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特許7064005ハライドABX3ペロブスカイト粒子及びその光フラックス制御への用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ハライドABX3ペロブスカイト粒子及びその光フラックス制御への用途
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/17 20190101AFI20220426BHJP
【FI】
G02F1/17
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540329
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019095218
(87)【国際公開番号】W WO2020011150
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】16/033,556
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520261471
【氏名又は名称】チョーチアン チンイー ニュー マテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG JINGYI NEW MATERIAL TECHNOLOGY CO.LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヤーナン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ターウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、シーヨン
(72)【発明者】
【氏名】シアオ、シューヨン
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ユイチョー
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0182311(US,A1)
【文献】特開2012-058677(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105139991(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104160329(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/165-1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性基板の第1層、液体懸濁液に懸濁されたABXペロブスカイト粒子を含む活性層、及び透明導電性基板の第2層を含み、
前記ABX ペロブスカイト粒子が、ハライドABX ペロブスカイト粒子であり、AはCs 、CH NH 、及びRb の少なくとも1つであり、BはPb 2+ 、Ge 2+ 、及びSn 2+ の少なくとも1つであり、XはCl 、Br 及びI の少なくとも1つである、ライトバルブ。
【請求項2】
Aは、Cs及びCHNH の少なくとも1つであり、BはPb2+であり、XはBr及びIの少なくとも1つである、請求項に記載のライトバルブ。
【請求項3】
前記ABXペロブスカイト粒子が非球形モルホロジーを有する、請求項1又は2に記載のライトバルブ。
【請求項4】
前記ABXペロブスカイト粒子が、ナノワイヤ、ナノロッド(一次元)、ナノシート(二次元)、立方体、及び不規則(三次元)粒子の少なくとも1つから選択される非球形モルホロジーを有する、請求項に記載のライトバルブ。
【請求項5】
前記ABXペロブスカイト粒子が、約50nm~2000nmの平均長さ、及び20nm~200nmの平均直径を有するナノロッドのモルホロジーを有する、請求項に記載のライトバルブ。
【請求項6】
前記ハライドABX ペロブスカイト粒子が前記液体懸濁液中に均一に分散されている、請求項1からのいずれか一項に記載のライトバルブ。
【請求項7】
前記液体懸濁液が、前記懸濁されたABXペロブスカイト粒子を重力平衡に維持することができる、請求項に記載のライトバルブ。
【請求項8】
前記液体懸濁液が、鉱物抵抗油、合成抵抗油及び植物油の1つ以上を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のライトバルブ。
【請求項9】
前記液体懸濁液が、透明電極として、透明導電性基板の前記第1層と透明導電性基板の前記第2層との間に挟持されている、請求項1からのいずれか一項に記載のライトバルブ。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のライトバルブを光制御デバイスで使用することを含む、光透過率を制御する方法。
【請求項11】
光制御デバイスの製造における、請求項1からのいずれか一項に記載のライトバルブの使用。
【請求項12】
