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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】自転車の吊下装置
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/04 20060101AFI20220427BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B62H3/04
B61D37/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017161578
(22)【出願日】2017-08-24
(65)【公開番号】P2019038362
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391046621
【氏名又は名称】株式会社三木製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391024951
【氏名又は名称】JR東日本テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】赤田 慎治
(72)【発明者】
【氏名】永井 岳
(72)【発明者】
【氏名】田口 敬文
(72)【発明者】
【氏名】品川 孝美
(72)【発明者】
【氏名】村上 隼人
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢二
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05246120(US,A)
【文献】特開2011-042192(JP,A)
【文献】特開2005-297586(JP,A)
【文献】国際公開第2016/115600(WO,A1)
【文献】独国実用新案第9104041(DE,U1)
【文献】独国特許出願公開第19539788(DE,A1)
【文献】特開平07-018897(JP,A)
【文献】特開2008-074274(JP,A)
【文献】特開平06-219355(JP,A)
【文献】実開平05-042076(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/04
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の前輪を吊下する自転車の吊下装置であって、
縦面に対して基端部が回転自在に支持され、前記縦面に沿って倒伏する不使用時の倒伏位置と使用時に下方へ回転して先端が前記自転車の前輪の回転中心を越えて突出した状態で前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する起立位置との間で起伏するアーム部材を備えており、
前記縦面は、前記アーム部材が使用時に起立位置まで下方へ回転したときに当該アーム部材と協同して前記自転車の前輪を保持しているとともに、
前記アーム部材は、その長手方向の長さを前記自転車の前輪の大きさに応じて変更する変更手段を備え、
前記変更手段は、基端側アームと先端側アームとを有し、前記基端側アームに対する前記先端側アームの回転により当該先端側アームを短尺位置から長尺位置に変換し、その長尺位置において前記基端側アームに係止ピンが係止された前記先端側アームを保持していることを特徴とする自転車の吊下装置。
【請求項2】
自転車の前輪を吊下する自転車の吊下装置であって、
縦面に対して基端部が回転自在に支持され、前記縦面に沿って倒伏する不使用時の倒伏位置と使用時に下方へ回転して先端が前記自転車の前輪の回転中心を越えて突出した状態で前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する起立位置との間で起伏するアーム部材を備えており、
前記縦面は、前記アーム部材が使用時に起立位置まで下方へ回転したときに当該アーム部材と協同して前記自転車の前輪を保持しているとともに、
前記アーム部材は、その長手方向の長さを前記自転車の前輪の大きさに応じて変更する変更手段を備え、
前記変更手段は、基端側アームと先端側アームとを有し、前記基端側アームに対する前記先端側アームのスライドにより当該先端側アームを短尺位置から長尺位置に変換し、その長尺位置において前記基端側アームにピンが保持された前記先端側アームを保持していることを特徴とする自転車の吊下装置。
【請求項3】
前記縦面には、その縦面側において前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する前輪側包持部が設けられている請求項1又は請求項2に記載の自転車の吊下装置。
【請求項4】
