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▶ スポルケミ ゼブラ,アクツィオバ スポレチェノストの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/275 20060101AFI20220427BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20220427BHJP
   C07C 17/38 20060101ALI20220427BHJP
   C07C 17/383 20060101ALI20220427BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20220427BHJP
   B01J 31/40 20060101ALI20220427BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C07C17/275
C07C19/01
C07C17/38
C07C17/383
B01J31/22 Z
B01J31/40 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021019918
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2017539495の分割
【原出願日】2015-10-15
(65)【公開番号】P2021088574
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】PV2014-707
(32)【優先日】2014-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】522091128
【氏名又は名称】スポルケミ ゼブラ,アクツィオバ スポレチェノスト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】カレル フィラス
(72)【発明者】
【氏名】パベル クビツェク
(72)【発明者】
【氏名】ズデニェク オンドルス
(72)【発明者】
【氏名】ペトル スラデク
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-501897(JP,A)
【文献】特表2012-526044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化ゾーンにおいてアルケン及び四塩化炭素を含む反応混合物を与えて反応混合物中でC3~6塩素化アルカンを製造する工程と、前記アルキル化ゾーンから反応混合物の一部を抽出する工程とを含む、C3~6塩素化アルカンの製造方法であって、
前記アルキル化ゾーン中に存在し、前記アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物が追加的に触媒を含み、前記アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、反応混合物を水性処理ゾーンにおいて希塩酸と接触させ、二相性混合物を形成し、触媒を含む有機相を二相性混合物から抽出する水性処理工程に供し、
前記二相性混合物から抽出された有機相がアルキル化ゾーンに再循環される、方法。
【請求項2】
前記アルケンがエテン、プロペン、及び/又は塩素化プロペンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C3~6アルカンが、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が金属系触媒であり、任意選択的に更に有機リガンドを含む金属系触媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機リガンドが、アルキルホスフェートである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル化ゾーンを、30℃~160℃の温度にて動作させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル化ゾーンを、80℃~120℃の温度にて動作させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性処理ゾーンに供給された反応混合物中に存在するC3~6塩素化アルカンの大部分を、前記水性処理ゾーン中で形成された混合物から任意選択的には蒸留によって抽出する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水性処理ゾーンに四塩化炭素及び/又はC3~6塩素化アルカンを供給する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
二相性混合物を前記水性処理ゾーン中で形成させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有機相を逐次相分離により二相性混合物から抽出する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
スチームを前記水性処理ゾーンに供給し、及び/またはスチームを前記水性処理ゾーン中に存在する水を沸騰させることによりインサイチューで形成させて、C3~6塩素化アルカン及び水蒸気を含むガス状混合物であって、該ガス状混合物からC3~6塩素化アルカンを蒸留することができるガス状混合物を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法であって、生成物C3~6塩素化アルカンが、
99.0%以上の1,1,1,3‐テトラクロロプロパン;
70ppm~400ppmの塩素化アルカン不純物、ここで前記不純物は1,1,1,3‐テトラクロロプロパン以外である;及び
120ppm~330ppmの塩素化アルケン化合物;
を含む、方法。
【請求項14】
前記生成物C3~6塩素化アルカンが、120ppm~320ppmの前記塩素化アルカン不純物及び前記塩素化アルケン化合物を含み、前記塩素化アルカン不純物及び前記塩素化アルケン化合物は、トリクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1-クロロブタン、1,1,1-トリクロロプロパン、テトラクロロエテン、1,1,3-トリクロロプロパン-1-エン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3-ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロエタン、1,1,1,5-テトラクロロペンタン、1,3,3,5-テトラクロロペンタン又はこれらの混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、ペンタクロロブタン、及びヘプタクロロヘキサン等の高純度のC3~6塩素化アルカン化合物の製造方法、並びに係る化合物を含む組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
ハロアルカンの広範な応用における利用が見出されている。例えば、ハロカーボンは、冷媒、ブロー剤、及びフォーム剤として幅広く用いられている。20世紀の後半を通して、クロロフルオロアルカンの使用は、その環境への影響、特にオゾン層の減少に関する懸念が持ち上がった1980年代まで飛躍的に増大した。
【0003】
その後、パーフルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素が、クロロフルオロアルカンの代わりに用いられてきたが、最近になって、この種の化合物の使用に関する環境問題が持ち上がり、その使用を減少させるための法律が欧州などで制定された。
【0004】
環境にやさしいハロカーボンの新たな種類が現れ、研究され、幾つかの場合において、多くの応用、特に自動車及び家庭内の分野における冷媒としての応用において採用された。係る化合物の例としては、1,1,1,2‐テトラフルオロエタン(R‐134a)、2‐クロロ‐3,3,3‐トリフルオロプロペン(HFO‐1233xf)、1,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(HFO‐1234ze)、3,3,3‐トリフルオロプロぺン(HFO‐1243zf)、及び2,3,3,3‐テトラフルオロプロペン(HFO‐1234yf)、1,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロペン(HFO‐1225ye)、1‐クロロ‐3,3,3‐トリフルオロプロペン(HFO‐1233zd)、3,3,4,4,4‐ペンタフルオロブテン(HFO‐1345zf)、1,1,1,4,4,4‐ヘキサフルオロブテン(HFO‐1336mzz)、3,3,4,4,5,5,5‐ヘプタフルオロペンテン(HFO1447fz)、2,4,4,4‐テトラフルオロブタン‐1‐エン(HFO‐1354mfy)及び1,1,1,4,4,5,5,5‐オクタフルオロペンテン(HFO‐1438mzz)が挙げられる。
【0005】
相対的に言って、これらの化合物が化学的に複雑でない一方、要求される純度まで工業規模でその合成をすることは困難である。係る化合物のために提案された多くの合成ルートでは、出発物質又は中間体として塩素化アルカン又はアルケンを使用することが多くなっている。歴史的に見て、係る化合物の製造に関して開発されたプロセスの多くは、塩素化アルカンのフッ素化オレフィンへの添加を含んでいた。しかし、このようなプロセスは、許容できる効率ではなく、多くの不純物の生成をもたらすことがわかっている。より最近になって開発されたプロセスは、典型的にはより直接的であり、フッ化水素及び遷移金属触媒、例えばクロム系触媒を用いた塩素化アルカン又はアルケン出発物質又は原料のフッ素化目的化合物への転化を含む。
【0006】
塩素化原料が多段工程プロセスから得られる場合、特に、係る工程が結合され、連続的に実施されて工業的に許容可能な生成物量に到達する場合、累積的な副反応が、各プロセス工程において許容できない不純物を生成することを防止することに対する必要が非常に重要であることが認められている。
【0007】
塩素化出発物質の純度は、望ましいフッ素化生成物の調製プロセス(特に連続プロセス)の成功と実行可能性に大きな影響を有する。ある種の不純物の存在は、副反応をもたらし、目的化合物の生成を最小化するであろう。また、これらの不純物の除去は、本発明の蒸留工程を用いてさえ、困難である。加えて、ある種の不純物の存在は、例えば触媒への毒作用により触媒寿命を損なう。
【0008】
加えて、上記で言及されたフッ素化化合物の合成において用いられる高純度の塩素化アルカン及び他の特殊化合物を調製する、効率的で信頼性があり、高度に選択的なプロセスに対する必要がある。精製された塩素化化合物を製造する幾つかのプロセスが、当分野で提案されている(例えば、US6187978号、US6313360号、US2008/091053号、US6552238号、US6720466号、JP2013-189402号、及びUS2014/0171698号)。
【0009】
これらの進歩にもかかわらず、上記で議論されたプロセスから得られた塩素化化合物の使用による問題は依然として生じる可能性がある。特に、不純物、特に、(例えば類似の沸点の結果として)目的の化合物から容易に分離できない、または下流プロセスで用いられる触媒の有効性又は耐用年数を低減する不純物の存在は、問題になる可能性がある。
【0010】
係る欠点を最小化するために、高純度の塩素化アルカン化合物、及び係る化合物を調製するための効率的で信頼性があり、高度に選択的なプロセスに対する需要が依然として存在する。
【0011】
したがって、本発明の1つの側面によれば、主要アルキル化ゾーンにおいてアルケン及び四塩化炭素を含む反応混合物を与えて反応混合物中でC3~6塩素化アルカンを製造することと、主要アルキル化ゾーンから反応混合物の一部を抽出することとを含む、C3~6塩素化アルカンの製造方法であって、
a)主要アルキル化ゾーンにおける反応混合物中のC3~6塩素化アルカンの濃度を、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、
・主要アルキル化ゾーンが連続運転である場合には95:5、または
・主要アルキル化ゾーンがバッチ式運転である場合には99:1を超えないような濃度にて維持し、及び/または
b)主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物が追加的にアルケンを含み、反応混合物を、反応混合物中に存在するアルケンの少なくとも約50質量%以上をそこから抽出し、抽出されたアルケンの少なくとも約50%を主要アルキル化ゾーンにおいて与えられる反応混合物に戻す脱アルケン化工程に供し、及び/または
c)主要アルキル化ゾーン中に存在し、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物が追加的に触媒を含み、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、反応混合物を水性処理ゾーンにおいて水性媒体と接触させ、二相性混合物を形成し、触媒を含む有機相を二相性混合物から抽出する水性処理工程に供する製造方法が提供される。
【0012】
