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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】相乗的抗微生物組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 33/04 20060101AFI20220426BHJP
   A01N 41/12 20060101ALI20220426BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A01N33/04
A01N41/12
A01P3/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021017827
(22)【出願日】2021-02-05
(62)【分割の表示】P 2017541593の分割
【原出願日】2016-02-19
(65)【公開番号】P2021073294
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/121,943
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ティー・フェルダー
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス・トーマス・ヨハネス・ヴィリガー
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・クリスティン・イヴォン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02354771(GB,A)
【文献】特開2014-185403(JP,A)
【文献】国際公開第2013/182641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 33/04
A01N 41/12
A01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミンと、(b)ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドと、を含み、N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン対ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドの重量比が、10:1~1:10である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項2】
(a)N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミンと、(b)ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドと、を含み、N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン対ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドの重量比が、9:1~1:10である、相乗的抗微生物組成物。
【請求項3】
水性媒体中で微生物の増殖を阻害または微生物の増殖を制御する方法であって、前記水性媒体に請求項1に記載の組成物を添加することを含む、方法。
【請求項4】
水性媒体中で微生物の増殖を阻害または微生物の増殖を制御する方法であって、前記水性媒体に請求項2に記載の組成物を添加することを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の相乗的抗微生物組成物を含む、水性媒体。
【請求項6】
請求項2に記載の相乗的抗微生物組成物を含む、水性媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個々の抗微生物化合物について観察されるよりも大きな活性を有する、殺生物剤の組み合わせに関する。
【0002】
少なくとも2つの抗微生物化合物の組み合わせの使用は、潜在的市場を広げ、使用濃度及び費用を低減し、廃棄物を低減することができる。場合によっては、市販の抗微生物化合物は、特定の種類の微生物に対する弱い活性、または比較的緩徐な抗微生物作用、または高温及び高pHなどの特定の条件下での不安定性のために、高い使用濃度ですら微生物の効果的な制御を提供することができない。異なる抗微生物化合物の組み合わせが、微生物の全体的な制御を提供するため、または特定の最終使用環境においてより低い使用率で同一のレベルの微生物制御を提供するために、時には使用される。更に、相乗作用は予測不可能な現象であることが見出されている。しばしば、同様の化合物が特定の活性物質と組み合わされると、異なる相乗的プロファイルを示す。それは、相乗作用が証明されないということであり得るか、または相乗作用は存在するが異なる相乗的範囲にわたって存在するということであり得る。この観察のため、ある同様の化合物の相乗的プロファイルに基づいて、1つの化合物の相乗的プロファイルに関する結論を導くことは、不可能ではないにしても、困難である。したがって、より相乗的な組み合わせ及びそれらの相乗的範囲が発見されなければならない。
【0003】
そのような相乗作用の一例は、米国特許第5,385,896号に見出される。この参考文献は、ホスホニウム塩とアルデヒドとの組み合わせを開示するが、この参考文献は、本明細書に特許請求される組み合わせのうちのいずれも提示しない。微生物の効果的な制御を提供するための改良された活性を有する抗微生物化合物の追加の組み合わせに対する必要性が、依然として存在する。本発明が対処する問題は、そのような抗微生物化合物の組み合わせを提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、(a)ジアミンと、(b)ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドと、を含み、ジアミン対ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドの重量比が、10:1~1:10である、相乗的抗微生物組成物を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段文脈が明らかに示さない限り、指定された定義を有する。「抗微生物化合物」という用語は、微生物の増殖もしくは繁殖を阻害すること、及び/または微生物を死滅させることができる化合物を指し、抗微生物化合物は、適用される用量レベル、システム条件、及び所望される微生物制御のレベルによって、殺細菌剤、細菌発育抑制剤、静細菌剤、細菌発育阻害剤、殺真菌剤、真菌発育抑制剤、殺藻類剤、及び藻類発育抑制剤を含む。「微生物」という用語は、例えば、真菌(酵母菌及びカビなど)、細菌、ならびに藻類を含む。以下の略称が、本明細書を通して使用される:ppm=重量百万分率(重量/重量)、mL=ミリリットル。別段明記されない限り、温度は摂氏度(℃)であり、パーセンテージに対する言及は重量による(重量%)。本発明の組成物中の抗微生物化合物のパーセンテージは、組成物中の活性成分の総重量、すなわち、溶媒、担体、分散剤、安定剤、または存在し得る他の材料のいかなる量も除いた、抗微生物化合物自体に基づく。最後に、全ての範囲値の端点は、包括的かつ組み合わせ可能である(例えば、10:1~1:10及び代替的には3:1~1:3と表される範囲はまた、例えば、10:3も含み得る)。
