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特許7064084複合材料の二重ダイアフラム成形、そのような成形のためのアセンブリ、及び結果として得られる複合材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】複合材料の二重ダイアフラム成形、そのような成形のためのアセンブリ、及び結果として得られる複合材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20220427BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20220427BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B29C70/44
B29C70/46
C08J5/04 CFC
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2019542501
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018053132
(87)【国際公開番号】W WO2018146178
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】1702071.0
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1716869.1
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522042544
【氏名又は名称】サイテック エンジニアード マテリアルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ワイブロー, ティム
(72)【発明者】
【氏名】ホリス, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ディーン
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表昭60-500440(JP,A)
【文献】特表昭60-500284(JP,A)
【文献】特開平07-132514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104441697(CN,A)
【文献】Marco Bernsdorf,Process & Resin Development for BMW M4 GTS hood program,SPE ACCE 2016, Speaker presentations,2016年08月25日,http://www.temp.speautomotive.com/SPEA_CD/SPEA2016/pdf/CF/CF3.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B29C 43/00-43/58
B29B 15/08-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと、及び
(b)前記複合材料と前記ダイアフラム構造体との間から空気を除去し、前記ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、前記ダイアフラム構造体の中に前記複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、その結果周囲条件下で少なくとも約1か月間、フレームの使用なしで前記封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられること、
を含む、環境から複合材料を隔離する方法であって、
前記ダイアフラム構造体が、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含み、
前記フィルムが再利用可能である、環境から複合材料を隔離する方法
【請求項2】
封入ポケットの形成が、前記複合材料の周りに配置されたダイアフラムバッグ又は折り畳まれたダイアフラムシートの全ての開口端を封じることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
封入ポケットの形成が、前記複合材料の周縁全体で2枚のダイアフラムシートを封じることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることが、機械的シーリング、接着剤の塗布、熱シーリング、溶接、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
空気を除去することが、前記複合材料と可撓性の前記ダイアフラム構造体との間に真空圧力を加えることを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ダイアフラム構造体の封入が、前記複合材料の後続の成形時に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイアフラム構造体の封入が、前記複合材料の輸送及び取り扱い中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
周囲条件下で最大約6か月間、汚染物質の封入ポケットへの侵入がフレームの使用なしで妨げられる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記封入ポケットが、周囲条件下で少なくとも約1か月間、真空の完全性を維持する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと;
(b)前記複合材料と前記ダイアフラム構造体との間から空気を除去し、前記ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、前記ダイアフラム構造体の中に前記複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、それにより層状構造体を形成し、その結果、
前記封入ポケットへの空気及び汚染物質の侵入がフレームの使用なしで妨げられ、
熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、前記複合材料が前記封入ポケット内で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に構造フレーム内に前記ダイアフラム構造体を配置すること;並びに
(d)ダイアフラム構造体の封入ポケット内で前記複合材料を成形すること;
を含む、複合材料の成形方法であって、
前記ダイアフラム構造体が、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含み、
前記フィルムが再利用可能である、複合材料の成形方法
【請求項11】
封入ポケットの形成が、前記複合材料の周りに配置されたダイアフラムバッグ又は折り畳まれたダイアフラムシートの前記開口端を封じることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
封入ポケットの形成が、前記複合材料の周縁全体で2枚のダイアフラムシートを封じることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることが、機械的シーリング、接着剤の塗布、熱シーリング、溶接、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1012のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
空気を除去することが、前記複合材料と可撓性の前記ダイアフラム構造体との間に真空圧力を加えることを含む、請求項1013のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ダイアフラム構造体の封入が、周囲条件下で1か月~6か月間、汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1014のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ダイアフラム構造体の封入が、工程()における前記成形中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1015のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ダイアフラム構造体の封入が、前記複合材料の輸送及び取り扱い中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1016のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ダイアフラム構造体の封入が、最大約6か月間行われる前記複合材料の保管中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度を与える、請求項1017のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記封入ポケットが、周囲条件下で少なくとも約1か月間、真空の完全性を維持する、請求項1017のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