前記縦面には、前記自転車の後輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する後輪側包持部を備えている請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の自転車の吊下装置。
【請求項5】
前記縦面としては、上下方向へ延びる断面略凹字状のレール状部材の底面が適用されている請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の自転車の吊下装置。
【請求項6】
前記レール状部材は、移動用車両の座席の後面に取り付けられている請求項5に記載の自転車の吊下装置。
【請求項7】
前記レール状部材は、移動用車両の壁面に取り付けられている請求項5に記載の自転車の吊下装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車の前輪を吊下する自転車の吊下装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、床面に立設された支持柱から突出する左右一対の吊下げアームを設け、この吊下げアームの先端に自転車の前輪のハブ部を係止することで、自転車の前輪を吊下するようにした自転車の吊下装置は知られている(特許文献1参照)。この場合、各吊下げアームは、駆動手段によって支持柱に沿った昇降移動が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平4-64388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものでは、駆動手段を備えているために構造が大型化する上、支持柱から各吊下げアームが突出しているために不使用時に吊下げアームが邪魔になり、不使用時の空きスペースを有効利用できないといった課題を有している。
【0005】
しかも、近来の自転車にあっては、各部位の材質の見直しなどによって大幅な軽量化がなされており、例えば前輪のリムなどにも高価な材料が適用されることがある。そのため、前輪のハブ部を係止する際に、左右双方向からの吊下げアームが前輪のリムに接触すると、前輪のリムに傷が付くおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、不使用時の空きスペースを有効利用することができ、前輪を吊下する際に前輪のリムに対する傷付きを確実に防止することができる自転車の吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明では、自転車の前輪を吊下する自転車の吊下装置を前提とする。加えて、縦面に対して基端部を回転自在に支持し、前記縦面に沿って倒伏する不使用時の倒伏位置と使用時に下方へ回転して先端が前記自転車の前輪の回転中心を越えて突出した状態で前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する起立位置との間で起伏するアーム部材を備える。更に、前記縦面は、前記アーム部材が使用時に起立位置まで下方へ回転したときに当該アーム部材と協同して前記自転車の前輪を保持するとともに、前記アーム部材に、その長手方向の長さを前記自転車の前輪の大きさに応じて変更する変更手段を設ける。そして、前記変更手段に、基端側アームと先端側アームとを設け、前記基端側アームに対する前記先端側アームの回転により当該先端側アームを短尺位置から長尺位置に変換し、その長尺位置において前記基端側アームに係止ピンが係止された前記先端側アームを保持することを特徴としている。
これに対し、自転車の前輪を吊下する自転車の吊下装置を同様に前提とする。加えて、縦面に対して基端部を回転自在に支持し、前記縦面に沿って倒伏する不使用時の倒伏位置と使用時に下方へ回転して先端が前記自転車の前輪の回転中心を越えて突出した状態で前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する起立位置との間で起伏するアーム部材を備える。更に、前記縦面は、前記アーム部材が使用時に起立位置まで下方へ回転したときに当該アーム部材と協同して前記自転車の前輪を保持するとともに、前記アーム部材に、その長手方向の長さを前記自転車の前輪の大きさに応じて変更する変更手段を設ける。そして、前記変更手段に、基端側アームと先端側アームとを設け、前記基端側アームに対する前記先端側アームのスライドにより当該先端側アームを短尺位置から長尺位置に変換し、その長尺位置において前記基端側アームにピンが保持された前記先端側アームを保持することを特徴としている。
【0008】
また、前記縦面に、その縦面側において前記前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する前輪側包持部を設けていてもよい。
【0010】
