IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JOLEDの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】表示パネルおよび表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20220427BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220427BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220427BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220427BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G09F9/30 348A
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 308A
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020565175
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2020000273
(87)【国際公開番号】W WO2020145296
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2019001931
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石山 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 毅裕
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-145320(JP,A)
【文献】特開2017-182987(JP,A)
【文献】特開2018-66819(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108054188(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106449695(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107706214(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0218305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
G09F9/30-9/46
H01L21/336
27/32
29/786
51/50
H05B33/00-33/28
45/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項12】
複数の前記TFT回路と電気的に接続された複数の実装端子と、
複数の前記実装端子と前記駆動部とに接合されたFPC( Flexible Printed Circuits)と
を更に備え、
前記段差部は、前記無機膜のうち、各前記実装端子と非対向の位置に形成されている
請求項11に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示パネルおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子などの自発光素子を用いた表示パネルでは、自発光素子の駆動にTFT(thin-film-transistor)が用いられる。表示パネルの額縁部分には、TFT由来の無機膜が存在している(例えば、下記の特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-37798号公報
【文献】特開2007-227875号公報
【文献】特開2014-220489号公報
【文献】特開2003-195789号公報
【文献】特開2010-224426号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、上述した表示パネルにおいて、可撓性の基板を用いることで、表示パネルに可撓性を持たせることが可能である。しかし、表示パネルに可撓性を持たせた場合、表示パネルを持ち運んだり、意図的に曲げたりしたときに、表示パネルの額縁部分の無機膜にクラックが生じやすい。無機膜にクラックが生じると、そのクラックを介して外部から水分が侵入し、滅点などの表示不良が生じるおそれがある。従って、無機膜に生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することの可能な表示パネルおよび表示装置を提供することが望ましい。
【0005】
本開示の一実施形態に係る第1の表示パネルは、可撓性基板と、可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、第1主面と複数の自発光素子との間に設けられ、自発光素子を駆動する複数のTFT回路とを備えている。第1の表示パネルは、複数のTFT回路と複数の自発光素子との間に設けられ、各TFT回路を覆っており、さらに、可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する第1無機膜と、各自発光素子を覆う第2無機膜と、第2無機膜を覆うとともに、第1無機膜のうち少なくとも、第2無機膜の端縁と接する箇所を覆う樹脂層とを備えている。
【0006】
本開示の一実施形態に係る第1の表示装置は、第1の表示パネルと、第1の表示パネルを駆動する駆動部とを備えている。
【0007】
本開示の一実施形態に係る第1の表示パネルおよび第1の表示装置では、可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部が、各TFT回路を覆う第1無機膜に設けられている。これにより、例えば、第1の表示パネルを持ち運んだり、意図的に曲げたりした場合に、第1無機膜の端縁にクラックが生じたときには、段差部によって、クラックの延伸が抑制される。また、本開示の一実施形態に係る第1の表示パネルおよび第1の表示装置では、各自発光素子を覆う第2無機膜が樹脂層によって覆われている。さらに、第1無機膜のうち少なくとも、第2無機膜の端縁と接する箇所も樹脂層によって覆われている。これにより、第1無機膜の端縁に生じたクラックが段差部を超えて延伸してきた場合であっても、第1無機膜および第2無機膜のうち樹脂層によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層によって抑制される。
