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特許7064185船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 34/26 20200101AFI20220427BHJP
【FI】
B63B34/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020190165
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】520413380
【氏名又は名称】有限会社チェスト
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 秀司
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0060737(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0038637(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242857(US,A1)
【文献】米国特許第06345582(US,B1)
【文献】特開2007-008178(JP,A)
【文献】特開昭63-305091(JP,A)
【文献】実開平01-125296(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 34/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮き具と、
前記浮き具に取り付けられる第1支持部材と、
カヌー又はカヤックの船体に装着される第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを結合する結合構造と、を備え、
前記結合構造は、
前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の高さ方向に沿った所定範囲内での移動をガイドすることで、前記高さ方向における前記第2支持部材に対する前記浮き具の位置を可変とするガイド機構と、
前記所定範囲内の任意の位置で前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の相対位置を固定するロック機構と、を有し、
前記第2支持部材は、
前記船体に固定される固定部と、
前記固定部に対して取り外し可能に取り付けられる着脱部と、を有し、
前記着脱部は、前記固定部に対して前記着脱部を押し付ける操作により前記固定部に取り付けられる、
船体取り付け用浮き具装置。
【請求項2】
前記ガイド機構は、筒状部材と前記高さ方向に沿って前記筒状部材に挿入される棒状部材とを含み、前記筒状部材内で前記棒状部材を前記高さ方向に沿って移動させることで、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の移動をガイドし、
前記ロック機構は、前記筒状部材に対する前記棒状部材の前記高さ方向への移動を規制することで、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の相対位置を固定する、
請求項1に記載の船体取り付け用浮き具装置。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記第2支持部材と結合され、前記第2支持部材に対する上方への突出量と下方への突出量とが相違する、
請求項2に記載の船体取り付け用浮き具装置。
【請求項4】
浮き具と、
前記浮き具に取り付けられる第1支持部材と、
カヌー又はカヤックの船体に装着される第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とを結合する結合構造と、を備え、
前記結合構造は、
前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の高さ方向に沿った所定範囲内での移動をガイドすることで、前記高さ方向における前記第2支持部材に対する前記浮き具の位置を可変とするガイド機構と、
前記所定範囲内の任意の位置で前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の相対位置を固定するロック機構と、を有し、
前記ガイド機構は、筒状部材と前記高さ方向に沿って前記筒状部材に挿入される棒状部材とを含み、前記筒状部材内で前記棒状部材を前記高さ方向に沿って移動させることで、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の移動をガイドし、
前記ロック機構は、前記筒状部材に対する前記棒状部材の前記高さ方向への移動を規制することで、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の相対位置を固定し、
前記筒状部材は、前記第2支持部材と結合され、前記第2支持部材に対する上方への突出量と下方への突出量とが相違する、
船体取り付け用浮き具装置。
【請求項5】
前記第2支持部材は、前記高さ方向と直交する方向に長さを有する横棒部を有し、
前記横棒部の長手方向に直交する断面の外周形状は非円形である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の船体取り付け用浮き具装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の船体取り付け用浮き具装置と、
ユーザが着座するシートを含み、前記船体に装着されるシートベースと、を備え、
前記第2支持部材は、前記シートベースに固定されることによって前記船体に装着される、
