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特許7064178錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法
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  • 特許-錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/32 20060101AFI20220427BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220427BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20220427BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C25D3/32
C25D7/00 G
C25D7/12
H01L21/92 604B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020172259
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063889
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2022-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】巽 康司
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-013212(JP,B1)
【文献】特開昭59-182986(JP,A)
【文献】特開平7-157889(JP,A)
【文献】特開平10-168592(JP,A)
【文献】特開2001-323392(JP,A)
【文献】特表2014-503692(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103184480(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00 - 18/54
C25D 1/00 - 3/66
C25D 7/00 - 7/12
H01L 21/60 - 21/607
H05K 3/00 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩(B)と、界面活性剤(C)とを含む錫又は錫合金めっき液であって、
前記めっき液は、前記めっき液中にポリプロピレングリコールを0.05g/L~5g/Lの割合で含み、前記ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が610~740であることを特徴とする錫又は錫合金めっき液。
【請求項2】
前記界面活性剤(C)が、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)が縮合したノニオン系界面活性剤である請求項1記載の錫又は錫合金めっき液。
【請求項3】
請求項1又は2記載の錫又は錫合金めっき液を用いて、基材上に複数のバンプ前駆体となる錫又は錫合金めっき堆積層を形成する工程、次いでリフロー処理をして複数のバンプを形成する工程とを有するバンプの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき法により錫又は錫合金のめっき膜を形成するための錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法に関する。更に詳しくは、半導体ウエハやプリント基板用のはんだバンプ(以下、単にバンプという。)の形成に適する錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電解めっき法により、バンプを形成するときに、バンプ内にボイドを発生させないめっき液が求められている。この種の錫又は錫合金めっき液として、無機酸及び有機酸、並びにその水溶性塩と、界面活性剤と、レベリング剤と、を含む錫又は錫合金の電気めっき浴が開示されている(例えば、特許文献1(段落[0012]、段落[0019]、段落[0080])参照。)。
【0003】
特許文献1の界面活性剤は、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル又はその塩、及びポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル又はその塩よりなる群から選択される少なくとも一種の非イオン界面活性剤であり、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルを構成するフェニル、及びポリオキシアルキレン多環フェニルエーテルを構成する多環フェニルは、炭素数1~24のアルキル基、又はヒドロキシ基で置換されていてもよく、レベリング剤は、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、脂肪族ケトン、及び芳香族ケトンよりなる群から選択される少なくとも一種と;α,β-不飽和カルボン酸若しくはそのアミド、又はこれらの塩である。
【0004】
この特許文献1には、特定の非イオン界面活性剤と特定の二種類のレベリング剤を含むため、リセス埋め性に優れており、かつ、ボイドの発生を抑制することができ、これにより、このめっき液を用いれば、リセスが無く平滑で、しかもリフロー後のボイドも発生しない良好なバンプを提供できることが記載されている。
【0005】