また、前記縦面に、前記自転車の後輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する後輪側包持部を設けていてもよい。
【0011】
また、前記縦面として、上下方向へ延びる断面略凹字状のレール状部材の底面を適用していてもよい。
【0012】
更に、前記レール状部材を、移動用車両の座席の後面に取り付けていてもよい。
【0013】
これに対し、前記レール状部材を、移動用車両の壁面に取り付けていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上、要するに、縦面に基端部が回転自在に支持されたアーム部材を、縦面に沿った不使用時の倒伏位置に変換することで、不使用時にアーム部材が邪魔になることがなく、不使用時の空きスペースを有効利用することができる。
【0015】
しかも、使用時に下方へ回転して起立位置に変換した際に前輪の回転中心を越えて突出するアーム部材の先端によって前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持した状態で前輪を吊下することで、吊下装置により前輪を吊下する際に前輪のリムに触れることなく前輪のタイヤ部分のみを左右両方向からも包持して自転車の姿勢を安定して保持しつつ、前輪のリムに対する傷付きを確実に防止することができる。
【0016】
また、縦面側において前輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持する前輪側包持部によって、前輪を吊下したアーム部材と協同して自転車の前輪を保持することで、前輪の吊下した際にタイヤ部分を2点で安定して吊下することができ、自転車の姿勢をより安定して保持することができる。
【0017】
また、アーム部材の長手方向の長さを自転車の前輪の大きさに応じて変更することで、大人用の自転車及び子供用の自転車も吊下することができ、利便性を高めることができる。
【0018】
また、縦面に設けた後輪側包持部によって、自転車の後輪のタイヤ部分のみを左右両方向にも回り込んで包持することで、後輪の包持力が得られ、自転車の吊下姿勢を円滑に保持することができる。
【0019】
また、上下方向に延びる断面略凹字状のレール状部材の底面を縦面として適用することで、アーム部材の不使用時にレール状部材の内部に格納することも可能となり、不使用時のアーム部材が目隠しされて見映えを良好に保つことができる。
【0020】
更に、レール状部材を移動用車両の座席の後面に取り付けることで、移動用車両に載せた自転車を座席の後面といった身近な場所に安心して保管することができる上、移動用車両への乗降作業もスムーズに行うことができる。
【0021】
これに対し、レール状部材を移動用車両の壁面に取り付けることで、移動用車両に載せた自転車を移動用車両の壁面といった身近な場所に安心して保管することができる上、移動用車両への乗降作業もスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る自転車の前輪を吊下する吊下装置を列車の座席の後面に据え付けた状態を示す斜視図である。
図2図1の大人用の自転車の吊下装置のアーム部材を使用時の起立位置に変換した状態での斜視図である。
図3図2の大人用の自転車の吊下装置の側面図である。
図4図2の大人用の自転車の吊下装置を自転車側から見た正面図である。
図5図3の大人用の自転車の前輪を吊下装置のアーム部材により吊下するに当たって先端側アームにより当接させた状態を示す拡大図である。
図6図1の吊下装置のアーム部材を不使用時の倒伏位置に変換した状態での斜視図である。
図7図6の吊下装置を自転車側から見た正面図である。
図8図6の吊下装置のアーム部材を倒伏させたレール状部材の側面図である。
図9】吊下装置のアーム部材の長手方向の長さを変更する変更手段の動作を説明する説明図である。
図10図1の子供用の自転車の吊下装置のアーム部材を使用時の突出位置に変換した状態での斜視図である。
図11図10の子供用の自転車の吊下装置の側面図である。
図12図11の子供用の自転車の吊下装置を自転車側から見た正面図である。
図13図11の子供用の自転車の前輪を吊下装置のアーム部材により吊下するに当たって基端側アームにより当接させた状態を示す拡大図である。
図14】マウンテンバイクタイプの自転車の吊下装置のアーム部材を使用時の突出位置に変換した状態での斜視図である。
図15図14の自転車の吊下装置の側面図である。
図16図14の自転車の吊下装置を自転車側から見た正面図である。
図17図15の自転車の前輪を吊下装置により吊下するに当たって先端側アームにより当接させた状態を示す拡大図である。
図18】本発明の実施の形態の変形例に係る自転車の吊下装置を列車の壁面に据え付けた状態を示す斜視図である。
