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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】木製部材と鋼製部材との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20220427BHJP
   E04B 1/19 20060101ALI20220427BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
E04B1/32 102B
E04B1/19 F
E04B1/58 503Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017156970
(22)【出願日】2017-08-15
(65)【公開番号】P2019035255
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成29年2月16日に東京工業大学緑ヶ丘ホールにおいて行われた平成28年度建築学科卒業論文発表会において発表することによって公開。 2.平成29年7月20日発行の2017年度日本建築学会大会(中国)学術講演梗概集、建築デザイン発表梗概集に掲載(DVD-ROM)することによって公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】中島 舜
(72)【発明者】
【氏名】竹内 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 弘安
(72)【発明者】
【氏名】原田 公明
(72)【発明者】
【氏名】水谷 美和
(72)【発明者】
【氏名】林 賢一
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291734(JP,A)
【文献】特開2007-218041(JP,A)
【文献】特開2005-264516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製部材と鋼製部材との接合部において、
板状を呈するウェブ部の上下端部の少なくとも何れかに矩形板状を呈するフランジ部を形成して鋼製金具を構成し、管状部の上端に前記フランジ部の基端部を固着し、前記管状部の側面に前記ウェブ部の基端部を固着して成る、鋼製部材である接合部材を設け、前記フランジ部には長さ方向に適宜間隔で複数の挿通孔を穿設し、前記ウェブ部には高さ方向中間部に挿通孔を設し、
長さ方向一端部から中間部に掛けて幅方向中央部に挿入溝を形成して成る、木製部材である杆状部材を設け、前記杆状部材の長さ方向に適宜間隔で上端面から適宜深さまで複数の挿通孔を穿設し、前記杆状部材の高さ方向中間部に側面間を貫通する貫通孔を穿設し、
前記接合部材のウェブ部を前記杆状部材の挿入溝に挿入させ、前記杆状部材の一端面が前記管状部の外周面に近接した状態で、
前記杆状部材の貫通孔及び前記ウェブ部の挿通孔に亘ってボルトを挿通させ、螺着させてウェブ部を固定すると共に、
前記フランジ部の挿通孔及び前記杆状部材の挿通孔にラグスクリューを挿通させ、捻じ込んでフランジ部を固着することによって、
前記木製部材である杆状部材と前記鋼製部材である接合部材とを接合するようにしたことを特徴とする木製部材と鋼製部材との接合構造。
【請求項2】
前記鋼製部材である接合部材前記木製部材である杆状部材との間に引きボルト等の締結部材を配設して、前記杆状部材を前記接合部材に向かって引き付けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の木製部材と鋼製部材との接合構造。
【請求項3】
前記鋼製金具は、T形又はH形断面形状を呈することを特徴とする請求項1又は2に記載の木製部材と鋼製部材との接合構造。
【請求項4】
前記木製部材である杆状部材は梁部材であって、前記鋼製部材である接合部材は複数のこれら梁部材を接合する接合部材であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の木製部材と鋼製部材との接合構造。
【請求項5】
前記鋼製部材である接合部材は柱部材を兼用することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の木製部材と鋼製部材との接合構造。
【請求項6】
