(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】フィードバック機構及び診断機能を備えた電界がん治療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61N 1/40 20060101AFI20220426BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20220426BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220426BHJP
A61B 5/053 20210101ALI20220426BHJP
【FI】
A61N1/40
A61N1/05
A61B10/00 T
A61B5/053
(21)【出願番号】P 2020542722
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 US2018057127
(87)【国際公開番号】W WO2019084021
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-28
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ブライアン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、ジェイコブ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハースル、ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0096584(US,A1)
【文献】特表2016-529923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0222646(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076500(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107511(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0203307(US,A1)
【文献】国際公開第2016/199142(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/40
A61B 5/00- 5/33
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん性腫瘍を治療するシステムであって、
患者の体内に埋め込まれるように構成された1つ又は複数の埋め込み可能な電極を備え、前記システムは、
がん性腫瘍を通るベクトルに沿った治療領域内において前記患者の体内の組織のインピーダンスを測定するように構成され、
10kHz~1MHzの間の範囲から選択される周波数で電界を発生させるように構成され、前記電界は癌性細胞の有糸分裂を破壊することに有効であり、
前記測定されたインピーダンスに基づき前記患者の前記がん性腫瘍に
前記電界を適用するように構成され、かつ、
前記測定されたインピーダンスの変化に基づき前記患者の前記がん性腫瘍に電界を適用するように構成され、
前記測定されたインピーダンスの増加は、前記がん性腫瘍のサイズの低減を示す、システム。
【請求項2】
前記電極が、電界発生電極とパッシブ電界検知電極とを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記がん性腫瘍内に埋め込まれるように構成された1つ又は複数の埋め込み可能な前記パッシブ電界検知電極をさらに含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記送達される電界に応じて前記患者の心拍数の変化をモニタリングし、
前記心拍数の変化が検出された場合、前記電界を調整するように構成された、請求項1~3いずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記送達される電界の強度を所定閾値まで低下させることで前記電界を調整するように構成された、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
温度、血流、血圧、代謝産物濃度及び全身がん性マーカ濃度からなる群から選択された少なくとも1つの特性を測定し、かつ、
前記少なくとも1つの特性の変化をモニタリングするように構成された、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
がん性腫瘍を治療するシステムであって、
患者の体内に埋め込まれるように構成された1つ又は複数の埋め込み可能な電極を備え、前記システムは
がん性腫瘍を通るベクトルに沿って治療領域で前記患者の体内の組織のインピーダンスを測定するように構成され、かつ、
前記測定されたインピーダンスに基づき腫瘍の進行を評価するように構成され、
前記測定されたインピーダンスの増加は、前記がん性腫瘍のサイズの低減を示す、システム。
【請求項8】
前記測定されたインピーダンスに基づき、前記患者の前記がん性腫瘍に電界を適用するように構成された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記測定されたインピーダンスが測定された低周波インピーダンスを含む、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記低周波が1Hz~10Hzの周波数を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記測定されたインピーダンスが測定された高周波インピーダンスを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のシステ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての指定国の出願人として、カーディアックペースメーカーズインコーポレイテッド(Cardiac Pacemakers,Inc.)(米国企業)、及び全ての指定国の発明者として、ブライアン L.シュミット(Brian L.Schmidt)(米国国民)及びジェイコブ M.ルドウィグ(Jacob M.Ludwig)(米国国民)及びベンジャミン J.ハースル(Benjamin J.Haasl)(米国国民)及びマイケル J.ケーン(Michael J.Kane)(米国国民)の名義で、2018年10月23日にPCT国際特許出願として出願されたものであり、2018年10月22日出願の米国特許出願第16/167,140号明細書、及び2017年10月23日に出願の米国仮特許出願第62/575,748号明細書の優先権を主張し、それらの内容全体を参照により本明細書中に援用する。本明細書の実施形態は、身体組織内の癌性腫瘍の治療に使用するための電界整形要素を含む医療デバイスシステムに関する。より具体的には、本明細書の実施形態は、治療電界を癌性腫瘍の部位に方向転換する又は集中させるように構成された電界整形要素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国がん協会によれば、癌は、米国内で毎年発生する死亡の約25%を占める。癌性腫瘍の現在の標準治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法などのファーストライン治療を含み得る。追加的なセカンドライン治療には、放射性シード注入、凍結療法、ホルモン又は生物学的製剤治療、アブレーション等を含み得る。ファーストライン治療とセカンドライン治療の組み合わせもまた、1つの特定の治療が単独で効果的でない場合に患者の利益となり得る。
【0003】
癌性腫瘍は、体のいずれかの部分の1つの正常細胞が突然変異し、その後過剰に及び過度に急激に成長及び増殖し始めると形成され得る。癌性腫瘍は、細胞分裂中に発生する細胞のDNA又はRNAの遺伝子突然変異、イオン化放射線又は非イオン化放射線などの外部刺激、発癌性物質への曝露の結果、又は遺伝性の遺伝子突然変異の結果であり得る。病因論に関わらず、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂の結果である。
【0004】
有糸分裂は細胞分裂の過程であり、多くの種類の癌性細胞を含む体内の全ての体細胞の細胞周期の一部である。有糸分裂は、4つの基準期:前期、中期、後期、及び終期を含む。前期の直前に、細胞はその染色体を複製し、2つの同一姉妹染色分体を作る。前期中に、染色体は凝縮し始め、核を取り囲む核膜が消失する。有糸分裂紡錘体も前期中に形成され始める。有糸分裂紡錘体は、微小管及び中心体の自己組織化された双極性の配列を含む。微小管は、一般に、高極性のα-チューブリンタンパク質とβ-チューブリンタンパク質との重合で形成される。中心体は同じくタンパク質ベースの細胞小器官であり、この段階で、その2つは分裂細胞の両側に移動する。微小管の負に荷電した端部は中心体に付着する。微小管の正に荷電した端部は分裂細胞の赤道面に向かって放射状に広がり、各姉妹染色分体の動原体に最終的に付着する。中期は、全ての染色体が分裂細胞の赤道面に整列し、有糸分裂紡錘体と結合することと定義され得る。次いで、後期中に、同数の姉妹染色分体が細胞の両側に向かって引っ張られる。全ての染色体が分離されると、終期の過程が始まり、細胞膜は、2つの新たに形成される姉妹細胞間に分裂溝を形成し始め、細胞が細胞質分裂と呼ばれる過程で互いに物理的に分離すると、細胞分裂は完了する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の実施形態は、身体組織内の癌性腫瘍の治療に使用するための電界整形要素を含む医療デバイスシステムに関する。第1態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を含む。本方法は、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って患者の体内の組織のインピーダンスを測定して、患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップを含むことができる。本方法はまた、測定されたインピーダンスに基づき患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップも含むことができる。
【0006】
第2態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、測定されたインピーダンスの変化に基づき、患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップを含むことができる。
【0007】
第3態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、電界発生電極とパッシブ電界検知電極とを含む電極を含むことができる。
【0008】
第4態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、がん性腫瘍内に埋め込まれるパッシブ電界検知電極を含むことができる。
【0009】
第5態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、がん性腫瘍に隣接して埋め込まれる電界発生電極を含むことができる。
【0010】
