライナー(liner)、ガスノズル(nozzle)、ガス分配板(gas box)、ガスフランジ(gas flange)、静電チャックアセンブリ(ESC)、カバーリング(cover ring)、フォーカスリング(focus ring)、絶縁リング(insert ring)、基板保持枠のうちの少なくとも一つを含む。
【0083】
プラズマ処理装置が容量結合プラズマ処理装置である場合、前記部品は、シャワーヘッド(showerhead)、アッパーグランドリング(upper ground ring)、ムービングリング(moving ring)、ガス分配板(gas box)、ガス緩衝板(mountain base)、静電チャックアセンブリ(ESC)、ロアグランドリング(lower ground ring)、カバーリング(cover ring)、フォーカスリング(focus ring)、絶縁リング(insert ring)、基板保持枠のうちの少なくとも一つを含む。
【0084】
プラズマ処理装置は、ウェハにプラズマエッチング処理を施すためのフッ素プラズマと酸素プラズマとを含むプラズマ環境である反応チャンバを備えている。上記方法によって形成された耐プラズマコーティング層は、安定相のイットリウム基複合金属酸化物またはイットリウム基オキシフッ化物を含み、前記耐プラズマコーティング層を有する部品をプラズマ環境に曝露することにより、耐プラズムコーティング層におけるフッ素イオン及び/又は酸素イオンの吸着・拡散及び化学反応層の深さを低減させるので、チャンバエッチング環境が飽和に達するまでの時間を短縮するのに有利し、プラズマ部品の耐食性及び使用寿命を向上させ、プラズマ環境の安定性を向上させ、プラズマによるウェハに対するエッチレートの安定性を向上させ、更にプラズマ処理装置ステージのランニングコストを低減させる。
【0085】
本発明は上記のように開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正を行うことができるので、本発明の真の範囲と主旨は、特許請求の範囲によって示される。