前記鋼製金具はH形断面形状を呈するものであって、前記柱部材近傍において前記フランジ部の幅が減少するドッグボーン形状に成形したことを特徴とする請求項5に記載の木製部材と鋼製部材との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模空間構造物のラチスシェル構造から成る屋根架構等において適用される木製部材と鋼製部材との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツホール、イベントホール等の大規模空間構造物の屋根架構には、多数の鋼製部材から成る梁部材を三角又は四角格子状に連結して構成したラチスシェル構造が採用されている(特許文献1参照)。
ところが、近年、木製部材の有する美観性、軽量性等が考慮されて、単層ラチスシェル構造を構成する梁部材として木製部材が使用されるようにもなってきた。
【0003】
しかし、梁部材として木製部材を使用する場合には、従来の鋼製部材を使用する場合と比較して、接合部の剛性及び耐力が不足するため、ラチスシェル構造が座屈したり、変形したりし易い。
そこで、このような問題点を解消するために、木製部材と鋼製ジョイントとの接合部にT型金具を介在させて、接合部の剛性及び耐力を向上させる構造が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-018742号公報
【文献】特開平08-060742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記載の接合構造は、多角筒状ジョイントの外側面にT型金具のヘッド部をボルトによって固定するものであって、木製部材の上端面と多角筒状ジョイントとは直接には連結されていないものであるから、木製部材と鋼製部材との接合部の剛性及び耐力は未だ十分なものとは言えなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、木製部材と鋼製部材との接合部の剛性及び耐力を格段に向上させた、木製部材と鋼製部材との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造は、木製部材と鋼製部材との接合部において、
板状を呈するウェブ部の上下端部の少なくとも何れかに矩形板状を呈するフランジ部を形成して鋼製金具を構成し、管状部の上端に前記フランジ部の基端部を固着し、前記管状部の側面に前記ウェブ部の基端部を固着して成る、鋼製部材である接合部材を設け、前記フランジ部には長さ方向に適宜間隔で複数の挿通孔を穿設し、前記ウェブ部には高さ方向中間部に挿通孔を設し、
長さ方向一端部から中間部に掛けて幅方向中央部に挿入溝を形成して成る、木製部材である杆状部材を設け、前記杆状部材の長さ方向に適宜間隔で上端面から適宜深さまで複数の挿通孔を穿設し、前記杆状部材の高さ方向中間部に側面間を貫通する貫通孔を穿設し、
前記接合部材のウェブ部を前記杆状部材の挿入溝に挿入させ、前記杆状部材の一端面が前記管状部の外周面に近接した状態で、
前記杆状部材の貫通孔及び前記ウェブ部の挿通孔に亘ってボルトを挿通させ、螺着させてウェブ部を固定すると共に、
前記フランジ部の挿通孔及び前記杆状部材の挿通孔にラグスクリューを挿通させ、捻じ込んでフランジ部を固着することによって、
前記木製部材である杆状部材と前記鋼製部材である接合部材とを接合するようにしたことを特徴とする。
【0010】
さらに、前記鋼製部材である接合部材前記木製部材である杆状部材との間に引きボルト等の締結部材を配設して、前記杆状部材を前記接合部材に向かって引き付けるようにしてもよい。
【0011】
前記鋼製金具は、T形又はH形断面形状を呈するのが好ましい。
【0012】
前記木製部材である杆状部材は梁部材であって、前記鋼製部材である接合部材は複数のこれら梁部材を接合する接合部材であってもよい。
【0013】
さらに、前記鋼製部材である接合部材は柱部材を兼用してもよい。
【0014】
又、前記鋼製金具はH形断面形状を呈するものであって、前記柱部材近傍において前記フランジ部の幅が減少するドッグボーン形状に成形したものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造は、鋼製部材のウェブ部の上下端部の少なくとも何れかにフランジ部を形成し、ウェブ部を木製部材に形成した挿入溝内に挟持させて固定すると共に、フランジ部を木製部材の上下端面の少なくとも何れかに固着したことによって、接合部の剛性及び耐力を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を適用したラチスシェル構造の斜視図及びその接合部の一部拡大平面図である。
図2】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を示す一実施形態の(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