【0008】
本開示の一実施形態に係る第2の表示パネルは、可撓性基板と、可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、第1主面と複数の自発光素子との間に設けられ、自発光素子を駆動する複数のTFT回路とを備えている。第2の表示パネルは、さらに、可撓性基板と複数の前記TFT回路との間に設けられ、第1主面を覆っており、さらに、可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する無機膜と、無機膜のうち、部分的に薄くなっている箇所以外の箇所を覆う樹脂層とを備えている。
【0009】
本開示の一実施形態に係る第2の表示装置は、第2の表示パネルと、第2の表示パネルを駆動する駆動部とを備えている。
【0010】
本開示の一実施形態に係る第2の表示パネルおよび第2の表示装置では、可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部が、可撓性基板の第1主面を覆う無機膜に設けられている。これにより、例えば、第2の表示パネルを持ち運んだり、意図的に曲げたりした場合に、無機膜の端縁にクラックが生じたときには、段差部によって、クラックの延伸が抑制される。また、本開示の一実施形態に係る第2の表示パネルおよび第2の表示装置では、無機膜のうち、部分的に薄くなっている箇所以外の箇所が樹脂層によって覆われている。これにより、無機膜の端縁に生じたクラックが段差部を超えて延伸してきた場合であっても、無機膜のうち樹脂層によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層によって抑制される。
【0011】
本開示の一実施形態に係る第1の表示パネルおよび第1の表示装置によれば、クラックの延伸を段差部および樹脂層によって抑制するようにしたので、第1の無機膜に生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0012】
本開示の一実施形態に係る第2の表示パネルおよび第2の表示装置によれば、クラックの延伸を段差部および樹脂層によって抑制するようにしたので、無機膜に生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0013】
なお、上記内容は本開示の一例である。本開示の効果は、上述したものに限らず、他の異なる効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る表示装置の概略構成例を表す図である。
図2図1の表示パネルとコントローラおよびドライバとの接続態様例を表す図である。
図3図1の表示装置の各画素の回路構成例を表す図である。
図4図2のA-A線での断面構成例を表す図である。
図5図2のB-B線での断面構成例を表す図である。
図6図4の段差部を拡大して表す図である。
図7図6の段差部の設計モデルについて説明する図である。
図8A図2の表示パネルの製造過程の一例を表す図である。
図8B図8Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図8C図8Bに続く製造過程の一例を表す図である。
図8D図8Cに続く製造過程の一例を表す図である。
図8E図8Dに続く製造過程の一例を表す図である。
図8F図8Eに続く製造過程の一例を表す図である。
図9A図2の表示パネルの製造過程の一例を表す図である。
図9B図9Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図9C図9Bに続く製造過程の一例を表す図である。
図9D図9Cに続く製造過程の一例を表す図である。
図9E図9Dに続く製造過程の一例を表す図である。
図9F図9Eに続く製造過程の一例を表す図である。
図9G図9Fに続く製造過程の一例を表す図である。
図9H図9Gに続く製造過程の一例を表す図である。
図10A図2の表示パネルの製造過程の一例を表す図である。
図10B図10Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図10C図10Bに続く製造過程の一例を表す図である。
図11図2のA-A線での断面構成の一変形例を表す図である。
図12図2のA-A線での断面構成の一変形例を表す図である。
図13図2のA-A線での断面構成の一変形例を表す図である。
図14図2のA-A線での断面構成の一変形例を表す図である。
図15図2のA-A線での断面構成の一変形例を表す図である。
図16図4図11図15の段差部の一変形例を表す図である。
図17図4の断面構成の一変形例を表す図である。
図18図12の断面構成の一変形例を表す図である。
図19図14の断面構成の一変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(表示装置)
2.変形例(表示装置)
【0016】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る表示装置1の概略構成例を表したものである。表示装置1は、例えば、表示パネル10、コントローラ20およびドライバ30を備えている。図2は、表示パネル10とコントローラ20およびドライバ30との接続態様例を表したものである。図3は、表示装置1に設けられた各画素11の回路構成例を表したものである。
【0017】
表示パネル10は、行列状に配置された複数の画素11を有している。複数の画素11は、表示パネル10における表示領域10Aに設けられている。表示領域10Aは、表示パネル10の映像表示面に相当する。表示パネル10において、表示領域10Aの周囲には、額縁領域10Bが設けられている。額縁領域10Bは、表示領域10Aを囲む環形状となっており、額縁領域10Bの一辺には、複数の実装端子53が設けられている。複数の実装端子53は、複数の画素11と、FPC( Flexible Printed Circuits)52とに電気的に接続されている。コントローラ20およびドライバ30は、制御基板51に実装されており、FPC52を介して、表示パネル10(複数の画素11)と電気的に接続されている。コントローラ20およびドライバ30は、外部から入力された映像信号Dinに基づいて、表示パネル10(複数の画素11)を駆動する。
【0018】
(表示パネル10)
