(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】音響測定の現場補償方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/09 20060101AFI20220427BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G01N29/09
G10K15/00 L
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017163259
(22)【出願日】2017-08-28
【審査請求日】2020-08-26
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517301461
【氏名又は名称】インターアコースティックス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】クレン ラーベク ノルガード
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-504201(JP,A)
【文献】特表2000-516501(JP,A)
【文献】特開昭60-040923(JP,A)
【文献】米国特許第04289143(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G10K 15/00 - G10K 15/12
A61B 5/06 - A61B 5/22
H04R 25/00 - H04R 25/04
G01H 1/00 - G01H 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響負荷の反射率測定値において不正確さを引き起こすエバネセントモードに起因した前記音響負荷のインピーダンス測定値において生じる第1の誤差と、未知の特性インピーダンス(Z
0)を有する前記音響負荷に起因して前記反射率測定値において生じる第2の誤差とを補償する方法であって、
前記方法が、
第1の開放端部及び第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部を有する前記音響負荷において、スピーカ及びマイクロフォンを有するプローブ組立体を位置付けるステップであって、前記第1の開放端部と前記第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部との間の距離が前記音響負荷の長さを定める、ステップと、
前記第1の開放端部から前記音響負荷に放射されて前記音響負荷の長さに沿って伝播するように構成され
た出力信号を前記スピーカから発生させるステップと、
前記音響負荷に沿って伝播する前記出力信号の入射部と反射部とによって引き起こされる入力信号を前記プローブ組立体のマイクロフォンを用いて記録するステップであって、前記出力信号の前記入射部が平面波部及びエバネセントモード部を含む、ステップと、を含み、
前記方法が更に、
(i)前記入力信号と前記出力信号との間の関係に基づいて、前記入射部のエバネセントモード部に起因し且つ音響質量(L)を用いた近似値として与えられる前記第1の誤差を含む音響インピーダンス(Z
m)を演算するステップと、
(ii)前記音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z
0)の初期値(Z
0’)を設定するステップと、
(iii)前記測定された音響インピーダンス(Z
m)と前記未知の特性インピーダンス(Z
0)の前記初期値(Z
0’)との間の関係から前記反射率測定値(R)を演算するステップと、
(iv)前記反射率測定値(R)の実部から前記反射率測定値(R)の虚部のヒルベルト変換を減算したものと、前記反射率測定値(R)の虚部から前記反射率測定値(R)の実部の逆ヒルベルト変換を減算して虚数単位(I)を乗算したものとを加算することにより、反射率推定誤差(ε
R)を演算するステップと、
(v)前記反射率推定誤差(ε
R)の実部及び前記反射率推定誤差(ε
R)の虚部を演算するステップと、
(vi)前記エバネセントモードに起因して前記反射率測定値に生じる前記第1の誤差を提供するように、前記反射率推定誤差(ε
R)の虚部が最小になるまで前記音響質量(L)を繰り返し調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法が更に、
前記音響負荷の前記未知の特性インピーダンス(Z
0)の前記初期値(Z
0’)に起因して前記反射率測定値に生じる前記第2の誤差を考慮に入れた前記未知の特性インピーダンス(Z
0)を決定するように、前記反射率推定誤差(ε
R)の実部が最小になるまで前記未知の特性インピーダンス(Z
0)の前記初期値(Z
0’)を繰り返し調整するステップ、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音響質量(L)を繰り返し調整する前記ステップが、前記反射率測定値の虚部が最小になるまで、前記音響インピーダンス測定値(Z
m)から前記音響質量(L)を減算して前記反射率測定値及び前記反射率推定誤差の虚部を更新する繰り返しステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記未知の特性インピーダンス(Z
0)の前記初期値(Z
0’)を調整するステップ及び前記音響質量(L)を調整するステップが、前記エバネセントモード及び前記未知の特性インピーダンスに起因して前記インピーダンス測定値に含まれる非因果関係を考慮に入れる、前記請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反射率推定誤差(ε
R)が、前記エバネセントモード及び前記未知の特性インピーダンスに起因して前記反射率測定値(R)内に含まれる前記非因果関係を表す他の何れかの物理量に変換される、前記請求
項4に記載の方法。
【請求項6】
前記音響負荷が、導波路、楽器、消音器、
又は、人の外耳
道である、前記請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
未知の特性インピーダンス(Z
0)を有する人の外耳道の反射率測定を実施する方法を適用するときに、前記特性インピーダンスの前記初期値(Z
0’)が、前記人の外耳道の平均特性インピーダンスとして提供される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
音響負荷の反射率測定値(R)を出力するよう構成された測定システムであって、該測定システムが、
音響負荷に配置されるように構成され且つスピーカ及びマイクロフォンを有するプローブ組立体を備え、
前記音響負荷が、第1の開放端部及び第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部を有し、前記第1の開放端部と前記第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部との間の距離が前記音響負荷の長さを定め、
前記測定システムが更に、
