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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】遠隔操作可能なマッサージ装置のプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20220427BHJP
   A61H 19/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H01R13/66
A61H19/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021514593
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019075567
(87)【国際公開番号】W WO2020064654
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】18196656.5
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516010973
【氏名又は名称】アモール・グンミヴァレン・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AMOR Gummiwaren GmbH
【住所又は居所原語表記】August-Rost-Str.4,99310 Arnstadt,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ディルス
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085285(US,A1)
【文献】独国実用新案第29602429(DE,U1)
【文献】特開平7-95658(JP,A)
【文献】国際公開第03/097177(WO,A1)
【文献】中国実用新案第202384587(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104659589(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/66
A61H 19/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッサージ装置(40)を電源に接続するためのプラグ(1)であって、
電源に接続するための二つの充電電極(6)を有し、無線データ通信装置(18)の無線信号を送受信するための回路基板アンテナ(16)を収容しているハウジング(2)と、
前記ハウジング(2)から出て前記プラグ(1)と前記マッサージ装置(40)とを接続するケーブル(4)であって、第1の端部に前記プラグ(1)が設けられ、反対側の第2の端部が前記マッサージ装置(40)に接続可能に構成されたケーブル(4)とを備え、
前記ハウジング(2)、前記ケーブル(2)、および前記ハウジング(2)と前記ケーブル(4)との間の接続部が、液体に対して耐性を持つように構成され、
前記ハウジング(2)が、さらに、制御装置(20)と、前記無線データ通信装置(18)とを収容している、ことを特徴とするプラグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプラグ(1)において、前記プラグ(1)が平坦であり、前記充電電極(6)がUSB互換に構成されている、ことを特徴とするプラグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラグ(1)において、前記ハウジング(2)が、長さ(L)、幅(B)、および高さ(H)を有し、前記長さ(L)が前記幅(B)よりも大きく、前記長さ(L)と前記高さ(H)の比が10:1よりも小さく、好ましくは8:1よりも小さく、より好ましくは6:1以下であり、前記長さ(L)と前記幅(B)の比が10:1よりも小さく、好ましくは7:1よりも小さく、より好ましくは3:1以下である、ことを特徴とするプラグ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記ハウジング(2)のサイズが最大で50mm×30mm×20mm(L×B×H)、好ましくは最大で40mm×20mm×10mm(L×B×H)、より好ましくは最大で35mm×15mm×6mm(L×B×H)である、ことを特徴とするプラグ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記プラグ(1)の上面(24)に形成された作動エレメント(8)をさらに備えている、ことを特徴とするプラグ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記充電電極(6)、前記回路基板アンテナ(16)、前記無線データ通信装置(18)、および前記制御装置(20)が、回路基板(12)上に配置されている、ことを特徴とするプラグ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記充電電極(6)、前記回路基板アンテナ(16)、前記無線データ通信装置(18)、および前記制御装置(20)が、前記回路基板(12)の片面に配置されているか、または、前記回路基板(12)の対向する二つの面に任意の組み合わせで配置されている、ことを特徴とするプラグ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記ケーブル(4)が2本のストランド(10)を有し、これらのストランドは互いに独立に形成され、かつ、それぞれが防水加工されている、ことを特徴とするプラグ。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のプラグ(1)において、一方の前記ストランド(10)が、前記充電電極(6)を前記マッサージ装置(40)の蓄電器に接続するための少なくとも一つ電気ラインであり、他方の前記ストランド(10)が、前記制御装置(20)を前記マッサージ装置(40)の振動発生装置に接続するための信号ラインである、ことを特徴とするプラグ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のプラグ(1)において、前記ハウジング(2)が生体適合性のあるプラスチックから形成されているか、または、生体適合性のあるプラスチック製のシースを有する、ことを特徴とするプラグ。
【請求項11】
身体の一部をマッサージするのに適した遠隔制御可能なマッサージ装置(40)であって、
請求項1ないし10のいずれかに記載のプラグ(1)と、
振動発生装置および蓄電器を有するバイブレーター本体(42)とを備え、前記バイブレーター本体(42)が、前記ケーブル(4)のみで前記プラグ(1)に接続されている、ことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のマッサージ装置(40)において、前記バイブレーター本体(42)が、衝撃波バイブレーターまたは振動バイブレーターである、ことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載のマッサージ装置(40)において、前記バイブレーター本体(42)が、回路基板を含まずに構成されている、ことを特徴とするマッサージ装置。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかに記載のマッサージ装置(40)において、前記マッサージ装置(40)の全体の制御システムが前記プラグ(1)に配置されている、ことを特徴とするマッサージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の一部、特に性器をマッサージするためのマッサージ装置を電源に接続するためのプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冒頭に述べたようなタイプのマッサージ装置は、バイブレーターとも呼ばれ、さまざまな形や大きさのものがある。中には、電池駆動のバイブレーターで、直接操作やケーブルでの操作が可能なものや、Bluetoothなどで遠隔操作が可能なものなどがある。例えば、WO02/38100A2により、性的興奮を与えるためのマッサージ装置が知られており、そこに開示されたマッサージ装置本体の一端には、アンテナおよび/または充電ケーブルとして機能するケーブルまたはコードが設けられている。しかし、公知のマッサージ装置の欠点の一つは、コード(Rueckholschnur)の解放端にあるブッシングが耐液性になるように形成されていないことである。このため、ブッシングの開口部に液体が入り込み、腐食して機器の故障につながるおそれがある。さらに、コードの寸法によって、充電コードをアンテナとして設計する場合に特定の無線周波数やアンテナの種類に制限される。特に、スマートフォンなどの遠隔(操作)機器とマッサージ器との間の無線データ通信に、Bluetooth、IEEE802.11(WLAN/WIFI)、GSM、UMTS、LTE、5Gなどの現在のモバイルデータ通信の規格を使用することができない。EP3299005A1により、ケーブルでプラグに接続されるマッサージ装置が知られている。そこに開示されたプラグは、マッサージ装置の蓄電器を充電するための充電電極と、データ通信用の回路基板アンテナを備えている。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも部分的に克服し、信頼性の高い耐液性機能、シンプルな構造、および堅牢で安価に製造可能なマッサージ装置を提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1または11の特徴を持つもの対象物によって解決される。有利な実施形態は、各従属請求項に係る対象物である。
