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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】敷布
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20220427BHJP
   A47C 17/02 20060101ALI20220427BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20220427BHJP
   A61B 5/00 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
A47G9/02 P
A47C17/02 Z
A61B5/11 100
A61B5/00 102A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018001170
(22)【出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2019118675
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鴻野 勝正
(72)【発明者】
【氏名】山本 大策
(72)【発明者】
【氏名】根本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】相本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和泉
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-103417(JP,A)
【文献】特開2017-110307(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180094(JP,U)
【文献】特開2012-177565(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351556(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106923830(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
A47C 17/02
A61B 5/00,5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を備えた敷布本体と一体に伸縮し前記敷布本体の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する状態検出部材が前記敷布本体の一部領域に配された状態検出敷布と、前記状態検出敷布に重畳配置され前記敷布本体の伸長に伴って伸長する敷布被覆体と、を備え、
前記敷布被覆体と前記状態検出敷布との相対位置が、前記敷布被覆体に対する利用者の接触状態に起因して、ずれないように拘束する拘束領域と、前記敷布被覆体に対する利用者の接触状態に起因する前記相対位置のずれを許容する非拘束領域とが区画されるとともに、前記非拘束領域は前記拘束領域で囲繞されており、
前記非拘束領域に前記状態検出部材が配されている敷布。
【請求項2】
前記敷布被覆体と前記状態検出敷布とを接合面上で所定間隔隔てて縫着または接着することにより前記拘束領域が形成されている請求項記載の敷布。
【請求項3】
前記敷布は、クッション材の少なくとも上面を覆うように配置され、
前記状態検出部材は、身体の長軸を前記クッション材の長辺に沿わせた臥位で在床者の腰部及び/または頭部に位置する領域に、前記敷布本体の長辺方向または短辺方向に複数本並列配置され、それぞれが電気的に直列に接続された帯状部材で構成されている請求項1または2記載の敷布。
【請求項4】
前記状態検出部材は、敷布本体と一体に編織または接合され前記敷布本体の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する導電性伸縮生地を備えて構成されている請求項1からの何れかに記載の敷布。
【請求項5】
前記導電性伸縮生地は、導電糸で形成されたループが、コース方向への収縮状態で各ループが接触し、コース方向への伸長状態で各ループが離反可能に編成された編地で構成されている請求項記載の敷布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド、ソファー、椅子などに身を預けている保護対象者の体動を検知するための敷布に関し、例えばクッション材の上面を覆うように配置される敷布に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等の被保護者が、家族や保護者(以下、「保護者等」と記す。)が気付かないうちに、家や施設から抜け出して徘徊して、行方が不明となったり事故に遭遇したりといった社会問題が増えている。病院や介護施設では、被保護者の離床を検出して、徘徊を未然に防止するばかりでなく、被保護者のベッドからの転落や、転倒等の事故を防止することも要求されている。
【0003】
そのために、ベッドの傍の端部に感圧マットを配置して、感圧マットの出力により被保護者の離床を検出すると、保護者等に通報が発信されるシステムが商品化されている。
【0004】