表示パネル10は、コントローラ20およびドライバ30によって各画素11がアクティブマトリクス駆動されることにより、外部から入力された映像信号Dinに基づく画像を表示領域10Aに表示する。表示パネル10は、行方向に延在する複数の走査線WSLと、列方向に延在する複数の信号線DTLおよび複数の電源線DSLと、行列状に配置された複数の画素11とを有している。
【0019】
走査線WSLは、各画素11の選択に用いられるものであり、各画素11を所定の単位(例えば画素行)ごとに選択する選択パルスを各画素11に供給するものである。信号線DTLは、映像信号Dinに応じた信号電圧の、各画素11への供給に用いられるものであり、信号電圧を含むデータパルスを各画素11に供給するものである。電源線DSLは、各画素11に電力を供給するものである。
【0020】
表示パネル10に設けられた複数の画素11には、赤色光を発する画素11、緑色光を発する画素11、および青色光を発する画素11が含まれている。赤色光を発する画素11、緑色光を発する画素11、および青色光を発する画素11は、カラー画像の表示単位である表示画素を構成している。なお、各表示画素には、例えば、さらに、他の色(例えば、白色や、黄色など)を発する画素11が含まれていてもよい。また、各表示画素には、例えば、同色の複数の画素11(例えば、青色光を発する2つの画素11)が含まれていてもよい。
【0021】
各信号線DTLは、後述の水平セレクタ31の出力端に接続されている。各画素列には、例えば、複数の信号線DTLが1本ずつ、割り当てられている。各走査線WSLは、後述のライトスキャナ32の出力端に接続されている。各画素行には、例えば、複数の走査線WSLが1本ずつ、割り当てられている。各電源線DSLは、電源の出力端に接続されている。各画素行には、例えば、複数の電源線DSLが1本ずつ、割り当てられている。
【0022】
各画素11は、画素回路11-1と、有機電界発光素子11-2とを有している。有機電界発光素子11-2の構成については、後に詳述する。
【0023】
画素回路11-1は、有機電界発光素子11-2の発光・消光を制御する。画素回路11-1は、書込走査によって各画素11に書き込んだ電圧を保持する機能を有している。画素回路11-1は、例えば、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2および保持容量Csを含んで構成されている。
【0024】
書き込みトランジスタTr2は、駆動トランジスタTr1のゲートに対する、映像信号Dinに対応した信号電圧の印加を制御する。具体的には、書き込みトランジスタTr2は、信号線DTLの電圧をサンプリングするとともに、サンプリングにより得られた電圧を駆動トランジスタTr1のゲートに書き込む。駆動トランジスタTr1は、有機電界発光素子11-2に直列に接続されている。駆動トランジスタTr1は、有機電界発光素子11-2を駆動する。駆動トランジスタTr1は、書き込みトランジスタTr2によってサンプリングされた電圧の大きさに応じて有機電界発光素子11-2に流れる電流を制御する。保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート-ソース間に所定の電圧を保持するものである。保持容量Csは、所定の期間中に駆動トランジスタTr1のゲート-ソース間電圧を一定に保持する役割を有する。なお、画素回路11-1は、上述の2Tr1Cの回路に対して各種容量やトランジスタを付加した回路構成となっていてもよいし、上述の2Tr1Cの回路構成とは異なる回路構成となっていてもよい。
【0025】
各信号線DTLは、後述の水平セレクタ31の出力端と、書き込みトランジスタTr2のソースまたはドレインとに接続されている。各走査線WSLは、後述のライトスキャナ32の出力端と、書き込みトランジスタTr2のゲートとに接続されている。各電源線DSLは、電源回路と、駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインに接続されている。
【0026】
書き込みトランジスタTr2のゲートは、走査線WSLに接続されている。書き込みトランジスタTr2のソースまたはドレインが信号線DTLに接続されている。書き込みトランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子が駆動トランジスタTr1のゲートに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインが電源線DSLに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち電源線DSLに未接続の端子が有機電界発光素子11-2の陽極21に接続されている。保持容量Csの一端が駆動トランジスタTr1のゲートに接続されている。保持容量Csの他端が駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち有機電界発光素子11-2側の端子に接続されている。
【0027】
駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT)により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいし、スタガ構造(トップゲート型)でもよく、特に限定されない。
【0028】
(ドライバ30)
ドライバ30は、例えば、水平セレクタ31およびライトスキャナ32を有している。水平セレクタ31は、例えば、制御信号の入力に応じて(同期して)、コントローラ20から入力されたアナログの信号電圧を、各信号線DTLに印加する。ライトスキャナ32は、複数の画素11を所定の単位ごとに走査する。
【0029】
(コントローラ20)
次に、コントローラ20について説明する。コントローラ20は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号Dinに対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号に基づいて、信号電圧を生成する。コントローラ20は、例えば、生成した信号電圧を水平セレクタ31に出力する。コントローラ20は、例えば、映像信号Dinから得られた制御信号に応じて(同期して)、ドライバ30内の各回路に対して制御信号を出力する。
【0030】
次に、図4図5を参照して、表示パネル10の断面構成について説明する。図4は、図3のA-A線での断面構成例を表したものである。図5は、図3のB-B線での断面構成例を表したものである。
【0031】