本発明の方法は、主要アルキル化ゾーンにおいて部分的にまたは完全に実施する高度に選択的なテロメル化反応に中心を置く。この反応において、四塩化炭素をアルケンと反応させてC3~6塩素化アルカンを製造する。C3~6塩素化アルカンを製造するテロメル化反応が当分野で知られている一方、係るプロセスに伴う1つの課題は、望ましくない不純物の生成であり、高純度のC3~6塩素化アルカンを工業量で理想的には継続的に製造する方法に対する必要が、依然として存在する。
【0013】
予想外なことに、また、有利なことに、アルケン及び四塩化炭素からC3~6塩素化アルカンを調製する際に、上記に概説された工程a)~c)の1つ、幾つか、又は全てを実施することにより、効率(エネルギー消費の低減を含む)が改善され、並びに/または目的のC3~6塩素化アルカンからの除去が困難である場合があり、及び/もしくはC3~6塩素化アルカンを用いる場合がある下流反応において問題となる場合がある不純物の形成が最小化されることが見出された。更に、驚くべきことに、本発明の方法は、高い選択性と高い収率を含むこれらの利点を調和させる。
【0014】
アルケンと四塩化炭素とを接触させることにより、反応混合物を形成する。これは、主要アルキル化ゾーンにおいて、例えばアルケンと四塩化炭素の両方をそのゾーンに供給することにより起こることができる。加えて、または代わりに、アルケンを、主要アルキル化ゾーンのゾーン上流において四塩化炭素と接触させ、次いで主要アルキル化ゾーンに供給することができる。
【0015】
本発明の実施態様において、反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比を、ある数値的に規定された制限内に制御する。当業者は、係る実施態様において、プロセスの制御が、四塩化炭素出発物質とC3~6塩素化アルカン生成物とのモル比の観点で本開示において特徴づけられる一方、それを出発物質の生成物への転化の制御として考えることもできる(したがって、95:5の出発物質:生成物のモル比は、5%の転化と同等である)ことを理解するであろう。本発明者らは、上記で概説された出発物質の転化の制限により、望ましくない不純物の形成を最小化することを見出した。加えて、出発物質:生成物のモル比が所定の値を超えることについて言及する場合、これは、出発物質の生成物への転化のより高い程度、すなわち、生成物の割合が増加する一方、出発物質の割合が減少することを意味する。
【0016】
例えば、本発明の実施態様において、一次アルキル化ゾーンを主要アルキル化ゾーンの上流で用いることができる。一次アルキル化ゾーンに四塩化炭素及びアルケンを供給し、主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物を形成することにより、反応混合物を形成することができる。係る実施態様において、目的のC3~6塩素化アルカンへの四塩化炭素の部分的な転化は、そのアルカンが形成され、四塩化炭素と共に主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中に含まれるように、一次アルキル化ゾーン中で起こることができる。追加的な、または代替的な実施態様において、一次アルキル化ゾーンに供給されるアルケンの量を制限して、一次アルキル化ゾーンにおける目的のC3~6塩素化アルカンへの四塩化炭素の転化を遅らせることができ、その結果、そこから主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物は、四塩化炭素とC3~6塩素化アルカンとを含み、低い濃度か実質的にゼロのアルケンを含む。
【0017】
当業者に知られている任意の方法又は装置を用いて、例えば1つ若しくは複数の浸漬管、1つ若しくは複数のノズル、エジェクタ、静的混合装置、及び/又は1つ若しくは複数のスパージャー等の分散デバイスを介してゾーンに供給することにより、本発明のプロセスにおいて用いられるアルケン及び四塩化炭素をゾーン(例えば一次アルキル化ゾーン又は主要アルキル化ゾーン)中で接触させることができる。係る実施態様において、アルケン及び/又は四塩化炭素の供給は、連続的又は断続的であることができる。反応混合物が形成されるゾーンへの供給物として供給されるアルケンは、液体及び/又はガス状の形態であることができる。同様に、四塩化炭素は、液体及び/又はガス状の形態であることができる。
【0018】
本発明の実施態様において、主要アルキル化ゾーン(及び/又は用いることのできる任意の他のアルキル化ゾーン)中に存在する(四塩化炭素、C3~6塩素化アルカン生成物、及び任意選択的に触媒、及び/又は未反応のアルケンを含む)反応混合物は、均一、すなわち単相、例えば液相又は気相であることができる。このことは、反応混合物の成分の1種を、異なる相において系中へ他の成分に導入する場合でさえ達成することができる。例えば、実施態様において、ガス状アルケンを液体四塩化炭素と接触させると、アルケンが溶解し、したがって液相均一反応混合物を形成することができる。代わりに、反応混合物は不均一であることができる。
【0019】
本発明の1つの側面によれば、一次アルキル化ゾーンにおいてアルケン及び四塩化炭素を含む反応混合物を与えて反応混合物中でC3~6塩素化アルカンを製造することと、一次アルキル化ゾーンから反応混合物の一部を抽出することと、抽出された反応混合物の一部を主要反応ゾーンに供給することと、主要反応ゾーンから反応混合物の一部を抽出することとを含み、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、一次アルキル化ゾーンから抽出した反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比より高い、C3~6塩素化アルカンの製造方法が提供される。
【0020】
本発明の方法において用いられるアルケンは、C2~5アルケン、例えばエテン(すなわちC2アルケン)、プロペン、ブテン又はペンテンであることができる。アルケンをハロゲン化、例えば塩素化してよく、またはしなくてよく、及び/または置換してよく、またはしなくてよい。アルケンを塩素化する配列において、それは、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの塩素原子を含むことが好ましい。本発明の実施態様において、クロロアルケンは、一般式:CHab=R(式中、aは1又は2であり、bは0又は1であり、Xはハロゲン(例えば塩素)であり、Rは置換又は未置換のC1~4アルキルである。)を有する。
【0021】
本発明の方法において用いることができるアルケン物質の例としては、エテン、塩化ビニル、プロペン、2‐クロロプロペン、3‐クロロプロペン、2,3,3,3‐テトラクロロプロペン、1,1‐ジクロロエテン、トリクロロエテン、クロロフルオロエテン、1,2‐ジクロロエテン、1,1‐ジクロロ‐ジフルオロエテン、1‐クロロプロペン、1‐クロロブテン、及び/又は参照によりその内容が組み入れられるUS5902914号とEP131561号に開示された他のアルケンのいずれかが挙げられる。
【0022】
本発明の方法で用いられる四塩化炭素及びアルケン出発物質は高い純度を有することができ、例えばこれらの物質のいずれか又は両方の純度は、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、又は少なくとも約99.9%であることができる。
【0023】
本発明の実施態様において、四塩化炭素出発物質は、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の臭素化物又は臭素化有機化合物を含む。
【0024】
加えて、または代わりに、四塩化炭素出発物質の水分含有量は、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、又は約35ppm以下であることができる。
【0025】
本発明の方法において、好ましくはハロアルカン原料として四塩化炭素を用いる。しかし、本発明の代わりの実施態様において、四塩化炭素以外のハロアルカン原料を用いることができ、例えば1,1‐ジクロロメタン、1,1,1‐トリクロロエタン、ジクロロフルオロメタン、1,1,1‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、及び/又はその内容が本開示に組み入れられるUS5902914号に開示された他のクロロアルカンのいずれかを用いることができる。
【0026】
四塩化炭素のソースを、本発明の方法を実施する装置と同じ位置に配置することができる。実施態様において、四塩化炭素のソースは、例えばメンブレン電解プラントを含む塩素アルカリ設備に隣接することができる(それ由来の高純度の塩素を四塩化炭素の製造に用いることができる)。場所は、任意の関連する工程又はプロセスにおいて副生成物として製造される塩化水素ガスも効果的に用いるように、エピクロロヒドリン(例えばグリセロール原料から)、グリシドール、及び/又はエポキシ樹脂を製造するプラントも含むことができる。したがって、塩素アルカリ設備の最も経済的な使用のために、塩素反応及び塩化水素の捕集/再利用のためのプラントを含む集合設備が想定される。
【0027】
継続的に、または断続的に、主要アルキル化ゾーン(及び/または用いる場合には、一次アルキル化ゾーン)から反応混合物を抽出することができる。誤解を避けるために、本発明の方法において用いられるゾーンからの物質の連続的な抽出について本件中で言及される場合、これは純粋な文字どおりの意味で解釈するべきではない。当業者は、係る実施態様において、問題のゾーンが動作条件である間、その目的が定常状態反応(例えばアルキル化)を設定することである場合、その中の反応混合物が要求された定常状態に到達したら、物質を実質的に継続的に取り出すことができることを認識するであろう。
【0028】
本発明の利点の1つは、市販で供給されるアルケン中で典型的に観察されるある種の不純物(たとえばある種の有機不純物、例えばアルコール、エーテル、エステル、及びアルデヒド)の存在を本開示で概説されたプロセス工程を用いて調節し、及び/または除去することができることである。この利点は、アルケンが、バイオエタノール、エタノール又は粗オイルから誘導することができるエテンである配列において、特に有益である。
【0029】
本発明の方法の更なる利点は、i)塩素化アルカンの連続的な製造、及びii)アルケン出発物質の実質的に完全な使用が、排気系へのアルケンの漏れなく達成可能であることである。
【0030】
3~6塩素化アルカンは、クロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、又はクロロヘキサンであることができる。C3~6塩素化アルカンは、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又はそれより多くの塩素原子を含むことができる。本発明の方法にしたがって高純度で製造することができるC3~6塩素化アルカン化合物の例としては、テトラクロロプロパン(例えば1,1,1,3‐テトラクロロプロパン)、テトラクロロブタン、ヘキサクロロブタン、ヘプタクロロブタン、オクタクロロブタン、ペンタクロロプロパン、ペンタクロロブタン(例えば1,1,1,3,3‐ペンタクロロブタン)、及びヘプタクロロヘキサンが挙げられる。
【0031】
本発明の方法の利点の1つは、それが、高いアイソマー選択性で目的のC3~6塩素化アルカンの製造を許容する場合があることである。したがって、本発明の係る実施態様において、C3~6塩素化アルカン生成物を、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%のアイソマー選択率で製造する。
【0032】
本発明の方法において実施されるC3~6塩素化アルカンを製造するアルキル化反応を、触媒の使用により促進することができる。本開示で用いられる用語触媒は、触媒効果を有する単独の化合物又は物質、例えば固体金属又は金属塩の使用を包含するのみならず、追加的に触媒物質及び共触媒又は促進剤、たとえばリガンドを含むことができる触媒系も包含するように用いられる。
【0033】
四塩化炭素及びアルケンからのC3~6塩素化アルカンの形成においての利用が見出されている当業者に知られている任意の触媒を用いることができる。
【0034】
本発明の実施態様において、触媒は金属系である。本発明のアルキル化反応において触媒として機能することができる任意の金属を用いることができ、制限されないが、それは銅及び/又は鉄を含む。金属系触媒は、固体形態(例えば銅又は鉄の場合において、粒状形態(例えば粉末又はやすりくず)、ワイヤー及び/又はメッシュなど)で存在することができ、及び/または金属が任意の酸化状態であることができる塩(例えば第一銅塩、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅、シアン化第一銅、硫酸銅(I)、フェニル銅(I)、並びに/又は第一鉄及び/若しくは第二鉄塩、たとえば塩化第一鉄及び塩化第二鉄)として存在することができる。
【0035】
本発明の方法における触媒として金属塩を用いる場合、これを、1つ又は複数のアルキル化ゾーンに加え、及び/またはその中でインサイチューで形成させることができる。後者の場合において、固体金属を1つ又は複数のアルキル化ゾーンに加えることができ、その中の条件により塩が形成される場合がある。例えば、固体鉄を塩素化反応混合物に加えた場合、存在する塩素は元素鉄と結合してインサイチューで塩化第二鉄又は塩化第一鉄を形成することができる。金属塩がインサイチューで形成される場合、反応混合物中で元素金属触媒の所定の濃度(例えば1種又は複数種の金属塩、及び/若しくはリガンドの濃度と比較して過剰な元素金属)を維持することが望ましい場合があるとはいっても、したがって追加の元素金属触媒を、反応を連続的にまたは断続的に進行させるように加えることができる。