工程(a)の前にパターンに応じて前記複合材料を機械加工することを更に含む、請求項1019のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記層状構造体が自動化された手段によって操作される、請求項1020のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(a)複合材料を収容するダイアフラム間に封入ポケットを形成することにより、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)前記上側可撓性ダイアフラム及び前記下側可撓性ダイアフラムを前記複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、前記層状構造体に熱又は力が加えられるまで前記複合材料が前記上側可撓性ダイアフラムと前記下側可撓性ダイアフラムとの間で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に、前記複合材料の粘度を下げるか、又はダイアフラムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内で前記層状構造体を予熱すること;
(d)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に前記層状構造体を配置することであって、前記雄型及び前記雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有する、配置すること;
(e)前記雄型と前記雌型との間の隙間を閉じることにより、前記雄型と前記雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(f)前記層状構造体の粘度が成形形状を維持するのに十分なレベルに到達するまで、前記雄型及び前記雌型を閉位置で維持すること;
を含む、複合材料の成形方法であって、
工程(e)が、前記雄型及び前記雌型を前記複合材料の軟化点よりも高い温度に維持しながら前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を約0.7mm/秒~約400mm/秒の速度で閉じることを含む、複合材料の成形方法
【請求項23】
工程(e)が、鋳型の間により小さな隙間が形成されるように、前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を部分的に閉じることを含み、このより小さな隙間がその後特定の時間又は粘度に到達した後に閉じられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記雄型及び前記雌型が周囲温度よりも高い温度で維持される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記雄型及び前記雌型が100℃より高い温度に維持される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複合材料の粘度が1.0×10mPa未満になるまで工程(e)が行われる、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)が、前記上側可撓性ダイアフラムと前記下側可撓性ダイアフラムとの間に少なくとも670mbarの真空圧力を加えることを含む、請求項2226のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
(g)前記ツール上の前記層状構造体を前記複合材料の軟化温度よりも低い温度まで冷却することを更に含む、請求項2227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
(g)前記層状構造体が前記複合材料の前記軟化温度よりも高い間に前記層状構造体を前記ツールから取り外すことを更に含む、請求項2227のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記雄型及び前記雌型が、約10秒~約30分間、閉位置で維持される、請求項2229のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
工程(a)の前にパターンに応じて前記複合材料を機械加工することを更に含む、請求項2230のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記上側可撓性ダイアフラム及び前記下側可撓性ダイアフラムが、上部フレーム、中央フレーム、及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、
前記下側可撓性ダイアフラムは、前記底部フレームと前記中央フレームとの間に保持されており、
前記上側可撓性ダイアフラムは、前記中央フレームと前記上部フレームとの間に保持されている、請求項2231のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記中央フレームが真空口を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記上側可撓性ダイアフラム及び前記下側可撓性ダイアフラムが、ゴム層、シリコーン層、及びプラスチック層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択される、請求項2233のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記加熱装置が接触式ヒーター又はIRヒーターである、請求項2234のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記層状構造体が、自動化された手段によって前記プレスツール及び任意選択的な加熱装置の中に配置される、請求項2235のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記プレスツールのどの部分にも真空圧力が加えられない、請求項2236のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記複合材料が、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維、及びこれらの組み合わせから選択される材料の構造繊維を含む、請求項1037のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記複合材料が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択されるバインダー又はマトリックス材料を含む、請求項1038のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年2月8日に出願された英国特許出願第1702071.0号及び2017年10月13日に出願された英国特許出願第1716869.1号に関連し、これらに基づく優先権を主張する。これらの出願の全内容は、この参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
繊維強化ポリマー複合材料は、航空宇宙、自動車、船舶、工業、建設、及び様々な消費者製品などの多くの産業で幅広く使用されてきた。複合材料は軽量でありながらも特に過酷な環境下で高い強度及び耐食性を示すため、しばしば好まれる。
【0003】
そのような繊維強化ポリマー複合材料は、典型的には、予め含浸された材料又は樹脂注入プロセスのいずれかから製造される。予め含浸された材料、又は「プリプレグ」は、エポキシなどの硬化性マトリックス樹脂を含浸させた繊維から形成される。プリプレグ中の樹脂の含有率は比較的高く、典型的には40体積%~65体積%である。プリプレグの複数のプライは積層するための大きさに切断され、その後引き続き組み立てられて成形型で成形され得る。プリプレグを成形型の形状に合わせることが簡単にはできない場合には、成形面の形状に徐々に変形させるためにプリプレグに熱がかけられる場合がある。繊維強化ポリマー複合材料は、樹脂注入技術を含む液体成形プロセスによって製造することもできる。これらのプロセスとしては、例えば、樹脂トランスファー成形(RTM)、液体樹脂注入(LRI)、真空支援樹脂トランスファー成形(VARTM)、フレキシブルなツーリングを用いる樹脂注入(RIFT)、真空支援樹脂注入(VARI)、樹脂フィルム注入(RFI)、制御大気圧樹脂注入(CAPRI)、VAP(真空支援プロセス)、単一ライン注入(SLI)、及び定圧注入(CPI)が挙げられる。樹脂注入プロセスでは、バインダーで結合した乾燥繊維がプリフォームとして鋳型内に配置され、その後液体マトリックス樹脂がその場で直接注入される。注入後、樹脂が注入されたプリフォームが硬化されることで、完成した複合物品が得られる。
【0004】
両方のタイプの材料に関して、複合材料の三次元成形(又は成型)のプロセスは、最終成形製品の外観、特性、及び性能に重要である。例えば、プリフォームはハンドレイアッププロセスを使用して精緻な形状へと成形されることが多く、これには時間がかかり、部品ごとのばらつきが生じることが多い。成形された複合材料の形成を助けるために差圧が使用される、複合材料を成形するための真空成形法も存在する。例えば米国特許第5,578,158号明細書及び米国特許第5,648,109号明細書を参照のこと。しかしながら、真空形成は硬化工程とは別個の処理工程であるため、これらの真空形成方法は通常「オフライン」プロセスである。プレス内のツールキャビティに入る材料を操作するためにロボット及び/又はアクチュエータを使用することもできる。典型的には、ロボット/アクチュエータは材料の周囲をクランプ固定し、その後プレスが閉じて材料が引き込まれるのに伴い材料と共に移動する。このようなプロセスの目的は、複合材料の形成を制御できるようにX軸及びY軸の張力を維持することである。いくつかの場合には、シャーピンがツーリングキャビティの外側周囲に配置され、形成される材料をピンが貫通する。ツーリングが閉じられると、材料がピンを横切るように切られる又は裂かれる際にX軸及びY軸の張力が維持されるものの、部品の縁周りにかなりの過剰の材料を使用しなければならない。最後に、ツーリングには、望みのパターンに独立して作動できる再構成可能なピンを含めることができる。これらの再構成可能なピンの作動は、真空/吸引力と相まって、材料を変形させる。例えば米国特許第6,484,776号明細書を参照のこと。