一方、プリント回路板、IC基板、半導体素子及びその種のものの製造におけるスズ又はスズ合金層の堆積のための、第一銅イオンの除去が改善されたスズ又はスズ合金浸漬めっき浴が開示されている(例えば、特許文献2(請求項1、請求項3、段落[0001]、段落[0008])参照。)。このスズ又はスズ合金水性浸漬めっき浴は、Sn(II)イオン、随意に合金金属のイオン、少なくとも1つの芳香族スルホン酸又はそれらの塩、チオウレア及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの錯化剤、及び少なくとも1つの第一の析出添加剤と、少なくとも1つの第二の析出添加剤との混合物を含む。
【0006】
上記少なくとも1つの第一の析出添加剤が、62g/mol~600g/molの範囲の平均分子量を有する、脂肪族多価アルコール化合物、それらのエーテル、及びそれらから誘導されるポリマーからなる群から選択される。また上記少なくとも1つの第二の析出添加剤が、750~10000g/molの範囲の平均分子量を有するポリアルキレングリコール化合物からなる群から選択され、かつ、少なくとも1つの第二の析出添加剤の濃度が、少なくとも1つの第一の析出添加剤と少なくとも1つの第二の析出添加剤との総量に対して、1~10質量%にわたる。また上記少なくとも1つの第一の析出添加剤が、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0007】
特許文献2には、このめっき浴によれば、浴の寿命が延長されている一方で、0.05~0.1μm/分のスズの高い堆積速度を保持することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-193916号公報
【文献】特許5766301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近、半導体の微細化及び複雑化に伴い、バンプを用いるデバイスの多様化が進んでいる。デバイス種が増える中、それぞれのデバイスに適しためっき堆積層を形成する目的で、電解めっき法により、デバイス毎にめっき時の電流密度を調整して、バンプを形成している。このとき、上記目的を達成するために、幅広い電流密度範囲において、バンプ内にボイドを発生させないめっき液が求められている。この点において、特許文献1に記載のめっき浴では、その実施例1~10において、2A/dm2(以下、ASDという。)の電流密度のみで電気めっきを行っており、バンプ内にボイドの発生を抑制できる電流密度範囲が広くないという課題があった。
【0010】
また特許文献2に記載のめっき浴は、浸漬めっき浴、即ち無電解めっき浴であって電解めっき浴ではない。また特許文献2のめっき浴の課題は、浴寿命の延長とスズの高い堆積速度の保持することにあり、バンプ内のボイドの発生を抑制する課題を有しない。
【0011】
本発明の目的は、例えば、2ASD~14ASDといった幅広い電流密度の範囲においてバンプ内におけるボイドの発生を抑制する錫又は錫合金めっき液及び該液を用いたバンプの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意研究を行った結果、特定の質量平均分子量を有するポリプロピレングリコールを特定の質量割合でめっき液中に含有させることで、例えば、2ASD~14ASDといった幅広い電流密度の範囲においてバンプ内におけるボイドの発生を抑制できることを見出し本発明に到達した。
【0013】
本発明の第1の観点は、少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩(B)と、界面活性剤(C)とを含む錫又は錫合金めっき液であって、前記めっき液は、前記めっき液中にポリプロピレングリコールを0.05g/L~5g/Lの割合で含み、前記ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が610~740であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点は、第1の観点に係る発明であって、前記界面活性剤(C)が、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)が縮合したノニオン系界面活性剤である錫又は錫合金めっき液である。
【0015】
本発明の第3の観点は、第1の観点又は第2の観点の錫又は錫合金めっき液を用いて、基材上に複数のバンプ前駆体となる錫又は錫合金めっき堆積層を形成する工程、次いでリフロー処理をして複数のバンプを形成する工程とを有するバンプの形成方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点の錫又は錫合金めっき液は、質量平均分子量が610~740のポリプロピレングリコールを0.05g/L~5g/L含むことで、例えば、2ASD~14ASDといった幅広い電流密度範囲においてバンプ内におけるボイドの発生を抑制することができる。
バンプ内にボイドが生じる理由については、以下のような理由が考えられる。
先ず、はんだめっきバンプにおけるボイドには、2つの発生メカニズムが考えられる。 第1の発生メカニズムは、添加剤(界面活性剤)による錫(Sn)の析出の抑制力が不足する場合である。この場合、適切に抑制された条件で錫(Sn)が析出しないと、緻密なめっき堆積層が形成されずに、めっき液がめっき堆積層中に取り込まれることで、リフロー後のバンプ内にボイドが発生し易くなる。
第2の発生メカニズムは、添加剤(界面活性剤)の抑制力が過剰な場合である。この場合、Snの析出と同時に水の電気分解により水素発生が起こり、生じた水素ガスがめっき堆積層中に取り込まれることで、リフロー後のバンプ内にボイドが発生し易くなる。
質量平均分子量が610~740の範囲にあるポリプロピレングリコールは、親水性と疎水性の両方の性質があることから、添加剤(界面活性剤)のカソード面への吸着不足を補助するととともに、過度の吸着を緩衝する効果があるため、Snの析出が適切に行われ、結果としてボイドが抑制されると考えられる。