図3】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を示す他実施形態の(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
図4】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を示す他実施形態の(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
図5】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を示す他実施形態の(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
図6】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を示す他実施形態の(A)は平面図、(B)は側面断面図、(C)は正面図である。
図7】本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造において、鋼製部材のフランジ部をドッグボーン形状に形成した場合を示す他実施形態の(A)は平面図、(B)は正面図である。
図8】接合部面外曲げ試験における試験装置及び実施方法を示す説明図である。
図9】各試験体の曲げモーメントと回転角との関係を示す図である。
図10】各試験体の曲げモーメントと回転角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造の好適な実施形態について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造は、特には、図1に示すように、スポーツホール、イベントホール等の大規模空間構造物の屋根架構を構成するラチスシェル構造1において適用される。
図1に示すラチスシェル構造1は、多数の木製部材から成る梁部材2を四角格子状に連結し、梁部材2,2同士を鋼製部材から成る接合部材3を介して連結する構成としたものであって、本発明は、この木製部材と鋼製部材との接合構造に関する。
【0019】
[実施形態1]
図2は、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造の一実施形態であって、接合部材11は、鋼製部材であって、管状部111の上端にフランジ部112を固着し、その側面にウェブ部113を突設してある。
よって、管状部111の領域を除くと、フランジ部112とウェブ部113とによって、T形断面形状を呈する鋼製金具が形成されることになる。
フランジ部112には、適宜間隔で複数の挿通孔112aを穿設してあり、ウェブ部113には、高さ方向略中間部に挿通孔113aを穿設してある。
【0020】
一方、杆状部材12は、木製部材であって、幅方向中央部の一端部から中間部に掛けて挿入溝121を形成してある。
又、適宜間隔で上端面から適宜深さまで挿通孔12aを穿設し、高さ方向略中間部に側面間を貫通する貫通孔12bを穿設してある。
【0021】
接合部材11に杆状部材12を連結するには、接合部材11のウェブ部113を杆状部材12の挿入溝121に挿入させた状態で、杆状部材12の貫通孔12b、ウェブ部113の挿通孔113aに亘って六角ボルト14を挿通させ、その雄ネジ部にナット15を螺着させる。
次いで、接合部材11のフランジ部112の挿通孔112a、杆状部材12の挿通孔12aにラグスクリュー13を挿通させ、捩じ込めば、接合部材11に杆状部材12を連結することができる。
ここで、ラグスクリュー13は、その先端部が杆状部材12の高さ方向中間部まで捩じ込むようにする。
【0022】
[実施形態2]
図3は、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造の他実施形態であって、接合部材21は、鋼製部材であって、管状部211の上端にフランジ部212を固着し、その側面にウェブ部213を突設してある。
よって、管状部211の領域を除くと、フランジ部212とウェブ部213とによって、T形断面形状を呈する鋼製金具が形成されることになる。
フランジ部212には、適宜間隔で複数の挿通孔212a,212bを穿設してあり、ウェブ部213には、高さ方向略中間部に挿通孔213aを穿設してある。
【0023】
一方、杆状部材22は、木製部材であって、幅方向中央部の一端部から中間部に掛けて挿入溝221を形成してある。
又、適宜間隔で上端面から適宜深さまで挿通孔22aを穿設し、高さ方向略中間部に側面間を貫通する貫通孔22bを穿設してある。
【0024】
接合部材21に杆状部材22を連結するには、接合部材21のウェブ部213を杆状部材22の挿入溝221に挿入させた状態で、杆状部材22の貫通孔22b、ウェブ部213の挿通孔213aに亘って六角ボルト24を挿通させ、その雄ネジ部にナット25を螺着させる。