【0036】
上記で言及したように、本発明の実施態様において、触媒はリガンド、好ましくは金属系触媒と錯体を形成することができる有機リガンドも含むことができる。適したリガンドとしては、アミン、ニトリト、アミド、ホスフェート、及びホスファイトが挙げられる。本発明の実施態様において、用いられるリガンドは、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、及びトリフェニルホスフェート等のアルキルホスフェートである。
【0037】
追加の金属系触媒とリガンドは、当業者に知られており、当分野、例えばその内容が参照により組み入れられるUS6187978号に開示されている。
【0038】
触媒系の成分を、用いる場合には、1つ又は複数のアルキル化ゾーン(例えば主要アルキル化ゾーン、及び/又は用いる場合には、一次アルキル化ゾーン)に連続的にまたは断続的に供給することができる。加えて、または代わりに、それを1つ又は複数のアルキル化ゾーン(例えば主要アルキル化ゾーン、及び/又は用いる場合には、一次アルキル化ゾーン)に、アルキル化反応の開始前、及び/又はアルキル化反応の開始中に導入することができる。
【0039】
加えて、または代わりに、触媒(又は触媒の成分、例えばリガンド)を1つ又は複数のアルキル化ゾーン(例えば主要アルキル化ゾーン、又は用いる場合には、一次アルキル化ゾーン)に、反応混合物の他の成分と共に、例えば四塩化炭素及び/又はエテンの供給物中で供給することができる。
【0040】
触媒が金属系触媒とリガンド等の促進剤とを含む本発明の実施態様において、主要アルキル化ゾーン、及び/又は用いる場合には、一次アルキル化ゾーン中に存在する反応混合物中の促進剤:金属系触媒のモル比を、1:1を超える比、より好ましくは2:1、5:1、又は10:1を超える比にて維持する。
【0041】
固体金属触媒を反応混合物に加える場合、これを、用いる場合には一次アルキル化ゾーン、及び/又は主要アルキル化ゾーンに加えることができる。本発明の実施態様において、固体金属触媒を、用いる場合には一次アルキル化ゾーン、及び/又は主要アルキル化ゾーンに反応混合物の約0.1~4質量%、約0.5~3質量%、又は約1~2質量%の濃度を維持するような量で加える。
【0042】
加えて、または代わりに、金属系触媒を用いる場合、これを反応混合物の約0.1質量%、約0.15質量%又は約0.2質量%~約1.0質量%、約0.5質量%又は約0.3質量%の溶解金属含有量を確立するように加える。
【0043】
用いられる触媒系が金属系触媒及び促進剤を含む本発明の実施態様において、金属系触媒及び促進剤を反応混合物に同時に加えることができ、並びに/または装置の同じ部分、例えば(用いる場合には)一次アルキル化ゾーン及び又は主要アルキル化ゾーンにおいて加えることができる。
【0044】
代わりに、金属系触媒及び促進剤を装置の異なる位置において逐次的に又は別個に加えることができる。例えば、固体金属触媒を、追加の未使用の促進剤も加えることができる再循環ループからそのゾーンに供給される促進剤と共に一次アルキル化ゾーンに加えることができる。
【0045】
本発明の実施態様において、一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを、環境圧力又は環境圧力より低い圧力、すなわち約100kPa超、約200kPa超、約300kPa超、約400kPa超、約500kPa超、約600kPa超、約700kPa超、又は約800kPa超の圧力において動作させる。典型的には、一次及び/又は主要アルキル化ゾーン中の圧力は、約2000kPa、約1700kPa、約1500kPa、約1300kPa、約1200kPa、又は約1000kPa以下である。
【0046】
加えて、または代わりに、本発明の実施態様において、一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを高温、すなわち約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、又は約100℃以上の温度にて動作させる。典型的には、一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを約200℃、約180℃、約160℃、約140℃、約130℃、約120℃、又は約115℃以下の温度にて動作させる。
【0047】
本発明の方法の他の特徴と組み合わせたこれらの範囲内の温度と圧力の使用が、問題となる副生成物の形成を最小化しつつ、目的のC3~6塩素化アルカンの収率及び/又は選択性を最大にすることが、有利なことに見出されている。
【0048】
本発明の方法において、複数のアルキル化ゾーンを用いることができる。任意の数、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個又はそれより多くのアルキル化ゾーンを用いることができる。複数の一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを用いる実施態様において、任意の数(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個又はそれより多くの)一次及び/又は主要アルキル化ゾーンが存在することができる。
【0049】
誤解を避けるために、アルキル化ゾーン(一次及び/又は主要)の特性、例えば動作条件、動作の方法、特性等について言及する場合、本発明の実施態様が、複数の一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを含むものに関する限りにおいて、これらのゾーンの1つ、幾つか、又は全ては、問題になっている1つ又は複数の特性を示すことができる。例えば、簡略して表現するために、特定の動作温度を有する主要アルキル化ゾーンについて言及する場合、複数の主要アルキル化ゾーンを含む実施態様に関する限り、これは、その主要アルキル化ゾーンの1つ、幾つか、又は全てがその特定の温度において動作することの言及として受け取るべきである。
【0050】
複数の一次及び/又は主要アルキル化ゾーンを用いる配列において、そのアルキル化ゾーンは並列又は直列で動作することができる。
【0051】
一次及び主要アルキル化ゾーンを用いる配列において、アルケンと四塩化炭素とのアルキル化反応を制御して、一次アルキル化ゾーンにおいて完了のある程度を超えてそれが進行することを防止することができ、例えば、一次アルキル化ゾーンから抽出され、及び/または主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、必須ではないものの85:15、90:10、93:7、又は95:5を超えないようにすることができる。加えて、又は代わりに、一次アルキル化ゾーンから抽出され、及び/または主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、50:50、60:40、70:30、75:25、又は80:20を超えるように、反応を完了の比較的進んだ段階まで実施することを許容することができる。
【0052】
一次アルキル化ゾーンにおけるアルキル化反応の進行の制御は、四塩化炭素の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンへの全転化に有利でない反応条件の使用により達成することができる。加えて、または代わりに、一次アルキル化ゾーンにおけるアルキル化反応の進行の制御は、一次アルキル化ゾーン中の反応混合物の滞留時間の慎重な選択、例えば約20~300分、約40~250分、約60~約200分、又は約90~約180分により達成することができる。本発明の実施態様において、一次及び/又は主要アルキル化ゾーンに供給されるアルケンの量を制限することにより、モル比を制御することができる。例えば、一次及び/又は主要アルキル化ゾーンに供給される四塩化炭素:アルケンのモル比は、約50:50~約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、又は約90:10の範囲であることができる。
【0053】
一次及び主要アルキル化ゾーンを用いる実施態様において、C3~6塩素化アルカンのほとんどを一次アルキル化ゾーンで製造することができる。係る実施態様において、主要反応ゾーン中で製造されたC3~6アルカンの割合は、例えば反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が1から10、2から8、又は3から5だけ増加するように、十分に低いことができる。
【0054】
例えば、一次アルキル化ゾーンから抽出され、主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が90:10である場合、主要アルキル化ゾーンから抽出された混合物中に存在するC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が92:8、93:7、又は95:5であることができるように、モル比は主要アルキル化ゾーンにおいて2、3、又は5だけ増加することができる。
【0055】
しかし、本発明の方法の実行可能性は、一次反応ゾーンにおいて起こる目的のC3~6塩素化アルカンへの四塩化炭素の転化の大部分に依存しない。したがって、代替的な実施態様において、目的のC3~6塩素化アルカンへの四塩化炭素の転化の程度は、一次及び主要アルキル化ゾーン間で釣り合うことができ、または一次アルキル化ゾーンより主要アルキル化ゾーンで大きくてよい。
【0056】
したがって、反応混合物を一次アルキル化ゾーンから(連続的にまたは断続的に)取り出し、反応混合物中に存在する残っている四塩化炭素の一部が、目的のC3~6塩素化アルカンへ転化する主要アルキル化ゾーンに供給することができる。係る実施態様において、反応混合物中に存在する任意の未反応アルケン出発物質を、有利には完全に(または少なくともほぼ完全に)使用することができる。
【0057】
本発明の方法において、用いる場合には、一次及び主要アルキル化ゾーンを異なる条件下で動作させることができる。主要アルキル化ゾーンを1つ又は複数の一次アルキル化ゾーンより高い圧力、例えば、少なくとも約10kPa高い、約20kPa高い、約50kPa高い、約100kPa高い、約150kPa高い、約200kPa高い、約300kPa又は約500kPa高い圧力下で動作させることができる。
【0058】
本発明の実施態様において、アルケンを主要アルキル化ゾーンに供給しなくてよく、その1つ又は複数のゾーンに対するアルケンの唯一のソースは、主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中にあることができる。
【0059】
加えて、四塩化炭素とアルケン間のアルキル化反応が(任意選択的にリガンドを含む)金属系触媒により触媒される実施態様において、金属系触媒及び/又はリガンドを主要アルキル化ゾーンに供給しなくてよい。係る実施態様において、触媒の唯一のソースは、主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物であることができる。加えて、または代わりに、主要アルキル化ゾーンに触媒床を与えることができる。
【0060】
一次及び主要アルキル化ゾーンを用い、固体金属触媒が一次アルキル化ゾーン中の反応混合物中に存在する(例えばそこに直接的に加えることにより)本発明の方法において、主要アルキル化ゾーンに供給するために、一次アルキル化ゾーンから反応混合物を抽出する場合、一次アルキル化ゾーンからの反応混合物の抽出を、非常に少ない(もしあれば)固体金属触媒(例えば反応混合物のリットル当たり約5mg未満、約2mg未満、約1mg未満、約0.5mg未満、約0.2mg未満、約0.1mg未満の固体金属触媒)が反応混合物中に存在するように実施することができる。
【0061】
これは、当業者に知られている任意の方法及び/又は装置、例えばフィルターメッシュを備え、及び/または適切な直径を有し、適切な位置において1つ又は複数の一次アルキル化ゾーンへ延在するチューブの使用により達成することができる。
【0062】
用いる場合には、一次及び主要アルキル化ゾーンは、同じ又は異なる反応器内にあることができ、それは同じまたは異なる種類の反応器であることができる。更に、複数の一次アルキル化ゾーンを用いる実施態様において、これらは同じまたは異なる反応器内にあることができる。同様に、複数の主要アルキル化ゾーンを用いる実施態様において、これらは同じまたは異なる反応器内にあることができる。
【0063】
反応器の任意の種類、又は当業者に知られている反応器を本発明の方法において用いることができる。アルキル化ゾーンを与えるのに用いることができる反応器の具体例は、カラム反応器(例えばカラムガス‐液体反応器)、管型反応器、バブルカラム反応、プラグ/フロー反応器(例えば管型プラグ/フロー反応器)及び撹拌タンク反応器(例えば連続撹拌タンク反応器)である。
【0064】
一次アルキル化ゾーンが連続撹拌タンク反応器(CSTR)内に存在し、主要アルキル化ゾーンがプラグ/フロー反応器内に存在する配列が有利な結果を与えた。
【0065】
本発明の方法の1つの利点は、アルキル化ゾーン(例えば一次アルキル化ゾーン及び/又は主要アルキル化ゾーン)が連続(定常状態)プロセスで動作するかバッチ式プロセスで動作するかにかかわらず、望む結果が得られることである。用語「連続プロセス」及び「バッチ式プロセス」は、当業者に理解されるであろう。
【0066】
実施態様において、用いる場合には、一次アルキル化ゾーンを連続プロセス又はバッチ式プロセスで動作させる。加えて、または代わりに、用いる場合には、第二の1つ又は複数のアルキル化ゾーンを連続プロセス又はバッチ式プロセスで動作させる。