【0017】
本発明の第2の観点の錫又は錫合金めっき液では、界面活性剤が、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)が縮合したノニオン系界面活性剤であるため、上記ポリプロピレングリコールと併用することで、より一層ボイドの発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の第3の観点のバンプの形成では、第1の観点又は第2の観点の錫又は錫合金めっき液を用いて、基材上に複数のバンプ前駆体となる錫又は錫合金めっき堆積層を、例えば、2ASD~14ASDといった幅広い電流密度の範囲において形成する。次いで、リフロー処理をする。これにより、各種デバイスに適した電流密度でめっき堆積層を形成できるとともに、内部にボイドの少ない複数のバンプを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例で作製したレジスト層を有する半導体ウエハの平面図である。
図2】めっき後のめっき堆積層がリフロー後にバンプになる状況を示す断面図である。図2(a)はめっき後の断面図であり、図2(b)はリフロー後の上部が膨らんだ球状の正常バンプが形成された断面図であり、図2(c)はリフロー後の上部が膨らんだ球状のバンプ内にボイドが形成された欠陥バンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態の錫又は錫合金めっき液について説明する。このめっき液は、半導体ウエハやプリント基板用のバンプなどとして使用される錫又は錫合金のめっき堆積層の形成用材料として利用される。
【0021】
本実施形態の錫又は錫合金めっき液は、少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩(A)と、有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩(B)と、界面活性剤(C)とを含む錫又は錫合金めっき液である。その特徴ある点は、めっき液中にポリプロピレングリコールを0.05g/L~5g/Lの割合で含み、前記ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が610~740であることにある。
【0022】
本実施形態の錫合金は、錫と、銀、銅、ビスマス、ニッケル、アンチモン、インジウム、及び亜鉛より選ばれた1種又は2種以上の所定金属との合金である。例えば、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-ニッケル合金、錫-アンチモン合金、錫-インジウム合金、及び錫-亜鉛合金などの2元合金や、錫-銅-ビスマス、及び錫-銅-銀合金などの3元合金が挙げられる。
【0023】
〔少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩(A)〕
本実施形態の可溶性塩(A)は、第一錫塩単独であるか、又はこの第一錫塩及び銀、銅、ビスマス、ニッケル、アンチモン、インジウム、亜鉛からなる群から選ばれた1種又は2種以上の金属の塩の混合物よりなる。
【0024】
従って、本実施形態の可溶性塩(A)はめっき液中でSn2+を単独で含むか、或いは、Sn2+とともに、Ag+、Cu+、Cu2+、Bi3+、Ni2+、Sb3+、In3+、Zn2+などの各種金属イオンを生成する任意の可溶性塩を1種又は2種以上含む。可溶性塩としては、例えば、これらの金属の酸化物、ハロゲン化物、無機酸又は有機酸の当該金属塩などが挙げられる。
【0025】
金属酸化物としては、酸化第一錫、酸化銀、酸化銅、酸化ニッケル、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化亜鉛などが挙げられる。金属のハロゲン化物としては、塩化第一錫、塩化ビスマス、臭化ビスマス、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化ニッケル、塩化アンチモン、塩化インジウム、塩化亜鉛などが挙げられる。
【0026】
無機酸又は有機酸の金属塩としては、硫酸銅、硫酸第一錫、硫酸ビスマス、硫酸ニッケル、硫酸アンチモン、硝酸ビスマス、硝酸銀、硝酸銅、硝酸アンチモン、硝酸インジウム、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛、酢酸銅、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、錫酸ナトリウム、ホウフッ化第一錫、メタンスルホン酸第一錫、メタンスルホン酸銀、メタンスルホン酸銅、メタンスルホン酸ビスマス、メタンスルホン酸ニッケル、メタスルホン酸インジウム、ビスメタンスルホン酸亜鉛、エタンスルホン酸第一錫、2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0027】
〔有機酸及び無機酸から選ばれた酸又はその塩(B)〕
本実施形態の酸又はその塩(B)は、有機酸及び無機酸、及びそれらの塩から選択される。上記有機酸には、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或いは脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸には、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。それらの塩は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アンモニウム塩、アミン塩、スルホン酸塩などである。成分(B)としては、金属塩の溶解性や排水処理の容易性の観点から有機スルホン酸が好ましい。