表示パネル10は、可撓性基板41と、可撓性基板41の表面41A(第1主面)側に複数の有機電界発光素子44Aとを有している。可撓性基板41は、例えば、樹脂製のフィルムやシートによって構成されている。可撓性基板41は、例えば、ポリイミド(PI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂によって構成されている。有機電界発光素子44Aは、上述の有機電界発光素子11-2に相当する。
【0032】
表示パネル10は、可撓性基板41の表面41Aと複数の有機電界発光素子44Aとの間に設けられたTFT回路43Aを有している。TFT回路43Aは、有機電界発光素子44Aを駆動する。TFT回路43Aは、上述の画素回路11-1に相当する。
【0033】
表示パネル10は、複数のTFT回路43Aと複数の有機電界発光素子44Aとの間に設けられた無機絶縁膜43B(第1無機膜)を有している。無機絶縁膜43Bは、各TFT回路43Aを覆っている。無機絶縁膜43Bは、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料によって構成されている。
【0034】
無機絶縁膜43Bは、可撓性基板41の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部43Cを有している。無機絶縁膜43Bにおいて、可撓性基板41の端縁と対向する箇所は、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所よりも薄くなっている。可撓性基板41の端縁と対向する箇所と、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所との厚さの違いによって、段差部43Cが形成されている。段差部43Cは、額縁領域10Bに形成されている。段差部43Cは、少なくとも、各実装端子53と非対向の位置に形成されており、例えば、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺を除く3辺に形成されている。各実装端子53は、無機絶縁膜43Bの表面のうち、段差部43Cの形成されていない平坦な領域に形成されており、無機絶縁膜43Bの表面に露出している。なお、表示パネル10が、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺と直交する方向にだけ折り曲げ可能に構成されている場合には、段差部43Cは、例えば、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺と直交する2辺に形成されている。
【0035】
表示パネル10は、各有機電界発光素子44Aを覆う無機絶縁膜45(第2無機膜)と、無機絶縁膜45を覆うとともに、無機絶縁膜43Bのうち少なくとも、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所を覆う樹脂層46とを有している。無機絶縁膜45は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料によって構成されている。樹脂層46の端縁が、段差部43C上に形成されていてもよい。このとき、樹脂層46は、無機絶縁膜45の表面全体に接するとともに、無機絶縁膜43Bのうち、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所から段差部43Cにかけて接している。樹脂層46は、接着層としても機能するものであり、例えば、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などによって構成されている。樹脂層46は、例えば、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などによって構成されていてもよい。
【0036】
表示パネル10において、複数の有機電界発光素子44Aは、開口規定絶縁部44Bによって相互に分離され、輪郭が規定された複数の有機電界発光素子44Aが、画素11に対応して1つずつ配置されている。開口規定絶縁部44Bと、複数の有機電界発光素子44Aとは、同一面内に形成されており、EL素子層44を構成している。
【0037】
表示パネル10は、可撓性基板41と、複数のTFT回路43Aとの間にUCバリア層42を有している。UCバリア層42は、可撓性基板41の表面41A全体を覆っている。UCバリア層42は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料によって構成された無機絶縁膜である。UCバリア層42は、単層であってもよいし、互いに異なる材料が積層された積層体であってもよい。
【0038】
表示パネル10は、可撓性基板41と対向配置され、樹脂層46に接する封止層47を有している。封止層47は、例えば、エポキシ樹脂や、ビニル系樹脂などの樹脂材料によって形成されている。封止層47に対して、光学的な機能が付与されていてもよい。封止層47は、例えば、偏光板であってもよい。
【0039】
表示パネル10は、可撓性基板41の裏面41B側に、樹脂層48および補強層49を可撓性基板41の裏面41B側からこの順に有している。樹脂層48は、可撓性基板41の裏面41B全体を覆っている。樹脂層48は、例えば、可撓性基板41と補強層49とを互いに接着する接着層として機能するものであり、例えば、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などによって構成されている。補強層49は、表示パネル10の強度を保つ補強部材であり、かつ、表示パネル10の背面を保護する保護部材でもある。補強層49は、例えば、PETやPIなどの樹脂材料、または、Al、Cu、SUSなどの金属材料などによって形成されている。
【0040】
図6は、段差部43Cを拡大して表したものである。無機絶縁膜43Bにおいて、可撓性基板41の端縁と対向する箇所の厚さをtbとし、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所の厚さをtaとする。また、無機絶縁膜43Bのうち無機絶縁膜45の端縁と接する箇所と、無機絶縁膜43Bの端縁との間の長さをWaとし、段差部43Cと、無機絶縁膜43Bの端縁との間の長さをWbとする。このとき、tbは、taの3%以上50%以下の範囲内の大きさとなっていることが好ましい。また、Waは、狭額縁のパネルにおいて実用的な範囲内となっており、例えば、1mm以上10mm以下となっている。Wbの下限は、初期に発生したクラックが段差部43Cに到達しない最低限の大きさとなっており、例えば、0.1mmとなっている。Wbの上限は、Waとして採り得る最大値の半分の大きさとなっており、例えば、5mmとなっている。
