IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネステ オイル オサケ ユキチュア ユルキネンの特許一覧

特許7064056再生可能な生成物を製造するためのプロセス
<>
  • 特許-再生可能な生成物を製造するためのプロセス 図1
  • 特許-再生可能な生成物を製造するためのプロセス 図2
  • 特許-再生可能な生成物を製造するためのプロセス 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】再生可能な生成物を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/41 20060101AFI20220426BHJP
   C10L 1/04 20060101ALI20220426BHJP
   C10M 105/04 20060101ALI20220426BHJP
   C10G 3/00 20060101ALI20220426BHJP
   C07C 49/04 20060101ALI20220426BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20220426BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
C07C45/41
C10L1/04
C10M105/04
C10G3/00 Z
C07C49/04 A
C07C11/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021538290
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 FI2019050900
(87)【国際公開番号】W WO2020141249
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】20186143
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュッリョヤ、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】シルボネン、ペトロ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-518530(JP,A)
【文献】特表2010-529274(JP,A)
【文献】特表2015-520162(JP,A)
【文献】特表2017-533204(JP,A)
【文献】特表2017-537174(JP,A)
【文献】米国特許第09314785(US,B1)
【文献】国際公開第2013/113976(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/234187(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/024728(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C10N10/00-80/00
C10G1/00-99/00
C11B1/00-15/00
C11C1/00-5/02
C07C1/00-409/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的起源のフィードストックから、再生可能なケトンおよび再生可能なアルケンを同時に製造するための方法であって、
a)脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含む、生物学的起源のフィードストックを提供する工程、
b)前記フィードストックを、2またはそれ以上の炭素鎖を有する一価のアルコールの存在下でエステル化反応に付す工程であって、前記脂肪酸と前記一価のアルコールとのエステルを生じる工程、ただしここで、前記フィードストックが前記脂肪酸と前記2またはそれ以上の炭素鎖を有する一価のアルコールとのエステルを含む場合に、本工程b)は任意であり、
c)前記脂肪酸と前記一価のアルコールとの前記エステルを、金属酸化物ケトン化触媒の存在下でケトン化反応に付す工程であって、ケトン、アルケンおよび二酸化炭素を含む中間生成物流を生じる工程、ならびに、
d)前記アルケンを前記中間生成物流から分離する工程であって、アルケンが枯渇した中間生成物流と分離されたアルケンとが生じる工程
を含む。
【請求項2】
前記フィードストックを、前記工程b)の前に、水素化触媒の存在下で前水素化反応に付す工程をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フィードストックを前記工程b)の前に精製することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記工程c)の前に、前記脂肪酸とおよび前記一価のアルコールとの前記エステルを精製する工程を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程c)の前に、前記脂肪酸とおよび前記一価のアルコールとの前記エステルを、水素化触媒の存在下で前水素化反応に付す工程を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ケトン化触媒が、活性触媒材料としてTiO2を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程c)の前記ケトン化反応を少なくとも部分的に液相で行うことを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程c)の前記ケトン化反応が、100~500℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPaの範囲の圧力で、ケトン化触媒の存在下、行われる請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程c)の前記ケトン化反応が、300~400℃の範囲の温度で、および、0.5~3MPaの範囲の圧力で、ケトン化触媒の存在下、行われる請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)の前記ケトン化反応が、0.5~1.0kg CO2/kgエステルフィードのCO2フローの存在下で行われる請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程c)が、2またはそれ以上の炭素鎖長を有する一価のアルコールを、前記ケトン化反応へと添加することを含む請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記中間生成物流から二酸化炭素を分離することを含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
再生可能なワックスを製造するための方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載のアルケンが枯渇した中間生成物流を製造する工程、および
前記アルケンが枯渇した中間生成物流を、再生可能なワックスを得るために水素化脱酸素化反応に付す工程
を含む方法。
【請求項14】
