(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】発泡ゴム成形体、その製造方法並びにそれを用いた水中用衣類、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム及びシール材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20220427BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20220427BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20220427BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20220427BHJP
F16F 1/36 20060101ALN20220427BHJP
F16F 1/37 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08L21/00
C08L1/02
C08J3/22 CEQ
F16F1/36 C
F16F1/37
(21)【出願番号】P 2018132114
(22)【出願日】2018-07-12
(62)【分割の表示】P 2017090177の分割
【原出願日】2017-04-28
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
(73)【特許権者】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】長谷 朝博
(72)【発明者】
【氏名】平瀬 龍二
(72)【発明者】
【氏名】森永 俊史
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08L 7/00-21/02
C08L 1/02
C08J 3/22
F16F 1/36
F16F 1/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含
み、さらに充填剤及び補強剤の少なくとも一方を含む発泡ゴム成形体であって、
前記ゴム成分が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記発泡ゴム成形体中のバイオマスナノファイバーの含有量が0.005質量%以上2.5質量%以下であり、
前記充填剤及び/又は前記補強剤の含有量が、前記発泡ゴム成形体中のゴム成分100質量部に対して3質量部以上80質量部以下の割合であり、
JIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが200kPa以上900kPa以下であり、
JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが400%以上1000%以下であり、
JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下であることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項2】
JIS K6 767:1999に準拠し、荷重を除いてから1時間後に測定した50%圧縮永久ひずみが25%以下である請求項1に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項3】
JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPa以下である請求項1又は2に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項4】
高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型を用いて測定した硬度が40未満である請求項1~
3のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項5】
前記発泡ゴム成形体が、さらに加工助剤及び軟化剤の少なくとも一方を含み、加工助剤及び軟化剤の含有量が、加工助剤及び軟化剤の合計で、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以上85質量部以下の割合である請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項6】
ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含
み、さらに充填剤及び補強剤の少なくとも一方を含む発泡ゴム成形体であって、
前記ゴム成分が、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記発泡ゴム成形体中のバイオマスナノファイバーの含有量が2.5質量%以上5質量%以下であり、
前記充填剤及び/又は前記補強剤の含有量が、前記発泡ゴム成形体中のゴム成分100質量部に対して3質量部以上80質量部以下の割合であり、
JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが50%以上350%以下であり、かつJIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが300kPa以上1700kPa以下であり、
JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPaより大きく800kPa以下であり、
JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下であることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項7】
JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が20kPa以上150kPa以下である請求項
6に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項8】
高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型を用いて測定した硬度が40以上であり、かつ高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)C型を用いて測定した硬度が8以上70以下である請求項6
又は7に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項9】
前記発泡ゴム成形体が、さらに加工助剤及び軟化剤の少なくとも一方を含み、加工助剤及び軟化剤の含有量が、加工助剤及び軟化剤の合計で、ゴム成分100質量部に対し、10質量部以上85質量部以下の割合である請求項6~8のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の発泡ゴム成形体の製造方法であって、
ゴム成分、前記ゴム成分と同じ種類のゴムのラテックスとバイオマスナノファイバーの水分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、加硫剤及び発泡剤を
含み、さらに充填剤及び補強剤の少なくとも一方を含むゴム組成物を、架橋発泡させて発泡ゴム成形体を得ることを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項11】
前記バイオマスナノファイバーのマスターバッチは、バイオマスナノファイバーを0.1~50質量%含む請求項10に記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスナノファイバーを含む発泡ゴム成形体、その製造方法並びにそれを用いた水中用衣類、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム及びシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムや各種合成ゴムを架橋発泡させた発泡ゴム成形体は、軽量性及び断熱性等に優れていることから、水中用衣類、ゴムパッキン、オイルシール、止水材などの各種シール材、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム、コンベアベルト、ロール表面部材、電線被覆用部材、各種ゴムシートや、ゴムシートと織編物を積層したゴム引布といった様々な用途に用いられている。
【0003】
一方、ゴム系材料では、主成分であるゴムに、強度を高めるための補強剤として繊維を加えて複合化することが行われている。例えば、特許文献1には、天然ゴムや合成ゴム等の高分子系の母材に繊維状微細セルロースを添加して複合した複合材が提案されている。特許文献2にはジエン系ゴムに対し、結晶化度が50%未満のセルロースを含有するゴム組成物が提案されている。また、特許文献3には、バイオマスナノファイバーの一種であるセルロースナノファイバーを含むゴム系架橋発泡成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-231796号公報