【0005】
上述したプロセスのそれぞれは、それ自体の欠点及び短所を有している:例えば、これらは時間がかかることが多い、及び/又は製品は依然として面外の皺及び他の欠陥を引き起こしやすい。これらのプロセスは、成形される複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性も考慮していない。更に、複合材料は一般的に環境条件に曝され、それにより最終成形製品が容易に汚染される場合がある。最後に、追加のハードウェア又は装置なしで、金属スタンピングやプレス機械などの既存の基盤設備及び装置を利用できる方法が現在存在しない。
【発明の概要】
【0006】
複合材料を環境汚染物質から隔離するためのアセンブリ、並びに、当該技術分野で公知の他の方法の欠点及び短所に対処するだけでなく、複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性も考慮し、既存の基盤設備及び装置を使用する可能性も持たせる成形プロセスを提供することを目的として、複合材料を成形するための新規な方法が本明細書で開示される。
【0007】
したがって、1つの態様では、本教示は、複合材料を環境から隔離するための方法を提供する。そのような方法は、
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと、及び
(b)複合材料とダイアフラム構造体との間から空気を除去し、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、ダイアフラム構造体の中に複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、その結果周囲条件下で少なくとも約1か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられること、
を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、封入ポケットの形成は、複合材料の周りに配置されたダイアフラムバッグ又は折り畳まれたダイアフラムシートの全ての開口端を封じることを含む。別の実施形態では、封入ポケットの形成は、複合材料の周縁全体で2枚のダイアフラムシートを封じることを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることは、機械的シーリング、接着剤の塗布、熱シーリング、溶接、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、空気を除去することは、複合材料と可撓性ダイアフラム構造体との間に真空圧力を加えることを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体は、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含む。フィルムは使い捨てであっても再利用可能であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、複合材料の後続の成形時に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、複合材料の輸送及び取り扱い中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。特定の実施形態では、周囲条件下で最大約6か月間、汚染物質の封入ポケットへの侵入がフレームの使用なしで妨げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、封入ポケットは、周囲条件下で少なくとも約1か月間、真空の完全性を維持する。
【0014】
別の態様では、本教示は、複合材料の成形方法を提供する。そのような方法は、
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと;
(b)複合材料とダイアフラム構造体との間から空気を除去し、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、ダイアフラム構造体の中に複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、それにより層状構造体を形成し、その結果、
封入ポケットへの空気及び汚染物質の侵入がフレームの使用なしで妨げられ、
熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、複合材料が封入ポケット内で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に構造フレーム内にダイアフラム構造体を配置すること;並びに
(d)ダイアフラム構造体の封入ポケット内で複合材料を成形すること;
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、封入ポケットの形成は、複合材料の周りに配置されたダイアフラムバッグ又は折り畳まれたダイアフラムシートの全ての開口端を封じることを含む。別の実施形態では、封入ポケットの形成は、複合材料の周縁全体で2枚のダイアフラムシートを封じることを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることは、機械的シーリング、接着剤の塗布、熱シーリング、溶接、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、空気を除去することは、複合材料と可撓性ダイアフラム構造体との間に真空圧力を加えることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体は、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含む。フィルムは使い捨てであっても再利用可能であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、周囲条件下で1か月~6か月間、汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。別の実施形態では、工程(c)における成形中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。また別の実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、複合材料の輸送及び取り扱い中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。更なる実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、保管が最大6か月間行われる複合材料の保管中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。
【0020】
いくつかの実施形態では、封入ポケットは、周囲条件下で少なくとも約1か月間、真空の完全性を維持する。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は工程(a)の前にパターンに応じて複合材料を機械加工することを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、層状構造体は自動化された手段によって操作される。
【0023】
また別の態様では、本教示は複合材料の成形方法を提供する。そのような方法は、概して、
(a)複合材料を収容するダイアフラム間に封入ポケットを形成することにより、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)上側可撓性ダイアフラム及び下側可撓性ダイアフラムを複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、層状構造体に熱又は力が加えられるまで複合材料が上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に、複合材料の粘度を下げるか、又はダイアフラムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内で層状構造体を予熱すること;
(d)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を配置することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有する、配置すること;
(e)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(f)層状構造体の粘度が成形形状を維持するのに十分なレベルに到達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持すること;
を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、複合材料は工程(a)の前にパターンに応じて機械加工されてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、工程(e)は、鋳型の間により小さな隙間が形成されるように雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じることを含み、このより小さな隙間はその後特定の時間又は粘度に到達した後に閉じられる。いくつかの実施形態では、工程(e)は、雄型及び雌型を複合材料の軟化点よりも高い温度に維持しながら雄型と雌型との間の隙間を約0.7mm/秒~約400mm/秒の速度で閉じることを含む。特定の実施形態では、工程(e)は、複合材料の粘度が1.0×10mPa未満になるまで行われる。