0wt%以上の飽和炭化水素、0.03wt%以下の硫黄および120以上の粘度指数を有するAPIのグループIIIベースオイル仕様を満たす、再生可能なベースオイルを製造するための方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載のアルケンが枯渇した中間生成物流を製造する工程、および
前記アルケンが枯渇した中間生成物流を、再生可能なベースオイル成分を含む脱酸素化および異性化された生成物流を得るために、水素化脱酸素化反応および水素異性化反応の両方に、同時にまたは順番に、付される工程
を含む方法。
【請求項15】
前記水素化脱酸素化反応が、100~500℃の範囲の温度;大気圧~20MPaの範囲の圧力で、水素化脱酸素化触媒の存在下で行われる請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記水素化脱酸素化反応が、250~400℃の範囲の温度、0.2~8MPaの範囲の圧力、0.5~3h -1 の範囲のWHSV、および350~900nL H 2 /L feedのH 2 フローで、水素化脱酸素化触媒の存在下で行われる請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記水素化脱酸素化に付すことおよび前記水素異性化反応に付すことが、順番に行われ、および、前記水素化脱酸素化および前記水素異性化のあいだにガスから液体を分離することを含む請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記水素異性化反応が、200~450℃の範囲の温度;1~15MPaの範囲の圧力で、水素異性化触媒の存在下で行われる請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記水素異性化反応が、250~400℃の範囲の温度、1~6MPaの範囲の圧力、0.5~3h -1 の範囲のWHSV、および100~800nL H 2 /L feedのH 2 フローで、第VIII族金属およびモレキュラーシーブを含む水素異性化触媒の存在下で行われる請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記再生可能なベースオイル成分を含む脱酸素化および異性化された生成物流を、蒸留された再生可能なベースオイル、および、液化石油ガス、ナフサおよびディーゼル/ジェット燃料のうちの1つまたは複数を得るために蒸留することを含む請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記一価のアルコールが、2~20の炭素鎖長を有る請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記一価のアルコールが、再生可能なアルコールである請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばケトン、オイル生成物およびオレフィンなどの再生可能な生成物を製造するためのプロセス、特には、脂肪酸エステルのケトン化反応を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能なフィードストックは、石油化学原料への持続可能な代替を提示する。再生可能なフィードストックは、例えば、植物オイル、動物性脂肪、リサイクルされた廃棄物オイルに、および海藻オイルにも由来している。水素化された、例えばパーム油などの種々の植物オイル、それらの誘導体、動物性脂肪、および他の廃棄物または残渣が、世界的な再生可能燃料市場を支配している主なフィードストックとなっている。
【0003】
燃料に加えて、脂肪およびオイルは、再生可能な化学品およびベースオイルへと段階的に処理され得る。これらのプロセスの一つはケトン化を含み、これは、高い反応性のカルボン酸官能基の除去を可能にし、他方で、炭素鎖長を増大させる。形成されたケトンは、必要とされる応用のために適した生成物を得るための、例えば水素化脱酸素化などのさらなる凝縮のためのビルディングブロックである。
【0004】
特許文献1は、脂肪酸および脂肪酸エステルを含む様々な酸素含有の有機分子を含むフィードストックを、凝縮反応およびその後の水素化脱官能基化および異性化反応に付す工程を含むベースオイルを製造するための方法を記載している。
【0005】
特許文献2は、生物起源の新しい種類の、高品質な炭化水素ベースオイルを製造するためのプロセスを記載している。プロセスは、ケトン化、水素化脱酸素化、および異性化工程を含む。生物学的原料に基づく脂肪酸および/または脂肪酸エステルが好ましくはフィードストックとして使用される。
【0006】
ケトン化反応は、通常、それらの高い反応性に起因して、出発物質としてカルボン酸を用いて行われる。しかしながら、遊離脂肪酸は、非常に腐食性が高く、および、ケトン化反応のための特別な種類のリアクターが必要とされる。
【0007】
処理のために顕著により経済的な材料の使用を可能にすることから、腐食性のないケトン化が好ましいであろう。
【0008】
エテンは、いくつかの方法によって製造されるプラットホーム石油化学品である。主な方法は、炭化水素および蒸気が750~950℃まで加熱される蒸気分解である。このプロセスは、大きな炭化水素をより小さなものに変換し、そして、不飽和を導入する。エテンは、結果として得られる混合物から、繰り返される圧縮および蒸留によって分離される。エテンの製造のために用いられる他の技術としては例えば、メタンの酸化的カップリング、フィッシャー・トロプシュ合成、メタノールからオレフィン、および、触媒脱水素化などが挙げられる。
【0009】
再生可能なエタンは、スクロースのフィードストックの発酵によって、および、でんぷんのバイオマスから加水分解とそれに続く発酵によって、または、リグノセルロースバイオマスから得られ得る、(バイオマスからの)再生可能なエタノールから製造され得る。
【0010】
しかしながら、低価値の生物学的フィードストックを高価値な製品へと処理することのできる、さらに効率のよい方法の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2008/152200号
【文献】国際公開第2007/068795号
【発明の概要】
【0012】
以下の説明は、発明の様々な態様のうちのいくつかの様態の基本的な理解を提供するための簡単な概略を示しているものである。概略は、本発明の広範な概説ではない。それは、発明の重要な鍵となるものまたは要素を特定することや、それに限定されることを意図するものではない。以下の概略は、単に、発明のいくつかの概念を、発明の例示されている態様のより詳細な記載への前置きとして、簡略された形で示しているに過ぎない。
【0013】
本発明において、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを含むフィードストックであって、アルコールが2またはそれ以上の炭素鎖を有している、すなわち脂肪酸のエチル、プロピル、ブチルエステルなどである脂肪酸のエステルが、金属酸化物ケトン化触媒の存在下でケトン化された場合に、対応するケトンだけでなくオレフィンも得られることが観察された。有利には、ケトン化反応は、腐食性耐性のリアクターを必要とせず、そしてそれに加えて、再生可能なアルケンが同時に形成される。
【0014】
したがって、本発明の目的は、生物学的起源のフィードストックから、再生可能なケトンおよびアルケンを同時に製造するための方法を提供することであって、該方法は、