次いで、接合部材21のフランジ部212の挿通孔212a、杆状部材22の挿通孔22aにラグスクリュー23を挿通させ、捩じ込むと共に、フランジ部212の挿通孔212bに全螺子ビス26を挿通させ、捩じ込めば、接合部材11に杆状部材12を連結することができる。
ここで、ラグスクリュー23、全螺子ビス26は、その先端部が杆状部材22の高さ方向中間部まで捩じ込むようにする。
【0025】
[実施形態3]
図4は、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造の他実施形態であって、接合部材31は、鋼製部材であって、管状部311の上端にフランジ部312を固着し、その側面にウェブ部313を突設してある。
この実施形態においても、管状部311の領域を除くと、フランジ部312とウェブ部313とによって、T形断面形状を呈する鋼製金具が形成されることになるが、ウェブ部313の高さは、後述する杆状部材32の高さの略1/2としてある。
フランジ部312には、適宜間隔で複数の挿通孔312aを穿設してあり、管状部311の下端部には、挿通孔311aを穿設してある。
【0026】
一方、杆状部材32は、木製部材であって、高さ方向の上端部から中間部に亘って、幅方向中央部の一端部から中間部に掛けて挿入溝321を形成してあり、下端部の中間部には陥没部322を形成してあり、その陥没部322から一端部に掛けて貫通孔323を穿設してある。
又、適宜間隔で上端面から適宜深さまで挿通孔32aを穿設してある。
【0027】
接合部材31に杆状部材32を連結するには、接合部材31のウェブ部313を杆状部材32の挿入溝321に挿入させた状態で、杆状部材32の貫通孔323、管状部材311の挿通孔311aに亘って引きボルト34を挿通させ、その両端部の雄ネジ部にナット35を螺着させる。
次いで、接合部材31のフランジ部312の挿通孔312a、杆状部材32の挿通孔32aにラグスクリュー33を挿通させ、捩じ込めば、接合部材31に杆状部材32を連結することができる。
ここで、ラグスクリュー33は、その先端部が杆状部材32の高さ方向中間部まで捩じ込むようにする。
【0028】
[実施形態4]
図5は、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造の他実施形態であって、接合部材41は、鋼製部材であって、管状部411の上端及び下端にフランジ部412,413を固着し、その側面にウェブ部414を突設してある。
よって、管状部411の領域を除くと、フランジ部412,413とウェブ部414とによって、H形断面形状を呈する鋼製金具が形成されることになる。
フランジ部412,413には、適宜間隔で複数の挿通孔412a,413aを穿設してあり、ウェブ部414には、高さ方向略中間部に挿通孔414aを穿設してある。
【0029】
一方、杆状部材42は、木製部材であって、幅方向中央部の一端部から中間部に掛けて挿入溝421を形成してある。
又、適宜間隔で上端面及び下端面から適宜深さまで挿通孔42a,42bを穿設し、高さ方向略中間部に側面間を貫通する貫通孔42cを穿設してある。
【0030】
接合部材41に杆状部材42を連結するには、接合部材41のウェブ部414を杆状部材42の挿入溝421に挿入させた状態で、杆状部材42の貫通孔42c、ウェブ部414の挿通孔414aに亘って六角ボルト44を挿通させ、その雄ネジ部にナット45を螺着させる。
次いで、接合部材41のフランジ部412の挿通孔412a、杆状部材42の挿通孔42aにラグスクリュー43を挿通させ、捩じ込むと共に、接合部材41のフランジ部413の挿通孔413a、杆状部材42の挿通孔42bにラグスクリュー43を挿通させ、捩じ込めば、接合部材41に杆状部材42を連結することができる。
ここで、ラグスクリュー43は、その先端部が杆状部材42の高さ方向中間部まで捩じ込むようにする。
【0031】
[実施形態5]
尚、接合部材51は、図6に示すように、上端のフランジ部512に比して下端のフランジ部513の幅を小さくし、かつ、それらの間隔を短くして、フランジ部512,513とウェブ部514とによって、変形H形断面形状を呈する鋼製金具を形成するようにしてもよい。
【0032】
[実施形態6]
さらに、接合部材61は、図7に示すように、H形断面形状を呈するものであって、管状部材611近傍において、フランジ部612の幅が減少するドッグボーン形状とした鋼製金具を形成するようにしてもよい。
【0033】
このように、木製部材である杆状部材62やその接合部に先行して、接合部材61のフランジ部612の幅を減少させて塑性化させることによって、鋼製金具である接合部材61に十分な靭性を付与させることができる。
【0034】