第6態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を提供する。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップと、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って患者の体内の組織のインピーダンスを測定するステップとを含むことができる。本方法はまた、測定されたインピーダンスに基づき腫瘍の進行を評価するステップも含むことができる。
【0011】
第7態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、測定されたインピーダンスに基づき、患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップを含むことができる。
【0012】
第8態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、インピーダンスの低下は腫瘍の進行を示す。
第9態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、測定されたインピーダンスは、測定された低周波インピーダンスを含む。
【0013】
第10態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、低周波は約1Hz~約10Hzの周波数を含むことができる。
第11態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、測定されたインピーダンスは、測定された高周波インピーダンスを含むことができる。
【0014】
第12態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、高周波は約10kHz~約1MHzの周波数を含むことができる。
【0015】
第13態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、高周波は約100kHz~約300kHzの周波数を含むことができる。
【0016】
第14態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を提供する。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップと、患者の体内に1つ又は複数の電界検知電極を埋め込むステップとを含むことができる。本方法は、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップと、がん性腫瘍において又はその周囲で電界検知電極により電界強度を測定するステップとをさらに含むことができる。本方法は、測定された電界強度に基づき、送達される電界を所望の電界強度に調整するステップをさらに含むことができる。
【0017】
第15態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を含む。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップと、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って送達される電界の特性を測定するステップとを含むことができ、その特性は、インピーダンス、静電容量及び電界強度からなる群から選択される。本方法はまた、測定された特性に基づくがん性腫瘍への電界の送達も含むことができる。
【0018】
第16態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、測定された特性はインピーダンスを含むことができる。
第17態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、測定された特性は静電容量を含むことができる。
【0019】
第18態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、測定された特性は電界強度を含むことができる。
第19態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、方法は、測定された特性に基づいて、送達される電界を調整するステップを含むことができる。
【0020】
第20態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、送達される電界を調整するステップは、電界強度を変更すること、電界の波形を変更すること、及び電界の周波数を変更することのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0021】
第21態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を含む。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップと、患者の体内に誘発電位センサを埋め込むステップとを含むことができる。本方法は、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップを含むことができる。本方法は、送達される電界の強度が神経又は筋肉の動員に対する所定閾値を上回るか否かを判断するために、誘発電位センサを使用して誘発電位をモニタリングするステップと、電界強度が神経又は筋肉の動員に対する閾値を上回る場合、電界の強度を低下させるステップとを含むことができる。
【0022】
第22態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を提供する。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップと、患者の心拍数を測定するステップとを含むことができる。本方法は、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップを含むことができる。本方法は、送達された電界に反応する患者の心拍数の変化をモニタリングするステップと、心拍数の変化が検出された場合に電界を調整するステップとを含むことができる。
【0023】
第23態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、電界を調整するステップは、送達される電界の強度を所定閾値まで低下させることを含むことができる。
【0024】
第24態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、電界を調整するステップは、送達される電界の強度を所定閾値まで上昇させることを含むことができる。
【0025】
第25態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、がん性腫瘍を治療する方法を含む。本方法は、患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップと、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップとを含むことができる。本方法は、温度、血流、血圧、代謝産物濃度及び全身がんマーカ濃度からなる群から選択された少なくとも1つの特性を測定するステップを含むことができる。
【0026】
第26態様では、先行する態様又は以下の態様のうちの1つ又は複数に加えて、又はいくつかの態様の代わりに、本方法は、少なくとも1つの特性の変化をモニタリングするステップを含むことができる。
【0027】
この発明の概要は、本願の教示のいくつかの概要であり、本対象の排他的又は網羅的治療を意図するものではない。更なる詳細は詳細な説明及び付属の特許請求の範囲に記載されている。当業者には、他の態様は、それぞれ限定の意味で解釈されるべきではない、以下の詳細な説明を読み、理解すると共に、その一部を成す図面を見ると明らかであろう。本明細書の範囲は、付属の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物により定義される。
【0028】
態様は、以下の図訳と絡めて、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
【
図2】本明細書中の各種実施形態による医療システムの概略図である。
【
図3】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略断面図である。
【
図4】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
【
図5】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの構成要素の概略図である。
【
図6】本明細書中の各種実施形態による医療デバイスの概略図である。
【
図7】本明細書中の各種実施形態によるリードの概略図である。
【
図8】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図9】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図10】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図11】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図12】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図13】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図14】本明細書のさまざまな実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法のフローチャートである。
【
図15】本明細書中の各種実施形態による例示的な治療パラメータのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態には様々な変更及び代替的形態が考えられるが、その詳細を例及び図面として示すと共に、詳しく述べる。しかしながら、本明細書の範囲は記載される特定の実施形態に限定されないことは理解すべきである。反対に、本発明は、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれる変更、等価物、及び代替物を包含することを意図する。
【0031】
上で述べたように、多くの癌性腫瘍は、抑制のない急速な細胞分裂により生じ得る。癌性腫瘍を治療するためのいくつかの従来のファーストライン治療には、外科手術、放射線治療、及び化学療法を含み得る。しかしながら、多くのファーストライン治療は、いくつかの例を挙げると、疲労、脱毛、免疫抑制、及び長期の手術回復時間などの付随する望ましくない副作用を有する。
【0032】
理論により拘束されるものではないが、交流電界は、細胞分裂に関与する主要タンパク質(特にチューブリン及びセプチン)の双極子配列を障害することにより癌性腫瘍内の有糸分裂を破壊することができると考えられる。微小管紡錘糸を形成しているチューブリンタンパク質の重合を破壊することができ、それゆえ、染色体分離に必要な紡錘糸の形成が阻止される。これにより、有糸分裂の中期における細胞分裂を停止することができる。いくつかの場合では、交流電界は、既に成長している紡錘糸の重合を停止することができ、細胞がそれほど長く生存している場合には、後期中の不完全な紡錘体及び一様でない染色体分離に至る。いずれの場合においても、微小管の不完全重合に起因する後期中の微小管紡錘体形成の停止及び一様でない染色体分離は、アポトーシス(即ちプログラム細胞死)につながる可能性がある。