【0026】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は周囲温度よりも高い温度で維持される。例えば、いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、100℃より高い温度に維持される。いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、約10秒~約30分、閉位置で維持される。
【0027】
いくつかの実施形態では、工程(b)は、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に少なくとも約670mbarの真空圧力を加えることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、(g)ツール上の層状構造体を複合材料の軟化温度よりも低い温度まで冷却することも含む。別の実施形態では、方法は、(g)層状構造体が複合材料の軟化温度よりも高い間に層状構造体をツールから取り出すことも含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、上部フレーム、中央フレーム、及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、この中で、下側ダイアフラムは、底部フレームと中央フレームとの間に保持されており、上側ダイアフラムは、中央フレームと上部フレームとの間に保持されている。
【0030】
中央フレームは、アセンブリに真空源を供給するように構成されていてもよい。別の実施形態では、上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、上部フレーム及び底部フレームを含む構造フレームによって一体に保持され、下側ダイアフラム及び上側ダイアフラムの両方が中央フレームと上部フレームとの間に保持される。
【0031】
以下でより詳細に説明するように、上側及び下側のダイアフラムを製造するために使用される材料は、通常それらの望まれる機能に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、ゴム層、シリコーン層、及びプラスチック層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択される。
【0032】
加熱装置は、当該技術分野で公知の任意の装置であってもよく、いくつかの実施形態では、接触式ヒーター又はIRヒーターから特に選択することができる。いくつかの実施形態では、層状構造体は、自動化された手段によってプレスツール及び/又は任意選択的な加熱装置の中に配置される。
【0033】
いくつかの実施形態では、プレスツールのいずれの部分にも真空圧力は加えられない。
【0034】
また別の態様では、本教示は、隔離された複合材料を提供する。そのような材料には、ガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体の脱気されたポケットの中に封入された実質的に平面状の複合材料が含まれ、周囲条件下で少なくとも約1か月間、脱気されたポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、複合材料の成形中に、脱気されたポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。別の実施形態では、複合材料の保管、輸送、及び/又は取り扱い中に脱気されたポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。また別の実施形態では、保管が最大6か月間行われる複合材料の保管中に脱気されたポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、脱気されたポケットは、周囲条件下で少なくとも約1か月間真空の完全性を維持する。
【0037】
本教示に関連して使用するための複合材料には、構造繊維が含まれる。そのような構造繊維としては、限定するものではないが、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本教示に関連して使用するための複合材料には、バインダー又はマトリックス材料も含まれる。そのようなバインダー又はマトリックス材料としては、限定するものではないが、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A-1B】本教示による例示的なフレーム付き層状構造体の形成を示す。
図2A-2B】本教示による例示的なフレームレスの層状構造体の形成を示す。
図3】本教示による(フレーム付き層状構造体を使用する)例示的な成形プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
処理時間、部品ごとのばらつき、及び製品汚染を含む複合材料処理の潜在的な欠点を考慮して、より速く、改善された、より信頼性の高いアセンブリ及び方法を開発する必要性が依然として存在する。レオロジー挙動及び硬化特性を考慮し、可能であれば、既存の装置(例えば金属スタンプやプレス)を最大限に活用できる方法を提供することも望ましい。本開示は、保管、取り扱い、及び/又は輸送に適したフレームレスアセンブリを含む複合材料を環境汚染物質から隔離するためのアセンブリ、並びに二重ダイアフラム機械的熱成形プロセスを使用する方法を含む複合材料の形成方法を提供し、これらは共に個別に及び集合的にこれらの欠点に対処する。
【0040】
隔離された複合材料
従来の金属シートは、典型的には、例えば、引き伸ばし及び/又はスタンピング技術を使用して、自動車パネルなどの成形製品へと形成される。金属は、酸素、粉塵、機械からの油などの大気の影響をかなり受けにくいため、成形中の欠陥を避けるためにそのような大気の影響から隔離する必要なしに、金属を非常に入り組んだ複雑な形状へと形成することができる。残念なことに、典型的には複合材料には同じことが当てはまらない。従来の金属スタンピング装置を複合材料に直接使用すると、典型的には自動車などの消費者製品では受け入れられない不完全で不均一な表面になる。そのため、特定の態様では、本発明は、複合材料の成形において使用するためのアセンブリに関する。そのようなアセンブリは、例えば複合材料を既存の金属スタンピング装置で成形できるように、複合材料を隔離する。
【0041】
したがって、いくつかの態様では、本教示は、複合材料の成形に使用するためのアセンブリの形成方法を提供する。環境から複合材料を分離できるそのような方法は、
(a)複合材料を収容するダイアフラム間にポケットを形成することにより、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)上側可撓性ダイアフラム及び下側可撓性ダイアフラムを複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、層状構造体に熱又は力が加えられるまで複合材料が上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間で動かない状態で保持されること;
を含む。
【0042】
本明細書において使用される「実質的に平面」という用語は、他の2つの平面よりも明らかに大きい(例えば少なくとも2、3、4、又は5倍、又はそれ以上大きい)1つの平面を有する材料を指す。いくつかの実施形態では、実質的に平面の材料は、最も大きい平面に沿って厚さの変動を有する。例えば、複合材料は、パッドアップ(すなわちプライの量の局所的な増加)又はプライドロップ(すなわちプライの量の局所的な減少)、材料の変化、及び/又は複合材料が例えば生地へ移行する領域などの強化材料を含んでいてもよい。別の実施形態では、実質的に平面の材料は、複合材料の領域に沿って最小限しか厚さの変動を示さない。例えば、実質的に平面という用語は、複合材料が、面積の90%超で+/-15%以下の全体の厚さの変動を有することを意味し得る。いくつかの実施形態では、厚さの変動は、面積の90%超で±10%以下である。実質的に平面は、完全に平らな材料を示すことを意図しておらず、凹状及び/又は凸状にわずかな変動を有する材料も含まれる。本明細書で使用される「可撓性」という用語は、有意な戻り力なしで変形することができる材料を指す。可撓性材料は、典型的には、約1,000N/m~約2,500,000N/m、例えば約1,500N/m~約2,000,000N/m、又は約2,000N/m~約1,500,000N/mの可撓性係数(パスカル単位で測定されたヤング率とメートル単位で測定された全体の厚さの積)を有する。
【0043】
特定の実施形態では、複合材料を収容するポケットは、ダイアフラム間に保持された複合材料を収容する構造フレームによって画定される。ここで図1Aを参照すると、特定の実施形態では、実質的に平面状の複合材料(110)は、上側可撓性ダイアフラム(120)と下側可撓性ダイアフラム(130)との間に配置される。これによって、複合材料を収容するダイアフラム間にポケット(140)が形成される。特定の実施形態では、このポケットは、ダイアフラムの間に保持された複合材料を収容する構造フレームによって画定されるであろう。例えば、下側可撓性ダイアフラムは、底部フレーム(160)を保持するベッド(150)の上に配置することができ、続いて複合材料(110)を下側可撓性ダイアフラム(120)の上に置くことができ、その後、中央フレーム(170)を下側ダイアフラムに配置し、続いて上側可撓性ダイアフラム(130)を配置し、最後に上部フレーム(180)を配置することができる。いくつかの実施形態では、中央フレームは除かれてもよい。上部、中央(存在する場合)、及び底部のフレームは、例えば周囲に所定の間隔でクランプを配置することにより、支持された周囲によって望まれるダイアフラム形状を維持する。そのような上部、中央、及び底部のフレームは、成形される複合材料のサイズ及び形状に基づいて製造することができる。任意選択的には、従来の金属又は複合プレスツール(例えばLangzauner又はSchubertなどの製造業者からのもの)で使用するための予め製造された構造体支持フレームが当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、中央フレーム(170)は、空気を除去するための手段、例えば真空口又は他のバルブを含んでいてもよい。真空口(存在する場合)は、真空源(例えば真空ポンプ)に接続される。いくつかの実施形態では、複合材料を収容するポケットは、封入ポケット、例えば気密封入ポケットであってもよく、それによって構造フレームは複合材料の周囲全体に配置される。