【0005】
本発明によれば、マッサージ装置を電源に接続するためのプラグが提供され、このプラグは、電源に接続するための二つの充電電極を有し、制御装置、無線データ通信装置、及び無線データ通信装置の無線信号を送受信するための回路基板アンテナを収容するハウジングを備えている。プラグは、ハウジングから出てプラグとマッサージ装置とを接続するケーブルをさらに備えており、ケーブルの第1の端部にプラグが設けられており、ケーブルの反対側の第2の端部はマッサージ装置に接続可能に構成されている。そして、ハウジング、ケーブル、およびハウジングとケーブルの間の接続部は、耐液性があるように構成されている。
【0006】
これによると、プラグへの液体の浸透、ひいてはマッサージ装置の敏感な電気部品の領域への液体の浸透が回避されるという目標が達成される。プラグのハウジングに収容された部品は、液体から保護され、信頼性の高い機能が保証される。マッサージ装置を適切に使用する際にはプラグが常に体外に出ているため、プラグに回路基板のアンテナが配置されていることにより、無線データ通信装置と遠隔(操作)装置または無線セル基地局との間の通信が確実に保証される。また、無線データ通信装置と回路基板アンテナがハウジングに一体的に配置されているため、回路基板アンテナと無線データ通信装置との間で信号を伝送する際に、受信した信号が干渉してマッサージ装置が誤動作することを防止することができる。特に、高周波のアンテナ信号は、できるだけ干渉信号にさらされず、また、USBの充電電圧源(直流電圧)による電流の流れによる影響もできるだけ少なくなっている。さらに、回路基板アンテナは、現在のデータ伝送規格に沿った信号の送受信に適している。さらに、制御に関連するマッサージ装置のすべての構成要素がプラグに配置されているため、コンパクトでシンプルな構造であり、また、低コストでの製造が可能になる。特に、マッサージ装置のマッサージ部分やバイブレーター本体は、振動発生装置と蓄電器を備えればよく、その他の電気部品は不要なので、構造を大幅に簡略化することができる。
【0007】
特に繊細な電子部品は、プラグの中に移すことができる。プラグがバイブレーター本体から独立しているため、異なるデザインのさまざまなバイブレーター本体にプラグを使用することができ、その結果、製造コストをさらに削減することができる。そして、身体の開口部に挿入されるマッサージ装置のバイブレーター本体だけでなく、ケーブルやプラグも、耐液性設計により、EP67(DIN EN 60528)などの衛生基準を満たしている。また、ケーブルやプラグは洗浄しやすく、マッサージ装置の機能を損なうような液体が入り込む可能性のある開口部はなく、特に有利なのは、プラグが平坦で、充電電極がUSB互換に設計されていることである。USB技術を使えば、マッサージ装置の蓄電器を充電したり、データ転送したりと、非常に広く使用方法が可能になる。この点において、平坦なプラグは、対応するUSBソケットに挿入可能なUSB-Aプラグと同様の構成を有している。このような接続ソケットは、PC、ラップトップPC、ノートPC、タブレットPC、電源ユニットなどさまざまな機器に搭載されており、USB規格に基づいて十分な充電電流(USB2.0では5Vで最大500mA)を供給する。また、従来の電源プラグと比較して、上記プラグは非常に小さく設計することができる。低消費電流と低電圧のため、従来の220Vの電源プラグとは異なり、USB対応のプラグの取り扱いは操作者にとって危険でない。
【0008】
好ましい実施形態では、ハウジングは、長さ、幅、および高さを有し、長さが幅よりも大きく、長さと高さの比が10:1よりも小さく、好ましくは8:1よりも小さく、より好ましくは6:1以下であり、長さと幅の比が10:1よりも小さく、好ましくは7:1よりも小さく、より好ましくは3:1以下である。好ましくは、ハウジングのサイズは最大で50mm×30mm×20mm、好ましくは最大で40mm×20mm×10mm、より好ましくは最大で35mm×15mm×6mmである。その結果、プラグは比較的小さく設計され、対応するマッサージ装置の使用中に邪魔だと感じられず、マッサージ装置の取り扱いに悪影響を与えないようになっている。同時に、握りやすく、人間工学的に扱うことができる。
【0009】