【文献】特開2011-137105号公報
【文献】特開2016-191007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のゴム系材料を用いた発泡成形体や特許文献2に記載のゴム組成物では、成形体内部に含まれる独立気泡の形状が維持されることで、成形後の形状が維持されているが、外部から大きな力を加え変形させると形の歪みや、嵩が回復しなくなる、いわゆる"へたり"が生じうる。特に長時間荷重をかけた後のへたりが生じやすく、使用時に外部より荷重が加わる様々な用途においてへたりの低減が求められている。また特許文献3に記載のゴム系架橋発泡成形体では、軽量化と耐摩耗性の両立について検証されているのみで、へたりの低減については検証されていない。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するため、へたりが生じにくい発泡ゴム成形体、その製造方法並びにそれを用いた水中用衣類、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム及びシール材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一実施形態において、ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含む発泡ゴム成形体であって、前記発泡ゴム成形体中のバイオマスナノファイバーの含有量が10質量%以下であり、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下であることを特徴とする発泡ゴム成形体に関する。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999
に準拠し、荷重を除いてから1時間後に測定した50%圧縮永久ひずみが25%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記ゴム成分が、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが300%以上1000%以下であり、かつJIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが300kPa以上900kPa以下であることが好ましい。該実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPa以下であることが好ましい。また、該
実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型を用いて測定した硬度が40未満であることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPaより大きいことが好ましい。該実施形態
において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが50%以上500%以下であり、かつJIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが350kPa以上1500kPa以下であることが好ましい。また、該実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が10kPa以上150kPa以下であることが好ましい。また、該実施形態において、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型を用いて測定した硬度が40以上であり、かつ高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)C型を用いて測定した硬度が8以上70以下であることが好ましい。
【0012】
本発明は、また、一実施態様において、ゴム成分、前記ゴム成分と同じ種類のゴム成分を含むラテックスとバイオマスナノファイバーの水分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、加硫剤及び発泡剤を含むゴム組成物を、加硫発泡させて発泡ゴム成形体を得ることを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法に関する。
【0013】
前記バイオマスナノファイバーのマスターバッチは、バイオマスナノファイバーを0.1質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0014】
本発明は、一実施形態において、前記の発泡ゴム成形体を用いた水中用衣類に関する。本発明は、他の一実施形態において、前記の発泡ゴム成形体を用いた車両用緩衝材に関する。本発明は、他の一実施形態において、前記の発泡ゴム成形体を用いた防振ゴムに関する。本発明は、他の一実施形態において、前記の発泡ゴム成形体を用いた防音ゴムに関する。本発明は、他の一実施形態において、前記の発泡ゴム成形体を用いたシール材に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、発泡ゴム成形体に、ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含ませるとともに、バイオマスナノファイバーの含有量を所定の範囲に調整した発泡ゴム成形体に関す
る。本発明の発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下であり、へたりが生じにくい発泡ゴム成形体である。本発明は、へたりが生じにくい発泡ゴム成形体並びにそれを用いた水中用衣類、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム及びシール材を提供することができる。本発明は、また、好ましくは、へたりが生じにくいうえ、柔軟性に富み、十分な引張強さを有する発泡ゴム成形体並びにそれを用いた水中用衣類、車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴム及びシール材を提供することができる。
【0016】
本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体の製造方法によれば、ゴム成分、及び前記ゴム成分と同じ種類のゴム成分を含むラテックスとバイオマスナノファイバーの水分散液を混合し、固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチを用いることで、へたりが生じにくい発泡ゴム成形体を得ることができる。好ましくは、へたりが生じにくいうえ、柔軟性に富み、十分な引張強さを有する発泡ゴム成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の発明者らは、発泡ゴム成形体において、へたりを低減することについて鋭意検討した。その結果、発泡ゴム成形体に、ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含ませるとともに、バイオマスナノファイバーの含有量を所定の範囲に調整して得られる発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下となり、へたりにくい発泡ゴム成形体となることを見出し、本発明に至った。また、通常、補強剤である繊維をゴム等の高分子系の母材(マトリックス材料)に添加すると、引張強さ、曲げ強さといった機械的強度は高められるが、切断時伸びといった柔軟性が低下する傾向にある。本発明では、好ましくは、ゴム成分とバイオマスナノファイバーを用いるとともに、バイオマスナノファイバーの含有量を特定の範囲にすることで、上述したように圧縮永久ひずみが低減することに加え、実際の使用状況において十分な引張強さを保ちつつ、柔軟性が大幅に向上する発泡ゴム成形体が得られることを見出した。
【0018】
前記発泡ゴム成形体は、ゴム成分とバイオマスナノファイバーを含む。
【0019】
前記発泡ゴム成形体を構成するゴム成分は特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)や合成ゴムを使用することができる。前記合成ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム等が挙げられる。前記ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。前記非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(イソブチレンイソプレンゴムとも称される、IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドの共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルの共重合体(GCO)及びエチレンオキシドとエピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルの三元共重合体(GECO)が含まれる)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。前記ゴム成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記発泡ゴム成形体において、ゴム成分は、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選ばれる一種以上を含むことが好ましく、クロロプレンゴムを含むことがより好ましい。