【0044】
ここで図1Bを参照すると、上側可撓性ダイアフラム(130)及び下側可撓性ダイアフラム(120)は、複合材料(110)と密接に接触して(190及びその分解図を参照)層状構造体を形成する。これは、例えば上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に真空圧力を加えることにより達成することができる。別の実施形態では、これは、空気を除去するために、上側及び/又は下側可撓性ダイアフラムに物理的に圧力を加えることによって(例えば手作業又は機械的手段によって)達成することができる。真空圧力は、例えば、成形性能を妨げ得る残留空気を抜くため、複合材料(又はその構成要素)の変形又は皺を防ぐため、繊維の配列の維持を助けるため、処理中及び成形中に材料を支持するため、並びに/又は高温で望みの厚さを維持するために、特定の場合に望ましい場合がある。本明細書で使用される「真空圧力」という用語は、1気圧未満(又は1013mbar未満)の真空圧力を指す。いくつかの実施形態では、ダイアフラム間の真空圧力は、約1気圧未満、約800mbar未満、約700mbar未満、又は約600mbar未満に設定される。いくつかの実施形態では、ダイアフラム間の真空圧力は約670mbarに設定される。この時点で、複合材料は、真空又は機械的手段によって、ダイアフラム間にしっかりと保持され、その結果熱又は力が加えられるまで動かない状態にされる。そのような動かない状態の層状構造体は、例えば層状構造体内に保持された複合材料がX軸及びY軸を横切って十分な張力を有するその位置で動かない状態で維持されるだけでなく、インデックス付けもされるため、有利な場合がある。すなわち、複合材料は、動かない状態の層状構造体内のダイアフラム間の特定の位置に(例えば自動化された手段によって)配置されてもよい。その後、このインデックス付けされた動かない状態の層状構造体は、プレスツールが複合材料の所定の領域に一貫してはめ込まれるように、プレスツール(以下でより詳細に説明される)の特定の位置に(例えば自動化手段により)配置することができる。そのため、各複合材料の隙間を個別にインデックス付けする必要なく成形製品の複数のコピーを製造するために、動かない状態の層状構造体を信頼性高く使用することができる。
【0045】
いくつかの状況では、成形装置の場所以外の場所でフレーム付きアセンブリを製造することは、重大で、潜在的に克服し難い困難を示す可能性がある。アセンブリの重量、サイズ、及びその他の特徴は、隔離された複合材料を保管及び/又は輸送する能力に大きな影響を及ぼす。そのため、特定の状況では、フレームレスのアセンブリを有することが有利であるか、或いは必要である。したがって、いくつかの実施形態では、複合材料を収容するポケットは、ダイアフラム構造体自体によって画定され、本教示は、複合材料の成形に使用するためのフレームレスアセンブリを提供する。フレームレスアセンブリを使用して環境から複合材料を隔離する方法は、
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと、及び
(b)複合材料とダイアフラム構造体との間から空気を除去し、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、ダイアフラム構造体の中に複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、その結果フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられること、
を含む。
【0046】
ここで図2を参照すると、特定の実施形態では、実質的に平坦な複合材料(210)は、ガス不透過性且つ可撓性のダイアフラム構造体によって囲まれている。ダイアフラム構造体は、例えば複合材料の周りに配置される1つ以上の開口端(220)又は1枚以上の材料のシートを含むバッグであってもよい。例えば、複合材料は2枚のシート(230)の間に配置することができる。これにより、バッグ内又は複合材料を収容するシート間にポケット(240)が形成される。その後、複合材料とダイアフラム構造体との間から空気が除去される。これは、複合材料とダイアフラム構造体との間に真空圧力を加えることによって、ダイアフラム構造体の外表面に物理的に圧力を加えることによって(例えば手作業又は機械的手段によって)、又はこれらのいくつかの組み合わせによって、達成することができる。フレーム付きアセンブリと同様に、フレームレスアセンブリでは、例えば、複合材料(又はその構成要素)の変形又は皺を防ぐため、繊維の配列の維持を助けるため、処理中及び成形中に材料を支持するため、並びに/又は高温で望まれる厚さを維持するためにも、特定の真空圧力を選択することができる。いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体と複合材料との間の真空圧力は、約1気圧未満、約800mbar未満、約700mbar未満(例えば約670mbar)、又は約600mbar未満に設定される。その後、層状構造体(250)内に複合材料を収容するダイアフラム構造体内に封入ポケットを形成するためにダイアフラム構造体が封入され(260)、その結果フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。本明細書で使用される「汚染物質」という用語は、空気、微粒子、油、及び複合材料の表面特性又は機械的特性に実質的に影響を与え得る任意の他の汚染物質を指す。いくつかの実施形態では、単一の工程で空気が除去され、開口端が封入される。例えば、機械的な圧力を使用して空気を除去し、同時に端部を封じることができる。別の実施形態では、空気は除去され、開口端は別個の工程で封じられる。例えば、真空を使用して空気を除去した後に、機械的手段又は他の手段を使用して封じることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、周囲条件下で少なくとも約1か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。特定の実施形態では、周囲条件下で少なくとも約2、3、4、更には5か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。いくつかの実施形態では、周囲条件下で最大約6か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。しかし、特定の実施形態では、周囲条件下で6か月を超える期間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる場合がある。特定の実施形態では、低温条件下、すなわち-18℃以下で少なくとも約2か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。特定の実施形態では、低温条件下で少なくとも約4、6、8、10、更には12か月間、フレームの使用なしで封入ポケットへの汚染物質の侵入が妨げられる。
【0048】
封入ポケットを形成するために使用される材料及び方法は、ダイアフラム構造体に使用されるダイアフラム材料の性質及び形状に依存するであろう。例えば、ダイアフラム構造体がバッグの場合、封入ポケットの形成は、バッグの内部に複合材料を配置し、バッグの開口端を封じることを指す。ダイアフラム構造体が折り畳まれたシートである場合、封入ポケットの形成は、折り畳まれたシートの3つの開口端を封入し、複合材料がシートの折り畳み内に配置されることを指す。他方で、ダイアフラム構造体が2つのダイアフラムシートである場合、封入ポケットの形成は、2つのダイアフラムシートの4つの開口端を封じ、2つのシートの間に複合材料を配置することを指す(すなわち複合材料の周囲全体を封じること)。全ての場合において、各開口端は、直線状で又は任意の非直線的な方法で封じられてもよい。
【0049】
更に、(構造フレームがない状態で)ダイアフラム材料を封じるための多くの方法を利用することができる。例えば、ダイアフラム構造体の開口端は機械的に封じることができる。別の実施形態では、ダイアフラム構造体の開口端は、接着剤を使用して封じることができる。別の実施形態では、ダイアフラム構造体の開口端は溶接することができる。また別の実施形態では、ダイアフラム構造体の開口端は、熱を使用して封じることができる。
【0050】
ダイアフラム構造体のポケット内の複合材料の封入は、静的な周囲条件下で汚染物質を妨げるだけでなく、動的状況下でも汚染物質を妨げることができる。いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、複合材料の後続の成形時に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。いくつかの実施形態では、ダイアフラム構造体を封じることにより、複合材料の保管、輸送、及び/又は取り扱い中に汚染物質が取り込まれるのを防止するのに十分なシール強度が得られる。
【0051】