一実施形態では、プラグは、プラグの表面に形成された作動エレメントをさらに備えている。作動エレメントは、遠隔操作に加えて、制御装置を用いてマッサージ装置を直接作動させるためのもので、これにより、遠隔操作装置がなくてもマッサージ装置を使用することができる。作動エレメントまたは操作エレメントは、例えば、プラグのハウジングの表面に押圧エレメントとして形成されていてもよく、これにより、マッサージ装置が使用されているときでも、簡単かつ容易にアクセスでき、操作可能である。これに代えて、または、これに加えて、スマートフォンのように、指で操作できるタッチセンサー式の操作面を、作動または操作エレメントに設けることもできる。
【0010】
好ましくは、プラグのハウジングは、その表面にグリップ領域をさらに備えている。グリップ領域は、ケーブルが接続されるプラグの端部付近に形成されている。これにより、充電ソケットからの抜き差しが容易になる。グリップ領域は、プラグの表面に設けられた波形や突起によって形成されていてもよい。プラグとアンテナの機能に影響を与えない、他の有用な実施形態も可能である。特に、操作エレメントは、良好な触感と操作性を確保するために、グリップ領域として形成されていてもよい。また、意図せずにマッサージ装置が作動するのを防ぐために、グリップ領域を、作動エレメントと反対側の面や、作動エレメントに対して横方向に配置された面に配置してもよい。
【0011】
特に好ましくは、充電電極、回路基板アンテナ、無線データ通信装置、および制御装置が共通の回路基板上に配置されている。回路基板アンテナは、プリントアンテナとも呼ばれ、例えば、従来の回路基板上の金属層、特に銅層として、適切な形態で低コストで実現することができる。このようにして、コンパクトな部品を実現することで、スペースとコストを削減することができる。さらに、回路基板を必要とするマッサージ装置のすべての電子部品が、プラグの回路基板上にまとめて配置されるので、個々の部品の数を減らすことで、マッサージ装置全体の製造工数、製造コスト、複雑さを低減することができる。マッサージ装置の中に、回路基板を使った部品を追加する必要はない。
【0012】
充電電極、回路基板アンテナ、無線データ通信装置、および制御装置を回路基板の片面に配置すれば、特に簡単な構造になる。このようにして、特に、構造体の高さを低くすることができる。また、充電電極、回路基板アンテナ、無線データ通信装置、および制御装置を、回路基板の対向する二つの面に任意の組み合わせで配置してもよい。これにより、構造体の高さは高くなるが、回路基板に必要な面積は小さくなる。回路基板上の部品を巧みに配置することで、効率的かつ省スペースな構造が実現される。また、充電電極を回路基板の両面に配置することも可能であり、プラグをUSBソケットや対応する他の充電用ソケットに、すべての(両方の)向きでユーザーフレンドリーな方法で差し込むことができる。それには、制御装置のロジックで正極および負極を認識する必要がある。
【0013】
さらに有利なことに、回路基板アンテナと無線データ通信デバイスは、Bluetoohプロトコル(IEEE802.15.1準拠)、ZigBee(IEEE802.15.4準拠)、ANT、NFC(Near Field Communication)、WLAN(IEEE802.11準拠)、GSM、UTMS、LTE、5Gまたは別のモバイルデータ伝送規格に従って、無線信号を送受信するように構成されている。これにより、特に、スマートフォンやパソコンなどのさまざまな遠隔操作機器から、必要な信頼性とスピードで無線信号を送受信することが可能になる。回路基板アンテナと無線データ通信機器を5Gで通信するように設定すれば、マッサージ装置が必ずしもスマートフォンに接続されていなくても遠隔操作が可能になるというメリットがある。代わりに、プラグやマッサージ装置は、モバイルネットワークの無線セルの基地局と直接通信することができる。これにより、遠く離れた場所からでもマッサージ装置を直接制御・操作したり、他の機器と直接通信したりすることができる。プラグは、プラグまたはマッサージ装置に固有のIDを割り当てるIMカードで構成されていてもよく、マッサージ装置が使用されているときにモバイルネットワークに自動的に登録されることが好ましい。SIMカードは、物理的なSIMカードであっても、eSIM(embedded SIM)であってもよい。プラグやマッサージ装置が一意に識別できる場合、IoT(Internet of Things)への応用も可能となる。
【0014】
さらに、ケーブルが2本のストランドで構成されていることが好ましい。このケーブルは、プラグとマッサージ装置のバイブレーター本体とを接続するもので、マッサージ装置の充電時に電流を流したり、マッサージ装置を制御・作動させるための信号を伝送したりする役割を果たす。2本のストランドは互いに独立に形成され、それぞれが防水加工されていることが好ましい。これにより、伝送される信号が望ましくない影響や妨害を受けることなく、また、各ストランドが液体の侵入から確実に保護される。