【0020】
前記クロロプレンゴムとしては、特に限定されず、例えば、硫黄変性タイプ、メルカプ
タン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ、及びその他特殊タイプ等のいずれを用いてもよい。前記クロロプレンゴムにおいて、JIS K 6300-1:2013に準拠して、L形ローターを用い、100℃で1分間予熱後、ローターを作動させて4分後に測定したムーニー粘度ML(1+4)は特に限定されないが、加工性に優れるという点から、クロロプ
レンゴムのムーニー粘度ML(1+4)が10以上120以下であると好ましい。前記クロロ
プレンゴムのムーニー粘度ML(1+4)は20以上100以下であることがより好ましく、
30以上90以下であることがさらに好ましい。このようなクロロプレンゴムとしては、例えば、硫黄変性タイプ等を用いることができる。
【0021】
前記バイオマスナノファイバーは、生物由来の原料を微細化することで得られる、直径が1nm以上1000nm以下、アスペクト比が5以上10000以下の微小な繊維状物質のことを指す。前記バイオマスナノファイバーとしては、例えば、セルロースナノファイバー(以下、CNFとも称す。)、セルロースナノクリスタル、セルロースナノウィスカー、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー等が挙げられる。前記セルロースナノファイバーは、例えば、植物や木材の細胞壁を構成する繊維状のセルロースを、粉砕、化学処理(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカルやその誘導体を用いた化学処理が例として挙げられる)、解繊することで得ることができる。前記キチンナノファイバーは、例えば、カニやエビといった各種甲殻類の殻を原料とし、これらを粉砕、解繊することで得ることができる。前記キトサンナノファイバーは、例えば、カニやエビといった各種甲殻類の殻を原料とし、これらを粉砕、アルカリ処理による脱アセチル化したものを解繊することで得ることができる。前記バイオマスナノファイバーは、一種を単独で用いてもよく、原料、繊維長、繊維直径等のいずれかが異なる二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記バイオマスナノファイバーは、入手の容易さ、種類が豊富にあることからセルロースナノファイバーを含むことが好ましい。前記セルロースナノファイバーは、繊維径が1nm以上800nm以下の範囲であることが好ましく、1nm以上500nm以下の範囲であることがより好ましい。また、前記セルロースナノファイバーは、アスペクト比が10以上10000以下の範囲であることが好ましく、50以上7500以下の範囲であることがより好ましく、100以上5000以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0022】
前記発泡ゴム成形体はバイオマスナノファイバーの含有量が10質量%以下である。発泡ゴム成形体においてバイオマスナノファイバーの含有量が10質量%以下であることで後述するように発泡ゴム成形体の内部に存在する気泡セルの壁部にバイオマスナノファイバーが分散し、気泡セルの弾力性を維持しつつ、気泡セルの壁を強化するため、発泡ゴム成形体に荷重して変形させても、強化された気泡セルの壁によりその変形が固定されにくく、荷重を除くことで気泡セルが元の大きさ、形状に戻りやすいことから、荷重により生じるへたりが低減できる。前記発泡ゴム成形体のバイオマスナノファイバー含有量は8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。前記発泡ゴム成形体のバイオマスナノファイバーの含有量の下限は特に限定されないが、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.008質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。
【0023】
また、前記発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーの含有量は、発泡ゴムの用途によって適宜選択してもよい。発泡ゴム成形体のバイオマスナノファイバー含有量が10質量%以下であれば圧縮永久ひずみが低減された、使用による嵩の減少(へたり)の少ない発泡ゴム成形体が得られるが、圧縮永久ひずみを低減しつつ、柔軟性の求められる用途、例えば、ウェットスーツ、ドライスーツ、胴付きゴム長靴を始めとする水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布であれば、発泡ゴム成形体のバイオマスナノファイバー含有量は5質量%以下が好ま
しく、0.001質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましく、0.008質量%以上1質量%未満が特に好ましい。
【0024】
一方、圧縮永久ひずみを低減しつつ、発泡ゴム成形体の硬さ(硬度)や圧縮時の硬さ(圧縮応力)が求められる用途、例えば、振動や音を減衰させるだけでなく、硬さや耐衝撃性が求められる場所に使用される防振ゴム、防音ゴム、複雑な形状の隙間に対しても形状を合わせ、確実に水などの浸入を防ぐことが求められるシール材であれば、発泡ゴム成形体のバイオマスナノファイバー含有量は0.1質量%以上8質量%以下が好ましく、0.5質量%以上7.5質量%以下がより好ましく、1質量%以上6質量%以下がさらに好ましく、2.5質量%以上5質量%以下が特に好ましい。
【0025】
前記セルロースナノファイバー等のバイオマスナノファイバーは、取扱い性の観点から、その親水性を利用し、水に分散させた状態のものを用いることができる。勿論、固体微粉末状としたものを用いることも可能である。また各種ゴム成分に混ぜる際の分散性を向上させるため、化学修飾したバイオマスナノファイバーとしてもよいし、カップリング剤を添加してもよい。化学修飾したバイオマスナノファイバーとしては、特に限定されないが、例えば、セルロースナノファイバー表面の水酸基に対し、アセチル基等のアルカノイル基を導入した、化学修飾セルロースナノファイバー等が挙げられる。カップリング剤は、特に限定されず、例えば、シランカップリング剤や、公知の他のカップリング剤等を用いることができる。
【0026】
前記発泡ゴム成形体は、発泡ゴム成形体の主成分となるゴム成分と、バイオマスナノファイバーに加えて、加硫剤及び発泡剤を含む。また、必要に応じて、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤(焼け防止剤、リターダーとも称す。)、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、軟化剤、充填剤、難燃剤、帯電防止剤等を含むことができる。加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、発泡剤、加工助剤、軟化剤、充填剤、補強剤等は、特に限定されず、公知のものを適宜に用いることができる。
【0027】
前記発泡ゴム成形体に使用する加硫剤は、特に限定されず公知のものを用いることができる。前記加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄などの種類がある)、塩化硫黄、二塩化硫黄、セレン、テルルなどの無機系加硫剤、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィドなどの含硫黄有機化合物、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタンなどの金属酸化物系の加硫剤、アルキルフェノール樹脂、変性アルキルフェノール樹脂といった樹脂系加硫剤、ヘキサメチレンジアミンカルバメートを始めとするポリアミン系加硫剤、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートといった過酸化物系加硫剤(過酸化物系架橋剤、PO加硫剤、PO架橋剤、パーオキサイド加硫剤、パーオキサイド架橋剤とも称される。)、p-キノンジオキシム、p,p'-ジ
ベンゾイルキノンジオキシムといったキノイド系加硫剤(キノイド加硫剤、キノイド系架橋剤、キノイド架橋剤とも称される)等が挙げられる。これらの加硫剤は、ゴム成分に応じて適宜に選択して使用してもよい。本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において、ゴム成分としてクロロプレンゴムを使用する場合、加硫剤として金属酸化物系の加硫剤を使用することが好ましい。
【0028】