浮き具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カヌー又はカヤックの船体に取り付けて使用される船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、小型船舶の船体に取り付けられるサイドフロート装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。小型船舶は乗船者の人数及び体重、更に搭載物の重量により、中/大型の船舶より喫水線が変化し易いので、関連技術に係るサイドフロート装置は、船体にサイドフロート装置を取付けた後でも、簡単かつ瞬時にフロートの水面からの位置を調整可能な構成を採用する。具体的には、関連技術では、操作棒を倒すことで外筒を内筒に対して回転させ、位置決めピンの先端を位置決め穴に挿入することにより、浮き具(フロート)の水面からの高さを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/148060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記関連技術では、シーンによって簡単かつ瞬時に浮き具の高さを調整できるように、位置決めピンの先端を位置決め穴に挿入するだけで浮き具の高さが決まるような、操作性を重視した構成が採用されている。したがって、浮き具の高さは、予め決められている位置決め穴の位置に応じて段階的かつ大まかに調整されるだけであって、多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時に、浮き具を最適な高さに調整することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時においても、浮き具を最適な高さに調整しやすい船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に係る船体取り付け用浮き具装置は、浮き具と、第1支持部材と、第2支持部材と、結合構造と、を備える。前記第1支持部材は、前記浮き具に取り付けられる。前記第2支持部材は、カヌー又はカヤックの船体に装着される。前記結合構造は、前記第1支持部材と前記第2支持部材とを結合する。前記結合構造は、ガイド機構と、ロック機構と、を有する。前記ガイド機構は、前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の高さ方向に沿った所定範囲内での移動をガイドすることで、前記高さ方向における前記第2支持部材に対する前記浮き具の位置を可変とする。前記ロック機構は、前記所定範囲内の任意の位置で前記第2支持部材に対する前記第1支持部材の相対位置を固定する。
【0007】
本発明の他の局面に係る浮き具システムは、前記船体取り付け用浮き具装置と、ユーザが着座するシートを含み、前記船体に装着されるシートベースと、を備える。前記第2支持部材は、前記シートベースに固定されることによって前記船体に装着される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時においても、浮き具を最適な高さに調整しやすい船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る浮き具装置を示す斜視図である。
図2図2は、同上の浮き具装置を示す分解斜視図である。
図3図3は、同上の浮き具装置の結合構造周辺の一部破断した正面図である。
図4A図4Aは、同上の浮き具装置の結合構造周辺の一部破断した正面図である。
図4B図4Bは、同上の浮き具装置の結合構造周辺の右側面図である。
図5図5は、同上の浮き具装置の結合構造周辺の一部破断した正面図である。
図6A図6Aは、同上の浮き具装置の要部の正面図である。
図6B図6Bは、同上の浮き具装置の要部の正面図である。
図7A図7Aは、実施形態1の変形例に係る浮き具装置の要部の分解斜視図である。
図7B図7Bは、同上の浮き具装置の要部の正面図である。
図8図8は、実施形態2に係る浮き具装置を示す分解斜視図である。
図9図9は、同上の浮き具装置を示す斜視図である。
図10図10は、実施形態2の変形例に係る浮き具装置を示す分解斜視図である。
図11図11は、実施形態3に係る浮き具装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。また、本開示で参照する図面は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。例えば、図1における浮き具2の形状、第1支持部材31の形状、及び第2支持部材32の形状等は、いずれも説明のために模式的に表しているに過ぎず、図示されている形状に限定する趣旨ではない。
【0011】
(実施形態1)
[1]概要
まず、本実施形態に係る船体取り付け用浮き具装置(単に「浮き具装置」とも呼ぶ)1の概要について、図1を参照して説明する。
【0012】
浮き具装置1は、カヌー又はカヤックの船体B1に取り付けて使用される装置(器具)である。つまり、浮き具装置1は、元々、船体B1に一体に設けられているのではなく、船体B1に対して後付けされる装置である。一般に多種多様なカヌー又はカヤックが流通しているため、この種の浮き具装置1が取り付けられる船体B1についてもサイズ及び形状等は多種多様である。このような多種多様な船体B1への取り付けを考慮した場合、上記関連技術のように、浮き具2(図1参照)の浮き具の高さを段階的かつ大まかに調整するだけの構成では、浮き具2を最適な高さに調整することは困難である。これに対して、本実施形態に係る浮き具装置1は、下記の構成により、多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時においても、浮き具2を最適な高さに調整しやすくする。
【0013】
すなわち、本実施形態に係る浮き具装置1は、図1に示すように、浮き具2と、第1支持部材31と、第2支持部材32と、結合構造4と、を備える。第1支持部材31は、浮き具2に取り付けられる。第2支持部材32は、カヌー又はカヤックの船体B1に装着される。結合構造4は、第1支持部材31と第2支持部材32とを結合する。結合構造4は、ガイド機構41と、ロック機構42と、を有する。ガイド機構41は、第2支持部材32に対する第1支持部材31の高さ方向D1に沿った所定範囲R1(図4A参照)内での移動をガイドすることで、高さ方向D1における第2支持部材32に対する浮き具2の位置を可変とする。ロック機構42は、所定範囲R1内の任意の位置で第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定する。
【0014】
この構成によれば、浮き具装置1は、船体B1に対する浮き具2の相対的な高さ(つまり高さ方向D1における相対位置)を、結合構造4にて調整可能としている。ここで、結合構造4は、ガイド機構41にて、第2支持部材32に対する第1支持部材31の高さ方向D1に沿った所定範囲R1内での移動をガイドする。つまり、第1支持部材31は、所定範囲R1内であれば第2支持部材32に対して高さ方向D1に相対移動可能である。そして、結合構造4は、ロック機構42にて、所定範囲R1内の任意の位置で第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定する。要するに、ガイド機構41によって第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対移動が許容されている所定範囲R1内の「任意の」位置で、ロック機構42が第1支持部材31と第2支持部材32との位置決めを行う。したがって、第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置の微調整が可能となり、高さ方向D1における第2支持部材32(船体B1)に対する浮き具2の位置を微調整可能となる。このように、高さ方向D1における浮き具2の位置が微調整可能であることで、多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時においても、浮き具2を最適な高さに調整しやすくする。