【0067】
本発明の方法において、主要アルキル化ゾーン中の反応混合物中のC3~6塩素化アルカンの濃度を、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のC3~6塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、i)95:5(主要アルキル化ゾーンが連続動作である場合)、またはii)99:1(主要アルキル化ゾーンがバッチ式動作である場合)を超えないような濃度にて維持する。
【0068】
主要アルキル化ゾーンが連続動作である本発明のある実施態様において、C3~6塩素化アルカンの含有量を、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のその化合物:四塩化炭素の比が、約94:6、約92:8、又は約90:10を超えないように制御することができる。
【0069】
主要アルキル化ゾーンがバッチ式動作である本発明の代替的な実施態様において、C3~6塩素化アルカンの含有量を、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のその化合物:四塩化炭素の比が、約97:3、約95:5、又は約90:10を超えないように制御することができる。
【0070】
主要アルキル化ゾーンが連続プロセスであるかバッチ式プロセスであるかにかかわらず、C3~6塩素化アルカンの含有量を、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のその化合物:四塩化炭素の比が約70:30、約80:20、約85:15、又は約90:10以上であるように制御することができる。
【0071】
驚くべきことに、四塩化炭素の目的のC3~6塩素化アルカンへの転化の程度を制御すること、及び反応が完了まで進行することを防止することにより、不純物の形成が、有利に低減されることが見出された。例えば、本発明の方法において用いられるアルケン原料がエテンである実施態様において、(そうでなければ形成する)ペンタン等の望ましくない副生成物の生成が最小化する。
【0072】
したがって、本発明の実施態様において、主要反応ゾーンから抽出された反応混合物は、一連の反応生成物、すなわちC3~6塩素化アルカン生成物より炭素数の大きい化合物を約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、又は約0.02%未満含む。
【0073】
3~6塩素化アルカンの含有量の制御を、アルキル化プロセスの進行を遅らせること、及び/又は追加の四塩化炭素を主要アルキル化ゾーンに導入することにより達成することができる。
【0074】
3~6塩素化アルカンの含有量をアルキル化プロセスを遅らせることにより制御する実施態様において、これは、四塩化炭素の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンへの全転化に有利でない反応条件の使用により達成することができる。例えばこれは、反応混合物又は少なくともその一部を、アルキル化反応の進行を減速するか、または停止させる条件に供することにより達成することができる。係る実施態様において、1つ又は複数のアルキル化ゾーン(例えば、用いる場合には、1つ又は複数の主要アルキル化ゾーン)において反応混合物が受ける圧力を十分に、例えば少なくとも約500kPa、少なくとも約700kPa、少なくとも約1000kPa下げることができる。
【0075】
加えて、または代わりに、反応混合物が受ける圧力を、環境圧力又は環境圧力より低い圧力まで下げることができる。圧力の低減は、1つ又はそれより多くのアルキル化ゾーン(例えば、用いる場合には、主要アルキル化ゾーンの1つ、幾つか、又は全て)中で起こることができる。加えて、または代わりに、圧力の低減は、1つ又は複数のアルキル化ゾーンからの反応混合物の抽出に続いて起こることができる。
【0076】
加えて、または代わりに、C3~6塩素化アルカンの含有量をアルキル化プロセスを遅らせることにより制御する実施態様において、これは、反応混合物中に存在するアルケン濃度を制限することにより達成することができる。
【0077】
本発明の実施態様において、1つ又は複数のアルキル化ゾーン中のアルキル化反応の進行の制御は、1つ又は複数のアルキル化ゾーン中の反応混合物の滞留時間の慎重な選択により達成することができる。例えば、1つ又はそれより多くの主要アルキル化ゾーンを用いる実施態様において、1つ又は複数のそのゾーン中の反応混合物の滞留時間は、例えば約1~120分、約5~100分、約15~約60分、又は約20~約40分であることができる。
【0078】
3~6塩素化アルカンの含有量をアルキル化プロセスを遅らせることにより制御する実施態様において、このことは、加えて、または代わりに、主要アルキル化ゾーンの動作温度を下げることにより達成することができる(例えば約5℃以上、約10℃以上、約20℃以上、約50℃以上、又は約100℃以上)。加えて、または代わりに、主要転化ゾーンの動作温度を約20℃、約10℃、又は約0℃に下げることができる。
【0079】
加えて、または代わりに、アルキル化プロセスは、反応混合物中に存在する触媒の量を制限すること、又は主要アルキル化ゾーンから触媒床(存在する場合には)を除去することにより遅らせることができる。
【0080】
主要アルキル化ゾーンの撹拌(agitation)又は撹拌(stirring)の速度を下げてアルキル化プロセスを遅らせることもできる。
【0081】
上記で言及したように、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物は、四塩化炭素とC3~6塩素化アルカンとを含む。しかし、本発明の実施態様において、条件及び用いられる装置に依存して、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物は、未反応のアルケン出発物質、触媒、及び/又は不純物(例えば塩素化アルカン不純物、塩素化アルケン不純物、及び/又は酸素化有機化合物)を追加的に含むことができる。
【0082】
3~6塩素化アルカンと共に未反応のアルケンが存在することが、特に、C3~6塩素化アルカンを用いる下流プロセスに関して問題となる可能性があるならば、本発明の実施態様において、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、反応混合物中に存在するアルケンの少なくとも約50質量%以上をそこから抽出し、抽出されたアルケンの少なくとも約50%を主要アルキル化ゾーン中に与えられる反応混合物に戻す脱アルケン化工程に供する。
【0083】
係る実施態様は、本発明の方法において用いられるアルケン供給物の全使用とまではいかなくとも、それが実質的に可能であるため特に有利である。
【0084】
本発明の実施態様において、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中に存在するアルケンの少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、又は少なくとも約99%を脱アルケン化工程中に除去する。
【0085】
反応混合物からの未反応のアルケンの除去は、当業者に知られている任意の方法を用いて達成することができる。本発明の実施態様において、反応混合物からのアルケンの抽出は、得られたアルケンの豊富なストリームをもたらす蒸留方法、例えばエテン(-103.7℃)対四塩化炭素(76.6℃)及び1,1,1,3‐テトラクロロプロパン(159℃)のように、アルケンの沸点が、反応混合物中に存在する他の化合物の沸点より十分に低い場合の実施態様において都合よく配置することができるフラッシュ蒸留を用いて達成することができる。
【0086】
反応混合物の脱アルケン化は、選択的であることができる。言い換えると、アルケンは、反応混合物からの他の化合物の十分な除去なしに選択的に抽出される。係る実施態様において、反応混合物から抽出されたアルケンは、約10%未満、約5%未満、約2%未満、又は約1%未満のアルケン出発物質以外の化合物を含むことができる。
【0087】
反応混合物の蒸留は、当分野で知られている任意の方法又は任意の装置により達成することができる。例えば、従来の蒸留装置(例えば蒸留塔)を用いることができる。加えて、または代わりに、本発明の実施態様において、反応混合物が抽出される主要アルキル化ゾーン中の圧力が環境圧力より低い場合、反応混合物からのアルケンの蒸発は、主要アルキル化ゾーンからの抽出の後に環境圧より低い圧力において反応混合物を維持すること、及び反応混合物からのアルケンの蒸発が起こる蒸発ゾーンにそれを供給することにより達成することができる。
【0088】
本発明の実施態様において、蒸発ゾーン中の反応混合物からのアルケンの蒸発は、脱圧、例えば、反応混合物が、例えば少なくとも約500kPa、少なくとも約700kPa、少なくとも約1000kPa低い圧力、及び/又は環境圧力若しくは環境圧力より低い圧力に十分に下げることにより達成することができる。好都合なことに、脱圧を部分的にまたは全体的に用いて目的のC3~6塩素化アルカンへの四塩化炭素の転化を減速させ、または停止させ、更に反応混合物からアルケンを分離する実施態様において、これらの目的を1つの脱圧工程において同時に達成することができる。
【0089】
蒸発ゾーンは、反応混合物中に存在するアルケンの蒸発を達成することができる任意の装置、例えばフラッシュドラム等のフラッシュ蒸発装置であることができる。
【0090】
反応混合物から、例えばフラッシュ蒸発により蒸留されたアルケンを、好ましくは液体又はガス状形態で蒸留装置から抽出する。
【0091】
本発明の方法において、蒸発ゾーンから抽出されたアルケンの少なくとも約50質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、少なくとも約90質量%、少なくとも約95質量%、少なくとも約97質量%、又は少なくとも約99質量%を一次及び/又は主要アルキル化ゾーンに戻す(すなわち再循環させる)。
【0092】
誤解を避けるために、本発明の実施態様において、蒸留されたアルケンは、ガス状形態である場合には、主要アルキル化ゾーンに与えられる反応混合物に供給する前に、液体に戻してよく、または戻さなくてよい。例えば、ガス状アルケンの液体アルケンへの転化は、コンデンサを通過させること、及び/又は液体(好ましくは冷却した)四塩化炭素のストリーム中に捕集することにより達成することができ、それを、次いで1つ又は複数のアルキル化ゾーンに供給することができる。ガス状アルケンを、当業者に知られている任意の方法又は装置、例えば吸収カラムを用いて四塩化炭素の液体ストリーム中に捕集することができる。この配列は、アルキル化プロセスにおいて用いられる化合物の最大限の工業的利用を目的とする場合に有利である。
【0093】
上記で言及したように、本発明の実施態様において、触媒、例えば固体金属及び/又は金属塩触媒並びにリガンド等の促進剤を含む触媒系を、1つ又は複数のアルキル化ゾーン中に存在する反応混合物中で用いることができる。係る実施態様において、1つ又は複数のアルキル化ゾーンから抽出された反応混合物は、触媒を含むことができる。触媒の存在が、C3~6塩素化アルカンを用いる下流反応において問題となる可能性があるならば、反応混合物から触媒を除去することが好ましい場合がある。
【0094】
加えて、高コストの触媒及び/又は促進剤、たとえば上記で言及されたアルキルホスフェート及びアルキルホスファイトリガンドを用いる触媒系に関して、再利用可能な触媒系、及び/又はその成分の回収は、用いなければならない未使用の触媒の量を最小化し、ひいては運転コストを低減するため好ましい。
【0095】
反応混合物から本発明の方法において用いられる種類の触媒を除去する試みが以前に取り組まれていた一方、それを行うのに用いられる方法及び条件(典型的には過酷な条件を用いる蒸留を含む)は、触媒系を損傷させ、その触媒性能を低減する可能性がある。これは、ある有機リガンド、たとえばアルキルホスフェート及びアルキルホスファイトを促進剤として含む系の場合のように、特に触媒系が温度感受性である場合である。
【0096】
したがって、本発明の実施態様において、主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、反応混合物を水性処理ゾーン中で水性媒体と接触させ、二相性混合物を形成し、触媒を含む有機相を二相性混合物から抽出する水性処理工程に供する。
【0097】
反応混合物を水性処理工程に供する本発明の実施態様において、反応混合物は、未反応の四塩化炭素とC3~6塩素化アルカン生成物とを含むことができる。加えて、反応混合物は、触媒(例えば金属系触媒及び触媒リガンドの錯体、又は遊離触媒リガンド)及び/又は未反応のアルケン出発物質を含むことができる。
【0098】
水性処理工程の使用により、従来技術において記載されている損傷条件(例えば高温、高い触媒濃度、及び/又は無水形態での鉄化合物の存在)を回避することができ、それは回収された触媒及び/又はその成分(例えばリガンド又は促進剤)を、触媒性能の重大な損失なく再利用(例えばそれを1つ又は複数のアルキル化ゾーンに与えられる反応混合物に戻すことができる)できることを意味する。本発明の実施態様において、二相性の水性処理された混合物のスチームストリッピングは、100℃を超えるボイラ温度を避けることができ、環境圧力を用いることができるため好ましい。
【0099】