【0028】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1~5、好ましくは1~3)で示されるものが使用できる。具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの他、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0029】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式Cp2p+1-CH(OH)-Cq2q-SO3H(例えば、p=0~6、q=1~5)で示されるものが使用できる。具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0030】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などである。具体的には、1-ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0031】
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0032】
本実施形態のめっき液における第一錫塩の含有量は、錫の量に換算して、好ましくは5g/L以上200g/L以下の範囲、更に好ましくは20g/L以上100g/L以下の範囲にある。
【0033】
〔界面活性剤(C)〕
本実施形態のめっき液において用いる界面活性剤(C)は、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)が縮合したノニオン系界面活性剤であることが好ましい。この界面活性剤として、末端がポリオキシプロピレン(PO)であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(PO-EO-PO)、末端がポリオキシエチレン(EO)であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(EO-PO-EO)、エチレンジアミンEO-PO縮合物(エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)等が挙げられる。その中でも、PO-EO-POがポリプロピレングリコールとの相互作用に優れるため、より好ましい。ブロックポリマー中のEO比率(モル比)が30%~50%であり、界面活性剤の質量平均分子量が2000~7800であることが、カソード表面に界面活性剤が吸着するため、より好ましい。まためっき液中の界面活性剤の含有量が、0.5g/L~10g/Lの範囲にあることが、均一なめっき堆積層を得るために、より好ましい。
【0034】
〔ポリプロピレングリコール〕
本実施形態のめっき液におけるポリプロピレングリコールは、0.05g/L~5g/L、好ましくは0.5g/L~4g/L、より好ましくは1g/L~2g/Lの割合で含有する。ポリプロピレングリコールの質量平均分子量は、610~740、好ましくは650~730、より好ましくは670~730である。上記界面活性剤及びポリプロピレングリコールの質量平均分子量は、それぞれサイズ排除クロマトグラフィー(SEC法)によって求められる。ポリプロピレングリコールの含有量が0.05g/L未満では、Snの析出の抑制力が不足し、緻密なめっき堆積層が形成されずにめっき液がめっき堆積層中に取り込まれるため、リフロー後のバンプ内にボイドが発生し易くなる。また5g/Lを超えると、Snの析出と同時に水素発生が起こり、水素ガスがめっき堆積層中に取り込まれることで、リフロー後のバンプ内にボイドが発生し易くなる。ポリプロピレングリコールは、その質量平均分子量が610未満では、親水性が強過ぎて相互作用により界面活性剤の抑制力を弱めて、リフロー後にバンプ内にボイドを誘発する。一方、ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が740を超えると、疎水性が強過ぎて相互作用により界面活性剤の抑制力を強めて、リフロー後にバンプ内にボイドを誘発する。ポリプロピレングリコールは、その質量平均分子量が610~740の範囲にあると、親水性と疎水性の両方の性質があることから、界面活性剤のカソード面への吸着不足を補助するととともに、過度の吸着を緩衝しする効果がある。この結果、Snの析出が適切に行われ、結果としてリフロー後のバンプ内のボイドが抑制される。
【0035】
本実施形態のめっき液は、必要に応じて更に酸化防止剤、錯体化剤、pH調整剤、光沢剤を含んでもよい。
【0036】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤はめっき液中のSn2+の酸化防止を目的としたものである。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸又はその塩、ピロガロール、ヒドロキノン、フロログルシノール、トリヒドロキシベンゼン、カテコール、クレゾールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ヒドロキノンスルホン酸又はその塩などが挙げられる。例えば、酸性浴では、ヒドロキノンスルホン酸又はその塩、中性浴ではアスコルビン酸又はその塩などが好ましい。
【0037】
酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態のめっき液における酸化防止剤の添加量は、一般に0.01g/L~20g/Lの範囲、好ましくは0.1g/L~10g/Lの範囲、より好ましくは0.1g/L~5g/Lの範囲にある。
【0038】
〔錯体化剤〕
