(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ジョセフソン進行波パラメトリック増幅器
(51)【国際特許分類】
H01L 39/22 20060101AFI20220426BHJP
H03F 19/00 20060101ALI20220426BHJP
H03F 7/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01L39/22 K
H03F19/00
H03F7/00
(21)【出願番号】P 2021542344
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 FI2020050012
(87)【国際公開番号】W WO2020152393
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-09-02
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512068592
【氏名又は名称】テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ
【氏名又は名称原語表記】TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS VTT OY
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェステリネン,ヴィサ
(72)【発明者】
【氏名】ハッセル,ジュハ
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0232653(US,A1)
【文献】国際公開第2016/127021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/22
H03F 19/00
H03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む共平面導波路伝送線路であって、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、前記ループの一方の半分に第1のサイズのジョセフソン接合が厳密に1つあり、前記ループの第2の半分に第2のサイズのジョセフソン接合が少なくとも2つあり、前記第2のサイズは前記第1のサイズより大きい、前記
共平面導波路伝送線路と、
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁束を発生させるように構成された磁束バイアス線であって、
前記共平面導波路伝送線路の第1の側から前記共平面導波路伝送線路の第2の側に広がり前記第1の側に戻る蛇行路を取る2ポート回路を備え、前記共平面導波路
伝送線路上に配置された平行板コンデンサに対応する場所で前記共平面導波路
伝送線路をクロスオーバする、磁束バイアス線と、
前記磁束バイアス線を前記共平面導波路
伝送線路の接地面に結合する抵抗のセットと、
を含む進行波パラメトリック増幅器。
【請求項2】
前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは、カー非線形性を示さないか、カー非線形性の、無視できるほどの寄与を示し、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは3波混合を確かに示す、請求項1に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項3】
前記第1のサイズの前記
ジョセフソン接合のジョセフソンエネルギの、前記第2のサイズの前記
ジョセフソン接合のジョセフソンエネルギに対する比が、カー非線形性
の強さを減らす又は
前記カー非線形性を完全に無くすように設定される、請求項1~2のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項4】
前記ジョセフソンエネルギ間の前記比は、前記
ジョセフソン接合の面積で設定される、請求項3に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項5】
前記ループを貫く前記磁束が、前記カー非線形性を最小化する動作点に対応するように前記磁束バイアス線に電流を発生させることを可能にするように構成された、請求項1~
4のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項6】
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く前記磁束は磁束量子の0.40倍になり、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは、前記ループの第2の半分に前記第2のサイズの接合を厳密に2つ含み、前記第1のサイズの接合のジョセフソンエネルギは、前記第2のサイズの接合のジョセフソンエネルギの0.27倍である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項7】
前記共平面導波路伝送線路に含まれる前記ジョセフソン素子の数が15を超える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項8】
前記磁束バイアス線は、前記共平面導波路伝送線路のシャント
コンデンサを形成する平行板の上部電極又は下部電極を形成し、前記シャント
コンデンサは、前記平行板コンデンサである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項9】
前記磁束バイアス線は、前記抵抗を通って前記共平面導波路伝送線路の接地面に接続されており、前記抵抗の値は、前記進行波パラメトリック増幅器が増幅を行うように構成された周波数における前記シャントコンデンサのリアクティブインピーダンスより小さい、請求項
