(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】エレベータの巻上機及びエレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
B66B11/08 F
(21)【出願番号】P 2021043063
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】中山 陽介
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/125266(WO,A1)
【文献】特開2018-122961(JP,A)
【文献】特開平6-3163(JP,A)
【文献】中国実用新案第201008122(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸と、
固定軸に回転可能に支持される駆動シーブと、
固定軸の軸心上に配置され、固定軸に取り付けられるエンコーダと、
中心側に開口を有し、駆動シーブの端面に取り付けられるカバー本体と、
カバー本体の開口部に取り付けられ、内側にてエンコーダの回転部と作動的に連結されるエンコーダブラケットと、
エンコーダブラケットの外面からエンコーダの回転部と同軸に突出する突出軸部と、
カバー本体に対するエンコーダブラケットの軸直交方向位置を調整する軸位置調整手段とを備える
エレベータの巻上機。
【請求項2】
軸位置調整手段は、カバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか一方に螺合され、軸直交方向に螺動し、先端がカバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか他方に当接する螺動部材を備える
請求項1に記載のエレベータの巻上機。
【請求項3】
固定軸と、
固定軸に回転可能に支持される駆動シーブと、
固定軸の軸心上に配置され、固定軸に取り付けられるエンコーダと、
中心側に開口を有し、駆動シーブの端面に取り付けられるカバー本体と、
カバー本体の開口部に取り付けられ、内側にてエンコーダの回転部と作動的に連結されるエンコーダブラケットと、
エンコーダブラケットの外面からエンコーダの回転部と同軸に突出する突出軸部と、
カバー本体に対するエンコーダブラケットの傾きを調整する軸平行度調整手段とを備える
エレベータの巻上機。
【請求項4】
軸平行度調整手段は、カバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか一方に螺合され、軸方向に螺動し、先端がカバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか他方に当接する螺動部材を備える
請求項3に記載のエレベータの巻上機。
【請求項5】
駆動シーブは、凹端面を有し、
カバー本体は、駆動シーブの凹端面に取り付けられる
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項6】
カバー本体は、開口部を含むように凹端面を有し、
エンコーダブラケットは、カバー本体の凹端面に取り付けられる
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項7】
エンコーダブラケットのうち、突出軸部が突出する部分を含む中央部は、軸方向内方にオフセットされる
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項8】
固定軸は、中空部を有する中空軸であり、
エンコーダは、固定軸の中空部に配置される
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項9】
カバー本体、エンコーダブラケット及び突出軸部は、駆動シーブの最外端面よりも軸方向内方に配置され、最外端面からはみ出さない
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項10】
エンコーダは、回転部が筒状であるホール型であり、
突出軸部は、エンコーダブラケットを貫通してエンコーダの回転部に挿通される軸体の先端部である
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項11】
エンコーダブラケットは、固定軸の端面にアクセス可能な抜き孔を有する
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のエレベータの巻上機。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の巻上機を備える
