(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】歯科用ファイル
(51)【国際特許分類】
A61C 5/42 20170101AFI20220426BHJP
【FI】
A61C5/42
(21)【出願番号】P 2020539535
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033691
(87)【国際公開番号】W WO2020045491
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018160563
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 晋作
(72)【発明者】
【氏名】那花 光一
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲男
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1569202(KR,B1)
【文献】特開2003-310640(JP,A)
【文献】特開平08-056961(JP,A)
【文献】米国特許第05713736(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の作業部を有し、
前記作業部の任意位置での断面形状の外縁が1本の円弧と3本以上の線で構成され、前記円弧の一端が第1の切削刃であって、
前記3本以上の線は前記円弧を一部分に含む仮想円の内側に位置して
おり、前記仮想円上にある切削刃は前記第1の切削刃のみであることを特徴とする歯科用ファイル。
【請求項2】
前記円弧の長さが前記仮想円の円周長さの1/12以上1/3以下であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用ファイル。
【請求項3】
前記仮想円の内側に第2の切削刃を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歯科用ファイル。
【請求項4】
前記作業部の螺旋状が、先端に近いほど螺旋ピッチが狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用ファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療において根管の拡大・清掃に用いられる歯科用ファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において根管の拡大や清掃に用いられる歯科用根管切削具として、リーマやファイルがある(特許文献1参照)。リーマは主に回転させることで根管内を切削し、ファイルは回転させたり軸方向に押し引きしたりして根管内の切削をするものである。
【0003】
従来の歯科用根管切削具はステンレス製であったが、近年は複雑に湾曲した根管の治療に適した弾力性の高いニッケルチタン製が用いられることがある。更に、動力としては手動式だけでなく、歯科用ハンドピース(エンジン)に接続して用いられる電動式も増えている。そして、電動式にすることで、治療を迅速に行うことを可能としている。
【0004】
図6は、一般的な歯科用ファイルの平面図である。ここに示した歯科用ファイル100は、歯科用ハンドピースに接続して用いられるものである。この歯科用ファイル100は、螺旋状で先端に向かって細くなっている形状の切刃からなる作業部101と、その作業部101の後端に連なるシャフト102と、そのシャフト102の後端に連なり歯科用ハンドピースに取り付けられる把持部103と、を有している。
【0005】
このような歯科用ファイルの一般的な製造方法は、まず、細い線材から作業部になる部分をセンターレス加工機により一定のテーパー率(例えば、6/100等)になるように加工し、その後、刃溝研削機により作業部の切刃になる溝を形成する。ここで、太い線材から加工すれば、作業部になる部分のテーパーと、切刃になる溝とを同時に形成することが技術的には可能であるが、研削量が多く砥石を傷めやすいことから、まず細い線材からテーパーを形成し、その後、切刃の形成をするといった、2段階に研削する方法を採用することが多い。ニッケルチタン製の歯科用ファイルの場合は、特に砥石を傷めやすいので、細い線材か2段階に研削する製造方法がよい。
【0006】
歯科用ファイルは、複雑に湾曲した根管に追従して切削できる性能が求められる。つまり、切削性が高くても、柔軟性に乏しければ、根管の曲線に沿って曲がりきれず、直進方向に切削してしまい、根管の先端付近に切削していない箇所を残してしまうという不具合を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような事情に鑑み、本発明は、適度な切削性を保ちつつ、柔軟性に優れることで、根管追従性能の高い歯科用ファイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明の歯科用ファイルは、螺旋状の作業部を有し、その作業部の任意位置での断面形状の外縁が1本の円弧と3本以上の線で構成され、前記円弧の一端が第1の切削刃であって、前記3本以上の線は円弧を一部分に含む仮想円の内側に位置していることとする。また、前記円弧の長さが仮想円の円周長さの1/12以上1/3以下であることとするとよい。