汚染物質を妨げることができるフレームレスアセンブリは、真空を維持することもできる。したがって、この時点で(及びフレーム付きアセンブリと同様に)複合材料は封入ポケット内にしっかりと保持され、熱又は力が加えられるまで動かない状態で保持されることができる。特に、いくつかの実施形態では、封入ポケットは、周囲条件下で少なくとも約1か月間、真空の完全性を維持する。特定の実施形態では、封入ポケットは、周囲条件下で少なくとも約2、3、4、5、又は6か月以上の期間、真空の完全性を維持する。本明細書で使用される「真空の完全性」という用語は、フレームレスアセンブリが封入ポケット内の負圧を実質的に保持する能力を指す。封入ポケットが真空の完全性を維持すると、複合材料はフレームレスアセンブリ内のその位置で動かない状態で維持され、そのX軸及びY軸を横切って十分な張力がかかり、インデックス付けもなされる(すなわちフレームレスアセンブリ内の特定の位置)。いくつかの実施形態では、このインデックス付けされたフレームレスアセンブリは、フレーム付きアセンブリと関係して定義される動かない状態の層状構造体と同じ利点を有することができる。言い換えると、インデックス付きフレームレスアセンブリは、プレスツールが複合材料の所定の領域に一貫してはめ込まれるように、プレスツールの特定の位置に配置することができる。しかし、いくつかの実施形態では、フレームレスアセンブリは、複合材料を成形する前に構造フレーム内に配置されるであろう。インデックス付きフレームレスアセンブリの使用は、上で詳述した保管及び輸送能力の観点からだけでなく、成形中にも構造フレームを併用した場合に大きな利点を与える。特に、インデックス付きフレームレスアセンブリは、追加のインデックス付けを必要とせずに、構造フレームを用いて、保管、取り扱い、及び/又は輸送後でさえも信頼性高く使用することができる。
【0052】
ダイアフラム材料及びダイアフラム構造体
本明細書で使用される「ダイアフラム」という用語は、2つの異なる物理的領域を分割又は分離する任意の障壁を指す。「ダイアフラム構造体」という用語は、外部空間及び隔離された内部空間(例えば封入ポケット内の領域と封入ポケットの外側の領域)を確定する1つ以上のダイアフラムのアセンブリを指す。ダイアフラムは可撓性を有しており、弾性又は非弾性のいずれかの変形可能な材料のシートであってもよい。典型的には、ダイアフラムの厚さは、約10ミクロン~約200ミクロン、例えば約20ミクロン~約150ミクロンの範囲である。特に有利なダイアフラムは、約30ミクロン~約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は特に限定されず、例えばゴム、シリコーン、プラスチック、熱可塑性プラスチック、又は同様の材料であってもよい。しかしながら、特定の実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含む。ダイアフラムは、単一の材料から構成されていてもよく、或いは例えば層状に配置された複数の材料を含んでいてもよい。例えばダイアフラム構造体の上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、ダイアフラムの他の層と同じ又は異なるそれぞれ独立した1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択することができる。ダイアフラム材料は、従来のキャスティング又は押し出し手順を使用してフィルムへと形成することができる。いくつかの実施形態では、フィルムは使い捨てである。別の実施形態では、フィルムは再利用可能である。
【0053】
ダイアフラム材料は、望まれる機能に応じて、多くの特性を有するように選択することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ダイアフラムは自己解放性である。すなわち、ダイアフラムを最終成形部品から容易に解放することができ、及び/又は成形されたアセンブリをツーリングから容易に解放することができる。別の実施形態では、ダイアフラムは、成形された複合材料に一時的に(又は軽く)接着するように設計される。そのような一時的な接着は、例えば後続の処理、輸送、及び/又は保管中に最終成形部品を保護するのに有利な場合がある。また別の実施形態では、ダイアフラムは、成形複合材料に永久に接着するように設計される。そのような一時的な接着は、最終的な成形部品に永久的な保護コーティング及び/又は塗料コーティングを付与するために有利な場合がある。ダイアフラム材料は、その特定の物理的特性に基づいて選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、100%を超える破断伸びを有する。いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、複合材料の成形温度に近い(例えばその10℃以内)融解温度を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、ダイアフラムは空気透過性である。別の実施形態では、ダイアフラムは空気を通さないため、これらは組み合わされて封入ポケットを形成することができる。封入ポケットは、汚染物質(例えば空気、微粒子、油など)が一定期間封入ポケットに入ることを妨げる。いくつかの実施形態では、不透過性ダイアフラムは、気密封入ポケットを形成する。本明細書で使用される「気密」という用語は、ツーリングプロセスの期間中に真空を保持する材料の能力を指す。この気密封入ポケットは、例えば上側及び下側のダイアフラムを複合材料と密接に接触させるために真空が利用される場合に有利である。
【0055】
複合材料
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、構造繊維とバインダー又はマトリックス材料との集合体を指す。構造繊維は、有機繊維、無機繊維、又はそれらの混合物であってもよく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えばケブラー)、高弾性ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維、ポリp-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、他のセラミック繊維、玄武岩、天然繊維、及びこれらの混合物などの市販の構造繊維が挙げられる。なお、高強度複合構造体を必要とする最終用途では、典型的には高い引張強さ(例えば≧3500MPa又は≧500ksi)を有する繊維が用いられるであろう。そのような構造繊維は、例えば、一方向テープ(ユニテープ)ウェブ、不織マット又はベール、織り生地、編み生地、ノンクリンプ生地、繊維トウ、及びこれらの組み合わせを含む、任意の従来の構成における繊維材料の1つ又は複数の層を含んでいてもよい。構造繊維は、複合材料の全体若しくは一部にわたる1つ若しくは複数のプライとして、又はパッドアップ若しくはプライドロップの形で、局所的な厚さの増加/減少を伴って含まれる場合があることに留意すべきである。
【0056】
繊維質材料は、バインダー又はマトリックス材料によって所定の位置で保持及び安定化され、その結果繊維質材料の配列が維持され、ほころび、ほつれ、引き裂け、座屈、皺、又はその他の繊維質材料の完全性の低下なしに、安定化された材料の保管、輸送、及び取り扱い(例えば成形又は他の変形)を行うことができる。少量のバインダー(例えば典型的には約10重量%未満)によって保持された繊維質材料は、典型的には繊維質プリフォームと呼ばれる。そのようなプリフォームは、RTMなどの樹脂注入用途に適しているであろう。繊維質材料は多量のマトリックス材料によって保持されていてもよく(マトリックスを含浸させた繊維を指す場合、一般には「プリプレグ」と呼ばれる)、そのため樹脂を更に添加せずに最終製品を形成するのに適しているであろう。
【0057】
バインダー又はマトリックス材料は、通常、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択される。プリフォームを形成するために使用される場合、そのような熱可塑性ポリマー及び熱硬化性樹脂は、粉末、スプレー、液体、ペースト、フィルム、繊維、及び不織ベールなどの様々な形態で導入することができる。これらの様々な形態を利用するための手段は、一般的に当該技術分野で公知である。
【0058】
熱可塑性材料としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ芳香族、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート)、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料は、エポキシド又は硬化剤に対する反応性を有するアミン又はヒドロキシル基などの1つ以上の反応性末端基も含んでいてもよい。
【0059】
熱硬化性材料としては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ホルムアルデヒド縮合樹脂(ホルムアルデヒド-フェノール樹脂を含む)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、芳香族ジアミン、芳香族一級モノアミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、及びポリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物のモノ又はポリグリシジル誘導体であってもよい。エポキシ樹脂は、多官能性(例えば二官能性、三官能性、及び四官能性エポキシ)であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーと熱硬化性樹脂の組み合わせが複合材料に使用される。例えば、特定の組み合わせは、流動制御と可撓性に関して相乗効果で作用し得る。このような組み合わせでは、熱可塑性ポリマーはブレンドに対して流動制御と可撓性を付与し、典型的には低粘度で脆い熱硬化性樹脂を支配する。
【0061】
複合材料成形のための二重ダイアフラムプロセス
本教示は、本明細書において提供されるアセンブリを使用して複合材料を成形する方法も含む。いくつかの実施形態では、方法はフレーム付きアセンブリの使用を含み、別の実施形態では、方法はフレームレスアセンブリの使用を含む。また別の実施形態では、方法は、フレーム付きアセンブリ又はフレームレスアセンブリのいずれかを使用することができる。
【0062】
したがって、いくつかの態様では、本教示は、