【0015】
ここで、カヌー又はカヤックにおいては、一般的に、その他のボート等の船舶に比べて、小型で、船底が浅く、かつ全長も短いため、船体B1の進行時における浮き具2と水面との接触度合いがより重要になる。例えば、水面に対して浮き具2の沈み具合が深過ぎる(つまり浮き具2の位置が下過ぎる)と、船体B1の安定性は高くなるものの、浮き具2が受ける水の抵抗が大きくなりすぎて、船体B1の推進力の妨げとなる。反対に、水面に対する浮き具2の沈み具合が浅過ぎる(つまり浮き具2の位置が上過ぎる)と、浮き具2による船体B1の推進力の妨害は抑制されるものの、船体B1の安定性が低くなる。さらに、カヌー又はカヤックの船体B1は、船底の形状一つとっても多種態様であり、船体B1に生じる浮力も様々であるため、船体B1の安定性及び推進力の両立を図るには、浮き具2と水面との接触度合いを船体B1ごとに最適に調整することが求められる。そのため、本実施形態のように、高さ方向D1における浮き具2の位置が微調整可能であって、浮き具2を最適な高さに調整しやすいことは、カヌー又はカヤックにとっては特に有用である。
【0016】
[2]定義
【0017】
本開示でいう「高さ方向D1」は、水平面に対する高さの方向、つまり鉛直方向を意味する。より具体的には、浮き具装置1が船体B1に取り付けられて使用される使用状態(図1の状態)での鉛直方向を高さ方向D1と定義する。また、本実施形態では、説明の便宜上、使用状態での船体B1の向きを基準として左右方向D2及び前後方向D3を定義する。つまり、左右方向D2は船体B1の幅方向に相当し、前後方向D3は船体B1の進行方向に相当する。高さ方向D1、左右方向D2及び前後方向D3は、互いに直交する。
【0018】
本開示でいう「浮き具」は、浮力によって水上(水面)に浮かぶ器具であって、フロート(float)又はフローター(floater)ともいう。このような浮き具2は、水(海水及び淡水を含む)に対して浮力を生じ水面付近に浮かぶ機能があればよく、浮き具2が水に浮かんだ状態で、浮き具2の一部又は全体が水中に潜っていてもよい。本実施形態では、浮き具2の例として、カヌー又はカヤックにおいて船体B1の舷外に張り出して取り付けられる安定用の浮材であるアウトリガー(Outrigger)を想定して説明する。つまり、浮き具装置1が船体B1に取り付けられた状態では、浮き具2は、船体B1の左舷(左側面)と右舷(右側面)との少なくとも一方から左右方向D2に張り出す(突出する)ように配置され、船体B1の水上での姿勢の安定性を向上させる。
【0019】
本開示でいう「カヌー又はカヤック」は、カナディアンカヌー又は種々のカヤックを含む小型船舶を意味する。特に「カヤック」には、シットオントップカヤック、フォールディングカヤック、シーカヤック及びリバーカヤック等の様々な種類のカヤックを含む。本実施形態では一例として、カヤックフィッシングに使用されるカヤック(フィッシングカヤック)に、浮き具装置1が使用される(取り付けられる)場合について説明するが、浮き具装置1が使用されるカヌー又はカヤックの種類を限定する趣旨ではない。
【0020】
本開示でいう「第2支持部材32に対する浮き具2の位置」は、いわゆる「浮き具2の高さ」であって、水面からの浮き具2の高さに相当する。本実施形態では、高さ方向D1における第2支持部材32と浮き具2との間の距離H1(図1参照)によって「第2支持部材32に対する浮き具2の位置」を表す。より詳細には、第2支持部材32の高さ方向D1の中心と、第1支持部材の高さ方向D1の中心との間の距離H1を、「第2支持部材32に対する浮き具2の位置」と定義する。
【0021】
本開示でいう「平行」とは、一平面上の二直線であればどこまで延長しても交わらない場合、つまり二者間の角度が厳密に0度(又は180度)である場合に加えて、二者間の角度が0度に対して数度(例えば10度未満)程度の誤差範囲に収まる関係にあることをいう。同様に、本開示でいう「直交」とは、二者間の角度が厳密に90度で交わる場合に加えて、二者間の角度が90度に対して数度(例えば10度未満)程度の誤差範囲に収まる関係にあることをいう。
【0022】
本開示でいう「非円形」とは、真円ではない形状を意味し、例えば、多角形状、楕円形状及び長円形状等を含む。本実施形態では一例として、後述する横棒部321(図2参照)の長手方向に直交する断面の外周形状は、四角形状(矩形状)であることとする。
【0023】
[3]詳細
次に、本実施形態に係る浮き具装置1の詳細について、図1図6を参照して説明する。本実施形態では、上述したように船体B1はカヤックフィッシングに使用されるカヤックである。ここでは特に、シットオン型のカヤックの船体B1に浮き具装置1が取り付けられる場合を想定する。図1等においては、船体B1の一部を想像線(二点鎖線)で示している。
【0024】
本実施形態に係る浮き具装置1は、図示しない取付用のねじ(ボルトを含む)等を用いて、船体B1に直接的に取り付けられる。つまり、取付用のねじを外すことにより、浮き具装置1を船体B1から取り外すことが可能となる。このように、浮き具装置1は、船体B1から取り外し可能な状態で、船体B1に対して後付けされる。本実施形態では、浮き具装置1が船体B1に取り付けられた状態で、浮き具2は、船体B1の左舷、つまり船体B1の乗員(ユーザ)が船首(つまり前方)を見たときの左手側となる船体B1の左側面から、左右方向D2に沿って左方(図1上では右方)に張り出す(突出する)ように配置される。
【0025】
浮き具装置1は、図1及び図2に示すように、浮き具2、第1支持部材31、第2支持部材32及び結合構造4を備えている。また、浮き具装置1は、例えば、第2支持部材32とガイド機構41(後述する筒状部材51)とを結合するねじ(ボルトを含む)、座金(ワッシャ)、ナット等の、浮き具装置1の構成部品同士を結合するための締結具を更に備えている。ただし、これらの締結具は、あくまで構成部品同士を締結するための一手段に過ぎず、例えば、溶接、一体成型又は接着等の手段で代替することも可能であるので、図1等においては、これらの締結具の図示を適宜省略している。
【0026】
また、本実施形態では、浮き具装置1における浮き具2及び締込ねじ53等を除く大抵の部品の材質は、金属である。ただし、水面上で使用される性質上、浮き具装置1の部品には、当然ながら、防水及び防錆等の性能を考慮したSUS等の金属部品(又はメッキ処理が施された金属部品)が用いられる。その上で、浮き具装置1の部品は、それぞれに求められる十分な強度を保つように、材質及び厚み等が設定されている。