特許文献1には、在床者の心拍や呼吸のような体動を検出する可とう性の加速度センサと、前記加速度センサを保持するクッション材と、前記加速度センサの出力信号を取り出す信号端子部とを有し、前記加速度センサと前記クッション材を布で覆い、前記加速度センサの周囲に縫い込みを行ったキルティング加工を施したパッドを有する体動検出装置が開示されている。
【0005】
当該体動検出装置によれば、在床者の寝具上の寝返りや手足の動き等、大きな体動に対しても、加速度センサの配設位置がずれることがなく、加速度センサ出力のバラツキを除去できるとともに、センサ配設を感じさせない寝心地感を得ることができるようになる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3596175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、在床者の姿勢変化を検出するために、伸縮性を備えた敷布本体と一体に伸縮し敷布本体の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する状態検出部材が敷布本体の一部領域に配されたような状態検出敷布を用いる場合に、状態検出敷布の汚れを防止するために状態検出敷布に敷布被覆体を重畳配置すると以下の問題が生じていた。
【0008】
被保護者である在床者の寝返りなどの動作によって状態検出敷布と敷布被覆体とが相対的に位置ずれして、位置ずれが大きくなると敷布被覆体によって敷布本体の伸縮動作が阻害され、在床者の姿勢変化に起因する寝床上の荷重の変化を正確に検知できなくなるという問題や、偏って塊状になった敷布被覆体により寝心地が悪くなるという問題である。
【0009】
このような問題に対処して状態検出敷布と敷布被覆体を重畳配置した状態で上述の特許文献に記載されたようなキルティング加工を施すと、敷布本体の伸縮特性が悪くなり上述と同様に在床者の姿勢変化を正確に検知できなくなるという問題があった。
【0010】
上述したベッドのみではなく、ソファーや椅子に身を預けている人の挙動を検出する場合でも同様の問題が生じていた。
【0011】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、状態検出敷布と敷布被覆体との相対的な位置ずれを抑制しながらも、在床者などの姿勢変化を高感度に検出可能な敷布を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による敷布の第一の特徴構成は、伸縮性を備えた敷布本体と一体に伸縮し前記敷布本体の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する状態検出部材が前記敷布本体の一部領域に配された状態検出敷布と、前記状態検出敷布に重畳配置され前記敷布本体の伸長に伴って伸長する敷布被覆体と、を備え、前記敷布被覆体と前記状態検出敷布との相対位置が、前記敷布被覆体に対する利用者の接触状態に起因して、ずれないように拘束する拘束領域と、前記敷布被覆体に対する利用者の接触状態に起因する前記相対位置のずれを許容する非拘束領域と、が区画されるとともに、前記非拘束領域は前記拘束領域で囲繞されており、前記非拘束領域に前記状態検出部材が配されている点にある。
【0013】
敷布被覆体と状態検出敷布との相対位置のずれを許容する非拘束領域に状態検出部材が配されることにより、利用者である被保護者の動きに合わせて敷布本体が伸縮し、敷布本体と一体に伸縮する状態検出部材によって被保護者の動きが電気特性の変化として高精度検出される。このとき、敷布被覆体は敷布本体の伸長に伴って自由に伸長するので、状態検出敷布の伸縮挙動を妨げることがない。一方、拘束領域では敷布被覆体と状態検出敷布との相対位置がずれないように相互に拘束されるので、在床者が寝返りを打っても状態検出敷布に対して敷布被覆体が大きく偏在するようなことがなく、敷布被覆体の弛みや皺が発生しないので寝心地が悪化するような状態になることがない。
【0014】
そして、非拘束領域を囲繞するように拘束領域が配されると、非拘束領域において状態検出敷布に対して敷布被覆体が大きく遍在するようなことが効果的に回避される。
【0015】
同第の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記敷布被覆体と前記状態検出敷布とを接合面上で所定間隔隔てて縫着または接着することにより前記拘束領域が形成されている点にある。
【0016】
拘束手段として縫着または接着を好適に用いることができ、このような手段で両者を拘束すると、敷布に不自然な凹凸が生じることがないので就寝者の肌面に不快感を与えることがない。
【0017】
同第の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記敷布は、クッション材の少なくとも上面を覆うように配置され、前記状態検出部材は、身体の長軸を前記クッション材の長辺に沿わせた臥位で在床者の腰部及び/または頭部に位置する領域に、前記敷布本体の長辺方向または短辺方向に複数本並列配置され、それぞれが電気的に直列に接続された帯状部材で構成されている点にある。
【0018】
