(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20220427BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20220427BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220427BHJP
B29K 83/00 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/38
B29C45/14
B29K83:00
(21)【出願番号】P 2020082613
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2020-05-08
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508167760
【氏名又は名称】華龍國際科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】2F.,No.35,Chengtian Rd.,Tucheng Dist.,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 國基
(72)【発明者】
【氏名】李 進興
(72)【発明者】
【氏名】程 磊
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104085083(CN,A)
【文献】特開2018-171893(JP,A)
【文献】特開2016-083781(JP,A)
【文献】特開2008-229891(JP,A)
【文献】特開平05-047436(JP,A)
【文献】特開平06-307549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法であって、成型工程と、結合工程と、分離工程と、をこの順で行い、
前記成型工程は、前記シリコンゴム層となる少なくとも1つの有効結合区域と、該有効結合区域の外周面に連結されて周囲に張り出す無効区域と
、第1モールドベース及び第2モールドベースで構成される金型に対して前記有効結合区域を支持する支持区域とを備え、かつ該有効結合区域に、前記枠体外部の形状と略等しい内部形状を有する収容空間が設けられ
、前記支持区域が前記有効結合区域の前記収容空間とは逆側に連結されたシリコンゴム基材を成型する工程であって、第1モールドベースと第2モールドベースとの間に形成した成型空間内に
、前記支持区域となる部分を経由してシリコンゴム材料を注入して前記シリコンゴム基材を成型した後、前記第2モールドベースを外し、
前記結合工程では、前記枠体の外面と前記収容空間の内面のうちのいずれかにシリコンゴムコーティング層を形成してから、前記枠体を前記収容空間内に配置し、さらに前記枠体と前記シリコンゴム基材を同時に加熱して、前記シリコンゴムコーティング層と前記有効結合区域に対して加硫を行い、前記有効結合区域を前記枠体の外部に結合させ、
前記分離工程では、前記第1モールドベースから取り出した前記シリコンゴム基材と前記枠体において、前記有効結合区域から前記無効区域
及び前記支持区域を引き裂く又は切断することにより分離し、前記有効結合区域を前記枠体の外部に留まらせ、該枠体の外部に前記有効結合区域より成るシリコンゴム層を形成する、
ことを特徴とする、枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項2】
前記有効結合区域と前記無効区域の間に第1連結セクションが形成され、前記有効結合区域を前記無効区域から分離したとき、該第1連結セクションと該有効結合区域の間に少なくとも1つの第1切断面が形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項3】
前記第1連結セクションの厚みが前記有効結合区域の厚みより小さい、ことを特徴とする、請求項2に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項4】
前記第1切断面がシリコンゴム層の外周面の周囲に設けられる、ことを特徴とする、請求項2に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項5】
前記支持区域と前記有効結合区域の間に第2連結セクションが形成され、
前記支持区域及び第2連結セクションを経由して前記成型空間内にシリコンゴム材料を注入し、前記支持区域を有効結合区域から分離したとき、該第2連結セクションと前記有効結合区域の間に少なくとも1つの第2切断面が形成される、ことを特徴とする、請求項2に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項6】
前記第2連結セクションの厚みが前記有効結合区域の厚みより小さい、ことを特徴とする、請求項5に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【請求項7】
前記支持区域と前記有効結合領域の間は、前記有効結合領域の表面を囲む第2連結セクションを介して連結され、前記第2切断面が前記シリコンゴム層の前記収容空間とは逆側の面に
、前記有効結合領域の表面を囲んで設けられることを特徴とする、請求項5に記載の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンゴム層に成型時フラッシュやバリが発生するのを抑制し、生産歩留まりを高め、製造コストを効果的に下げることができる、枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンゴム射出成型は、防水コネクタ、MCU、マイクロスピーカー等の各種製品に広く応用されている。
シリコンゴムは、主に、防水、防振または弾力を提供するために用いられる。例えば、特許文献1には、シリコンゴムを用いた防水コネクタを開示している。