a)脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含むフィードストックを提供する工程、
b)フィードストックを、2またはそれ以上の炭素鎖を有する一価のアルコールの存在下でエステル化反応に付す工程であって、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを生じる工程、ただしここで、フィードストックが脂肪酸と2またはそれ以上の炭素鎖を有する一価のアルコールとのエステルを含む場合に、工程b)は任意であり、
c)脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを、金属酸化物ケトン化触媒の存在下でケトン化反応に付す工程であって、ケトン、アルケンおよび二酸化炭素を含む中間生成物流を生じる工程、ならびに、
d)アルケンを中間生成物流から分離する工程であって、アルケンが枯渇した中間生成物流と分離されたアルケンとが生じる工程
を含む。
【0015】
本発明の別の目的は、生物学的起源のフィードストックから再生可能なワックスを製造するための方法を提供することであって、該方法は、得られたアルケンが枯渇した中間生成物流を水素化脱酸素化反応に付す工程を含む。
【0016】
本発明のさらなる別の目的は、生物学的起源のフィードストックから、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt-%の硫黄および≧120の粘度指数を有する、APIのグループIIIベースオイル仕様を満たす再生可能なベースオイルを製造するための方法であって、該方法が、
再生可能なベースオイル成分を含む、脱酸素化されたおよび異性化された生成物流を得るために、得られたアルケンが枯渇した中間生成物流を、水素化脱酸素化反応および水素異性化反応の両方に、同時にまたは順番に付す工程を含む。
【0017】
数々の本発明の例示的かつ非限定的な態様が、付随の従属クレームに記載されている。
【0018】
様々な例示的かつ非限定的な発明の態様は、追加の目的および優位点と共に、以下の特定の例示的および非限定的な態様から、それを添付の図面に関連して読んだ場合に、最もよく理解されるであろう。
【0019】
動詞「含む(to comprise)」および「含む(to include)」は、本明細書の中で、言及されていない特徴の存在を排除または必要とすることのないオープンエンド型の限定としてこの記載の中で使用される。従属クレームに言及される特徴は、そうではないと明確に述べられていない限り、交互に自由に組み合わされ得る。さらに、「一つの(a)」または「一つの(an)」の使用、すなわち単数の形式は、本明細書を通して、複数を排除するものではないということが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の再生可能なケトンおよびアルケンの同時の製造の例示的、非限定的な模式的概観を示す。
図2図2は、本発明の再生可能なワックスおよびアルケンの製造の例示的、非限定的な模式的概観を示す。
図3図3は、本発明の再生可能なベースオイルおよびアルケンの製造の例示的、非限定的な模式的概観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の記載において提供される特定の例は、添付のクレームの範囲および/または適用可能性を限定しているものと理解されるべきではない。本明細書中に提供される例のリストおよびグループは、そうではないと明確に述べられていない限り、網羅的なものではない。
【0022】
本明細書中に記載されるように、ベースオイルは、潤滑油成分としての使用に適切であるオイル製品である、
【0023】
アメリカ石油協会(API)は、ベースオイルを、表1に示されるように5つの主要なグループに分類している。グループI~IIIが、様々な品質の石油ベースオイルである。
【0024】
【表1】
【0025】
APIは、グループIIおよびIIIの相違を粘度指数(VI)という点のみで定義しており、そして、グループIIIベースオイルはまた、高粘度ベースオイル(VHVI)とも称されている。しかしながら、低温流動性、粘度レベルおよびノアク揮発度もまたベースオイルの重要な特性である。本発明の再生可能なベースオイルは、APIのグループIIIベースオイルの仕様を満たすものであり、≧90wt-%の飽和炭化水素、≦0.03wt-%の硫黄、および≧120である粘度指数を有している。
【0026】
潤滑油産業は、通常、表1のグループ用語法を[Handbook on Automobile & Allied Products 2nd Revised Edition, 2013, Ajay Kr Gupta,10 Lube Oil: page 117]を含むように拡張している:
グループI+:グループIであって、粘度指数が103~108であるもの
グループII+:グループIIであって、粘度指数が113~119であるもの
グループIII+:グループIIIであって、粘度指数が少なくとも140であるもの
【0027】
好ましい態様において、本発明の再生可能なベースオイルは、APIのグループIII+ベースオイル仕様を満たしており、≧90重量%の飽和炭化水素、≦0.03重量%の硫黄、および≧140である粘度指数を有している。
【0028】
本明細書中に規定されるように、ケトン化反応は、2つの化合物の化学反応を通じて、特には、2つの脂肪酸中のまたは2つの脂肪酸エステル中のアシル基のあいだの反応によって、ケトンを製造する反応である。
【0029】
本明細書中に規定されるように、フィードストックは、生物学起源のものである。本発明中にさらに規定されるように、生物学的起源のフィードストックの再生可能な成分含有量は、出発物質から決定され、ASTM D6866に記載されているように14C、13C、および/または12Cを含む同位体分布によって生成物中で決定される。
【0030】
本明細書中に規定されるように、脱酸素化は、有機分子から共役結合している酸素を除去するための方法である。
【0031】
本明細書中に規定されるように、水素化は、触媒の影響下で分子水素の手段によって、炭素-炭素二重結合を飽和させるための方法である。
【0032】
本明細書中に規定されるように、脂肪酸とは、生物学的起源の、C1より長い炭素鎖長を有するカルボン酸を意味する。
【0033】
本明細書中に規定されるように、脂肪酸エステルは、トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル、および、天然のワックスを意味し、これら全ては生物学的起源である。
【0034】
一態様において、本発明は、生物学的起源のフィードストックから再生可能なケトンおよびアルケンを同時に製造するための方法に関する。該方法は、以下の工程:
a)脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含むフィードストックを提供する工程、
b)一価のアルコールの存在下でのエステル化反応にフィードストックを付す工程であって、一価のアルコールが2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有し、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを生じる工程、