【0033】
また、交流電界は、終期中の分裂細胞の分裂溝の近傍における電界密度の増加につながり得ると考えられる。分裂溝の領域における電界密度の増加は、高電界密度の分裂溝への、タンパク質及び核酸などの荷電巨大分子の誘電泳動を生じ得る。分裂溝の部分における細胞分裂に必要な主要巨大分子の一様でない濃度は、終期中の姉妹細胞の最終分離を破壊することができ、最終的にアポトーシスに至る。
【0034】
電界療法中に得られるフィードバックを使用して、その療法でがん性腫瘍を治療する有効性をモニタリングすることができる。インピーダンス、静電容量、電界強度等のパラメータに対してデータを測定して、特定の治療方針を指示することができる。いかなる特定の理論によっても拘束されることなく、がん性腫瘍は関連する特定のインピーダンスを有すると考えられる。腫瘍に関連するインピーダンスは、腫瘍のサイズ又は細胞構造が変化すると変化する可能性がある。したがって、電界療法の過程の間に、がん性腫瘍が療法に反応しているか否かを判断するために、インピーダンスをモニタリングすることができる。場合により、がん性腫瘍を含む治療領域における組織のインピーダンスの上昇は、腫瘍の退縮を示す可能性がある。他の場合では、治療領域における組織のインピーダンスの低下、又は変化が観察されない場合、それぞれ腫瘍の進行又は腫瘍に変化がないことを示す可能性がある。電界療法に反応するがん性腫瘍の進行又は退縮をモニタリングするために、インピーダンス分析とともに、血流、代謝産物濃度、全身がんマーカ及び温度等、がん性腫瘍に関連する他の生理学的特性も使用することができる。
【0035】
インピーダンス、静電容量、電界強度等のうちの少なくとも1つに対する測定値に基づき、限定されないが、電界療法の振幅、周波数、パルス幅、波形、指向性、ベクトル及び/又はデューティサイクルのうちの1つ又は複数を含む療法パラメータを、変調し、且つ/又は変更し、調整し、若しくは他の方法で改変することができる。
【0036】
ここで
図1を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略図が示される。医療デバイス100は、患者101の体内の、身体組織内にある癌性腫瘍の部位又はその近傍に完全に植え込むことができる。四肢、上部胴体、腹部領域、頭部等などの領域を含む様々な植え込み部位を使用することができる。
【0037】
ここで
図2を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス200の別の概略図が示される。医療デバイス200は患者101の体内に部分的に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、部分的に植え込まれ、且つ部分的に患者の体外にあることができる。他の実施形態では、部分的に植え込まれた医療デバイスは、体内に配置された構成要素と体外に配置された構成要素との間の経皮的接続を含み得る。部分的に植え込まれた医療デバイスは医療デバイスの部分的に外部にある部分と無線接続を介して無線通信することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、医療デバイスの一部分は完全に植え込むことができ、医療デバイスの一部分は完全に外部にあることができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の電極又はリードは体内に完全に植え込むことができる一方で、電界発生器などの電界を発生させる医療デバイスの部分は完全に体外にあることができる。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、記載する電界発生器は、パルス発生器と同じ構成要素の多くを含むことができ、且つパルス発生器と同じ機能の多くを実施するように構成され得ることは理解されるであろう。医療デバイスの一部分が完全に植え込まれ、医療デバイスの一部分が完全に外部にある実施形態では、完全に外部にある医療デバイスの部分は、完全に内部にある医療デバイスの部分と無線通信することができる。しかしながら、他の実施形態では、有線接続を使用することはできる。
【0039】
医療デバイス100又は医療デバイス200は、筺体102と、筺体102に結合されたヘッダ104と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体102は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体102又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ104は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ104は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ104は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ104は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。
【0040】
医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にあるいくつかの実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、耐久性高分子材料製の保護ケーシングにより包囲することができる。医療デバイス100又は医療デバイス200の一部分が部分的に外部にある他の実施形態では、ヘッダ104及び筺体102は、高分子材料、金属材料、及び/又はガラスを組み合わせて作製された保護ケーシングにより包囲することができる。
【0041】
ヘッダ104は1つ以上のリード106に結合され得る。ヘッダ104は、1つ以上のリード106の基端部の固定を提供し、筺体102内の1つ以上の構成要素に1つ以上のリード106を電気的に接続するように機能し得る。1つ以上のリード106は、電気リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電極108は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極108は電界検知電極を含み得る。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。他の実施形態では、リード106は、任意の数の電界検知及び電界発生の両方の電極を含み得る。本明細書の医療デバイスの多くの実施形態はリードと共に機能するように設計されているが、電界を発生させるリードレス医療デバイスもまた、本明細書で企図されることは理解されるであろう。
【0042】
ここで
図3を参照すると、本明細書中の各種実施形態による医療デバイス100の概略断面図が示される。筺体102は内部容積302を画定することができ、内部容積302は、中空であり得る、且ついくつかの実施形態では医療デバイス100の外側の領域304から密閉されている。他の実施形態では、筺体102は、非中空となるように、構成要素及び/又は構造材料で充填され得る。医療デバイス100は制御回路306を含むことができ、制御回路306は、筺体102内に配置された様々な構成要素308、310、312、314、316、及び318を含むことができる。いくつかの実施形態では、これら構成要素は統合することができ、他の実施形態では、これら構成要素は分離することができる。更に他の実施形態では、統合構成要素及び分離構成要素の両方の組み合わせが存在し得る。医療デバイス100は、単方向又は双方向無線データ通信を可能にするためのアンテナ324も含み得る。いくつかの実施形態では、医療デバイス100の構成要素は、それに通信的に接続された又は取り付けられた、充電回路を介した医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイル(図示せず)を含み得る。
【0043】
制御回路306の各種構成要素308、310、312、314、316、及び318としては、とりわけ、マイクロプロセッサ、メモリ回路(ランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)など)、レコーダ回路、コントローラ回路、遠隔測定回路、電源回路(バッテリーなど)、タイミング回路、及び特定用途用集積回路(ASIC)、充電回路が挙げられ得るがこれらに限定されない。制御回路306は電界発生回路320と通信することができ、電界発生回路320は、電流を発生させて、1つ以上の電界を生成するように構成され得る。電界発生回路320は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306と別個の構成要素とすることができる。制御回路306は、電界発生回路320からの電流の供給を制御するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電界発生回路320は、体外にある医療デバイスの一部分内に存在し得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz~1MHzの範囲から選択される1つ以上の周波数を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~500kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、100kHz~300kHzの範囲から選択される1つ以上の周波数で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1MHzを超える1つ以上の周波数を使用して電界を定期的に送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、電界は、癌性細胞の細胞有糸分裂の破壊に有効であり得る。電界は、1つより多いベクトルに沿って癌性腫瘍の部位に送達され得る。いくつかの例では、電界は、リード電極のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのベクトルに沿って送達され得る。いくつかの実施形態では、2つのベクトル間に空間的多様性を持つ少なくとも2つのベクトルが使用され得る。ベクトルは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80又は90度で空間的に分離され得る(例えば、ベクトルは互いに対して角度を成して配置され得る)。
【0046】