(a)実質的に平面状の複合材料をガス不透性且つ可撓性のフレームレスのダイアフラム構造体で囲むこと;
(b)複合材料とダイアフラム構造体との間から空気を除去し、ダイアフラム構造体の全ての開口端を封じることによって、ダイアフラム構造体の中に複合材料のみを収容する封入ポケットを形成し、それにより層状構造体を形成し、その結果、
封入ポケットへの汚染物質の侵入がフレームの使用なしで妨げられ、
熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、複合材料が封入ポケット内で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に構造フレーム内にダイアフラム構造体を配置すること;並びに
(d)フレームレスダイアフラム構造体の封入ポケット内で複合材料を成形すること;
を概して含む、複合材料の方法を提供する。
【0063】
工程(d)における複合材料の成形は、真空熱成形、機械的熱成形、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0064】
真空熱成形は、通常、
(a”)ダイアフラム構造体とハウジングとで囲まれた封入チャンバーを画定するために、及び下側ダイアフラムが成形面の上に位置するように、中に鋳型が配置されているハウジングの上に層状構造体を配置することであって、鋳型が非平面状の成形面を有していること;
(b”)任意選択的に、複合材料の粘度を下げる及び/又はダイアフラム構造体を柔らかくするのに十分な温度で層状構造体を加熱すること;
(c”)空気を除去することにより、ダイアフラム構造体とハウジングとの間の封入チャンバー内に真空を形成し、それによって層状構造体が成形面に向かって引っ張られ、最終的にこれに形状が一致すること;
(d”)複合材料が成形された形状を維持するのに十分なレベルに層状構造体の粘度が到達するまで真空を維持すること;
を含む。
【0065】
真空熱成形の技術分野で公知の一般的なパラメータを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、空気は、950mbar以下の真空圧力に到達するまで、1mbar/15分以上の速度で、工程(c”)で除去される。別の実施形態では、工程(c”)で空気が除去される間加熱が維持される。
【0066】
いくつかの実施形態では、真空熱成形は、複合材料の軟化温度より低い温度まで鋳型上の層状構造体を冷却することを更に含む。また別の実施形態では、真空熱成形は、(e”)複合材料の軟化温度よりも層状構造体が上にある間に層状構造体をツールから取り外すことを更に含む。
【0067】
他方で、機械的熱成形は、
(a’)複合材料の粘度を下げるため、ダイアフラム構造体を柔らかくするため、又はその両方に十分な温度で、加熱装置内で層状構造体を任意選択的に予熱すること;
(b’)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を配置することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有する、配置すること;
(c’)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(d’)複合材料が成形された形状を維持するのに十分なレベルに層状構造体の粘度が到達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持すること;
を含み得る。
【0068】
上述した機械的熱成形法は、フレーム付きアセンブリ又はフレームレスアセンブリのいずれかと組み合わせて使用できることに特に留意される。例えば、いくつかの実施形態では、本教示は、
(a°)任意選択的に、複合材料の粘度を下げるか、又はダイアフラムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内でダイアフラム内に配置された複合材料を含む層状構造体を予熱すること;
(b°)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を配置することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有すること;
(c°)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(d°)成形された形状を維持するのに十分なレベルに層状構造体の粘度が到達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持すること;
を概して含む、複合材料の成形方法を提供する。
【0069】
また別の実施形態では、本教示は、
(a)複合材料を収容するダイアフラム間に封入ポケットを形成することにより、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間に実質的に平面状の複合材料を配置すること;
(b)上側可撓性ダイアフラム及び下側可撓性ダイアフラムを複合材料と密接に接触させ、それにより層状構造体を形成し、層状構造体に熱又は力が加えられるまで複合材料が上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間で動かない状態で保持されること;
(c)任意選択的に、複合材料の粘度を下げるか、又はダイアフラムを柔らかくするのに十分な温度で、加熱装置内で層状構造体を予熱すること;
(d)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を配置することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有する、配置すること;
(e)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;並びに
(f)層状構造体の粘度が成形形状を維持するのに十分なレベルに到達するまで、雄型及び雌型を閉位置で維持すること;
を概して含む、複合材料の成形方法を提供する。
【0070】
ここで図3Aを参照すると、層状構造体(310)は、場合によっては、加熱装置(320)で予熱されてもよい。層状構造体は、手作業で、又は例えば自動化されたシャトル(325)を使用するなどの自動化された手段によって、加熱装置に配置することができる。この加熱装置は、金属又は複合材料製品の形成又は成形に使用できる任意のヒーター、例えば接触式ヒーター又は赤外線(IR)ヒーターであってもよい。いくつかの場合には、この予熱により、上側可撓性ダイアフラム及び下側可撓性ダイアフラムが軟化し、例えばその結果最終成形製品の形成中にこれらがより柔軟になる。いくつかの場合には、この予熱によって、層状構造体内に保持された複合材料が望まれる粘度又は温度にされる。予熱は、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃、更にはそれ以上の温度に加熱された加熱装置で行うことができる。この温度は、例えば複合材料のダイアフラム及び/又は構成要素の性質に応じて調整することができる。そのような予熱は、例えば、プレスツールの加熱を最小化するかなくすこと、及び/又は層状構造体がプレスツール内にある時間を最小化することが望まれる場合に有利である。
【0071】
最終成形製品を形成するために、層状構造体はプレスツール内に配置される。いくつかの実施形態では、プレスツールのどの部分にも真空圧力は加えられない。別の実施形態では、例えば層状構造体とツールとの間に閉じ込められている空気を除去するために、ツール表面が局所的に真空にされる。しかしながら、そのような実施形態では、真空は典型的には最終成形製品の形状を形成するための力としては使用されない。層状構造体は、手作業で、又は例えば自動化されたシャトル(325)を使用するなどの自動化された手段によって、プレスツールに配置することができる。このプレスツールは通常雄型(330)と雌型(340)とを含み、これらは隙間(350)によって隔てられている。各鋳型は、非平面状の成形面(それぞれ360及び370)を有する。成形面は固定されている。すなわち、これは再構成可能ではない。成形面も典型的には一致している。すなわち、雄型は雌型の逆にほぼ対応しており、いくつかの実施形態では完全に一致することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、閉じた際にこれらの間の厚さが変化するようにされている。特定の実施形態では、層状構造体は、雄型と雌型との間が特定の所定の距離で隙間に配置される。図2Bを参照すると、その後、隙間(380)を閉じることによって、層状構造体が雄型と雌型との間で圧縮される。いくつかの実施形態では、これは、雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じて、鋳型の間により小さい隙間を形成することによって達成される。このより小さい隙間は、その後特定の時間又は粘度に達した後に閉じられる。「隙間を閉じる」は、Z軸(390)に沿って所定の最終キャビティ厚が鋳型間で得られるように鋳型を圧縮することを意味すると理解される。最終キャビティ厚は、例えば鋳型が互いに対して停止する場所を制御することによって調整することができ、厚さの選択は鋳型を操作する者が行うことができ、これは最終成形製品の性質に依存する。いくつかの実施形態では、最終キャビティ厚は実質的に均一である。すなわち、本方法によって、厚さが5%未満変動する両面成形最終製品が製造される。いくつかの実施形態では、本方法によって、約4%未満、例えば約3%未満、約2%未満、更には約1%未満変動する厚さを有する最終成形製品が製造される。別の実施形態では、雄及び雌のツールは、X軸及びY軸を横切って意図的に変化するキャビティ厚を与えるように構成されていてもよい。
【0072】