【0027】
浮き具2は、水に対して浮力を生じる部品であって、一例として、ポリエチレン等の樹脂製の部品である。浮き具2の形状自体は、適宜変更可能であるが、例えば、船体B1の進行方向、つまり前後方向D3に沿って長さを有する形状に形成される。
【0028】
第1支持部材31は、浮き具2に取り付けられる部品である。第1支持部材31は、図2に示すように、挿入部311と、カバープレート312と、ねじ313と、締付具314と、を有している。挿入部311は、金属製の筒状部材(中空パイプ)からなる。挿入部311は、高さ方向D1と直交する方向(ここでは左右方向D2)に長さを有している。本実施形態では、挿入部311は円筒状の丸パイプであって、挿入部311の長手方向(ここでは左右方向D2)に直交する断面の外周形状は円形(真円形状)である。挿入部311は、後述するガイド機構41の棒状部材52と一体化されており、挿入部311及び棒状部材52の全体でL字状に形成されている。ここでは、L字状の丸パイプのうち、左右方向D2に沿った短辺部分が挿入部311となり、高さ方向D1に沿った長辺部分が棒状部材52となる。
【0029】
挿入部311は、浮き具2を左右方向D2に貫通している開口孔21に挿入される。カバープレート312は、例えば金属製であって、浮き具2の開口孔21周辺を上部から覆うように浮き具2に取り付けられる。ねじ313は、カバープレート312を通して、挿入部311に形成されているねじ孔315に締め付けられ、浮き具2に対する第1支持部材31の回転を防止する。締付具314は、例えば、メタルバンド等からなり、カバープレート312及び挿入部311が挿通された状態で、両者を締め付けるように固定する。これにより、第1支持部材31は、挿入部311が浮き具2の開口孔21に挿入された状態で、浮き具2に対して固定される。
【0030】
第2支持部材32は、船体B1に装着される部品である。第2支持部材32は、図2に示すように、横棒部321と、ジョイント金具322と、ノブ付ねじ323と、ステー324と、を有している。横棒部321は、金属製の筒状部材(中空パイプ)からなる。横棒部321は、高さ方向D1と直交する方向(ここでは左右方向D2)に長さを有している。横棒部321の長手方向(ここでは左右方向D2)に直交する断面の外周形状は非円形である。このように、横棒部321の断面の外周形状が非円形であることにより、船体B1に対する横棒部321の回転が抑制され、船体B1に対する浮き具2の傾きを抑制しやすい。本実施形態では一例として、横棒部321は角筒状の角パイプであって、横棒部321の長手方向に直交する断面の外周形状は四角形状(矩形状)である。
【0031】
横棒部321は、ジョイント金具322及びノブ付ねじ323にて船体B1に固定される。ジョイント金具322は、例えば凸型ジョイント金具であって、船体B1との間に横棒部321を挟んだ状態で、長手方向の両端部が取付用のねじにて船体B1に固定される。このとき、ジョイント金具322の凸形状の中央部と船体B1(の上面)との間には隙間(空間)が形成されるので、この隙間に横棒部321が挿入される形になる。ノブ付ねじ323は、ジョイント金具322を通して、横棒部321に形成されているねじ孔325に締め付けられ、ジョイント金具322と横棒部321とを固定する。
【0032】
本実施形態では、ジョイント金具322及びノブ付ねじ323は2つずつ設けられており、横棒部321の長手方向(左右方向D2)の2箇所で、横棒部321を船体B1に固定する。具体的には、図1に示すように、ジョイント金具322は、船体B1のガンネル(デッキサイド)の上面に固定され、横棒部321が船体B1のガンネル(デッキサイド)の上面に載せ置かれた状態で、第2支持部材32が船体B1に装着される。よって、取付用のねじを外すことにより、横棒部321をジョイント金具322ごと船体B1から取り外すことが可能である。
【0033】
また、ジョイント金具322を船体B1側に残したままでも、ノブ付ねじ323を外すことで横棒部321を船体B1から取り外すことが可能である。つまり、横棒部321を、ジョイント金具322の凸形状の中央部と船体B1との間の隙間から、左右方向D2に沿って引き抜くように操作することで、ジョイント金具322は船体B1に固定したままで、横棒部321を船体B1から取り外すことができる。この場合、ジョイント金具322の凸形状の中央部と船体B1との間の隙間に対して、横棒部321を左右方向D2に沿って挿入するように操作し、かつノブ付ねじ323を締め付けることで、横棒部321を船体B1に取り付けることができる。ノブ付ねじ323は、工具を用いることなく手で操作可能であるので、ジョイント金具322を船体B1に残したままであれば、工具を用いることなく船体B1への横棒部321の着脱が可能である。
【0034】
また、本実施形態では、ノブ付ねじ323が締め付けられるねじ孔325は、1つのノブ付ねじ323に対して複数(ここでは4つ)用意されている。つまり、横棒部321の長手方向(左右方向D2)に沿って複数のねじ孔325が形成されている。ノブ付ねじ323が複数のねじ孔325のうちの任意のねじ孔325に対して締め付けられることで、横棒部321の長手方向におけるジョイント金具322の取り付け位置の調整が可能である。つまり、船体B1の左右のガンネル(デッキサイド)の幅に応じた位置に、ジョイント金具322の取り付け位置を調整することができる。
【0035】
あるいは、ジョイント金具322におけるノブ付ねじ323が挿通される孔にねじ(雌ねじ)が形成されていてもよい。この場合、ノブ付ねじ323がジョイント金具322に対して締め付けられることで、ジョイント金具322を貫通したノブ付ねじ323の先端が横棒部321を船体B1へ押し付けるようにして、横棒部321が船体B1に固定される。これにより、ねじ孔325の有無にかかわらず、横棒部321の長手方向(左右方向D2)の任意の位置で、ジョイント金具322にて船体B1の左右のガンネル(デッキサイド)に横棒部321を取り付けることが可能である。さらに、ノブ付ねじ323の先端と横棒部321との間に金属スペーサを挿入し、ノブ付ねじ323の先端が、金属スペーサを介して横棒部321を船体B1へ押し付けてもよい。
【0036】
横棒部321は、後述するガイド機構41の筒状部材51と一体化されており、横棒部321及び筒状部材51の全体でT字状に形成されている。ステー324は、横棒部321と筒状部材51とを結合するための部品であって、本実施形態では、L字状のステー324が2つ設けられている。これら2つのステー324は、それぞれ長辺部がねじにて横棒部321の長手方向(左右方向D2)の一端部(本実施形態では左端部)の高さ方向D1の両側に固定され、短辺部が筒状部材51の外周面にねじにて固定される。
【0037】