8に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項10】
磁場勾配を発生させる為に前記磁束バイアス線に直流電流を印加するように構成された、請求項
8~
9のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項11】
前記ループの前記それぞれは、周囲からの均質な磁場に対して鈍感であるように、グラジオメトリックな形態で構成されている、請求項
10に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項12】
前記共平面導波路伝送線路は2つのジョセフソン素子のセットを複数個含み、前記各セットは、前記共平面導波路伝送線路上に配列された前記シャントコンデンサによって互いに隔てられている、請求項
8~
11のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項13】
前記シャント
コンデンサの値は、前記
共平面導波路伝送線路に沿ってマイクロ波が減衰するのを補償する為に、前記
共平面導波路伝送線路の波伝搬方向に沿って一定ではない、請求項
8~
12に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項14】
前記共平面導波路伝送線路の少なくとも一方の端部にインピーダンスマッチングデバイスを更に含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項15】
前記インピーダンスマッチングデバイスは、テーパ状伝送線路マッチング素子を含む、請求項
14に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項16】
前記テーパ状伝送線路マッチング素子はクロプフェンシュタインテーパを含む、請求項
15に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項17】
前記テーパ状伝送線路マッチング素子は指数関数的テーパを含む、請求項
15に記載の進行波パラメトリック増幅器。
【請求項18】
進行波パラメトリック増幅器を製造する方法であって、
少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む共平面導波路伝送線路を用意するステップであって、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、前記ループの一方の半分に第1のサイズの接合が厳密に1つあり、前記ループの第2の半分に第2のサイズの接合が少なくとも2つあり、前記第2のサイズは前記第1のサイズより大きい、前記共平面導波路伝送線路を用意する前記ステップと、
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁場を発生させるように構成された磁束バイアス線であって、
前記共平面導波路伝送線路の第1の側から前記共平面導波路伝送線路の第2の側に広がり前記第1の側に戻る蛇行路を取る2ポート回路を備え、前記共平面導波路
伝送線路上に配置された平行板コンデンサに対応する場所で前記共平面導波路
伝送線路をクロスオーバする、磁束バイアス線を用意するステップと、
前記磁束バイアス線を前記共平面導波路
伝送線路の接地面に結合する抵抗のセットを用意するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導進行波パラメトリック増幅器(TWPA)に関する。
【背景技術】
【0002】
パラメトリック増幅器は実質的に混合器であり、弱い入力信号を強いポンプ信号と混合し、その結果として強い出力信号を生成することにより、弱い入力信号を増幅することが可能である。パラメトリック増幅器は、増幅を引き起こすことを物理系の非線形応答に依存する。そのような増幅器として、定在波パラメトリック増幅器又は進行波パラメトリック増幅器があってよく、進行波パラメトリック増幅器は、伝送線路(例えば、共平面導波路等)に沿って分布する一連の非線形素子を使用する。非線形素子がジョセフソン接合を含む場合、増幅器は、ジョセフソン進行波パラメトリック増幅器(JTWPA)と呼ばれてよい。JTWPAでは、ジョセフソン接合は、超伝導状態で維持され、超伝導電流を搬送する。
【0003】
使用時には信号が強い発振器信号に加算されて和信号が得られ、その振幅包絡線が、信号周波数と発振器周波数との差である周波数での変動を示す。導波路伝送線路では位相速度が振幅に依存する為、伝送線路の端部における和信号の位相は、2つの周波数の差に応じて変化する。実質的には、非線形の導波路伝送線路によって、振幅変調が位相変調に変換される。非線形性が十分強い場合、これは信号周波数における利得をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
幾つかの態様によれば、独立請求項の主題が提供される。幾つかの実施形態は、従属請求項において定義される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、進行波パラメトリック増幅器が提供され、この進行波パラメトリック増幅器は、少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む導波路伝送線路であって、この少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、ループの一方の半分に第1のサイズのジョセフソン接合が厳密に1つあり、ループの第2の半分に第2のサイズのジョセフソン接合が少なくとも2つあり、第2のサイズは前記第1のサイズより大きい、導波路伝送線路と、少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁束を発生させるように構成された磁束バイアス線と、磁束バイアス線と結合される抵抗のセットと、を含