前記光制御デバイスが、スマートウィンドウ、自動車の後部窓、レンズ、光シャッタ及びディスプレイからなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2018年7月12日に出願され、「ハライドABXペロブスカイト粒子及びその光フラックス制御への用途」と題された米国特許出願第16033556号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ペロブスカイト粒子、特にABXペロブスカイト粒子を含むライトバルブに関する。本発明はまた、ライトバルブの新しい使用、及びライトバルブを使用することによって光透過率を制御する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ライトバルブは光透過率を電子的に制御できるデバイスであり、そのようなデバイスは科学的にエレクトロクロミックデバイスとも呼ばれる。技術的には、ライトバルブは、水の流れを制御できるウォーターバルブのように、媒体を通過する光の量を調整できるデバイスである。エレクトロクロミックデバイスの背後にある科学に応じて、ポリマー分散型液晶(PDLC)(米国特許第3585381号明細書)、電気化学デバイス(EC)(米国特許第9581877号明細書)、及び懸濁粒子ディスプレイ(SPD)(米国特許第6606185号明細書)にさらに分類できる。しかしながら、従来技術におけるこれらのライトバルブは、透過率、経済的効率(省エネルギー)、制御の容易さ及び/又は使いやすさに関して満足されていない。
【0004】
したがって、上記の欠点の1つ以上を解決する新しいライトバルブが、現場で緊急に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3585381号明細書
【文献】米国特許第9581877号明細書
【文献】米国特許第6606185号明細
【発明の概要】
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、ペロブスカイト粒子をライトバルブに使用できることを見出した。特に、驚くべきことに、液体懸濁液中に懸濁されたペロブスカイト粒子、特にハライドABXペロブスカイト粒子は、電場下で分極され、配向できることが見出された。
【0007】
ペロブスカイトは、ロシアの地質学者ペロブスキーに由来し、もともとはチタン酸カルシウム(CaTiO)鉱物を単一指摘していた。その後、類似の構造を有する結晶はまとめてペロブスカイトと呼ばれた。驚くべきことに、ペロブスカイト粒子、特にハライドABXペロブスカイト粒子は、電場下で分極され、配向されるという予期せぬ特性を有することがわかった。ハライドABXペロブスカイトのセル構造を図3に示し、ここで、「A」及び「B」は非常に異なるサイズの2つのカチオンであり、「X」は両方に結合するアニオンである。好ましくは、本発明において、「A」は、正電荷を有するアルカリカチオン又は有機アンモニウムであり、「B」は、2つの正電荷を有する遷移金属カチオン又はアルカリ土類カチオンであり、「X」は、負の電荷を有するハライドアニオンである。その中で、「B」カチオン及び6つの「X」アニオンが八面体単位を形成し、8つの八面体単位が「A」カチオンを中心とする六面体頂点の位置を占める。
【0008】
ABXペロブスカイト材料は当該技術分野で知られており、その用途に関する多くの報告がある。2009年に、ABXペロブスカイト材料は太陽電池について最初に報告された(J.Am.Chem.Soc.131,6050-6051,2009)。「Science」は、ペロブスカイト太陽電池を2013年の科学における飛躍的進歩のトップ10の1つと評価した。2018年1月には、LausanneのSwiss Federal Institute of Technologyは、ペロブスカイト太陽電池で23.25%の新しい世界記録の効率を達成した。さらに、ABX3ペロブスカイト材料は、他の潜在用途、例えばLED(発光ダイオード)(Tan,Zhi-Kuang,et al.,Nature Nanotechnology,9:687-692,2014)、レーザー(Haiming Zhu,et al.,Nature Mater.,14:636-642,2015)、光検出器(Zhenqian Yang,et al.,Adv.Materials,30(8):1704333,2018)、メモリスタ(Zhengguo Xiao,et al.,Advanced Electronic Materials,2(7):1600100,2016)において調査されている。
【0009】
上記の知見に基づいて、第1の態様では、透明導電性基板の第1層、液体懸濁液に懸濁されたペロブスカイト粒子を含む活性層、及び透明導電性基板の第2層を含むライトバルブが提供される。
【0010】
好ましくは、ペロブスカイト粒子は、ABXペロブスカイト粒子、特にハライドABXペロブスカイト粒子である。好ましくは、AはCs、CHNH 、及びRbの少なくとも1つであり、BはPb2+、Ge2+、及びSn2+の少なくとも1つであり、XはCl、Br、及びIの少なくとも1つである。より好ましくは、AはCs及びCHNH の少なくとも1つであり、BはPb2+であり、XはBr及びIの少なくとも1つである。
【0011】
好ましくは、ペロブスカイト粒子は非球形モルホロジーを有する。
【0012】
好ましくは、ペロブスカイト粒子は、ナノロッド(一次元)、ナノシート(二次元)、立方体、又は不規則な(三次元)粒子のモルホロジーを有する。
【0013】
さらに驚くべきことに、ペロブスカイト粒子がナノロッドのモルホロジーを有する場合、ライトバルブはオフ状態(ライトバルブがオフの場合)よりもオン状態(ライトバリューがオンの場合)の方が、光透過率が高いことを見出した。より好ましくは、ライトバルブは、オン状態で高い光透過率を有し、オフ状態で低い光透過率を有する。