本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において加硫剤の含有量は特に限定されず、用途等に応じて調整することができるが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0029】
前記加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、グアニジン系、チオ尿素系(チオ尿素系化合物又はチオウレア系化合物とも称される。)、チアゾール系、チウラム系(チウラム系化合物とも称される。)、ジチオ酸塩系、キサンテート系、スルフェンアミド系(スルフェンアミド系化合物とも称される)等が挙げられる。前記グアニジン系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジフェニルグアニジン、N,N’-ジオルトトリルグアニジンを用いることができる。前記チオ尿素系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、エチレンチオ尿素(2-メルカプトイミダゾリン)、N,N’-ジエチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N’-ジブチルチオ尿素等を用いることができる。前記チウラム系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エ
チルヘキシル)チウラムジスルフィド等を用いることができる。前記キサンテート系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、キサントゲン酸塩及びその誘導体等を用いることができる。前記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、特に限定されないが、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等を用いることができる。前記加硫促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において加硫促進剤の含有量は特に限定されず、用途等に応じて適宜調整することができるが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.2質量部以上5質量部以下の割合になるように添加してもよく、0.3質量部以上3質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0031】
前記加硫助剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、鉛丹、酸化カルシウムといった金属酸化物の加硫助剤、ステアリン酸やオレイン酸、ステアリン酸亜鉛などの各種脂肪酸やその金属塩、トリエタノールアミンやジエチレングリコール等が挙げられる。前記加硫助剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において加硫助剤の含有量は特に限定されないが、例えばゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0032】
本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体においては、加硫用添加剤、すなわち、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤を、製造方法や得られる発泡ゴム成形体の用途に応じて適宜調整して使用することができる。本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体は、加硫用添加剤、すなわち、加硫剤、加硫促進剤及び加硫助剤を合計で、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部以上50質量部以下の割合になるように添加してもよいし、0.5質量部以上40質量部以下の割合になるように添加してもよいし、1質量部以上30質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0033】
前記加工助剤は、原料となるゴム成分に各種添加剤を加えて混練する際の加工性を向上させるために添加される。前記加工助剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、硫黄ファクチス、塩化硫黄ファクチス、水素添加した菜種
油を原料にした硫黄ファクチス、白色ワセリン、パラフィンワックス等が挙げられる。前記高級脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。前記加工助剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において加工助剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上40質量部以下の割合となるように添加してもよく、0.25質量部以上30質量部以下の割合になるように添加してもよく、0.5質量部以上25質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0034】
前記軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、塩素化パラフィン以外のパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、塩素化リン酸エステル系化合物以外のリン酸エステル系オイル、エステル系オイル、石油樹脂、植物油、液状ゴム、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)等が挙げられる。前記軟化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において軟化剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合となるように添加してもよく、10質量部以上55質量部以下の割合になるように添加してもよく、12質量部以上50質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体においては、加工用添加剤、すなわち加工助剤及び軟化剤を、製造方法や得られる発泡ゴム成形体の用途に応じて適宜調整して使用することができる。本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体は、加工用添加剤、すなわち、加工助剤及び軟化剤を合計で、ゴム成分100質量部に対し、5質量部以上100質量部以下の割合になるように添加してもよいし、10質量部以上85質量部以下の割合になるように添加してもよいし、12質量部以上75質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0036】
前記充填剤又は前記補強剤としては、特に限定されないが、例えば、軽質炭酸カルシウム、カーボンブラック(CB)、ホワイトカーボン、タルク、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、マイカ等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明の一実施態様の発泡ゴム成形体において、前記充填剤及び/又は前記
補強剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上80質量部以下の割合となるように添加してもよく、5質量部以上70質量部以下の割合になるように添加してもよいし、8質量部以上60質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、ゴム成分に添加剤を加えてゴム組成物にする際、発泡剤も加えて混練し、得られたゴム組成物を加圧・加熱した際に前記発泡剤が発泡することで発泡ゴム成形体となる。
【0038】
前記発泡剤は特に限定されず、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等といった無機系発泡剤の他、各種有機系発泡剤も使用できる。本発明の発泡ゴム成形体においては、有機系発泡剤を使用することが好ましい。
【0039】
前記有機系発泡剤としては、特に限定されず公知の有機系発泡剤を使用することができる。前記有機系発泡剤としては、例えば、ニトロソ系発泡剤、アゾ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤等が挙げられる。
【0040】
前記ニトロソ系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等を用いることができる。前記N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミンとしては、永和化成工業株式会社製の「セルラーD(登録商標)」、大内新興化学工業株式会社製のスポンジペーストNo4、三協化成株式会社製の「セルマイ
ク(登録商標)A」等の市販品を用いることができる。
【0041】
