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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】車体前部の構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20220427BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20220427BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B60R19/52 D
B62D25/08 D
B60K11/04 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018004920
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019123356
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和雅
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-118703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
B62D 25/08
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体幅方向の中間部に配置され、車体上側で車体幅方向に沿って延びるフレームと、該フレームの車体前方側に配置されるグリルとを有している車体前部の構造において、
前記グリルには、車体上側に配置され、かつ車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材が設けられ、該取付部材は、車体上下方向の締結によって、前記フレームに取付けられ
前記フレームは、車体上下に配置され、互いに接合することによって閉断面を形成する上部フレームと下部フレームとを有している一方、前記取付部材は2本以上有し、これら2本以上の前記取付部材は同じ方向に延びており、前記取付部材が前記下部フレームに取付けられることによって、前記フレームの車体幅方向に間隔を空けて設けられているとともに、フードロック取付部を挟んで車体幅方向の左右両側に設けられていることを特徴とする車体前部の構造。
【請求項2】
前記グリルの車両後方側には、シュラウドが配置され、該シュラウドの上部には、前記取付部材に沿った形状を有するガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体前部には、車体のデザイン性を高め、あるいは、熱交換機器の破損を防ぐなどの理由から、グリルが取付けられている。このようなグリルの車体への取付作業は、車体前方からの固定が主流であるため、前面からグリルを引っ張ると意図しない脱落が起こるおそれがあった。
そのため、従来の車体前部の構造の中には、グリルから車体後方へ延びる取付部品を設け、該取付部品を車体上下方向からラジエータサポートメンバに取付けるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-69685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の車体前部の構造においては、取付部品がグリルから車体後方へ水平に延びて配置されており、取付部品の先端部が車体上方からラジエータサポートメンバに締結されているに過ぎないので、盗難目的でグリルを車体前方側に引っ張った場合に、グリルがラジエータサポートメンバなどから簡単に外れてしまうおそれがあった。
また、従来の車体前部の構造では、取付部品がベース部、連結部、取付部、サポート部を備え、取付部品の先端部を車体上方からラジエータサポートメンバに載せた状態でグリルを取付けているので、構造が複雑で部品コストが高くなる上、グリルの取付作業が面倒であり、取付作業性の向上を図ることが難しく、グリル交換のサービス性が低下してしまういという問題を有していた。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、作業性の困難やグリル交換のサービス性の低下を招く複雑な構造や脱落防止装置などを追加する必要がなく、車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材を剛性の高い車体骨格部材のフレームに取付けることにより、盗難目的でグリルを車体前後方向に引っ張ってもフレームから取外すのを防ぐことが可能な車体前部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体幅方向の中間部に配置され、車体上側で車体幅方向に沿って延びるフレームと、該フレームの車体前方側に配置されるグリルとを有している車体前部の構造において、前記グリルには、車体上側に配置され、かつ車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