【0014】
特に、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)はナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ナノロッドについて、それは、50nm~2000nm、より好ましくは200nm~500nmの長さ、及び20nm~200nm、より好ましくは50nm~100nmの厚さ又は直径を有する。好ましくは、ナノロッドについて、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1を超える。好ましくは、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は3:1~20:1、より好ましくは8:1~15:1である。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び3:1を超える長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。より好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、200nm~500nmの長さ、50nm~100nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。
【0015】
好ましくは、ペロブスカイト粒子は、液体懸濁液中に均一に分散される。
【0016】
好ましくは、液体懸濁液は、懸濁されたペロブスカイト粒子を重力平衡に維持する。
【0017】
好ましくは、液体懸濁液は、鉱物抵抗材料、合成抵抗材料、及び植物油の1つ以上をさらに含む。
【0018】
好ましくは、液体懸濁液は、電極としての透明導電性基板の2つの層の間に挟持される。
【0019】
本発明のさらなる態様では、本発明によるライトバルブを光制御デバイスで使用することを含む、光透過率を制御する方法が提供される。場合によっては、ライトバルブ自体が光制御デバイスとして使用される。場合によっては、ライトバルブは光制御デバイスの一部である。
【0020】
本発明のさらなる態様では、本発明は、光制御デバイスの製造における本発明によるライトバルブの使用に関する。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、光制御デバイスは、スマートウィンドウ、自動車の後部窓、レンズ、光シャッタ及びディスプレイからなる群から選択される。
【0022】
本発明のさらなる態様では、本発明は、光透過率を制御する際に使用するための、本明細書に記載されているライトバルブに関する。
【0023】
本発明は、ペロブスカイト粒子を使用することにより、特にハライドABXペロブスカイト粒子を使用することにより、光制御デバイスにおいて光のフラックスを制御する方法を提示する。本発明は、ペロブスカイト材料、特にABXペロブスカイトの新しい使用、及びそのような材料を製造する方法を提供する。本発明はさらに、光の透過を電子的に制御することができるペロブスカイト材料のそのような材料を有する液体懸濁液を含むライトバルブを提供する。より具体的には、ペロブスカイト材料はABXペロブスカイト粒子であり、AはCs、CHNH 、及びRbの少なくとも1つであり、BはPb2+、Ge2+、及びSn2+の少なくとも1つであり、XはCl、Br及びIの少なくとも1つである。ハライドABXペロブスカイト粒子は、好ましくは非球形モルホロジーを有する。ハライドABXペロブスカイト粒子の非球形モルホロジーは、ナノワイヤ、ナノロッド(一次元)、ナノシート(二次元)、立方体、不規則な(三次元)粒子の少なくとも1つである。特に、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)はナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ナノロッドについて、それは、50nm~2000nm、より好ましくは200nm~500nmの長さ、及び20nm~200nm、より好ましくは50nm~100nmの厚さ又は直径を有する。
【0024】
好ましくは、ナノロッドについて、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1を超える。好ましくは、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は3:1~20:1、より好ましくは8:1~15:1である。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び3:1を超える長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。より好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、200nm~500nmの長さ、50nm~100nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。
【0025】
本発明によれば、ペロブスカイト粒子を懸濁させるための液体媒体として使用される液体懸濁液は、1つ以上の鉱物抵抗油、合成抵抗油、及び植物油を含む。
【0026】