前記アゾ系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアゾアミンベンゼン、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等を用いることができる。前記アゾ系発泡剤としては、例えば、永和化成工業株式会社製の「ビニホール(登録商標)AC」及び「ビニホール(登録商標)AZ」、大塚化学株式会社 製の「ユニフォーム(登録商標)AZ」、三協化成株式会社製の「セルマイク(登録
商標)C」等の市販品を用いることができる。
【0042】
前記ヒドラジド系発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド等を用いることができる。前記ヒドラジド系発泡剤としては三協化成株式会社製の「セルマイク(登録商標)S、SX、SX-H」、永和化成工業株式会社製「ネオセルボン(登録商標)」が挙げられる。本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体では、ヒドラジド系発泡剤を使用することが好ましい。
【0043】
前記発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体において発泡剤の含有量は特に限定されないが、例えば、ゴム成分100質量部に対して3質量部以上25質量部以下の割合となるように添加してもよく、5質量部以上20質量部以下の割合になるように添加してもよいし、7質量部以上15質量部以下の割合になるように添加してもよい。
【0045】
本発明の発泡ゴム成形体にはバイオマスナノファイバーが10質量%以下の割合で含まれている。前記発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーを添加する方法は特に限定されず、例えば、バイオマスナノファイバーが粉末状であるか、乾燥した状態のものであれば、発泡ゴム成形体の主成分となるゴム成分に直接添加し、ゴム成分と混練してもよいし、バイオマスナノファイバーが水に分散している水分散液(例えば、ゲル状の分散液)を用いる場合は、該バイオマスナノファイバーの水分散液と発泡ゴム成形体の主成分となるゴム成分を用いてバイオマスナノファイバーを高濃度で含むマスターバッチを作製し、得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチを発泡ゴム成形体の主成分となるゴム成分に添加してもよい。
【0046】
前記発泡ゴム成形体において,バイオマスナノファイバーを添加する方法は特に限定されないが、バイオマスナノファイバーが水分散液、例えばゲル状の分散液として提供される場合が多いこと、バイオマスナノファイバーは凝集が発生しやすいことから、バイオマスナノファイバーを高い濃度で含むマスターバッチとしてから発泡ゴム成形体の主成分となるゴム成分に添加、混練することが好ましい。
【0047】
バイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを用いて発泡ゴム成形体を製造することで、得られる発泡ゴム成形体は、バイオマスナノファイバーが発泡ゴム成形体内部に均一に分散しやすくなる。バイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造する方法は特に限定されないが、後述するように、バイオマスナノファイバーの水分散液、例えば、ゲル状の分散液と各種ゴムラテックスを混合し、乾燥しながら固形化することで得られるマスターバッチを使用すると、バイオマスナノファイバーの分散状態がよく、好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、ゴム成分、前記ゴム成分と同じ種類のゴム成分を含むラテックスとバイオマスナノファイバーの水分散液を混合して固形化して得られたバイオマスナノファイバーのマスターバッチ、加硫剤及び発泡剤を含むゴ
ム組成物を、加硫発泡させることで作製することができる。前記発泡ゴム成形体においてゴム成分として、複数のゴムを用いる場合は、バイオマスナノファイバーを含むマスターバッチのゴム成分は特に限定されないが、製造する発泡ゴム成形体において、最も含有量が多い種類のゴム成分と同じ種類のゴム成分を含むラテックスを使用すると好ましい。即ち、クロロプレンゴムを主体とする発泡ゴム成形体を製造する際にはクロロプレンゴムを含むラテックスを使用してバイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造し、添加することが好ましく、天然ゴムを主体とする発泡ゴム成形体を製造する際には、天然ゴムを含むラテックスを使用してバイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造し、添加することが好ましい。得られる発泡ゴム成形体において、最も含有量が多いゴム成分と、マスターバッチを製造する時に使用したラテックスのゴム成分が同じ種類であると、発泡ゴム成形体を製造する際の混練工程にて、発泡ゴム成形体の原料となるゴム成分とマスターバッチを構成するゴム成分が混ざりやすく、バイオマスナノファイバーが均一に分散しやすくなり、発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーによる補強効果が発揮されやすくなると考えられる。
【0049】
前記バイオマスナノファイバーのマスターバッチに含まれるバイオマスナノファイバーの含有量は特に限定されない。即ち、バイオマスナノファイバーが、マスターバッチ中に均一に分散すればよいため、例えば天然ゴムのラテックス等、バイオマスナノファイバーが分散しやすいラテックスを用いてバイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造する場合、前記マスターバッチ中に含まれるバイオマスナノファイバーの含有量は0.1質量%以上50質量%以下の割合であってもよいし、0.5質量%以上30質量%以下の割合であってもよいし、1質量%以上25質量%以下の割合であってもよい。一方、例えばクロロプレンゴムのラテックス等のバイオマスナノファイバーが分散しにくいラテックスを用いてバイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造する場合、前記マスターバッチ中に含まれるバイオマスナノファイバーの含有量は0.1質量%以上18質量%以下の割合であってもよいし、0.5質量%以上15質量%以下の割合であってもよいし、1質量%以上12質量%以下の割合であってもよいし、3質量%以上9質量%以下の割合であってもよい。
【0050】
一方、バイオマスナノファイバーを含むマスターバッチを製造する際に使用する、バイオマスナノファイバーの水分散液は、バイオマスナノファイバーを0.1質量%以上50質量%以下の割合で含むことが好ましく、0.5質量%以上30質量%以下の割合で含むことがより好ましく、0.8質量%以上20質量%以下の割合で含むことが特に好ましく、1質量%以上15質量%以下の割合で含むことが最も好ましい。
【0051】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、加工助剤、軟化剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤等を含むことができる。加硫剤、発泡剤、加硫促進剤、加硫助剤、加工助剤、軟化剤及び充填剤としては、上述したものを用いることができる。
【0052】
前記ゴム組成物は、ニーダー等を用いて混練することができる。混練後のゴム組成物を、高温、高圧で加硫発泡させて発泡ゴム成形体を得る。前記加硫発泡工程において、温度、圧力、処理時間は特に限定されないが、加工性及び製造コストの観点から、温度は100℃以上200℃以下の範囲であり、圧力は3MPa以上25MPa以下の範囲であり、時間は5分以上60分以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは、温度は110℃以上150℃以下の範囲であり、圧力は5MPa以上20MPa以下の範囲であり、時間は10分以上45分間以下の範囲である。また、前記加硫発泡は、一段発泡でもよく、二段発泡でもよいが、二段発泡であることが好ましい。
【0053】
前記バイオマスナノファイバーを含むゴム組成物を高温、高圧で加硫発泡させると、ゴ