水性処理工程の更なる利点は、それが、反応混合物からの不純物、例えば存在する場合には酸素化有機生成物の除去をもたらすことである。より具体的には、プロセスが前駆体としてアルケン、例えばエテン、プロペン、1‐ブテン、2‐ブテン、1‐ヘキセン、3‐ヘキセン、1‐フェニル‐3‐ヘキセン、ブタジエン、ハロゲン化ビニルなどを含む場合、酸素化有機化合物(例えばアルカノール、アルカノイル、及び係る酸素化化合物を塩素化した誘導体)を形成する潜在的な可能性がある。有利には、反応混合物中の係る物質の濃度を、水性処理工程により、消滅しないとしても、許容可能な濃度まで十分に下げる。
【0100】
水性処理工程を実施する本発明の実施態様において、水性処理ゾーン中に与えられる反応混合物は、目的のC3~6塩素化アルカン(例えば約50%以上の量で)、触媒、及び任意選択的に四塩化炭素及び/又は不純物、例えば有機酸素化化合物、(目的のC3~6塩素化アルカン以外の)塩素化アルカン化合物、及び又は塩素化アルケン化合物を含むことができる。
【0101】
この触媒回収プロセスは、反応混合物を水性処理ゾーン中で水性媒体と接触させる水性処理工程に、反応混合物を供することを含む。実施態様において、水性媒体は水(液体及び/又は蒸気として)である。加えて、水性媒体は、他の化合物、たとえば酸を追加的に含むことができる。無機酸、たとえば塩酸、硫酸、及び/又はりん酸を用いることができる。
【0102】
水性処理ゾーンに供給される水性媒体が、部分的にまたは全体的に液体形態である場合、液体水性媒体が反応混合物と接触すると二相性混合物が形成する。
【0103】
代わりに、水性媒体がガス状形態、例えばスチームである場合、二相性混合物はすぐには形成しない場合があり、一旦ガス状水性媒体が凝縮する。水性処理工程で用いられる装置を、二相性混合物を形成する水性媒体の凝縮が、水性処理ゾーン内及び/または水性処理ゾーンから離れて起こるように構成することができる。
【0104】
本発明の実施態様において、C3~6塩素化アルカン生成物を、水性処理ゾーン中で形成された混合物から抽出することができる。水性処理ゾーンに供給される反応混合物中に存在するC3~6塩素化アルカンの大部分(例えば少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%)を、当業者に知られている任意の方法又は装置を用いて水性処理ゾーン中で形成された混合物から抽出することができる。
【0105】
本発明の実施態様において、蒸留を用いて、水性処理ゾーン中で形成された混合物からC3~6塩素化アルカン生成物を抽出する。蒸留は、得られたC3~6塩素化アルカン生成物の豊富なストリームをもたらすことができる。
【0106】
本明細書全体に亘って用いられる用語特定の化合物(又は対応する言葉)「の豊富なストリーム」は、ストリームが少なくとも約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%の特定の化合物を含むことを意味するように用いられる。更に、用語「ストリーム」は、狭く解釈すべきではなく、任意の方法を介して混合物から抽出された(フラクションを含む)組成物を包含する。
【0107】
例えば、C3~6アルカンをそのアルカンと水蒸気とを含むガス状混合物から蒸留することができる。C3~6塩素化アルカンを、C3~6塩素化アルカンの豊富なストリームにおいて蒸留することができる。水性媒体が、部分的にまたは全体的に液体形態である本発明の実施態様において、C3~6塩素化アルカンの蒸留を、存在する混合物を沸騰させてC3~6塩素化アルカンを蒸発させ、ガス状C3~6塩素化アルカン/水蒸気混合物(これからC3~6塩素化アルカンを例えばスチーム蒸留法を用いて蒸留することができる)を製造することにより達成することができる。
【0108】
加えて、または代わりに、水性媒体を部分的にまたは全体的にガス状形態で与える場合、これは、C3~6塩素化アルカンを蒸発させてアルカンと水蒸気とを含むガス状混合物を形成させ、それを、次いで任意選択的に蒸留、例えばスチーム蒸留に供し、C3~6塩素化アルカンを除去することができる。C3~6塩素化アルカンを、その化合物の豊富なストリームで得ることができる。
【0109】
3~6塩素化アルカンをC3~6塩素化アルカン及び水蒸気のガス状混合物から蒸留する実施態様において、ガス状塩素化アルカン/水蒸気混合物が水性処理ゾーンから蒸留装置に直接的に通過することができるように、蒸留装置を水性処理ゾーンに結合することができる。代わりに、蒸留装置は、ガス状混合物を最初に水性処理ゾーンから抽出し、次いで蒸留装置に輸送するように、水性処理ゾーンから離れて位置することができる。いずれの配列でも、C3~6塩素化アルカンを、その化合物の豊富なストリームで得ることができる。
【0110】
代替的な実施態様において、水性媒体及び反応混合物が液体形態である場合、当業者に知られている従来の蒸留方法を用いて、C3~6塩素化アルカンをその液体混合物から抽出することができる。C3~6塩素化アルカンを、その化合物の豊富なストリームで得ることができる。
【0111】
二相性混合物は、水性処理ゾーン内又はそこから離れて形成することができる。二相性混合物は、(水性媒体を水性処理ゾーンに加えることの結果として)水相、及び(C3~6塩素化アルカン、任意選択的に未反応の四塩化炭素、及び重要なことには触媒を含む)有機相を含む。
【0112】
有機相の体積を最大化し、したがって二相性混合物からのその相の抽出を容易にするために、当業者に知られている方法及び装置を用いて、ハロアルカン抽出剤(例えば四塩化炭素、及び/又は目的のC3~6塩素化アルカン)を二相性混合物に(例えば水性処理ゾーンに連続的にまたは断続的に供給することにより)加えることができる。
【0113】
当業者に知られている任意の方法、例えばデカンテーションを用いて、有機相を二相性残渣から抽出することができる。例えば、有機相の抽出は、それを含む水性処理ゾーン又は容器からの逐次的な相抽出により実施することができる。代わりに、二相性混合物を水性処理ゾーンから抽出し、水性処理ゾーンから離れた相分離工程に供することができる。
【0114】
本発明の実施態様において、二相性混合物、及び/又は抽出された有機相をろ過することができる。実施態様において、これは、任意選択的に鉄のソースとして全体的にまたは部分的に用いることができる得られたフィルターケーキをもたらす。
【0115】
水性処理工程中に形成された混合物からのC3~6塩素化アルカン生成物の抽出は、そこからの有機相の抽出の前、及び/又はその混合物から有機相を抽出した後に実施することができる。水性処理中に形成された混合物からC3~6塩素化アルカン生成物を抽出する幾つかの例示的な実施態様は、上記で概説される。
【0116】
更なる例として、二相性混合物を加熱してガス状混合物を形成することができ、そこからC3~6塩素化アルカン生成物を例えば蒸留を介して(任意選択的にC3~6塩素化アルカンの豊富なストリームとして)抽出することができる。次いで、C3~6塩素化アルカンの減少した割合を有する有機相を、二相性混合物から抽出することができる。
【0117】
加えて、または代わりに、有機相を、上記で議論されたように二相性混合物から抽出することができる。C3~6塩素化アルカンを、次いで例えば蒸留を介してその相から(任意選択的にC3~6塩素化アルカンの豊富なストリームとして)抽出することができる。係る実施態様において、有機相が触媒を含む場合、C3~6塩素化アルカンを抽出するように選択された蒸留条件は、触媒系の失活を最小限にするように温和である(例えば約100℃以下、約95℃以下、約90℃以下、約85℃以下、若しくは約80℃以下の温度、及び/又は約1~10kPaの圧力)。加えて、または代わりに、より低い圧力を用いることができる。
【0118】
抽出された有機相は、四塩化炭素、及び/又はC3~6塩素化アルカン生成物を含むことができる。加えて、反応混合物は、触媒(例えば金属系触媒及び触媒リガンドの錯体、又はリガンドを含まない錯体)及び/又は未反応のアルケン出発物質を含むことができる。C3~6塩素化アルカンの豊富なストリームを水性処理工程中に形成された混合物から(直接的に、またはそこからの有機相の抽出の後に)抽出した場合、その相のC3~6塩素化アルカンの含有量は、反応混合物中より低いであろう。
【0119】
本発明の配列において、特に有機相が四塩化炭素、及び/又は触媒を含むものは、有機相を1つ又は複数のアルキル化ゾーンに、例えば液体形態で戻すことができる。係る配列において、アルケン出発物質(例えばガス状形態において)を、1つ又は複数のアルキル化ゾーンに供給される有機相ストリーム中で捕集することができる。
【0120】
本発明の実施態様において、任意選択的に特定の生成物の豊富な1種又は複数種のストリームを得るために、上記で議論されたものに加えて1つ又はそれより多くの蒸留工程をプロセス中の任意の点で実施することができる。例えば、水性処理工程の前に、実施する場合には、反応混合物を蒸留工程に供することができる。反応混合物が温度感受性触媒系、例えば促進剤として有機リガンドを含むものを含む実施態様において、蒸留工程を、触媒の失活を避けるような条件下で典型的には実施する(例えば約100℃以下、約95℃以下、約90℃以下、約85℃以下、若しくは約80℃以下の温度、及び/又は約1~10kPaの圧力)。加えて、または代わりに、より低い圧力を用いることができる。
【0121】
加えて、温度感受性触媒系の不活性化は、反応混合物を過蒸留しないことにより避けることができることが見出された。したがって、触媒系を含む反応混合物を蒸留する本発明の実施態様において、蒸留装置中のプロセス液体の体積が減少して、そのプロセス液体中の触媒系の濃度が、主要アルキル化ゾーンに与えられた反応混合物中に存在するその触媒系の濃度より約2X、約5X、又は約10X高くなることは、許容されない場合がある。
【0122】
水性処理工程(実施する場合には)の前に実施される蒸留工程は、当業者に知られている技術及び装置、例えば減圧蒸留塔と連通した蒸留ボイラ(バッチ、又は連続)を用いて実施することができる。係る実施態様において、蒸留に供される反応混合物は、約50質量%超の目的のC3~6塩素化アルカン、触媒、及び任意選択的に四塩化炭素、及び/又は不純物、例えば有機酸素化化合物、(目的のC3~6塩素化アルカン以外の)塩素化アルカン化合物、及び又は塩素化アルケン化合物を含むことができる。
【0123】
蒸留工程は、典型的には、反応混合物からの1つ又は複数の塩素化アルカン蒸留物ストリーム、例えば未反応の四塩化炭素、目的のC3~6アルカン(の任意選択的には豊富な)、及び/又は塩素化有機不純物(すなわち目的のC3~6アルカン及び四塩化炭素以外の塩素化有機化合物)の1つ又は複数のストリームの除去をもたらす。四塩化炭素を1つ又は複数のアルキル化ゾーンに戻すことができる。係る工程の残渣(典型的にはC3~6塩素化アルカン、四塩化炭素、及び/又は触媒の量を含む)を更なる処理工程、例えば水性処理工程、及び/又は1つ又は複数の更なる蒸留工程に供することができる。
【0124】
反応混合物を水性処理工程(実施する場合には)の前に蒸留工程に供する本発明の実施態様において、少なくとも約30質量%、少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、又は少なくとも約70質量%から最大で約95質量%、最大で約90質量%、最大で約85質量%、又は最大で約80質量%の目的のC3~6塩素化アルカンをその蒸留工程において反応混合物から除去する。
【0125】
1つ又はそれより多くの蒸留工程を、加えて、または代わりに、水性処理工程(実施する場合には)の後に実施することができる。例えば、水性処理ゾーンに供給される反応混合物から抽出されたC3~6塩素化アルカンは、主成分のC3~6塩素化アルカン、ハロアルカン抽出剤、及び塩素化有機不純物(すなわち目的のC3~6アルカン及び四塩化炭素以外の塩素化有機化合物)を含む混合物の形態で存在することができる。この混合物を1つ又はそれより多くの蒸留工程に供し、塩素化有機不純物を除去してC3~6塩素化アルカンの豊富なストリームを得ることができ、及び/またはハロアルカン抽出剤を除去することができる。また、当業者に知られている装置又は条件を、係る蒸留工程、例えば減圧蒸留塔と連通している蒸留ボイラ(バッチ又は連続)中で用いることができる。
【0126】
係る蒸留工程において、水性処理ゾーンに与えられた反応混合物から抽出されたC3~6塩素化アルカンを蒸留に供して、クロロアルカン不純物から目的のC3~6塩素化アルカンを分離することができる。例えば、目的のC3~6塩素化アルカンが1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである実施態様において、水性処理ゾーンにおいて与えられた反応混合物から抽出されたC3~6塩素化アルカンを精製する蒸留工程が、クロロペンタン/クロロペンテン不純物の除去に特に有効であることが見出された。
【0127】
本発明の方法中の任意の段階において実施される蒸留工程において、目的のC3~6塩素化アルカンを含む混合物から分離された塩素化有機不純物を回収し、四塩化炭素の製造において再利用することができる。これは、塩素化有機不純物を高温塩素化分解プロセスに供することにより達成することができる。係る方法において、存在する任意の塩素化有機化合物を再処理して、高収率で純粋なテトラクロロメタンに主に戻す。したがって、本発明の方法における塩素化分解工程の使用は、廃棄生成物を最小化しつつ、目的のクロロアルカンの全体の合成収率と純度を最大化するのに有用である。
【0128】
目的のC3~6塩素化アルカンのアイデンティティにかかわらず、本発明の実施態様において、「重い」残渣を蒸留ボイラ中(水性処理工程に続いて用いる場合)で形成させることができる。「重い」残渣を典型的には系から抽出し、処理する(例えば好ましくはクロロメタンの生成をもたらす高温塩素化分解プロセス)。