ベッド上で被保護者の姿勢がどのように変化しても、離床するまでの間は被保護者の動きに合わせて弾性変形するクッション材であるマットレス上で腰部に対応する領域に確実に荷重が掛っており、その姿勢によって当該領域に掛かる荷重が変化するので、状態検出部材を腰部に位置する領域に設けてその変化を把握することによってベッド上の被保護者の姿勢変化を精度良く検出できるようになる。殊に、帯状部材で構成される状態検出部材を、敷布本体の長辺方向または短辺方向に複数本並列配置し、それぞれを電気的に直列に接続することにより、複数本の帯状部材のどの部位が伸縮しても、被保護者の腰部から受ける荷重を適正に検出することができるようになる。また、ベッド上の被保護者の姿勢が臥位から座位に変化すると、マットレスに掛かる頭部の荷重が大きく変化する。そこで、敷布本体のうち臥位で被保護者の頭部に位置する領域に状態検出部材を配すると、その電気特性の変化に基づいて姿勢判定部によって被保護者の姿勢をさらに精度良く判定できるようになる。
【0019】
同第の特徴構成は、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記状態検出部材は、敷布本体と一体に編織または接合され、前記敷布本体の伸縮状態と相関して電気抵抗が変化する導電性伸縮生地を備えて構成されている点にある。
【0020】
状態検出部材は敷布本体と一体に編織または接合されているため、被保護者の姿勢が変化して敷布本体が伸縮すると、敷布本体とともに状態検出部材が伸縮して、その程度が電気抵抗の変化として検出されるようになる。
【0021】
同第の特徴構成は、上述の第の特徴構成に加えて、前記導電性伸縮生地は、導電糸で形成されたループが、コース方向への収縮状態で各ループが接触し、コース方向への伸長状態で各ループが離反可能に編成された編地で構成されている点にある。
【0022】
収縮状態で導電糸のループが互いに接触すると導電糸の両端の電気抵抗が低くなり、伸長状態で導電糸のループが互いに離反して導電糸の両端の電気抵抗が高くなる。従って、在床者の荷重が掛ると導電糸の両端の電気抵抗が大きくなり、荷重が開放されると導電糸の両端の電気抵抗が小さくなることで、在床者の寝床上の姿勢を適切に検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、状態検出敷布と敷布被覆体との相対的な位置ずれを抑制しながらも、在床者などの姿勢変化を高感度に検出可能な敷布を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は本発明による敷布がベッド上のクッション材であるマットレスに装着された状態の説明図、(b)は敷布の平面図、(c)は(b)のA-A線断面図
図2】(a)は状態検出部材の平面視説明図、(b)は状態検出生地同士を直列接続する導電性生地及び接続具の説明図、(c)は接続具に信号線が接続される状態の説明図、(d)は信号線の端部に加締められた圧着端子の説明図
図3】敷布本体となる編地の編組織図
図4】状態検出部材の収縮状態の編組織図
図5】状態検出部材の伸長状態の編組織図
図6】(a)は別実施形態を示す敷布の説明図、(b)はさらに別実施形態を示す敷布の説明図
図7】(a)は姿勢検出生地に利用可能なSCYの説明図、(b)は姿勢検出生地に利用可能なDCYの説明図、(c)は伸長状態にあるSCYの説明図、(d)はカバリング糸を用いた平編みの編組織図
図8】挙動判定保護システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明による敷布の一例を図面に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、例えば認知症を患った被保護者Hを養護する施設の各部屋にはベッド1が設けられている。ベッド1は四本の脚部2と、脚部2で支持されたフレーム3を備えて構成され、フレーム3に本発明による敷布10で被覆された弾性変形可能なクッション材の一例であるマットレス4が載置されている。敷布10には、細幅の帯状の状態検出部材20が配され、状態検出部材20の両端部に接続された信号線S1,S2が測定器30に接続されている。
【0026】
図1(b),(c)に示すように、敷布10は、状態検出敷布14と状態検出敷布14に重畳して配置された敷布被覆体15の二層構造で構成されている。
状態検出敷布14は、伸縮性を備えた敷布本体11と、敷布本体11と一体に伸縮し敷布本体11の伸縮状態の変化を電気特性の変化に変換する状態検出部材20とを備えている。状態検出部材20は敷布本体11の一部領域に設けられ、敷布本体11と一体に編織または敷布本体11に接合されている。
【0027】
被保護者である在床者の寝返りなどの動作によって状態検出敷布14と敷布被覆体15とに相対的に位置ずれが生じ、それが大きくなると敷布被覆体15によって敷布本体11の伸縮動作が阻害され、在床者の姿勢変化に起因する寝床上の荷重の変化を適切に検知できなくなったり、偏って塊状になった敷布被覆体15により寝心地が悪くなったりする。
【0028】
そこで、敷布被覆体15と状態検出敷布14との相対位置がずれないように相互を拘束する拘束領域BAと、相対位置のずれを許容する非拘束領域NBAとが区画され、非拘束領域BAに状態検出部材20が配されている。
【0029】
敷布被覆体11と状態検出敷布15とを接合面上で所定間隔を隔てて縫着または接着することにより拘束領域BAが形成され、また非拘束領域NBAを囲繞するように拘束領域BAが配されている。
【0030】
非拘束領域NBAを具現化するための拘束手段として、縫着または接着を好適に用いることができる。図1(b)では、敷布被覆体15と状態検出敷布14とを所定間隔で格子状に縫着した例が示され、縫着部が符号16で示されている。敷布被覆体15と状態検出敷布14との間に棉の薄層を設けて縫着するキルティング処理を施してもよい。
【0031】
敷布被覆体15と状態検出敷布14とを接着処理する場合には、熱可塑性樹脂でなる接着剤を好適に用いることができ、接着剤を面状に塗布するのではなく、所定間隔を隔てて線状または点状に塗布して貼り合せることが好ましい。