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの巻上機及びエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された巻上機は、固定軸(中空状主軸7)と、固定軸に回転可能に支持される駆動シーブ(綱車6)と、固定軸の軸心上に配置され、固定軸に取り付けられるエンコーダ(エンコーダ21)と、駆動シーブの端面に取り付けられ、内側にてエンコーダの回転部と作動的に連結される正面カバー(回転円板状封止体19)と、正面カバーの外面からエンコーダの回転部と同軸に突出する突出軸部(軸状検出部20a)とを備える。そして、特許文献1には、駆動シーブの回転中心線に対するエンコーダの回転部の同軸度が許容範囲内に収まっているかを確認し、許容範囲外である場合、正面カバーの取付位置の調整を行うことにより、エンコーダの位置調整を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、調整手段や調整方法の具体的な開示はない。したがって、特許文献1に係る巻上機においては、調整作業が容易でなく、また、精度の高い調整作業を行うことが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、エンコーダの位置調整を簡単かつ高精度に行うことができるエレベータの巻上機及びエレベータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベータの巻上機は、
固定軸と、
固定軸に回転可能に支持される駆動シーブと、
固定軸の軸心上に配置され、固定軸に取り付けられるエンコーダと、
中心側に開口を有し、駆動シーブの端面に取り付けられるカバー本体と、
カバー本体の開口部に取り付けられ、内側にてエンコーダの回転部と作動的に連結されるエンコーダブラケットと、
エンコーダブラケットの外面からエンコーダの回転部と同軸に突出する突出軸部と、
カバー本体に対するエンコーダブラケットの軸直交方向位置を調整する軸位置調整手段とを備える
エレベータの巻上機である。
【0007】
また、この場合、
軸位置調整手段は、カバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか一方に螺合され、軸直交方向に螺動し、先端がカバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか他方に当接する螺動部材を備える
との構成を採用することができる。
【0008】
また、別の本発明に係るエレベータの巻上機は、
固定軸と、
固定軸に回転可能に支持される駆動シーブと、
固定軸の軸心上に配置され、固定軸に取り付けられるエンコーダと、
中心側に開口を有し、駆動シーブの端面に取り付けられるカバー本体と、
カバー本体の開口部に取り付けられ、内側にてエンコーダの回転部と作動的に連結されるエンコーダブラケットと、
エンコーダブラケットの外面からエンコーダの回転部と同軸に突出する突出軸部と、
カバー本体に対するエンコーダブラケットの傾きを調整する軸平行度調整手段とを備える
エレベータの巻上機である。
【0009】
また、この場合、
軸平行度調整手段は、カバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか一方に螺合され、軸方向に螺動し、先端がカバー本体又はエンコーダブラケットのいずれか他方に当接する螺動部材を備える
との構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係るエレベータの巻上機の一態様として、
駆動シーブは、凹端面を有し、
カバー本体は、駆動シーブの凹端面に取り付けられる
との構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明に係るエレベータの巻上機の他態様として、
カバー本体は、開口部を含むように凹端面を有し、
エンコーダブラケットは、カバー本体の凹端面に取り付けられる
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係るエレベータの巻上機の別の態様として、
エンコーダブラケットのうち、突出軸部が突出する部分を含む中央部は、軸方向内方にオフセットされる
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベータの巻上機のさらに別の態様として、
固定軸は、中空部を有する中空軸であり、
エンコーダは、固定軸の中空部に配置される
との構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係るエレベータの巻上機のさらに別の態様として、
カバー本体、エンコーダブラケット及び突出軸部は、駆動シーブの最外端面よりも軸方向内方に配置され、最外端面からはみ出さない
との構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベータの巻上機のさらに別の態様として、
エンコーダは、回転部が筒状であるホール型であり、
突出軸部は、エンコーダブラケットを貫通してエンコーダの回転部に挿通される軸体の先端部である
との構成を採用することができる。
【0016】
