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7063977ブレードの取り外し方法、ブレードの取り付け方法及び吊治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ブレードの取り外し方法、ブレードの取り付け方法及び吊治具
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20220426BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20220426BHJP
   B66C 1/10 20060101ALI20220426BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220426BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D1/06 A
B66C1/10 X
E04G23/02 C
E04G21/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020214130
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】水上 魁
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝之
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-293455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02369174(EP,A1)
【文献】再公表特許第2014/076824(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327016(US,A1)
【文献】特表2017-515048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 1/06
B66C 1/10
E04G 23/02
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車のハブに取り付けられたブレードを取り外して吊り下ろすブレードの取り外し方法であって、
前記ハブを回転させて、吊り下ろし対象である前記ブレードの先端を下方に向ける回転工程と、
前記吊り下ろし対象である前記ブレード以外のブレードに第1吊り器具を取り付け、前記第1吊り器具と前記吊り下ろし対象であり、前記先端を下方に向けた前記ブレードの一部を下方から支持する吊治具を接続する第1接続工程と、
前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記ハブから前記吊り下ろし対象である前記ブレードを取り外す取り外し工程と、
前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記ハブの内部に第2吊り器具を設置し、前記第2吊り器具と、前記第1吊り器具が接続されている前記吊治具を接続する第2接続工程と、
前記第2吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記第1吊り器具と前記吊治具の接続を解除する解除工程と、
前記吊治具を介して前記第2吊り器具により前記吊り下ろし対象である前記ブレードを吊り下ろす吊り下ろし工程と、
を含むことを特徴とするブレードの取り外し方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブレードの取り外し方法であって、
前記吊治具は、
前記第1吊り器具が取り付けられる第1取付部と、
前記第2吊り器具が取り付けられる第2取付部と、
前記吊り下ろし対象である前記ブレードの一部に、前記ブレードの先端を下向きにした場合における下方から当接する当接部と、
を有し、
前記第1接続工程では、前記第1吊り器具を前記第1取付部に取り付け、
前記第2接続工程では、前記第2吊り器具を前記第2取付部に取り付け、
前記解除工程では、前記第1取付部から前記第1吊り器具を取り外すことを特徴とするブレードの取り外し方法。
【請求項3】
請求項2に記載のブレードの取り外し方法であって、
前記吊治具は複数の本体部材からなるリング状の吊治具本体を有し、
前記吊治具本体が前記当接部を有し、
前記第1接続工程では、
前記吊り下ろし対象である前記ブレードを前記リング状の内側に挟み込むように前記複数の本体部材を接合し、
前記当接部を、前記ブレードにおける当該ブレードを前記ハブに取り付けるためのフランジに、前記ブレードの先端を下向きにした場合における下方から当接させることを特徴とするブレードの取り外し方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のブレードの取り外し方法であって、