【0041】
図7は、段差部43Cの設計モデルについて説明したものである。図7(A)に示したように、板状の物体を両側から力Fで引っ張った場合に、引張方向に直交する断面にかかる応力σ0は、F/(Bt)で表される。ここで、Bは、物体の幅であり、tは、物体の厚さである。また、図7(B)に示したように、物体に、初期亀裂として楕円状の孔が形成されている場合に、物体を両側から力Fで引っ張るとする。このとき、楕円状の孔の長手方向の長さを2aとし、楕円状の孔の短手方向の長さを2bとし、楕円状の孔の先端の曲率半径をρ(=b2/a)とすると、楕円状の孔の先端にかかる応力σmaxは、σ0×(1+2(a/ρ)1/2)で表される。
【0042】
ここで、σmaxは、1/tに比例することから、無機絶縁膜43Bにおいて、可撓性基板41の端縁と対向する箇所に楕円状の孔が形成されたときに楕円状の孔の先端にかかる応力σmax1と、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所に楕円状の孔が形成されたときに楕円状の孔の先端にかかる応力σmax2とは、以下の関係となる。
σmax1/σmax2=t2/t1
【0043】
従って、膜に加わる応力がある限度を超えると亀裂が生じると考えると、例えば、taをtbの2倍にした場合には、無機絶縁膜43Bにおいて、可撓性基板41の端縁と対向する箇所と比べて、無機絶縁膜43Bにおいて、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所での亀裂の出来にくさを、2倍にすることが可能となる。
【0044】
[製造方法]
次に、表示パネル10の製造方法について説明する。図8A図8Fは、表示パネル10の製造過程の一例を表す断面図である。
【0045】
まず、大判の支持ガラス100上に、可撓性基板41、UCバリア層42およびTFT層43を形成する(図8A)。続いて、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに、EL素子層44および無機絶縁膜45を形成する(図8A)。次に、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに、無機絶縁膜45に対して、樹脂層46を介して封止層47を貼り合わせる(図8B)。その後、大判の支持ガラス100を、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに分断する(図8C(a),図8C(b))。なお、図8C(a)には、図2のA-A線に対応する箇所での断面構成例が表されており、図8C(b)には、図2のB-B線に対応する箇所での断面構成例が表されている。
【0046】
次に、封止層47をマスクとして、TFT層43における無機絶縁膜43Bを選択的にエッチングする(図8D(a),図8D(b))。これにより、無機絶縁膜43Bに対して段差部43Cを形成する。段差部43Cの形成時(すなわち、封止層47をマスクとした無機絶縁膜43Bの選択的エッチング時)において、無機絶縁膜43Bを所望の厚さtbで残存させるために、例えば、予め取得した無機絶縁膜43Bのエッチングレートからエッチング時間を算定して無機絶縁膜43Bのエッチングを行う。このとき、各実装端子53の表面が露出する。次に、複数の実装端子53に対してFPC52を実装する(図8E(a),図8E(b))。そして、最後に、支持ガラス100を剥離させた後、可撓性基板41の裏面に補強層49を樹脂層48で貼合する(図8F(a),図8F(b))。このようにして、本実施の形態に係る表示パネル10が製造される。
【0047】
表示パネル10は、上記以外の方法で製造することが可能である。図9A図9Hは、表示パネル10の製造過程の一例を表す断面図である。
【0048】
まず、大判の支持ガラス100上に、可撓性基板41、UCバリア層42およびTFT層43を形成する(図9A)。続いて、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに、EL素子層44および無機絶縁膜45を形成する(図9A)。次に、無機絶縁膜45を含む表面全体に対して、樹脂層130を介して支持フィルム120を貼り合わせた後、支持ガラス100を剥離させた(図9B)。次に、可撓性基板41の裏面に補強層49を樹脂層48で貼合する(図9C)。
【0049】
次に、支持フィルム120および樹脂層130を剥離させた後(図9D)、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに、無機絶縁膜45に対して、樹脂層46を介して封止層47を貼り合わせる(図9E)。次に、封止層47をマスクとして、TFT層43における無機絶縁膜43Bを選択的にエッチングする(図9F)。これにより、無機絶縁膜43Bに対して段差部43Cを形成する。このとき、各実装端子53の表面が露出する。次に、可撓性基板41を、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに分断する(図9G(a),図9G(b))。なお、図9G(a)には、図2のA-A線に対応する箇所での断面構成例が表されており、図9G(b)には、図2のB-B線に対応する箇所での断面構成例が表されている。そして、最後に、複数の実装端子53に対してFPC52を実装する(図9H(a),図9H(b))。このようにして、本実施の形態に係る表示パネル10が製造される。
【0050】
表示パネル10は、上記以外の方法で製造することが可能である。図10A図10Cは、表示パネル10の製造過程の一例を表す断面図である。
【0051】
まず、図9A図9Cに記載のプロセスと同様のプロセスを実施する。次に、可撓性基板41を表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに分断する(図10A(a),図10A(b))。なお、図10A(a)には、図2のA-A線に対応する箇所での断面構成例が表されており、図10A(b)には、図2のB-B線に対応する箇所での断面構成例が表されている。次に、支持フィルム120および樹脂層130を剥離させた後(図10B(a),図10B(b))、表示パネル10の大きさに対応する領域ごとに、無機絶縁膜45に対して、樹脂層46を介して封止層47を貼り合わせる(図10C(a),図10C(b))。
【0052】