結合構造4は、第1支持部材31と第2支持部材32とを結合するための構造である。結合構造4は、図2に示すように、ガイド機構41と、ロック機構42と、を有している。本実施形態では、ガイド機構41は、筒状部材51と棒状部材52とを含む。棒状部材52は、高さ方向D1に沿って筒状部材51に挿入される。ガイド機構41は、筒状部材51内で棒状部材52を高さ方向D1に沿って移動させることで、第2支持部材32に対する第1支持部材31の移動をガイドする。ロック機構42は、筒状部材51に対する棒状部材52の高さ方向D1への移動を規制することで、第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定する。
【0038】
以下、結合構造4のより詳細な構成について、図3図5を参照して説明する。図3図5は、いずれも結合構造4の一部を破断した正面図であって、図3では、棒状部材52(及び第1支持部材31)を想像線(二点鎖線)で示している。
【0039】
筒状部材51及び棒状部材52は、いずれも金属製の筒状部材(中空パイプ)からなる。筒状部材51及び棒状部材52は、いずれも高さ方向D1に長さを有している。本実施形態では、筒状部材51及び棒状部材52は、いずれも円筒状の丸パイプであって、筒状部材51及び棒状部材52の各々の長手方向(ここでは高さ方向D1)に直交する断面の外周形状及び内周形状は円形(真円形状)である。棒状部材52は筒状部材51に挿入されるので、棒状部材52の外径は筒状部材51の内径以下である。本実施形態では特に、棒状部材52の外周面と筒状部材51の内周面との間に隙間が生じるように、棒状部材52の外径は筒状部材51の内径よりも小さく設定される。ただし、棒状部材52が筒状部材51に挿入された状態で、棒状部材52が筒状部材51に対して大きく傾かないように、棒状部材52の外径と筒状部材51の内径との差は小さく設定される。また、棒状部材52は筒状部材51よりも長い。そのため、図3に示すように、棒状部材52が筒状部材51に挿入された状態では、筒状部材51の長手方向(高さ方向D1)の少なくとも一端面から棒状部材52が突出することになる。
【0040】
上述した構成により、棒状部材52が筒状部材51に挿入された状態では、筒状部材51及び棒状部材52は高さ方向D1には相対的に移動可能となる一方で、高さ方向D1に直交する左右方向D2及び前後方向D3への相対的な移動が規制される。つまり、ガイド機構41によれば、筒状部材51内で棒状部材52を高さ方向D1に沿ってのみ移動させることが可能となる。言い換えれば、高さ方向D1における筒状部材51に対する棒状部材52の相対的な移動が、筒状部材51及び棒状部材52にてガイド(案内)されることになる。
【0041】
ここで、本実施形態では、上述したように、筒状部材51は第2支持部材32の横棒部321と(ステー324にて)結合されており、棒状部材52は第1支持部材31の挿入部311に結合(一体化)されている。そのため、例えば、筒状部材51の位置が固定された状態で棒状部材52が筒状部材51に対して高さ方向D1に沿って移動すると、棒状部材52に結合されている第1支持部材31の高さ方向D1の位置が変化する。反対に、棒状部材52の位置が固定された状態で筒状部材51が棒状部材52に対して高さ方向D1に沿って移動すると、筒状部材51に結合されている第2支持部材32の高さ方向D1の位置が変化する。結果的に、ガイド機構41は、筒状部材51内で棒状部材52を高さ方向D1に沿って移動させることで、第2支持部材32に対する第1支持部材31の移動をガイドすることになる。
【0042】
また、本実施形態では、ガイド機構41は、筒状部材51及び棒状部材52に加えて、締込ねじ53を更に有している。締込ねじ53は、図4A及び図4Bに示すように、筒状部材51に形成されている長孔512を通して、棒状部材52に形成されているねじ孔521に締め付けられる。図4Bは、図4Aを左右方向D2の一方(図4Aの左側)から見た図、つまり浮き具装置1の結合構造4周辺の右側面図であって、締込ねじ53を想像線(二点鎖線)で示している。長孔512は、筒状部材51の周方向の一部(本実施形態では筒状部材51の右側面)に形成され、筒状部材51の長手方向(高さ方向D1)に沿って延長されている。ねじ孔521は、棒状部材52の周方向の一部(本実施形態では棒状部材52の右側面)に形成されている。
【0043】
したがって、締込ねじ53は、ねじ孔521に対して緩く締め付けれた状態(以下「仮締状態」という)では、長孔512内を高さ方向D1に沿って移動可能である。そのため、締込ねじ53が仮締状態にあれば、筒状部材51及び棒状部材52は高さ方向D1には相対的に移動可能となる一方で、筒状部材51内での棒状部材52の回転が規制される。つまり、締込ねじ53によれば、筒状部材51内で棒状部材52を高さ方向D1に沿って直動させることのみが可能となり、筒状部材51内での棒状部材52の捻じれ(回転)も抑制される。さらに、締込ねじ53の仮締状態においては、長孔512内での締込ねじ53の可動範囲に限って、棒状部材52が筒状部材51に対して相対的に移動可能となる。ここで、締込ねじ53の高さ方向D1の可動範囲(上死点及び下死点)は長孔512の長さによって規定されるので、筒状部材51に対する棒状部材52の相対的に移動範囲も長孔512の長さによって規定されることになる。よって、図4Aに示すように、第2支持部材32に対する第1支持部材31の可動範囲である所定範囲R1は、長孔512の長さに応じて決まる。
【0044】
また、本実施形態では、締込ねじ53が締め付けられるねじ孔521は、図2に示すように、複数(ここでは4つ)用意されている。つまり、棒状部材52の長手方向(高さ方向D1)に沿って複数のねじ孔521が形成されている。締込ねじ53が複数のねじ孔521のうちの任意のねじ孔521に対して締め付けられることで、棒状部材52の長手方向における締込ねじ53の取り付け位置の調整が可能である。つまり、棒状部材52の長手方向において、ねじ孔521に応じた位置に、第2支持部材32に対する第1支持部材31の可動範囲である所定範囲R1を設定することができる。一例として、高さ方向D1における長孔512の長さは100mm、複数(ここでは4つ)のねじ孔521のピッチ(間隔)は47mmに設定される。これにより、第2支持部材32に対する第1支持部材31の可動範囲を実質的に、かなり広く確保することが可能となる。
【0045】
また、ロック機構42は、ガイド機構41にて高さ方向D1に沿って筒状部材51に対して棒状部材52を相対的に移動させた後に、筒状部材51に対する棒状部材52の相対位置を固定(ロック)する。つまり、ロック機構42が作用していない状態では、上述のようにガイド機構41により筒状部材51に対する棒状部材52の相対的な移動が許容され、ロック機構42が作用することで当該移動が規制(禁止)される。その結果、第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置が固定され、高さ方向D1における船体B1に対する浮き具2の相対的な位置(浮き具2の高さH1)が位置決めされる。