【0129】
本発明の方法は、当業者がよく知っている単純でわかりやすい技術及び装置を用いて高純度の塩素化アルカンの製造を可能にするため特に有利である。
【0130】
本開示に与えられた開示から理解することができるように、本発明の方法は、完全に連続的な型で、任意選択的に他のプロセスと組み合わせて統合プロセスにおいて動作することができる。本発明のプロセス工程は、要求される目的の塩素化化合物まで更に処理される高純度の中間体に転化される出発化合物を用いることができる。この化合物は、下流のプロセス、例えばフッ化水素処理転化の範囲で原料として用いるのに必要な純度を有する。
【0131】
本発明の方法は、生成物の純度の水準を制御して各工程において化合物の高い純度水準を実現することを可能にする。方法は、有利には、特に困難な高収率、高選択性、及び高効率を、特に連続プロセスにおいて調和させる。本発明の方法は、高純度のクロロアルカン化合物を工業スケールで経済的に製造することを可能にし、その化合物は非常に低濃度の不純物、たとえばハロアルカン、又はハロアルケン(特に目的の化合物のアイソマー及び/または系列反応の生成物等のより高い分子量を有するもの)、及び/又は酸素化、及び/若しくは臭素化誘導体、並びに水、及び金属種を有する。
【0132】
本発明の実施態様において、本発明の方法は、高純度の塩素化アルカン組成物の製造に用いることができ、それは
約99.0%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、若しくは約99.9%以上の塩素化アルカン、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルカン不純物(すなわち、目的のC3~6塩素化アルカン以外の塩素化アルカン化合物)、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルケン化合物、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の酸素化有機化合物、
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の金属系触媒、
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の触媒促進剤、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の臭素化物若しくは臭素化有機化合物、及び/又は
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の水を含む。
【0133】
目的のC3~6塩素化アルカンが1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである実施態様において、以下は、本発明の方法において最小化され、生成されず、及び/または除去される特定の不純物の例である:トリクロロメタン、1,2‐ジクロロエタン、1‐クロロブタン、1,1,1‐トリクロロプロパン、テトラクロロエタン、1,1,3‐トリクロロプロパン‐1‐エン、1,1,1,3,3‐ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,3‐ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロエタン、1,1,1,5‐テトラクロロペンタン、1,3,3,5‐テトラクロロペンタン、トリブチルホスフェート、塩素化アルカノール及び塩素化アルカノイル化合物。
【0134】
したがって、本発明の実施態様において、生成物1,1,1,3‐テトラクロロプロパンは、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、又は約10ppm以下の1種又はそれより多くのその化合物を含む。
【0135】
誤解を避けるために、組成物又は物質の純度をパーセント又はppmで表す場合、別段の記載がない限りこれは質量パーセント/ppm(質量)である。
【0136】
上記で言及したように、従来技術は、可能性のある不純物の全体の範囲を制御する、そのような高い純度の塩素化アルカンを製造する方法を開示し、または教示することをしない。したがって、本発明の更なる側面によれば、上記の高純度の塩素化アルカン組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1】アルキル化工程
【0138】
【表1】
【0139】
図2】第一の蒸留工程
【0140】
【表2】
【0141】
図3】水性触媒回収工程
【0142】
【表3】
【0143】
図4】第二の蒸留工程
【0144】
【表4】
【0145】

本発明は、以下の例において更に説明される。
【0146】
例1‐水性処理を用いて回収された触媒の触媒性能の実証
エテン及び四塩化炭素をi)従来の蒸留方法を用いて反応混合物から回収された触媒、又はii)本開示に記載の本発明の触媒の水性処理工程を用いて反応混合物から回収された触媒の存在下で反応させて1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを製造した。反応混合物は、追加的に1,1,1,3‐テトラクロロプロパン(再循環ストリーム中に存在する)及びテトラクロロペンタン(四塩化炭素及びエテン間のテロマー化反応の存在下で副生成物として一般に形成される塩素化アルカン不純物)を含んでいた。
【0147】
これらの試験例は、触媒を回収する水性処理工程を用いた際の触媒の性能が、従来の蒸留方法を用いて回収された触媒と比較して十分に高いことを示す。
【0148】
簡略化のために、以下の用語を以下に記載の例において用いる:
TeCM:テトラクロロメタン、
TeCPa:1,1,1,3‐テトラクロロプロパン、
TeCPna:テトラクロロペンタン、
Bu3PO4:トリブチルホスフェート。
【0149】
Gasクロマトグラフィーを用いて反応の進行を監視した。
【0150】
バッチ式配列
スターラー、温度測定のためのサーモウェル、及び(バルブを有する)サンプリング管を備えた、405mlの体積のステンレス鋼オートクレーブを以下に記載の反応混合物で満たして閉めた。磁気(加熱)スターラー上に置かれたオイルバスにより熱を与えた。エテンを天びん上に置かれた10lシリンダーから銅キャピラリーチューブにより供給した。オートクレーブ中のガス雰囲気をエテンフラッシングにより置換した。エテンにより5barに加圧した後、オートクレーブを105℃まで加熱し、次いでオートクレーブにエテン供給を開いた。エテン供給を始めの10分間(反応温度を120℃に維持するように)手動で制御し、その後9barの一定圧力にて維持した。反応は既定の時間反応させた。次いで反応器を冷却し、反応混合物を抜き出した(その前に脱圧された反応器を開けた)。
【0151】
比較例1‐1及び1‐3並びに例1‐2、1‐4及び1‐5
第一の例において、蒸留残渣を再利用の触媒として直接的に用いた(比較例1‐1)。第二の例において、蒸留残渣を5%塩酸で抽出し、ろ過された有機フラクションを触媒として用いた(例1‐2)。
【0152】
比較例1‐1
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む90.1gの蒸留残渣を400gのTeCMと混合した。次いで混合物を、5.0gの鉄を追加したオートクレーブに導入した。エテンによりフラッシングした後、混合物をオートクレーブ中で110℃まで加熱した。この温度及び9barのエテンの圧力において、反応混合物を4.5時間反応させた。第一のサンプルを3時間後に取得した。実験の終わりにおける残留TeCMの濃度は、19.7%であった(3時間後に33.0%)。
【0153】
例1‐2
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む90.1gの蒸留残渣を370gの5%HClにより抽出した。下側の有機相をろ過して400gのTeCMと混合した。次いで混合物を、5.0gの鉄を追加したオートクレーブに導入した。エテンによりフラッシングした後、混合物をオートクレーブ中で110℃まで加熱した。この温度及び9barのエテンの圧力において、反応混合物を4.5時間反応させた。第一のサンプルを3時間後に取得した。実験の終わりにおける残留TeCMの濃度は、5.5%であった(3時間後に24.6%)。
【0154】
比較例1‐3
比較例1‐3を、異なる濃度のテトラクロロメタンとトリブチルホスフェートを用いたことを除いて、比較例1‐1で用いたものと同じ条件を用いて実施した。
【0155】
例1‐4及び1‐5
例1‐4及び1‐5は、異なる濃度のテトラクロロメタン及びトリブチルホスフェートを用いたことを除いて、例1‐2で用いたものと同じ条件を用いて実施した。
【0156】
比較例1‐1及び例1‐2、並びに比較例1‐3及び例1‐4及び1‐5の結果を以下の表に示す。理解することができるように、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンに転化されたテトラクロロメタンの割合は、比較例1‐1及び1‐3より例1‐2、1‐4、及び1‐5で十分に高く、触媒を回収する際の水性処理工程の実施が系に大きなよい影響与えることを示す。これは、蒸留残渣から回収された触媒の高い実行可能性のためであり、また、潜在的には反応混合物からの不純物(例えば酸素化不純物)(そうでなければ反応を遅らせる場合がある)の除去のためである。
【0157】
【表5】
【0158】
連続配列
バッチ実験に関して上記で記載されたものと同じステンレス鋼オートクレーブを撹拌フロー連続反応器として用いた。反応器を始めに約455gの反応混合物で満たした。エテンにより5barに加圧した後、オートクレーブを105℃まで加熱し、次いでオートクレーブへのエテン供給を開き、原料の連続供給及び反応混合物の連続抜き出しを開始した。
【0159】
溶解した触媒を含む原料溶液をステンレス鋼タンクからオートクレーブに供給した。タンクを反応器の上方に置き、したがって反応器に供給するためにポンプを用いた。反応器及びタンクは、反応の開始を避けるように選択されたシリンダー中の条件で、シリンダーから銅キャピラリーにより分配されたエテンの雰囲気下であった。反応混合物のサンプリングを5分毎にサンプリング管により実施した。反応の過程を監視するために、原料及び溶解した触媒を含む容器、エテンのシリンダー、及び抜き出された反応混合物を秤量した。反応混合物を1時間ずっと捕集した。その後、捕集容器を交換する。
【0160】
比較例1‐6及び1‐8並びに例1‐7及び1‐9
再利用触媒(すなわち、蒸留残渣)の活性を比較する連続実験を、水性処理工程の実施あり及びなしで実施した。第一の場合において、蒸留残渣を再利用触媒として直接的に用いた(比較例1‐6)。後者の場合において、5%HClによる蒸留残渣の水性処理の後、反応混合物を再利用触媒を含む原料として用いた(例1‐4及び1‐5)。
【0161】
比較例1‐6
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、及び7.49%のBu3PO4を含む587.5gの蒸留残渣を2200gのTeCMと混合した。この混合物は、78.7%のTeCM、11.8%のTeCPa、5.8%のTeCPnaを含んでいた。この混合物を連続配列のための供給ストリームとして用いた。オートクレーブを構成する反応容器を反応混合物及び8gの未使用の鉄で満たした。反応を110℃にて9barのエテンの圧力で実施した。滞留時間は2.7時間であった。反応中、反応したTeCMの量は75~76%であった。
【0162】
例1‐7
63.7%のTeCPa、22.8%のTeCPna、7.49%のBu3PO4を含む587.5gの蒸留残渣を1.5時間に亘り1001.5gの沸騰している5%HClに滴下した。この混合物を次いでストリッピングした。塔頂生成物から有機相を捕集し、水相をリフラックスとして戻した。蒸留残渣の全てを加えてから1時間後に蒸留を終えた。ストリッピング後の残渣を200gのTeCMで希釈し、次いで分液ろうと中で分離させた。下側の有機相をろ過し、蒸留された残渣と合わせて2000gのTeCMと混合した。この混合物は、81.2%のTeCM、10.8%のTeCPa、及び5.3%のTeCPnaを含んでいた。それを実験の連続配列のための供給ストリームとして用いた。反応容器(オートクレーブ)をより古い反応混合物及び8gの未使用の鉄で満たした。反応を110℃及び9barのエテンの圧力にて実施した。滞留時間は2.7時間/流速であった。反応時間中、反応したTeCMの量は83~85%であった。
【0163】
比較例1‐8
比較例1‐8を異なる濃度のテトラクロロエタン及びトリブチルホスフェートを用いたことを除いて、比較例1‐6で用いたものと同じ条件を用いて実施した。
【0164】
例1‐9
例1‐9を異なる濃度のテトラクロロメタン及びトリブチルホスフェートを用いたことを除いて、例1‐7で用いたものと同じ条件を用いて実施した。
【0165】
【表6】
【0166】
例2‐高純度の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの調製
アルキル化工程(図1)、第一の蒸留工程(図2)、水性触媒回収工程(図3)、及び第二の蒸留工程(図4)を含む本発明の方法にしたがって、高純度の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを得ることができる。しかし、これらの工程の全てが本発明の方法による高純度のC3~6アルカンを得るのに必須ではないことが理解されるであろう。