【0010】
さらに、仮想円の内側に第2の切削刃を有することにしてもよいし、作業部の螺旋状が、先端に近いほど螺旋ピッチが狭いことにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯科用ファイルによれば、柔軟性に高い性能を有するので、複雑な形状の根管にも追従して切削することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は歯科用ファイルの平面図であり、(b)はA-A線拡大断面図である。
【
図3】歯科用ファイルの製造工程を説明する図であって、(a)は線材の平面図、(b)はテーパー材の平面図、(c)は歯科用ファイルの平面図である。
【
図4】歯科用ファイルの断面形状を説明する図であり、(a)はコアが3辺に接している図、(b)はコアが1辺に接している図、(c)はコアが2辺に接している図である。
【
図5】作業部の螺旋ピッチを変化させた比較図であって、(a)は等ピッチの歯科用ファイル、(b)は先端に向かってピッチが狭い歯科用ファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1(a)は本発明の歯科用ファイルの平面図であり、
図1(b)はA-A線拡大断面図である。
【0015】
歯科用ファイル10は、根管を切削する作業部11と、その作業部11の後端に連なるシャフト12と、そのシャフト12の後端に連なり歯科用ハンドピースに取り付けられる把持部(図示省略)と、を有している。歯科用ファイル10の素材としては、複雑に湾曲した根管の治療に適する弾力性の高いニッケルチタン製にするのがよい。ここで、作業部11は、先端に向かって断面が小さくなるテーパー形状であり、かつ、相似形の断面が螺旋状に繋がった構成をしている。作業部11の任意位置での断面形状は、1本の円弧40(以下、「ランド」とする。)を有するものとする。
【0016】
ランド40は円弧形状なので、このランド40を一部に含む仮想円50が存在する。つまり、ランド40は仮想円50の円周上の円弧であり、ランド40以外の作業部11は全てこの仮想円50の内側に収まっている。例えば、作業部11の断面形状の外縁が、ランド40と3本の線41,42,43で形成された略四角形の場合は、ランド40以外の3本の線41,42,43は全て仮想円50の内側にあることになる。なお、仮想円50の内側に収まっている断面形状は、略四角形を基本とするが、特に限定しないので、略四角形以外の形状であってもよい。つまり、作業部11の断面形状の外縁は、1本のランド40(円弧)と3本以上の線で構成されていればよい。また、線41,42,43の形状は、直線に近い曲線を基本とするが、特に限定せず、曲線でもよいし、直線であってもよい。ただし、作業部11の断面形状があまりに小さい場合は、曲げや破断に対する強度が足りなくなるので、一定の強度を確保できる程度の断面形状にする必要はある。
【0017】
ランド40の長さLは、長すぎると根管に接触する面積が大きくなって抵抗が増えたり、また、断面が大きくなって柔軟性に問題を生じることがある。逆にランド長Lが短すぎると、断面形状が小さくなるので強度が足りなくなってしまう。そこで、ランド長Lとしては、仮想円50の円周長さの1/12から1/3の長さにするとよい。つまり、仮想円の半径をRとすると、ランド長Lは、2πR×1/12≦L≦2πR×1/3となる。言い換えると、ランド40の円弧の中心角θが30゜以上120゜以下ということになる。なお、柔軟性がかなり重要になるので、好ましくはランド長Lの長さは、仮想円50の円周長さの2/7以下にするのがよい。つまり、中心角θが、およそ100゜以下ということになる。
【0018】
ランド40の一端は、根管内を切削する第1の切削刃15とする。また、この第1の切削刃15以外に仮想円50の内側に第2の切削刃16を設けてもよい。ここで、第1の切削刃15は、第2の切削刃16よりも外側にあるので、第1の切削刃15が、この歯科用ファイル10の切削能力に大きく寄与することになり、第2の切削刃16は補助的な役割になる。
図1(b)に示した断面の例では、線42,43の交点が第2の切削刃16となっている。なお、仮想円50の内側に切削刃を設けないこともあるし、仮想円50の内側にある線41と線42の交点や線42と線43の交点は、丸まっていることもある。
【0019】
図2は、従来品と本発明の作業部の断面形状である。最も基本的な断面形状として、略長方形(略四角形)のもので比較した。従来品の作業部111の断面形状は、ほぼ平行な線141,143と、相対するランド140,142によって形成された略長方形であり、切削刃115は仮想円150上の2カ所に形成されることになる。一方、本発明に係る作業部11の断面形状は、1本のランド40と3本の線41,42,43で形成されており、第1の切削刃15は仮想円50上に1カ所のみであり、第2の切削刃16は仮想円50の内側に設けられている。当然、線41,42,43は、直線であってもよい。
【0020】