また、本発明に係るエレベータの巻上機のさらに別の態様として、
エンコーダブラケットは、固定軸の端面にアクセス可能な抜き孔を有する
との構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベータは、
上記いずれかの巻上機を備える
エレベータである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、突出軸部を利用することにより、駆動シーブの回転中心線に対するエンコーダの回転部の同軸度が許容範囲内に収まっているかを確認することができ、また、許容範囲外である場合、軸位置調整手段又は軸平行度調整手段を利用することにより、許容範囲内に収まるように調整することができる。このため、本発明によれば、エンコーダの位置調整を簡単かつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る巻上機の断面側面図である。
【
図3】
図3は、巻上機の先端部の拡大断面側面図である。
【
図4】
図4は、巻上機の先端部の拡大断面分解側面図である。
【
図5】
図5は、巻上機の先端部の拡大正面図である。
【
図6】
図6は、他実施形態に係る巻上機の先端部の拡大断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態として、巻上機が昇降路内に配置される、いわゆる機械室なしタイプ(マシンルームレスタイプ)のエレベータについて、
図1ないし
図5を参酌して説明する。
【0021】
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路2と、かご3と、かご3の駆動機構4とを備える。昇降路2は、階層を有する建物内において上下方向に延びる。かご3は、駆動機構4の駆動により、昇降路2内を昇降し、駆動機構4の駆動停止により、指定された階層に停止する。
【0022】
駆動機構4は、かごシーブ40と、第1のオーバーヘッドシーブ41と、巻上機5と、第2のオーバーヘッドシーブ42と、カウンターウェイト43と、カウンターウェイトシーブ44と、主ロープ45とを備える。シーブとは、綱車のことをいう。
【0023】
かごシーブ40は、かご3の下部に配置される。第1のオーバーヘッドシーブ41及び第2のオーバーヘッドシーブ42は、昇降路2内の上部(に配置されるフレーム)に配置される。巻上機5は、昇降路2内の下部に配置される。カウンターウェイト43は、昇降路2の壁面とかご3との間に形成される空間に配置され、昇降路2内を昇降する。カウンターウェイトシーブ44は、カウンターウェイト43の上部に配置される。
【0024】
主ロープ45は、一端45aが昇降路2内の上部(に配置されるフレーム)に固定され、かごシーブ40、第1のオーバーヘッドシーブ41、巻上機5の駆動シーブ54、第2のオーバーヘッドシーブ42及びカウンターウェイトシーブ44に巻き掛けられ、他端45bが昇降路2内の上部(に配置されるフレーム)に固定される。巻上機5の駆動シーブ54が回転駆動することにより、主ロープ45が走行し、これに伴い、かごシーブ40が取り付けられているかご3が昇降路2内を昇降する。同様に、主ロープ45の走行に伴い、カウンターウェイトシーブ44が取り付けられているカウンターウェイト43が昇降路2内を昇降する。
【0025】
巻上機5は、昇降路2内の下部であって、昇降路2の壁面とかご3との間に形成される空間に配置される。巻上機5は、正面側(後述する正面カバー64側)がかご3と対向するように配置される。昇降路2の壁面とかご3の間の空間は幅が狭いため、この種の巻上機5は、薄型巻上機とも呼ばれる。
【0026】
図2に示すように、巻上機5は、ベース50と、固定軸51と、回転体53と、駆動シーブ54とを備える。ベース50は、巻上機5の各種構成を支持する基台である。固定軸51は、ベース50から水平方向に突出する。固定軸51は、ベアリング52を介して回転体53及び駆動シーブ54を回転可能に支持する。駆動シーブ54は、回転体53から水平方向に突出し、回転体53の回転に伴って回転する。駆動シーブ54は、上述のとおり、主ロープ45を走行させ、かご3を昇降させる。
【0027】
ベース50は、周方向に沿って固定鉄心55を備える。固定鉄心55には、固定巻線56が巻かれる。他方、回転体53は、固定鉄心55に対向して永久磁石57を備える。固定鉄心55、固定巻線56及び永久磁石57は、モータ部58を構成する。これにより、固定巻線56に通電されると、回転体53及び駆動シーブ54が回転し、巻上機5が駆動する。
【0028】
固定軸51は、中心線CLを軸心とし、軸心を中心とする中空部51aを有する円筒状の中空軸である。固定軸51は、ベース50と一体形成される。しかし、固定軸51は、ベース50と別体であってもよい。
【0029】
回転体53及び駆動シーブ54は、互いに同軸にかつ固定軸51と同軸に配置される。駆動シーブ54は、回転体53と一体形成される。しかし、駆動シーブ54は、回転体53と別体であってもよい。
【0030】