前記第1の開放端部から前記音響負荷内に放射されて前記音響負荷の長さに沿って伝播するように構成された出力信号を前記スピーカから発生させる信号発生ユニットを備え、前記プローブ組立体のマイクロフォンが、前記音響負荷に沿って伝播する前記出力信号の入射部及び反射部によって引き起こされる入力信号を記録するよう構成され、前記測定システムが更に、
請求項1に記載の方法のステップ(i)~(vi)を実施するよう構成された演算ユニットを備える、測定システム。
【請求項9】
前記演算ユニットが、請求項1に記載のステップ(i)による、前記エバネセントモードに起因した音響質量を含む前記音響インピーダンス(Z
m)を演算するために前記音響負荷の前記少なくとも部分的に閉鎖した端部から前記出力信号が反射されることによって引き起こされる少なくとも前記記録された入力信号と、請求項1に記載のステップ(ii)による、音響質量(L)及び/又は前記未知の特性インピーダンス(Z
0)のうちの少なくとも一方の初期値とを入力としてとる、請求項8に記載の測定システム。
【請求項10】
前記演算ユニットが、前記エバネセントモードから生じる前記第1の誤差及び前記未知の特性インピーダンス(Z
0)に起因して生じる前記第2の誤差を含む反射率測定値(R)を出力して、請求項1に記載のステップ(v)による前記反射率推定誤差(ε
R)の実部及び虚部を演算し、前記演算ユニットが、請求項1に記載の前記調整ステップ(vi)を実施するときに、前記エバネセントモードに起因して生じる前記第1の誤差及び前記音響負荷の未知の特性インピーダンスに起因して生じる前記第2の誤差が補償される、補正された反射率測定値(R)を出力するよう構成される、請求項8又は9の何れか1項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、聴覚診断、消音器、及び/又は音楽音響用途内で実施される音響インピーダンス測定のような音響インピーダンス測定において生じる誤差を補償する方法に関する。より詳細には、本開示は、エバネセントモード及び音響負荷の特性インピーダンスに起因して生じるn誤差が自動的に推定されて補償される現場補償方法に関する。更に詳細には、本方法は、音響インピーダンス測定値に基づく反射率測定値を利用して、エバネセントモードに起因し且つ音響負荷の反射率測定値において不正確さを引き起こすインピーダンス測定値で生じる誤差を評価する。
【背景技術】
【0002】
例えば、異なる音響負荷における音響インピーダンスの測定は、聴覚診断、消音システム、及び/又は音楽音響を含む多くの音響分野で重要である。これらの測定は通常、加えられた音響負荷に対して励振をもたらすレシーバ(一般的にはスピーカとしても知られる)のような音響変換器と、反射応答を記録するプローブのマイクロフォンのような音響エネルギー検出器とを備えたインピーダンスプローブを用いて実施される。プローブのソース特性を記述する予め設定された較正パラメータ(プローブテブナン較正パラメータなど)のセットを用いて、音響負荷の音響インピーダンスをプローブ応答から演算することができる。
【0003】
しかしながら、例えば、インピーダンスプローブと音響負荷との間のカップリングの物理的差異に起因して、インピーダンス測定におけるアーティファクトを引き起こす誤差は、プローブ応答から演算されたインピーダンス推定に影響を及ぼす可能性がある。インピーダンス測定における誤差を引き起こすアーティファクトには、例えば、インピーダンスプローブとプローブによってインピーダンスが測定される音響負荷との間の物理的差異によって主として引き起こされるエバネセントモードが挙げられる。
【0004】
エバネセントモードは、音響体積速度(すなわち、スティミュラス)が導波路内にその入力面の限定的な部分にわたって導入されて、より高次の非伝播エバネセントモードを励起する結果として生じる。すなわち、例えば音響負荷のインピーダンス測定に使用されるインピーダンスプローブは、該インピーダンスプローブが挿入される音響負荷の直径よりも必然的に小さくなる。この結果、音響負荷の伝播する平面波に加えて、エバネセントモードが導波路(すなわち、音響負荷は、例えば外耳道である)で励起され、その結果としてプローブによって測定されるインピーダンスに誤差が導入される。従って、音響負荷の平面波インピーダンスとして特定されて求められるパラメータは、多くの場合、実際の平面波インピーダンスと音響負荷の望ましくない非平面波インピーダンスとの重畳として測定される。
【0005】
測定されたインピーダンスから反射率(すなわち、反射係数)を演算するには、音響負荷の特性インピーダンス及びインピーダンス測定値を認識することが必要であり、従って、反射率の演算はまた、エバネセントモードによって引き起こされる誤差の影響を受ける。更に、音響負荷の特性インピーダンスは、例えば外耳道にて測定を実施する際には未知である音響負荷の断面積に密接に関連している。例えば外耳道のような未知の特性インピーダンスの音響負荷を調べる際には、音響負荷は、特定の予め定められた特性インピーダンスを有すると仮定されることが多い。仮定の特性インピーダンスと、プローブに結合された音響負荷の長さに沿って進行波によって生じる実際の特性インピーダンスとの間の不整合によって引き起こされる誤差が、反射プローブ測定に導入される。
【0006】
従って、例えば反射率及び/又はインピーダンスの正確な測定値を提供するためには、特性インピーダンス及び/又はエバネセントモードの寄与が既知であることが重要である。音響学における聴覚診断の分野での調査は、主として、外耳道の特性インピーダンスを推定することに集中しており、すなわち、現場測定の際に特性インピーダンスの推定に関する幾つかの手法が提案されている。また一部では、音響測定におけるエバネセントモードの寄与を補償することに取り組んできたが、不成功に終わっている。
【0007】
エバネセントモードの影響を近似する1つの既知の手法は、音響インピーダンスに対して直列の補償係数として音響質量をインピーダンス測定値に加えることである。音響質量は、導波路の直径、並びに互いに対する音響入力及び出力の配置及びサイズに依存する。従って、エバネセントモード補償に関して重要なことは、インピーダンスプローブとインピーダンス測定に使用される導波路との間の幾何学的関係に関連する音響質量補償係数を認識及び/又は演算することである。しかしながら、この手法では、音響プローブに関連する音響負荷の幾何学的パラメータ(直径などの)が既知である必要がある。例えば、人の外耳道の音響インピーダンス及び音圧を測定する際に、外耳道が未知の特性インピーダンスを有する音響負荷としてみなされる場合には、この要件は必ずしも得られるとは限らない。
【0008】
発生する他の誤差は、音響負荷を通って移動する音波によって生じる実際の特性インピーダンスに対する音響負荷の仮定の特性インピーダンスとの間の差異に関連する誤差を含むことができる。従って、音響負荷(例えば、導波路又は人の外耳道)のインピーダンス測定において誤差を引き起こすパラメータは、反射率測定値を提供する目的で特性インピーダンスが測定される音響負荷(例えば、導波路又は人の外耳道)の少なくとも幾つかの物理的特性を認知することに依存する。特性インピーダンスが推定されるべき音響負荷の物理的特性は、音響用途では必ずしも直接得られるとは限らない。
【0009】