前記第1吊り器具を取り付ける前記ブレードが取り外し済みの場合に、当該取り外し済みのブレードが取り付けられていた位置に、前記第1吊り器具を取り付けるための取付け部材を取り付ける取り付け工程を含み、
前記第1接続工程では、前記第1吊り器具を取り付ける前記ブレードが取り外し済みの場合に、前記取付け部材に前記第1吊り器具を取り付けることを特徴とするブレードの取り外し方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のブレードの取り外し方法に用いられる吊治具。
【請求項6】
風車のブレードを吊り上げて前記風車のハブに取り付けるブレードの取り付け方法であって、
取り付け対象である前記ブレード以外のブレードに第1吊り器具を取り付ける第1工程と、
前記ハブの内部に第2吊り器具を設置し、前記第2吊り器具と前記取り付け対象であり、先端を下方に向けた前記ブレードの一部を下方から支持する吊治具を接続する第2工程と、
前記吊治具を介して前記第2吊り器具により前記取り付け対象である前記ブレードを吊り上げる第3工程と、
前記第2吊り器具と接続されている前記吊治具と、前記第1吊り器具を接続する第4工程と、
前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記第2吊り器具と前記吊治具の接続を解除する第5工程と、
前記吊治具を介して前記第1吊り器具により前記取り付け対象である前記ブレードを前記ハブの位置まで吊り上げて、前記ハブに前記取り付け対象である前記ブレードを取り付ける第6工程と、
を含むことを特徴とするブレードの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電等に用いられる風車のブレードを取り外す方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、風力発電に用いられる風車におけるブレードの取付方法が開示されている。特許文献1の取付方法では、特許文献1の図2a、図2b、図2cに示すように、風車のハブにブレードを取り付けるためにクレーンでブレードを当該ハブの高さまで吊り上げて取り付ける。
【0003】
その一方で風車の解体時において風車のハブからブレードを取り外す場合には取り付け時と同様にクレーンでブレードを取り外すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許第1507975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クレーンでブレードを取り外す方法はクレーンが届く高さの風車に対して採用することができるが、クレーンが届かないような大型の風車には採用することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、こうした事情を鑑み、クレーンが届かないような大型の風車のブレードを安全且つ迅速に取り外すことができるブレードの取り外し方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0008】
請求項1記載の発明は、風車のハブに取り付けられたブレードを取り外して吊り下ろすブレードの取り外し方法であって、前記ハブを回転させて、吊り下ろし対象である前記ブレードの先端を下方に向ける回転工程と、前記吊り下ろし対象である前記ブレード以外のブレードに第1吊り器具を取り付け、前記第1吊り器具と前記吊り下ろし対象であり、前記先端を下方に向けた前記ブレードの一部を下方から支持する吊治具を接続する第1接続工程と、前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記ハブから前記吊り下ろし対象である前記ブレードを取り外す取り外し工程と、前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記ハブの内部に第2吊り器具を設置し、前記第2吊り器具と、前記第1吊り器具が接続されている前記吊治具を接続する第2接続工程と、前記第2吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記第1吊り器具と前記吊治具の接続を解除する解除工程と、前記吊治具を介して前記第2吊り器具により前記吊り下ろし対象である前記ブレードを吊り下ろす吊り下ろし工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブレードの取り外し方法であって、前記吊治具は、前記第1吊り器具が取り付けられる第1取付部と、前記第2吊り器具が取り付けられる第2取付部と、前記吊り下ろし対象である前記ブレードの一部に、前記ブレードの先端を下向きにした場合における下方から当接する当接部と、を有し、前記第1接続工程では、前記第1吊り器具を前記第1取付部に取り付け、前記第2接続工程では、前記第2吊り器具を前記第2取付部に取り付け、前記解除工程では、前記第1取付部から