所望の電界強度は、2つの電極間に電流を送達することにより得ることができる。電界が送達される特定の電流及び電圧は異なることができ、被治療組織の部位において所望の電界強度を得るように調整することができる。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp~1000mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、20mAmp~500mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、30mAmp~300mAmpの範囲の電流を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1mAmp、2mAmp、3mAmp、4mAmp、5mAmp、6mAmp、7mAmp、8mAmp、9mAmp、10mAmp、15mAmp、20mAmp、25mAmp、30mAmp、35mAmp、40mAmp、45mAmp、50mAmp、60mAmp、70mAmp、80mAmp、90mAmp、100mAmp、125mAmp、150mAmp、175mAmp、200mAmp、225mAmp、250mAmp、275mAmp、300mAmp、325mAmp、350mAmp、375mAmp、400mAmp、425mAmp、450mAmp、475mAmp、500mAmp、525mAmp、550mAmp、575mAmp、600mAmp、625mAmp、650mAmp、675mAmp、700mAmp、725mAmp、750mAmp、775mAmp、800mAmp、825mAmp、850mAmp、875mAmp、900mAmp、925mAmp、950mAmp、975mAmp、又は1000mAmpを含む電流を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電流で電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限よりも小さい値であることを前提として、前述の電流のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0048】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms~50Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、5Vrms~30Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、10Vrms~20Vrmsの範囲の電圧を使用して癌性腫瘍の部位に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、1Vrms、2Vrms、3Vrms、4Vrms、5Vrms、6Vrms、7Vrms、8Vrms、9Vrms、10Vrms、15Vrms、20Vrms、25Vrms、30Vrms、35Vrms、40Vrms、45Vrms、又は50Vrmsを含む1つ以上の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。制御回路は、ある範囲内の電圧を使用して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成することができ、範囲の下限が範囲の上限のよりも小さい値であることを前提として、前述電圧のいずれかが当該範囲の下限又は上限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0050】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、10kHz、20kHz、30kHz、40kHz、50kHz、60kHz、70kHz、80kHz、90kHz、100kHz、125kHz、150kHz、175kHz、200kHz、225kHz、250kHz、275kHz、300kHz、325kHz、350kHz、375kHz、400kHz、425kHz、450kHz、475kHz、500kHz、525kHz、550kHz、575kHz、600kHz、625kHz、650kHz、675kHz、700kHz、725kHz、750kHz、775kHz、800kHz、825kHz、850kHz、875kHz、900kHz、925kHz、950kHz、975kHz、1MHzを含む1つ以上の周波数を使用して、及び電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320は、ある範囲内の周波数を使用して電界を送達することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の周波数のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0051】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm~1000V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cmを超える1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、1V/cm~10V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は、3V/cm~5V/cmの範囲から選択される1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。
【0052】
他の実施形態では、制御回路306は、0.25V/cm、0.5V/cm、0.75V/cm、1.0V/cm、2.0V/cm、3.0V/cm、5.0V/cm、6.0V/cm、7.0V/cm、8.0V/cm、9.0V/cm、10.0V/cm、20.0V/cm、30.0V/cm、40.0V/cm、50.0V/cm、60.0V/cm、70.0V/cm、80.0V/cm、90.0V/cm、100.0V/cm、125.0V/cm、150.0V/cm、175.0V/cm、200.0V/cm、225.0V/cm、250.0V/cm、275.0V/cm、300.0V/cm、325.0V/cm、350.0V/cm、375.0V/cm、400.0V/cm、425.0V/cm、450.0V/cm、475.0V/cm、500.0V/cm、600.0V/cm、700.0V/cm、800.0V/cm、900.0V/cm、1000.0V/cmを含む1つ以上の印加電界強度を発生させるよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。電界発生回路320はある範囲内の電界強度を有する電界を治療部位に発生させることができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の電界強度のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得ることは理解されるであろう。
【0053】
いくつかの実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位にリード106を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、身体組織内にある癌性腫瘍の部位に医療デバイス100の筺体102を介して電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。他の実施形態では、制御回路306は、リード106と医療デバイス100の筺体102との間に電界を送達するよう電界発生回路320に指示するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は、リード106の長さに沿って配置された1つ以上の電極108を含むことができ、電極108は、電界発生回路320と電気通信することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、医療デバイス100内の各種構成要素は、検知された電界に対応する信号を生成するように構成された電界検知回路322を含み得る。電界検知回路322は、制御回路306と統合することができる、又は制御回路306から分離することができる。
【0055】
検知電極は、医療デバイスの筺体上若しくはその近傍に、筺体に接続された1つ以上のリード上に、腫瘍の近傍若しくは腫瘍内に植え込まれる別個のデバイス上に、又はこれら位置の任意の組み合わせで配置され得る。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の検知電極332及び第2の検知電極334を含み得る。他の実施形態では、筺体102自体が、電界検知回路322の検知電極として機能することができる。電極332及び電極334は、電界検知回路322と通信することができる。電界検知回路322は、第1の電極332と第2の電極334との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路322は、第1の電極332又は第2の電極334と1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極との間の電位差(電圧)を測定することができる。いくつかの実施形態では、電界検知回路は、検知された電界を測定し、電界強度(V/cm)を記録するように構成され得る。
【0056】
電界検知回路322は更に、第1の電極332又は第2の電極334と筺体102自体との間の電位差を測定することができることは理解されるであろう。他の実施形態では、医療デバイスは、電界検知電極又は電界発生電極であり得る第3の電極336を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の検知電極はリード106に沿って配置することができ、電界を検知するための追加的な位置として機能することができる。本明細書の実施形態による、1つ以上のリード106の長さに沿って配置された電極と筺体102との間の電位差を測定するための多くの組み合わせが考えられ得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、1つ以上のリード106は電界発生回路320と電気通信することができる。
図1及び
図2に示すように、1つ以上のリード106は1つ以上の電極108を含み得る。いくつかの実施形態では、電気伝導体326及び電気伝導体328などの各種電気伝導体は、ヘッダ104から貫通構造330を通して、医療デバイス100の内部容積302に通すことができる。したがって、電気伝導体326及び電気伝導体328は、1つ以上のリード106と筺体102の内部容積302内に配置された制御回路306との間に電気通信を提供するように機能し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、レコーダ回路は、電界検知回路322によって生成されたデータを記録し、これに関するタイムスタンプを記録するように構成され得る。いくつかの実施形態では、制御回路306は各種機能を実行するために有線接続することができ、他の実施形態では、制御回路306は、マイクロプロセッサ又は他の外部計算デバイス上で実行する命令を実施するように指示され得る。遠隔測定回路もまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/又はモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスと通信するために提供され得る。
【0059】
ここで
図4を参照すると、本明細書の実施形態によるリードレス医療デバイス400が示される。リードレス医療デバイス400は、筺体402と、筺体402に結合されたヘッダ404と、を含み得る。様々な材料が使用され得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、筺体402は、金属、セラミック、ポリマー、合成物等などの材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、筺体402又はその1つ以上の部分はチタンで形成され得る。ヘッダ404は様々な材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、ヘッダ404は、エポキシ材料などの半透明ポリマーで形成され得る。いくつかの実施形態では、ヘッダ404は中空であり得る。他の実施形態では、ヘッダ404は、非中空となるように、エポキシ若しくは別の材料などの構成要素及び/又は構造材料で充填することができる。いくつかの実施形態では、リードレス医療デバイス400は、リードレス医療デバイス400を体内の癌性腫瘍の部位又はその近傍に配置させ続けるための固定要素406を含み得る。いくつかの実施形態では、固定要素406は、爪、歯、螺旋部、バイアス部等を含み得る。