材が設けられ、該取付部材は、車体上下方向の締結によって、前記フレームに取付けられ、前記フレームは、車体上下に配置され、互いに接合することによって閉断面を形成する上部フレームと下部フレームとを有している一方、前記取付部材は2本以上有し、これら2本以上の前記取付部材は同じ方向に延びており、前記取付部材が前記下部フレームに取付けられることによって、前記フレームの車体幅方向に間隔を空けて設けられているとともに、フードロック取付部を挟んで車体幅方向の左右両側に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る車体前部の構造、車体幅方向の中間部に配置され、車体上側で車体幅方向に沿って延びるフレームと、該フレームの車体前方側に配置されるグリルとを有しており、前記グリルには、車体上側に配置され、かつ車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材が設けられ、該取付部材は、車体上下方向の締結によって、前記フレームに取付けられ、前記フレームは、車体上下に配置され、互いに接合することによって閉断面を形成する上部フレームと下部フレームとを有している一方、前記取付部材は2本以上有し、これら2本以上の前記取付部材は同じ方向に延びており、前記取付部材が前記下部フレームに取付けられることによって、前記フレームの車体幅方向に間隔を空けて設けられているとともに、フードロック取付部を挟んで車体幅方向の左右両側に設けられている。
したがって、本発明の車体前部の構造においては、グリルが、車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材を介して、剛性の高い車体骨格部材のフレームに取付けられ、車体前後方向と異なる上下方向もしくは斜め方向の取付けになるので、グリルが車体前後方向に引っ張られた場合でもフレームから外れにくく、脱落等の可能性を低減させることができる。また、本発明の車体前部の構造では、取付部材とフレームとの取付箇所に位置する車体前方視の意匠隙間がフレームによって覆われることになるので、盗難目的でグリルを取外すことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る構造が適用される車体前部を車体前方側の斜め上方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る車体前部の構造が適用されるグリルを車体側に取付ける前の状態で車体前方側の斜め上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る構造が適用される車体前部の一部を車体後方側の斜め上方から見た背面斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る車体前部の構造に適用されるグリルを取付部材によりフレームに取付けた状態で車体側方から見た断面図である。
図5図4におけるグリルとフレームとの取付部付近等を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図5は本発明の実施形態に係る車体前部の構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印O方向は車体外側を示し、矢印U方向は車体上方を示している。また、矢印X方向は車体幅方向を示し、矢印Y方向は車体前後方向を示している。
【0010】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る構造の車体前部1は、主として、車体幅方向の中間部に配置され、車体上側で車体幅方向に沿って延びるフードロックフレーム2もしくはランプサポートフレーム20のフレームと、該フードロックフレーム2もしくはランプサポートフレーム20の車体前方側に配置されるグリルコンポーネント3及びグリル4と、車体幅方向の左右両側部にそれぞれ配置されるフロントフェンダー5と、エンジンルームあるいはモータールームの上部を覆う前方開閉式のフロントフード6とを有している。このうち、フロントフード6は、左右両側のフロントフェンダー5の間に位置し、前端部側に突出して設けたストライカー(図示せず)をフードロックフレーム2に設けたフードロック(図示せず)に係合させることにより、ロックされるようになっている。
なお、車体前方から見て正面に位置する車体前部1は、最先端の下部に設けられ、車体幅方向に沿って延びるフロントバンパー10を有している。
【0011】
本実施形態のグリルコンポーネント3は、図1及び図2に示すように、車体上側に配置され、車体幅方向に延びる板金製の上側フロントパネル31と、車体下側に配置され、当該上側フロントパネル31に対して所定の間隔を空けながら車体幅方向に延びる板金製の下側フロントパネル32と、上側フロントパネル31及び下側フロントパネル32の左右両側寄りに配置され、車体上下方向に延びる第1フロントメンバ33と、該第1フロントメンバ33に対して車体外側に間隔を空けて配置され、車体上下方向に延びる第2フロントメンバ34とを枠状に組み立てることによって構成されている。すなわち、グリルコンポーネント3は、予め枠状に組み立てられて形成されており、グリルコンポーネント3としての形状精度を確保することが可能な構造となっている。