【0032】
接着剤となる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも反応型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0033】
このような手段で両者を拘束すると、敷布に不自然な凹凸が生じることがないので就寝者の肌面に不快感を与えることがない。また、敷布被覆体15と状態検出敷布14とを一体でクリーニングでき、ベッドメイキングの手間も大幅に軽減されるようになる。
【0034】
敷布本体11を構成する布帛として伸縮性を備えた編地や織地が好適に用いられる。また、敷布本体11に掛かる荷重により敷布本体11が伸長付勢される際に、その付勢力の抵抗とならないように、敷布被覆体15を構成する布帛として少なくとも敷布本体11の伸長に伴って伸長するような特性を備えた編地や織地が好適に用いられる。以下、敷布本体11、状態検出部材20及び敷布被覆体15が編地で構成された例を詳述するが、織地で構成されていてもよいことは言うまでもない。
【0035】
敷布本体11となる編地は、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を熱変形させることにより解れ止め加工した編地で、端縁が切りっ放し処理可能な編地で構成されている。
【0036】
このような解れ止め加工を施した編地を採用すれば、洗濯を繰り返しても切りっ放し処理された端部から繊維が解れるようなことが無く、見栄えの悪化を招くことが無い。また、例えば端部を折り返して縫着するような従来の解れ止め加工が不要になるので生産性の高い安価な敷布を実現できる。
【0037】
プレーティング編みは添え糸編みともいい、既存の編成方法を採用することができる。例えば複数本の糸をそれぞれ別の給糸口から、編み針に給糸する編成方法を用いると編成ループそれぞれの糸の配置が安定的に定まるため特に好ましい。
【0038】
図3にはプレーティング編みの編組織が示されている。熱変形性弾性糸12とそれ以外の糸13とを別の給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける熱変形性弾性糸12とそれ以外の糸13との配置が安定しているため、全てのループに熱変形性弾性糸を隣接させることができ、ヒートセット加工等により熱変形性弾性糸を熱変形させれば、編地の全てのループで確実に解れ止め機能が実現できるようになる。
【0039】
具体的に、本実施形態では熱変形性弾性糸12として低融点ポリウレタン弾性糸が用いられ、それ以外の糸13として綿糸とポリエステル糸の混紡糸が選択され、フライス編みまたはスムース編みで編成された編地が用いられている。当該編地をヒートセット加工することにより、低融点ポリウレタン弾性糸が溶融して互いに融着することによって解れ止め機能が実現される。綿糸とポリエステル糸の比率を調整することにより適度な吸湿性と速乾性を備えた肌触りのよい編地が得られ、本実施例では綿55%、ポリエステル30%、ポリウレタン15%に設定されている。
【0040】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。つまり、加熱処理により溶融し或いは圧縮変形するような特性を備えた熱変形性弾性糸であればこれらに限るものではない。
【0041】
なお、敷布本体11となる編地は、上述した解れ止め加工を施した編地に限るわけではなく、ポリウレタン糸が地組織に交編され、コース方向及びウェール方向の2方向に伸縮可能な編地であればよい。また、これら2方向の何れかにのみ伸縮可能な編地であってもよく、その場合には当該伸縮可能な方向に沿って状態検出部材20が配置されていればよい。
【0042】
図2(a)に示すように、状態検出部材20としての状態検出生地20は、偏平で細幅の帯状に編成され、幅方向中央部に配された導電性伸縮生地21と、導電性伸縮生地21の両側に配された非導電性伸縮生地22を備えて構成されている。本実施形態では、導電性伸縮生地21の幅は約2mm、両側の非導電性伸縮生地22の幅はそれぞれ約3.5mmに設定されているが、この値に限るものではない。
【0043】
導電性伸縮生地21及び非導電性伸縮生地22が一体となって長手方向に沿って伸縮性を示すとともに、生地20の表裏方向への反りや曲がり、面方向に沿う左右への曲がり、さらには捻りなどが許容される十分な柔軟性が備わっている。なお、非導電性伸縮生地22を備えずに導電性伸縮生地21のみで状態検出生地20を構成してもよい。
【0044】
非導電性伸縮生地22は、合成繊維(例えばナイロン、ポリエステル)や天然繊維、或いはそれらと弾性糸とを混用した素材などの非導電糸のみによって編成された編地であり、導電性伸縮生地21は、導電糸と弾性糸を用いて編成された編地である。本明細書で「導電糸」とは、金属成分が糸表面に露出した裸素材をいい、「弾性糸」とは、引っ張り力が付与されていない無負荷時(非伸長時=常態)には収縮状態を保ち、引っ張り力が付与された負荷時には引っ張り力に応じて自由に伸長し、引っ張り力が解除されると伸長状態から元の収縮状態に戻る素材をいう。
【0045】
導電糸として、樹脂繊維や天然繊維、或いは金属線等を芯として、この芯に湿式や乾式のコーティング、メッキ、真空成膜、その他の適宜被着法を行って金属成分を被着させた金属被着線(メッキ線)を使用するのが好適である。芯には、モノフィラメントを採用することも可能ではあるが、モノフィラメントよりもマルチフィラメントや紡績糸のほうが好ましい。更にはポリウレタン繊維のような伸縮性を備えた繊維を用いることも可能である。ウーリー加工糸やSCY、DCYなどのカバリング糸、毛羽加工糸などの嵩高加工糸がより好ましい。