次に、封止層47をマスクとして、TFT層43における無機絶縁膜43Bを選択的にエッチングする(図9G(a),図9G(b))。これにより、無機絶縁膜43Bに対して段差部43Cを形成する。このとき、各実装端子53の表面が露出する。そして、最後に、複数の実装端子53に対してFPC52を実装する(図9H(a),図9H(b))。このようにして、本実施の形態に係る表示パネル10が製造される。
【0053】
[効果]
次に、本実施の形態に係る表示パネル10および表示装置1の効果について説明する。
【0054】
有機EL素子などの自発光素子を用いた表示パネルでは、自発光素子の駆動にTFTが用いられる。表示パネルの額縁部分には、TFT由来の無機膜が存在している。ところで、このような表示パネルにおいて、可撓性の基板を用いることで、表示パネルに可撓性を持たせることが可能である。しかし、表示パネルに可撓性を持たせた場合、表示パネルを持ち運んだり、意図的に曲げたりしたときに、表示パネルの額縁部分の無機膜にクラックが生じやすい。無機膜にクラックが生じると、そのクラックを介して外部から水分が侵入し、滅点などの表示不良が生じるおそれがある。
【0055】
一方、本実施の形態では、可撓性基板41の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部43Cが、各TFT回路43Aを覆う無機絶縁膜43Bに設けられている。これにより、例えば、表示パネル10を持ち運んだり、意図的に曲げたりした場合に、無機絶縁膜43Bの端縁にクラックが生じたときには、段差部43Cによって、クラックの延伸が抑制される。また、本実施の形態では、各有機電界発光素子44Aを覆う無機絶縁膜45が樹脂層46によって覆われている。さらに、無機絶縁膜43Bのうち少なくとも、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所も樹脂層46によって覆われている。これにより、無機絶縁膜43Bの端縁に生じたクラックが段差部43Cを超えて延伸してきた場合であっても、無機絶縁膜43Bおよび無機絶縁膜45のうち樹脂層46によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層46によって抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる
【0056】
また、本実施の形態では、樹脂層46の端縁が、段差部43C上に形成されている。このとき、樹脂層46は、無機絶縁膜45の表面全体に接するとともに、無機絶縁膜43Bのうち、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所から段差部43Cにかけて接している。これにより、無機絶縁膜43Bの端縁に生じたクラックが段差部43Cを超えて延伸してきた場合であっても、無機絶縁膜43Bおよび無機絶縁膜45のうち樹脂層46によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層46によって抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる
【0057】
また、本実施の形態では、段差部43Cは、少なくとも、各実装端子53と非対向の位置に形成されている。このように、表示パネル10のうち意図的な曲げが想定されていない箇所にまで段差部43Cを設けないようにすることにより、各実装端子53を平坦な箇所に設けることができる。その結果、各実装端子53に対する、FPC52の接続容易性を確保することができる。
【0058】
<2.変形例>
以下に、上記実施の形態に係る表示パネル10の変形例について説明する。
【0059】
[変形例A]
図11は、図4のA-A線での断面構成の一変形例を表したものである。上記実施の形態において、無機絶縁膜43Bのうち、段差部43Cおよびその近傍が、樹脂層46で覆われておらず、露出していてもよい。このようにした場合であっても、樹脂層46は、無機絶縁膜43Bのうち少なくとも、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所を覆っている。ここで、樹脂層46の端縁は、無機絶縁膜43Bの表面において、無機絶縁膜45の端縁と、段差部43Cとの間の領域内で接しており、樹脂層46の端縁と、無機絶縁膜43Bの表面とが接する箇所には、段差部43Dが形成されている。
【0060】
これにより、無機絶縁膜43Bの端縁に生じたクラックが段差部43Cを超えて延伸してきた場合であっても、無機絶縁膜43Bおよび無機絶縁膜45のうち樹脂層によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層46(さらには段差部43D)によって抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0061】
[変形例B]
図12図13は、図4のA-A線での断面構成の一変形例を表したものである。上記実施の形態および変形例Aにおいて、表示パネル10が、UCバリア層42と、TFT層43との間に、樹脂層54およびUCバリア層57を有していてもよい。樹脂層54は、例えば、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などによって構成されている。UCバリア層57は、例えば、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料によって構成された無機絶縁膜である。UCバリア層57は、単層であってもよいし、互いに異なる材料が積層された積層体であってもよい。これにより、例えば、表示パネル10を持ち運んだり、意図的に曲げたりした場合に、UCバリア層42またはUCバリア層57にクラックが生じたときには、無機絶縁膜43Bや無機絶縁膜45と、UCバリア層42との間に樹脂層54が設けられていることにより、クラックの無機絶縁膜43Bや無機絶縁膜45への延伸が抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0062】
[変形例C]
図14は、図4のA-A線での断面構成の一変形例を表したものである。図14には、図12に記載の断面構成の一変形例が示されている。上記変形例Bでは、段差部43Cが無機絶縁膜43Bに設けられていた。しかし、上記変形例Bにおいて、例えば、図14に示したように、無機絶縁膜43Bには段差部43Cが設けられておらず、その代わりに、段差部42AがUCバリア層42に設けられていてもよい。
【0063】