【0060】
図5に、本明細書中に記載される医療デバイスの各種実施形態の要素を示す。しかしながら、いくつかの実施形態は
図5に示すもの以外の追加的な要素を含むことができることは理解されるであろう。加えて、いくつかの実施形態では、
図5に示すいくつかの要素がなくてもよい。本明細書で具現化される医療デバイスは、1つ以上の検知チャネルを介して情報を収集することができ、1つ以上の電界生成チャネルを介して情報を出力することができる。マイクロプロセッサ502は双方向データバスを介してメモリ504と通信することができる。メモリ504は、プログラム格納用のリードオンリーメモリ(ROM)又はランダムアクセスメモリ(RAM)、及びデータ格納用のRAMを含み得る。マイクロプロセッサ502はまた、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部デバイスと通信するための遠隔測定インターフェイス518に接続され得る、又はセルラー若しくは他のデータ通信ネットワークにより容易になるクラウド若しくは別の通信ネットワークに直接接続され得る。いくつかの実施形態では、医療デバイスは、それに通信的に接続された又は取り付けられた、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための誘導性エネルギー受信用コイルインターフェイス(図示せず)を含み得る。
【0061】
医療デバイスは、1つ以上の電界検知電極508と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界センサチャネルインターフェイス506と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の電界発生電極512と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の電界発生チャネルインターフェイス510と、を含み得る。医療デバイスはまた、1つ以上の生理学的センサ、呼吸センサ、又は化学センサ516と、マイクロプロセッサ502のポートと通信することができる1つ以上の生理学的/呼吸/化学センサチャネルインターフェイス514と、を含み得る。チャネルインターフェイス506、510、及び514は、信号入力をデジタル化するためのアナログ/デジタル変換器、検知増幅器、レジスタ(検知増幅器、ソースドライバ、変調器、復調器、マルチプレクサ等のゲイン値及び閾値を調整するために制御回路により書き込むことができる)などの各種構成要素を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、生理学的センサは、体温、血流量、血圧等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、呼吸センサは、呼吸数、呼吸ピーク振幅等を監視するセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、化学センサは、血液尿素窒素、クレアチニン、フィブリン、フィブリノーゲン、免疫グロブリン、デオキシリンボ核酸、リボ核酸、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ヒドロニウム、リン酸水素、重炭酸塩等などの分析物を含むがこれらに限定されない、センサ周囲の治療領域内に存在する分析物の量を測定することができる。しかしながら、本明細書では他の多くの分析物も考えられる。例示的な化学/分析物センサは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ケーン(Kane)らの共有の米国特許第7,809,441号明細書に開示されている。
【0063】
図5では、生理学的、呼吸、又は化学センサ516は、医療デバイスの一部として示されるが、いくつかの実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は医療デバイスから物理的に分離され得ることは認識されたい。各種実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに通信的に接続される植え込まれた別の医療デバイス内にあり得る。更に他の実施形態では、生理学的、呼吸、又は化学センサの1つ以上は、体外にあることができ、遠隔測定インターフェイス518を介して医療デバイスに接続される。
【0064】
ここで
図6を参照すると、本明細書の実施形態による医療デバイス600の概略図が示される。医療デバイス600は、筺体102、ヘッダ104、及び1つ以上のリード106を含み得る。リード106は、リード106の長さに沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614などの1つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界発生電極を含むことができ、他の実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614は電界検知電極を含むことができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含み得る。
【0065】
リード106の基端部はヘッダ104内に配置されている。電気リード106の先端部は、電極604、606、608、610、612、又は614を癌性腫瘍602に近接させるように、癌性腫瘍602を包囲することができる。いくつかの実施形態では、リード106は、電極604、606、608、610、612、又は614が癌性腫瘍602に隣接する又は癌性腫瘍602内に配置されるように、脈管系内に配置され得る。しかしながら、リード106は癌性腫瘍602内又はその周囲の様々な場所に配置され得ることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、リード106は癌性腫瘍602に直接通すことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、リード106は、リードの長さに沿って、腫瘍に対する電極の厳密な位置の決定に使用するための1つ以上のトラッキングマーカ616又は618を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のトラッキングマーカは、リード上に配置された1つ以上の電極のすぐ先端側又はすぐ基端側に配置され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは磁性材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカはX線撮影材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、トラッキングマーカは蛍光撮影材料で形成され得る。
【0067】
電界を生成するために、リード106に沿って配置された電極604、606、608、610、612、又は614の各種組み合わせの間に複数の電界ベクトルを発生させることができることは理解されるであろう。例えば、電極604と電極610との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。同様に、電極606と電極612との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせの間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができることも理解されるであろう。いくつかの実施形態では、電極604、606、608、610、612、又は614の任意の組み合わせと医療デバイス400の筺体102との間に1つ以上の電界ベクトルを発生させることができる。本明細書の実施形態による1つ以上の単極又は多極リードを使用することができることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、単極リードと多極リードの組み合わせが使用され得る。他の実施形態では、円形リード、クランプリード、カフリード、パドルリード、又はパッチリードが使用され得る。
【0068】
ここで
図7を参照すると、本明細書の実施形態によるリード702が示されている。リード702は、リード702の長さに沿って配置された電極704を含むことができる。いくつかの実施形態では、電極704は、電界発生電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極704は、電界検知電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極704は、電界発生電極と電界検知電極との組合せを含むことができる。本明細書で考察するように、電極は、具体的な一方又は他方としての記載がない限り、電界発生電極又は電界検知電極のいずれも指すことができる。いくつかの実施形態では、リード702は、1つ又は複数の専用インピーダンスモニタリング電極(図示せず)を含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、インピーダンスは、電圧を電流で割ることによって測定することができる。体内では、インピーダンスは、限定されないが、筋肉、脂肪、結合組織及び骨を含む細胞タイプ、細胞密度、細胞サイズ、電解質濃度等、電界と接触している成分を含む、多くの要素によって影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、電界検知又は電界発生電極は、インピーダンスモニタリング電極としての役割を果たすことができる。異なる組織は所与の周波数で異なるインピーダンスを有することが理解されよう。したがって、いくつかの実施形態では、任意の所与の場所における1つ又は複数の周波数でインピーダンスを測定することが企図され、それについては、
図9を参照してより詳細に後述する。いくつかの実施形態では、治療周波数の範囲内の周波数でインピーダンスを測定することができる。いくつかの実施形態では、治療周波数外の周波数でインピーダンスを測定することができる。いくつかの実施形態では、治療周波数の範囲内の周波数と治療周波数外の周波数との両方でインピーダンスを測定することができる。
【0070】
リード702は、基端部708と先端部710とを有するリード本体706を含み得る。リード本体706は、リード本体706を通り、1つ以上の電界発生電極704とリード本体706の基端部708との間に電気通信を提供する1つ以上の導体(図示せず)を含み得る。1本又は複数本のリード702は、がん性腫瘍の部位に埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、1本又は複数本のリード702は、がん性腫瘍内に埋め込むことができる。リード702は、本明細書で具現化する医療デバイスのヘッダ内に配置することができ、医療デバイス内の制御回路と電気通信するように構成することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、リード702は、患者の体内のがん性腫瘍の部位において電界を発生させる電界発生回路(図示せず)によって構成することができる。リード702は、その上に配置された1つ又は複数の電界発生電極から電界を発生させるように構成することができる。いくつかの実施形態では、リード702は、電界発生電極及び電界検知電極の両方を含むことができる。いくつかの実施形態では、電界検知リードとしての役割を果たすように、がん性腫瘍に又はその近くに、上に配置された電界検知電極を有する別個のリード703を埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、リードのうちの任意のもの702又は703の上の且つ発生した電界に近接する非活性電界発生電極は、その電界発生電極における電圧を測定することにより、電界強度を間接的に検知するように構成することができる。本明細書に記載するような医療デバイスは、それ自体が電界を発生させることができる電極としての役割を果たすように、1つ又は複数の電極704と電気通信することができる。