c)脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを金属酸化物ケトン触媒の存在下で、ケトン化反応条件に付す工程であって、ケトン、アルケン、水および二酸化炭素を含む中間生成物流を生じる工程、ならびに
d)中間生成物流からアルケンを分離する工程であって、アルケンが枯渇した中間生成物流および分離されたアルケンを生じる工程
を含む。
【0035】
一態様において、フィードストックは、脂肪酸を含む。この態様において、脂肪酸は、例えばエタノールなどの2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールとエステル化される。反応は、好ましくは、酸によって触媒される。反応は、式1に示されるように、脂肪酸とアルコールのエステルおよび水を生成する。
【0036】
【化1】
【0037】
別の態様において、フィードストックは、脂肪酸メチルエステルを含む。この態様において、脂肪酸メチルエステルは、例えばエタノールなどの2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールと共に、塩基の存在下、処理される。ここで、エステル化反応は、トランスエステル化反応であり、そして、それは、2つまたはそれ以上の炭素を有する一価のアルコール、すなわちエタノールと脂肪酸とのエステルおよびメタノールを、式2に示されるように形成する。
【0038】
【化2】
【0039】
別の態様において、フィードストックは、グリセリドを含む。この態様において、グリセリドは、塩基の存在下で、例えばエタノールなどの2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールと処理される。トランスエステル化反応が、2つまたはそれ以上の炭素を有する一価のアルコールと脂肪酸とのエステルおよびグリセロールを、式3に示されるように生成する。
【0040】
【化3】
【0041】
さらに別の態様において、フィードストックは、エステル、または脂肪酸、および2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコール、例えば脂肪酸エチルエステル、遊離脂肪酸、およびトリグリセリドなどを含む。この態様において、脂肪酸は、最初に、脂肪酸エチルエステルおよび水を生成するために触媒として酸を用いて、例えばエタノールなどとエステル化され、その後、塩基によって触媒されるトリグリセリドのトランスエステル化が行われ、これは、式4に示されるように、脂肪酸エチルエステルとグリセロールとを生成する。
【0042】
【化4】
【0043】
顕著な量の脂肪酸エステルをフィードストックが含んでいる場合のみ、工程b)は省略され得、ここで、脂肪酸エステルは、2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールと脂肪酸とのエステルである。この態様において、方法は、
脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを含むフィードストックを提供する工程であって、一価のアルコールが2つまたはそれ以上の炭素を有する工程、
脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを金属酸化物ケトン触媒の存在下で、ケトン化反応条件に付す工程であって、ケトン、アルケン、水および二酸化炭素を含む中間生成物流を生じる工程、ならびに
中間生成物流からアルケンを分離する工程であって、アルケンが枯渇した中間生成物流および分離されたアルケンを生じる工程
を含む。
【0044】
例示的な態様において、フィードストックは、少なくとも25重量%、好ましくは50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルを含み、ここでアルコールは、2つまたはそれ以上の炭素を有する。これらの態様において、フィードストックは、エステル化なしにケトン化に付されてもよい。
【0045】
一態様において、精製工程が、エステル化工程b)の前またはケトン化工程c)の前に該方法に組み込まれる。好ましい精製方法は、分留である。
【0046】
工程b)のエステル化は、好ましくは酸触媒を用いたフィードストックの脂肪酸のエステル化、または、好ましくは従来のアルカリ触媒または固体触媒によるフィードストックのトリグリセリドの形である再生可能なオイルのトランスエステル化を含んでいてもよい。
【0047】
特定の態様において、フィードストックは、脂肪酸メチルエステル(FAMEs)を含み、および、エステル化工程b)は、FAMEsを、触媒の存在下で例えばエタノールなどの2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する過剰の一価のアルコールと処理することを含む。トランスエステル化において形成されたメタノールは、さらなるプロセスの前にまたはそのあいだに、所望の脂肪酸エチルエステルから分離される。
【0048】
図1は、生物学的起源のフィードストックから再生可能なケトンおよび再生可能なアルケンを同時に製造するための例示的、非限定的な方法を記載している。図において、符号および矢印は、それぞれ、反応および流(streams)を示している。
【0049】
したがって、脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含むフィードストック1は、任意には、精製されたフィードストックを得るために、例えば蒸留などによって、精製工程2に付される。フィードストックまたは精製されたフィードストックは、続いて、一価のアルコールとのエステル化工程3へと付され、ここで、アルコールは、2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有している。得られたエステルは、任意には、ケトン化工程5に導かれる前に、好ましくは蒸留による分留4、または、さらなる精製工程4’へと付されてもよい。中間生成物流は、ケトン化から分離工程6へと導かれ、ここで、形成されたアルケンおよびCO2はケトンから分離され、アルケンが枯渇したケトンを含む中間流が形成される。
【0050】
フィードストックが顕著な量の、例えば25重量%以上の、脂肪酸と一価のアルコール(アルコールは2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する)とのエステルを含む場合、図1のエステル化工程は省かれてもよく、または、少なくとも、脂肪酸と一価のアルコール(アルコールは2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する)とのエステルを含むフィードストックの留分は、エステル化工程なしでさらに処理され得る。好ましい態様において、プロセスは、フィードストックから、好ましくは蒸留によって、所望の留分を分離することを含む。
【0051】
特定の態様において、一価のアルコールが、ケトン化工程5に添加される。アルコールの脱ヒドロキシル化は、のちにケトン化触媒のコーク形成を軽減する水を生成する。さらに、導入されたアルコールは、ケトン化反応条件のあいだにアルケンを製造し得、これは形成されるアルケンの総収率を増大させる。
【0052】
一価のアルコールは、好ましくは、例えば、再生可能なエタノール、再生可能なプロパノール、または再生可能なブタノールなどの、従来技術にしたがって製造される再生可能なアルコール、好ましくは再生可能なエタノールである。