【0012】
すなわち、本実施形態の上側フロントパネル31は、図2に示すように、上側フロントパネル31が、位置基準として、車体骨格11であるフードロックフレーム2もしくは、ランプサポートフレーム20(本実施形態では、フードロックフレーム2)に取付けられている。そのため、上側フロントパネル31の車体幅方向の中間部には、フードロックフレーム2に取付けるための左右一対の取付片31aが車体後方側(フードロックフレーム2側)へ向かって突出して設けられている。これにより、本実施形態のグリルコンポーネント3は、上側フロントパネル31が位置基準として構成されることになり、組立工程の最終段階でグリルコンポーネント3を取付ける場合であっても、車体精度を維持できる枠状構造体に形成されている。
また、本実施形態のグリルコンポーネント3は、車体骨格11とは別途に製造する工程を有している。そのため、第1フロントメンバ33及び第2フロントメンバ34の形状の製造誤差を予め把握した上で、上側フロントパネル31を基準として組付治具を調整し、位置精度を確保した状態で第1フロントメンバ33及び第2フロントメンバ34を上側フロントパネル31に組み付けることになる。
【0013】
さらに、本実施形態の車体前部1の構造において、フードロックフレーム2の車体下側には、図2に示すように、車体幅方向に延びるロアフレーム7が所定の間隔を空けて配置されている。また、フードロックフレーム2及びロアフレーム7の左右両側には、車体上下方向に延びるフロントサイドブレース8が当該フードロックフレーム2及びロアフレーム7の上下間に掛け渡されており、フードロックフレーム2の左右両側には、車体内側部が車体幅方向に延びるとともに、車体外側部が車体後方へ向かって延びる形状のランプサポートフレーム20が設けられている。
そして、これらフードロックフレーム2、ロアフレーム7、フロントサイドブレース8及びランプサポートフレーム20などを互いに組み付けることによって、枠状の車体骨格11が構成されることになる。したがって、上側フロントパネル31をフードロックフレーム2に取付けるとともに、下側フロントパネル32をロアフレーム7に取付けることによりグリルコンポーネント3を車体骨格11に組み付けると、第1フロントメンバ33の上下取付位置に隣接する付近でグリルコンポーネント3が車体骨格11に取付けられることになるため、グリルコンポーネント3と車体骨格11との枠剛性の効果が一致し、車体剛性の向上が実現できるようになっている。
【0014】
一方、本実施形態のグリル4は、図1図5に示すように、車体前部1の意匠面となるように構成されており、左右両側のフロントフェンダー5、上側のフロントフード6及び下側のフロントバンパー10によって囲まれる左右上下の空間領域に配置され、フードロックフレーム2及びグリルコンポーネント3などに取付けられている。そして、グリル4には、エンジンルームなどへ風を取り込むための複数の通風口41がそれぞれ貫通して設けられており、これら通風口41は、左右両側に位置するヘッドランプ42間の領域で、車体幅方向及び車体上下方向に間隔を空けながらに配置されている。
また、本実施形態のグリル4の車体幅方向中間部には、図2図5に示すように、車体上部の背面側(車両後方側)に配置され、かつ車体後方へ向かって斜め上方に延びる2本(1本もしくは3本以上でも良いが、本実施形態では2本)の取付部材9が左右に配して設けられている。すなわち、取付部材9は2本有し、これら2本の取付部材9をグリル4の車体幅方向中間部の左右に配置することにより、グリル4が確実に支持される構造に構成されている。
さらに、これら取付部材9は、同じ形状及び大きさを有し、かつ同じ方向に延びており、車体幅方向に所定の間隔を空けて左右に配置され、車体上下方向の締結によって、フードロックフレーム2に取付けられている。すなわち、同じ方向に延びた2本の取付部材9を配置することにより、取付部材9と同じ方向に沿ってグリル4を移動させて車体前部1に取付けることが可能な構造となり、2方向の締結に拘わらず簡単な作業でグリル4が取付けられるようになっている。
【0015】
本実施形態の取付部材9は、図4及び図5に示すように、前端部分が車体上方へ直角に折り曲げられ、グリル4への取付部分になるグリル取付部91と、後端部分が車体後方へ水平に折り曲げられ、フードロックフレーム2への取付部分になるフレーム取付部92と、これらグリル取付部91及びフレーム取付部92を接続する傾斜部93を有している。グリル取付部91は、傾斜部93の車体下側に位置し、スクリュー94などの軸部を挿入する挿入孔91aを有している。そして、このグリル取付部91と対応して位置するグリル4の車体上部の背面側には、取付孔43aを有するボス部43が設けられている。そのため、取付部材9の前端部分であるグリル取付部91は、車体前後方向からスクリュー94の軸部を挿入孔91aよりボス部43の取付孔43aに螺入させることによって、グリル4の車体上部の背面側に取付けられるように構成されている。