【0015】
さらに、一方のストランドが、充電電極をマッサージ装置の蓄電器に接続するための少なくとも一つの電気ラインであり、他方のストランドが、制御装置をマッサージ装置の振動発生装置に接続するための信号線であることが好ましい。
【0016】
ハウジングは、生体適合性のあるプラスチックで形成されているか、または生体適合性のあるプラスチック製のシースを有することが好ましい。同様に、ケーブルは生体適合性のあるプラスチック製のシースを有することが好ましい。これにより、回路基板、回路基板アンテナ、無線データ通信装置、および制御装置などの部品や、例えばケーブルストランドとの接続部を腐食から守ることができる。また、プラグが、人体に装着して使用するマッサージ装置に適したものとなる。
【0017】
ハウジングが射出成形で作られている、または、生体適合性のあるプラスチック製のシースが射出成形で作られていることが特に好ましい。このように一体的に形成されたプラグによると、外部から干渉や加工される面積をできるだけ小さくすることができる。
【0018】
プラスチックまたはプラスチック製のシースの材質は、熱可塑性プラスチックであることが好ましく、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、または同様の特性を持つ同等のプラスチックが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、市販の潤滑剤や洗浄剤には感応せず、味や匂いも中性である。
【0019】
好ましくは、プラグの充電接点は、金属または金属合金によるコーティングを有しており、例えば、金または金合金による金メッキの形で、あるいは他の金属または金属合金による仕上げの形でコーティングされている。これにより、特に、充電接点の腐食を防ぎ、信頼性の高い電流伝送を確保することができる。
【0020】
本発明に係る、身体の一部、特に性器をマッサージするのに適した遠隔制御可能なマッサージ装置は、前述のプラグと、振動発生装置および蓄電器を有するバイブレーター本体とを備え、バイブレーター本外が、ケーブルのみでプラグに接続されている。
【0021】
このようにして、特に取り扱いが容易で、低コストで製造できるマッサージ装置が提供される。具体的には、比較的大きなスペースを必要とする振動発生装置と蓄電器のみをバイブレーター本体に設け、その他の電子部品はプラグに移設される。そのため、バイブレーター本体自体が軽量化され、扱い易くなる。バイブレーター本体に収容される部品の数が少ないため、外観デザイン、特にバイブレーター本体のサイズと輪郭が、収容される部品によって決定されることが少なくなり、異なるニーズや応用分野に柔軟に対応することができる。プラグは、多くの種類のマッサージ装置に使用することができるため、大量生産による製造コストの低下は、マッサージ装置のコストに有利な効果をもたらす。
【0022】
バイブレーター本体体は、シリコンやTPEなどの適切な熱可塑性材料で作られていることが好ましい。これらの材料は、衛生的な観点からも安全であり、心地よい感触を持っているため、体に装着したり、体内で使用するのに適している。マッサージ装置の素材は、紫外線に強く、無臭・無味であることが好ましく、それによって異なる色を使用することもできる。
【0023】
特に好ましい実施形態では、バイブレーター本体は、衝撃波バイブレーター(Stosswellenvibrator)として、または振動バイブレーター(Schwingungsvibrator)として設計されている。原理的に、本発明に係るプラグは、一般的なタイプのバイブレータすべてに使用することができる。
【0024】
好ましくは、バイブレーター本体は回路基板を含まずに構成される。これにより、回路基板を必要とする部品がすべてプラグに配置され、よりシンプルな構造で低コストに製造できるようになる。
【0025】
特に、マッサージ装置の制御システム全体をプラグに配置することができる。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照しながら以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るプラグの好ましい実施形態を示す斜視図である。
図2a図1のプラグの回路基板の好ましい実施形態を下側から見た斜視図である。
図2b図2aの回路基板を上面から見た斜視図である。
図3図1のプラグのハウジングの好ましい実施形態の斜視図である。