【0053】
ケトン化反応はしたがって、再生可能なケトン、再生可能なアルケン、および再生可能な二酸化炭素を製造する。
【0054】
図2は、生物学的起源のフィードストックから再生可能なワックスおよび再生可能なアルケンを製造するための例示的、非限定的な方法を記載している。方法は、再生可能なケトンおよび再生可能なアルケンを製造するための図1に示されているものと同様であるが、得られたアルケンに枯渇した中間生成物流は、さらなる水素化脱酸素化工程7に付される。
【0055】
図3は、生物学的起源のフィードストックからいくつかの再生可能な炭化水素成分、例えば、再生可能な液化石油ガス、再生可能なナフサ、再生可能なディーゼル、再生可能なジェット燃料、および再生可能なベースオイル(RBO)などと共にアルケンを製造するための例示的、非限定的な方法を記載している。方法は、再生可能なワックスおよび再生可能なアルケンを製造するための図2に示されているものと同様であるが、水素化脱酸素化工程7に続いて、異性化工程8が行われる。図中では、2つの異なる反応として示されてはいるが、水素化脱酸素化反応と水素化異性化反応とは、再生可能な炭化水素成分を含む脱酸素化されたおよび異性化された生成物流を得るために、単一の工程中で同時にまたは順に行われ得る。得られた生成物流は、例えば蒸留などによって再生可能な炭化水素を分離するために、さらなる分離工程9に付されてもよい。
【0056】
本発明のプロセスは、以下により詳細に記載される。
【0057】
本発明における使用のためのフィードストックは、例えば、植物(vegetable)オイル、植物(plant)オイル、魚油、動物性脂肪、海藻、および例えば酵母およびカビなどの天然のまたはGMOの微生物から得られるオイルなどの再生可能な原料を起源とする脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含み得る。
【0058】
本明細書中に規定されるように、動物性脂肪は、肉類チェーン全体の副生成物である。動物性脂肪はそのものとしては製造されない。それらは、肉、卵、ミルク、またはウールの製造のために動物を育てることに関連して製造されているだけである。動物性脂肪は、別の動物性製品の製造の、副(side)生成物、共(co-)製品、または副(by-)産物である(Alm, M, (2013) Animal fats. Available at http://lipidlibrary.aocs.org/OilsFats/content.cfm?ItemNumber=40320; Accessed 21.12.2018)。
【0059】
脂肪酸エステルは、トリグリセリドを含んでいてもよい。フィードストックは、0~100%のグリセリドおよび0~100%の遊離脂肪酸を含んでいてもよい。方法がトランスエステル化反応を含んでいる場合、フィードストックは、好ましくは、0.5重量%未満の遊離脂肪酸しか含まない。
【0060】
本発明の方法に適切な具体的なフィードストックは、食品/フィードへの適用に適していない、典型的には10~20%のグリセリドを含む低価値パーム脂肪酸蒸留物(PFAD)、または、典型的には80~90%のグリセリドを含む動物性脂肪廃棄物である。特定のフィードストックは、グリセリドを含むC16脂肪酸を含んでいる。
【0061】
本発明にしたがって、フィードストックの遊離脂肪酸および脂肪酸グリセリドは、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルへと変換され、ここで、一価のアルコールは、2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有している。もちろん、フィードストックが2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールと脂肪酸とのエステルを主に含んでいる場合、エステル化反応は省略され得る。
【0062】
一態様にしたがって、トリグリセリドのような脂肪酸エステルは、脂肪酸アルキルエステルを得るために、アルコールとトランスエステル化される。2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールがアルコールとして使用され、そして、アルコール中に過剰に溶解している水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが、触媒として使用されてもよい。トランスエステル化のための典型的な条件は、60~70℃の温度、および、大気圧~2MPの圧力を含み得る。
【0063】
高アルカリ性のナトリウムメトキシド触媒を用いた遊離脂肪酸(FFA)のけん化(R-CO2H+NaOCH3→R-CO2Na+CH3OH)であることに起因して、FFAsは、従来のトランスエステル化の前に除去されるか、またはエステル化されなければならない。酸触媒トランスエステル化は、非常にゆっくりであり、そしてそれゆえ、脂肪酸のエステル化は、トランスエステル化に先んじて行われ得る。任意には、FFAsは、トランスエステル化の前に、蒸留によって除去(脱臭工程)され得る。
【0064】
遊離のカルボン酸のアルコールとのエステル化は、典型的には、酸触媒を使用する場合、より高い温度および圧力(例えば240℃および8MPaなど)を必要とする。代替的には、遊離脂肪酸は、例えば硫酸触媒を用いて、別個にエステル化されてもよい。
【0065】
本発明の方法に適用される一価のアルコールは、好ましくは、再生可能なアルコールである。例示的なアルコールの炭素鎖長は、2~24、好ましくは2~10、より好ましくは2~4、すなわち、エタノール、プロパノールまたはブタノールである。好ましいアルコールは、メタノール、プロパノールおよびブタノールである。
【0066】
特に適切なアルコールはエタノールである。本発明において使用される具体的な脂肪酸エステルは、以下に示されるパルミチン酸のエチルエステルである。
【0067】
【化5】
【0068】
アルコールがエタノールおよびプロパノールである場合、方法は、それぞれ、再生可能なエテンおよび再生可能なプロペンを製造する。これらの化合物は、ポリオレフィンの製造のための出発物質として有用である。プロパノールは、一般的に、バイオ-ベースではないかもしれないが、例えばグリセロールなどから製造され得る。本発明の方法において使用される脂肪酸エステルとブタノールとから生成されるブテンは、例えば、燃料成分のためのアルキル化剤のための出発物質などとして適切である。
【0069】
本発明の方法によって製造されるオレフィンは、例えば、脂肪酸の複分解の共剤として、および、特別なアルコールをアルデヒドを介して製造する場合のヒドロホルミル化における使用のためなどに適切である。
【0070】
一態様において、脂肪酸と2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有するアルコールとのエステルは、ケトン化に先立って精製される。例示的な精製方法は、蒸留であるが、ガード床および従来の再生可能なオイルの精製方法、例えば脱ガムおよび/または漂白などもまた使用され得る。蒸留が、脂肪酸/エステルの炭素数の選択において、同時に使用されてもよい。これは、ベースオイル最終生成物の粘度を制御するであろう。
【0071】