従って、音響インピーダンス測定値においてエバネセントモードから生じる誤差を正確に求める方法は存在しない。すなわち、従来の測定では、これらの誤差の影響を受けている。加えて、従来技術では、音響負荷(例えば、外耳道)の現場測定の際に、例えば反射率測定において重要となる未知のパラメータを考慮していないと考えられる。
【0010】
従って、本開示の目的は、未知の特性インピーダンスを有する音響負荷の反射率測定値において不正確さを引き起こすエバネセントモードに起因してインピーダンス測定値に生じる誤差、並びに音響負荷の未知の特性インピーダンスに起因する反射率測定値に生じる誤差を補償する方法を提供することである。更に、本発明の目的は、上記の補償方法を用いて、音響負荷の特性インピーダンスが未知である場合の例えば人の外耳道の反射率の現場測定で生じる誤差を考慮することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この目的及び更なる目的は、第1の態様において、未知の特性インピーダンスを有する音響負荷のインピーダンス測定値(Zm)及びその後の反射率測定値で生じる誤差を補償する方法により達成される。本方法は、上記音響負荷の反射率測定値(R)において不正確さを引き起こすエバネセントモードに起因した音響負荷のインピーダンス測定値において生じる第1の誤差を記述し、また、未知の特性インピーダンス(Z0)を有する音響負荷に起因した反射率測定値に生じる第2の誤差を記述する1又は2以上の補償パラメータを実質的に推定する。
【0012】
より詳細には、本方法は、
第1の開放端部及び第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部を有し且つ該第1の開放端部と第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部との間の距離が音響負荷の長さを定める音響負荷において、スピーカ及びマイクロフォンを有するプローブ組立体を位置付けるステップと、
第1の開放端部から音響負荷内に放射されて音響負荷の長さに沿って伝播するように構成された音響出力信号をスピーカから発生させるステップと、
音響負荷に沿って伝播する出力信号の平面波部及びエバネセントモード部を含む入射部と反射部とによって引き起こされる入力信号を音響プローブのマイクロフォンを用いて記録するステップと、
を含み、本方法が更に、
(i)入力信号と出力信号との間の関係に基づいて、入射部のエバネセントモード部に起因し且つ音響質量(L)を用いた近似値として与えられる第1の誤差を含む音響インピーダンス(Zm)を演算するステップと、
(ii)音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)を設定するステップと、
(iii)測定された音響インピーダンス(Zm)と未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)との間の関係から反射率測定値(R)を演算するステップと、
(iv)反射率測定値(R)の実部から反射率測定値(R)の虚部のヒルベルト変換を減算したものと、反射率測定値(R)の虚部から反射率測定値(R)の実部の逆ヒルベルト変換を減算して虚数単位(I)を乗算したものとを加算することにより、反射率推定誤差(εR)を演算するステップと、
(v)反射率推定誤差(εR)の実部及び反射率推定誤差(εR)の虚部を演算するステップと、
(vi)エバネセントモードに起因して反射率測定値に生じる第1の誤差を提供するように、反射率推定誤差(εR)の虚部が最小になるまで音響質量(L)を繰り返し調整するステップと、
を含む、方法。
【0013】
本方法では、エバネセントモードによって引き起こされてインピーダンス測定値に導入され音響負荷の後続の反射率測定値に不正確さを導入する誤差、並びに音響負荷の未知の特性インピーダンスに起因する後続の反射率測定値に生じる誤差を補正することが可能である。その結果、本方法を用いることにより、インピーダンス、反射率、圧力、アドミッタンスの測定値などの様々な音響物理量は、音響負荷の物理的特性及び/又は音響プローブと調査中の音響負荷の開放端部との間の物理的関係を認知することなく、既存の提案されている方法に比べてより正確に推定することができる。従って、例えば、外耳道のインピーダンス及び反射率を測定するときには、音響プローブと関連する外耳道の幾何学的特性及び物理的特性は未知である。本明細書で記載される方法を適用するときには、インピーダンス及び反射率測定値において誤差を引き起こすこの「未知」の関係は、上記の本方法のステップで説明されたように導入される誤差を最小化することによって補償することができる。明らかなように、最小化される誤差は、音響負荷(例えば、外耳道)の未知の特性インピーダンス(すなわち、第2の誤差)に少なくとも関連し、エバネセントモードによって引き起こされる第2の誤差は、音響負荷のインピーダンス測定値に導入される。
【0014】
本開示による方法を用いると、エバネセントモード誤差及び未知の特性インピーダンスによって引き起こされる誤差によって影響されない、音響負荷の反射率測定値を演算することが可能となる。これにより、文献内で記載されたこれまでの方法に比べて、反射率測定値から明らかにすることができる様々な音響特性のより正確な推定が可能となる。例えば、人の外耳道の音響作用では、反射率測定値は、外耳道の長さのような特性を評価するのに使用される場合が多く、本明細書で記載される誤差の影響を受けた場合には、不正確になる。記載される方法では、このような不正確さが回避される。
【0015】
特性インピーダンスは、音響負荷の断面積を含む「音響負荷の特性」を記述する点に留意されたい。従って、例えば人の外耳道を考慮すると、断面誤差は、実質的に未知であって推定する必要があり、上述の方法は、反射率測定値における特性インピーダンスの初期値と外耳道の実際の特性インピーダンスとの間の不整合から結果として生じる誤差を補正することにより少なくとも間接的に行う。
【0016】
上記で詳細に説明したように、本方法は更に、プローブと音響負荷との間のカップリングの特性を記述するプローブ及び音響負荷間のカップリングに起因したエバネセントモード誤差を考慮に入れる。すなわち、現場測定の際のプローブと音響負荷との間のカップリングに関連する誤差は、主としてエバネセントモードから生じる誤差に関連する。
【0017】
用語「プローブ組立体」とは、音響プローブを少なくとも含む要素と理解されたい。すなわち、音響プローブ(インピーダンスプローブとしても定められる)は、レシーバなどの音響源(すなわち、スピーカとも呼ばれる)及びマイクロフォンなどの音響エネルギー検出器を備える要素である。音響プローブは、装置の一部を形成することができ、該装置では、プロセッシングユニットが、電気入力信号をインピーダンスプローブに提供するように構成され、その後、該電気入力信号により、インピーダンスプローブのレシーバが信号の形態でスティミュラスを放射することができる。音響プローブは、操作ツールに取り付けられ及び/又は操作ツールの一部を形成し、操作ツールの端部において「スノート」、「先端」及び/又は「イヤピース」を形成することができ、ここで、音響プローブは、人及び/又は動物の外耳道などの音響負荷内に挿入することが意図されている。
【0018】
音響プローブのレシーバによって音響負荷内に放射される音響スティミュラス(入力信号とも呼ばれる)は、クリック、チャープ、スイープ、純音、及び/又は騒音などインピーダンス測定に好適な何らかのスティミュラスとすることができる。