本実施形態のめっき液は、酸性、弱酸性、中性などの任意のpH領域の錫又は錫合金めっき浴に適用できる。Sn2+イオンは強酸性(pH:<1)では安定であるが、酸性から中性付近(pH:1~7)では白色沈澱を生じ易い。このため、本実施形態の錫又は錫合金めっき液を中性付近の錫めっき浴に適用する場合には、Sn2+イオンを安定化させる目的で、錫用の錯体化剤を添加するのが好ましい。
【0039】
錫用の錯体化剤としては、オキシカルボン酸、ポリカルボン酸、モノカルボン酸を使用できる。具体例としては、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、或はこれらの塩などが挙げられる。好ましくは、グルコン酸、クエン酸、グルコヘプトン酸、グルコノラクトン、グルコヘプトラクトン、或はこれらの塩などである。また、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジオキシビス(エチルアミン)-N,N,N′,N′-テトラ酢酸、メルカプトトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類、グリシン類、ニトリロトリメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、或はこれらの塩などのポリアミンやアミノカルボン酸類も錯体化剤として有効である。
【0040】
錫用の錯体化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態のめっき液における錫用の錯体化剤の添加量は、錫又は錫合金めっき液に含まれる可溶性錫塩化合物中の錫1モルに対して、一般に0.001モル~10モルの範囲、好ましくは0.01モル~5モルの範囲、より好ましくは0.5モル~2モルの範囲にある。
【0041】
また、錫合金めっき液がSnAgめっき液である場合、銀用の錯体化剤として、水溶性スルフィド化合物又は水溶性チオール化合物を用いることができる。
【0042】
〔pH調整剤〕
本実施形態のめっき液は、必要に応じてpH調整剤を含有することができる。pH調整剤の例としては、塩酸、硫酸等の各種の酸、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の各種の塩基などが挙げられる。また、pH調整剤としては、酢酸、プロピオン酸などのモノカルボン酸類、ホウ酸類、リン酸類、シュウ酸、コハク酸などのジカルボン酸類、乳酸、酒石酸などのオキシカルボン酸類なども有効である。
【0043】
〔光沢化剤〕
本実施形態のめっき液は、必要に応じて光沢化剤を含有することができる。光沢化剤としては、芳香族カルボニル化合物が有効である。芳香族カルボニル化合物は、錫合金めっき堆積層中の錫合金の結晶粒子を微細化する作用がある。芳香族カルボニル化合物は、芳香族炭化水素の炭素原子にカルボニル基(-CO-X:但し、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数が1~6個の範囲にあるアルキル基または炭素原子数が1~6個の範囲にあるアルコキシ基を意味する)が結合した化合物である。芳香族炭化水素は、ベンゼン環、ナフタレン環およびアントラセン環を含む。芳香族炭化水素は、置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素原子数が1~6個の範囲にあるアルキル基および炭素原子数が1~6個の範囲にあるアルコキシ基を挙げることができる。カルボニル基は、芳香族炭化水素に直結していてもよいし、炭素原子数が1個~6個の範囲にあるアルキレン基を介して結合してもよい。芳香族カルボニル化合物の具体例としては、ベンザルアセトン、桂皮酸、シンナムアルデヒド、ベンズアルデヒドを挙げることができる。
【0044】
芳香族カルボニル化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本実施形態の錫合金めっき液における芳香族カルボニル化合物の添加量は、一般に0.01mg/L~500mg/Lの範囲、好ましくは0.1mg/L~100mg/Lの範囲、より好ましくは1mg/L~50mg/Lの範囲にある。
【0045】
〔電解めっき方法〕
本実施形態の電解めっき方法では、めっき槽に、上述した錫又は錫合金めっき液を供給して、カソードに接続される被めっき部材、例えば半導体ウエハに不溶性アノードを対向配置して、行われる。本実施形態のめっき液を用いることによって、めっき堆積層の形成時のアノード電流密度を各種デバイスに適した幅広い電流密度に設定することができる。例えば、2ASD~14ASDの範囲にあることが好ましく、4ASD~12ASDの範囲にあることが更に好ましい。2ASD未満では、Snの析出が遅くなり過ぎ、Snの析出に対する界面活性剤の抑制力が強くなり過ぎるおそれがある。14ASDを超えると、Snの析出が速くなり過ぎ、Snの析出に対する界面活性剤の抑制力が弱くなり過ぎるおそれがある。めっき液に上述したポリプロピレングリコールを添加することにより、上記抑制効果が補助されるか、又は抑制効果が緩衝され、リフロー後にボイドの発生しない電流密度の範囲が広くなる。めっき液の液温は、10℃以上50℃以下の範囲にあることが好ましく、20℃以上40℃以下の範囲にあることが更に好ましい。
【実施例
【0046】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0047】
(SnAgめっき液の建浴)
<実施例1>