本発明の方法は、脂肪酸のエステルを、金属酸化物ケトン化触媒の存在下でケトン化反応条件に付すことを含む。特定の態様において、2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールが、ケトン化工程に直接添加される。一価のアルコールは、好ましくは精製されたアルコールであり、より好ましくは、アルコール量は、95w-%より多く、残りは例えば水などであるが、他の金属や他の元素は含まない。
【0072】
ケトン化反応は、典型的には、例えばCaO、MnOまたはMgO、または、K2O/TiO2のような二重金属酸化物などの様々な金属酸化物触媒の存在下で、ケトン化条件のもと行われてきた。好ましい態様によれば、金属酸化物は、活性な触媒金属として、TiO2を含む。例示的な触媒としては、TiO2またはk2O/TiO2触媒が挙げられる。TiO2ケトン化触媒は、80~160Åである平均細孔径、および/または20~140m2/gであるBET表面積、および/または0.1~0.3cm3/gである多孔性、および50~100%の結晶性を有するアナターゼ型であってもよい。任意には、ケトン化触媒は、担体に担持されている。好ましい担体としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタンなどが挙げられる。TiO2を使用する有利点としては、この触媒が、ケトン化反応およびアルケン形成反応に同時に活性であること、および、形成される水およびCO2に耐性であることである。さらに、TiO2は、いくつかの他の金属酸化物触媒と比較して機械的および化学的により頑丈であり、そして、大きな分子量の副生成物を生成しにくい。
【0073】
好ましい態様において、ケトン化のフィードは、圧力をかけられたリアクター中に液体の形状で導入され、そして、ケトン化反応は、少なくとも部分的には、液相にて行われる。
【0074】
ケトン化反応条件は、以下のうちの一つまたは複数を含み得る:100~500℃、好ましくは300~400℃、より好ましくは350~360℃の範囲の温度;大気圧~10MPa、好ましくは0.5~5MPa、より好ましくは1~3MPa、最も好ましくは1.5~2.5MPaの範囲にある圧力。WHSVは、好ましくは、0.25~3h-1の範囲である。
【0075】
例示的な態様において、工程c)のケトン化反応は、300~400℃の温度で、および、1~3MPa、好ましくは1.5~2.5MPaの圧力で、行われる。
【0076】
別の態様において、工程c)のケトン化反応は、100~500℃、好ましくは300~400℃の範囲の温度で、および、大気圧~10MPa、より好ましくは0.5~3MPaの範囲の圧力で、ケトン化触媒の存在下、行われる。
【0077】
ケトン化反応は、追加のガスの存在下で、好ましくは0.1~1.5gas/feed(w/w)の範囲で、行われてもよく、ここで、フィードは、脂肪酸エステルフィードである。ガスは、CO2、H2、N2、CH4、H2Oのうちの一つまたはそれ以上から選択され得る。好ましいガスは水素である。特に好ましいガスは、CO2である。圧力をかけるために使用されるガスは、優位には、ケトン化反応の共生成物として製造され、および加圧のためのガスとしてリサイクルされ得るため、または、例えばカーボネート、アクリレート、ポリマー、シンガス、メタン、メタノール、尿素、およびギ酸の製造のためなどのさらなる化学的適用のために販売され得ることから、CO2である。さらに、CO2は、燃料を製造するためのフィードストックとして、例えば、フィッシャー-トロプシュプロセスにおいて使用され得る。
【0078】
例示的な態様において、工程c)のケトン化反応は、ガスフローの存在下で、好ましくは0.5~1.0kg CO2/kgエステルフィードのCO2フローの存在下で、行われる。
【0079】
好ましい様態において、ケトン化工程c)は、2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールを、ケトン化反応へと添加することを含む。
【0080】
ケトン化反応条件は、液相ケトン化、または、少なくとも、ケトン化工程へのフィードの導入が液体形状であることを確実とするように選択され得る。液相ケトン化は、触媒、圧力および温度の組み合わせの適切な選択によって、高い反応性および良好な選択性を確実なものとする。ガス相ケトン化は、脂肪酸エステルの高い沸点のため、脂肪酸エステルを固体または液体からガス相へと変えるために高いガスリサイクル速度を必要とする。これは、ガス相ケトン化のためのリアクターシステムがより大きく、およびより複雑であることを必要としており、これは、同様に、投資コストを顕著に増大させる。
【0081】
驚くべきことに、脂肪酸と2またはそれ以上の長さの炭素鎖長を有する一価のアルコールのエステル、すなわちエチルエステルとのケトン化が、所望のケトンを、例えば対応するメチルエステルなどと比較してより高い選択率および収率で製造することが発見された。
【0082】
本発明の方法において、中間生成物流は、ケトンおよびアルケンを含む。例えば、脂肪酸エステルのフィードが、例えばC16脂肪酸エステルなどのパルミチン酸エチルエステルのみである場合、中間生成物流は、C31ケトンおよびエテンを含み、そして、脂肪酸エステルのフィードが、C16およびC18脂肪酸のエチルエステルの混合物である場合、中間生成物流は、C31、C33、およびC35ケトンおよびエテンを含むであろう。同様に、脂肪酸エステルのフィードが、パルミチン酸ブチルエステルのみである場合、中間生成物流は、C31ケトンおよびブテンを含むであろう。
【0083】
ケトン化反応はまた、二酸化炭素を製造する。ケトン化反応は、クリーンかつ実質的に定量的であるため、方法はまた、様々な応用のための非常に純粋な再生可能なCO2を製造するためにも適する。例示的な応用としては、例えば、ソフトドリンク用、プロペラントガス用、および冷却用、または、化学品の製造のため、などが挙げられ得る。
【0084】
フィードストック中に存在する脂肪酸および脂肪酸エステルは、大きな不飽和度を有していてもよい。
【0085】
脂肪酸エステルが不飽和脂肪酸エステルを含んでいる場合、これらの脂肪酸エステルは、好ましくは、ケトン化に先んじて水素化によって飽和される。このような前水素化工程は、通常、50~400℃の温度、大気圧から20MPaまでの範囲の水素圧の下で、好ましくは150~300℃の温度、1~10MPaの範囲の水素圧下での比較的温和な条件下で行われる。前水素化触媒は、元素周期表の第VIII族元素および/または第VIA族元素である金属を含む。前水素化触媒は、好ましくは、担体に担持されたPd、Pt、Rh、Ru、Ni、Cu、CuCr、NiMoまたはCoMo触媒であり、担体は、活性炭、アルミナおよび/またはシリカである。前水素化工程はまた、エステル化および/またはトランスエステル化工程b)の前にも行われても(すなわち、最初のフィードストックが前水素化されている)よい。しかしながら、カルボキシル基の水素化が起こっていないことが好ましい。例えば、PFAD中のパルミチン酸(飽和の遊離脂肪酸)は、蒸留によって分離され得、これによって何らの水素化も必要とすることなく、パルミチン酸の飽和の遊離脂肪酸フィードを与える。遊離脂肪酸フィードのエステル化は、続いて、飽和の脂肪酸エステルフィードを生成する。
【0086】