また、フレーム取付部92は、傾斜部93の車体上側に位置し、クリップ95などの軸部を取付ける取付孔92aを有している。そして、このフレーム取付部92と対応して位置するフードロックフレーム2の下部フレーム22(後述する)の車体後部22Aには、クリップ95を差し込む差込孔22aが設けられている。そのため、取付部材9の後端部分であるフレーム取付部92は、車体上下方向からクリップ95の軸部を差込孔22aより取付孔92aに差し込むことによって、フードロックフレーム2の下部フレーム22の車体後部22Aに取付けられるように構成されている。
【0016】
一方、本実施形態の車体前部1の構造において、フードロックフレーム2は、図4及び図5に示すように、車体上下に配置され、互いに接合することによって閉断面Sを形成する上部フレーム21と下部フレーム22とを有している。これに伴い、上部フレーム21は、車体上方へ膨出した略U字状に形成されており、車体後部21Aが略水平に折り曲げられ、車体前部21Bが下部フレーム22の水平面よりも車体下方へ延びた略U字状に形成されている。また、下部フレーム22は、略水平面形状に形成されており、車体前部22Bが水平面よりも車体下方に折り曲げられている。そして、フードロックフレーム2は、上部フレーム21の車体後部21A及び車体前部21Bと、下部フレーム22の車体後部22A及び車体前部22Bとをそれぞれ接合することによって、剛性を高めることが可能な閉断面Sを有する構造に構成されている。下部フレーム22の車体後部22Aの一部は、車体後方に延びるフランジとして形成され、上部フレーム21の車体後部21Aの外側に位置しており、クリップ95を差し込む差込孔22aが外部に露出するように配置されている。
すなわち、本実施形態の取付部材9は、フードロックフレーム2の下部フレーム22に取付けられることによって、フードロックフレーム2の車体幅方向に間隔を空けて複数(本実施形態では2本)設けられている。しかも、取付部材9は、図3に示すように、フードロックフレーム2のフードロック取付部23を挟んでフードロックフレーム2の車体幅方向の左右両側に1本ずつ設けられている。フードロック取付部23は、フードロックフレーム2の背面側に設けられる凹部であり、フロントフード6を受け止める部分として、図示しないフードロックブラケットなどで十分な剛性が確保されている。そのため、フードロック取付部23の左右両側に取付部材9を取付けた場合には、グリル4の取付剛性が確保されることになる。また、取付部材9のフレーム取付部92は、フードロックフレーム2を構成する下部フレーム22の車体後部22Aに下から重ね合わせて取付けられるので、車体組み立ての最終工程でもグリル4の取付けが可能な構造となっている。
【0017】
また、本実施形態の車体前部1の車体幅方向中間部であって、グリル4の車両後方側には、図3図5に示すように、上部及び左右両側部を有し、車体後方視で略門型形状のシュラウド12が配置されている。そして、シュラウド12の上部12aの左右両側には、グリル4に取付けられた2本の取付部材9に沿った形状を有する2つのガイド部12Aが設けられている。これらガイド部12Aは、取付部材9の傾斜部93とほぼ同じ長さ及び傾斜角度で後ろ上がりに傾斜しながら延び、取付部材9の傾斜部93を下から覆うような形態で配置されている。そのため、シュラウド12のガイド部12Aは、グリル4の取付工程において、取付部材9のフレーム取付部92及び傾斜部93をガイドする機能を有することになり、グリル4の取付作業が簡単かつ確実に行われるようにしている。また、シュラウド12のガイド部12Aは、フードロックフレーム2と同様、取付部材9の取付点を覆う機能を有することになり、盗難目的でのグリル4の取外しができないようにしている。
【0018】
次に、本実施形態の車体前部1の構造におけるグリル4の車体骨格11への取付け手順について説明する。
まず、枠状に組み立てられたグリルコンポーネント3を持ち、ボルトなどの締結具を用いて、上側フロントパネル31の取付片31aを車体骨格であるフードロックフレーム2に締付けて固定するとともに、第2フロントメンバ34の上部を上側フロントパネル31の左右両端部分に配置し、第2フロントメンバ34の上部を締付けて固定すれば、位置精度及び車体精度を確保した状態で、グリルコンポーネント3の車体骨格11に取付ける。
次いで、車体前後方向からスクリュー94を挿入孔91a及び取付孔43aに螺入させ、取付部材9のグリル取付部91をグリル4の車体上部の背面側に取付ける。その後、グリル4を持ち、取付部材9のフレーム取付部92及び傾斜部93をシュラウド12のガイド部12Aに沿わせながら車体後方へ押し込むと、グリル4は所定の位置に配置されることになる。この状態で、車体上方からクリップ95を差込孔22a及び取付孔92aに差し込み、取付部材9のフレーム取付部92をフードロックフレーム2の下部フレーム22の車体後部22Aに取付けるとともに、車体前方からスクリュー等で他の箇所をグリルコンポーネント3などに取付ければ、グリル4の車体骨格11への取付作業が終了する(図1図4及び図5参照)。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係る車体前部1の構造は、車体幅方向の中間部に配置され、車体上側で車体幅方向に沿って延びるフレームであるフードロックフレーム2と、該フードロックフレーム2の車体前方側に配置されるグリル4とを有している。このグリル4には、車体上側に配置され、かつ車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材9が設けられており、該取付部材9は、車体上下方向の締結によって、フードロックフレーム2に取付けられている。