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、進行波パラメトリック増幅器を製造する方法が提供され、この方法は、少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む導波路伝送線路を用意するステップであって、少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、ループの一方の半分に第1のサイズの接合が厳密に1つあり、ループの第2の半分に第2のサイズの接合が少なくとも2つあり、第2のサイズは第1のサイズより大きい、導波路伝送線路を用意するステップと、少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁場を発生させるように構成された磁束バイアス線を用意するステップと、磁束バイアス線と結合される抵抗のセットを用意するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による増幅器の一例を示す。
【
図2】文献[2]によるジョセフソン素子の一例を示す。
【
図3】本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるジョセフソン素子の一例を示す。
【
図4】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示のソリューションによれば、進行波パラメトリック増幅器は、大きなジョセフソン接合と小さなジョセフソン接合とを含むジョセフソン素子において、パラメータを適切に選択することにより、小さなジョセフソン接合のサイズの誤差に対して鈍感であるように作られてよい。更に、ジョセフソン素子が磁場勾配に対してのみ敏感であるようにする、ジョセフソン素子のグラジオメトリックレイアウトを開示しており、そのような磁場勾配を生成するように進行波パラメトリック増幅器の磁束バイアス線が与えられる。更に、伝送線路はテーパ状であってよい。概して、これらの強化のうちの1つ以上を用いることにより、進行波パラメトリック増幅器は、その動作が外乱や製造欠陥に対して鈍感になる為、現実的な応用において、より適切に使用されうる。
【0010】
図1は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による増幅器の一例を示す。概して、例えば、量子計算においては、信号は、伝送の為に、単一光子レジーム又は近単一光子レジームまでも減衰されうる。そのような信号を検出することは、それらの振幅が小さい為に困難である。そこで、適切な増幅器を使用して、受信信号を検出素子に渡す前にその振幅を大きくすることが行われてよく、その後、検出素子において、それらの受信信号にエンコードされている情報が復元されてよい。別の例として、量子通信を用いて安全な方式で暗号化鍵を伝達することに単一光子レジーム通信が用いられてよく、これにより、検出せずに盗聴することが非常に困難になる。
【0011】
本開示では、TWPAの超伝導実現に焦点を当てる。その場合、伝送線路の中心トレースは、ジョセフソン素子と呼ばれる、ジョセフソン接合ベースの素子のアレイであり、これらが非線形インダクタンスを構成する。この非線形性は、強い無線周波数(rf)ポンプトーンと同じ方向に伝搬する弱い信号に電力利得を与える混合過程を可能にする。ポンプトーンの強度は、ジョセフソン素子のポンプ電流振幅Ipと臨界電流Icの比で測定される。この非線形性の性質は、素子内のジョセフソン接合の配列に依存する。最もシンプルな実現は、単一のジョセフソン接合を非線形素子として使用することであり、対応する、インダクタンスのテイラー展開は、(Ip/Ic)^2に比例する項、即ち、カー非線形性を定数に加えたものである。カー項は、所望の混合過程をもたらす一方で、ポンプトーンの波数ベクトルを変化させるが、これは分散技術によって補償すべき作用である。波数ベクトルのバランシング(位相マッチングとも呼ばれる)により、TWPA利得をデバイス長の関数として指数関数的に増大させることが可能である。伝送線路に埋め込まれた分散フィーチャが典型的には狭帯域であることにより、利得の中心周波数は、このTWPAの例では一定量である。
【0012】
ジョセフソン素子に磁束自由度を導入することにより非カー非線形性の実現を目指す新たなソリューションがある。インダクタンスのテイラー展開では、この代替の非線形性は、Ip/Icに比例する項である。非カー演算は、位相マッチングの達成に分散技術を必要としない点で有利である。利得の中心周波数を設定するポンプ周波数は自由に選択されてよい。典型的な非カー素子の主な特徴として、(i)互いに接続された2つの半ループとして描かれうる超伝導磁気ピックアップループ、(ii)等しくない数のジョセフソン接合によるそれら2つの半ループの遮断、(iii)磁束量子化の原理に従ってループ内にスクリーニング電流の流れを作る有限磁束バイアスが挙げられる。これまでに示された実現における、非カー素子の具体的な弱点として、(i)磁気干渉に対して敏感であること、並びに(ii)(特に複数の素子からなるアレイにおいて)磁気バイアス場の不均質性に対して敏感であることがある。
【0013】
更に、TWPAの一般的な問題として、ポンプ電流の枯渇がある。その原因は、伝送線路での消散、又はTWPAが飽和に近い状態で動作している場合のポンプから増幅信号への電力の移動である。ポンプが枯渇するとTWPAの利得が制限されるが、これは混合過程が、IpとIcの比が適切であることに依存している為である。TWPAの別の一般的な問題として、Icの製造ばらつきがあり、これは、伝送線路の電気的パラメータの不均質性を引き起こす。
【0014】
図1のJTWPAは導波路を含み、導波路は、ジョセフソン素子110及び平行板コンデンサ120を含む。当該技術分野において知られているように、ジョセフソン素子110は互いに接続されており、導波路は電磁波を搬送することが可能である。