従来品と本発明を比較して、切削刃115が2カ所で機能する従来品の歯科用ファイル110の方が、基本的に切削能力は高くなる。しかし、従来品は、断面が大きく、かつ、切削能力が高いので、複雑に湾曲した根管を切削するときに、根管形状に追従せずに、直進方向に切削することが懸念される。それに対して、本発明の歯科用ファイル10では、第1の切削刃15に第2の切削刃16を付加することで切削能力をある程度確保しつつ、断面が従来品よりも小さい。つまり、削り過ぎず、かつ、柔軟性に優れることから、複雑に湾曲した根管にも追従し易い構成になっている。
【0021】
第2の切削刃16の位置は、仮想円50に近すぎると切削能力が高くなってしまうし、仮想円50の中心Oに近すぎると切削能力がほとんどなくて切削刃を設ける意味がなくなってしまう。したがって、第2の切削刃16の位置としては、仮想円50の中心Oから仮想円50の半径Rの0.6倍から0.8倍の位置にあるのが好ましいと考える。なお、第1の切削刃15で十分な切削能力を有する場合は、第2の切削刃を設けない場合もある。
【0022】
図3は、歯科用ファイルの製造工程を説明する図であって、(a)は線材の平面図、(b)はテーパー材の平面図、(c)は歯科用ファイルの平面図である。歯科用ファイル10の作業部11は、以下の製造工程により形成される。
【0023】
まず、ニッケルチタン製品の線材30を用意する。この線材30の断面は円形で、長さは完成品の歯科用ファイル10の長さに基づいて決定される。ニッケルチタン製品にするのは、弾力性に富んだ素材であり、複雑に湾曲した根管であっても追従し易いからである。
【0024】
次に、線材30を研削し、先端に向かって一定の割合で細くなっているテーパー部分32を有するテーパー材31を形成する。テーパー部分32は、完成品では作業部11になる部分なので、作業部11に相当する長さ及びテーパー率の円錐形状とする。なお、この円錐形上の断面形状は、まさに仮想円50になっている。ここで、テーパー部分32の任意の位置における断面の半径をRとすると、軸方向に対する直径2Rの変化率がテーパー率であり、そのテーパー率は、例えば4/100~6/100(片側の勾配は2/100~3/100)の所定の値とすることができる。
【0025】
最後に、テーパー部分32を
図1(b)の断面形状が螺旋状に繋がるように研削して、作業部11が形成される。ここで、作業部11の断面形状において、ランド40はテーパー部分32の表面のままで研削せず、仮想円50の内側の部分のみ研削することになる。
【0026】
図4は、歯科用ファイルの断面形状を説明する図であり、(a)はコアが3辺に接している図、(b)はコアが1辺に接している図、(c)はコアが2辺に接している図である。
【0027】
作業部11の断面形状において、ランド40はテーパー部分32の表面のままで研削せず、3つの線41,42,43の部分のみ研削して形成されている。ここで、線41と線42、及び、線42と線43は、互いに直交している。つまり、線41と線43は平行であり、線42が線41及び線43のいずれとも直交している。また、線41とランド40の交点が切削刃15となるので、切削刃15の掬い角を大きく(鋭く)形成するために、線41は僅かに反った曲線になることがある。また、線42と線43についても、作業部11が螺旋状であることから、完全な直線に研削するのは難しく、直線に近い曲線になると考えられる。従って、線41と線43も、完全な平行ではない場合もあり、また線42と線41とのなす角及び、線42と線43とのなす角についても、90°ではない場合もある。ただし、これらは緩い曲線なので、作業部11の断面形状の概観としては、略長方形と言ってもよい。よって、線41,42,43は、直線とみなして以下の説明をする。
【0028】
テーパー材31の軸心位置をOとし、任意の位置の断面におけるテーパー部分32の半径をRとする。そして、完成品である歯科用ファイル10において、軸心位置Oを中心とした半径Rの円を仮想円50とする。つまり、ランド40は仮想円50の一部分ということになるので、ランド40の両端の点は仮想円50の円上にあることになる。そして、軸心位置Oは、仮想円50の中心位置Oであり、当然この中心位置Oは、作業部11の断面形状である略長方形の内側に位置している。
【0029】
仮想円50の中心位置Oから3本の線41,42,43までの距離は、中心位置Oから3本の線41,42,43にそれぞれ降ろした垂線の長さということになる。ここで、この垂線のうち最短のものの長さをr0とすると、中心位置Oから半径r0の円形部分は、螺旋状の作業部11の全長に亘って連続する部分であり、これを歯科用ファイル10のコア51とする。なお、半径r0は歯科用ファイル10の先端に向かって小さくなるので、コア51は先端に向かって細くなる円錐形状ということになる。
【0030】
図4(a)は、線41,42,43に降ろした垂線の長さが等しい場合の図であり、言い換えると、コア51が作業部11の断面の3辺である線41,42,43に接している場合の図である。したがって、作業部11の断面は、テーパー部分32の円形断面に対し3方向からR-r0の深さだけ研削することで形成されたことになる。このように、垂線の長さが等しければ研削する量も等しくなるので、同じ研削プログラムを90度回転させて3回繰り返せばよいことになり、製造を簡素化することができる。そして、製造の簡素化によって、量産化や品質の安定に寄与することができる。なお、このようにそれぞれの垂線の長さが等しい場合を基本とするが、垂線の長さをそれぞれ違う値にすることもできる。