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、錯体化剤としてチオジエタノールとを混合して溶解させた後、更にメタンスルホン酸Ag液を加えて混合した。混合によって均一な溶液となった後、更に界面活性剤として構造式(PO-EO-PO)を有し、EO比率が40%で、質量平均分子量が3500であるノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)と、光沢剤としてベンザルアセトンと、質量平均分子量が610のポリプロピレングリコールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnAgめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板を、メタンスルホン酸Ag水溶液は、金属Ag板を、それぞれメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0048】
(SnAgめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):50g/L
メタンスルホン酸Ag(Ag+として):0.2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):100g/L
チオジエタノール(錯体化剤として):5g/L
界面活性剤:5g/L
ベンザルアセトン(光沢剤として):10mg/L
ポリプロピレングリコール:1g/L
イオン交換水:残部
【0049】
上記実施例1で述べたポリプロピレングリコールの質量平均分子量、めっき液中の含有割合、及び界面活性剤の構造式、質量平均分子量、ブロックポリマー中のEO比率を、以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
<実施例2~11、比較例1~5>
実施例2~11及び比較例1~5では、ポリプロピレングリコールとして、質量平均分子量が上記表1に示すものを用い、またポリプロピレングリコールを上記表1に示す含有割合にした。また界面活性剤として、上記表1に示すように、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(PO-EO-PO)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(EO-PO-EO)又はエチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(エチレンジアミンEO-PO)の構造式を有するものを用いた。またEO比率と質量平均分子量が上記表1に示す性状のノニオン系界面活性剤を用いた。また界面活性剤の含有割合は、すべて5g/Lであった。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2~11及び比較例1~5のSnAgめっき液を建浴した。
【0052】
(Snめっき液の建浴)
<実施例12>
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、錯体化剤としてチオジエタノールと、界面活性剤として上記表1に示す構造式(PO-EO-PO)を有し、EO比率が40%で、質量平均分子量が3500であるノニオン系界面活性剤と、光沢剤としてベンザルアセトンと、質量平均分子量が700のポリプロピレングリコールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板をメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0053】
(Snめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):50g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):100g/L
チオジエタノール(錯体化剤として):5g/L
界面活性剤:5g/L
ベンザルアセトン(光沢剤として):10mg/L
ポリプロピレングリコール:1g/L
イオン交換水:残部
【0054】
(SnCuめっき液の建浴)
<実施例13>
メタンスルホン酸Sn水溶液に、遊離酸としてのメタンスルホン酸と、錯体化剤としてチオジエタノールとを混合して溶解させた後、更にメタンスルホン酸Cu液を加えて混合した。混合によって均一な溶液となった後、更に界面活性剤として構造式(PO-EO-PO)を有し、EO比率が40%で、質量平均分子量が3500であるノニオン系界面活性剤と、光沢剤としてベンザルアセトンと、質量平均分子量が700のポリプロピレングリコールを加えた。そして最後にイオン交換水を加えて、下記組成のSnCuめっき液を建浴した。なお、メタンスルホン酸Sn水溶液は、金属Sn板を、メタンスルホン酸Cu水溶液は、金属Cu板を、それぞれメタンスルホン酸水溶液中で電解させることにより調製した。
【0055】
(SnCuめっき液の組成)
メタンスルホン酸Sn(Sn2+として):50g/L
メタンスルホン酸Cu(Cu2+として):0.2g/L
メタンスルホン酸(遊離酸として):100g/L
チオジエタノール(錯体化剤として):5g/L
界面活性剤:5g/L
ベンザルアセトン(光沢剤として):10mg/L
ポリプロピレングリコール:1g/L
イオン交換水:残部
【0056】
<比較試験及び評価>
先ず、直径300mmのシリコンウエハの表面に、スパッタリング法によりチタン0.1μm、銅0.3μmの電気導通用シード層を形成し、そのシード層の上にドライフィルムレジスト(膜厚50μm)を積層した。次いで、露光用マスクを介して、ドライフィルムレジストを部分的に露光し、その後、現像処理した。こうして、図1に示すように、シリコンウエハ1の表面に、直径が75μmの開口部であって、開口面積が1dm2であるビア2が150μmピッチで160万個形成されているパターンを有する、膜厚が50μmのレジスト層3を形成した。
【0057】
次に、実施例1~13及び比較例1~5の18種類の建浴したそれぞれのめっき液を用いて、下記のめっき条件で、アノード電流密度を、2ASD、4ASD、6ASD、8ASDの4種類に設定して、それぞれ電解めっきを行った。
【0058】
(めっき条件)