【0046】
芯に被着させる金属成分には、例えばアルミ、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、錫、亜鉛、鉄、銀、金、白金、バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト等の純金属やそれらの合金、ステンレス、真鍮等を使用することができる。
【0047】
弾性糸として、ポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を単独で用いてもよいし、「芯」にポリウレタンやゴム系のエラストマー材料を用い、「カバー」にナイロンやポリエステルを用いたカバリング糸などを採用することができる。このようなカバリング糸を採用することで、親水性、撥水性、耐食・防食性、カラーリング等の機能を付与することができる。また肌触りの向上や伸びの制御にも有用である。なお、弾性糸として、導電性素材を含んだ糸を使用することも可能である。
【0048】
図4及び図5には、導電性伸縮生地21の編組織が例示されている。帯状部材となる帯状生地20の長手方向がコース方向に沿うように、導電糸25を用いて平編(天竺やシングル等とも言う)に編成され、弾性糸26がインレイによってコース方向に挿入されている。この例では、導電糸25の1コース毎に弾性糸26が1コース挿入され、弾性糸26は、導電糸25に沿うように導電糸25の各ループに絡ませている。
【0049】
導電糸25の個々のループは、弾性糸26によってコース方向に収縮した形状に変形され、この変形形状が保持される。導電糸25は導電性の裸素材であるから、ループによる接触箇所数が多ければ多いほど、またコース方向で押し縮められることで接触面積が増大すればするほど、導通接点の数、すなわち、導通面積が大きくまた通電経路が短くなり、コース方向に離れた2箇所間での電気抵抗が小さくなる。
【0050】
生地が伸長しているときには、導電糸25のループ同士が、弾性糸26による引き締め力に抗して離反するようになる。このときの導電糸25のループの離反挙動は、全ループが一斉に離反するのではなく、編地の伸長度合いに比例して接触圧が徐々に低下しながらも未だ接触状態を維持するもの(非伸長時よりも接触面積が減少したもの)や、接触を解除して隙間を徐々に広げるもの、或いは非伸長時の接触状態を維持するもの等が混在する状況を経ることになる(図5参照)。
【0051】
そのため、非伸長時から伸長を開始してその伸長度が大きくなればなるほど、導通面積が減少して通電経路が長くなり、電気抵抗は徐々に大きくなる傾向を示す。当然に、生地に付与される伸長力が解除されると、弾性糸26によるコース方向の引き締め力によって導電糸25のループがコース方向に収縮し、非伸長時の状態に復元するので、導通面積の増加に伴って電気抵抗は小さくなる。
【0052】
図4及び図5では、導電性伸縮生地21の編組織として平編地を例示したが、ゴム編地(フライス編)で導電糸25による地組織を構成し、弾性糸26をインレイによってコース方向に挿入してもよい。
【0053】
即ち、導電性伸縮生地21は、コース方向にループが形成された導電糸25と、コース方向に挿入され収縮状態で各ループが接触し伸長状態で各ループが離反可能な弾性糸26とで編成された編地で構成されている。本実施形態では、弾性糸がコース方向に挿入されている例を説明したが、後述するように、導電糸自体が弾性糸であってもよく、その場合には弾性糸は挿入されなくてもよい。
【0054】
なお、非導電性伸縮生地22は、上述した導電糸25に替えて合成繊維などの絶縁糸を用いて導電性伸縮生地21と同じ編組織で編成されている。
【0055】
図1(b),(c)及び図2(b)~(c)に示すように、状態検出敷布14を構成する敷布本体11には、このような状態検出生地20が、被保護者Hの身体の長軸をマットレス4の長辺に沿わせた臥位で被保護者Hの腰部に位置する領域R1に、敷布本体11の短辺方向に複数本、本実施形態では、横T=220cm、縦L=120cmの矩形の敷布本体11の足先側端部から85cm、頭側先端部から85cmの範囲を領域R1に含まれる範囲として、この範囲に5cmピッチで11本並列配置され、それぞれが上述した導電性伸縮生地21と同様に編成された導電性生地23によって電気的に直列に接続されている。
【0056】
そして、状態検出敷布14の上面にほぼ同じサイズの敷布被覆体15が重畳配置され、状態検出生地20が配された領域の数cmから十数cmを含む外縁領域が上述した非拘束領域NBAとして区画され、その外側領域に拘束領域BAが配されている。
【0057】
電気的に直列に接続された状態検出生地20の信号取出し端部となる両端部に信号線を接続または離脱する一対の接続具24が敷布被覆体15から露出するように設けられ、接続具24が敷布10の短辺方向の一側端に配置されている。
【0058】
敷布20の短辺方向の一側端に配置された一対の接続具24に、測定器30と接続するための信号線S1,S2を接続すればよく、信号線S1,S2の配線作業を容易く行なうことができ、また接続具24と信号線S1,S2を離脱することにより敷布10のクリーニングも容易に行なえるようになる。
【0059】