【0006】
本明細書で使用される場合、ジアミンは、N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン、CAS番号2372-82-9を指し、ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミドまたは「DTBMA」は、CAS番号2527-58-4に対応する。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、ジアミン対ジチオ-2,2’-ビス-ベンズメチルアミド(DTBMA)の重量比は、10:1~1:10、代替的には9:1~1:9、及び更に代替的には3:1~1:3である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、抗微生物の組み合わせは、例えば、缶内保存剤として、水性媒体中での微生物増殖の阻害に有用である。本組成物はまた、工業用水及び水含有/混入媒体(冷却水、空気清浄器、熱交換器、ボイラ水、パルプ及び製紙工場水など)、他の工業用処理水(バラスト水、廃水、金属加工流体、油、及びガスなど)、ラテックス、塗料、コーティング、接着剤、インク、テ-プ目地化合物、顔料、水系スラリー、パーソナルケア製品及び家庭用製品(洗剤など)、濾過システム(逆浸透システム及び限外濾過システムを含む)、便器、織物、皮革及び皮革製造システム、またはこれらとともに使用されるシステムを含むが、これらに限定されない、他の水性媒体中での微生物の制御に有用である。
【0009】
典型的には、微生物の増殖を制御するための本発明の殺生物剤の組み合わせの量は、10ppm~5,000ppmの活性成分である。本発明のいくつかの実施形態において、本組成物の活性成分は、少なくとも20ppm、代替的には少なくとも50ppm、代替的には少なくとも100ppm、代替的には少なくとも150ppm、代替的には少なくとも200ppmの量で存在する。いくつかの実施形態において、本組成物の活性成分は、2,000ppm以下、代替的には1,000ppm以下、代替的には500ppm以下、代替的には400ppm以下、代替的には300ppm以下、代替的には250ppm以下、代替的には200ppm以下、代替的には100ppm以下、代替的には50ppm以下の量で存在する。上記に言及される濃度は、殺生物剤の組み合わせを含有する液体組成物中でのものである。
【0010】
本発明はまた、特許請求される殺生物剤の組み合わせを材料中に組み込むことによって、上記の使用領域において、特に缶内保存剤用途において、微生物増殖を低減または阻害または防止するための方法も網羅する。
【実施例
【0011】
本発明の殺生物剤の組み合わせの相乗性を、Kull,F.C.らによってApplied Microbiology9:538-541(1961)に記載される方法を使用して決定した。
【0012】
相乗作用指数(SI)を計算するための式は、
【0013】
【数1】
【0014】
式中、
QA=エンドポイント(増殖/増殖なし)を生成した単独の作用におけるppmでの化合物Aの濃度
Qa=エンドポイント(増殖/増殖なし)を生成した、混合物中でのppmでの化合物Aの濃度
QB=エンドポイント(増殖/増殖なし)を生成した単独の作用におけるppmでの化合物Bの濃度
Qb=エンドポイント(増殖/増殖なし)を生成した、混合物中でのppmでの化合物Bの濃度である。
【0015】
この研究において、殺生物剤のエンドポイントは、少なくとも4対数の細菌もしくは酵母菌の低減を呈するか、または特定の接触時間で最大2対数の細菌数もしくは酵母菌数を維持するものとして定義される。エンドポイントを確立することができない場合、試験された殺生物剤の最高濃度を計算のエンドポイントとして使用し、SIを「未満または<」の値で記録する。
【0016】
2つの殺生物剤における相乗性は、SIが1未満の値を有するときに実証される。混合物は、SIが1に等しい場合に相加的効果を、SIが1超である場合に拮抗性を示した。
【0017】
最小発育阻止濃度(MIC)測定試験は、殺生物剤、殺生物剤ブレンド、または殺生物剤の組み合わせが、定義されるブロス中で、細菌、酵母菌、または真菌の増殖を防止するための、最低濃度を評価するように設計される。インキュベーション後、目視で検出可能な濁度に基づいて試料を評価する。
【0018】
この試験は、殺生物剤の1.5の希釈係数で実行した。
【0019】
以下の殺生物剤生成物/混合物を、2つの細菌株及び1つの酵母菌に対して試験した。
【0020】
最小発育阻止濃度(MIC)測定試験プロトコル
1.透明な容器中、試験試料を等しい体積で調製した。殺生物剤の希釈を、細菌は7.3のpHのトリプチックソイブロス(TSB)中で、及び真菌株はpH5.4の麦芽抽出物ブロス(MEB)中で行った。
1つの試験される殺生物剤生成物及び種当たり16個の試料を、1.5の希釈係数での段階希釈によって複製し調製した。
微生物1株当たり、いかなる殺生物剤も含有しない2つの試料を対照として追加した。
【0021】
2.各試験試料を微生物懸濁液で植菌して、細菌種の場合約1×10CFU/mlのレベルを、真菌種では約1×10CFU/mlをそれぞれもたらした。
【0022】
微生物懸濁液の調製:
【0023】
細菌培養物:
Pseudomonas aeruginosa DSM番号939 ATCC番号 15442
Staphylococcus aureus DSM番号799 ATCC番号 6538
培養物をクライオバイアル中-80℃でグリセロールストックとして維持し、解凍し、その後、TSA寒天プレート上に100μl塗抹した。30℃で1日間のインキュベーション後、pH7.3の緩衝剤で株を収集した。
細胞の濃度を、標準生菌数計測技術を使用することによって評価した。
種菌について、pH7.3の緩衝剤中で希釈を行った。
【0024】
酵母菌培養物:
Candida albicans DSM番号1386 ATCC番号10231
培養物をクライオバイアル中-80℃でグリセロールストックとして維持し、解凍し、その後、MEA(麦芽抽出物寒天)ペトリ皿上に100μl塗抹した。
酵母菌株プレートを28℃で1~2日間インキュベートし、その後、pH5.0の緩衝剤で収集した。
総生菌数計測結果に基づいて、種菌を調製した。
【0025】
3.試験試料のインキュベーション:
細菌 30℃で2日間
酵母菌 28℃で2日間
【0026】
4.読み取りは、増殖/増殖なしの評価によって目視で行った。インキュベーション後、微生物の増殖は濁度をもたらし、透明性は増殖なしを示す。インキュベーション後にブロス中で増殖なしを示す最低濃度を、MIC値として採用する。
【0027】
細菌及び酵母菌に対する相乗作用を呈する2つの殺生物剤の結果を、表1~3に提示する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】