図1には導波路の一区画を示しており、この導波路は左側に入力ポートを有しており、入力ポートは、増幅される信号と強い発振器信号とを受けるように配置されており、増幅される信号と発振器信号は、導波路の非線形ジョセフソン素子110内で混ざり合う。右側の出力ポートにおいて、位相変調増幅された信号が出力として得られる。2つの配線層素子101のそれぞれが、例えば、絶縁体で覆われた超伝導体を含んでよい。
【0015】
一般に、ジョセフソン素子、例えば、単一接合、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)、非対称SQUID、又はより複雑なジョセフソン素子(例えば、磁束量子ビット状回路)は、実効ポテンシャルエネルギを使用して次のように記述できる。
【0016】
Ueff(φ)/Ej=c2φ2+c3φ3+c4φ4+…
(本書において、φは、Φの小文字である場合がある。)
【0017】
但し、Ejはジョセフソンエネルギであり、φは超伝導位相である。c2項は、臨界電流及びジョセフソンインダクタンスの線形部に関連し、c3項は3波混合に関連し、c4項は4波混合に関連し、これはカー非線形性とも呼ばれる。
【0018】
通常は、単一接合及びSQUID(非対称SQUIDを含む)がc3=0を有し(これにより3波混合は起こらず)、カー項によって非線形性が与えられる。3波混合は、入力周波数の2倍の周波数でポンピングできること(これは望ましい)を意味する。3波混合は、直流電流を注入することによって活性化されうるが、カー項は非ゼロにとどまることになる。
【0019】
カー項によって与えられる非線形性は共振位相マッチングの必要性に関連しており、実際には、ポンプ信号は、伝送線路に沿って一定間隔で小さい位相インクリメントが与えられる。これは、ポンプの位相速度が(周波数fPにおける)信号及び(周波数fIにおける)アイドラと異なることによる。この位相ミスマッチは、ポンプ出力とともに増加する。エネルギ保存によって、出力にアイドラ周波数が存在することとなり、その周波数は、ポンプ周波数に対して信号周波数の「鏡像」に位置する(即ち、fI=2fP-fS)。詳しく言うと、カーモードでは、位相ミスマッチ及び利得は、同じパラメータ、即ち、カー非線形性に依存する。これら3つの周波数は、3波混合の場合にはfS+fI=fPによって関連付けられる。反射量を最小化する為には、TWPAの両端部は更に、周波数fI、fS、及びfPのそれぞれにおいて良好なインピーダンスマッチを有する必要がある。
【0020】
従って、4波混合を使用せずに3波混合を使用して、即ち、カー非線形性を抑圧しながらc3項を使用してTWPAを動作させることが好ましいと考えられる。従って、増幅器の構築は、カーモードで必要とされる周期的位相インクリメントを提供する機器がなくても可能である。3波モードでは、位相ミスマッチ及び利得は異なる非線形項に依存する。
【0021】
具体的には、本発明は、以下の問題の解決(又は少なくとも軽減)を目指す。第1に、非カーTWPAにおいて磁気干渉に対して敏感であること。磁気干渉は、TWPAの超低ノイズ性能を低下させる可能性がある。第2に、非カーTWPAにおいて磁気バイアス場の不均質性に対して敏感であること。第3に、TWPAにおいてジョセフソン接合の製造ばらつきが臨界電流に悪影響を及ぼすこと。これらの作用により、伝送線路インピーダンスのむらが生じ、これが潜在的反射源になる。反射は、TWPAの周波数応答に周期性を持ち込む定在波を発生させる可能性があり、更には混合過程が利得を提供するのを妨げる可能性がある。第4に、TWPAにおいてポンプ電流が枯渇すること。これによってTWPAの最大利得が制限される。
【0022】
A.B.ゾリン(A. B. Zorin)が[1]で述べているソリューションでは、適切な外部磁場をrf-SQUIDに印加することによって、c3混合とc4混合のバランスを制御することが可能である。従って、ゾリンのシステムでは主に3波混合が達成可能である。
【0023】
フラッティーニ等(Frattini et al.)が[2]で述べている磁束量子ビット状回路は、カー混合項をゼロにすることと、3波混合項を最大化することとを同時に行う。この回路(文献[2]の著者等はSNAIL(Superconducting Nonlinear Asymmetric Inductive eLement(超伝導非線形非対称誘導素子))と命名している)は、本発明の実施形態では本明細書に記載のように修正されてジョセフソン素子110に達する。詳しく言うと、[2]では、ジョセフソン素子は、ループの一方の半分に3つの大きなジョセフソン接合を有し、ループの他方の半分に1つの小さなジョセフソン接合を有する。本発明のソリューションで使用するジョセフソン素子は、ループの一方の半分に少なくとも2つの大きなジョセフソン接合を有し、ループの他方の半分に1つの小さなジョセフソン接合を有する。これは後で
図2及び3に示す。
【0024】
図1のJTWPAは、導波路内の、ジョセフソン素子110の間のところどころに平行板コンデンサ120が置かれている。どの2つの平行板コンデンサ120の間にも2つのジョセフソン素子110があるが、これは一例であり、本発明はこれに限定されず、実際、様々な実施形態では、どの2つの平行板コンデンサ120の間にも3つ以上のジョセフソン素子110があってよい。平行板コンデンサ120は、伝送線路の並列キャパシタンスのほとんどを形成する。
図1のJTWPAは共平面導波路である。
【0025】
図1のJTWPAは更に、磁束バイアス線(FBL)130が備えられてよい。磁束バイアス線130は、共平面導波路の一方の側部からもう一方の側部まで広がる蛇行路の形態の2ポート回路である。磁束バイアス線130は、
図1に示すように、導波路のもう一方の側部へクロスオーバする場所で平行板コンデンサ120の上部電極を形成している。磁束バイアス線130は、抵抗140を通って伝送線路の接地面につながっており、抵抗140の値は、コンデンサ120の、関係する周波数fI、fS、及びfPにおけるリアクティブインピーダンスよりずっと小さい。抵抗140の目的は、平行板コンデンサ120から接地までのrfパスを提供することである。同時に、抵抗140及び磁束バイアス線130は、接地面の、周波数fI、fS、及びfPにおける電位を強制的に同等にする。