次に、図1に示すラチスシェル構造1において、スパンが24mの場合に適用する梁部材を想定して、その接合部における剛性及び耐力を検討する。
【0035】
[剛性及び耐力試験]
載荷は4点荷重法により行い、図8に示すような構成によって、アムスラー試験機71に装着した加力梁72を介して、試験体73の接合部に等曲げモーメントを加えた。
【0036】
試験体73において、木製部材としては、表1に示す木材(集成材)を使用し、鋼製部材及び締結部材としては、表2に示すものを使用した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
試験体73としては、上記において説明したように、実施形態1乃至4の如く構成したものを使用した。
ここで、TB300は、実施形態1であって、ウェブ部の長さ300mm、TB440は、実施形態1であって、ウェブ部長さ440mm、PBは、実施形態2、BBは、実施形態3、HBは、実施形態4であって、各々ウェブ部長さ300mmの試験体である。
【0040】
試験体TB300は、木製部材としては、幅150mm、高さ210mm、長さ1520.5mmの矩形断面形状を呈し、挿入溝の幅30mm、長さ310mmに形成したものを使用した。
又、鋼製部材としては、管状部の肉厚14.5mm、外径159mm、フランジ部の肉厚9mm、幅130mm、長さ300mm、ウェブ部の肉厚9mm、高さ210mm、長さ300mmに形成したものを使用した。
【0041】
試験体TB440は、挿入溝の長さを450mmに形成する以外は、試験体TB300と同様の木製部材を使用した。
又、フランジ部の長さ440mm、ウェブ部の長さ440mmに形成する以外は、試験体TB300と同様の鋼製部材を使用した。
【0042】
試験体PBは、木製部材及び鋼製部材として、試験体TB300と同様の木製部材及び鋼製部材を使用した。
【0043】
試験体BBは、挿入溝の深さを110mmに形成し、陥没部から一端部に掛けて貫通孔を形成する以外は、試験体TB300と同様の木製部材を使用した。
又、鋼製部材としては、ウェブ部の高さ100mmに形成する以外は、試験体TB300と同様の鋼製部材を使用した。
【0044】
試験体HBは、木製部材としては、試験体TB300と同様の木製部材を使用した。
又、鋼製部材としては、ウェブ部の両端部にフランジ部を形成する以外は、試験体TB300と同様の鋼製部材を使用した。
【0045】
試験結果は、図9及び10に示す通りであった。図9及び10に示すグラフは、縦軸を曲げモーメントM(kNm)、横軸を回転角θ(10-2×rad)とし、各試験体におけるそれらの関係を示すものである。
又、1,2,3(丸付き文字)は、3体の試験体サンプルを示し、南側、北側は、図8に示す如く、各試験体における配置部分を、試験時の配置方向で示すものである。
【0046】
又、表3に、各試験体における最大曲げ耐力Mmax及び木製部材曲げ耐力Mに対する比率Mmax/Mを示した。
【0047】
【表3】
【0048】
さらに、表4に、各試験体における回転剛性Kθ、無次元化回転剛性κ及び座屈荷重低減係数β(κ)を示した。
ここで、Kθの算出方法は、日本建築学会、木質構造設計規準に準拠するものとし、κ及びβ(κ)の算出は、日本建築学会、ラチスシェル屋根構造設計指針に基づき、数式1及び数式2に拠るものとした。
【0049】
【表4】
【0050】
【数1】
【0051】
【数2】
【0052】
以上の試験結果によれば、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を採用すれば、最大曲げ耐力Mmaxは木製部材曲げ耐力Mの0.34~0.87倍であり、無次元化回転剛性κは7.5~22である。
よって、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造によれば、接合部における剛性及び耐力を十分に確保できることがわかった。
【0053】
上記においては、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造を大規模空間構造物の屋根架構を構成するラチスシェル構造1に適用する場合について説明したが、本発明の木製部材と鋼製部材との接合構造は、その他の木製部材と鋼製部材との接合構造にも適用できること、勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 ラチスシェル構造
2 梁部材
3 接合部材
11 接合部材
111 管状部
112 フランジ部
113 ウェブ部
12 杆状部材
121 挿入溝
13 ラグスクリュー
14 六角ボルト
34 引きボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10