図19】本発明の実施の形態のその他の変形例に係る吊下装置のアーム部材の長手方向の長さを変更する変更手段の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る駐輪装置を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る自転車の吊下装置の使用状態を説明する説明図を示し、1は自転車B1,B2の前輪BF11,BF21を吊下する吊下装置である。この吊下装置1は、上下方向へ延びる断面略凹字状のレール状部材11を備えている。自転車B1としては子供用のロードバイクタイプの自転車(図10図13に表れる)が、自転車B2としては大人用のロードバイクタイプの自転車(図2図5に表れる)がそれぞれ適用され、前輪BF11,BF21及び後輪BR11,BR21のタイヤハウスは設置されていない。
【0025】
レール状部材11は、移動用車両としての列車Aの二人掛け座席12の背もたれ板材121の後面に左右方向へ間隔を空けて2条、及び一人掛け座席13の背もたれ板材131の後面に1条ずつ取り付けられている。また、各レール状部材11は、背もたれ板材121,131よりも長尺に形成され、背もたれ板材121,131の上端よりも略三分の一程度の長さ分が上方へ突出している。この場合、二人掛け座席12及び一人掛け座席13は、互いに前後に隣接する扉14同士の間において互いに向い合う状態で設置されている。
【0026】
図2図1の大人用の自転車B2の吊下装置1のアーム部材を使用時の起立位置に変換した状態での斜視図、図3図2の大人用の自転車B2の吊下装置1の側面図をそれぞれ示している。また、図4図2の大人用の自転車B2の吊下装置1を自転車B2側から見た正面図、図5図3の大人用の自転車B2の前輪を吊下装置1のアーム部材により吊下するに当たって先端側アームにより当接させた状態を示す拡大図をそれぞれ示している。更に、図6図1の吊下装置1のアーム部材を不使用時の倒伏位置に変換した状態での斜視図、図7図6の吊下装置1を自転車B2側から見た正面図、図8図6の吊下装置1のアーム部材を倒伏させたレール状部材11の側面図をそれぞれ示している。
【0027】
図2図8に示すように、各レール状部材11の略中央付近には、アーム部材2が設けられている。このアーム部材2は、レール状部材11の底面111(縦面)に対しこれに連なる左右両側面にピン22を介して基端が回転自在に支持され、底面111に沿ってレール状部材11の内部に格納されるように倒伏する不使用時の倒伏位置(図6図8に示す状態)と使用時に下方へ回転して突出するように起立する起立位置(図2図5に示す状態)との間で起伏自在に支持されている。この場合、アーム部材2が倒伏位置まで倒伏動作されると、レール状部材11の側方からは見えないように当該レール状部材11の内部に格納される。
【0028】
各レール状部材11には、使用時にアーム部材2が起立位置に変換された際に当該アーム部材を起立位置に当接により位置決めする断面略コ字状のストッパ110が設けられている。また、各レール状部材11の上端部には、自転車B1,B2の前輪BF11,BF21のタイヤ部分BF12,BF22の外周端及びその両側面を包持する樹脂製の前輪側包持部112が取り付けられている。一方、各レール状部材11の下部には、自転車B1,B2の後輪BR11,BR21のタイヤ部分BR12,BR22の外周端及びその両側面を包持する樹脂製の後輪側包持部113が取り付けられている。
【0029】
図9は吊下装置1のアーム部材2の長手方向の長さを変更する変更手段の動作を説明する説明図を示している。図9にも示すように、アーム部材2は、その長手方向の長さを自転車B1,B2の前輪BR11,BR21の大きさに応じて変更する変更手段21を備えている。この変更手段21は、基端が前記ピン22に支持された基端側アーム23と、基端側アーム23の先端にピン24を介して基端部が回転自在に支持された先端側アーム25とを備えている。また、アーム部材2とレール状部材11との間には、アーム部材2つまり基端側アーム23の起伏動作をアシストするダンパー15が設けられている。
【0030】
基端側アーム23は、左右一対のアーム片231,231と、この両アーム片231の長手方向中間部分を短手方向一端(アーム部材2の起立位置では下端)において連結する連結片232とを備えている。一方、先端側アーム25は、左右一対のアーム片251,251と、この両アーム片251の互いに対向する対向面にそれぞれ取り付けられた板状の樹脂材252,252とを備えている。
【0031】
図10図1の子供用の自転車B1の吊下装置1のアーム部材2を使用時の突出位置に変換した状態での斜視図、図11図10の子供用の自転車B1の吊下装置1の側面図をそれぞれ示している。また、図12図11の子供用の自転車B1の吊下装置1を自転車B1側から見た正面図、図13図11の子供用の自転車B1の前輪BF11を吊下装置1のアーム部材2により吊下するに当たって基端側アーム23により当接させた状態を示す拡大図をそれぞれ示している。
【0032】