【0046】
本実施形態では、ロック機構42は、例えば、対象物(筒状部材51及び棒状部材52)をクランプするメタルバンド等の部品にて構成されている。つまり、ロック機構42は、環状であって、その内径を小さくするような締付操作によって対象物をクランプする。具体的には、図3に示すように、筒状部材51の長手方向(高さ方向D1)の一部には、筒状部材51の周方向の一部のみが開口する切欠形状の開口部511が形成されている。本実施形態では一例として、開口部511は筒状部材51の左側面に形成されている。
【0047】
ロック機構42は、図3に示すように、周方向の一部が開口部511に嵌るように、開口部511の位置に合わせて筒状部材51の外周面に取り付けられる。したがって、ロック機構42の締付操作により、開口部511から進入したロック機構42によって、筒状部材51及び棒状部材52が結束される形でクランプされ、筒状部材51に対する棒状部材52の相対位置が固定される。つまり、筒状部材51内の棒状部材52は、左右方向D2において、開口部511から進入したロック機構42と筒状部材51の内周面との間に挟まれ、筒状部材51の内周面に押し付けられるので、高さ方向D1への移動が規制(禁止)されることになる。本実施形態では、ロック機構42は2つ設けられており、筒状部材51の長手方向(高さ方向D1)の2箇所で、筒状部材51及び棒状部材52をクランプする。具体的には、図3に示すように、筒状部材51における長孔512に対して高さ方向D1の両側に、開口部511が形成されており、各開口部511に対応する位置にロック機構42が取り付けられる。
【0048】
上述した構成の浮き具装置1によれば、締込ねじ53が仮締状態にあれば、ユーザは、図4Aに示すように、筒状部材51に対して、矢印D11の向き(下方)又は矢印D12の向き(上方)に棒状部材52を自由に動かすことで、浮き具2の高さH1を調整できる。このとき、棒状部材52は、筒状部材51に対して無段階かつ連続的に移動することで、所定範囲R1内であればいずれの位置にでも、第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を調整することができる。結果的に、高さ方向D1における第2支持部材32(及び船体B1)に対する浮き具2の位置を無段階かつ連続的に調整でき、浮き具2の高さH1の微調整が実現される。
【0049】
また、ユーザは、所望の位置で締込ねじ53を仮締状態から更に締め付けた状態(以下、「本締状態」という)にすることで、浮き具2の高さH1を仮保持することができる。つまり、締込ねじ53が本締状態となれば、ロック機構42が無くても、締込ねじ53と棒状部材52との間に筒状部材51の一部を挟み込むことで、ある程度の強度で、筒状部材51に対する棒状部材52の相対位置を保持できる。したがって、ユーザは、浮き具2の高さH1を所望の高さに調整した後、締込ねじ53を本締状態とすることで、第1支持部材31又は浮き具2を支え続けなくても、そのときの浮き具2の高さH1を保持できる。
【0050】
それから、ユーザは、ロック機構42の締付操作をすることで、図5に示すように、筒状部材51及び棒状部材52をクランプする。これにより、筒状部材51に対する棒状部材52の相対位置が固定(ロック)され、高さ方向D1における船体B1に対する浮き具2の相対的な位置(浮き具2の高さH1)が固定される。このとき、締込ねじ53が本締状態にあって浮き具2の高さH1が仮保持されていれば、ユーザは、両手を使ってロック機構42の締付操作を行うことができ、ロック機構42の締付操作が容易になる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る浮き具装置1では、ガイド機構41が筒状部材51と棒状部材52とを含むことで、比較的簡単でかつ堅牢な機構で、第2支持部材32に対する第1支持部材31の移動をガイドすることができる。ロック機構42についても、筒状部材51に対する棒状部材52の高さ方向D1への移動を規制すればよいので、一例としてメタルバンド等の、比較的簡単でかつ堅牢な機構にて、第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定することができる。
【0052】
ところで、本実施形態では、図6Aに示すように、筒状部材51は、第2支持部材32と結合され、第2支持部材32に対する上方への突出量A1と下方への突出量A2とが相違する。すなわち、筒状部材51には、第2支持部材32の横棒部321がステー324にて結合されているが、横棒部321は高さ方向D1における筒状部材51の中心からずれた位置に結合されている。図6Aの例では、第2支持部材32からの筒状部材51の上方への突出量A1は、筒状部材51の下方への突出量A2よりも小さい(A1<A2)。これにより、図6Bに示すように、筒状部材51の上下を逆にして、棒状部材52と組み合わせた際に、浮き具2の高さH1を大幅に変化させることができる。つまり、棒状部材52に対して組み合わせる筒状部材51の向きを逆にすることで、図6Aの状態における可動範囲(所定範囲R1)を超えて、浮き具2の高さH1を調整可能となる。
【0053】
[4]変形例
実施形態1では、シットオン型のカヤックの船体B1に取り付けられる浮き具装置1を例示したが、勿論、この例に限らず、例えば、シットイン型のカヤックの船体B1に浮き具装置1が取り付けられてもよい。このような場合を想定して、第2支持部材32(横棒部321)の船体B1への取り付け構造は、例えば、図7Aに示すように、適宜変更可能である。図7Aの例では、第2支持部材32は、ジョイント金具322及びノブ付ねじ323に代えて、はさみ金具326、締付具327、ねじ328及びノブ付ねじ329を有している。
【0054】
この構成では、図7Bに示すように、はさみ金具326の基端部を締付具327にて横棒部321に固定しつつ、ねじ328にて、はさみ金具326の先端部を横棒部321から浮かせた状態とする。この状態で、ノブ付ねじ329が、はさみ金具326を通して、横棒部321内のインサートナット330に締め付けられることで、はさみ金具326の先端部と横棒部321との間に、船体B1の一部を挟み込むようにして、横棒部321が船体B1に固定される。このとき、第2支持部材32は、船体B1におけるコックピットの内側から、一対のはさみ金具326にてコックピットの開口周縁を挟み込みようにして船体B1に装着される。横棒部321自体は、ジョイント金具322を用いた取り付け構造と、はさみ金具326を用いた取り付け構造との両方に対応していることが好ましい。
【0055】