本発明の方法によれば、製造されたアルケンは、中間生成物流から分離され、アルケンが枯渇した中間生成物流と分離されたアルケンとを製造する。適用可能な分離の方法としては、ストリッピング、フラッシュドラム操作、および蒸留などを含む。ストリッピングまたはフラッシュドラム操作の場合、たとえ高い温度においてであっても、突然の圧力低下がガス/液体分離をより簡単にする。CO2の除去が、例えば、米国特許第3078637号明細書に記載されているようにゼオライトモレキュラーシーブへの吸着によってなどにより行われてもよい。
【0087】
一態様において、本発明の方法は、再生可能なワックスを製造することを含む。この実施態様によれば、アルケンが枯渇した中間生成物流が水素化脱酸素化反応に付される。得られる生成物は、再生可能なn-パラフィンワックスを含む脱酸素化されたベースオイル流である。n-パラフィンは、十分な低温流動性をもつベースオイル成分を得るために異性化され得る。
【0088】
水素化脱酸素化反応は、例えば、例えばアルミナ担体などの担体に担持されたCoMo、NiMo、NiW、CoNiMoなどの水素化脱酸素化触媒の存在下で行われてもよい。水素化脱酸素触媒は、当該技術分野において典型的な水素化脱酸素化触媒、例えばPCT/EP2018/065973号に記載されているものなどであってよく、例えば、例えばPd、Pt、Ni、Co、Mo、Ru、Rh、Wまたはこれらの組み合わせからなる群より選択される触媒などの、担体に担持された水素化金属を含む。水素化脱酸素化工程は、再生可能なベースオイル製品を提供するために水素化脱酸素化条件の下で行われる。水素化脱酸素化工程は、例えば、100~500℃、好ましくは250~400℃の温度で、および、大気圧~20MPa、好ましくは0.1~8MPa、より好ましくは0.2~8MPaの圧力;好ましくは0.5~3h-1の範囲のWHSV、および好ましくは350~900nL H2/L feedのH2フローで、水素化脱酸素化触媒の存在下で行われ得る。触媒は、アルミナまたはシリカ担体に担持されたNiMoであってもよい。
【0089】
例示的な態様によれば、水素化脱酸素化反応は、250~400℃の範囲の温度、2~8MPaの範囲の圧力、0.5~3h-1の範囲のWHSV、および350~900mL H2/L feedのH2フローで、水素化脱酸素化触媒の存在下で行われる。
【0090】
好ましくは、ケトンのための水素化脱酸素化反応の条件は、250~350℃の範囲の温度、3~6MPaの範囲の圧力、1.0~2.5h-1の範囲のWHSV、および350~750nL/Lの比であるH2/オイルの供給比を含む。触媒は、好ましくはアルミナ担体に担持されたNiMoである。
【0091】
ケトン化への変換が高い、好ましくはほぼ完了している場合、水素化脱酸素化条件は、300~330℃の範囲の温度、4~5MPaの範囲の圧力、1.0~2.0h-1の範囲のWHSV、および350~500nL/Lの比であるH2/オイルの供給比を含む。触媒は、好ましくはアルミナ担体に担持されたNiMoである。
【0092】
別の態様によれば、水素化脱酸素化は、固定床リアクター、沸騰床、またはCSTR連続撹拌槽型リアクター内に1つまたは複数の触媒床を備える水素化脱酸素化ゾーンにおいて水素ガスの存在下で行われる。
【0093】
別の態様において、本発明は、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt%の硫黄および≧120の粘度指数を有するAPIのグループIIIベースオイル仕様を満たす、好ましくは、≧90wt%の飽和炭化水素、≦0.03wt-%の硫黄および≧140である粘度指数を有するAPIのグループIII+ベースオイル仕様を満たす、再生可能なベースオイルを製造するための方法を含む。
【0094】
この態様によれば、脱酸素化された中間生成物流は、さらに、水素化脱酸素化工程由来のn-パラフィンに枝分かれを形成するための水素異性化反応に付される。水素異性化工程は、水素化脱酸素化工程からのn-パラフィンを、ベースオイル適用のために必要とされる低温流動性を有するイソパラフィンに変換する。
【0095】
したがって、水素化脱酸素化工程の生成物は、水素および異性化触媒の存在下、異性化工程に付される。水素処理工程および異性化工程の両方の工程が、同じリアクター内で、および、同じリアクター床においてでも行われ得る。異性化触媒は、例えばPt-SAPOまたはPt-ZSM触媒などの例えばPt含有の市販の触媒などの貴金属二元機能触媒、または、例えばNiWなどの非貴金属触媒などであってもよい。
【0096】
例えばNiWなどのタングステンベースの触媒、またはPdもしくはPt触媒が使用される場合、異性化反応も触媒することができ、したがって、同時の水素化脱酸素化および水素異性化反応を可能にするという優位性がさらにある。したがって、水素化脱酸素化および異性化触媒は、同じであってもよく、例えば、例えばアルミナ担体上のNiMoなどの担体上の促進Mo触媒との混合物中の例えばNiW、または、例えばPt/SAPOなどのPt触媒などであってもよい。NiW触媒は、追加で、ディーゼル/ジェット燃料およびナフサ製品へのより多くの水素分解をもたらし得、および、そのような成分もまた、再生可能なベースオイル成分と共に製造されることが望まれる場合に優位な触媒となるかもしれない。
【0097】
水素異性化反応は、典型的には、200~450℃、好ましくは250~400℃の範囲の温度;1~15MPa、好ましくは1~6MPaの範囲の圧力;0.5~3h-1の範囲のWHSV、および好ましくは100~800nL H2/L feedのH2フローで、例えば、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体上に担持されている、例えば第VIII族金属およびモレキュラーシーブを含む触媒などの水素異性化触媒の存在下で行われる。
【0098】
再生可能なベースオイル製品の分解量を回避するまたは減らすために、異性化反応の激しさを低下させることが好ましい。異性化工程は、例えば、250~400℃の温度、1~6MPaのあいだの圧力、0.5~3h-1のWHSV、および100~800nL/Lの比であるH2/オイルの供給比で行われ得る。
【0099】
代替的には、水素化脱酸素化および水素異性化反応は、順番に行われてもよい。その順序は、好ましくは水素化脱酸素化とその後の水素異性化である。異性化反応条件は、次のうちの1つまたは複数を含み得る:250~400℃の温度;1~6MPaの範囲の圧力;0.5~3h-1のWHSV;および100~800nL/LのH2/オイルの供給比。
【0100】
水素化脱酸素化に先立っての異性化は、脂肪酸の骨格の異性化を提供し、これは二重結合を必要とし、そしてしたがって不飽和脂肪酸または不飽和ケトンの使用の場合に好ましい。典型的には、水素異性化触媒は、多くの量のS-、N-、またはO-不純物には耐性をもち得ない。
【0101】
好ましくは、異性化反応条件は、280~370℃の範囲の温度;2~5MPaの範囲の圧力;0.5~2.0h-1の範囲のWHSV;200~650mL H2/L feedのH2フローを含む。
【0102】
より好ましくは、異性化反応条件は、300~350℃の範囲の温度;2.5~4.5MPaの範囲の圧力;0.5~1.0h-1の範囲のWHSV;300~500mL H2/L feedのH2フローを含む。
【0103】