【0167】
図1に示されたアルキル化工程において、エテン及び粒状鉄をライン1及び2を介して連続撹拌タンク反応器3に供給する。ノズルを備えたディップチューブを介して、エテンをガス状形態で連続撹拌タンク反応器3に導入する。粒状鉄の制御された供給を、連続撹拌タンク反応器3に導入する。
【0168】
制御された供給を用いて、連続撹拌タンク反応器3に粒状鉄を断続的に供給する。アルキル化反応が進行する際、粒状鉄が反応混合物に溶解するため、粒状鉄の継続的な添加が用いられる。最適な結果が、この例において、一次アルキル化ゾーン中の反応混合物の1~2質量%の添加により反応混合物中の粒状鉄の存在を維持することにより得られることが見出された。これは、反応混合物の0.2~0.3質量%の溶解した鉄含有量を有する一次アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物をもたらす。
【0169】
ライン12を介して、四塩化炭素を液体形態で連続撹拌タンク反応器3に供給する。示された実施態様において、四塩化炭素ストリームを用いて反応混合物から抽出されたガス状エテンを捕集する。しかし、このような四塩化炭素の使用は本発明に必須ではなく、単独又は四塩化炭素の主要なソースとしての未使用の四塩化炭素の供給物を、反応器3に供給することができる。
【0170】
また、ライン12を介してトリブチルホスフェート/塩化第二鉄触媒も連続撹拌タンク反応器3に供給する。このストリーム中に存在するトリブチルホスフェートは、図3(及び以下でより詳細に議論される)に示された水性処理プロセスから部分的に得られ、残りは系に加えられる未使用のトリブチルホスフェートとして与えられる。ライン12中のストリームは、追加的にハロアルカン抽出剤を含む。
【0171】
示された実施態様において、単独の一次アルキル化ゾーンを用い、連続撹拌タンク反応器3中に配置する。当然のことながら、必要な場合には、複数の一次アルキル化ゾーンを用いることができ、例えば並列及び/又は直列で動作することのできる1つ又はそれより多くの連続撹拌タンク反応器を用いることができる。
【0172】
一次アルキル化ゾーンを環境圧力より低い圧力(5~8barゲージ)及び高温(105℃~110℃)下、100~120分の滞留時間で動作させる。四塩化炭素及びエテンを生じさせるようにこれらの条件を選択して、アルキル化反応において1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを形成させる。しかし、四塩化炭素の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンへの全転化は、望ましくない不純物の形成ももたらすため望ましくないことが見出された。したがって、目的のC3~6の塩素化アルカンへの四塩化炭素の転化の程度を制御し、本発明のこの実施態様において、95%を超える進行を許容しない。アルキル化反応の進行の制御を、連続撹拌タンク反応器中の反応混合物の滞留時間の制御により、四塩化炭素の1,1,1,3‐テトラクロロプロパンへの全転化に有利でない反応条件の使用により部分的に達成する。
【0173】
i)未反応の四塩化炭素及びエテン、ii)1,1,1,3‐テトラクロロプロパン(本実施態様における目的のC3~6塩素化アルカン)、及びiii)トリブチルホスフェート/塩化鉄触媒を含む反応混合物を一次アルキル化ゾーン(連続撹拌タンク反応器3)から抽出し、(主要アルキル化ゾーンが配置される)プラグ/フロー反応器4に供給する。
【0174】
一次アルキル化ゾーン3中に存在する粒状鉄触媒を抽出しないように反応混合物を抽出するため、反応混合物は実質的に粒状材料を含まない。更に、示された実施態様において、プラグ/フロー反応器4が触媒床を含むことができるとしても、追加の触媒をプラグ/フロー反応器4に加えない。加えて、更なるエテンをプラグ/フロー反応器4に加えない。
【0175】
示された実施態様において、主要アルキル化ゾーン4中の動作圧力は、一次アルキル化ゾーン3中のものと同じである。反応混合物の滞留時間は約30分であり、それは示された実施態様において、存在するエテンの実質的に全てが反応中に使い古されるのに十分であった。当然のことながら、異なる反応器の種類及び動作条件、異なる滞留時間が最適である場合があることが理解されるであろう。
【0176】
主要アルキル化ゾーンにおいて反応混合物の決定された最適の滞留時間に到達した際、高い圧力及び温度にて維持しつつ、反応混合物をライン5を介してそこから抽出し、フラッシュ蒸発容器6に供給する。この容器において、抽出された反応混合物を環境圧力に脱圧した。この圧力降下は、反応混合物中に存在するエテンを蒸発させる。実質的にエテンを含まない1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの豊富な混合物をライン7を介してフラッシュ容器から抽出し、図2に示され、以下でより詳細に議論される蒸留工程に供する。
【0177】
蒸発したエテンをライン8を介してフラッシュ容器6から抽出し、コンデンサ9を介して供給する。エテンを次いでライン10を介して吸収カラム11に供給し、そこで図3に示され、以下でより詳細に議論される水性処理工程において反応混合物から回収されたトリブチルホスフェート/塩化鉄触媒及び四塩化炭素のストリームと接触させる。回収された触媒/四塩化炭素のストリーム13を冷却器14に通し、次いで吸収カラム11にライン15を介して供給する。
【0178】
吸収カラム11を通る冷却された四塩化炭素/触媒の流れは、そこにエテンを捕集する効果を有する。四塩化炭素/触媒/エテンの得られた液体の流れを、次いで連続撹拌タンク反応器3に戻す。
【0179】
図1からわかるように、示された実施態様は、幾つかの理由に関して有利なエテン再循環ループを含む。第一に、エテンのほとんど全部の使用が達成され、したがって系からのエテン損失の量が非常に低い。加えて、エテン再循環系の成分のエネルギー要求も低い。更に、系からのエテン損失の量も非常に低く、それは環境負荷が低減されることを意味する。
【0180】
図2をみると、図1中の参照番号6で示されたフラッシュ容器から抽出された1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの豊富な混合物を、減圧蒸留塔104と連通して動作するバッチ蒸留ボイラ102にライン101を介して供給する。蒸留ボイラを、90℃~95℃の温度にて動作させる。ボイラ102に供給された混合物中に存在するクロロアルカンを蒸発させ、蒸留塔104(及び下流コンデンサ106及びリフラックス分配器108)を用いて軽端ストリーム110.1、四塩化炭素ストリーム110.2、テトラクロロエテンストリーム110.3、及び精製された1,1,1,3‐テトラクロロプロパン生成物ストリーム110.4に分離する。
【0181】
軽端及びテトラクロロエテンストリーム110.1、110.3を四塩化炭素の生成において用いることができ、有利には廃棄生成物の生成を最小化する。これは、高温塩素化分解プロセスの使用により達成することができる。
【0182】
四塩化炭素ストリーム110.2を連続撹拌タンク反応器103に戻す。精製された1,1,1,3‐テトラクロロプロパン生成物ストリーム110.4を系から抽出し、輸送のために保存することができ、または出発物質として純粋な1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを要求する下流プロセスで用いることができる。
【0183】
触媒も含む1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの豊富な混合物をライン103を介してボイラ102から残渣として抽出し、図3に示された触媒回収工程に供する。
【0184】
この工程において、ライン201による弱(1~5%)塩酸溶液と共に、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの豊富な混合物をライン202を介してバッチ蒸留ボイラ204に供給する。
【0185】
有利には、酸溶液中に存在する水は触媒系を不活性化し、熱的損傷からそれを保護する。このことは、触媒系を1,1,1,3‐テトラクロロプロパンの豊富な混合物から回収することを可能にし、それを回収後に容易に再活性化し、触媒活性の重大な損失なくアルキル化プロセスにおいて再使用することができる。
【0186】
バッチ蒸留ボイラを約100℃の温度にて動作させ、1,1,1,3‐テトラクロロプロパン及び水蒸気を含むガス状混合物を生成させる。
【0187】
ボイラ204中で生成したガス状混合物を次いでボイラ204に結合されたカラム210中で粗1,1,1、3‐テトラクロロプロパンのスチーム蒸留(又はスチームストリッピング)に供する。粗1,1,1,3‐テトラクロロプロパンをライン211を介して蒸留カラム210から抽出し、コンデンサ212により凝縮させ、ライン213を介してリフラックス液体‐液体分離器214に供給する。図4でより詳細に示され、以下でより詳細に議論されるように、ガス状混合物からの水をライン215を介して蒸留塔210に戻し、一部を更なる蒸留工程のためにライン216を介して取り出す。
【0188】
ボイラ204の動作温度を次いでスチームストリッピングを停止するように下げ、その中に存在する水蒸気の凝縮をもたらす。これは、水相と触媒系を含む有機相とを含む二相性混合物の形成をもたらし、それはスチームストリッピングに供されなかった。有機相の抽出を促進するために、ハロアルカン抽出剤(この場合において、1,1,1,3‐テトラクロロプロパン)をライン203を介してボイラ204に加え、この相の体積を増加させた。
【0189】
二相性混合物からの有機相の抽出を、ライン205を介してボイラ204から相を逐次的に抽出することにより達成する。有機相を、ライン205を介してボイラ204から抽出し、ろ過する(206)。フィルターケーキを、ライン207を介してフィルター206から除去する。有機相を、ライン208を介して抽出し、この実施態様において、図1に示されるように、特に図1のライン13を介して一次アルキル化ゾーンに戻す。水相をライン205を介して抽出し、ろ過し(206)、ライン209を介して廃棄する。
【0190】
ストリッピングされた粗1,1,1,3‐テトラクロロプロパン生成物を図4に示される更なる蒸留工程に供する。この工程において、粗生成物を蒸留ボイラ302にライン301を介して供給する。ボイラ302は、蒸留塔304と連通している。蒸留塔304(及び関連する下流装置、コンデンサ306及びリフラックス分配器308)中で、粗1,1,1,3‐テトラクロロプロパン中に存在する蒸発した塩素化有機化合物を、精製された1,1,1,3‐テトラクロロプロパン生成物ストリーム310.1及び塩素化ペンタン/ペンテンストリーム310.2に分離する。
【0191】
塩素化ペンタン/ペンテンストリーム310.2を四塩化炭素の製造において用いることができ、有利には、廃棄生成物の製造を最小化する。これは、高温塩素化分解プロセスの使用により達成することができる。
【0192】
精製された1,1,1,3‐テトラクロロプロパン生成物ストリーム310.1を系から抽出し、(図2において参照番号110.4として特定されている)主生成物ストリームと組み合わせることができる。生成物は、輸送のために保存することができ、または出発物質として純粋な1,1,1,3‐テトラクロロプロパンを要求する下流プロセスにおいて用いることができる。
【0193】
ライン303を介してボイラ302から抽出された重端残渣を廃棄するか、または更に処理する。
【0194】
上記で概説された装置及びプロセス条件を用いて、2635kgの四塩化炭素(CTC、99.97%純度)を、平均時間添加量78.2kg/hで連続的に処理し、1,1,1,3‐テトラクロロプロペン(1113TeCPa)を製造した。例2にしたがって実施された開示されたプロセスの基本パラメータは以下である。
【0195】
【表7】
【0196】
上記の実施態様の精製された生成物の全部の不純物プロファイルを以下の表に表す。数字が、図2のライン110.4及び図4のライン310.1に概説された生成物のプロファイルの秤量平均として与えられることに留意されたい。
【0197】
【表8】
【0198】
例3:反応混合物中の出発物質:生成物のモル比の選択性への効果
これらの例は、別段の記載がある場合を除いて、例1中の「連続配列」において上記で概説された装置及び方法を用いて実施した。反応混合物中のC3~6塩素化アルカン生成物(この場合において、1,1,1,3‐テトラクロロプロパン):四塩化炭素のモル比を、主にアルキル化ゾーン中の反応混合物の滞留時間により異なる濃度に制御した。温度を110℃にて維持し、圧力を9Barにて維持した。目的の生成物に対する選択性を以下の表に報告する。
【0199】
【表9】
【0200】
この例から理解することができるように、プロセスを連続で動作させた場合に生成物:出発物質のモル比が95:5を超える場合、目的の生成物に対する選択性の注目すべき低下がある。
【0201】
例4:反応混合物中の出発物質:生成物のモル比の選択性への効果
これらの例を、別段の記載がある場合を除いて、上記の例2に伴う記載を参照して、図1に示された装置及び方法を用いて実施した。反応混合物中のC3~6塩素化アルカン生成物(この場合において、1,1,1,3‐テトラクロロプロパン):四塩化炭素のモル比を、主にエチレン出発物質の供給速度を制御することにより異なる濃度に制御した。温度は一定の110℃であった。目的の生成物に対する選択性を以下の表に報告する。
【0202】
【表10】
【0203】
この例から理解することができるように、プロセスを連続で動作させた場合に生成物:出発物質のモル比が95.5を超える場合、目的の生成物に対する選択性の注目すべき低下がある。