【0072】
電界検知電極を利用して、任意の所与の療法の過程の間に腫瘍内の又は腫瘍の周囲の電界強度を検知することができる。医療デバイス内のレコーダ回路は、電界検知電極によって生成されるデータを記録するように構成することができ、そのデータは、臨床医が、がん性腫瘍の部位において所望の電界強度を維持するように電界強度を調整するために使用することができる。いくつかの実施形態では、電界発生回路は、がん性腫瘍の部位において所望の電界強度を維持するために、電界検知電極によって検知される1つ又は複数のデータ値に応じて、電界強度を自動的に調整するように構成することができる。本明細書で使用するために好適な電界強度については、
図3並びに制御回路306及び電界発生回路320を参照して上述している。
【0073】
ここで
図8を参照すると、本明細書の実施形態による、がん性腫瘍を治療する方法800が示されている。方法800は、802において、患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップを含むことができる。1つ又は複数の電極の埋込みに続き、方法800は、804において、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って、患者の体内の組織のインピーダンスを測定するステップを含むことができる。方法800はまた、806において、測定されたインピーダンスに基づき、患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップも含むことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、方法800は、測定されたインピーダンスの変化に基づいて患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップをさらに含むことができる。いかなる特定の理論によっても拘束されることなく、がん性腫瘍内のインピーダンスは、非がん性又は壊死細胞と比較した場合、相対的に低いと考えられる。この現象により、治療時間に応じてインピーダンスをモニタリングすることができ、インピーダンスが、腫瘍が電界療法に反応しているか否かを評価する際の診断ツールとしての役割を果たすことができる。治療領域内のインピーダンスが(低インピーダンス腫瘍組織が萎縮し非がん性組織が残りの空間を占有する結果として、一定距離又は面積にわたり)上昇する場合、これは、電界療法が、がん性腫瘍のサイズを有効に低減させていることの表示として解釈することができる。しかしながら、治療領域内のインピーダンスが、一定距離又は面積にわたって低下するか又は同じままである場合、これは、電界療法ががん性腫瘍のサイズを低減させていないことの表示として解釈することができる。したがって、がん性腫瘍のサイズを有効に低減させるために、特定のがん性腫瘍に対して電界療法を適合させることができる。例として、電界療法の振幅、周波数、パルス幅、波形、指向性及び/又はデューティサイクルのうちの1つ又は複数を、変調し且つ/又は変更することができる。
【0075】
方法800での使用に好適な電極は、電極が、アクティブ電界発生電極又はパッシブ電界検知電極として作用することができるようにする機能を含むことができる。いくつかの実施形態では、電界発生電極は、所与の時点で電界の電圧を測定するように構成されたパッシブ電界検知電極として作用することができる。いくつかの実施形態では、パッシブ電界検知電極は、がん性腫瘍内に埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、パッシブ電界検知電極は、がん性腫瘍に隣接して埋め込むことができる。いくつかの実施形態では、パッシブ又はアクティブ電界発生電極は、がん性腫瘍に隣接して埋め込むことができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図8を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0076】
ここで
図9を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法900が示されている。方法900は、902において患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップを含むことができる。1つ又は複数の電極の埋込みに続き、方法900は、904において、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って、患者の体内の組織のインピーダンスを測定するステップを含むことができる。方法900はまた、906において、測定されたインピーダンスに基づき、腫瘍の進行を評価するステップも含むことができる。腫瘍進行を評価した後、方法900は、測定されたインピーダンスに基づき、患者のがん性腫瘍に電界を適用するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、一定距離又は面積にわたるインピーダンスの上昇は、腫瘍の退縮を示す可能性がある。他の実施形態では、インピーダンスの低下は、電界療法に対する腫瘍の進行又は抵抗を示す可能性がある。
【0077】
いかなる特定の理論によっても拘束されることなく、がん性腫瘍は、関連する特定のインピーダンスを有すると考えられる。いくつかの実施形態では、特定のがん性腫瘍を通る低周波インピーダンスは、腫瘍を通る導電率を測定するために使用することができ、組織の進行又は退縮の指標として使用することができる。いくつかの実施形態では、特定のがん性腫瘍を通る高周波インピーダンスは、腫瘍の誘電率及び静電容量特性を測定するために使用することができ、組織の進行又は退縮の指標としても使用することができる。いくつかの実施形態では、低周波インピーダンスは、約1Hz~約10Hzの周波数で測定することができる。いくつかの実施形態では、高周波インピーダンスは、約10Hz~約1Mzの周波数で測定することができる。いくつかの実施形態では、高周波インピーダンスは、約100kHz~約300kHzの周波数で測定することができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図9を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0078】
ここで
図10を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法1000が示されている。方法1000は、1002において患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極及び1つ又は複数の電界検知電極を埋め込むステップを含むことができる。1つ又は複数の電界発生又は電界検知電極埋込みに続き、方法1000は、1004において、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップを含むことができる。方法1000は、1006においてがん性腫瘍内で又はその周囲で電界検知電極により電界強度を測定するステップを含むことができる。電界強度は、さまざまな方法で測定することができるが、いくつかの実施形態では、測定された電圧と測定電極の間の既知の空間的離隔距離とに基づいて電界強度を計算することを含むことができる。方法1000は、1008において、測定された電界強度に基づき、送達される電界を所望の電界強度に調整するステップをさらに含むことができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図10を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0079】
ここで
図11を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法1100が示されている。方法1100は、1102において患者の体内に1つ又は複数の電極を埋め込むステップを含むことができる。方法1100は、1104において、がん性腫瘍を又はその近くを通るベクトルに沿って送達される電界の特性を測定するステップをさらに含むことができ、この特性は、インピーダンス、静電容量及び電界強度からなる群から選択される。方法1100は、1106において、測定された特性に基づきがん性腫瘍に電界を送達するステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、方法1100は、測定された特性に基づき、送達される電界を調整するステップをさらに含むことができる。送達される電界を調整するステップは、電界強度を変更すること、電界の波形を変更すること、及び電界の周波数を変更することのうちの1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、送達される電界を調整するステップは、腫瘍の進行又は退縮、局所電解質濃度、電極状態、電極封止、電極インピーダンス、組織インピーダンス等、局所状態に関わらず、電界発生回路によって自動的に実施することができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図11を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0080】
ここで
図12を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法1200が示されている。方法1200は、1202において患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極及び1つ又は複数の誘発電位センサを埋め込むステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、誘発電位センサは、大脳皮質、脳幹、脊髄及び末梢神経から等、神経系から放出される1つ又は複数の電位を検出するように構成されたセンサであり得る。いくつかの実施形態では、誘発電位センサは、心筋又は骨格筋から等、体内の他の電源によって放出される1つ又は複数の電位を検出するように構成されたセンサであり得る。いくつかの実施形態では、電界検知電極及び電界発生電極は、誘発電位センサとして作用するように構成することができる。誘発電位センサは、電位、電流及び/又はインピーダンス等の電気特性を測定するために電極(本明細書に記載したリード上の電極等)を含むことができる。
【0081】