水素異性化反応は、例えば、任意には担体上の、第VIII族金属、好ましくはPt、およびモレキュラーシーブを含む触媒などの異性化触媒の存在下で行われ得る。担体は、例えば、単独でもまたは混合物としてでも使用され得る、シリカ、アルミナ、クレイ、二酸化チタン、酸化ボロン、ジルコニアから選ばれ得、好ましくは、シリカおよび/またはアルミナから選択され得る。モレキュラーシーブは、例えば、例えばZSMなどのゼオライト、または、例えばSAPOなどのアルミノリン酸塩モレキュラーシーブ、例えばSAPO-11、MeAPO、MeAPSOなど(ここでMeは例えばFe、Mg、Mn、Co、またはZnなど)、モレキュラーシーブEIAPOまたはEIAPSO、例えばシリカ-アルミナ、Yゼオライト、SAPO-11、SAPO-41、ZSM-22、フェリエライト、ZSM-23、ZSM-48、ZBM-30、IZM-1、COK-7などであってよい。適切なモレキュラーシーブおよび水素異性化適用のために適切なモレキュラーシーブの特徴は、当業者によってよく知られており、例えば、Handbook of heterogeneous catalysis from VCH Verlagsgesellschaft mbH with editiors Ertl, Knoezinger and Weitkamp, volume 4, pages 2036-2037などの文献に記載されており、これは参照によって本発明に組み込まれる。
【0104】
水素化脱酸素化および水素異性化が順番に起こる場合、水素化脱酸素化および水素異性化のあいだに、ストリッピング工程が存在していてもよく、ここで、ガスが液体から分離される。これは、高温、高圧の分離工程、例えば300~300℃のあいだの温度、および3~5MPaのあいだの圧力で行われ得る。
【0105】
例示的な態様において、異性化反応は、250~400℃の温度で、1~6MPaの圧力;0.5~3h-1の範囲のWHSV、および好ましくは100~800mL H2/L feedのH2フローで、例えば第VIII族金属およびモレキュラーシーブを含む、任意にはアルミナおよび/またはシリカ担体に担持されている触媒などの異性化触媒の存在下で行われ得る。
【0106】
ベースオイル成分は、生成物流からさらに分離され得る。例示的な分離は蒸留である。このようにして得られた生成物は、脱酸素化された再生可能なベースオイル成分または脱酸素化および異性化されたベースオイル成分である。例えば、脱酸素化および異性化された生成物流は、380℃より高い、例えば450℃より高い、例えば、460℃以上、例えば470℃以上、例えば480℃以上、または例えば500℃以上などの沸点を有する留分中に再生可能なベースオイル成分が得られるように蒸留され得る。例えば、蒸留は、例えば380℃より高い1つまたはそれ以上再生可能なベースオイルの留分、例えば380~450℃のあいだの留分および450℃より高い留分をもたらし得る。
【0107】
ベースオイル成分および製造されたベースオイルは、PCT/EP2018/065976号で説明されているように、さらに特徴付けられる。
【実施例
【0108】
セミバッチ式ケトン化試験を行うために使用される機器は、Parr Instrument Companyからの300mL攪拌リアクターシステムによって提供された。加熱、温度、圧力、混合スピード、および他のプロセス変数は、コンピューターに接続されたParr 4848B リアクターコントローラーを用いて制御された。主な機器は、300mL ハステロイメイドリアクター(Hastelloy-made reactor)、ヒーター、攪拌モーターおよびミキサー、温度および圧力センサー、破裂板、加熱ケーブルおよびバルブから構成されていた。
【0109】
リアクターシステムは、実験の種類およびフェーズに基づいて順番に使用される3つのガスラインに接続された:ケトン化のためのCO2ガスシリンダー、プレラン漏洩試験のためのガスヘッダからのHe。CO2およびHeのラインは、ガスフロー速度を調整するためにガス測定システムに接続された。リアクター内の圧力は、水およびCO2が冷却された水トラップコンテナへと流出することを可能にする圧力バルブを用いて調整され、そして安定に保持された。このコンテナから、ガスはリッタードラムタイプ(Ritter drum-type)ガス容積メーターに導かれ、そして排気によってドラフトチャンバーから排出された。
【0110】
ガス分析は、実験による生成物ガスについて行われた。リアクターへと導かれたCO2および反応中に生成されたCO2を含むサンプルが4時間収集された。方法は、不活性気体:水素、酸素、窒素、一酸化炭素、および二酸化炭素、ならびに、ガスクロマトグラフィーにおけるAl23カラムによるC1~C6の炭素数エリアからの炭化水素または非極性カラムによるC1~C12の炭素数エリアからの炭化水素の分析を含む。
【0111】
本発明によるパルミチン酸エチルのケトン化
パルミチン酸エチルのケトン化のために適用された条件が表2に示されている。
【0112】
【表2】
【0113】
4つのサンプルが取り出され、そして、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析された。結果が表3に示されている。
【0114】
【表3】
【0115】
主なガス分析が表4に示されている。
【0116】
【表4】
【0117】
表4は、形成された有機ガスの主要部分(80mol-%より多い)が、たとえ反応が最適化されていなくとも、エチレン(エテン)であることを示している。エチレンは、パルミチン酸エチルエステルのケトン化の好ましい共生成物である。いくつかのエタノールおよびジエチルエーテル成分がまた観察され、これらはまた、燃料成分として、エチレンへと変換され得、またはそのままで使用され得る。形成されたブテンは、アルキル化のためのフィードとして使用され得、それらはまた、例えば、多くの粗油精製所において製造される優れたガソリン成分である。
【0118】
パルミチン酸メチルの比較例としてのケトン化
パルミチン酸メチルのケトン化がパルミチン酸エチルの場合で上述されたように行われた。ガスクロマトグラフィー分析の結果が表5に示されている。
【0119】
【表5】
【0120】
表5は、パルミチン酸メチルがまた、顕著な量の主なケトンを形成することを示しているが、重質物の生成がフィードとしてパルミチン酸エチルを用いた場合よりも顕著に高い。
【0121】
パルミチン酸メチルおよびパルミチン酸エチルのケトン化の比較が表6に示されている。
【0122】
【表6】
【0123】
表6は、両方のエステルがケトンを生成することを示しているが、重質物の生成は、フィードとしてパルミチン酸エチルを用いた場合よりも、パルミチン酸メチルを用いた場合の方が顕著に高かった。したがって、主ケトンへの選択性は、パルミチン酸エチルがフィードとして使用された場合に良好である。
【0124】
上記の結果に基づけば、パルミチン酸メチルおよびパルミチン酸エチルの両方の主生成物はC15-C15ケトンであるが、所望のケトンの収率は、出発物質としてパルミチン酸エチルが用いられた場合においてより高かった。さらに、パルミチン酸メチルの場合に、パルミチン酸エチルの結果と比較して、比較的高い重質生成物の形成が検出された。パルミチン酸メチルケトン化およびそのさらなる反応はまた、より多くの分解生成物を生成する。代わって、パルミチン酸エチルのケトン化はよりスムーズに進み、そして、顕著な量の高価値な共生成物、エテン(ガス中の炭化水素の80mol-%よりも多い)が単離され得た。
【0125】
上記の記載において提供された特定の例は、添付のクレームの範囲および/または適応性を制限するものとして考えられるべきではない。上記の記載において提供されたリストおよびグループは他に明確に述べられていない限り、網羅的なものではない。
図1
図2
図3