接続具24として金属製の雌スナップボタンが好適に用いられる。雄スナップボタンの凸金具が嵌入する凹金具24aと、敷布本体11及び状態検出生地20を挟むようにして凹金具24aを固定する固定金具24bで構成され、固定金具24bに立設された爪部を凹金具24aに加締めることにより、雌スナップボタンと状態検出生地20とが電気的に接続される。
【0060】
図2(d)に示すように、信号線S1,S2の端部には、絶縁被覆が除去された銅線に圧着端子29が加締められている。圧着端子29は環状部29aに連設された固定金具29bを備えて構成され、固定金具29bが信号線S1,S2の銅線と電気的に接続されるように加締められている。
【0061】
そして、接続具29として金属製の雄スナップボタンを構成する凸金具28aと固定金具28bが環状部29aを挟むようにして加締められている。雄スナップボタンを雌スナップボタンに係合させることにより、状態検出生地20と信号線S1,S2が電気的に接続される。
【0062】
上述したように、状態検出生地20は敷布本体11に縫着または接着により接合されている。例えば、オーバーロック縫い、偏平縫い、環縫いまたは千鳥縫いなどの何れかを用いて伸縮縫いされることにより敷布本体11の伸縮に追随して状態検出生地20が伸縮するようになる。また、伸縮糸を用いて縫着する場合には、非伸縮縫いであってもよい。
【0063】
また、例えば、敷布本体11を構成する解れ止め生地に用いられたポリウレタン等の熱変形弾性糸の熱変形温度より低い熱処理で接着が可能な接着剤を用いて、状態検出生地20を敷布本体11に接着してもよい。
【0064】
例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも湿気硬化型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0065】
接着剤を用いて状態検出生地20を敷布本体11に接合する場合、状態検出生地20の全面に接着剤を塗布するのではなく、状態検出生地20の幅方向端部で折り返すように、ジグザグパターンやサインカーブのような1mm前後の幅の線状の繰返しパターンや、接着位置が非接着領域を挟んで点状に分布するような任意のパターンを採用することが好ましい。
【0066】
全面に接着剤を塗布すると、敷布本体11の伸長時に接着剤によって状態検出生地20の伸長が抑制される虞があるが、上述のパターンで接着すると、敷布本体11の伸長に追随して状態検出生地20が伸長するようになる。
【0067】
本実施形態では、敷布本体11に、状態検出生地20が、被保護者Hの身体の長軸をマットレス4の長辺に沿わせた臥位で被保護者Hの腰部に位置する領域R1に、敷布本体11の短辺方向に複数本並列配置された例を説明したが、領域R1に敷布本体11の長辺方向に複数本並列配置されていてもよい。状態検出生地20と導電性生地23とを電気的に接続するために、接着剤を用いた接続、導電性糸を用いた接続の何れを採用することも可能である。
【0068】
図6(b)には、状態検出生地20が、領域R1に敷布本体11の長辺方向に複数本並列配置された例が示されている。この場合にも、状態検出生地20のそれぞれが上述した導電性生地23によって電気的に直列に接続され、電気的に直列に接続された状態検出生地20の信号取出し端部となる両端部に信号線S1,S2を接続または離脱する一対の接続具24が設けられ、接続具24が敷布本体11の短辺方向の一側端に配置されていることが好ましい。
【0069】
敷布本体11の編地の伸縮の程度がウェール方向に比べてコース方向に大きな場合には、状態検出生地20の長手方向が敷布本体11の編地のコース方向に沿うように配置されていることが好ましく、その逆の場合には、状態検出生地20の長手方向が敷布本体11の編地のウェール方向に沿うように配置されていることが好ましい。
【0070】
ベッド1上で被保護者の姿勢がどのように変化しても、離床するまでの間はマットレス4上で腰部に対応する領域に確実に荷重が掛っており、その姿勢によって荷重が変化するので、その変化を把握することによってベッド上の被保護者の姿勢変化を精度良く検出できるようになる。
【0071】
この様な状態検出生地20は、敷布本体11の裏面つまり被保護者の肌に接する面とは反対側の面に配されているため、被保護者に特段の違和感を与えることはない。
【0072】
殊に、帯状生地で構成される状態検出生地20を、敷布本体11の長辺方向または短辺方向に複数本並列配置し、それぞれを電気的に直列に接続することにより、複数本の帯状生地のどの部位が伸縮しても、被保護者の腰部から受ける荷重を適正に検出することができるようになる。
【0073】
例えば、被保護者の姿勢が臥位となる場合にはマットレス4との接触面積が大きくなり荷重が分散されるために、腰部近傍に大きな荷重が掛ることはないが、座位となる場合には、マットレス4との接触面積が小さくなり荷重が集中して腰部近傍に大きな荷重が掛る。このような変化を捉えることにより被保護者の姿勢を判定することができる。
【0074】
図6(a)に示すように、状態検出生地20は、臥位で被保護者の頭部に位置する領域R2に、敷布本体11の長辺方向または短辺方向に複数本並列配置され、それぞれが電気的に直列に接続されていることが好ましく、本例では、敷布本体11の頭部側から40cmの位置から2本の状態検出生地20が並行に配置され、導電性生地23によって電気的に直列に接続されるとともに、両端部に接続具24が設けられている。
【0075】
ベッド1上の被保護者の姿勢が臥位から座位に変化すると、マットに掛かる頭部の荷重が大きく変化する。そこで、敷布本体11のうち臥位で被保護者の頭部に位置する領域R2に状態検出生地20を配すると、その電気特性の変化に基づいて姿勢判定部によって被保護者の姿勢をさらに精度良く判定できるようになる。