【0019】
音響プローブへの音響負荷の提供、外耳道などの音響負荷への外部音響場の連結のような、インピーダンスを測定するのに使用される機構の音響挙動及び特性に関する研究によれば、反射率の測定は、音響インピーダンスと音響負荷の特性インピーダンスとの間の関係を提供することを示している。反射率測定値の調査から、反射率に関連するパラメータは、少なくとも音響負荷の物理的寸法に関する何らかの事前の知識を持つことなく、エバネセントモード及び/又は音響負荷の実際の特性インピーダンスと推定の特性インピーダンスとの差異によって引き起こされる誤差を補償するのに必要とされる誤差セット(すなわち、上記第1の誤差及び上記第2の誤差)を推定するのに役立つことが分かった。従って、反射率測定値は、音響負荷の音響特性を提供する演算ステップで用いることができる。
【0020】
従って、第1の態様による方法は、反射率測定値を利用しており、1つの実施形態において、より詳細には演算ステップが、スピーカの入力信号及び出力信号間の関係に基づいて音響負荷の音響インピーダンス(Z
m)を演算するステップを含むようになる。音響負荷においてマイクロフォンの位置で記録された平面波は、そこに含まれるエバネセントモードからの寄与を有するので、音響インピーダンス(Z
m)の演算は、エバネセントモードに起因する第1の誤差を含むことになる。当然ながら、このことは、演算したインピーダンス(Z
m)の誤差につながる。エバネセントモードによって引き起こされた第1の誤差は、音響インピーダンス(Z)の一部を形成するとみなされ、音響質量(L)を用いて近似することができ、その結果、実際のインピーダンス測定値(Z
m)は次式で与えられる。
【数1】
式中、Lは、エバネセントモードに起因して演算された音響インピーダンスに加えられた音響質量を表す。従って、本方法は、請求項1に記載のステップを適用することによって少なくともこの第1の誤差を補正する。
【0021】
より詳細には、本方法は、次式
【数2】
で与えられる反射率測定値を利用して、音響インピーダンス(Z
m)に導入される第1の誤差及び音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z
0)に起因して反射率測定値に導入される第2の誤差(以下で説明される)を推定及び補償し、ここで式(1)において、Z
mは、音響プローブによって測定された入力信号から演算された音響インピーダンスであり、Z
0は、導波路又は外耳道などの音響負荷の特性インピーダンスである。多くの音響用途において、音響負荷の特性インピーダンスは、次式から演算することができる。
【数3】
式中、ρは音響媒体の密度、cは音速、Aは音響負荷の入口の断面積である。しかしながら、上記で詳細に説明したように、音響負荷の物理的パラメータは、例えば人の外耳道を調べる場合、必ずしも既知ではなく、インピーダンス測定の前に特性インピーダンスを演算することはできない。本明細書で記載される方法によれば、補償パラメータに関連する誤差の最小化が、測定の因果関係の復元に対する最適な特性インピーダンス及びエバネセントモード補償係数を提供するので、物理的パラメータが未知であることは重要ではない。従って、反射率測定値に導入された第1及び第2の誤差を補償するために、反射率測定値は、次式とみなすことができる。
【数4】
ここで、音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z
0)に対して初期値(Z
0’)が設定され、エバネセントモードに起因して演算された音響インピーダンスZ
mに関連する第1の誤差iwLが加算される。
【0022】
本方法による更なるステップにおいて、反射率推定誤差(ε
R)が演算される。この誤差は、次式で与えられる。
【数5】
式中、Rは反射率として与えられ、Hは、ヒルベルト変換の記号として与えられる。従って、請求項1に記載されるように、反射率誤差推定値を決定するために、反射率Rの虚部のヒルベルト変換及び反射率Rの実部の逆ヒルベルト変換が使用される。ヒルベルト変換を用いると、その虚部及び実部の挙動を調べることが可能となる。これにより、実部及び虚部で生じる誤差を調べることが可能となり、その結果として本明細書で記載されるように、導入された誤差の識別及び補償は、上記第1の音響インピーダンス及び上記第2の特性インピーダンスに関連する1又は2以上の誤差推定値の最小化によって得ることができる。本開示の実施形態によれば、本明細書で述べた誤差の調査は、ヒルベルト変換の使用により実施することができ、これは本明細書全体を通じて明らかになるであろう。
【0023】
従って、本明細書で開示される本方法による更なるステップにおいて、反射率推定誤差(ε
R)の実部及び虚部は、次式に従って演算される。
【数6】
【数7】
Rは反射率測定値である。従って、Reε
Rで表される推定誤差の実部が、特性インピーダンスに対する初期値Z
0’及びマイクロフォンへの入力信号で生じるエバネセントモードによって引き起こされる第1の誤差パラメータiwLを両方含むことは明らかとなるはずである。同様に、Imε
Rで表される反射率推定誤差の虚部は、特性インピーダンスに対する初期値Z
0’及びマイクロフォンへの入力信号で生じるエバネセントモードによって引き起こされる第1の誤差パラメータiwLを両方含む。すなわち、本方法による更なるステップにおいて、音響質量(L)は、反射率推定誤差の虚部Imε
Rが最小になるまで繰り返し調整され、これにより反射率測定値で生じる第1の誤差が提供される。
【0024】
従って、換言すると、1つの実施形態において、1又は2以上の補償パラメータ(すなわち、上記第1及び第2の誤差とみなすことができるパラメータ)を演算するステップの前に、測定された第1の音響インピーダンス(すなわち、演算された音響インピーダンス)に初期補償係数が加算される。
【0025】
本開示による方法の更なるステップにおいて、未知の特性インピーダンスの初期値(Z0’)はまた、音響負荷の実際の特性インピーダンス(Z0)との関連で不正確な初期値(Z0’)を補償するために調整することができる。従って、上記初期値(Z0’)は、同様に、反射率推定誤差の実部ReεRが最小化されるまで繰り返し調整され、これにより音響負荷の未知の特性インピーダンスの初期値(Z0’)に起因して反射率測定値に生じる第2の誤差を考慮に入れた未知の特性インピーダンス(Z0)を決定する。
【0026】
従って、本方法を適用した場合、反射率推定誤差の上述の虚部及び実部ReεRを最小化し、インピーダンス演算及び後続の反射率演算に導入される誤差を補正することが可能となる。
【0027】
換言すると、初期補償係数、すなわち初期値(Z0’)及びLが与えられると、1又は2以上の誤差推定値の最小化が処理及び演算の観点から最適化され、誤差は、反射率測定値において実質的に補償される。
【0028】
エバネセントモードに起因して生じる第1の誤差を正確に補償するために、音響質量(L)を繰り返し調整する本方法のステップは、反射率推定誤差の虚部ImεRが最小になるまで、音響インピーダンス測定値(Zm)から音響質量(L)を減算して反射率測定値及び反射率推定誤差の虚部ImεRを更新する繰り返しステップを含む。このようにして、反射率測定値の繰り返しの更新が達成されて、第1の誤差が補償された反射率測定値が得られる結果となる。