【0031】
図4(b)は、線42に降ろした垂線の長さr0が最短になる場合の図であり、言い換えると、コア51が作業部11の断面の1辺である線42にのみ接している場合の図である。ここで、r0以外の垂線の長さをr1及びr2とすると、r0<r1、r0<r2であり、r1=r2となる場合もある。なお、図示していないが、コア51が接する線が線41や線43の場合もあり、そのときは最短の垂線の位置が変わることになる。また、作業部11の断面は、テーパー部分32の円形断面に対し3方向からそれぞれ、R-r0、R-r1、R-r2の深さだけ研削することで形成されたことになる。
【0032】
図4(c)は、線41及び線43に降ろした垂線の長さr0,r0が最短になる場合の図であり、言い換えると、コア51が作業部11の断面の2辺である線41及び線43に接している場合の図である。なお、図示していないが、コア51が接する2辺は、線41と線42であってもよいし、線42と線43であってもよい。また、作業部11の断面は、テーパー部分32の円形断面に対し3方向からそれぞれ、R-r0、R-r0、R-r3の深さだけ研削することで形成されたことになる。
【0033】
なお、
図4(a),(b),(c)に例示された歯科用ファイルの断面形状の場合、以下のような特徴がある。まず、仮想円50の中心位置Oとランド40の中央を結んだ線で断面を切断した場合、切断した部分同士は対称となる。つまり、断面形状の対角線の長さは等しくなる。また、ランド40に隣接する線41,43同士は平行であり、ランド40に隣接する線41,43とランド40に対向する線42は垂直に交わる。また、ランド40の端部同士を結んだ仮想線は、ランド40に対向する線42と平行になる。
【0034】
作業部11の断面の重心位置Gは、仮想円50の中心位置Oとは、ずれることになる。このような状態をオフセンターという。本発明の歯科用ファイル10は、オフセンターになっていることで柔軟性や耐破折性に優れているとともに、切削片の排出性が良いため切れ味が滑らかになるという特徴がある。
【0035】
図2に示した断面形状の従来品110と本発明の歯科用ファイル10について、根管追従性試験を行った結果、従来品の歯科用ファイル110よりも本発明の歯科用ファイル10の方が、根管壁を均等に切削できることから、根管追従性が優れていることが分かった。その理由としては、本発明に係る作業部11の断面は、従来品よりも断面二次モーメントが小さいので柔軟性が高いことと、ランドが1カ所で断面がオフセンターなので、従来品よりも根管壁との間に隙間があるということが考えられる。したがって、本発明の歯科用ファイル10の方が、S字等に曲がった根管においても、その根管形状に追従し易い構造であると考えられる。さらに、本発明の歯科用ファイル10は、適度な長さのランドを有し、仮想円上の第1の切削刃15により、根管を削り過ぎず適度に切削することができる。それとともに、根管で曲がった箇所においては、第2の切削刃16が根管壁に軽く当接し、緩やかに削る切削刃として機能するので、S字等に曲がった根管においても、根管壁を均等に切削することができたと考えられる。
【0036】
更に性能の良い歯科用ファイルを求めて、作業部の螺旋ピッチを変化させて、性能比較をしてみた。
図5は、作業部の螺旋ピッチを変化させた比較図であって、(a)は等ピッチの歯科用ファイル、(b)は先端に向かってピッチが狭い歯科用ファイル(以下、「前詰めピッチ」とする。)である。なお、ピッチを分かりやすくするために、ランド40の見える部分は、塗りつぶして記載している。等ピッチのものは、全てピッチが同一であるが、前詰めピッチのものは、先端に近いほどピッチが狭くなる構成である。なお、
図5(b)とは逆に先端に向かってピッチを広くした製品も考えられるが、その場合は、先端付近の強度が弱くなり、変形が生じやすくなってしまうため、比較対象からは除外することとした。
【0037】
比較試験としては、作業部11が根尖へ進む力を推定するスクリューリング試験と、根管から引き抜く際の引き上げ荷重の比較を行った。その結果、根尖へ進む力は、ピッチを変えてもほぼ同程度であったが、引き上げ荷重は、前詰めピッチの方が軽くなった。これは、前詰めピッチの方が、作業部11の根元側のピッチが広いために、切削刃15の掬い角が小さくなって根管壁に対して鈍く当たるようになり、抵抗が小さくなったためだと考えられる。
【0038】
したがって、歯科用ファイル10の性能をより高めるためには、螺旋ピッチを先端に向かって前詰めにするのが効果的であることが分かった。
【0039】
以上より、本発明の歯科用ファイルは、十分な切削性を有しながら、高い柔軟性を有しているため、根管追従性に優れた性能を発揮することができるものである。また、切削片の排出性もよく、更に螺旋ピッチを変えることで、より高い性能を有する歯科用ファイルとすることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 歯科用ファイル
11 作業部
12 シャフト
15 第1の切削刃
16 第2の切削刃
30 線材
31 テーパー材
32 テーパー部分
40 円弧(ランド)
50 仮想円
R 仮想円半径
L ランド長