【0076】
図7(a),(b)に示すように、導電性伸縮生地21として、弾性糸26を芯部として、導電糸25を一重に被覆したSCYまたは二重に被覆したDCYとしたカバリング糸27により編成された生地を用いることも可能である。
【0077】
図7(c)に示すように、生地の伸長時に、弾性糸26そのものが伸長することにより巻き付けられた導電糸25の隙間が広がり、隣り合ったコース同士での導電糸の接点が減少することにより抵抗値が変化する。
【0078】
図7(d)には、このようなカバリング糸を用いた平編地が例示されている。カバリング糸としてSCYとDCYのどちらを用いても良いが、DCYは導電糸どうしの交差部があり導通が確保できる上に被覆密度が上がりやすく、初期抵抗値を下げる効果が得られるのでより好ましい。弾性糸のドラフト率と導電糸の撚り数は肌着用に通常用いられるカバリング糸と同程度(たとえばドラフト率1.0~5.0倍程度、撚り数50~2000T/m程度)であればよい。
【0079】
この例のように、状態検出生地20は、敷布本体11と一体に編成することも可能であり、敷布本体11のうち状態検出生地20を配置すべき領域のみ敷布本体11と一体に編成することも可能である。また、敷布本体11と一体に編成する態様として、敷布本体11の編成後に上述したカバリング糸を身生地に縫い込んで状態検出生地20として機能するように構成することも可能である。
【0080】
上述した実施形態では、敷布本体11の伸縮状態の変化を検出する状態検出生地20が、電気特性として抵抗値の変化を検出するように構成された例を説明したが、電気特性として抵抗値以外にインダクタンス値の変化を検出するように構成してもよい。例えば、ポリウレタン等の弾性糸を芯糸として、絶縁被覆された導電糸でカバリングした糸で状態検出生地20を編成すればよい。芯糸の伸縮に合わせてコイルとして機能する絶縁被覆された導電糸の伸縮状態によってインダクタンス値が変化する性質を利用することができる。
【0081】
また、敷布本体の伸縮に伴って一対の電極間の距離が変化するように、一対の導電性繊維を用いた電極素子を敷布本体に沿うように配して、伸縮状態に対応して静電容量の変化を検出するように構成してもよい。
【0082】
上述した実施形態では、敷布がベッド上のマットレスの上面を覆うように配置される例を説明したが、クッション材の少なくとも上面を覆うように配置される敷布であればよく、ベッド上のマットレスの被覆に用いられる以外に、畳に敷かれた布団を覆う敷布、ソファーの座面や背もたれを覆う敷布、椅子の座面や背もたれを覆う敷布としても用いることができる。
【0083】
上述した実施形態では、敷布がベッド上のマットレスなど被保護者の動きに合わせて弾性変形するクッション材の被覆に用いられる例を説明したが、本発明の敷布は、在床の有無ないし在床時の姿勢変化によって敷布本体の伸長の程度が変化すればその変化を検出ことができるので、クッション材を被覆した状態で使用する態様に限るものではない。敷布上で被保護者が動き、その動きに伴って敷布が部分的に伸長するような場合にも、被保護者の動作を検出できるのであり、ある程度の硬度のある床、つまりクッション性の無い床に敷いて用いることも可能である。
【0084】
図8には、上述した敷布10が被保護者の挙動を検出するセンサ系統の一つとして組み込まれた挙動判定保護システム100が示されている。
【0085】
挙動判定保護システム100は、ベッド1上の被保護者Hの挙動を判定して保護する挙動判定保護システムであって、被保護者Hの挙動を異なる原理で検出する複数のセンサ系統M1,M2,M3と、姿勢判定部50と、情報伝達方法の異なる複数の注意喚起機構60を備えている。
【0086】
上述した敷布10と、敷布10に配された状態検出生地20に接続された測定器30とを備えた第1センサ系統M1と、ベッド1の側部に設けられ、ベッド1からの離床を検出する投光部40と受光部41を備えた光センサで構成される第2センサ系統M2と、ベッド1を俯瞰可能な(部屋の天井近傍に配置する等された)赤外線カメラM3で構成される第3センサ系統M3である。
【0087】
姿勢判定部50は、第1センサ系統M1によりベッド上の被保護者Hの姿勢の変化(例えば臥位から座位に姿勢変更するなどの離床のための予備的行為の有無)を判定し、第2センサ系統M2により被保護者Hの離床行動(例えばベッドから離脱するような行為の有無)を検知し、第3センサ系統M3により被保護者Hの動作状態を判定して、ベッド上の被保護者の姿勢を総合判定する。
【0088】
単一のセンサ系統を用いて被保護者Hの挙動を判定する場合には、危険動作などの情報取得の際に、危険動作以外の情報が紛れ込み誤認識する確率が高く、所期の目的を達成することが困難となることが多いため、複数のセンサ系統を用いて信頼度を高めている。
【0089】
姿勢判定部50は、各センサ系統M1,M2,M3による検出値を入力する信号入力部51と、信号入力部51に入力された各検出値を元に時間的に発散する危機確率から階層化意思決定手法を適用して複数の注意喚起機構60の何れかを選択する演算部52と、演算部52により選択された注意喚起機構60を作動させる信号出力部53を備えている。
【0090】
注意喚起機構60として被保護者Hの注意を喚起して離床を止まらせる第1注意喚起機構61と、保護者の出動を要請する警報装置で構成される第2注意喚起機構62を備えている。
【0091】