前記第1吊り器具を取り外すことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のブレードの取り外し方法であって、前記吊治具は複数の本体部材からなるリング状の吊治具本体を有し、前記吊治具本体が前記当接部を有し、前記第1接続工程では、前記吊り下ろし対象である前記ブレードを前記リング状の内側に挟み込むように前記複数の本体部材を接合し、前記当接部を、前記ブレードにおける当該ブレードを前記ハブに取り付けるためのフランジに、前記ブレードの先端を下向きにした場合における下方から当接させることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のブレードの取り外し方法であって、前記第1吊り器具を取り付ける前記ブレードが取り外し済みの場合に、当該取り外し済みのブレードが取り付けられていた位置に、前記第1吊り器具を取り付けるための取付け部材を取り付ける取り付け工程を含み、前記第1接続工程では、前記第1吊り器具を取り付ける前記ブレードが取り外し済みの場合に、前記取付け部材に前記第1吊り器具を取り付けることを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一項に記載のブレードの取り外し方法に用いられる吊治具である
【0012】
請求項に記載の発明は、風車のブレードを吊り上げて前記風車のハブに取り付けるブレードの取り付け方法であって、取り付け対象である前記ブレード以外のブレードに第1吊り器具を取り付ける第1工程と、前記ハブの内部に第2吊り器具を設置し、前記第2吊り器具と前記取り付け対象であり、先端を下方に向けた前記ブレードの一部を下方から支持する吊治具を接続する第2工程と、前記吊治具を介して前記第2吊り器具により前記取り付け対象である前記ブレードを吊り上げる第3工程と、前記第2吊り器具と接続されている前記吊治具と、前記第1吊り器具を接続する第4工程と、前記第1吊り器具と前記吊治具が接続された状態において、前記第2吊り器具と前記吊治具の接続を解除する第5工程と、前記吊治具を介して前記第1吊り器具により前記取り付け対象である前記ブレードを前記ハブの位置まで吊り上げて、前記ハブに前記取り付け対象である前記ブレードを取り付ける第6工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、風車の吊り下ろし対象以外のブレードに取り付けた第1吊り器具と、ハブ内部に取り付けた第2吊り器具により吊り下ろし対象のブレードを、吊り替えを行いながら吊り下ろすことができ、クレーンが届かないような大型の風車のブレードであっても安全且つ迅速に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は風車100のブレード130Cをチェーンブロック11により吊っている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
図2】(A)は吊治具1の平面図であり、(B)は同正面図であり、(C)は同左側面図であり、(D)は吊治具1をブレード130Cのフランジ131の下部に取り付けた場合の平面図である。
図3】吊治具1を用いてチェーンブロック11によりブレード130Cを吊っている状態を示す正面図である。
図4】(A)は風車100のブレード130Cをチルクライマー21により吊り下ろしている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
図5】吊治具1を用いてチルクライマー21によりブレード130Cを吊っている状態を示す正面図である。
図6】(A)は風車100のブレード130Cをクレーンにより吊っている際の正面図であり、(B)は同左側面図である。
図7】風車100のブレード130Cをクレーンにより吊っている際の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[1.風車100の構成]
本実施形態では、図1(A)、図1(B)に示す風車100のハブ140に取り付けられたブレード130Cを取り外して地上に吊り下ろす方法について説明する。風車100は、タワー110と、ナセル120と、3本のブレード130A、130B、130C(以下、3本のブレードを総称してブレード130という場合がある)と、ハブ140とを含む。なお、タワー110は、例えば100m前後の塔状の構造物である。
【0017】
タワー110は、高さ方向に分割された3つのタワー部材111A、111B、111Cにより構成される(以下、3つのタワー部材を総称してタワー部材111という場合がある)。なお、タワー部材111Aが最上段のタワー部材であり、タワー部材111Bが上から2段目のタワー部材であり、タワー部材111Cが上から3段目(最下段)のタワー部材である。
【0018】