本変形例では、無機絶縁膜43Bの端部の表面は、段差部43Cのない、概ね平坦となっている。一方、UCバリア層42は、可撓性基板41の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部42Aを有している。UCバリア層42において、可撓性基板41の端縁と対向する箇所は、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所よりも薄くなっている。可撓性基板41の端縁と対向する箇所と、複数の有機電界発光素子44Aと対向する箇所との厚さの違いによって、段差部42Aが形成されている。段差部42Aは、額縁領域10Bに形成されている。段差部42Aは、少なくとも、各実装端子53と非対向の位置に形成されており、例えば、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺を除く3辺に形成されている。各実装端子53は、UCバリア層42の表面のうち、段差部42Aの形成されていない平坦な領域と対向する箇所に形成されている。なお、表示パネル10が、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺と直交する方向にだけ折り曲げ可能に構成されている場合には、段差部42Aは、例えば、額縁領域10Bのうち、各実装端子53の形成された一辺と直交する2辺に形成されている。
【0064】
本変形例では、樹脂層54は、UCバリア層42うち、部分的に薄くなっている箇所以外の箇所を覆っている。樹脂層54の端縁が、段差部42A上に形成されていてもよい。このとき、樹脂層54は、UCバリア層42のうち、複数のTFT回路43Aと対向する箇所から段差部42Aにかけて接している。樹脂層54は、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂などによって構成されている。
【0065】
これにより、UCバリア層42の端縁に生じたクラックが段差部42Aを超えて延伸してきた場合であっても、UCバリア層42のうち樹脂層54によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層54によって抑制される。その結果、UCバリア層42に生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる
【0066】
さらに、本変形例において、例えば、図15に示したように、TFT層43のうち、段差部42Aの近傍の端部が、樹脂層46で覆われておらず、露出していてもよい。このようにした場合であっても、樹脂層46は、無機絶縁膜43Bのうち少なくとも、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所を覆っている。ここで、樹脂層46の端縁は、無機絶縁膜43Bの表面において、無機絶縁膜45の端縁と、無機絶縁膜43Bの端部との間の領域内で接しており、樹脂層46の端縁と、無機絶縁膜43Bの表面とが接する箇所には、段差部43Dが形成されている。
【0067】
これにより、無機絶縁膜43Bの端縁にクラックが生じた場合であっても、無機絶縁膜43Bおよび無機絶縁膜45のうち樹脂層46によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層46(さらには段差部43D)によって抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる
【0068】
以上、実施の形態およびその変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0069】
[変形例D]
図16は、UCバリア層42および無機絶縁膜43Bにおける段差部42A,43Cを拡大して表したものである。上記実施の形態および変形例A,B,Cにおいて、UCバリア層42および無機絶縁膜43Bは、段差部42A,43Cの底面を構成する箇所の絶縁材料と、段差部42A,43Cの側面を構成する絶縁材料とが互いに異なる構造となっていてもよい。上記実施の形態および変形例A,B,Cにおいて、UCバリア層42および無機絶縁膜43Bは、例えば、図16に示したように、段差部42A,43Cの底面を構成する絶縁膜55と、段差部42A,43Cの側面を構成する絶縁膜56とを含んで構成されていてもよい。このとき、絶縁膜55は、絶縁膜56と比べて、所定のエッチングガス、または、所定にエッチング液に対してエッチングレートの遅い無機材料によって構成されていてもよい。例えば、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いる場合には、シリコン酸化膜のエッチングレートよりもシリコン窒化膜のエッチングレートの方が大きいので、例えば、絶縁膜56が窒化シリコン(SiNx)で構成され、絶縁膜55は酸化シリコン(SiOx)で構成されている。このようにした場合には、上記実施の形態および変形例A,B,Cにおいて、UCバリア層42および無機絶縁膜43Bを選択的にエッチングする際に、絶縁膜55がエッチングストップ層として機能する。その結果、製造過程において、段差部42A,43Cの高さを精密に制御することが可能となる。
【0070】
[変形例E]
図17は、図4に記載の断面構成の一変形例を表したものである。図18は、図12に記載の断面構成の一変形例を表したものである。上記実施の形態および変形例Bにおいて、樹脂層46が、例えば、図17図18に示したように、無機絶縁膜45の表面全体に接するとともに、無機絶縁膜43Bのうち、無機絶縁膜45の端縁と接する箇所から段差部43Cにかけて接しているだけでなく、さらに、段差部43Cを覆うように形成されていてもよい。このとき、樹脂層46の端縁が、無機絶縁膜43Bのうち、無機絶縁膜43Bの端縁と段差部43Cとの間の箇所に接して形成されている。樹脂層46の端縁と、無機絶縁膜43Bの表面とが接する箇所には、段差部43Dが形成されている。このような構成は、例えば、偏光板47とは異なる層をマスクとするTFT層43の選択エッチングにより段差部43Cを形成した後、段差部43Cを覆う大きさの偏光板47をマスクとする樹脂層46の選択エッチングにより段差部43Dを形成することにより形成される。
【0071】
これにより、無機絶縁膜43Bの端縁に生じたクラックが段差部43Dを超えて延伸してきた場合であっても、無機絶縁膜43Bおよび無機絶縁膜45のうち樹脂層46によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層46によって抑制される。その結果、無機絶縁膜43Bに生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0072】