【0029】
音響質量を測定した音響インピーダンスに加算すること自体は、音響インピーダンスに対するエバネセントモードの影響を近似する手段として従来技術において知られている点に留意されたい。しかしながら、本明細書で記載される開示によれば、音響質量の大きさは、ヒルベルト変換を用いることで決定することができ、本明細書で記載される方法を用いることにより、音響質量(L)は、反射率測定値の手動調整ではなく繰り返しプロセスで補償できることが分かった。従って、本明細書で記載される方法により、現場測定は、例えば人の耳の現場測定の際に導入される潜在的エバネセントモード誤差を考慮しており、この場合、かかる誤差はまた、音響負荷(例えば、人の外耳道)と音響プローブとの間の幾何学的不整合に起因して生じる。このようにして、本方法は、より正確な現場インピーダンス測定を可能にする。
【0030】
1つの実施形態によれば、音響質量(L)に対する初期補償係数(すなわち、音響質量(L)に対する初期値)は、測定した第1の音響インピーダンスにおいて誤差を引き起こすエバネセントモード誤差の推定値である。更に、特性インピーダンスに対する初期値(すなわち、未知の特性インピーダンスに対する初期値(Z0’))は、人の外耳道のようなインピーダンス測定に使用されることになる音響負荷の直径の推定値を含むことができる。誤差推定値の調査を迅速にするために、音響負荷の直径のような物理的パラメータは、音響負荷の実際の直径に近いように選択される。特性インピーダンスの演算及び最小化に使用される適切な初期直径は、大人の外耳道の7.5mm~幼児の外耳道の4mmの範囲とすることができる。基本的に、直径の初期値(すなわち、当初の値)は、調査対象に適切な開始推測として選択すべきである。
【0031】
本発明者らは、補償パラメータの演算及び推定時の誤差推定値に関して、ヒルベルト変換を用いて、反射率測定値及び/又は音響インピーダンスにおける因果関係を復元することにより、エバネセントモードによって導入される不正確さ及び/又は音響負荷と前提値との間の特性インピーダンスの不整合に起因して生じる不正確さを考慮して誤差を補償し実質的に推定することができることを見出した。従って、未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)を調整するステップ及び音響質量(L)を調整するステップでは、エバネセントモード及び未知の特性インピーダンスに起因してインピーダンス測定値に含まれる非因果関係を考慮に入れる。
【0032】
換言すると、ヒルベルト変換を用いて信号の因果関係を調査することができ、このような調査は、現場測定の際に少なくともエバネセントモード及び特性インピーダンスに関連する補償係数(すなわち、誤差)を演算するため反射率及び/又は音響インピーダンス測定値に関して用いることができる。より詳細には、関数の因果関係は、当該関数のフーリエ変換の実部と虚部の間の依存性に密接に関係がある。すなわち、何れかの関数は、その偶数成分と奇数成分とに分けることができ、ここで、フーリエ変換の実部は関数と偶数コサイン間の比較演算の結果であるので、偶数成分のフーリエ変換は、全関数のフーリエ変換の実部をもたらすことになる。加えて、奇数成分のフーリエ変換は、関数とサイン間の比較演算であり、当該関数のフーリエ変換の虚部をもたらすことになる。関数が因果的である場合、偶数部と奇数部は、次式で関連付けられる。
【数8】
ここで、f
e(t)は関数の偶数部、f
o(t)は関数の奇数部である。符号関数sgn(t)を乗算したものは、フーリエ領域に変換されたヒルベルト変換に相当する。従って、信号の因果関係は、信号スペクトルの実部と虚部との間の関係を提供するヒルベルト変換から調べることができる。ヒルベルト変換は、次式で与えられる。
【数9】
同様に、逆ヒルベルト変換は、次式で与えられる。
【数10】
ここで、アスタリスクは畳み込みを表し、積分はコーシーの主値を用いて定義され、R(ω)及びX(ω)は、それぞれ関数のフーリエ変換の実部と虚部を表している。従って、ヒルベルト変換は、反射率及び/又は音響インピーダンス測定値の虚部と実部間の効率的な関係を提供し、この関係を用いて、エバネセントモード及び特性インピーダンスの差異に起因して導入される誤差を補償するのに必要な補償パラメータを繰り返し推定することができる。
【0033】
ヒルベルト変換を用いて反射率推定誤差の実部及び虚部(ImεR)を最小化する際にシステムの因果関係を復元することで、これにより未知の特性インピーダンスを有する音響負荷の正確な現場測定を実施することが可能となる。
【0034】
1つの実施形態において、第1及び第2の誤差推定値は、2つの独立した最小化プロセスで決定することができる。すなわち、反射率推定誤差の実部及び虚部の最小化は、上記で詳細に説明したように、2つの独立した最小化プロセスで実施することができる。しかしながら、2つのプロセスは単一のステップにおいて実施することが可能であり、1つの実施形態では、推定は更に、Z0の初期値と音響質量(L)の初期値の繰り返し調整を同時に行うステップを含み、これにより反射率推定誤差の実部及び反射率推定誤差の実部及び虚部ImεRの最小化を同時に実施されるようにする。
【0035】
1つの実施形態において、本方法は、検出した音響反射信号スペクトルの何らかの不連続性を考慮する追加のステップを含むことができる。これは、周波数領域における連続性を復元するようナイキスト周波数を適応的に調整することによって行うことができる。
【0036】
本方法は、測定されたインピーダンスを直接調べる場合も同様に機能することができ、これにより反射率推定誤差の代わりにインピーダンス推定誤差が演算される点に留意されたい。従って、反射率推定誤差(εR)は、エバネセントモード及び未知の特性インピーダンスに起因して反射率測定値(R)に含まれる非因果関係を表す他の何れかの物理量に変換することができる。
【0037】
インピーダンスは、本質的に因果的であり、特性インピーダンスと等しいt=0における寄与を有し、エバネセントモードは、インピーダンスの虚部のみに影響を与えるので、本明細書で記載される手続き方法を用いて両方のパラメータ(すなわち、音響質量(L)及び未知の特性インピーダンス(Z0))を取り出すことが可能となる。しかしながら、この手法は、共振によって起こる音響インピーダンスの実部及び虚部の非平滑な挙動、並びにω→0のときに|Z|→∞となる閉塞負荷の音響インピーダンスの発散特性によって複雑なものとなる。他方、反射率の実部及び虚部は両方とも、ほとんどの場合において平滑関数であり、通常、閉塞負荷に対してω→0のときにR→1である。従って、反射率は、インピーダンスよりもこの方法に好適である。
【0038】
本明細書で記載される実施形態によれば、音響負荷は、導波路、楽器、消音器、人の外耳道、又は音響インピーダンスが重要な他の何れかの音響負荷の何れかとすることができる点に留意されたい。従って、本方法は、物理的寸法及びエバネセントモードの寄与などの物理的特性が未知である場合において、何らかの重要な音響負荷におけるインピーダンス、反射率及び/又は音圧を測定するのに用いることができる。従って、本方法は、正確で乱れのない(すなわち、平面波の)インピーダンス、反射率及び音圧測定をもたらすことができる補償方式を提供する。
【0039】