したがって、本実施形態の車体前部1の構造においては、グリル4が、車体後方へ向かって斜め上方に延びる取付部材9を介して、剛性の高い車体骨格部材のフードロックフレーム2に取付けられるとともに、取付部材9のフレーム取付部92が車体前後方向と異なる上下方向(斜め方向も含む)に取付けられているので、グリル4が車体前後方向に引っ張られた場合でもフードロックフレーム2から外れにくく、グリル4の脱落等の可能性を低減させることができる。また、本発明の車体前部1の構造では、取付部材9とフードロックフレーム2との取付箇所に位置する車体前方視の意匠隙間がフードロックフレーム2によって覆われているので、盗難目的でグリル4を車体前部1から取外すことも防止できる。
【0020】
なお、本実施形態の車体前部1の構造を採用しない場合には、グリル4の取付作業が車両組付けの終盤の工程であり、基本的に、車体前後方向で車体前方からネジ、クリップ等を用いて行われるので、グリル4の取付けが車体前後方向のみとしたときに、車体前後方向のグリル4の着脱が容易になる可能性がある。また、車体振動による脱落、もしくは盗難目的での取外しを防止するためには、複雑な構造や脱落防止装置などを追加する必要があるので、スペースの確保及びコスト面で不利となる上、生産容易性を損なうことが懸念される。
【0021】
また、本実施形態の車体前部1の構造においては、フードロックフレーム2が、車体上下に配置され、互いに接合することによって閉断面Sを形成する上部フレーム21と下部フレーム22とを有している。一方、取付部材9は、2本以上(本実施形態では2本)有しており、これら2本の取付部材9は、同じ方向に延びている。そして、2本の取付部材9が下部フレーム22に取付けられることによって、フードロックフレーム2の車体幅方向に間隔を空けて設けられている。しかも、2本の取付部材9は、フードロックフレーム2のフードロック取付部23を挟んで車体幅方向の左右両側に設けられている。
したがって、本実施形態の車体前部1の構造においては、同じ方向に延びる2本の取付部材9が、高い剛性を有するフードロックフレーム2の下部フレーム22に取付けられ、かつ十分な剛性が確保されているフードロック取付部23の左右両側に取付けられているので、同じ方向に沿って移動させるという簡単な作業で車体前部1にグリル4を取付けることができるとともに、グリル4の取付剛性を確保することができる。また、取付部材9のフレーム取付部92は、フードロックフレーム2を構成する下部フレーム22の車体後部22Aに下から重ね合わせて取付けられるので、車体組み立ての最終工程でもグリル4を取付けることができ、車体の生産性の向上を図ることができる。
【0022】
さらに、本実施形態の車体前部1の構造において、グリル4の車両後方側には、シュラウド12が配置され、シュラウド12の上部12aには、取付部材9に沿った形状を有するガイド部12Aが設けられている。
したがって、本実施形態の車体前部1の構造では、グリル4の取付工程において、シュラウド12のガイド部12Aが取付部材9のフレーム取付部92及び傾斜部93をガイドする機能を有することになるので、グリル4の取付作業を簡単かつ確実に行うことができる。また、シュラウド12のガイド部12Aは、フードロックフレーム2と同様、取付部材9の取付点を覆う機能を有することになるので、盗難目的でのグリル4の取外しを防止することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態における取付部材9は、グリル4の車体上側に2本設けられているが、1本のみの取付部材9をグリル4の車体上側に設けた場合でも機能を果たすことは可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 車体前部
2 フードロックフレーム(フレーム)
3 グリルコンポーネント
4 グリル
5 フロントフェンダー
6 フロントフード
7 ロアフレーム
8 フロントサイドブレース
9 取付部材
10 フロントバンパー
11 車体骨格
12 シュラウド
12a 上部
12A ガイド部
20 ランプサポートフレーム(フレーム)
21 上部フレーム
21A 車体後部
21B 車体前部
22 下部フレーム
22A 車体後部
22B 車体前部
22a 差込孔
23 フードロック取付部
43 ボス部
43a 取付孔
91 グリル取付部
91a 挿入孔
92 フレーム取付部
92a 取付孔
93 傾斜部
94 スクリュー
95 クリップ
S 閉断面
図1
図2
図3
図4
図5