図3に示すように、巻上機5は、エンコーダ59をさらに備える。エンコーダ59は、かご3の移動速度を算出する根拠となる駆動シーブ54の回転数を計測する。エンコーダ59は、回転部が筒状であるホール型のエンコーダである。エンコーダ59は、固定軸51の中空部51aに配置される。エンコーダ59は、固定軸51の軸心上に配置される。
【0031】
エンコーダ59は、取付部材60を介して固定軸51に取り付けられる。取付部材60は、板バネ等が所定の形状に曲げられた弾性片(リーフバネ)である。取付部材60の一端部は、固定軸51の端面51bに取り付けられる。より詳しくは、固定軸51の端面51bにネジ孔が形成され、取付部材60の一端部にネジ挿通孔が形成され、ネジ孔に固定ネジ61が螺合、締結されることにより、取付部材60の一端部は、固定軸51の端面51bに固定される。取付部材60の他端部は、図示はしないが、一端部と同様にして、エンコーダ59の周面又は端面に固定される。ネジ孔及び取付部材60は、たとえば、固定軸51及びエンコーダ59の周方向の等分3箇所に設けられる。エンコーダ59は、弾性を有する取付部材60により、固定軸51の中空部51aにおいて、ある程度の変位が可能となる。
【0032】
図3ないし
図5に示すように、巻上機5は、軸体62と、正面カバー64とをさらに備える。軸体62は、エンコーダ59の回転部と係合し、エンコーダ59の回転部に対する回転軸となる。正面カバー64は、駆動シーブ54の端面に取り付けられるとともに、軸体62と係合する。これにより、駆動シーブ54の回転は、正面カバー64及び軸体62を介してエンコーダ59の回転部に伝達される。
【0033】
軸体62は、固定軸51の軸心上に配置される。軸体62は、外側軸部62aと、内側軸部62bと、中段部62cとを備える。外側軸部62aは、正面カバー64の後述する挿通孔67aに嵌入、挿通され、先端部側が正面カバー64の外面から突出する。内側軸部62bは、エンコーダ59の回転部に嵌入、挿通され、先端部側がエンコーダ59の端面から突出する。中段部62cは、外側軸部62a及び内側軸部62bよりも大径に形成される。
【0034】
中段部62cの外側軸部62a側の端面は、正面カバー64の内面に当接し、正面カバー64の係止部となる。中段部62cの内側軸部62b側の端面は、エンコーダ59の回転部の端面に当接し、エンコーダ59の回転部の係止部となる。外側軸部62a及び内側軸部6bのそれぞれ突出部分の中段部62c側の周面には、ネジが形成される。中段部62cの両端面に正面カバー64及びエンコーダ59の回転部が当接した状態で、各ネジにリングナット63が螺合、締結されることにより、エンコーダ59の回転部、軸体62及び正面カバー64は、互いに同軸に一体化される。
【0035】
ところで、エンコーダ59は、正面カバー64によって覆い隠されている。このため、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度が許容範囲内に収まっているかを直接的に確認することはできない。そこで、正面カバー64の外面から突出し、エンコーダ59の回転部と同軸である外側軸部62aの突出部分(突出軸部)の、駆動シーブ54の回転中心線に対する同軸度を計測することにより、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度を間接的に計測することができる。突出軸部62aの長さ(突出量)は、5mm以上、あるいは10mm以上である。また、計測の精度を上げるため、突出軸部62aの周面は、面粗度Raが0.8(μm)以上12.5(μm)以下となるように仕上げられている。
【0036】
正面カバー64は、カバー本体65と、エンコーダブラケット66とを備える。カバー本体65は、駆動シーブ54の端面に取り付けられ、中心側に開口65aを有する環状のプレートである。エンコーダブラケット66は、カバー本体65の端面に取り付けられ、カバー本体65の開口65aを塞ぐ円盤状のプレートである。カバー本体65、エンコーダブラケット66ともに、金属製のプレートである。
【0037】
カバー本体65は、駆動シーブ54の端面のうち、外周部の内側に形成される凹端面54aに取り付けられる。より詳しくは、駆動シーブ54の凹端面54aにボルト孔が形成され、カバー本体65の外周部にボルト挿通孔が形成され、ボルト孔にボルト70が螺合、締結されることにより、カバー本体65は、駆動シーブ54の凹端面54aに固定される。ボルト孔、ボルト挿通孔及びボルト70は、たとえば、駆動シーブ54及びカバー本体65の周方向の等分4箇所に設けられる。カバー本体65は、駆動シーブ54の凹端面54aに取り付けられることにより、駆動シーブ54の外周部の最外端面よりも軸方向内方又は最外端面と面一に配置され、最外端面からはみ出ない又は大きくはみ出ない。
【0038】