ムマトリックス内において、発泡剤による微細な気泡が発生する。そしてこの気泡が成長する際に、周囲のゴムマトリックスを押しのけて気泡セルを構成する。ゴムマトリックスが押しのけられると共に、その部分に分散しているバイオマスナノファイバーも気泡セルの内壁まで押しのけられる。このため、得られた発泡ゴム成形体の各気泡セルの内壁や各気泡セル間の肉厚内には、バイオマスナノファイバーがより密に分散した状態となり、壁面が強化され、発泡ゴム成形体の強度が高まる。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが28%以下である。前記発泡ゴム成形体においては、前記の通り、発泡ゴム成形体内部に存在する気泡セルの内壁中にバイオマスナノファイバーが分散しているため気泡セルに荷重を加えても潰れにくいだけでなく、内壁が強化されているため、荷重を加えて変形させても荷重を除けば元の大きさ、形状に戻ろうとする性質が高まり、圧縮永久ひずみが低減される。本発明の発泡ゴム成形体においては、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから30分後に測定した50%圧縮永久ひずみが25%以下であることが好ましく、24%以下であることがより好ましく、23%以下であることが特に好ましい。また、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠し、荷重を除いてから1時間後に測定した50%圧縮永久ひずみが25%以下であることが好ましく、22%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましく18%以下であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体はへたりや型崩れが発生しにくく、荷重を除くことで元の形状に戻りやすく、元の形状を長期間維持しやすくなることで製品寿命を向上することができる。本発明の発泡ゴム成形体の用途の一例として水中用衣類が挙げられるが、圧縮永久ひずみが小さいことで、水中用衣類を折り畳んだ状態で長期間保管しても水中用衣類の形に変形、歪みが生じにくく、使用時には元の形状に戻りやすくなるため、着用時の快適性が増すと考えられる。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが300%以上であることが好ましく、400%以上であることがより好ましく、460%以上であることが特に好ましく、500%以上であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が柔らかくなり、変形しやすさが求められる水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布に好適に用いることができる。前記発泡ゴム成形体において、JIS
K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びの上限については特に限定がない
が、使用する際に破れや破損を生じにくくするという機械的強度の維持の観点から、1000%以下であることが好ましく、900%以下であることがより好ましく、800%以下であることが特に好ましく、750%以下であることが最も好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を柔軟性が重視されない用途、即ち、柔軟性よりも硬さや衝撃、振動に対する耐久性、機械的強度が求められる用途、例えば、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材に使用する場合、前記発泡ゴム成形体は、JIS
K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びが50%以上であることが好まし
く、100%以上であることがより好ましく、120%以上であることが特に好ましく、150%以上であることが最も好ましい。硬さや衝撃、振動に対する耐久性、機械的強度が求められる用途に本発明の発泡ゴム成形体を使用する場合、切断時伸びの上限もまた特に限定されないが、500%以下であることが好ましく、450%以下であることがより好ましく、400%以下であることが特に好ましく、350%以下であることが最も好ましい。
【0057】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPa以下であることが好ましく、80kPa以下
であることがより好ましく、75kPa以下であることがさらに好ましく、70kPa以下であることが特に好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が柔らかくなり、変形しやすさが求められる水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布に好適に用いることができる。該実施形態の発泡ゴム成形体において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力の下限については特に限定がないが、使用する際の強度維持、あるいは使用感の観点から、5kPa以上で
あってもよく、10kPa以上であってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を柔軟性が重視されない用途、即ち、柔軟性よりも硬さや衝撃、振動に対する耐久性、機械的強度が求められる用途に使用する場合、前記発泡ゴム成形体はJIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力が85kPaよりも大きいことが好ましく、90kPa以上であることがより好ましく、100kPa以上であることが特に好ましく、120kPa以上であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が適度に硬くなり、強度や硬度が求められる用途、例えば、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材などに好適に用いることができる。該実施形態の発泡ゴム成形体において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した100%引張応力の上限については特に限定がないが、800kPa以下であることが好ましく、750kPa以下であることがより好ましく、700kPa以下であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が40kPa以下であることが好ましく、30kPa以下であることがより好ましく、25kPa以下であることが特に好ましく、22kPa以下であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が変形しやすくなり、着用時に動きを阻害しないことが求められる水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布に好適に用いることができる。前記発泡ゴム成形体において、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力の下限については特に限定がないが、使用する際の強度維持、あるいは使用感の観点から、5kPa
以上であることが好ましく、8kPa以上であることがより好ましく、10kPa以上であることが特に好ましく、12kPa以上であることが最も好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を柔軟性が重視されない用途、即ち、柔軟性よりも硬さや衝撃、振動に対する耐久性、機械的強度が求められる用途に使用する場合、発泡ゴム成形体はJIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力が10kPa以上であることが好ましく、15kPa以上であることがより好ましく、20kPa以上であることが特に好ましく、30kPa以上であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が適度に硬くなり、強度や硬度が求められる用途、例えば、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材などに好適に用いることができる。該実施形態の発泡ゴム成形体において、JIS K 6767:1999に準拠して測定した25%圧縮応力の上限については特に限定がないが、150kPa以下であることが好ましく、130kPa以下であることがより好ましく、125kPa以下であることが特に好ましく、120kPa以下であることが最も好ましい。
【0061】
前記発泡ゴム成形体は、柔軟性が求められる用途、例えば水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布に使用される場合であっても、使用中の破損を防ぐため、ある程度の強度が求められる。本発明の発泡ゴム成形体を柔軟性が重視される用途に使用する場合、JIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが200kPa以上であることが好ましく、250kPa以上であることがより好ましく、300kPa以上であることが特に好ましく、350kPa以上であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が優れた機械的強度を有するようになる。前記発泡ゴム成形体において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強
さの上限については特に限定がないが、使用する際の強度維持、あるいは使用感の観点から、900kPa以下であると好ましく、850kPa以下であるとより好ましく、800kPa
以下であると特に好ましく、750kPa以下であると最も好ましい。