ナセル120は、軸受けや発電装置等を格納する。発電装置は、ブレード130の回転数を引き上げる増速機や、発電機(誘導発電機、同期発電機等)や、風車100の運転状況等を監視する監視装置を含む。ナセル120は、最上段のタワー部材111Aの上部に取り付けられる。また、ナセル120の正面側にはハブ140が設けられており、ハブ140には3本のブレード130が取り付けられている。
【0019】
次に、図2を用いて、ブレード130Cをハブ140から取り外して吊り下ろす際に用いられる吊治具1について説明する。
【0020】
[2.吊治具1の構成]
図2(A)、図2(B)、図2(C)に示すように、吊治具1は、リング状の吊治具本体2(「当接部」の一例)と、吊板3と、吊ピース4とを含む。吊治具本体2は2つの半リング状の本体部材2A、2Bからなる。吊治具本体2は、ブレード130Cのフランジ131に下方から当接する。
【0021】
本体部材2A、2Bにはそれぞれ1枚ずつ吊板3が設けられており、吊板3には挿通孔3A(「第1取付部」の一例)が形成されている。挿通孔3Aには、後述するチェーンブロック11の吊ワイヤー13がシャックルを介して取り付けられる。
【0022】
また、本体部材2A、2Bにはそれぞれ2枚ずつ吊ピース4が設けられており、吊ピース4には挿通孔4A(「第2取付部」の一例)が形成されている。挿通孔4Aには、後述するチルクライマー21の吊ワイヤー23がシャックルを介して取り付けられる。
【0023】
図2(D)に示すように、吊治具1はリング状の吊治具本体2の内側にブレード130を抱え込んだ際に、吊治具本体2の外周がブレード130のフランジ131の外周よりも小さくなっている。
【0024】
[3.ブレード130Cの取り外し方法]
次に、本実施形態に係るブレード130Cの取り外し方法について説明する。
【0025】
[3.1.工程1]
図1に示すように、まず、ハブ140及びブレード130を回転させて、吊り下ろし対象であるブレード130Cの先端を下方(鉛直方向下向き)に向ける(「回転工程」の一例)。
【0026】
[3.2.工程2]
次に、吊り下ろし対象であるブレード130C以外のブレード130A、130Bにチェーンブロック11(「第1吊り器具」の一例)を取り付け、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cを接続する(「第1接続工程」の一例)。
【0027】
工程2では、吊り下ろし対象であるブレード130Cのフランジ131(「ブレードの一部」の一例)を下方から支持する吊治具1に対してチェーンブロック11を取り付けることにより、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cを間接的に接続する。
【0028】
具体的には、図3に示すように、2つのチェーンブロック11をそれぞれブレード130Aとブレード130Bに取り付けるために、チェーンブロック11に設けられたチェーンブロック取付ワイヤー12をそれぞれブレード130Aとブレード130Bに括り付ける。また、ブレード130Cにおける、ブレード130をハブ140に取り付けるためのフランジ131の下面(ブレード130Cの先端を下方に向けた状態の下側の面)に接するように治具受け具14を取り付ける。次いで予め分割しておいた本体部材2A、2Bをブレード130Cの根元に挟み込み、吊治具本体2の上面が治具受け具14の下面と接するようにボルト接合により取り付ける。
【0029】
そして、吊治具1の吊板3に形成された挿通孔3Aにチェーンブロック11の吊ワイヤー13を、シャックルを介して固定する。次いで、チェーンブロック11で吊治具1を吊り上げることにより治具受け具14と吊治具1が当接した状態となる。これにより、チェーンブロック11とブレード130Cが間接的に接続され、チェーンブロック11でブレード130Cの荷重を支える。
【0030】
なお、工程2から工程5の作業等は、タワー110に沿って設けられたゴンドラ用ワイヤー202により昇降するゴンドラ201に作業員が搭乗して行う。
【0031】
[3.3.工程3]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cが接続された状態において、ハブ140から吊り下ろし対象であるブレード130Cを取り外す(「取り外し工程」の一例)。このとき、チェーンブロック11がブレード130Cの荷重を受けることでブレード130Cの落下を防ぐ。
【0032】
[3.4.工程4]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cが接続された状態において、ハブ140又はナセル120の内部にチルクライマー21(「第2吊り器具」の一例)を設置し、チルクライマー21と吊り下ろし対象であるブレード130Cを接続する(「第2接続工程」の一例)。
【0033】
工程4では、吊治具1に対してチルクライマー21を取り付けることにより、チルクライマー21と吊り下ろし対象であるブレード130Cを間接的に接続する。
【0034】