【0026】
図に示すように、磁束バイアス線130は、導波路の一方の側部を導波路に平行に延び、平行板コンデンサ120の1つに対応する場所で導波路のもう一方の側部へクロスオーバし、その、導波路のもう一方の側部を、やはり導波路に平行に延びる。磁束バイアス線130は、導波路に平行に延びているところでは、図に示すように、抵抗140とつながってよく、抵抗140のそれぞれは、コンタクトホール150を取り巻くループを形成しうる。抵抗140は、この多層JTWPA内に金属層を含む。抵抗140は一部が超伝導材料と重なって接点を形成しており、抵抗140が抵抗として働くのは、抵抗140が超伝導体ではなく絶縁体と重なっている場所においてである。
【0027】
ジョセフソン素子110の動作パラメータは、これらの素子が、ループの一方の半分に少なくとも2つの大きなジョセフソン接合を有し、ループの他方の半分に1つの小さなジョセフソン接合を有することを含む。具体的には、ループの一方の半分に大きなジョセフソン接合が2つだけあって、ループの他方の半分に小さなジョセフソン接合が1つだけあってよい。更に、小さい接合の臨界電流は、大きい接合の臨界電流より小さく、小ささがアルファ倍である。このジョセフソン素子110の場合、アルファは0.27でありうる。更に、素子110のループを貫く通る磁束は、このソリューションでは磁束量子の0.40倍でありうる。従って、1つのパラメータ組み合わせは、2つの大きなジョセフソン接合と1つの小さなジョセフソン接合であってよく、それらの関係は0.27であり、磁場は、磁束量子の0.40倍になる。
【0028】
平行板コンデンサ120の誘電体損失に抵抗の消散が加わる。磁束バイアス線130の直流電流によって、ジョセフソン素子110に対する磁場勾配が発生する。抵抗140は、この電流が接地面に漏れるのを防ぎ、又、接地面及びクロスオーバから超伝導ループが形成されるのを防ぐ。そのような超伝導ループは、磁束の量子化を引き起こしうる。磁束バイアス線130に直流電流を発生させる為に、導波路の接地に対して浮いている電流源が与えられてよい。
【0029】
伝送線路内の消散の量は、平行板コンデンサ120の実効損失正接によって表される。伝送線路に沿って特性インピーダンスが一定であると、ポンプ電流及びポンプ電圧の両方が、消散に起因して指数関数的に減衰する。消散があっても混合過程の強度が維持される為には、IpとIcとの間で固定比が維持されることが望ましいであろう。その為には、位置依存キャパシタンス又は位置依存臨界電流のいずれかが適用されてよい。主に平行板コンデンサ120からなる位置依存シャントキャパシタンスに関する式を以下で導出する。キャパシタンスにむらがあると、ポンプ電圧の大きさが早く減衰することと引き換えに、伝送線路に沿ってポンプ電流の大きさが固定されたままになる。TWPAの入力から出力にかけてシャントキャパシタンス120は増加する。それに応じて特性インピーダンスが減少する為、デバイスの出力においてインピーダンスマッチングデバイスが使用されてよい。インピーダンスマッチングデバイスの例として、クロプフェンシュタインテーパ及び指数関数的テーパがある。
【0030】
以下では次の表記を使用する。
a:単位セルの物理長
G:単位セルのシャントコンダクタンス
V:電圧
C:単位セルのキャパシタンス
C0:入力における(即ち、x=0における)線路キャパシタンス
tanδ:Cの損失正接
ω:角周波数
L:単位セルのインダクタンス
x:物理座標
Z:特性インピーダンス
【0031】
単位セル内で消散される電力の読み取り値はRe{VG*V*}/2であり、TWPAの入力から位置xまでの総消散量は次の積分である。
【0032】
【0033】
VをV=ZIと書く。但し、電流の絶対値|I|が一定であるとしており、
【数2】
である。更にG=ω×C×tanδを代入する。
【0034】
【0035】
重要なのは、この消散がCのありうるむらに対して変化しないことである。一方、位置xに送達される電力、即ち、
【0036】
【0037】
を考える。そして、|I|が一定の場合の自己無撞着解は次式のように表される。
【0038】
【0039】
本実施形態によって可能になる技術的効果として、典型的には高透磁率層及び超伝導層の組み合わせを含む超伝導回路に対する磁気シールドを無くすことが挙げられる。ジョセフソン素子のグラジオメトリックな設計により、非カーTWPAの磁気シールド要件が緩和され、それによって、システムのコスト及びサイズの節約が可能になる。非カージョセフソン素子のグラジオメトリックなレイアウトにより、素子は磁場勾配に対してのみ敏感になり、磁場の大きさに対しても敏感であるようにはならない。更に、ポンプ電流と臨界電流の比を固定値に保つことが可能であることにより、TWPAの利得を大きくすることが可能になる。非カージョセフソン素子に関するパラメータ選択により、素子は、最も小さいジョセフソン接合のサイズの誤差に対して一次的に鈍感になる。更に、磁束バイアス線130は、必要な磁場勾配を発生させ、低い値の抵抗体により伝送線路の接地と接続されている。伝送線路のインピーダンスを線路に沿って徐々に変化させることにより、IpとIcと比が一定に保たれる。
【0040】
図2は、文献[2]によるジョセフソン素子の一例を示す。図面の上半分には、ループの一方の半分に3つの大きなジョセフソン接合を有し、ループの他方の半分に1つの小さなジョセフソン接合を有するジョセフソン素子を示している。これらの接合のジョセフソンエネルギは、図に示したように、比αで互いに関連付けられている。
【0041】
図面の下部には、パラメータセットがα=0.29、Φext/Φ0=0.41の場合のポテンシャルの例を示している。言い換えると、ここでは外部磁場が磁束量子の0.41倍である。これにより、3次非線形性は得られるが、4次非線形性は得られない。即ち、c3≠0且つc4=0である。