特定の実施形態では、雄型及び雌型は周囲温度よりも高い温度で維持される。例えば、これらは約75℃超、100℃超、125℃超、150℃超、175℃超、200℃超、又はそれ以上の温度で維持されてもよい。この温度は、複合材料の構成要素の性質(及び粘度)に応じて調整することができる。鋳型は、例えば複合材料で使用されるバインダー又はマトリックス材料の軟化点を超える温度で維持することができる。いくつかの実施形態では、複合材料は熱硬化性材料を含み、鋳型は約100℃~200℃の温度に維持される。別の実施形態では、複合材料は熱可塑性材料を含み、鋳型は約200℃を超える温度に維持される。典型的には、層状構造体は、複合材料の軟化を可能にするために、例えば予熱工程中、プレスツールでの成形プロセス中、又はその両方のある時点で加熱される。複合材料中のバインダー又はマトリックス材料は、周囲温度(20℃~25℃)で固相であるが、加熱すると軟化する。この軟化によって、プレスツールで複合材料を成形することが可能になる。
【0073】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、所定の時間閉位置で維持される。例えば、いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、望まれる粘度又は温度に到達するまで閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、複合材料の粘度が約1.0×10mPa未満になるまで鋳型は閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、バインダー又はマトリックス材料の架橋が開始するまで閉位置で維持される。別の実施形態では、鋳型は加熱されないが、材料が成形された形状を維持するのに十分な時間閉位置で維持される。鋳型は、例えば約5秒~約60分、例えば、約10秒~約30分、又は約15秒~約15分、閉位置で維持されてもよい。鋳型が閉位置で維持される時間の長さは、複合材料の性質や鋳型の温度などの多くの因子に依存する。
【0074】
特定の実施形態では、雄型は層状構造体を通って動かされ、雌型は動かないままである。別の実施形態では、雌型は動かないままではなく、雄型よりも遅い速度で移動する(雄型が依然として主に形成面として機能するように)。また別の実施形態では、両方の鋳型がほぼ同じ速度で移動して、鋳型間の隙間を閉じる。鋳型は、複合材料を変形/成形するのに十分な速度及び最終圧力で動かされる。例えば、鋳型は、約0.4mm/秒~約500mm/秒、例えば約0.7mm/秒~約400mm/秒、例えば約10mm/秒~約350mm/秒又は約50mm/秒~300mm/秒の速度で動かされてもよい。更に、鋳型は、約100psi~約1000psiの間、例えば約250psi~約750psiの最終圧力まで動かされてもよい。いくつかの実施形態では、鋳型は、皺の形成及び構造繊維の歪みを回避しながら最終成形製品の厚さを制御するために選択された速度及び最終圧力で動かされる。更に、鋳型は、最終成形部品の迅速な形成を可能にするために選択された速度及び最終圧力まで動かされてもよい。
【0075】
その後、層状構造体は、バインダー又はマトリックス材料の軟化温度未満まで冷却される。これは、層状構造体がプレスツールに残っている間、又は層状構造体がプレスツールから取り外された後に行われる。この時点で、バインダー又はマトリックス材料は固相に戻り、複合材料は新しく形成された形状を保持する。複合材料がプリフォームの場合、そのようなプリフォームは、その後の樹脂注入のためにその望ましい形状を保持する。
【0076】
本方法は、構造部品の最終形状を得るために、硬化後の機械加工の必要性を減らすことができる。この硬化後処理は時間がかかるだけでなく、硬化した構造部品を再成形できないため非常に危険でもある。そのため、後硬化処理中に損傷が発生すると、部品が廃物になる可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、上側ダイアフラムと下側ダイアフラムとの間に複合材料を配置する前に複合材料を機械加工する工程を含む。これによって、硬化した3次元複合材料のプログラミング、位置決め、及び切断の複雑なプロセスの代わりに、複合材料の自動化された効率的で容易な機械加工が可能になる。
【0077】
上述した二重ダイアフラム配置は、例えば、そのX軸及びY軸を横切る十分な張力で複合材料を固定位置に維持することにより、複合材料の成形を支援するだけでなく、重要な追加の機能的利点も与える。例えば、この配置は、空気中又はツーリング機械上の不純物などの環境汚染物質から複合材料ブランクを保護する。この保護によって、真空形成や再構成可能なツール技術よりもはるかに複雑な3次元形状が可能な(他の方法では扱いにくい)従来のプレスツールを使用することができる。更に、二重ダイアフラム配置を使用すると、プロセス全体から離型プロセスを排除することができる。加えて、これは必要に応じてダイアフラム層を一時的又は永続的に維持できる最終成形製品を提供する。例えば、一時的な層は、例えば剥離コーティングのために望まれる場合がある一方で、永久コーティングは、例えばコロナ処理又はダイアフラム材料の成形部品への接着のために望まれる場合がある。ダイアフラムの機能は、使用されるダイアフラムの材料に依存し、これについては以下でより詳細に説明する。したがって、本明細書に記載の二重ダイアフラム機械的熱成形プロセスは、自動化された形式で複雑な三次元複合構造体を製造するための効果的且つ効率的な手段を提供する。三次元複合構造体は、大規模で迅速に繰り返し製造することができる。例えば、三次元複合構造体は、1~10分のサイクルで実質的に平面状の複合材料ブランクから形成することができる。そのような迅速で繰り返し可能なプロセスは、ボンネット、トランク、ドアパネル、フェンダー、ホイールウェルなどの自動車部品やパネルの製造に適している。
【0078】
例証
以下の実施例は、例示を目的としているにすぎず、添付の請求項の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0079】
実施例1:二重ダイアフラムの機械的熱成形、フレーム付き
プラスチックフィルム(Solvay、旧Cytec Industries、EMX045)製の下側可撓性ダイアフラムを、底部フレームを保持するベッドの上に真空引きした。炭素繊維強化エポキシ製の複合材料ブランク(Solvay、旧Cytec Industries、MTM710-1)を下側可撓性ダイアフラムの上に置き、続いて真空口を有する中央フレームを置いた。その後、下側可撓性ダイアフラムと同じフィルムで作られている上側可撓性ダイアフラムを、中央フレーム及び複合材料ブランクを覆うように配置した。上側、中央、及び下側のフレームを一緒にクランプ固定し、それにより、真空気密シールと、下側可撓性ダイアフラム、上側可撓性ダイアフラム、及び中央フレームで囲まれた封入ポケットとを形成した。その後、真空圧力が670mbarに到達するまで真空引きして、上側可撓性ダイアフラムと下側可撓性ダイアフラムとの間から空気を除去した。その時点で、複合材料ブランクは両方のダイアフラムによってしっかりと支持され、動かない状態の層状構造体を形成した。
【0080】
その後、層状構造体を接触式加熱装置の中へシャトルで動かし、そこで120℃まで加熱した。層状構造体の温度が120℃に到達した後、自動車のドアの構造の構成要素の形状に構成された一致させた雄型と雌型とを含むプレスツールの中にこれをシャトルで動かした。次いで、雄型を雌型に向かって約200mm/秒の速度で動かした。雌型を動かないままにし、両方の鋳型を架橋が開始するまで140℃で保持した。成形された構造体をまだ熱いうちにプレスツールから取り外し、取り外し後に放冷した。
【0081】
複合材料ブランクを成形するプロセスは、開始から終了まで(すなわち下側可撓性ダイアフラムの最初の配置から最終形状の形成まで)10分であった。
【0082】
実施例2:複合材料のフレームレス隔離
炭素繊維強化エポキシ製の平らな複合材料ブランク(Solvay、旧Cytec Industries、SolvaliteTM710-1)を、80ミクロンのプラスチックフィルム(Solvay、旧Cytec Industries、EMX045)の2枚のシートの間に配置した。プラスチックフィルムのシートの間から空気を除去した後、シートを約140℃で一体に封入し、全体で約8秒間の加熱及び冷却を行った。80℃未満まで冷却した後、複合材料ブランクの周囲に配置された2枚のシートによって形成された層状構造体は、適切な強度と十分な溶接特性とを有することが分かった。封入された平らなブランクを、21℃で4日間及び-18℃で6か月間保管し、それぞれの場合で汚染物質の侵入は観察されなかった。
【0083】
同じプロセスを、炭素繊維強化エステル製の平らな複合材料ブランク(Solvay、旧CytecIndustries、SolvaliteTM730)を使用して行った。封入された平らなブランクは、汚染物質の侵入が観察されることなく、21℃で18か月間積み重ねて保管された。
【0084】
想定実施例3:フレームレスブランクを使用した二重ダイアフラム機械的熱成形
SolvaliteTM710-1を含む実施例2に従って作製した封入された平らなブランクを、保管後に、フレームが複合材料ブランクの周囲に配置されるように、及び複合材料がフィルムのシートとフレームの両方によってしっかり支持されるように構造フレームの中に配置する。その後、この構造体を接触式加熱装置の中にシャトルで移動させ、ここで120℃まで加熱する。層状構造体の温度が120℃に到達した後、望みの3次元形状に構成された、一致させた雄型と雌型とを含むプレスツールの中にシャトルで移動させる。次いで、雄型を雌型に向かって約200mm/秒の速度で動かす。雌型を動かないままにし、両方の鋳型を架橋が開始するまで140℃で保持する。成形された構造体をまだ熱いうちにプレスツールから取り外し、取り外し後に放冷する。
【0085】
複合材料ブランクを成形するプロセスは、開始から終了まで(すなわち、最終形状を形成するためのフレームへの封入された平らなブランクの設置)10分よりもはるかに短いと見込まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B