実施形態1では、船体B1に対して左右方向D2の一方(左舷側)にのみ浮き具2が取り付けられる例を示したが、この例に限らず、例えば、浮き具2は、船体B1に対して左右方向D2の他方(右舷側)にのみ取り付けられてもよい。また、浮き具装置1が浮き具2を複数備えていてもよく、例えば、浮き具2を2つ備える場合には、船体B1に対して左右方向D2の両方(左舷側及び右舷側)にそれぞれ浮き具2が取り付けられてもよい。さらに、浮き具2が船体B1に対して左右方向D2の一方(左舷側)に張り出すように取り付けられることも必須ではなく、例えば、浮き具2は船体B1の前後方向D3の少なくとも一方に張り出すように取り付けられてもよい。
【0056】
また、実施形態1では、筒状部材51は第2支持部材32(の横棒部321)に結合され、棒状部材52は第1支持部材31(の挿入部311)に結合されているが、この構成は必須ではない。つまり、例えば、筒状部材51が第1支持部材31に結合され、棒状部材52が第2支持部材32に結合されてもよい。
【0057】
また、結合構造4は、第2支持部材32に対する第1支持部材31の高さ方向D1に沿った所定範囲R1内での移動をガイド機構41でガイドし、所定範囲R1内の任意の位置で第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置をロック機構42で固定する構成であればよく、実施形態1で示した構成に限らない。例えば、ロック機構42として、メタルバンド以外のクランプ部品を用いてもよい。他の例として、ロック機構42は、筒状部材51内で棒状部材52の一部が拡径することにより、棒状部材52の移動を規制する構成であってもよい。また、ガイド機構41とロック機構42とは、1つの機構で実現されてもよい。例えば、内周面にねじ(雌ねじ)が形成された筒状部材51内で、外周面にねじ(雄ねじ)が形成された棒状部材52を回転させることで、棒状部材52を高さ方向D1に移動させ、棒状部材52の回転を止めることで第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定してもよい。他の例として、例えばウォームギア及びラック等を用いてギア方式で、ガイド機構41及びロック機構42を実現してもよい。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態に係る船体取り付け用浮き具装置1Aは、図8及び図9に示すように、船体B1に対して浮き具2をワンタッチで取り付け可能である点で、実施形態1に係る船体取り付け用浮き具装置1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、第2支持部材32は、固定部61と、着脱部62と、を有している。固定部61は、船体B1(図9参照)に固定される。着脱部62は、固定部61に対して取り外し可能に取り付けられる。着脱部62は、固定部61に対して着脱部62を押し付ける操作により固定部61に取り付けられる。つまり、本実施形態では、第2支持部材32を、船体B1に固定される固定部61と、固定部61に対してワンタッチで取り付け可能な着脱部62とに分割したことで、船体B1に対する浮き具2のワンタッチ取り付けを可能とする。
【0060】
具体的には、固定部61及び着脱部62は、いずれも金属製の筒状部材(中空パイプ)からなる。固定部61及び着脱部62は、いずれも高さ方向D1と直交する方向(ここでは左右方向D2)に長さを有している。固定部61及び着脱部62は、いずれも角筒状の角パイプであって、固定部61及び着脱部62の各々の長手方向に直交する断面の外周形状は四角形状(矩形状)である。固定部61は、ジョイント金具322及びノブ付ねじ323にて船体B1に固定される(図9参照)。一方、着脱部62は、長手方向(左右方向D2)の一端部(本実施形態では左端部)が筒状部材51と(ステー324にて)結合されている。
【0061】
そして、着脱部62が固定部61に取り付けられた状態では、固定部61及び着脱部62は互いに平行となるように高さ方向D1に並べて配置され、かつ着脱部62が固定部61の上方に位置する(図9参照)。要するに、本実施形態では基本的に、実施形態1における横棒部321の機能が、固定部61及び着脱部62に分離して設けられている。言い換えれば、実施形態1における横棒部321が2部品(固定部61及び着脱部62)に分割されているのであって、これら固定部61及び着脱部62間の取り付け構造として、ワンタッチで取り付け可能な構造を採用する。
【0062】
より詳細には、図8に示すように、第2支持部材32は、固定部61及び着脱部62間の取り付け構造として、第1ワンタッチ継手63、第2ワンタッチ継手64及びノブ付固定ねじ65を有している。第1ワンタッチ継手63、第2ワンタッチ継手64及びノブ付固定ねじ65は、複数(ここでは2つ)ずつ設けられている。第1ワンタッチ継手63は、固定部61の上面に固定される。第2ワンタッチ継手64は、着脱部62の下面に固定される。第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64は、例えば、金属配管同士の連結等にも用いられる互いに対をなすワンタッチ継手である。ノブ付固定ねじ65は、着脱部62の透孔621を通して固定部61内のインサートナット611に締め付けられる。
【0063】
上記構成によれば、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64は、図9に示すように、その軸方向(高さ方向D1)に沿って第2ワンタッチ継手64を第1ワンタッチ継手63に押し付けることにより、互いに結合(連結)される。要するに、図9の例では、ユーザは、第2ワンタッチ継手64が固定された着脱部62を、第1ワンタッチ継手63が固定された固定部61の上方から、下方に向けて押し付けるように操作することで、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64を互いに結合(連結)できる。ユーザは、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64が結合された状態で、ノブ付固定ねじ65を、固定部61の内のインサートナット611に締め付けることにより、着脱部62を固定部61に対して確実に固定する。
【0064】
着脱部62を固定部61から取り外す際、ユーザは、ノブ付固定ねじ65を固定部61(インサートナット611)から外し、更に第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64の結合を解除する。第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64の結合の解除は、例えば、第2ワンタッチ継手64のフランジ部を(上方に)引き上げるような操作により実現される。
【0065】