図4図1のプラグの作動エレメントの好ましい実施形態の斜視図である。
図5】本発明に係るマッサージ装置の好ましい実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、マッサージ装置、特にバイブレーターを、USBソケットなどの電源に接続するための、本発明に係るプラグの一実施形態の斜視図である。
【0029】
プラグ1は、平坦なプラグとして形成されており、ハウジング2と、ケーブル4とを備えている。ケーブル4は、図5を参照して後述するように、ハウジング2から出ており、プラグ1をバイブレーター本体(図示せず)に接続している。プラグ1は、プラグ1の長手方向の上面2に互いに平行に配置された充電電極6を有しており、USB-A接続に対応するように形成されている。図示した好ましい実施形態のプラグ1は、マッサージ装置を作動させるための作動エレメント8をさらに備えている。
【0030】
作動エレメント8に代えて、あるいは作動エレメントに加えて、ハウジング2の表面に、例えば、膨らみのある形状のグリップ領域を設けてもよい。グリップ領域は、プラグ1が対応するUSBソケットに挿入されるとき、またはUSBソケットから取り外されるときの取り扱いを容易にする役割を果たす。グリップ領域は、プラグ1を容易に掴むことができ、良好な感触が得られるように形成されている。そのため、グリップ領域は、例えば、リブ状になっていたり、ユーザーがよく握れるような突起があったりする。オプションとして、グリップ領域は、ハウジングのエッジやリムを含む側面にも広がっていてもよい。
【0031】
図1からさらにわかるように、好ましい実施形態では、ケーブル4は、プラグ1とバイブレーター本体との間で互いに独立して延びる2本のストランド10からなる。2本のストランド10のそれぞれがハウジング2のそれぞれの開口部から出る形態、または、ケーブル4がハウジング2の領域で1本のストランドのみで構成され、そのストランドがハウジング2から出た後に2本のストランド10に分割される形態が考えられる。この場合、ケーブル4とハウジング2との間の接続をシールするために必要な労力が軽減される。もちろん、ケーブル4を全体で1本のストランドで構成して、プラグ1とバイブレーター本体との間のすべての導線をシースに収容することも可能である。
【0032】
本発明に係るプラグ1の個々の構成要素について、図2ないし図4を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0033】
本発明に係るプラグ1は、制御装置と、無線データ通信装置と、無線データ通信装置の無線信号を送受信するための回路基板アンテナとを備えており、これらはハウジング2内に収容され、好ましくは共通の回路基板上に配置される。
【0034】
図2aは、さまざまな部品が実装および相互に接続された回路基板12の斜視図である。図2aでは、回路基板12の下面を見ることができる。回路基板12上には、二つの充電電極6が長手方向に平行に実装されている。二つの充電電極6の寸法、特に距離と長さは、マッサージ装置を充電するためにプラグ1を対応するUSBソケットに差し込むことができるようになっている。充電電極6と2本のケーブルストランド10の端子とは、既知の方法で、好ましくは回路基板12の対応する凹部で接触している(図2aおよび図2bには示されていない)。ケーブル4が2本のストランド10で形成されている好ましい実施形態では、第1のストランドは、端部が正の充電電極に接続された撚り線を有する単純なケーブルである。ケーブル4の第2のストランド10は、同軸ケーブルとして形成されており、外部導体がグランドとしての充電電極6に接続されている。
【0035】
回路基板12の下面には、さらに作動スイッチ14が配置されており、この作動スイッチ14は、図1のプラグ1の組み立て状態において、作動エレメント8の作動部分に隣接している。ユーザーが作動エレメント8を押すことで、作動スイッチ14が作動する。
【0036】
図2bは、回路基板12の上側の斜視図であり、回路基板アンテナ16は、公知の技術を用いて導電層として回路基板12に実装されている。このような回路基板アンテナ16は、コンパクトに設計されていることが特徴である。本発明では、回路基板アンテナ16が、プラグ1内においてプリント回路や無線データ通信装置の構成要素から離れて配置されおり、これにより、回路基板アンテナ16の高周波特性による二次的な励起、ひいては干渉を低減することができる。
【0037】
回路基板アンテナ16のアンテナ線の形状は、良好な放射特性、受信および送信の高効率、および十分な帯域幅のために最適化されている。なお、回路基板アンテナ16は、図2bに模式的に示されているだけであり、所定の要件に適応して当業者に知られている任意の方法で回路基板12上に配置またはプリントされてもよい。