本開示の第2の態様において、音響負荷の反射率測定値(R)を出力するよう構成された音響測定システムが提供される。音響測定システムは、音響負荷に配置されるように構成されたプローブ組立体を備え、該音響負荷は、第1の開放端部及び第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部を有し、第1の開放端部と第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部との間の距離が音響負荷の長さを定める。プローブ組立体は更に、スピーカ及びマイクロフォンと、信号発生ユニットとを備え、該信号発生ユニットは、第1の開放端部から音響負荷内に放射されて音響負荷の長さに沿って伝播する出力信号をスピーカから発生させるよう構成される。プローブ組立体のマイクロフォンは、音響負荷に沿って伝播する出力信号の入射部及び反射部によって引き起こされる入力信号を記録するよう構成される。より詳細には、本音響測定システムは、本開示の第1の態様による方法のステップを実施するよう構成された演算ユニットを備える。
【0040】
更に、演算ユニットは、請求項1に記載のステップ(i)による、エバネセントモードに起因した音響質量を含む音響インピーダンス(Zm)を演算するために音響負荷の少なくとも部分的に閉鎖した端部から前記出力信号が反射されることによって引き起こされる少なくとも記録された入力信号と、本明細書で開示される方法に関連して記載されるステップによる、音響質量(L)及び/又は未知の特性インピーダンス(Z0)のうちの少なくとも一方の初期値とを入力としてとる。
【0041】
従って、1つの実施形態において、演算ユニットは、第1の態様の方法を実施して、最小化プロセスによりエバネセントモード及び未知の特性インピーダンスを補償するように構成することができる。
【0042】
より詳細には、演算ユニットは、エバネセントモードから生じる第1の誤差及び未知の特性インピーダンス(Z0)に起因して生じる第2の誤差を含む反射率測定値(R)を出力して、請求項1に記載のステップ(v)による前記反射率推定誤差(εR)の実部及び虚部を演算し、本明細書で開示される方法に関連して記載されるステップによる反射率推定誤差の実部及び虚部(ImεR)を演算することができる。加えて、演算ユニットは、音響質量(L)及び未知の特性インピーダンスに関連する初期値の調整ステップを実施するときに、補正された反射率測定値(R)を出力するよう構成され、演算において最小化が達成されたときには、演算ユニットからの出力は、エバネセントモードに起因して生じる第1の誤差及び音響負荷の未知の特性インピーダンスに起因して生じる第2の誤差が補償された、補正された反射率推定測定値とすることができる。
【0043】
本開示の態様及び実施形態は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明から最もよく理解することができる。各図は明確にするために概略的で簡易的に示され、請求項の理解を向上させるための詳細を示しているに過ぎず、他の詳細事項は省略されている。全体を通じて、同じ参照符号は、同一又は対応する要素に使用されている。各態様の個々の特徴は各々、他の態様の何れか又は全ての特徴と組み合わせることができる。これら及び他の態様、特徴及び/又は技術的効果は、以下に示される例図を参照することで明らかになり解明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本開示の実施形態による音響プローブに結合された音響負荷を概略的に示す図である。
【
図2】一様な導波路の分析上の時間領域反射率測定値を示す図である。
【
図3】
図2の最適反射率測定値の反射率推定誤差の分析的表現を示す図である。
【
図4】第2の誤差が導入された分析上の時間領域反射率測定値を示す図である。
【
図5】
図4の第2の誤差が例示された反射率推定誤差の分析的表現を示す図である。
【
図6】第1の誤差が導入された分析上の時間領域反射率を示す図である。
【
図7】
図6の第1の誤差が例示された反射率推定誤差の分析的表現を示す図である。
【
図8】第1の誤差が存在する場合の本開示の実施形態による導波路の実時間領域の反射率測定値を示す図である。
【
図9】
図8の時間領域の反射率測定値に第1の誤差が存在する場合の反射率推定誤差を示す図である。
【
図10】第2の誤差が存在する場合の本開示の実施形態による導波路の実時間領域の反射率測定値を示す図である。
【
図11】
図10による実時間領域の反射率測定値に生じる第2の誤差が例示された反射率推定誤差を示す図である。
【
図12】第1及び第2の誤差が補償された、
図8及び
図10による導波路の実時間領域の反射率測定値を示す図である。
【
図13】
図12で達成された補償による反射率推定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
添付図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成を説明することを目的としている。本詳細な説明は、様々な概念を十分に理解することを目的として具体的な詳細事項を含む。しかしながら、これらの概念は、この具体的な詳細事項がなくても実施できることは、当業者には明らかであろう。本方法、ネットワーク及び関連の装置の幾つかの態様は、様々な機能ユニット、モジュール、構成要素、回路、ステップ、プロセス、アルゴリズム、その他(総称して「要素」と呼ばれる)によって記述される。特定の用途、設計的制約又は他の理由によっては、これらの要素は、電子ハードウェア、コンピュータプログラム、又はこれらの何らかの組み合わせを用いて実装することができる。
【0046】
ここで
図1を参照すると、音響負荷10(例えば、外耳道)に配列された音響プローブ組立体20を有する音響インピーダンス測定システム1が概略的に示される。
【0047】
音響インピーダンス測定システムは、人の外耳道のような音響負荷の音響インピーダンスを測定して、音響負荷の反射率測定値(R)を出力するよう構成されている。本システムは一般に、音響負荷10に位置付けられるように構成されたプローブ組立体20を備える。音響負荷は、第1の開放端部11及び第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部12を有する。これらの端部は、音響負荷にチャンネルを形成するために互いにある距離だけ離隔されており、すなわち、該距離が音響負荷の長さを定める。一例として、人の耳の測定に本測定システムを用いた場合、第1の開放端部11は、外耳道開口とすることができ、第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部12は、鼓膜とみなされる。更に、プローブ組立体は、スピーカ及びマイクロフォンを備える。
【0048】
本システムは更に、第1の開放端部から音響負荷内に放射されて音響負荷の長さに沿って伝播するように構成された出力信号をスピーカから発生させる信号発生ユニット(SG)21を備える。信号発生ユニットはまた、プローブ組立体20内で音響源(すなわち、スピーカ)23に電気入力信号22を提供するものとみなすことができる。プローブ組立体が音響負荷10の第1の開放端部11に位置付けられたときに、音響源(すなわち、スピーカ)23は、電気入力信号22に応答して音響スティミュラス24aを生成するよう構成される。音響源23は、音響負荷のチャンネル13に音を放射するよう構成されたレシーバ(スピーカとも呼ばれる)として例示される。チャンネル13は、一方の端部から他方の端部に音が移動することを可能にする音響負荷の内部キャビティとみなされる。従って、レシーバ23は、測定システムによって使用されるプローブ信号を放射してインピーダンス測定値を得るように構成される。