浴量:40L
撹拌形式:バトル撹拌
撹拌速度:10m/分
浴温:25℃
アノード電流密度:2ASD、6ASD、10ASD、14ASDの4種類
アノード材質: 白金コートチタン(Pt/Ti)メッシュ板
【0059】
レジスト層のビアを電解めっきした後で、めっき液からウエハを取り出して、洗浄、乾燥した。引き続いて、アルカリ成分としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を含むレジスト剥離液を用いて、50℃で30分間処理することにより、レジスト層を剥離した。次いで、硫酸と過酸化水素水を含むエッチング液を用いて、25℃で5分間処理することにより、形成されたバンプ下部のシード層をエッチングした。
こうして、1つのダイ(die)上に、直径が75μmであって、膜厚が45μmであるめっき堆積層が150μmピッチで160万個の等しいピッチ間隔で配列されているパターンを有するめっき堆積層付ウエハを作製した。
【0060】
図2(a)にめっき後のレジスト3を除去する前のウエハ1を、図2(b)及び(c)にリフロー後のバンプが形成されたウエハ1をそれぞれ示す。図2において、図1と同じ要素には同一符号を付している。図2(b)には、レジスト3の表面よりも厚くならないようにめっきされたリフロー後の球状のボイドのない正常なバンプ4を示す、また図2(c)には、リフロー後の上部が膨らんだ球状ではあるが、バンプ4内にボイド5が形成されたボイド混入バンプ4を示す。
【0061】
(欠陥バンプの測定)
図2(b)及び(c)に示すめっき後のレジスト3を除去したウエハ1を、リフロー装置(SEMIgear社製)を用いてリフロー処理を行った。リフローはめっき堆積層の表面酸化膜を除去するため、ギ酸と窒素の還元雰囲気下で行い、溶融温度を250℃とした。次に、透過X線装置(Dage社製)を用いて、リフロー処理後の直径300mmのウエハの面内を均等に275箇所、合計5000個のバンプを観察し、各バンプ内に存在するボイドの有無を検査した。
ボイドを有するバンプ毎に、バンプ面積に対するボイド面積を百分率で計算した。バンプ総数の5000個のうち、ボイド面積が1%以上のボイドのあるバンプ(欠陥バンプ)の数をカウントした。その結果を4種類のアノード電流密度毎に、表2に示す
【0062】
【表2】
【0063】
表2から明らかなように、比較例1のめっき液を用いて形成されたバンプについては、ポリプロピレングリコールを含有しないため、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、欠陥バンプ数が371個~3171個と多かった。特に電流密度を14ASDに設定してめっき処理を行った場合、3171個と他の電流密度でのめっき処理と比べて欠陥バンプ数が多かった。
【0064】
比較例2のめっき液を用いて形成されたバンプについては、ポリプロピレングリコールのめっき液中の含有量が0.02g/Lと少な過ぎたため、比較例1よりも欠陥バンプ数は減少したが、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、欠陥バンプ数が64個~428個と多かった。
【0065】
比較例3のめっき液を用いて形成されたバンプについては、ポリプロピレングリコールのめっき液中の含有量が10g/Lと多過ぎたため、比較例1よりも欠陥バンプ数は減少したが、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、欠陥バンプ数が28個~2028個と多かった。特に電流密度を14ASDに設定してめっき処理を行った場合、2028個と他の電流密度でのめっき処理と比べて欠陥バンプ数が多かった。
【0066】
比較例4のめっき液を用いて形成されたバンプについては、ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が400と小さ過ぎたため、比較例1よりも欠陥バンプ数は減少したが、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、欠陥バンプ数が145個~2547個と多かった。特に電流密度を2ASDに設定してめっき処理を行った場合、2547個と他の電流密度でのめっき処理と比べて欠陥バンプ数が多かった。
【0067】
比較例5のめっき液を用いて形成されたバンプについては、ポリプロピレングリコールの質量平均分子量が1000と大き過ぎたため、比較例1よりも欠陥バンプ数は減少したが、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、欠陥バンプ数が892個~2525個と多かった。特に電流密度を14ASDに設定してめっき処理を行った場合、2525個と他の電流密度でのめっき処理と比べて欠陥バンプ数が多かった。
【0068】
これに対して、実施例1~13のめっき液は、ポリプロピレングリコールが含有割合が0.05g/L~5g/Lであり、その質量平均分子量が610~740であったため、これらのめっき液から形成した5000個のバンプにおける欠陥バンプ数は、アノード電流密度が4種類のいずれであっても、0個~31個であり、極めて少なかった。
【0069】
以上の結果から、本発明によれば、各種デバイスに適するように、電流密度を2ASD、6ASD、10ASD又は14ASDのいずれかに設定しても、いずれの電流密度においても、錫含有のバンプにおけるバンプ内のボイドを少なくすることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のめっき液は、半導体ウエハやプリント基板のバンプ電極などのような電子部品の一部を形成するために利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ウエハ
2 ビア(開口部)
3 レジスト層
4 バンプ
5 ボイド
図1
図2