【0042】
ジョセフソン素子が1つの小さな接合とn個の大きな接合を有する場合、パラメータセットは以下のように決定されてよい。ジョセフソン素子の誘導エネルギは次式で表される。
【0043】
【0044】
但し、φは小さな接合に対する超伝導位相であり、αは接合サイズの比であり、EJは大きな接合のジョセフソンエネルギであり、φextは、次式のように減じられた外部磁束である。
【0045】
φext=2πΦext/Φ0
【0046】
Φextは外部磁束であり、Φ0は、磁束量子、即ち、自然定数h/(2e)である。ここでhはプランク定数であり、eは電子の電荷である。
【0047】
フェーズ1:誘導エネルギの最小値をφの関数として求める。上記最小値におけるφをφminと表記する。最小値が複数個になるのを避ける為に、探索をα<1/nのパラメータ空間に限定してよい。α>=1/nのパラメータ空間では、φextの幾つかの値について最小値が2つ以上存在するというリスクが存在する。最小値が複数個あると、ジョセフソン素子の望ましくないヒステリシスが発生する。
【0048】
フェーズ2:最小値近くの誘導エネルギのφ依存性を記述する実効ポテンシャルUeffに関してテイラー展開を求める。
【0049】
【0050】
フェーズ3:dc2/dα=0となるc2をα及びΦextの関数として調べて明らかにする。
【0051】
フェーズ4:c4=0となるc4をα及びΦextの関数として調べて明らかにする。
【0052】
フェーズ5:dc
2/dα=0且つc
4=0となる最適パラメータペア(α、Φ
ext)を明らかにする。ここでは又、c
3≠0である。n=2及びn=3の場合の最適パラメータを以下に示す。
【表1】
【0053】
図3は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるジョセフソン素子の一例を示す。図面の上半分には、ループの一方の半分に2つの大きな接合を有し、ループの他方の半分に1つの小さなジョセフソン接合を有するジョセフソン素子を示している。
【0054】
図面の下部には、図面の上部と同様に、n=2個の大きなジョセフソン接合I1と1個の小さなジョセフソン接合I2とを有するグラジオメトリックなジョセフソン素子を示している。このジョセフソン素子には超伝導部301及びトンネル接合302が含まれる。臨界電流の2つの接合I1と臨界電流の1つの接合I2とが示されており、これらのジョセフソンエネルギは、図の上部と同様に、αで互いに関連付けられている。
【0055】
これらのループは、実際には、対称であるように製造するのが比較的容易である。これらの接合の値の例として、I1=13.7μA及びI2=3.7μAがある。最適なΦextにおけるこの素子のジョセフソンインダクタンス級数展開は、5μA×[1+0.50(Ip/Ic)+0.00(Ip/Ic)2+…]になる。図示した素子は、小さな接合サイズI2の誤差に対して一次的に鈍感である。
【0056】
図4は、本発明の少なくとも幾つかの実施形態による方法のフローグラフである。図示した方法の各フェーズは、例えば、工場の装置、補助デバイス、又はパーソナルコンピュータにおいて実施されてよく、或いは、それらの中に設置された場合にそれらの機能を制御するように構成された制御デバイスにおいて実施されてよい。
【0057】
フェーズ410では、少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む導波路伝送線路を用意する。その少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、そのループの一方の半分に第1のサイズの接合が1つあり、そのループの第2の半分には第2のサイズの接合が少なくとも2つあり、第2のサイズは第1のサイズより大きい。フェーズ420では、少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁場を発生させるように構成された磁束バイアス線を用意する。フェーズ430では、磁束バイアス線と結合される抵抗のセットを用意する。
【0058】
これらの接合は、ここまで述べたように、ジョセフソン接合を含んでよい。磁束バイアス線は、直流電流が印加されて磁束バイアス線を横切ったら、必要とされる磁場勾配を発生させることが可能である。厳密に1つとは、1つであって2つ以上ではないという意味であり、厳密に2つとは、2つであって3つ以上ではないという意味である。
【0059】
当然のことながら、開示された本発明の実施形態は、本明細書で開示された特定の構造、処理手順、又は材料に限定されず、当業者であれば理解されるであろう、その等価物まで拡張される。更に、当然のことながら、本明細書で使用された術語は、特定の実施形態の説明の為にのみ使用されており、限定的であることを意図されていない。
【0060】
本明細書を通しての一実施形態(one embodiment)又は一実施形態(an embodiment)への参照は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所での「一実施形態では(in one embodiment)」又は「一実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を参照しているわけではない。例えば、約(about)又は大体(substantially)等の語句を使用して数値が参照された場合は、厳密な数値も開示されている。
【0061】
本明細書で使用されている複数のアイテム、構造要素、組成要素、及び/又は材料は、便宜上、一般的なリストに存在してよい。しかしながら、これらのリストは、リストの各要素が別個且つ固有の要素として個別に識別されるかのように解釈されるべきである。従って、そのようなリストの個々の要素は、反対の意味で示されているのでない限り、それらが一般的なグループに存在することにのみ基づいて、同じリストの他の任意の要素の事実上の等価物として解釈されるべきである。更に、本明細書では、本発明の様々な実施形態及び実施例は、それらの様々な構成要素に関しては代替形態と併せて参照されてよい。当然のことながら、そのような実施形態、実施例、及び代替形態は、互いの事実上の等価物として解釈されるべきではなく、本発明の別個且つ独立の表現と見なされるべきである。