エンコーダブラケット66は、カバー本体65の端面のうち、外周部の内側に形成される凹端面65cに取り付けられる。より詳しくは、カバー本体65の凹端面65cにボルト孔が形成され、エンコーダブラケット66の外周部にボルト挿通孔が形成され、ボルト孔にボルト70が螺合、締結されることにより、エンコーダブラケット66は、カバー本体65の凹端面65cに固定される。ボルト孔、ボルト挿通孔及びボルト70は、たとえば、カバー本体65及びエンコーダブラケット66の周方向の等分4箇所に設けられる。エンコーダブラケット66は、カバー本体65の凹端面65cに取り付けられることにより、カバー本体65の外周部の最外端面よりも軸方向内方又は最外端面と面一に配置され、最外端面からはみ出ない又は大きくはみ出ない。また、このため、エンコーダブラケット66は、駆動シーブ54の外周部の最外端面よりも軸方向内方又は最外端面と面一に配置され、最外端面からはみ出ない又は大きくはみ出ない。
【0039】
エンコーダブラケット66は、中央部67と、周壁部68と、外周部69とを備える。中央部67は、上述した、軸体62の外側軸部62aが嵌入、挿通される挿通孔67aを有する円盤状の部分である。周壁部68は、中央部67の周縁部から軸方向外方に突出する円筒状の部分である。外周部69は、周壁部68の端部から径方向外方に突出し、上述したボルト挿通孔を有するフランジ状の部分である。この形状により、中央部67は、外周部69よりも軸方向内方に配置される。すなわち、中央部67は、軸方向内方にオフセットされる。また、このため、中央部67に挿通された軸体62の外側軸部62aは、駆動シーブ54の外周部の最外端面よりも軸方向内方又は最外端面と面一に配置され、最外端面からはみ出ない又は大きくはみ出ない。
【0040】
中央部67及び周壁部68は、カバー本体65の開口65aに挿入される部分である。中央部67及び周壁部68の外径は、開口65aの内径よりも小さい。このため、中央部67及び周壁部68の外周面と開口65aの内周面65bとの間には、隙間が形成される。この隙間により、エンコーダブラケット66は、開口65a内において、径方向、すなわち固定軸51の軸心と直交する軸直交方向に変位可能となる。
【0041】
中央部67は、周方向の等分箇所に複数の抜き孔67bを有する。抜き孔67bは、正面カバー64を軽量化するためと、固定軸51の端面51bにアクセスするため、すなわち、固定ネジ61の締結操作又は締結解除操作をするための2つの目的のために設けられる。
【0042】
巻上機5は、軸位置調整手段71と、軸平行度調整手段72とをさらに備える。軸位置調整手段71は、駆動シーブ54の回転中心線に対する突出軸部62aの軸位置が許容範囲外である場合、すなわち、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の軸位置が許容範囲外である場合、これを調整するためのものである。軸平行度調整手段72は、駆動シーブ54の回転中心線に対する突出軸部62aの平行度が許容範囲外である場合、すなわち、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の平行度が許容範囲外である場合、これを調整するためのものである。軸位置調整、軸平行度調整の両方又はいずれかにより、エンコーダ59の位置調整、すなわち、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度を調整することができる。
【0043】
軸位置調整手段71は、正面カバー64において、カバー本体65に対するエンコーダブラケット66の軸直交方向位置を調整するものである。具体的には、軸位置調整手段71は、ホーローセット(イモネジ)である。エンコーダブラケット66の周壁部68の周方向の複数箇所にネジ孔が貫通して形成され、各ネジ孔にホーローセットが螺合される。ホーローセットは、周壁部68の外面側から回転操作可能であり、回転操作により螺動し、周壁部68の内面に出退可能である。周壁部68は、カバー本体65の内周面65bと対向する。このため、ホーローセットの先端は、内周面65bに当接する。周壁部68の内面からの各ホーローセットの突出量(突出量が0の場合も含む)を調整することにより、カバー本体65に対するエンコーダブラケット66の軸直交方向位置を調整することができる。ネジ孔及びホーローセットは、たとえば、周壁部68の周方向の等分4箇所に設けられる。
【0044】
軸平行度調整手段72は、正面カバー64において、カバー本体65に対するエンコーダブラケット66の傾き(たおれ)を調整するものである。具体的には、軸平行度調整手段72は、ホーローセットである。エンコーダブラケット66の外周部69の周方向の複数箇所にネジ孔が貫通して形成され、各ネジ孔にホーローセットが螺合される。ホーローセットは、外周部69の外面側から回転操作可能であり、回転操作により螺動し、外周部69の内面に出退可能である。外周部69は、カバー本体65の凹端面65cと対向する。このため、ホーローセットの先端は、凹端面65cに当接する。外周部69の内面からの各ホーローセットの突出量(突出量が0の場合も含む)を調整することにより、カバー本体65に対するエンコーダブラケット66の傾きを調整することができる。ネジ孔及びホーローセットは、たとえば、外周部69の周方向の等分4箇所であって、軸位置調整手段71と同位相に設けられる。