具体的には、図5に示すように、4つのチルクライマー21(図5は水平方向からの図のため2つのチルクライマー21を示している)をそれぞれハブ140又はナセル120の内部の固定部(図示しない)に取り付けるために、チルクライマー21に設けられたチルクライマー取付ワイヤー22をそれぞれ当該固定部に固定する。
【0035】
なお、チルクライマー21の設置方法は、風車100の構造(各メーカーで異なる)に合わせて適切な方法を採用する。例えば、多くの種類の風車100はハブ140の内部にブレード130を支持するフレームを有しているので、当該フレームに固定部としてワイヤー等を掛けてチルクライマー21を設置することができる。また、ブレード130を取り付けるボルト・ナットのナットをアイボルトに替えてチルクライマー21を吊る方法を採用することもできる。更に、ハブ140内部にチルクライマー21を設置する適当な部分が無い場合には、ナセル120内部の適当な部分に設置してもよい。
【0036】
そして、吊治具1の吊ピース4に形成された挿通孔4Aにチルクライマー21の吊ワイヤー23を通して固定する。これにより、チルクライマー21とブレード130Cが間接的に接続され、チェーンブロック11とチルクライマー21でブレード130Cの荷重を支える。
【0037】
[3.5.工程5]
次に、チェーンブロック11と吊り下ろし対象であるブレード130Cの接続を解除する(「解除工程」の一例)。具体的には、図5に示すように、吊治具1の吊板3の挿通孔3Aに挿通されているチェーンブロック11の吊ワイヤー13を取り外す。これにより、チルクライマー21のみでブレード130Cの荷重を支える。
【0038】
[3.6.工程6]
次に、図4に示すように、チルクライマー21により吊り下ろし対象であるブレード130Cを地上に吊り下ろす(「吊り下ろし工程」の一例)。
【0039】
上述したように、チェーンブロック11からチルクライマー21にブレード130Cの吊り替えを行った後は、チルクライマー21のワイヤーを地上に達する長さにしておけば、チルクライマー21だけで地上までブレード130Cを降ろすことができる。なお、工程6では、チルクライマー21によりブレード130Cをクレーンが届く高さまで吊り下ろすことができれば、図6(A)、図6(B)、図7に示すように、下降の途中でチルクライマー21からクレーン30に吊り替えを行い、クレーン30で地上まで吊り下ろすこととしてもよい。このとき、クレーン30のアーム30Aの先端のフックに取り付けられた吊ワイヤー31は、空いている吊板3の挿通孔3Aに通して固定する。そして、クレーン30のアーム30Aで荷重を受けられるようになったら、チルクライマー21の吊ワイヤー23を吊ピース4の挿通孔4Aから取り外して荷重をチルクライマー21からクレーン30へと吊り替える。クレーン30への吊り替えはゴンドラ201上で行う。これにより、ブレード130Cの撤去に要する時間を短縮できる。ブレード130Cは降ろしながら横に寝かせることができるが、このとき地上で切断しながら降ろすこともできる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の風車100のハブ140に取り付けられたブレード130Cを取り外して吊り下ろすブレード130Cの取り外し方法は、ハブ140を回転させて、ブレード130C(「吊り下ろし対象であるブレード」の一例)の先端を下方に向ける工程1(「回転工程」の一例)と、ブレード130C以外のブレード130A、130Bにチェーンブロック11(「第1吊り器具」の一例)を取り付け、チェーンブロック11とブレード130Cを接続する工程2(「第1接続工程」の一例)と、チェーンブロック11とブレード130Cが接続された状態において、ハブ140からブレード130Cを取り外す工程3(「取り外し工程」の一例)と、チェーンブロック11とブレード130Cが接続された状態において、ハブ140の内部にチルクライマー21(「第2吊り器具」の一例)を設置し、チルクライマー21とブレード130Cを接続する工程4(「第2接続工程」の一例)と、チェーンブロック11とブレード130Cの接続を解除する工程5(「解除工程」の一例)と、チルクライマー21によりブレード130Cを吊り下ろす工程6(「吊り下ろし工程」の一例)と、を含む。
【0041】
したがって、本実施形態のブレード130Cの取り外し方法によれば、ブレード130A、130Bに取り付けたチェーンブロック11と、ハブ140の内部に取り付けたチルクライマー21によりブレード130Cを、吊り替えを行いながら吊り下ろすことができ、クレーンが届かないような大型の風車100のブレード130Cであっても安全且つ迅速に取り外すことができる。
【0042】
また、本実施形態のブレード130Cの取り外し方法では、工程2においてブレード130Cのフランジ131(「ブレードの一部」の一例)を下方から支持する吊治具1に対してチェーンブロック11を接続することにより、チェーンブロック11とブレード130Cを間接的に接続し、工程4において、吊治具1に対してチルクライマー21を接続することにより、チルクライマー21とブレード130Cを間接的に接続する。これにより、ブレード130Cそのものにチェーンブロック11やチルクライマー21を接続するための部分を予め形成しておいたり、取り外し時に形成する必要がない。