【0062】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を柔軟性が重視されない用途、即ち、柔軟性よりも硬さや衝撃、振動に対する耐久性、機械的強度が求められる用途に使用する場合、発泡ゴム成形体はJIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さが300kPa以上であると好ましく、400kPa以上であるとより好ましく、450kPa以上
であると特に好ましく、500kPa以上であると最も好ましい。これにより、発泡ゴム成
形体が適度に硬くなり、強度や硬度が求められる用途、例えば、例えば、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材などに好適に用いることができる。前記発泡ゴム成形体において、JIS K6251:2010に準拠して測定した引張強さの上限については特に限定がな
いが、1700kPa以下であることが好ましく、1500kPa以下であることがより好ましく、1300kPa以下であることが特に好ましく、1200kPa以下であることが最も好ましい。
【0063】
本発明の一実施形態の発泡ゴム成形体において、JIS K 6251:2010に準拠して測定した引張強さは、発泡ゴム成形体を使用する用途に応じて、JIS K 6251:2010に準拠して測定した切断時伸びとのバランスを考慮した値とすることもできる。例えば、高い伸縮性と使用中に破損が生じない強度が求められる用途、例えばウェットスーツを始めとする水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布に使用するのであれば、前記切断時伸びが300%以上1000%以下であり、かつ前記引張強さが200kPa以上900kPa以下であると好ましく、前記切断時伸びが400%以上900%以下であり、かつ前記引張り強さが250kPa以上850kPa以下であるとより好ましく、前記切断時伸びが460%以上800%以下であり、かつ前記引張強さが300kPa以上800kPa以下であると特に好ましく、前記切断時伸びが500%以上750%以下であり、かつ前記引張強さが350kPa以上750kPa以下であると最も好ましい。
【0064】
一方、本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体をある程度の柔軟性を持ちつつ、高い硬度、高い引張強さが求められる防振ゴム、防音ゴムや各種シール材といった用途に使用するのであれば、前記切断時伸びが50%以上500%以下であり、かつ前記引張強さが300kPa以上1700kPa以下であると好ましく、前記切断時伸びが100%以上450%以下であり、かつ前記引張強さが400kPa以上1500kPa以下であるとより好ましく、前記切断時伸びが120%以上400%以下であり、かつ前記引張強さが450kPa以上1300kPa以下であると特に好ましく、前記切断時伸びが150%以上350%以下であり、かつ前記引張強さが500kPa以上1200kPa以下であると最も好ましい。
【0065】
本発明の一実施形態の発泡ゴ ム成形体は、高分子計器株式会社製ASKER(登録商
標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型で測定した硬度が40未満であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、25以下であることが特に好ましい。これにより、発泡ゴム成形体が伸縮性や柔軟性に優れることになり、水中用衣類や自動車・鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、各種ゴムシートやゴム引布を始めとする柔軟性が求められる用途に対し、好適に用いることができる。本発明の発泡ゴム成形体を前記用途、即ち柔軟性が求められる用途に使用する場合、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型で測定した硬度の下限は特に限定されないが、5以上であってもよいし、8以上であってもよいし、10以上であってもよい。
【0066】
一方、本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を硬さや機械的強度、荷重や衝撃、振動に対する耐久性が求められる用途に使用する場合、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型で測定した硬度が40以上であることが好ましい。前記発泡ゴム成形体の硬度において、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)CSC2型で測定した硬度が40以上となる場合は、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標) ゴム硬度計(デュロメータ)
C型を用いて硬度を測定してもよい。本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体を硬さや機械的強度、荷重や衝撃、振動に対する耐久性が求められる用途に使用する場合、高分子計器株式会社製ASKER(登録商標)ゴム硬度計(デュロメータ)C型を用いて測定した硬度が8以上70以下であることが好ましく、10以上60以下であることがより好ましく、15以上50以下であることが特に好ましい。
【0067】
前記発泡ゴム成形体の密度は、発泡ゴム成形体に含まれるゴム成分の種類によって左右されるため特に限定されない。しかし、得られる発泡ゴム成形体の軽さを考慮すると、発泡ゴム成形体の密度は、JIS K 6767:1999において準用するJIS K 7222:2005に準拠して測定した見掛け密度が0.30g/cm3以下であることが好まし
く、0.25g/cm3以下であることがより好ましく、0.20g/cm3以下であることが特に好ましく、0.18g/cm3以下であることが最も好ましい。これにより、発泡ゴム成形体
が軽くなり、水中用衣類に用いた場合には軽量性が高まることで着用者の負担が軽くなり、長時間の作業が可能になったり、着用者の疲労が低減したりする。また、自動車や鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材においては見掛け密度が小さくなることで部材の重量が軽くなり、車両全体の軽量化に寄与しうる。
【0068】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、JIS A 1412-1:2016に準拠して測定した熱伝導率が0.05W/(m・K)以下であることが好ましく、0.048W/(m・K)以下であることがより好ましい。これにより、発泡ゴム成形体の断熱性が良好になり、水中用衣類等に用いた場合に保温性が高められるため、冬期の水中作業や長時間の水中作業での快適性が高められる。自動車や鉄道車両といった各種車両に使用する車両用緩衝材、防振ゴム、防音ゴムや各種シール材として使用した場合も同様に断熱性が高められるため、内部空間の保温性・断熱性が高められる。
【0069】
本発明の一実施形態において、前記発泡ゴム成形体は、比較的引張強さの高いゴム系材料であり、柔軟性や屈曲性に優れたゴム系材料が求められる用途、例えば、関節部分の屈曲性と着脱時の容易性が求められる水中用衣類、振動や音のエネルギーを高効率で減衰することや気密性の維持が求められる防振ゴム、防音ゴム、車両用緩衝材、複雑な形状の隙間に対しても形状を合わせ、確実に水などの浸入を防ぐことが求められるシール材、あるいは、発泡ゴムの柔軟性を生かした各種ゴムシートやゴム引布等に好適に用いることができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、水中用衣類は前記発泡ゴム成形体単独で構成されてもよい。あるいは、本発明の一実施形態において、水中用衣類は、発泡ゴム成形体と、ジャージ生地等の布帛を貼り合せて構成されてもよい。前記発泡ゴム成形体は、切断時伸びが高く、100%引張応力が低いとともに、50%圧縮永久ひずみも低いことから、柔軟性に優れ大きく変形しても、へたりや型崩れが起きにくい。また、前記発泡ゴム成形体は、水中用衣類に必要な引張強さを有しつつ、低硬度、低比重、高柔軟性であることから、着脱しやすく、水中での作業性が高まる。また、前記発泡ゴム成形体は、熱伝導率が低いことから、断熱性、保温性に優れ、低水温時にも作業しやすい。
【0071】
前記水中用衣類は、水中の作業時に身体の少なくとも一部を覆う衣類であればよく、特
に限定されない。例えば、ウェットスーツ、ドライスーツの他、下半身から胸部を覆う胴付きゴム長靴(胴長、ウェーダーとも呼ばれる。)等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0073】
(セルロースナノファイバーのマスターバッチの調製)
セルロースナノファイバー5質量%と、水95質量%からなるセルロースナノファイバーの水分散液(株式会社スギノマシン製セルロースナノファイバー「商品名 BiNFi-s(登録商標)、品番:FMa-10005」)を用い、該セルロースナノファイバーの水分散液142質量部と、クロロプレンゴムのラテックス(クロロプレンゴム55質量%と、水45質量%からなる市販のクロロプレンゴムラテックス)168.9質量部を混合し、撹拌、固形化し、その後乾燥させて、セルロースナノファイバーのマスターバッチを得た。得られたセルロースナノファイバーのマスターバッチは、セルロースナノファイバーを7.1質量%と、クロロプレンゴムを92.9質量%含む。