【0045】
本実施形態に係る巻上機5は、以上の構成からなる。エンコーダ59の心出し(駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度の調整)方法は、以下のとおりである。
【0046】
まず、エンコーダブラケット66を止めているボルト70をエンコーダブラケット66が多少の力でずれ動かない程度に緩めておく。次に、突出軸部62aの軸方向に離間する2箇所にてこ式等のダイヤルゲージのプローブを当てておく。次に、モータ部58の作動により回転体53を低速で回転させる。回転体53が回転すると、駆動シーブ54、正面カバー64が回転し、これに伴い、突出軸部62aが回転する。もしエンコーダ59の回転部が駆動シーブ54の回転中心線と同軸になっていないと、ダイヤルゲージは触れる。次に、ダイヤルエージの振れが是正されるように、軸位置調整手段71及び/又は軸平行度調整手段72を操作して、突出軸部62aの心出し、すなわち、エンコーダ59の心出しを行う。心出しが完了すると、ボルト70を締結し、固定する。これらの手順により、エンコーダ59の心出し作業が完了する。
【0047】
以上のとおり、本実施形態に係る巻上機5によれば、突出軸部62aを利用することにより、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度が許容範囲内に収まっているかを確認することができ、また、許容範囲外である場合、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72を利用することにより、許容範囲内に収まるように調整することができる。しかも、これらの作業をかご3側から行うことができる。
【0048】
また、本実施形態に係る巻上機5によれば、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72は、ホーローセットといった螺動部材を用いて簡易に構成することができ、かつ、簡易な操作で調整作業を効率的に行うことができる。
【0049】
また、本実施形態に係る巻上機5によれば、i)駆動シーブ54は、凹端面54aを有し、カバー本体65は、駆動シーブ54の凹端面54aに取り付けられ、ii)カバー本体65は、凹端面65cを有し、エンコーダブラケット66は、カバー本体65の凹端面65cに取り付けられ、iii)エンコーダブラケット66の中央部67は、軸方向内方にオフセットされ、iv)固定軸51は、中空部51aを有する中空軸であり、エンコーダ59は、固定軸51の中空部51aに配置される。このため、本実施形態に係る巻上機5によれば、巻上機5の奥行寸法を小さくすることができ、巻上機5をより薄型にすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る巻上機5によれば、エンコーダ59の回転部とエンコーダブラケット66とを連結する軸部及び突出軸部62aは、エンコーダブラケット66とは別体の軸体62により構成される。このため、本実施形態に係る巻上機5によれば、かかる構成を安価かつ高精度を作製することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施形態においては、カバー本体65及びエンコーダブラケット66は、円形に形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。カバー本体及びエンコーダブラケットは、多角形等、その他の形状であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72の螺動部材(ホーローセット)は、エンコーダブラケット66に設けられる。より詳しくは、軸位置調整手段71の螺動部材は、エンコーダブラケット66の軸方向に沿った壁部(周壁部68)に螺合され、軸直交方向に螺動し、先端がカバー本体65の軸方向に沿った面(内周面65b)に当接する。そして、軸平行度調整手段72の螺動部材は、エンコーダブラケット66の軸直交方向に沿った部分(外周部69)に螺合され、軸方向に螺動し、先端がカバー本体65の軸直交方向に沿った面(凹端面65c)に当接する。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。
図6に示すように、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72の螺動部材は、カバー本体65に設けられるようにしてもよい。より詳しくは、軸位置調整手段71の螺動部材は、カバー本体65の軸方向に沿った壁部(周壁部)に螺合され、軸直交方向に螺動し、先端がエンコーダブラケット66の軸方向に沿った面(筒状部の外周面)に当接する。そして、軸平行度調整手段72の螺動部材は、カバー本体65の軸直交方向に沿った部分(環状部)に螺合され、軸方向に螺動し、先端がエンコーダブラケット66の軸直交方向に沿った面(端面)に当接する。