【0049】
更に、本システムは、音響負荷に沿って伝播する出力信号の入射部及び反射部によって引き起こされる入力信号を記録するよう構成された信号測定ユニット(すなわち、マイクロフォン)を備える。換言すると、プローブ組立体20内に配置されるマイクロフォン25は、音響負荷の反射音響信号を測定する。反射音響信号24bは、マイクロフォン25によって取り込まれて、演算ユニット(CU)26に伝達される。演算ユニット26は、記録された入力信号(反射音響信号とも呼ばれる)に基づいて、演算ユニットによって演算された反射率測定値で生じる1又は2以上の誤差を補償するよう構成される。
【0050】
より詳細には、演算ユニット26は、本開示の前項で記載された方法を適用するよう構成される。すなわち、演算ユニットは、以下のステップ、
(i)上記入力信号と上記出力信号との間の関係に基づいて音響インピーダンス(Zm)を演算するステップ、ここで上記音響インピーダンス(Zm)は入射部のエバネセントモード部に起因した第1の誤差を含み、該第1の誤差は音響質量(L)を用いた近似値として与えられ、
(ii)上記音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)を設定するステップ、
(iii)上記測定された音響インピーダンス(Zm)と上記未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)との間の関係から反射率測定値(R)を演算するステップ、
(iv)反射率測定値(R)の実部から反射率測定値(R)の虚部のヒルベルト変換を減算し、反射率測定値(R)の虚部から反射率測定値(R)の実部の逆ヒルベルト変換を減算して虚数単位(I)を乗算したものを加算することにより、反射率推定誤差(εR)を演算するステップ、
(v)上記反射率推定誤差(εR)の実部及び上記反射率推定誤差(εR)の虚部を演算するステップ、
(vi)エバネセントモードに起因して反射率測定値に生じる第1の誤差を提供するように、上記反射率推定誤差の虚部(ImεR)が最小になるまで上記音響質量(L)を繰り返し調整するステップ、を実施するよう構成される。
【0051】
これにより、補正された反射率測定値が出力として実質的に提供され、ここではエバネセントモード及び音響負荷の未知の特性インピーダンスに起因して生じる誤差が考慮されている。
【0052】
換言すると、演算ユニットは、本方法により提供される演算ステップから1又は2以上の補償パラメータC1(ω)、C2(ω)を演算するよう構成されるといえる。1又は2以上の補償パラメータは、演算された音響インピーダンスZmで生じるエバネセントモードに関連する1又は2以上の反射率誤差推定値及び音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z0)に関連する誤差の最小化によって実質的に求められる。本明細書で記載される方法は、音響負荷の特性インピーダンスが未知とみなされる場合の現場音響測定で使用することを目的とする点に留意されたい。従って、本明細書で記載される方法は、測定前に音響負荷の特性インピーダンスを知ることなく、例えば反射率から音響負荷を特徴付ける解決策を提供する。
【0053】
1つの実施形態において、演算ユニット26は、本方法のステップ(i)による、エバネセントモードに起因した音響質量を含む音響インピーダンス(Zm)を演算するために音響負荷の少なくとも部分的に閉鎖した端部から出力信号が反射されることによって引き起こされる記録された入力信号と、また、本方法のステップ(ii)による、音響質量(L)及び/又は未知の特性インピーダンス(Z0)のうちの少なくとも一方の初期値とを入力としてとる。
【0054】
より詳細には、本測定システムは、本開示を通じて記載される方法を実施するよう構成される。従って、本測定システム及びより具体的には演算ユニット26は、実部及び虚部を最小化して、エバネセントモードの寄与を記述する第1の誤差及び未知の特性インピーダンス(Z0)から生じる反射率の誤差への寄与を記述する第2の誤差を得ることができるようにする、反射率誤差推定値を演算するよう構成される。換言すると、演算ユニットによって提供される第2の誤差は、測定システムが本明細書で記載される方法を実施するときに、音響負荷と特性インピーダンスとの間の特性インピーダンスに関連する補償パラメータC2を特徴付ける。測定システムの演算ユニットによって提供される第1の誤差推定値は、プローブ組立体と音響負荷との間のカップリングの結果として生じるエバネセントモードによって引き起こされる誤差に関連する補償パラメータC1を特徴付ける。
【0055】
具体的には、補償係数C
2は、反射率が以下の式(7)を有するような特性音響インピーダンスZcを表すものとみなされ、式(7)は、式(3)を別の様式で記述したものに過ぎない。
【数11】
従って、本明細書で記載される補償パラメータは、音響質量(L)及び特性インピーダンス(Z
0)の初期値と単にみなされ、これらは、上述のように、反射率推定誤差の虚部Imε
R及び反射率推定誤差の実部を最小化するよう上記方法で調整される。
【0056】
特性インピーダンスに関連するパラメータは、例えば、外耳道の直径であり、特性インピーダンスを推定するのに必要な外耳道区域を演算するのに使用される。従って、C2に含まれ且つ調整することができる1つのパラメータは、例えば、補聴器使用者の外耳道の直径である。別の可能性は、熱粘性損失を含む等価特性インピーダンスを演算することとすることができる。
【0057】
上記で詳細に説明したように、補償係数C
1は、次式のように演算されたインピーダンスZ
mに減算又は加算される物理量とみなされる。
【数12】
【0058】
音響質量を用いてエバネセントモードを近似する場合、係数は、以下の形式をとる。
【数13】
ここでLは音響質量の大きさ(正又は負)である。
【0059】
換言すると、本測定システムは、プロセッサを有するデータ処理システムを備え、該プロセッサは、本明細書で記載される方法のステップの少なくとも一部(大部分又は全て)をプロセッサに実施させるコンピュータプログラムを実行するように適合されている。コンピュータプログラムは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか否かにかかわらず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、手続き、ファンクション、その他を広く意味するとみなすものとする。従って、本測定システムは、以下により詳細に記載される方法を実施するよう構成される。
【0060】
音響測定の興味深い特性の1つは、時間領域反射率(TDR、本開示を通じて反射率測定値とも呼ばれる)であり、これは、音響インピーダンスを特徴付けるのに用いることができ、時間ゼロ以下の非ゼロサンプルが直ちに見えるので、因果関係の直感的な評価が可能になる。TDRは、上記で詳細に説明したように、逆フーリエ変換を用いて反射率測定値(R)から得られる。