方法1200は、1204において、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップをさらに含むことができる。誘発電位センサは、誘発電位反応をモニタリングするために使用することができる。いくつかの実施形態では、誘発電位センサは、1206において、送達される電界の強度が神経又は筋肉の動員に対する所定閾値を上回るか否かを判断するために使用することができる。いくつかの実施形態では、所定閾値は、治療の前に決定することができる。いくつかの実施形態では、誘発電位反応が誘発電位センサによって観察されるまで、送達される電界の強度の適量を決定することができ、神経組織又は筋組織によって誘発電位反応を発生させないように、電界強度を低下させることができる。電界強度の適量決定は、臨床医により手動で実施することができ、又は、医療デバイスのメモリにプログラムされ且つ医療デバイスによって制御される適量決定プロセス等、自動的に実施することができる。方法1200は、電界強度が神経又は筋肉の動員に対する閾値を上回る場合、電界の強度を低下させるステップをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、電界強度は、神経又は筋肉の動員に至る前に可能な限り高い電界強度に達するように、経験的に決定することができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図12を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0082】
ここで
図13を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法1300が示されている。方法1300は、1302において患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップを含むことができる。方法1300はまた、1304において患者の初期心拍数を測定するステップも含むことができる。1306において、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達することができる。方法1300は、1306において、送達された電界に反応する患者の心拍数の変化をモニタリングするステップを含むことができる。方法1300はまた、1308において心拍数の変化が検出された場合、電界を調整するステップも含むことができる。いくつかの実施形態では、電界を調整するステップは、送達される電界の強度を、患者の心拍数の変化を引き起こさない所定閾値まで低下させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、電界を調整するステップは、送達される電界の強度を患者の心拍数の変化を検出する直前の所定閾値まで上昇させることを含むことができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図13を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
【0083】
ここで
図14を参照すると、本明細書の実施形態によるがん性腫瘍を治療する方法1400が示されている。方法1400は、1402において患者の体内に1つ又は複数の電界発生電極を埋め込むステップを含むことができる。方法1400は、1404において、電界発生電極からがん性腫瘍に電界を送達するステップを含むことができる。方法1400は、1406において、温度、血流、血圧、代謝産物濃度及び全身がんマーカからなる群から選択された少なくとも1つの特性を測定するステップを含むことができる。
【0084】
温度、血流及び血圧は、がん性腫瘍に又はその中に位置決めされたリード内又はリードの近くに取り付けられた温度及び圧力センサによってモニタリングすることができる。温度及び圧力センサは、がん性腫瘍の部位において又はその近くで温度、血流及び血圧をモニタリングするように構成することができる。血流、心拍数、血圧等をモニタリングすることができる例示的な経胸腔的インピーダンスセンサは、全体が参照により本明細書に援用される、本出願の譲受人が所有する米国特許第8,795,189号明細書に記載されている。例示的な化学的代謝産物又は分析物、及びそれらを検知する方法は、ケーン(Kane)らの本出願の譲受人が所有する米国特許第7,809,441号明細書に開示されており、その特許の全体が参照により本明細書に援用される。
【0085】
例示的な全身がんマーカとしては、限定されないが、ALK遺伝子過剰発現、α-フェトプロテイン(AFP)、β-2-ミクログロブリン(B2M)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hGC)、BRCA1及びBRCA2遺伝子突然変異、BCR-ABL遺伝子融合、BRAF V600突然変異、BUN/クレアチニン、CD117/C-キット(C-kit)、CA15-3/CA27.29、CA19-9、CA-125、カルシトニン、癌胎児性抗原(CEA)、CD20、クロモグラニンA(CgA)、サイトケラチンフラグメント21-1、硬膜外成長因子受容体(eGFR)遺伝子突然変異、エストロゲン受容体(ER)及びプロゲステロン受容体(PR)遺伝子突然変異、フィブリン及びフィブリノーゲン、HE4、HER2/ニュー(neu)遺伝子及びタンパク質発現上昇、免疫グロブリン、KRAS遺伝子突然変異、乳酸脱水素酵素、非特異的エノラーゼ(NSE)、核マトリックスタンパク質22、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、前立腺特異抗原(PSA)、サイログロブリン、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)並びにプラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)等を挙げることができる。
【0086】
全身がんマーカは、がん性腫瘍の部位内又はその近くから組織又は体液のサンプルを取り除くことによってモニタリングすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するリードは、リードの長手方向長さ全体又は長手方向長さの選択された部分に伸びる開口内腔を含むことができる。開口内腔は、1つ又は複数の全身がんマーカに対して組織又は流体を分析することにより疾患の進行及び/又は退縮をモニタリングするために、がん性組織部位から定期的に生検サンプルを得るために好適な一体型生検装置を含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、方法1400は、少なくとも1つの特性の変化をモニタリングするステップを含むことができる。少なくとも1つの特性の変化が検出されると、方法1400はまた、その少なくとも1つの特性の測定値に基づいて、送達される電界を変更するステップも含むことができる。さまざまな実施形態において、
図3及び
図5を参照して記載した1つ又は複数の構成要素を含む医療デバイスは、
図14を参照して記載した1つ又は複数の動作を実行するように構成することができる。
リード及び電極
本明細書中に記載されるリードは、いくつかの手法を用いて、体内の、癌性腫瘍の部位近傍に配置され得る。1つ以上のリードの配置には、経血管配置、皮下腔へのトンネリング、及び/又は外科的配置などの手法を使用することを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のリードの配置は、1つ以上の天然身体開口部を通した配置を含み得る。リードは、癌性腫瘍に隣接して又は癌性腫瘍内に配置され得る。いくつかの実施形態では、癌性腫瘍の近くで又は遠くで複数のリードが使用され得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される1つ以上のリードは、皮下腔内に配置され得る。皮下腔内に配置されたリード上の電極は、一次近距離発生電極(primary near-field generating electrode)として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。いくつかの実施形態では、皮下腔内に配置されたリード上の電極は、医療デバイスの筺体と共に、一次近距離発生電極として、又は遠距離電界発生電極として使用することができる。同様に、1つ以上のリードは、癌性腫瘍の部位若しくはその近傍の電極と共に、又は医療デバイスの筺体と共に、遠距離電界発生電極として機能するように、経血管的に配置され得る。
【0089】
本明細書中に記載されるリード及び電極は、更なる機能的及び構造的特徴を含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、MRI(磁気共鳴映像法)、X線イメージング、脳深部刺激療法、及び/又は放射線治療を含むがこれらに限定されない画像化及び治療技術に対応するものを含み得る。いくつかの実施形態では、リードは、伝導性材料で作製された1つ以上の導体コアを含み得る。導体コアは、金属を含む伝導性材料及び/又はその他の伝導性材料で形成され得る。金属には、パラジウム、白金、銀、金、銅、アルミニウム、ステンレス鋼を含む各種合金、MP35N(登録商標)などのニッケル-コバルト合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、導体コアは、バイファイラコイル、トリファイラコイル、及びクアッドファイラコイルを含むがこれらに限定されないマルチファイラコイルであり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、電極は、本明細書中に記載される1つ以上のリードの長さに沿って配置され得る。本明細書中に記載される電極での使用に適した材料は、磁界中におけるカップリング及びアーティファクト発生を最小限にするための、パラジウムなどの金属を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、他の金属及び/又は他の伝導性材料で作製され得る。金属には、パラジウム、白金、白金-イリジウム合金などの白金合金、金、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼を含む各種合金等を含み得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、電極は、電極の可撓性を損なうことなく表面積の増加という付加的な利点を提供することができる巻かれたコイルの形態とすることができる。いくつかの実施形態では、植え込み型デバイスの筺体は、電極として機能することができる。
【0091】
本明細書中に記載されるリードはまた、リードの長さに沿って配置された1つ以上の電極を含み得る。リードは、リードの長さに沿って配置された2つ以上の電極を含み得る。いくつかの実施形態では、電極は、リードの先端部にある先端電極であり得る。他の実施形態では、電極は、リードに沿って存在するが、リードの先端には存在しないリング電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極はコイル電極であり得る。いくつかの実施形態では、リング又は先端電極は、腫瘍若しくは癌性組織内に又はこれに隣接して配置することができ、コイル電極は、発生する電界に空間的多様性を与えるのを補助するために、腫瘍又は癌性組織よりも遠くに配置され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極は、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、7.5、10、15、20、30、40、50、75、100mm又はそれ以上の、長手方向の軸線(例えば、基端側から先端側までの軸線)に沿った長さを有し得る。いくつかの実施形態では、電極の1つ以上は、ある範囲内の長さを有することができ、上限が下限よりも大きいことを前提として、前述の距離のいずれかが当該範囲の上限又は下限として機能し得る。