【0054】
また、上記実施形態においては、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72の両方の螺動部材がエンコーダブラケット66に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。カバー本体65又はエンコーダブラケット66のいずれか一方に、軸位置調整手段71又は軸平行度調整手段72のいずれか一方の螺動部材が設けられ、カバー本体65又はエンコーダブラケット66のいずれか他方に、軸位置調整手段71又は軸平行度調整手段72のいずれか他方の螺動部材が設けられるようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、巻上機5は、軸位置調整手段71及び軸平行度調整手段72の両方を備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。巻上機5は、軸位置調整手段71又は軸平行度調整手段72のいずれか一方を備えるものであってもよい。
【0056】
また、上記本実施形態においては、巻上機の奥行寸法を小さくするために、i)駆動シーブ54は、凹端面54aを有し、カバー本体65は、駆動シーブ54の凹端面54aに取り付けられ、ii)カバー本体65は、凹端面65cを有し、エンコーダブラケット66は、カバー本体65の凹端面65cに取り付けられ、iii)エンコーダブラケット66の中央部67は、軸方向内方にオフセットされ、iv)固定軸51は、中空部51aを有する中空軸であり、エンコーダ59は、固定軸51の中空部51aに配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明において、i)ないしiv)は、必須ではなく、いずれかのみを採用すること、又はいずれも採用しないことも可能である。
【0057】
また上記実施形態においては、固定軸(主軸)51は、中空軸である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。固定軸は、中実軸であってもよい。この場合、エンコーダは、固定軸の端面に近接して配置される。
【0058】
また、上記実施形態においては、エンコーダ59は、回転部が筒状であるホール型である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。エンコーダは、回転軸が突出する軸型であってもよい。この場合、回転軸は、エンコーダブラケットを貫通し、先端部が突出軸部となる長さを有するものであってもよい。あるいは、回転軸は、通常の長さであり、この回転軸に延長軸が接続固定され、延長軸の先端部が突出軸部となるものであってもよい。
【0059】
また、「環状」、「円盤」、「円筒」、「円形」、「端部」、「水平」、「等分」、「面一」、「直交」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
【0060】
また、上記実施形態においては、回転体(ロータ)53が固定鉄心55及び固定巻線56の内側に配置されるインナーロータ型である。しかし、本発明は、回転体(ロータ)の外周部が固定鉄心及び固定巻線の外側に配置されるアウターロータ型にも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0061】
1…エレベータ、2…昇降路、3…かご、4…駆動機構、40…かごシーブ、41…第1のオーバーヘッドシーブ、42…第2のオーバーヘッドシーブ、43…カウンターウェイト、44…カウンターウェイトシーブ、45…主ロープ、45a…一端、45b…他端、5…巻上機、50…ベース、51…固定軸、51a…中空部、51b…端面、52…ベアリング、53…回転体、54…駆動シーブ、54a…凹端面、55…固定鉄心、56…固定巻線、57…永久磁石、58…モータ部、59…エンコーダ、60…取付部材、61…固定ネジ、62…軸体、62a…外側軸部(突出軸部)、62b…内側軸部、62c…中段部、63…リングナット、64…正面カバー、65…カバー本体、65a…開口、65b…内周面、65c…凹端面、66…エンコーダブラケット、67…中央部、67a…挿通孔、67b…抜き孔、68…周壁部、69…外周部、70…ボルト、71…軸位置調整手段、72…軸平行度調整手段、CL…中心線
【要約】
【課題】エンコーダ59の位置調整を簡単かつ高精度に行うことができるエレベータ1の巻上機5及びエレベータ1を提供する。
【解決手段】エンコーダブラケット66の外面からエンコーダ59の回転部と同軸に突出する突出軸部62aを利用することにより、駆動シーブ54の回転中心線に対するエンコーダ59の回転部の同軸度が許容範囲内に収まっているかを確認することができ、また、許容範囲外である場合、軸位置調整手段71又は軸平行度調整手段72を利用することにより、許容範囲内に収まるように調整することができる。
【選択図】
図2