【0062】
更に、記載の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされてよい。ここまでの説明では、本発明の実施形態が十分理解されるように、長さ、幅、形状等の例のような様々な具体的詳細を示されている。しかしながら、当業者であれば理解されるように、本発明は、これらの具体的詳細のうちの1つ以上がなくても、或いは、他の方法、構成要素、材料等によっても実施可能である。他の例では、よく知られている構造、材料、又は動作が詳しく図示又は説明されていないが、これは、本発明の態様が曖昧にならないようにする為である。
【0063】
上述の各実施例は、本発明の原理を1つ以上の特定用途において例示したものであるが、当業者であれば明らかなように、発明的能力を行使することなく、且つ、本発明の原理及び概念から逸脱しない限り、実施態様の形式、用法、及び細部の様々な変更が行われてよい。従って、本発明は、後述の特許請求項によって限定される場合を除いて限定されないものとする。
【0064】
本文書では「含む(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、記載されていない特徴の存在を排除することも必要とすることもない開放的限定(open limitations)として使用されている。従属請求項に記載された特徴は、特に別段に明記されない限りは、相互に自由に組み合わされてよい。更に、当然のことながら、「a」又は「an」、即ち、単数形の使用は、本文書全体を通して複数性を排除しない。
〔付記1〕
少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む導波路伝送線路であって、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、前記ループの一方の半分に第1のサイズのジョセフソン接合が厳密に1つあり、前記ループの第2の半分に第2のサイズのジョセフソン接合が少なくとも2つあり、前記第2のサイズは前記第1のサイズより大きい、前記導波路伝送線路と、
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁束を発生させるように構成された磁束バイアス線と、
前記磁束バイアス線と結合される抵抗のセットと、
を含む進行波パラメトリック増幅器。
〔付記2〕
前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは、カー非線形性を示さないか、カー非線形性の、無視できるほどの寄与を示し、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは3波混合を確かに示す、付記1に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記3〕
前記第1のサイズの前記接合のジョセフソンエネルギの、前記第2のサイズの前記接合のジョセフソンエネルギに対する比が、前記カー非線形性を部分的又は完全に無くすように設定される、付記1~2のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記4〕
前記ジョセフソンエネルギ間の前記比は、前記接合の面積で設定される、付記3に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記5〕
前記ジョセフソンエネルギ間の前記比は、前記接合の超伝導臨界電流密度で設定される、付記3に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記6〕
前記ループを貫く前記磁束が、前記カー非線形性を最小化する動作点に対応するように前記磁束バイアス線に電流を発生させることを可能にするように構成された、付記1~5のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記7〕
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く前記磁束は磁束量子の0.40倍になり、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれは、前記ループの第2の半分に前記第2のサイズの接合を厳密に2つ含む、付記1~6のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記8〕
前記第1のサイズの接合のジョセフソンエネルギは、前記第2のサイズの接合のジョセフソンエネルギの0.27倍である、付記7に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記9〕
前記ジョセフソンエネルギ間の前記比、及び前記ループを貫く前記磁束は、前記動作が、前記小さいほうのジョセフソンエネルギのむらに対して一次的に鈍感であるように設定される、付記3~5のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記10〕
前記導波路伝送線路に含まれる前記ジョセフソン素子の数が15を超える、付記1~9のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記11〕
前記磁束バイアス線は、前記導波路伝送線路のシャントキャパシタンスを形成する平行板の上部電極又は下部電極を形成する、付記1~10のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記12〕