図1に示す本発明によれば、透明電極(100)は、光が透過できる同じ材料又は異なる材料で製造でき、好ましくは80%以上の光透過率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】光制御デバイスを概略的に示しており、そこでは、液体懸濁液(300)が2つの透明基板(100)と(100)との間に挟持されている。ハライドABXペロブスカイト粒子(200)は、液体懸濁液(300)中に懸濁される。
【0028】
図2】220Vの電圧を印加する前後の、本発明の実施例6に従って製造されたライトバルブ(LV)デバイスの光透過率を示す。
【0029】
図3】ABXペロブスカイトのセル構造を示す。
【発明の詳細な説明】
【0030】
本発明は、新しい形態のペロブスカイト粒子、及びそれらを使用して、光制御デバイス又はライトバルブと呼ばれる光のフラックスを制御する方法を提供する。
【0031】
図1は、光制御デバイスを概略的に示しており、そこでは、液体懸濁液(300)が2つの透明基板(100)と(100)との間に挟持されている。ハライドABXペロブスカイト粒子(200)は、液体懸濁液(300)中に懸濁される。電界が印加されていない場合(オフ状態)、液体懸濁液中のハライドABXペロブスカイト粒子は、ブラウン運動によりランダムな位置を想定する。したがって、ライトバルブに入る光線は吸収/散乱される。したがって、ライトバルブはオフ状態では比較的暗い。電場を印加すると(オン状態)、光制御ハライドABXペロブスカイト粒子が分極し、電場に応じて互いに平行な方向に配列され、ほとんどの光がセルを通過できる。したがって、ライトバルブは、オン状態では比較的透明である。
【0032】
本発明は、ABXペロブスカイト粒子の新しい使用、及びそのような材料を製造する方法を提供する。本発明はさらに、光の透過を電子的に制御することができる、ABXペロブスカイト粒子を有する液体懸濁液を含むライトバルブを提供する。より具体的には、ABXペロブスカイト粒子の場合、AはCs、CHNH 、及びRbの少なくとも1つであり、BはPb2+、Ge2+、及びSn2+の少なくとも1つであり、XはCl、Br及びIの少なくとも1つである。XがCl、Br、及びIの少なくとも1つである場合、ABXペロブスカイト粒子はハライドABXペロブスカイト粒子とも呼ばれる。なおより好ましくは、AはCs及びCHNH の少なくとも1つであり、BはPb2+であり、XはBr及びIの少なくとも1つである。
【0033】
好ましくは、ハライドABXペロブスカイト粒子は、非球形モルホロジーを有する。非球形モルホロジーは、ナノワイヤ、ナノロッド(一次元)、ナノシート(二次元)、立方体、不規則な(三次元)粒子の少なくとも1つである。
【0034】
特に、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)はナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ナノロッドについて、それは、50nm~2000nm、より好ましくは200nm~500nmの長さ、及び20nm~200nm、より好ましくは50nm~100nmの厚さ又は直径を有する。好ましくは、ナノロッドについて、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1又は10:1を超える。好ましくは、長さ:厚さ又は長さ:直径の比は3:1~20:1、より好ましくは8:1~15:1である。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び3:1を超える長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、50nm~2000nmの長さ、20nm~200nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。より好ましくは、ペロブスカイト粒子(ハライドABXペロブスカイト粒子を含む)は、200nm~500nmの長さ、50nm~100nmの厚さ又は直径、及び8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドのモルホロジーを有する。
【0035】
本開示において、長さ、厚さ又は直径は、それぞれ平均長さ、平均厚さ又は平均直径を意味する。
【0036】
図1に示されているように、液体懸濁液(300)の内部に封入されているABXペロブスカイト粒子(200)は、電子場(electronic field)でそれ自体を再配向することができる。幾何学的寸法に関して、ABXペロブスカイト粒子は、約50nm~2000nmの平均長、20nm~200nmの平均厚さ又は直径、及び3:1を超える、好ましくは8:1~15:1の長さ:厚さ又は長さ:直径の比を有するナノロッドの形態であることが好ましい。
【0037】
本発明によれば、ABXペロブスカイト粒子を懸濁するための液体媒体として使用される液体懸濁液(300)は、1つ以上の非水性の電気抵抗液体を含む。懸濁媒体として参照する、そのような液体又は液体混合物は、懸濁されたABXペロブスカイト粒子を重力平衡に維持することができる。
【0038】
より具体的には、本発明では、液体懸濁液(300)は、1つ以上の鉱物抵抗油、合成抵抗油及び植物油を含む。鉱物抵抗油、例えば変圧器油;合成抵抗油、例えばシリコーン油、フルオロカーボン有機化合物、可塑剤(例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、トリイソデシルトリメリット酸(TDTM)、ドデシルベンゼン、ポリブテン油;植物油、例えばヒマシ油、大豆油、菜種油は、良好な液体懸濁媒体である。技術的には、本発明のライトバルブで使用される液体懸濁媒体は、当該技術分野で既知の任意の液体ライトバルブ懸濁液であることができ、当業者に周知の技術に従って配合することができる。