【0092】
リードは、単極、双極、又は多極とすることができる。いくつかの実施形態では、単極リードは、1つの電極と医療デバイスの筺体との間に電界を発生させるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、双極リードは、リードに沿って配置された2つの電極間に、又は両電極と医療デバイスの筺体との間に及び電界を発生させることができるリードを含み得る。いくつかの実施形態では、多極リードは、リードに沿って配置された2つより多い電極間に、2つより多い電極と医療デバイスの筺体との間に、又は任意の数の組み合わせの電極の構成と医療デバイスの筺体との間に、電界を発生させることができるリードを含み得る。
【0093】
本明細書での使用に適した電極は、カーボン充填シリコーン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリティオフェン(polytiophene)、ポリフラン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリパラフェニレン等などの導電性ポリマーで作製され得る。他の実施形態では、電極は絶縁され得る。いくつかの実施形態では、及び電極を包囲する絶縁体は、細胞付着は防ぐものの電流が流れることはなお可能な微多孔質絶縁体を含み得る。微多孔質絶縁体は、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレン-co-テトラフルオロエテン(ETFE)、ポリウレタン、シリコーン、パリレンポリマーなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー、ペバックス(登録商標)などのポリエーテルブロックアミド、ナイロン、又はこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない本明細書中に記載されるいくつかの絶縁材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、電極は、ヒドロゲル、又は酸化イリジウム、酸化チタン、五酸化タンタル、他の金属酸化物などのフラクタルコーティング、パリレンなどのポリ(p-キシリレン)ポリマー等を含むがこれらに限定されない様々な材料でコーティングされ得る。
【0094】
本明細書の実施形態に従い、いくつかのリード固定法及び構成が使用され得る。リード固定法のいくつかの非限定的な例としては、生体適合性接着剤固定、爪固定、ヘリックスコイル固定、脈管系内におけるリードの受動調心、局所脈管系内における歯固定、局所脈管系内における螺旋バイアス固定、圧縮固定、縫合スリーブ固定等が挙げられ得る。いくつかの例では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位を取り囲む又はこれに隣接する脈管系内に配置され得る。他の実施形態では、本明細書で具現化されるリードは、癌性腫瘍の部位に又はその内部に又はその周囲に外科的に配置され得る。
【0095】
本明細書での使用に適したリードはまた、リードの長手方向の長さ全体又はリードの長手方向の長さの選択部分に延びる1つ以上の開口内腔を含み得る。いくつかの実施形態では、開口内腔は、疾患の進行及び/又は退行を監視するために癌性腫瘍部位から生検試料を定期的に得るのに適した内蔵生検装置を含み得る。開口内腔を有するリードはまた、ステロイド又は化学療法剤などの1つ以上の薬物を腫瘍の部位に定量ポンプにより1回のボーラスで又は定期的に送達することができる、内蔵された薬物送達内腔を含むように構成され得る。リードは、リードの長さに沿って配置された、癌性腫瘍の部位又はその近傍に薬物送達のための出口を提供するための1つ以上の門を含み得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、リードの一部分又はリード全体は、薬物溶出コーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、ステロイドなどの抗炎症薬を含み得る。いくつかの実施形態では、ステロイドはデキサメサゾンであり得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは化学療法剤を含み得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、パクリタキセル、ドセタクセル等を含むがこれらに限定されないタキサン又はこの誘導体を含み得る。他の実施形態では、薬物溶出コーティングは、アルキル化薬、ビンカアルカロイドなどの植物アルカロイド、細胞毒性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬等を含むがこれらに限定されない更なるクラスの化学療法剤を放出するように構成され得る。いくつかの実施形態では、薬物溶出コーティングは、コーティングから薬物を持続放出式で放出するように構成され得る。
【0097】
本明細書中のリードは、多くの形状又は構成をとることができる。いくつかの実施形態では、リードは線形とすることができ、他の実施形態では、リードは円形とすることができる。円形リードは完全に閉じたループであってもよい、又は半分閉じたループであってもよい。いくつかの実施形態では、リードは、U字形、S字形、螺旋形、半円形、楕円形等を含むがこれらに限定されない多くの構成にリードを成形することを可能にすることができる曲げられるコアを含み得る。
【0098】
更に他の例では、本明細書での使用に適したリードは、臨床医が癌性腫瘍の部位又はその近傍に精密配置するのを補助することができる蛍光定量マーカ又は磁気マーカを含み得る。リードはまた、癌性腫瘍又はその近傍のpHの変化を検知するための内蔵pHセンサ又は目的化学分析物の濃度の分析に適した他の化学センサを含み得る。
治療パラメータ
癌性腫瘍の成功的治療は、電界強度、周波数、細胞の不均一性、細胞の大きさ、癌細胞の種類、腫瘍の大きさ、及び体内の位置を含むいくつかの変数に依存し得る。本明細書中に記載される医療デバイスを使用し、様々な治療パラメータが実施され得る。1つ以上の治療的パラメータセットは医療デバイスのメモリにプログラムされ、
図3に示される制御回路306によって実施され得る。例示的な治療的パラメータセットは、以下の概念を実施するものを含み得る:様々な周波数の掃引、1つ以上の周波数の同時スタッキング、1つ以上の周波数の逐次ステッピング、1つ以上の電界の空間的又は時間的送達、様々な電界強度の掃引、有効な回転電界の印加、電圧制御モード又は電流制御モードの調整、1つ以上のデューティサイクルの実施、パルス幅変調、波形形状及び/又はパルス系列の操作、並びに高周波又は高電界強度パルスの時折の使用。
【0099】
治療的パラメータセットは、自律的に動作するように医療デバイスにプログラムすることができる、又は患者若しくは臨床医が、プログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することにより照会及び操作され得る。他の実施形態では、治療的パラメータセットは、外部計算デバイスから医療デバイスに無線通信され得る。本明細書中の治療的パラメータセットのいずれかで使用するのに適した周波数及び/又は電界強度は、電界発生回路320に関して上で述べた。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは同時に実施することができる。他の実施形態では、1つ以上の治療的パラメータセットは交互に実施することができる。
【0100】
ここで
図15を参照すると、例示的なプロット1502は、癌性腫瘍の部位における様々な周波数の掃引の一例を示す。プロット1502は、治療が癌性腫瘍に適用されるにつれて周波数が経時的に増加する交流電界を示す。いくつかの実施形態では、周波数掃引は、約100kHz~300kHzの範囲を含む第1の周波数掃引と約200kHz~500kHzの範囲を含む第2の周波数との間の交番を含み得る。記載されるような第1及び第2の周波数範囲の掃引は、治療の過程全体を通して無期限に実施され得ることは理解されるであろう。
電界発生器
本明細書で具現化される医療デバイスは、癌性腫瘍の治療過程中に使用される治療法及び診断法に特に適した電界発生器を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書での使用に適した電界発生器は、癌性腫瘍の主要治療として指示されることの多い放射線治療の有害な作用にその構成要素が耐えるようにするために放射硬化で処理されたものを含み得る。電界発生器は、上記の
図3及び
図5を参照して説明したものなどの構成要素を含み得る。
【0101】
本明細書で具現化される電界発生器は、記載したような任意の数の治療的パラメータセットをプログラムすることができる。電界発生器は、植え込み前にプログラムすることができる、又は臨床医がプログラマ、自宅ユニット、及び/若しくはモバイルユニット(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ等)などの外部計算デバイスを使用することによりプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、遠隔測定回路を介して電界発生器に送られ得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルに通信的に接続された、医療デバイスの経皮的充電を容易にするための充電回路を含み得る。いくつかの実施形態では、電界発生器は、受信用コイルと外部充電デバイスとの間で無線通信することができる。
【0102】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容に別段の明確な指示のない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの化合物(a compound)」を含有する組成物に言及する場合、2つ以上の化合物の混合物を含む。用語「又は(or)」は、内容に別段の明確な指示のない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で全般的に用いられることにも留意されたい。
【0103】
本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるように、文言「構成される(configured)」は、特定のタスクを実施する又は特定の構成をとるように構築若しくは構成されたシステム、装置、又は他の構造を説明することにも留意されたい。文言「構成される(configured)」は、配置及び構成される(arranged and configured)、構築及び配置される(constructed and arranged)、構築される(constructed)、製造及び配置される(manufactured and arranged)等のような他の類似の文言と区別なく使用することができる。
【0104】
本明細書内の全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の水準を示す。全ての刊行物及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が参照により具体的且つ個々に示されたかのような程度と同程度まで参照により本明細書中に組み込まれる。
【0105】
様々な特定の及び好ましい実施形態及び手法を参照して態様を記載してきた。しかしながら、本明細書の趣旨及び範囲内にありながらも多くの変更及び修正を施すことができることは理解すべきである。