図10図13に示すように、先端側アーム25は、ピン24回りに回転し、子供用の自転車B1を吊下する際に基端側アーム23に沿って倒伏して連結片232に当接した状態のままで短尺な長さに変更される短尺位置(図10図13に示す位置)と、大人用の自転車B2を吊下する際に伸長して長尺な長さに変更される長尺位置(図1図5に示す位置)とに変換される。このとき、子供用の自転車B1の前輪BF11は、先端側アーム25を短尺位置に変換した状態で基端側アーム23のピン24に当接して吊下されている。
【0033】
先端側アーム25の先端には、大人用の自転車B2を吊下する際に前輪BF21のタイヤ部分BF22の外周端が当接する当接片253が取り付けられている。そして、当接片253に前輪BF21のタイヤ部分BF22の外周端が当接すると、当該タイヤ部分BF12,BF22の両側面が先端側アーム25の両アーム片251の樹脂材252,252により左右両方向から包持されるようになっている。また、先端側アーム25の基端には係止ピン254が取り付けられており、この係止ピン254が、基端側アーム23の先端に設けられた係止穴233に係止されて長尺位置に変換した際の変換姿勢を保持している。
【0034】
このとき、大人用の自転車B2の前輪BF21が吊下される際に当接する先端側アーム25先端の当接片253、及び子供用の自転車B1の前輪BF11が吊下される際に当接する基端側アーム23先端のピン24は、各自転車B1,B2の前輪BF11,BF21の回転中心を通る鉛直線よりもそれぞれ反レール状部材11側に位置している。これによって、各自転車B1,B2の前輪BF11,BF21及び後輪BR11,BR21は、レール状部材11側に傾動して、前輪側包持部112及び後輪側包持部113にそれぞれ包持されるようになっている。
【0035】
また、基端側アーム23(アーム部材2)は、その連結片232の先端に取り付けられた略半円弧状の把持部234を備え、先端側アーム25を短尺位置に変換した状態で没入位置に変換された基端側アーム23を引き出す際に把持される。
【0036】
図14はマウンテンバイクタイプの自転車の吊下装置1のアーム部材2を使用時の突出位置に変換した状態での斜視図、図15図14の自転車の吊下装置1の側面図をそれぞれ示している。また、図16図14の自転車の吊下装置1を自転車側から見た正面図、図17図15の自転車の前輪を吊下装置1により吊下するに当たって先端側アームにより当接させた状態を示す拡大図をそれぞれ示している。
【0037】
前輪側包持部112及び後輪側包持部113は、前輪BF11,BF21及び後輪BR11,BR21のタイヤ部分BF12,BF22,BR12,BR22の両側面との対応位置から幅広に形成された段部114を有している。そして、マウンテンバイクタイプの自転車B3のように幅広な前輪BF31及び後輪BR31にあっては、前輪側包持部112及び後輪側包持部113の段部114を縦面にするように当該段部に対しタイヤ部分BF32,BR32の周端を当接させた状態で、左右両方向から包持することが可能となるようにしている。
【0038】
したがって、本実施の形態では、レール状部材11の底面111に対しこれに連なる左右両側面にピン22を介して基端が回転自在に支持されたアーム部材2(基端側アーム23)が、レール状部材11の底面111に沿った不使用時の倒伏位置に変換されるので、不使用時にアーム部材2が邪魔になることがなく、不使用時の空きスペースを有効利用することができる。
【0039】
しかも、アーム部材2(基端側アーム23)が使用時に下方へ回転して起立位置に変換されると、先端側アーム25が回転して長尺位置に変換され、この状態で、前輪BF11,BF21,BF31のタイヤ部分BF12,BF22,BF32のみが当接片253に当接して左右両方向の樹脂材252,252により左右両方向から包持されつつ、前輪側包持部112によって前輪BF11,BF21,BF31のタイヤ部分BF12,BF22,BF32のみが左右両方向から包持された状態で前輪BF11,BF21,BF31が吊下されている。これにより、吊下装置1により前輪BF11,BF21,BF31を吊下する際に前輪BF11,BF21,BF31のリムに触れることなくタイヤ部分BF12,BF22,BF32のみを左右両方向からも包持して自転車B1,B2,B3の姿勢を2点で安定して保持しつつ、前輪BF11,BF21,BF31のリムに対する傷付きを確実に防止することができる。
【0040】
また、アーム部材2の長手方向の長さが子供用の自転車B1の前輪BF11と大人用の自転車B2の前輪BF21の大きさに応じて変更されるので、大人用の自転車及び子供用の自転車の双方を吊下することができ、利便性を高めることができる。
【0041】
また、各レール状部材11の下部に取り付けた後輪側包持部113によって、子供用及び大人用の自転車B1,B2の後輪BR11,BR21のタイヤ部分BR12,BR22のみがその左右両方向にも回り込んで包持されるので、後輪BR11,BR21の包持力が得られ、自転車B1,B2の吊下姿勢を円滑に保持することができる。