【0038】
また、回路基板12上には、無線データ通信装置18と制御装置20が配置されており、これらはよく知られた方法で回路基板12上にプリントされた導電路と接触している。無線データ通信装置18は、回路基板アンテナ16から受信した信号を変換して、制御装置20に提供する。一方、制御装置20は、受信したコマンドに応じて、マッサージ装置の振動発生装置を制御する。制御装置20と無線データ通信装置18は、マッサージ装置の蓄電器から電力を供給され、遠隔操作装置、例えばスマートフォン、PC、または同様のモバイル操作プラットフォームによる制御のための無線信号が供給される。
【0039】
制御装置20は、プログラム・シーケンスを記憶するためのデータ記憶装置をさらに備えていてもよく、これにより、内部または外部で作成された振動シーケンスでマッサージ装置をプログラムし、振動シーケンスを記憶し、それに応じてマッサージ装置を制御することができる。この場合、制御信号はデータ記憶装置から提供される。リモコンによる直接制御も可能である。同様に、作動エレメント8を介した追加的な直接制御も可能である。
【0040】
したがって、制御装置20は、回路基板12にプリントされた導電路によって、作動スイッチ14と無線データ通信装置18の両方に接続されている。制御装置20から出力された制御信号は、回路基板12にプリントされた導電路によって、一方のストランド10と、マッサージ装置の振動発生装置とに伝達される。無線データ通信装置18は、プリントされた導電路によって、少なくとも回路基板アンテナ16に接続されている。既述の実施形態では、制御装置20は、同軸ストランドに、例えばコアとも呼ばれる同軸ケーブルの内部導体に電気的に接続されている。ここで説明した電気的接続は、接着接合やその他の適切な接触技術で行うことも可能である。
【0041】
回路基板12に部品を配置する構造により、大量製造された市販の標準的な部品を使用することができ、コストを削減することができる。さらに、通常は回路基板に配置される部品をプラグ1に集約することで、バイブレーター本体にさらに回路基板を設ける必要がなくなる。
【0042】
図3は、ハウジング2の斜視図である。ハウジング2は、好ましくは射出成形され、理想的には回路基板12に直接成形される。ハウジング2は平坦部22を有しており、その上部には、回路基板12上の少なくとも充電電極6を電源との接触が可能なように十分に露出させるための開口部が設けられている。ハウジング2の平坦部22は、その中に含まれる回路基板12を含めて、従来のUSBソケットに挿入可能に構成されている。回路基板12上に配置された他の部品のために十分な設置スペースを確保するために、ハウジング2は、平坦部22に隣接してより大きな寸法を有してもよい。
【0043】
好ましくは、ハウジング2は、回路基板12に射出成形され、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの熱可塑性プラスチック材料で作られている。あるいは、ハウジング2は、熱可塑性材料でできた適当なシースで覆われていてもよい。いずれの場合も、可能な限り密閉されたハウジング、つまり液密で、電子部品を確実に収容することができ、充電電極6のみが露出し、その他の点では十分な密閉性が確保されるハウジングが実現される。
【0044】
ハウジング2は、長さL、幅B、高さHを有しており、長さが幅よりも大きくなっている。好ましくは、長さと高さの比が10:1よりも小さく、好ましくは8:1よりも小さく、より好ましくは6:1以下である。さらに好ましくは、長さと幅の比が10:1よりも小さく、好ましくは7:1よりも小さく、より好ましくは3:1以下である。例えば、ハウジングの大きさは、最大で50mm×30mm×20mm、好ましくは最大で40mm×20mm×10mm、より好ましくは最大で35m×15mm×6mmである。
【0045】
ハウジング2の上面24には、さらなる開口部26が設けられていてもよく、この開口部26は、作動エレメント8を収容する接触部となっている。作動エレメント8は、図4を参照してより詳細に説明するが、好ましくは、ハウジング2が装着される前に回路基板12上に配置される。
【0046】