【0074】
(実施例1)
下記表1に示す配合割合で、硫黄変性タイプのクロロプレゴムと、上記で作製したセルロースナノファイバーのマスターバッチと、その他の添加剤を混合し、ニーダーを用いて60分間混練した。
【0075】
得られたゴム組成物を常温で24時間熟成させた後、押出機で押出し、未加硫シートを得た。前記未加硫シートを125℃に加熱した金型の中に入れ、プレス機で加圧(圧力10MPa)しながら15分間プレス加硫し、発泡させた(一次加硫)。次に、165℃に加
熱した金型の中に入れ、プレス機で加圧(圧力10MPa)しながら15分間プレス加硫し
、発泡させ(二次加硫)、発泡ゴム成形体を得た。
【0076】
(実施例2~3)
実施例1で用いたものと同じ硫黄変性タイプのクロロプレンゴムと、上記で作製したセルロースナノファイバーのマスターバッチの配合量を下記表1に示した割合にした以外は、実施例1と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0077】
(比較例1)
セルロースナノファイバーのマスターバッチを添加せず、クロロプレンゴムに対し、添加剤の配合量を下記表1に示した割合にした以外は、実施例1と同様にして発泡ゴム成形体を得た。
【0078】
(比較例2)
実施例1~3で用いたセルロースナノファイバーのマスターバッチを作製する際に用いたものと同じセルロースナノファイバーの水分散液142質量部に対し、実施例1~3で用いたマスターバッチを作製する際に用いたものと同じクロロプレンラテックス51.6質量部を混合し、撹拌、固形化し、その後乾燥させて、セルロースナノファイバーのマスターバッチを得た。該セルロースナノファイバーのマスターバッチは、セルロースナノファイバーを20質量%と、クロロプレンゴムを80質量%含むものが得られたが、セルロースナノファイバーが分散不良を起こしている可能性があり、セルロースナノファイバーが凝集せずに均一分散している発泡ゴム成形体が得られなかった。
【0079】
実施例1~3及び比較例1で得られた発泡ゴム成形体の物性を下記のように測定し、その結果を下記表1に示した。
【0080】
(切断時伸び)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片(100mm×25mm×10mm)を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が切断したときの試料の長さ(試料の固定に用いたチャック間の長さ)を測定し、元の試料片の長さから試料の切断時伸びを計算した。
【0081】
(100%引張応力)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片(100mm×25mm×10mm)を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が100%伸長したときの引張応力の値を測定し、100%引張応力とした。
【0082】
(50%圧縮永久ひずみ)
JIS K 6767:1999に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6767:1999に準拠し、まず、常温(23±2℃)にて、試験片(20mm×20mm×5mm)を用意し、初期厚さ(T0)を測定した。次に、初期厚さ(T0)から50%歪ませた状態、即ち厚さが初期厚さの半分になる状態に荷重を加えて圧縮し、22時間放置した。22時間圧縮した後、荷重を除くことで圧縮を開放し、圧縮を開放してから(荷重を除いてから)30分後の厚さ(T30m)、及び圧縮を開放してから(荷重を除いてから)1時間後
の厚さ(T1h)を、それぞれダイヤルシックネスゲージを用いて測定し、下記式で、50%圧縮永久ひずみを算出した。
30分後50%圧縮永久ひずみ(%)=[(T0-T30m)/T0]×100
1時間後50%圧縮永久ひずみ(%)=[(T0-T1h)/T0]×100
【0083】
(25%圧縮応力)
JIS K 6767:1999に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6767:1999に準拠し、試験片(20mm×20mm×20mm)を圧縮速度10mm/minで圧縮し、25%ひずみ時、即ち、試料の厚さが元の厚さの75%となったときの圧縮応力を測定した。
【0084】
(引張強さ)
JIS K 6251:2010に準拠して測定した。具体的には、JIS K 6251:2010に準拠し、ダンベル状2号形の試験片(100mm×25mm×10mm)を定速引張試験機に固定し、引張速度が500±50mm/minとなるように引張り、試験片が切断したときの引張強力の値を測定し、引張強さとした。
【0085】
(硬度)
高分子計器株式会社製デュロメータ「ASKER(登録商標)ゴム硬度計 CSC2型
」で測定した。具体的には、試験片の厚さが10mm以上20mm以下の部分を選択し、その場所で硬度を測定した。なお、試験片の厚さが10mm未満の場合は試験片を重ねて厚さが前記範囲になるように調整した。このとき試験片を重ねる枚数は3枚以下とした。
【0086】
(見掛け密度)
JIS K 6767:1999において準用するJIS K 7222:2005に準拠して測定した。
【0087】
(熱伝導率)
JIS A 1412-1:2016に準拠して測定した。
【0088】
【0089】
上記表1の結果から分かるように、ゴム成分及びバイオマスナノファイバーを含み、バイオマスナノファイバーの含有率が10質量%以下である実施例1~3の発泡ゴム成形体は、50%圧縮永久ひずみ(30分後)が、バイオマスナノファイバーを含まない発泡ゴム成形体と比較して大幅に低減した。バイオマスナノファイバーを0.035質量%含む実施例3では、50%圧縮永久ひずみ(30分後)の値が、バイオマスナノファイバーを含まない比較例1の発泡ゴム成形体における50%圧縮永久ひずみ(30分後)の値の70%(30%減)となっており、バイオマスナノファイバーを0.92質量%含む実施例1、バイオマスナノファイバーを3.03質量%含む実施例2は、バイオマスナノファイバーを含まない発泡ゴム成形体における50%圧縮永久ひずみ(30分後)と比較して、その値が50%近く減少していた。バイオマスナノファイバーの添加量が異なる実施例1及び実施例2においていずれも50%圧縮永久ひずみの大幅な低減が確認できたことから、発泡ゴム成形体がバイオマスナノファイバーを含むことで、発泡ゴム成形体内部の気泡セルが強化され、圧縮永久ひずみの大幅な低減が達成されることが分かった。実施例1と実施例2が、バイオマスナノファイバーの含有量の違いに起因して、切断時伸び、硬度、引張応力の値が全く異なることから、バイオマスナノファイバーの含有量を適宜調整することで、圧縮永久ひずみが低減され、各用途に適した機械的特性を有する発泡ゴム成形体が得られることがわかった。特に、バイオマスナノファイバーの含有量を1質量%未満とした実施例1では、50%圧縮永久ひずみ(30分後)の値が、バイオマスナノファイバーを含まない発泡ゴム成形体である比較例1の発泡ゴム成形体における50%圧縮永久ひずみの値に対し約半分(16%)になっているだけでなく、引張強さが540kPa以上で
あり、かつ切断時伸びが500%以上となることから、機械的強度が良好であるとともに、柔軟性に優れる発泡ゴム成形体であることが分かった。
【0090】
一方、バイオマスナノファイバーを含まない比較例1の発泡ゴム成形体は、50%圧縮永久ひずみ(30分後)が約30%となり、長時間荷重を加えて変形させると荷重を除いても変形が維持され、嵩が減少するへたりが生じていた。
【0091】
また、比較例2の結果から、ゴム成分内にバイオマスナノファイバーを高濃度に含有させようとするとバイオマスナノファイバーの凝集が生じやすくなることがわかった。マスターバッチを調整する際に使用するラテックスや、発泡ゴム成形体に含まれるゴム成分に対し、バイオマスナノファイバーの分散性によって左右されるが、発泡ゴム成形体において、バイオマスナノファイバーの含有量が10質量%を越える組成にするとバイオマスナノファイバーの凝集が生じやすくなり、場合によっては圧縮永久ひずみの低減といった効果が得られないと推測される。
【0092】
実施例1及び3で得られた発泡ゴム成形体にジャージ生地を貼り付けたウェットスーツを作製したところ、伸縮性や柔軟性に優れているものであり、着脱が容易であり、着用時のフィット性や運動性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の発泡ゴム成形体は、発泡ゴム成形体中にバイオマスナノファイバーを10質量%以下の割合で含ませることで、圧縮永久ひずみが低減する。このような発泡ゴム成形体はウェットスーツ、ドライスーツ、胴付きゴム長靴を始めとする水中用衣類、振動や音のエネルギーを効率よく減衰することに加え、燃費向上やエネルギーロスの低下を目的とした軽量化が求められる各種防振ゴム、防音ゴム、車両用緩衝材、あるいは複雑な形状の隙間に対しても形状を合わせ、確実に水や油などの浸入を防ぐことが求められるゴムパッキン、オイルシール、止水材といった各種シール材や各種ゴムシート、ゴム引布に用いることができる。