【0042】
また、上下方向に延びる断面略凹字状のレール状部材11の底面111が縦面として適用されていることにより、アーム部材2の不使用時にレール状部材11の内部に格納することも可能となり、不使用時のアーム部材2が目隠しされて見映えを良好に保つことができる。
【0043】
更に、アーム部材2を取り付けたレール状部材11が列車Aの座席12,13の背もたれ板材121,131の後面に取り付けられているので、列車Aに載せた自転車B1,B2を座席12,13の後面といった身近な場所に安心して保管することができる上、列車Aへの乗降作業もスムーズに行うことができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、アーム部材2を取り付けたレール状部材11を列車Aの座席12,13の背もたれ板材121,131の後面に取り付けたが、図18に示すように、レール状部材11が列車Aの左右方向一方の壁面A1(縦面)に取り付けられていてもよい。この場合、列車Aの左右方向他方の壁面側には二人掛け座席12が設けられており、列車Aに載せた自転車B1,B2を左右方向一方の壁面といった身近な場所に安心して保管することができる上、列車Aへの乗降作業もスムーズに行うことができる。
【0045】
また、前記実施の形態では、アーム部材2の長手方向の長さを自転車B1,B2の前輪BR11,BR21の大きさに応じて変更する変更手段21を、基端がピン22に支持された基端側アーム23と、このアーム23の先端のピン24を介して基端部が回転自在に支持された先端側アーム25とで構成したが、図19に示すように、アーム部材4の変更手段41が、基端がピン22に支持された基端側アーム43と、この基端側アーム43に対しスライド自在に支持され、アーム部材2の長手方向の長さを基端側アーム43に対するスライド移動により変更する先端側アーム45とによって構成されていてもよい。
【0046】
具体的には、基端側アーム43は、左右一対のアーム片431,431と、この両アーム片431を長手方向に延びる長孔432と、長孔432の先端側端より上方に切り欠かれた切欠部433と、両アーム片431の前端上部位置同士を連結するピン44とを備えている。一方、先端側アーム45は、左右一対のアーム片451,451と、この両アーム片451を長手方向に延びる長孔452と、この長孔452の先端側端より上方に切り欠かれ、ピン44を保持する切欠部453と、基端側アーム43の長孔432内に摺動自在に支持され、両アーム片451の後端同士を連結する連結ピン454とを備えている。そして、先端側アーム45は、ピン44を長孔432内で摺動させつつ連結ピン454を長孔452内で摺動させることで、子供用の自転車B1を吊下する際にピン44を切欠部453内で保持した状態で短尺な長さに変更される短尺位置(図19に示す一点鎖線位置)と、大人用の自転車B2を吊下する際に伸長してピン454を切欠部433内で保持した状態で長尺な長さに変更される長尺位置(図19に示す実線位置)とに変換される。
【0047】
また、前記実施の形態では、自転車B1,B2の吊下装置1を列車Aに設けたが、コンテナトラックなどの移動用車両であってもよい。また、吊下装置のアーム部材のみが、建家内の居住スペースの壁面(縦面)若しくは列車の座席の背もたれ板材の後面又は列車の壁面(縦面)に設けられていてもよい。更に、吊下装置のアーム部材が、前輪側包持部及び後輪側包持部の少なくとも一方と併せて、建家内の居住スペースの壁面(縦面)若しくは列車の座席の背もたれ板材の後面又は列車の壁面(縦面)に設けられていてもよい。
【0048】
また、前記実施の形態では、アーム部材2の長手方向の長さを子供用の自転車B1の前輪BF11と大人用の自転車B2の前輪BF21の大きさに応じて変更したが、アーム部材2の長手方向の長さは変更されずに変更不能な長さのままであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 吊下装置
11 レール状部材
111 レール状部材の底面(縦面)
112 前輪側包持部
113 後輪側包持部
114 前輪側包持部及び後輪側包持部の段部(縦面)
12 二人掛け座席
121 背もたれ板材の後面
13 一人掛け座席
131 背もたれ板材の後面
2 アーム部材
21 変更手段
4 アーム部材
41 変更手段
A 列車
A1 列車の左右方向一方の壁面(縦面)
B1 子供用のロードバイクタイプの自転車
B2 大人用のロードバイクタイプの自転車
B3 マウンテンバイクタイプの自転車
BF11 前輪
BF12 タイヤ部分
BF21 前輪
BF22 タイヤ部分
BF31 前輪
BF32 タイヤ部分
図1
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