【0003】
従来のシリコンゴム射出成型は、ほとんどがシリコンゴムで被覆する部分を一対の金型内に配置し、該金型内にシリコンゴムを注入して、それが冷却されるのを待ち、直接該シリコンゴムで被覆している。
例えば、防水コネクタに応用する場合、枠体を金型内に配置し、シリコンゴムを直接射出成型または注入成型の方式で枠体上に直接形成し、該シリコンゴムで防水の効果を達する。MCU製品上に応用するときは、シリコンゴムを枠体の外部に直接射出成型し、該シリコンゴムを利用して防振の効果を達する。
【0004】
しかしながら、シリコンゴムの材料特性、即ち良好な流動性を備えていることにより、シリコンゴムを金型内部に注入すると、金型の型閉じ箇所に生じた間隙からシリコンゴムが流出するため、冷却成型後、該シリコンゴムにバリやフラッシュが形成される現象が生じやすく、組み立て上の公差が過大になり、防水効果に影響したり、精度が低下したりする。
このため、シリコンゴムの成型後、大量の人力を用いてバリやフラッシュを取り除く作業が必要であり、これにより製造コストが大幅に増加する。また、金型の型締め力を増加する必要があるために、金型内に多くの穴数を使用して射出を行うことができず、生産効率に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、シリコンゴム層に成型時フラッシュやバリが発生するのを効果的に改善し、生産歩留まりを高め、製造コストを効果的に下げることができる、枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の枠体外部にシリコンゴム層を形成する製造方法は、成型工程と、結合工程と、分離工程と、をこの順で行い、前記成型工程は、前記シリコンゴム層となる少なくとも1つの有効結合区域と、該有効結合区域の外周面に連結されて周囲に張り出す無効区域とを備え、かつ該有効結合区域に、前記枠体外部の形状と略等しい内部形状を有する収容空間が設けられたシリコンゴム基材を成型する工程であって、第1モールドベースと第2モールドベースとの間に形成した成型空間内にシリコンゴム材料を注入して前記シリコンゴム基材を成型した後、前記第2モールドベースを外し、前記結合工程では、前記枠体の外面と前記収容空間の内面のうちのいずれかにシリコンゴムコーティング層を形成してから、前記枠体を前記収容空間内に配置し、さらに前記枠体と前記シリコンゴム基材を同時に加熱して、前記シリコンゴムコーティング層と前記有効結合区域に対して加硫を行い、前記有効結合区域を前記枠体の外部に結合させ、前記分離工程では、前記第1モールドベースから取り出した前記シリコンゴム基材と前記枠体において、前記有効結合区域から前記無効区域を引き裂く又は切断することにより分離し、前記有効結合区域を前記枠体の外部に留まらせ、該枠体の外部に前記有効結合区域より成るシリコンゴム層を形成する。
【0008】
一実施形態において、前記有効結合区域と前記無効区域の間に第1連結セクションが形成され、前記有効結合区域を前記無効区域から分離したとき、該第1連結セクションと該有効結合区域の間に少なくとも1つの第1切断面が形成される。
【0009】
一実施形態において、前記第1連結セクションの厚みが前記有効結合区域の厚みより小さい。
【0010】
一実施形態において、前記第1切断面が該シリコンゴム層の外周面の周囲に設けられる。
【0011】
一実施形態において、前記シリコンゴム基材が、前記有効結合区域を支持する支持区域を含み、該支持区域が前記有効結合区域の前記収容空間とは逆側に位置し、かつ該支持区域と前記有効結合区域の間に第2連結セクションが形成され、前記支持区域を有効結合区域から分離したとき、該第2連結セクションと前記有効結合区域の間に少なくとも1つの第2切断面が形成される。
【0012】
一実施形態において、前記第2連結セクションの厚みが前記有効結合区域の厚みより小さい。
【0013】
一実施形態において、前記第2切断面が前記シリコンゴム層の前記収容空間とは逆側の面に環状に設けられる。
【0014】
(削除)
【0015】
(削除)
【0016】
(削除)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来の射出成型方法を利用して直接シリコンゴム層を枠体の外面に形成したときに比べてフラッシュやバリが発生しやすい現象を改善することができ、この結果、人手によって笛ラッシュやバリを取り除く手間を省くことができて、製造コストを大幅に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る外部にシリコンゴム層が形成された枠体の斜視図である。
【
図2】実施形態を示す枠体の外部にシリコンゴム層を形成する方法のフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るシリコンゴム基材、第1モールドベース及び枠体の断面図である。
【
図8】実施形態に係る枠体とシリコンゴム基材の分解斜視図である。
【
図9】実施形態に係る枠体とシリコンゴム基材の結合後の斜視図である。
【
図10】実施形態に係る枠体とシリコンゴム基材の有効結合区域と無効区域を分離した後の斜視図である。
【
図11】実施形態に係る枠体及びシリコンゴム基材の支持区域と該有効結合区域を分離した後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明
に係る外部にシリコンゴム層を備えた枠体は、
図1に示すように、枠体10と、枠体10の外部を被覆するシリコンゴム層20を含む。シリコンゴム層20の表面には少なくとも1つの切断面21が形成される。
【0020】
図2から
図11は、枠体の外部にシリコンゴム層を形成する方法を示す。この方法は、成型工程S1と、結合工程S2と、分離工程S3をこの順に行う。
【0021】
成型工程S1では、まず金型30を用意する。