前記磁束バイアス線は、前記抵抗を通って前記導波路伝送線路の接地面に接続されており、前記抵抗の値は、前記進行波パラメトリック増幅器が増幅を行うように構成された周波数における前記シャントコンデンサのリアクティブインピーダンスより小さい、付記11に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記13〕
磁場勾配を発生させる為に前記磁束バイアス線に直流電流を印加するように構成された、付記11~12のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記14〕
前記ループの前記それぞれは、周囲からの均質な磁場に対して鈍感であるように、グラジオメトリックな形態で構成されている、付記13に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記15〕
前記導波路伝送線路は2つのジョセフソン素子のセットを複数個含み、前記各セットは、前記導波路伝送線路上に配列された前記シャントコンデンサによって互いに隔てられている、付記11~14のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記16〕
前記シャントキャパシタンスの値は、前記伝送線路に沿ってマイクロ波が減衰するのを補償する為に、前記伝送線路の長さ方向に一定ではない、付記11~15に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記17〕
前記臨界電流の値は、前記伝送線路に沿ってマイクロ波が減衰するのを補償する為に、前記伝送線路の長さ方向に一定ではない、付記11~15のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記18〕
前記シャントキャパシタンス値のむら又は前記臨界電流値のむらは、前記伝送線路に沿う、対応する電流分布が、ポンプマイクロ波信号に曝された場合に一定又はほぼ一定になるように、意図的に構成されている、付記16又は17に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記19〕
前記マイクロ波の減衰は、前記シャントキャパシタンスの誘電体損失によって実施される、付記16、17、又は18のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記20〕
前記マイクロ波の減衰は、前記導波路伝送線路の前記抵抗における損失によって実施される、付記16、17、18、又は19のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記21〕
前記抵抗値及び前記シャントキャパシタンス値は両方とも、前記伝送線路に沿う前記均質なマイクロ波電流分布に対して最適になるように設定される、付記12又は20のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記22〕
前記導波路伝送線路の少なくとも一方の端部にインピーダンスマッチングデバイスを更に含む、付記1~21のいずれか一項に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記23〕
前記インピーダンスマッチングデバイスは、テーパ状伝送線路マッチング素子を含む、付記22に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記24〕
前記テーパ状伝送線路マッチング素子はクロプフェンシュタインテーパを含む、付記23に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記25〕
前記テーパ状伝送線路マッチング素子は指数関数的テーパを含む、付記23に記載の進行波パラメトリック増幅器。
〔付記26〕
進行波パラメトリック増幅器を製造する方法であって、
少なくとも10個のジョセフソン素子をその中に含む導波路伝送線路を用意するステップであって、前記少なくとも10個のジョセフソン素子のそれぞれはループを含み、前記ループの一方の半分に第1のサイズの接合が厳密に1つあり、前記ループの第2の半分に第2のサイズの接合が少なくとも2つあり、前記第2のサイズは前記第1のサイズより大きい、前記導波路伝送線路を用意する前記ステップと、
前記少なくとも1つのループのそれぞれを貫く磁場を発生させるように構成された磁束バイアス線を用意するステップと、
前記磁束バイアス線と結合される抵抗のセットを用意するステップと、
を含む方法。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、低振幅信号の増幅に産業応用される。
頭字語リスト
f1 アイドラ周波数
fP 発振器/ポンプ周波数
fS 信号周波数
Ic ジョセフソン接合の臨界電流
Ip ポンプ電流振幅
JTWPA ジョセフソン進行波パラメトリック増幅器
SQUID 超伝導量子干渉デバイス
TWPA 進行波パラメトリック増幅器
参照符号リスト
110 ジョセフソン素子
120 シャントコンデンサ(平行板コンデンサ)
130 磁束バイアス線
140 抵抗
150 コンタクトホール
101 配線層素子
301 超伝導部
302 トンネル接合
410~420
図4の方法の各フェーズ
引用リスト
[1]A.B.ゾリン(A. B. Zorin):「ジョセフソン進行波パラメトリック増幅器と3波混合(Josephson traveling-wave parametric amplifier with three-wave mixing)」、arXiv:1602.026550v3、2016年9月19日。
[2]N.E.フラッティーニ、U.ヴール、S.シャンカー、A.ナーラ、K.M.スリヴァ、M.H.デヴォレット(N.E. Frattini, U. Vool, S. Shankar, A. Narla, K. M. Sliwa and M. H. Devoret)、「3波混合ジョセフソンダイポール素子(3-wave mixing Josephson dipole element)」、arXiv:1702.00869v3、2017年6月1日。