図4の作動エレメント8は、好ましくは、少なくとも部分的に、柔らかいプラスチックで作られている。作動エレメント8は、作動エレメント8の本体30に対して高くなっている接触領域28を有している。好ましくは、本体30の表面は、ハウジング2の内側にポジティブロックされて接触し、接触領域28は、ハウジング2の上面24の開口部26内に出っ張っている。作動エレメントの接触領域28は、ハウジング2の開口部26の上面を超えて盛り上がっていてもよい。これにより、プラグ1がユーザーから見えない場合でも、確実に作動させることができる。接触領域28は、作動エレメント8を作動させるための最適な圧力ポイントをユーザーに触覚的に知らせるための手段、特に図4に接触領域28の円形部分で示したような盛り上り(Flervorhebungen)を含んでいてもよい。接触領域28の下側では、作動エレメント8は、接触領域28に圧力が加えられると、回路基板12上の作動スイッチ14を作動させるように構成されている。このために、例えば、作動エレメント8に突起を設けてもよい。それ以外に、作動エレメント8は、ハウジング2に確実に取り付けられるように構成されており、例えば、回路基板12およびハウジング2に接続するための開口部32またはラッチ34を含んでいる。
【0047】
図5は、本発明に係るマッサージ装置40の好ましい実施形態の斜視図である。マッサージ装置40は、図1ないし図4を参照して説明したプラグ1に接続されるマッサージ部分またはバイブレーター本体42を有する。ケーブル4は、プラグ1のハウジング2とバイブレーター本体42との間に延びており、ハウジング2からのケーブル4の出口、またはバイブレーター本体42からのケーブル4の出口は、それぞれ防液性を有するように形成されている。これは、適当なシールによって、またはケーブル4が、ハウジング2とバイブレーター本体42の各隣接領域で共通のシースを有することによって行うことができる。また、ケーブル4の端部は、ハウジング2およびバイブレーター本体42に接着されていてもよく、接着剤がケーブル4の出口領域でシール効果を発揮する。
【0048】
バイブレーター本体42は、当業者には一般的に理解されるように、互いに機能的に結合または電気的に接続された振動発生装置および蓄電器を備えている。なお、振動発生装置および蓄電器は、バイブレーター本体42によってオーバーモールドされたり、バイブレーター本体42内に埋め込まれたりするなどして、バイブレーター本体42に固定的に含まれていてもよい。振動発生装置と蓄電器は、バイブレーター本体42から取り外し可能な構造であってもよい。そのためには、バイブレーター本体42の適当な開口部に挿入・離脱可能なホルダーに収納する必要がある。ホルダーとバイブレーター本体42の間の適切なシールを確保するように注意する必要がある。振動発生装置で発生した振動は、ホルダーに伝達され、ホルダーからバイブレーター本体に伝達される。
【0049】
振動発生装置は、例えば、軸に偏心して着座するアンバランスを有する電動モーターで構成されており、制御装置20からの信号に応じてバイブレーター本体42を振動させて揺動させる。蓄電器は、好ましくは、蓄電池のような再充電可能な蓄電器である。
【0050】
本発明の実施形態では、もはやバイブレーター本体42には、振動発生装置と蓄電器のみを収容すれば十分である。残りの構成要素、すなわち制御装置20、無線データ通信装置18、回路基板アンテナ12、および充電電極6は、プラグ1内に配置されている。バイブレーター本体42に配置する部品の数が少ないため、その形状をより自由かつ柔軟に設計することができ、ユーザーのニーズに合わせることができる。さらに、回路基板上に配置される部品が、保護された状態でハウジング2に収容されている共通の回路基板12上に配置されていることから、より費用対効果の高い生産が可能となる。
【0051】
なお、図5は、マッサージ装置40を単に例示したものであり、バイブレーター本体42とプラグ1とのサイズの関係は、必ずしも縮尺通りではない。ケーブル4の長さは、バイブレーター本体の構成に応じて短くしたり長くしたりすることができ、これは特に、使用時にバイブレーター本体42がユーザーの体に完全に受け止められるかどうかによる。
【0052】
バイブレーター本体42の形状は、カスタマーの性玩具に対する要望にできるだけ応えるように、多様に形成することができる。このような形状の例としては、さまざまな長さや厚さの従来の女性用バイブレーターの形状、クリトリス刺激装置を側面に取り付けたものや取り付けていないもの、小型の振動アタッチメント、リング状のアタッチメント、カップル用バイブレーター、男性用バイブレーター、ペニスリングアタッチメント、アナル用アタッチメント、ラブボールなどがある。また、振動アタッチメントは、衝撃波バイブレーターであってもよい。プラグ1は、基本的に、あらゆるタイプのバイブレーターに使用することができる。
【0053】
本発明の主題は、遠隔制御可能なマッサージ装置用のプラグ、およびそのようなマッサージ装置を提供することであり、これにより、製造コストの低減、信頼性の高い耐流体機能、蓄電器の容易な充電、および現在の無線データ伝送技術を用いた柔軟な制御が可能になる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5