【0204】
例5:原料純度の効果
これらの例を、別段の記載がある場合を除いて、上記の例2に伴う記載を参照して、図2に示された装置及び方法を用いて実施した。試行5‐1は、図2のストリーム110.4から得られたストリームである。試行5‐2~5‐5は、同じ装置及び方法を用いるが、異なる純度の原料を用いて得られた代替的な例である。以下のデータは、より純度の低い原料を試行5‐2~5‐5で用いたものの、これは、有利なことに本発明の方法から得られた場合に生成物の純度に重大な影響を与えないことを示す。
【0205】
【表11】
【0206】
例6:CSTR及びプラグフローの組合せ
これらの例を、別段の記載がある場合を除いて、上記の例2に伴う記載を参照して、図1に示された装置及び方法を用いて実施した。第二のプラグフロー反応器(図1の参照番号4)における反応の効率を評価した。主要なCSTR反応器(図1の参照番号3)と同じ温度(110℃)にて動作するプラグフロー反応器の入口において異なる量の溶解したエチレンを用いて2つの試行を実施した。結果を以下の表に示す。
【0207】
【表12】
【0208】
この例から理解することができるように、プラグフロー反応器中で75~93%のエチレンの転化がある。したがって、プラグフロー反応器を用いる場合、反応セクション中でのより効率的なエチレン利用がある。連続プラグフロー反応器は、CSTR反応器を、複雑で非経済的なエチレン回収プロセスの必要なしに、最適な圧力で動作させる。連続プラグ反応器は、したがって効率的に閉じたループ中でのエチレン使用を制御する。
【0209】
例7:従来の蒸留中の触媒リガンドの問題のある分解
コンデンサ、サーモメーター、温浴、及び減圧ポンプ系を備えた2リットルガラス蒸留4口フラスコからなる分留装置を組み立てた。始めに、図1に示され、上記の例2の記載を伴って説明された装置及び方法を用いて得られた1976グラムの反応混合物で蒸留フラスコを満たした。
【0210】
蒸留中、圧力を100mmHgの初期圧力から6mmHgの最終圧力まで徐々に低下させた。この期間中、1792グラムの蒸留物(異なるフラクション中)を抽出した。蒸留中、可視のHClガス形成があり、更にクロロブタン(トリブチルホスフェートリガンドからの分解生成物)もかなりの量、すなわち蒸留フラクションに関して1~19%で形成した。これらの観察がなされたら、蒸留を中断し、蒸留残渣を秤量し、分析して、16%のテトラクロロプロパン含有量を有することが見出された。トリブチルホスフェートリガンドの重大な分解なく、蒸留を続けることはもはや不可能であった。
本開示には以下の実施形態も開示される。
[実施形態1]
主要アルキル化ゾーンにおいてアルケン及び四塩化炭素を含む反応混合物を与えて反応混合物中でC 3~6 塩素化アルカンを製造することと、前記主要アルキル化ゾーンから反応混合物の一部を抽出することとを含む、C 3~6 塩素化アルカンの製造方法であって、
a)前記主要アルキル化ゾーンにおける反応混合物中のC 3~6 塩素化アルカンの濃度を、前記アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中のC 3~6 塩素化アルカン:四塩化炭素のモル比が、主要アルキル化ゾーンが連続運転である場合には95:5を超えないような濃度にて維持し、並びに/または
b)前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物が追加的にアルケンを含み、前記反応混合物を、反応混合物中に存在するアルケンの少なくとも約50質量%以上をそこから抽出し、抽出されたアルケンの少なくとも約50%を前記主要アルキル化ゾーンにおいて与えられる反応混合物に戻す脱アルケン化工程に供し、並びに/または
c)前記主要アルキル化ゾーン中に存在し、前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物が追加的に触媒を含み、前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、反応混合物を水性処理ゾーンにおいて水性媒体と接触させ、二相性混合物を形成し、触媒を含む有機相を二相性混合物から抽出する水性処理工程に供する方法。
[実施形態2]
前記アルケンがエテン、プロペン、及び/又は塩素化プロペンである、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記C 3~6 アルカンが、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
前記反応混合物に触媒を加える、実施形態1~3のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態5]
前記触媒が金属系触媒であり、任意選択的に更に有機リガンドを含む金属系触媒である、実施形態1~4のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態6]
前記有機リガンドが、アルキルホスフェート、例えばトリエチルホスフェート、及び/又はトリブチルホスフェートである、実施形態5に記載の方法。
[実施形態7]
前記主要アルキル化ゾーンを、約30℃~約160℃の温度にて動作させる、実施形態1~6のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態8]
前記主要アルキル化ゾーンを、約80℃~約120℃の温度にて動作させる、実施形態1~7のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態9]
前記反応混合物を前記主要アルキル化ゾーン中で形成させる、実施形態1~8のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態10]
アルケン及び四塩化炭素を一次アルキル化ゾーン中で接触させて反応混合物を形成し、前記反応混合物を次いで前記一次アルキル化ゾーンから抽出し、前記主要アルキル化ゾーンに供給し、前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中に存在するC 3~6 塩素化アルカン:四塩化炭素の比が、前記一次アルキル化ゾーンから取得された反応混合物中に存在するC 3~6 塩素化アルカン:四塩化炭素の比より大きい、実施形態1~8のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態11]
前記主要アルキル化ゾーンを前記一次アルキル化ゾーンと同じ、または異なる圧力にて動作させる、実施形態10に記載の方法。
[実施形態12]
前記一次アルキル化ゾーンを連続プロセスにおいて動作させる、実施形態10又は11に記載の方法。
[実施形態13]
前記主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物中に存在するもの以外に、アルケン又は固体金属触媒を前記主要アルキル化ゾーンに供給しない、実施形態10~12のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態14]
前記一次アルキル化ゾーンから取得され、前記主要アルキル化ゾーンに供給される反応混合物が、実質的に固体金属触媒を含まない、実施形態10~13のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態15]
前記脱アルケン化工程が、前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物を、アルケンを反応混合物から蒸留する蒸留ゾーンに供給することを含む、実施形態1~14のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態16]
前記反応混合物から蒸留されたアルケンを前記アルケンの豊富なストリームで得る、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]
前記蒸留ゾーンが、アルケンを反応混合物から蒸発させる蒸発ゾーンである、実施形態15又は16に記載の方法。
[実施形態18]
前記水性処理工程の前に、任意選択的には蒸留によって、前記主要アルキル化ゾーンから抽出された反応混合物中に存在するC 3~6 塩素化アルカンの約30質量%~約85質量%を前記反応混合物から除去する、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態19]
前記水性媒体が、希酸、任意選択的には希塩酸を含む、実施形態1~17のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態20]
前記水性処理ゾーンに供給された反応混合物中に存在するC 3~6 塩素化アルカンの大部分を、前記水性処理ゾーン中で形成された混合物から任意選択的には蒸留によって抽出する、実施形態1~19のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態21]
前記水性処理ゾーンに四塩化炭素及び/又はC 3~6 塩素化アルカンを供給する工程を更に含む、実施形態1~20のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態22]
二相性混合物を前記水性処理ゾーン中で形成させる、実施形態1~21のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態23]
有機相を逐次相分離により二相性混合物から抽出する、実施形態1~22のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態24]
スチームを前記水性処理ゾーンに供給し、及び/またはスチームを前記水性処理ゾーン中に存在する水を沸騰させることによりインサイチューで形成させて、C 3~6 塩素化アルカン及び水蒸気を含むガス状混合物であって、該ガス状混合物からC 3~6 塩素化アルカンを蒸留することができるガス状混合物を製造する、実施形態1~23のいずれか1項に記載の方法。
[実施形態25]
実施形態1~24のいずれか1項に記載の方法により得ることができる、C 3~6 塩素化アルカンを含む組成物。
[実施形態26]
・約99.0%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、若しくは約99.9%以上の塩素化アルカン、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルカン不純物(すなわち、目的のC 3~6 塩素化アルカン以外の塩素化アルカン化合物)、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルケン化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の酸素化有機化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の臭素化化合物、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の水、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の金属系触媒、及び/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の触媒促進剤を含む、実施形態25に記載の組成物。
[実施形態27]
前記C 3~6 クロロアルカンが、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである、実施形態26に記載の組成物。
[実施形態28]
・約99.0%以上、約99.5%以上、約99.7%以上、約99.8%以上、若しくは約99.9%以上のC 3~6 塩素化アルカン、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルカン不純物(すなわち、目的のC 3~6 塩素化アルカン以外の塩素化アルカン化合物)、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の塩素化アルケン化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の酸素化有機化合物、
・約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、若しくは約100ppm未満の臭素化化合物、
・約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の水、
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の金属系触媒、及び/又は
・約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、若しくは約20ppm未満の触媒促進剤を含む、C 3~6 塩素化アルカンを含む組成物。
[実施形態29]
3~6 クロロアルカンが、1,1,1,3‐テトラクロロプロパンである、実施形態28に記載の組成物。
[実施形態30]
ハロゲン化アルケン又はハロゲン化アルカンの合成における原料としての実施形態25~29のいずれか1項に記載の組成物の使用。
[実施形態31]
前記ハロゲン化アルケン又はハロゲン化アルカンが、フッ素化及び/若しくは塩素化アルケン、又はフッ素化及び/若しくは塩素化アルカンである、実施形態30に記載の使用。
図1
図2
図3
図4