【0043】
なお、上記実施形態では、図3に示したように、チェーンブロック取付ワイヤー12によりチェーンブロック11を吊り下ろし対象のブレード130C以外のブレード130A、130Bに取り付けることとしたが、例えば、ブレード130Cを吊り下ろした後にブレード130Bを吊り下ろす場合にはブレード130Cが存在しないためチェーンブロック11を取り付けることができない。そこで、チェーンブロック11を取り付けるブレード130Cが存在しない場合には、ブレード130Cが取り付けてあったボルト孔を利用して吊り具(「取付け部材」の一例)を設置して、当該吊り具にチェーンブロック11を取り付けることとしてもよい。吊り具はチェーンブロック取付ワイヤー12を取り付けることができ、ブレード130の荷重を支えられる強度を有していればよく、例えば、ブレード130の根元部分だけからなる構造とすることができる。
【0044】
[4.ブレード130Cの取り付け方法]
上記実施形態ではブレード130を取り外す方法について説明したが逆手順で行うことにより、ハブ140にブレード130を取り付ける方法とすることができる。具体的には、風車100のブレード130を吊り上げて風車100のハブ140に取り付けるブレード130の取り付け方法は、以下の工程を含む。
【0045】
[4.1.工程1]
工程1(「第1工程」の一例)では、取り付け対象であるブレード130C以外のブレード130A、130Bにチェーンブロック11(「第1吊り器具」の一例)を取り付ける。なお、事前にハブ140及びブレード130A、130Bを回転させて、ハブ140の取り付け位置を下方(鉛直方向下向き)に向けておくこととする。
【0046】
[4.2.工程2]
工程2(「第2工程」の一例)では、ハブ140の内部にチルクライマー21(「第2吊り器具」の一例)を設置し、チルクライマー21とブレード130Cを接続する。
【0047】
[4.3.工程3]
工程3(「第3工程」の一例)では、チルクライマー21によりブレード130Cを吊り上げる。
【0048】
[4.4.工程4]
工程4(「第4工程」の一例)では、チルクライマー21により吊り上げられたブレード130Cと、チェーンブロック11を接続する。
【0049】
[4.5.工程5]
工程5(「第5工程」の一例)では、チェーンブロック11とブレード130Cが接続された状態において、チルクライマー21とブレード130Cの接続を解除する。
【0050】
[4.6.工程6]
工程6(「第6工程」の一例)では、チェーンブロック11によりブレード130Cをハブ140の位置まで吊り上げて、ハブ140にブレード130Cを取り付ける。
【0051】
当該ブレード130の取り付け方法によれば、風力発電設備建設やブレード130の交換の大幅修繕を従来の方法よりも安全に且つ安価に行うことができる。また、吊り上げ中のブレード130Cは多点のチルクライマー21により吊り上げているため、強風時の吊り荷の回転を抑制することができる。更に、ブレード130Cとハブ140とのフランジ接続も吊治具1をブレード130Cに取り付ける際に穴振りを合わせておくことで容易に接続することができる。
【0052】
なお、上述したブレード130Cの取り外し方法及びブレード130Cの取り付け方法は、陸上風力発電用の風車及び洋上風力発電用の風車のどちらにも採用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 吊治具
2 吊治具本体
2A、2B 本体部材
3 吊板
3A 挿通孔
4 吊ピース
4A 挿通孔
11 チェーンブロック
12 チェーンブロック取付ワイヤー
13 吊ワイヤー
14 治具受け具
21 チルクライマー
22 チルクライマー取付ワイヤー
23 吊ワイヤー
30 クレーン
30A アーム
31 吊りワイヤー
100 風車
110 タワー
111(111A、111B、111C) タワー部材
120 ナセル
130(130A、130B、130C) ブレード
131 フランジ
140 ハブ
201 ゴンドラ
202 ゴンドラ用ワイヤー

【要約】
【課題】クレーンが届かないような大型の風車のブレードを安全且つ迅速に取り外すことができるブレードの取り外し方法等を提供する。
【解決手段】吊り下ろし対象であるブレードの先端を下方に向け、吊り下ろし対象でないブレードに第1吊り器具を取り付け、第1吊り器具と吊り下ろし対象であるブレードを接続した状態で吊り下ろし対象であるブレードをハブから取り外し、ハブの内部に第2吊り器具を設置し、第2吊り器具と吊り下ろし対象であるブレードを接続した状態で第1吊り器具と吊り下ろし対象であるブレードの接続を解除して、第2吊り器具により吊り下ろし対象であるブレードを吊り下ろす。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7