[変形例F]
図19は、図14に記載の断面構成の一変形例を表したものである。上記変形例Cにおいて、樹脂層54が、例えば、図19に示したように、UCバリア層42のうち各有機電界発光素子44Aと対向する領域の表面全体を覆うとともに、UCバリア層42の段差部42Aを覆うように形成されていてもよい。このとき、樹脂層54の端縁が、UCバリア層42のうち、UCバリア層42の端縁と段差部42Aとの間の箇所に接して形成されている。樹脂層54の端縁と、UCバリア層42の表面とが接する箇所には、段差部42Bが形成されている。このような構成は、例えば、偏光板47とは異なる層をマスクとするUCバリア層42の選択エッチングにより段差部42Aを形成した後、段差部42Aを覆う大きさの偏光板47をマスクとする樹脂層54の選択エッチングにより段差部42Bを形成することにより形成される。
【0073】
これにより、UCバリア層42の端縁に生じたクラックが段差部42Aを超えて延伸してきた場合であっても、UCバリア層42のうち樹脂層54によって覆われている箇所へのクラックの延伸が、樹脂層54によって抑制される。その結果、UCバリア層42に生じたクラックに起因して滅点などの表示不良が発生するのを抑制することができる。
【0074】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
可撓性基板と、
前記可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、
前記第1主面と複数の前記自発光素子との間に設けられ、前記自発光素子を駆動する複数のTFT(Thin Film Transistor)回路と、
複数の前記TFT回路と複数の前記自発光素子との間に設けられ、各前記TFT回路を覆っており、さらに、前記可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する第1無機膜と、
各前記自発光素子を覆う第2無機膜と、
前記第2無機膜を覆うとともに、前記第1無機膜のうち少なくとも、前記第2無機膜の端縁と接する箇所を覆う樹脂層と
を備えた
表示パネル。
(2)
前記樹脂層の端縁が、前記段差部上に形成されている
(1)に記載の表示パネル。
(3)
前記樹脂層は、前記段差部を覆うように形成されている
(1)に記載の表示パネル。
(4)
複数の前記TFT回路と電気的に接続された複数の実装端子と、
複数の前記実装端子と接合されたFPC( Flexible Printed Circuits)と
を更に備え、
前記段差部は、前記第1無機膜のうち、各前記実装端子と非対向の位置に形成されている
(1)から(3)のいずれか1つに記載の表示パネル。
(5)
可撓性基板と、
前記可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、
前記第1主面と複数の前記自発光素子との間に設けられ、前記自発光素子を駆動する複数のTFT(Thin Film Transistor)回路と、
前記可撓性基板と複数の前記TFT回路との間に設けられ、前記第1主面を覆っており、さらに、前記可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する無機膜と、
前記無機膜のうち、部分的に薄くなっている箇所以外の箇所を覆う樹脂層と
を備えた
表示パネル。
(6)
前記樹脂層の端縁が、前記段差部上に形成されている
(5)に記載の表示パネル。
(7)
前記樹脂層は、前記段差部を覆うように形成されている
(5)に記載の表示パネル。
(8)
複数の前記TFT回路と電気的に接続された複数の実装端子と、
複数の前記実装端子と接合されたFPC( Flexible Printed Circuits)と
を更に備え、
前記段差部は、前記無機膜のうち、各前記実装端子と非対向の位置に形成されている
(5)から(7)のいずれか1つに記載の表示パネル。
(9)
表示パネルと、
前記表示パネルを駆動する駆動部と
を備え、
前記表示パネルは、
可撓性基板と、
前記可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、
前記第1主面と複数の前記自発光素子との間に設けられ、前記自発光素子を駆動する複数のTFT(Thin Film Transistor)回路と、
複数の前記TFT回路と複数の前記自発光素子との間に設けられ、各前記TFT回路を覆っており、さらに、前記可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する第1無機膜と、
各前記自発光素子を覆う第2無機膜と、
前記第2無機膜を覆うとともに、前記第1無機膜のうち少なくとも、前記第2無機膜の端縁と接する箇所を覆う樹脂層と
を有する
表示装置。
(10)
複数の前記TFT回路と電気的に接続された複数の実装端子と、
複数の前記実装端子と前記駆動部とに接合されたFPC( Flexible Printed Circuits)と
を更に備え、
前記段差部は、前記第1無機膜のうち、各前記実装端子と非対向の位置に形成されている
(9)に記載の表示装置。
(11)
表示パネルと、
前記表示パネルを駆動する駆動部と
を備え、
前記表示パネルは、
可撓性基板と、
前記可撓性基板の第1主面側に設けられた複数の自発光素子と、
前記第1主面と複数の前記自発光素子との間に設けられ、前記自発光素子を駆動する複数のTFT(Thin Film Transistor)回路と、
前記可撓性基板と複数の前記TFT回路との間に設けられ、前記第1主面を覆っており、さらに、前記可撓性基板の端縁と対向する箇所が部分的に薄くなっていることにより生じる段差部を有する無機膜と、
前記無機膜のうち、部分的に薄くなっている箇所以外の箇所を覆う樹脂層と
を有する
表示装置。
(12)
複数の前記TFT回路と電気的に接続された複数の実装端子と、
複数の前記実装端子と前記駆動部とに接合されたFPC( Flexible Printed Circuits)と
を更に備え、
前記段差部は、前記無機膜のうち、各前記実装端子と非対向の位置に形成されている
(11)に記載の表示装置。
【0075】
本出願は、日本国特許庁において2019年1月9日に出願された日本特許出願番号第2019-001931号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0076】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19