【0039】
図1に示す本発明によれば、透明電極(100)は、光が透過できる同じ材料又は異なる材料で製造でき、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の光透過率を有する。透明電極(100)のいずれかは、ITO導電性ガラス、ITO/PET導電性フィルム、Agナノワイヤ/PET導電性フィルム、Cuナノワイヤ/PET導電性フィルムであることができる。透明電極(100)は、処理の単純さ、及び熱応力などの特定の条件下でのデバイスの耐久性にとって重要な同じ物理的特性(柔軟性及び熱膨張など)のために同じ材料であることが好ましい。
【0040】
ABXペロブスカイト粒子は湿気及び酸素に敏感であるため、液体懸濁液に挟持された2つの透明電極は、エポキシ樹脂などの抵抗材料で封止でき、2つの透明電極の周りの封止材料の封止に使用できる。ライトバルブは、光透過率を調整するために交流、好ましくは5~500Vの交流によって駆動される。
【0041】
以下の実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、例示のみのために与えられ、本発明の範囲を限定することを意図しない。例で使用されているすべての化学物質は、特に指定のない限り、Sigma-Aldrich Companyから購入される。これらのすべての例において、特に明記しない限り、すべての部及びパーセントは重量による。LVデバイスの光透過率及び吸収スペクトルは、Oceanview分光計で測定した。
【0042】
実施例1 Cs-オレエートの調製
CsCO(4.07g)をオクタデセン(50mL、ODE)とオレイン酸(11.088g)とともに250mLの3ツ口フラスコに装填し、混合物を120℃で1時間乾燥させた後、すべてのCsCOがオレイン酸と反応するまでAr雰囲気下、150℃まで加熱した。Cs-オレエートは室温でODEから沈殿するため、使用前に予熱して溶かしておく必要がある。
【0043】
実施例2 CsPbIナノロッドの合成
N,N-ジメチルホルムアミド(100mL、DMF)及びPbI 2.306(5mmol)を250mLのフラスコに装填した。酢酸4.654g(77.5mmol)及びドデシルアミン0.797g(4.3mmol)を添加した。PbIが完全に可溶化した後、5mLのCs-オレエート溶液を添加した(実施例1の説明に従って調製)。次いで、ハイブリッド溶液を4200mLのトルエンとともに5Lのフラスコに添加した。
【0044】
次いで、反応液を5000Gで1.5時間遠心分離し、上清を捨てて、光制御CsPbIを得る。
【0045】
次いで、CsPbIを500mLのトルエンでさらに分散させ、振とう及び超音波処理でよく混合した(LCP-実施例-2として参照する)。
【0046】
実施例3 CsPbBrナノロッドの合成
実施例2と同様に、2.306gのPbIの代わりに1.835gのPbBrのみを使用した。CsPbBrを含むトルエン混合物は、LCP-実施例-3として参照する。
【0047】
実施例4 CsPbIナノロッドを含むLV懸濁液の調製
250mlの丸底ガラスフラスコに、10gのTDTM(トリイソデシルトリメリテート)を計量し、実施例2で調製したLCP-実施例-2を少しずつ添加した。振とうにより完全に混合した後、続いてトルエンをロータリーエバポレータにより80℃で3時間除去して、LV懸濁液実施例-4として参照するCsPbIを含むLV懸濁液を得た。
【0048】
実施例5 CsPbBrナノロッドを含むLV懸濁液の調製
250mlの丸底ガラスフラスコに15gのシリコーン油を計量し、実施例3で調製したLCP-実施例-3を少しずつ添加した。振とうにより完全に混合した後、続いてトルエンをロータリーエバポレータにより80℃で3時間除去して、LV懸濁液実施例-5として参照するCsPbBrを含むLV懸濁液を得た。
【0049】
実施例6 LV懸濁液-実施例-4から製造されたLVデバイス
この実施例では、実施例4で製造したLV懸濁液-実施例4の200umの湿潤厚さを、エポキシ樹脂を使用してITO導電性ガラスの2つの透明電極の間に封止し、LVデバイス-6として参照するライトバルブを製造した。電圧が印加されていない場合(オフ状態)、LVデバイス-6はオレンジの色合いを示し、光透過は4.7%と測定される。50Hzで220ボルトACを使用して電気的にアクティブ化された場合(オン状態)、LVデバイス-6はよりクリアになり、光透過は25.6%と測定される。図2は、オフ状態及びオン状態でのLVデバイス-6の吸収スペクトルをそれぞれ示す。
【0050】
実施例7 LV懸濁液-実施例-5から製造されたLVデバイス
この実施例では、実施例5で製造したLV懸濁液-実施例5の180umの湿潤厚さを、エポキシ樹脂を使用してITO導電性ガラスの2つの透明電極の間に封止し、LVデバイス-7として参照するライトバルブを製造した。電圧が印加されていない場合(オフ状態)、LVデバイス-7はオレンジの色合いを示し、光透過は6.4%と測定される。50Hzで220ボルトACを使用して電気的にアクティブ化された場合(オン状態)、LVデバイス-7はよりクリアになり、光透過は30.2%と測定される。
【表1】
図1
図2
図3