金型30は、第1モールドベース31と、第2モールドベース32とで構成され、第1モールドベース31と第2モールドベース32の間に成型空間33が形成される。
続いて、成型空間33内に液状のシリコンゴム材料が注入され、シリコンゴム材料が成型空間33内で冷却成型されると、シリコンゴム基材40が形成される。
シリコンゴム基材40は、シリコンゴム層20となる少なくとも1つの有効結合区域41と、有効結合区域41の外周面に連結されて周囲に張り出す無効区域42と、有効結合区域41を支持する少なくとも1つの支持区域43を含む。有効結合区域41は、枠体10の外部の形状と略等しい内部形状を有する収容空間44を備え、支持区域43が有効結合区域41の収容空間44とは逆側に位置する。
また、有効結合区域41と無効区域42の間には第1連結セクション45が形成される。第1連結セクション45の厚みH1は有効結合区域41の厚みHより小さい。
有効結合区域41と支持区域43の間には第2連結セクション46が形成される。第2連結セクション46の厚みH2は有効結合区域41の厚みHより小さい。
【0022】
本実施形態において、シリコンゴム基材40に4つの有効結合区域41が設置され、無効区域42が有効結合区域41の間に連接され、かつ各有効結合区域41が内部にそれぞれ収容空間44を備え、各収容空間44の下方に支持区域43がそれぞれ設置される。
シリコンゴム基材40が成型空間33内部で冷却成型された後、第2モールドベース32を外し、シリコンゴム基材40を第1モールドベース31上に留置させる。本実施形態においては、シリコンゴム基材40を第1モールドベース31上に留置させているが、実際には、シリコンゴム基材40を第1モールドベース31から取り外してもよい。
【0023】
結合工程S2では、まず少なくとも1つの枠体10を用意する。本実施形態では、シリコンゴム基材40上に4つの有効結合区域41が設置されているため、同様に4つの枠体10を用意し、各枠体10が各有効結合区域41に対応する。
枠体10の外部または各収容空間44内にはあらかじめシリコンゴムコーティング層を形成しておき(従来技術であるため、図示しない)、その後、各枠体10を順に各収容空間44内に入れる。
さらに、第1モールドベース31、シリコンゴム基材40、枠体10を同時にオーブン(図示しない)内に入れて、該シリコンゴムコーティング層とシリコンゴム基材40に対して加硫を行い、この二次加硫を通じて有効結合区域41を枠体10の外部に効果的に結合し、粘着させることができる。
【0024】
分離工程S3では、まず有効結合区域41を無効区域42から分離する。各有効結合区域41と無効区域42の間に第1連結セクション45が形成されており、かつ第1連結セクション45の厚みH1が有効結合区域41の厚みHより小さいため、引き裂く、または切断する方法で有効結合区域41を無効区域42から分離することができる。
有効結合区域41を無効区域42から分離すると、有効結合区域41と第1連結セクション45の相隣する箇所に第1切断面47が形成される。
本実施形態において、第1連結セクション45が有効結合区域41の外周面の周囲に設けられているため、第1切断面47が有効結合区域41の表面を囲んで形成されるが、実用上は、第1連結セクション45は分断された状態で有効結合区域41と無効区域42の間を連接し、第1切断面47を分断状態で有効結合区域41の表面に形成してもよい。
【0025】
続いて、各支持区域43を各有効結合区域41から分離し、各支持区域43が有効結合区域41から分離されると、有効結合区域41と第2連結セクション46の相隣する箇所に第2切断面48が形成される。
本実施形態において、第2連結セクション46が有効結合区域41の収容空間とは逆側の面に環状に設けられているが、実用上、第2連結セクション46は分断された状態で有効結合区域41と支持区域43の間を連接し、第2切断面48を分断した状態で有効結合区域41の表面に形成してもよい。
これにより、有効結合区域41を枠体10の外部に留まらせ、枠体10外部にシリコンゴム層20を形成することができ、かつシリコンゴム層20上に少なくとも1つの第1切断面47または第2切断面48で形成される切断面21が形成される。
【0026】
注目すべきは、本発明の製造方法を利用して枠体10の外面に形成されるシリコンゴム層20は、従来の射出成型方法を利用して直接シリコンゴム層20を枠体10の外面に形成したときに比べてフラッシュやバリが発生しやすい現象を改善することができる点である。
また、シリコンゴム基材40に複数の有効結合区域41を設置することができ、かつ同時に複数の枠体10をそれぞれ複数の有効結合区域41中に配置することで、大量生産を可能とし、製品歩留まりを向上できるほか、大量の人力によりフラッシュやバリの除去を行う必要がなく、製造コストを効果的に削減することができる。
【0027】
このほか、枠体10は、例えば防水コネクタの枠体やMCUの枠体など、各種異なる製品に応用でき、かつ枠体10は金属またはプラスチックで製造でき、シリコンゴム層20は防水層または緩衝層として使用することができる。
また、シリコンゴム層20の形状は製品の種類に応じて設計することができ、金型30内で有効結合区域41の形状を変えれば各種異なる製品の構造に対応することができる。
【0028】
以上は、本発明の実施態様の説明にすぎず、これを以って本発明の権利範囲を限定することはできない。本発明の要旨を逸脱しない修飾や変化はいずれも本発明の権利範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
10 枠体
20 シリコンゴム層
21 切断面
30 金型
31 第1モールドベース
32 第2モールドベース
33 成型空間
40 シリコンゴム基材
41 有効結合区域
42 無効区域
43 支持区域
44 収容空間
45 第1連結セクション
46 第2連結セクション
47 第1切断面
48 第2切断面
S1 成型工程
S2 結合工程
S3 分離工程
H、H1、H2 厚み