第1注意喚起機構61は液晶モニタ装置と、テレビチューナーと、テレビチューナーからの表示信号以外に、液晶モニタ装置に表示するコンテンツを格納する記憶装置を備えている。
【0092】
コンテンツとして、被保護者Hの思い入れが強いテレビプログラム、例えば著名な時代劇や、愛着のある家族の映像や写真及び音声や、これまで携わってきた社会活動や、愛好していたスポーツなどの映像が選択可能に記憶装置に記憶されている。
【0093】
演算部52は、入力された各センサ系統M1,M2,M3による検出値に基づいて、被保護者が離床行為の兆候有と判断したときに、階層化意思決定手法により、その危険リスクの程度を算出して、算出した値から何れかの注意喚起機構60を起動する。
【0094】
例えば、比較的危険リスクが低いが離床行動に結びつく可能性が高いと判断したときには、第1注意喚起機構61を起動して、被保護者Hの思い入れが強いテレビプログラムを液晶モニタ装置に出力することで、離床行動を思い止まらせる。
【0095】
また、第1注意喚起機構61を起動した後の各センサ系統M1,M2,M3による検出値に基づいて、さらに危険に遭遇する可能性が高くなる離床行動に結びつく可能性が高いと判断したときには第2注意喚起機構62を起動して、保護者の出動を要請するとともに、第1注意喚起機構61を起動して、愛着のある家族の映像や写真及び音声を液晶モニタ装置に出力する。
【0096】
上述の構成によれば、既存のテレビなどの機器を起動させ、例えば離床を遅延させて、離床時の転倒転落を未然防ぐことや、ナースコールやビデオカメラなどの機器と連動させることにより、夫々の危険度に応じた情報伝達をスタッフに促すことが可能となる。
【0097】
このように、階層化意思決定手法により被保護者の離床行為の程度を判断して、適切な注意喚起機構60を起動することにより、被保護者のベッドからの転落や、転倒等の事故を防止するように構成されている。
【0098】
つまり、演算部52は、多重に配置されたセンサ系統から危険動作を取得し、危険の遭遇リスクを判定するも、時間的に発散するよう計算することにより時間依存性の危険に遭遇する可能性を数値化し、夫々のセンサ系統から得られた結果を重ね合わせることにより危険遭遇確率を判定する。
【0099】
その結果、危険遭遇確率が上昇した場合でも、その後時間的に危険度が減少したり、危険動作が中断されたりした場合には、スタッフに注意喚起されることがなくなる。このことにより、看護スタッフの通常業務を阻害しないという利点が得られるだけでなく、注意喚起された場合にはより適正に危険回避のための行動が行えるという利点が得られる。
【0100】
階層化意思決定手法AHP(Analytic Hierarchy Process)とは、異なる要素が複数ある場合に、それぞれの要素を連続的に組み合わせて、あたかも一つの要素として取り扱えるような計算手法である。要素を直列もしくは並列に組み合わせた階層的な構造を構築し、それぞれの要素に対して事象の重要性などから比較した結果を元に算出したウェイトを置くことにより、基準の異なる要素を同一的に取り扱えるようにできる。このようにして得られた結果から予め用意した代替案を選択するものである。
【0101】
演算部52による階層化意思決定のための演算処理について例示する。演算部52に備えた記憶部には、意思決定による問題を提起する各センサ系統M1,M2,M3による検出値の階層、問題に対処するため注意喚起機構60の何れを作動させるかという出力の階層、検出値の階層から出力の階層の何れを選択するかを評価する評価基準の各階層データが格納されている。
【0102】
評価基準は、各測定器から検出された値が、予め設定された検出値の階層の評価項目に対する一対比較表と、出力の階層の評価項目に対する一対比較表に基づいて、各評価項目に対して決定された重要性を表すウェイトと、時間的に発散する係数をもって算出された、危機遭遇確率で構成されている。検出値から得られた階層の評価項目として、例えば、仰臥位、側臥位、寝返り、座位、離床予備的動作、離床などが設定され、出力の階層の評価項目として、例えば、一つの注意喚起機構60、各注意喚起機構60の組み合わせが設定される。
【0103】
演算部52は、入力された検出値のそれぞれに該当する評価項目のウェイトと、出力の階層の評価項目のウェイトと、時間依存性の危機に遭遇する可能性から評価値を求め、その結果から注意喚起機構60を作動させる。
【0104】
評価項目のウェイト及び危機確率は、本システムの事前シミュレーションや稼働試験の結果に基づいて補正するように構成されている。例えば、離床を抑制するためのアクションの効果が無かった場合には、その旨の評価入力部が設けられ、その結果に基づいて一対比較表の値が修正され、あるいはウェイトや危機確率が修正される。
【0105】
上述した実施形態は、本発明の一態様を示したものであり、実施形態の記載により本発明の範囲が限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明による敷布は、汚れた場合でも容易にクリーニングでき、例えばベッド上の人体の動作状態を精度良く判定できるセンサとして介護施設などで広く活用される。
【符号の説明】
【0107】
1:ベッド
4:マットレス
10:敷布
11:敷布本体
14:状態検出敷布
15:敷布被覆体
20:状態検出生地
21:導電性伸縮生地
22:非導電性伸縮生地
23:導電性生地
24:接続具
25:導電糸
26:弾性糸
30:測定器
100:挙動判定保護システム
BA:拘束領域
NBA:非拘束領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8