本実施形態の構成によれば、固定部61を船体B1側に残したままでも、着脱部62を固定部61から取り外すことで、浮き具2を第1支持部材31ごと船体B1から取り外すことが可能である。そして、浮き具2を船体B1に取り付ける際には、固定部61に対して着脱部62を一方向(本実施形態では下方)に押し付けるワンタッチ操作により、固定部61に着脱部62を取り付ければよいので、簡単な操作で船体B1への浮き具2の取り付けが可能である。さらに、ノブ付固定ねじ65によって、万一、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64の結合が解除されても、着脱部62を固定部61に対して確実に固定し続けることができる。ノブ付固定ねじ65は、工具を用いることなく手で操作可能であるので、本実施形態の構成では、工具を用いることなく船体B1への浮き具2の着脱が可能である。
【0066】
実施形態2で説明した種々の構成は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせることが可能である。例えば、図10に示すように、船体B1への固定部61の取り付け構造は、はさみ金具326を用いた取り付け構造であってもよい。すなわち、図10に示す変形例では、ジョイント金具322に代えて、実施形態1の変形例として説明した図7A及び図7Bと同様のはさみ金具326、締付具327、ねじ328及びノブ付ねじ329を用いて、固定部61が選択B1に取り付けられる。この場合において、固定部61自体は、ジョイント金具322を用いた取り付け構造と、はさみ金具326を用いた取り付け構造との両方に対応していることが好ましい。
【0067】
(実施形態3)
本実施形態に係る船体取り付け用浮き具装置1Bは、図11に示すように、シートベース100と共に浮き具システム10を構成する点で、実施形態2に係る船体取り付け用浮き具装置1Aと相違する。以下、実施形態2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0068】
言い換えれば、本実施形態に係る浮き具システム10は、船体取り付け用浮き具装置1Bと、シートベース100と、を備える。シートベース100は、ユーザが着座するシート101を含み、船体B1に装着される。第2支持部材32は、シートベース100に固定されることによって船体B1に装着される。つまり、本実施形態に係る浮き具システム10は、浮き具2に加えて、ユーザが着座するためのシート101を含んでいる。
【0069】
具体的には、シートベース100は、左右方向D2に長い長方形状の横板102と、前後方向D3に長い長方形状の縦板103と、を有している。縦板103は、横板102の左端部から前方に突出するように横板102に結合されており、横板102及び縦板103の全体で平面視L字状に形成されている。シート101は、横板102上にスペーサを介して設置されている。横板102は、適宜の取り付け構造にて船体B1に固定される。さらに、横板102の上面には第1ワンタッチ継手63が固定される。
【0070】
そして、着脱部62は、シートベース100の横板102に対して取り外し可能に取り付けられる。着脱部62が横板102に取り付けられた状態では、横板102及び着脱部62は互いに平行となるように高さ方向D1に並べて配置され、かつ着脱部62が横板102の上方に位置する。図11の例では、ユーザは、第2ワンタッチ継手64が固定された着脱部62を、第1ワンタッチ継手63が固定された横板102の上方から、下方に向けて押し付けるように操作することで、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64を互いに結合(連結)できる。ユーザは、第1ワンタッチ継手63及び第2ワンタッチ継手64が結合された状態で、ノブ付固定ねじ65を、横板102のねじ孔104に締め付けることにより、着脱部62を横板102に対して確実に固定する。要するに、本実施形態では基本的に、実施形態2における固定部61に代えて、シートベース100の横板102が採用されており、横板102及び着脱部62間の取り付け構造として、ワンタッチで取り付け可能な構造を採用する。
【0071】
また、縦板103には、例えば、ハンドエレキ(エレクトリック・トローリング・モータ)等を搭載するためのエレキ台105、及び計器類等の電子機器等が設けられる。さらに、横板102及び縦板103の少なくとも一方には、例えば、釣竿を保持するホルダー、及び小物を収容可能な収容ボックス等、様々なアタッチメントを取り付け可能である。図11の例においては、横板102上には、船体B1に固定されるリーシュコードを通すためのフック106が設けられている。フック106は、船体B1の左右のガンネル(デッキサイド)に対応して2つずつ設けられている。これにより、横板102の前後方向D3の両側でガンネルに固定されるリーシュコードを、2つのフック106を通すように設置可能である。
【0072】
本実施形態の構成によれば、シートベース100と浮き具2とを、まとめて船体B1に装着することが可能である。実施形態3で説明した種々の構成は、実施形態1又は実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせることが可能である。例えば、船体B1への横板102の取り付け構造は、ジョイント金具322を用いた取り付け構造と、はさみ金具326を用いた取り付け構造とのいずれかであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B 船体取り付け用浮き具装置
2 浮き具
4 結合構造
10 浮き具システム
31 第1支持部材
32 第2支持部材
41 ガイド機構
42 ロック機構
51 筒状部材
52 棒状部材
61 固定部
62 着脱部
100 シートベース
101 シート
321 横棒部
A1,A2 突出量
B1 船体
D1 高さ方向
R1 所定範囲
【要約】
【課題】多種多様なカヌー又はカヤックへの取り付け時においても、浮き具を最適な高さに調整しやすい船体取り付け用浮き具装置及び浮き具システムを提供する。
【解決手段】船体取り付け用浮き具装置1は、浮き具2と、第1支持部材31と、第2支持部材32と、結合構造4と、を備える。第1支持部材31は、浮き具2に取り付けられる。第2支持部材32は、カヌー又はカヤックの船体B1に装着される。結合構造4は、第1支持部材31と第2支持部材32とを結合する。結合構造4は、ガイド機構41と、ロック機構42と、を有する。ガイド機構41は、第2支持部材32に対する第1支持部材31の高さ方向D1に沿った所定範囲内での移動をガイドすることで、高さ方向D1における第2支持部材32に対する浮き具2の位置を可変とする。ロック機構42は、所定範囲内の任意の位置で第2支持部材32に対する第1支持部材31の相対位置を固定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11