図2は、本明細書で記載される方法の特性を調べるのに使用される分析上の時間領域反射率を示している。分析上とは、測定が、時間領域反射率30の最適挙動、すなわち、反射率測定値に誤差が導入されないことを例示するコンピュータプログラム(MATLAB又は他のプログラミング言語など)で実施されるシミュレーション表現であることを理解されたい。実音響測定プリケーションにおいて、複数の係数が時間領域反射率に影響を与え、前項で詳細に説明されたように、音響測定に誤差を引き起こす。
図2は、適正な特性インピーダンスを用いて時間領域反射率(TDR)の測定値に影響を与えるエバネセントモードのない分析平面波インピーダンスの場合、TDRが実質的に原因であることを示している。
【0061】
本明細書で記載される方法を用いることによって、例えばエバネセントモード並びに音響負荷と音響プローブとの間の特性インピーダンスの不整合に関連する誤差が導入された場合、音響負荷の演算されたインピーダンス及び未知の特性インピーダンスから得られる時間領域反射率の挙動が調べられ、このような誤差を補償する最適解決策が見出される。
【0062】
本方法は、式(1)によって与えられる反射率の測定値を推定するステップを含む。
図2に見られる分析上の時間領域反射率として表される最適測定において、インピーダンスZ
mの演算の誤差及び未知の音響負荷に起因する反射率の後続の演算によって引き起こされるばらつきは導入されないので、補償は必要ではないと考えられる。従って、
図1において、考察中の音響負荷の特性インピーダンスは既知であり、このため反射率測定値(R)に誤差は導入されない点を理解されたい。反射率推定誤差の実部31及び虚部32は、ゼロ付近に実質的に集まっているので、分析TDRが実質的に原因であることは
図2から明らかである。しかしながら、本方法が反射率測定値(R)に導入される潜在的誤差をどのように補償するか、従って、現場測定中のインピーダンス測定値を補償する方法に関して説明するために、本出願に先立つ時間領域反射率(TDR)の分析調査を詳述する。
【0063】
本開示による方法を用いると、ヒルベルト変換を用いることにより、反射率の第1の実部と第2の虚部との間の関係が提供される。上記で詳細に説明したように、ヒルベルト変換は、虚部と実部との間の関係を記述し、この関係から、反射率スペクトルが非因果的である場合の因果関係を調べて復元することができる。従って、反射率推定誤差(ε
R)を調べた(すなわち、演算した)後、反射率推定誤差の虚部(Imε
R)及び反射率推定誤差の実部(Reε
R)を演算することによって、信号(ここではTDR)の因果特性の概要を得ることができる。このことは、
図3に示されており、ここでは
図2の反射率測定値(R)による反射率推定誤差の実部(Reε
R)及び反射率推定誤差の虚部(Imε
R)が例示されている。
図3から分かるように、誤差推定値は、最適分析状況において実質的にゼロである。
【0064】
従って、本方法は、虚部(ImεR)及び実部(ReεR)が実質的にゼロ前後に中心がある最適反射率推定誤差(εR)を達成することを目標としている。これは、インピーダンス、音圧及び反射率の正確な音響測定を提供する。
【0065】
従って、因果関係を復元する方法に関する更なる調査は、
図2の分析TDR測定値に少なくとも2つの異なる誤差を導入することによって実施することができる。ユーザの外耳道などにおいて現場音響測定を実施する場合、TDRに第1の誤差を導入する係数は、音響プローブと音響負荷との間の特性インピーダンスの不整合に依存し、すなわち、第2の誤差は、調査中の音響負荷の特性インピーダンス(Z
0)が未知であることから生じ、第1の誤差を導入する第2の係数は、エバネセントモードに関連している。従って、このような誤差を考慮に入れる方法を提供するために、かかる第1及び第2の誤差は、後続の図において
図2の分析TDRに導入されている。
【0066】
簡潔にするために、反射率測定値(R)に関する2つの誤差の作用及びその個々の補償について、以下の節にて個別に説明する。しかしながら、本方法は、両方の誤差を組み合わせたステップで又は2つの別個のステップで補償する選択肢を提供する点に留意されたい。
【0067】
特性インピーダンスに関連することができる第2の誤差の説明を開始するにあたって、
図4を参照する。
図4は、第2の誤差が
図2のTDRに導入された場合の分析TDRの挙動を示している。
図4において、TDRは、半径a=4mmでL=5cmの導波路の分析インピーダンス(すなわち、分析音響負荷の測定インピーダンス)から導かれるが、特性インピーダンス(Z
0)は、a=3.5mmの導波路から導かれる。
図4から分かるように、TRD信号40は、符号43、44及び45で示される丸く囲まれた領域で実質的に不規則になっている。従って、導波路などで音響負荷の測定を実施する場合には、音響負荷の特性インピーダンスZ
0とプローブ間に不整合が存在し、
図4に示される不規則部43、44及び45を引き起こす。現場音響測定(特に外耳道の現場音響測定)でよくある音響負荷の特性インピーダンスZ
0が未知である場合、TDRにおける不規則部を取り除くためには、この未知の特性インピーダンスを考慮に入れた、第2の誤差としても示される補償パラメータC
2が必要とされる。誤差は、負に向かう反射率推定誤差41の実部の変化として
図5に同様に例示されている。
【0068】
TDRにおけるこのような不規則な挙動を考慮に入れるために、本開示の実施形態による方法は、ヒルベルト変換を用いて反射率推定誤差を演算した後、反射率推定誤差の実部(ReεR)及び反射率推定誤差の虚部(ImεR)を演算し、これらは、未知の特性インピーダンス(Z0)に起因して生じる誤差の場合、反射率推定誤差の実部(ReεR)を最小化し、これにより音響負荷の未知の特性インピーダンス(Z0)の初期値(Z0’)に起因して反射率測定値に生じる第2の誤差を考慮した未知の特性インピーダンス(Z0)を決定することにより補償される。
【0069】
より詳細には、本方法は、上記で詳細に説明したようにヒルベルト変換から第1の実部と第2の虚部との間の関係を確立する。このような関係から、上記ヒルベルト変換を用いて、反射率測定値の虚部から反射率測定値の実部の1又は2以上の誤差推定値及び/又は反射率測定値の実部から反射率測定値の虚部の1又は2以上の誤差推定値の演算が実施され、例えば、
図3及び
図5に示される誤差推定値が得られる。
図3及び5から分かるように、これらの図を比較すると、誤差を導入する
図4の分析TDRは非因果的であり、導入される誤差が反射率誤差推定値の実部(Reε
R)に影響を与えることは明らかである。
【0070】
TDR信号40における因果関係を復元するために、TDR40に導入された誤差は、上述のように反射率推定誤差の実部を最小化することによって最小化される。特に、第2の誤差については、音響プローブと音響負荷との間の特性インピーダンスの不整合に関して見たときに因果関係の復元並びにより正確な測定の実現のためには、実部における誤差の最小化が特に重要であることが、
図5から明らかである。反射率推定誤差の実部(Reε
R)の最小化により、その実部がゼロに向かって戻っている。
【0071】
次に、エバネセントモードを引き起こす、音響プローブと音響負荷との間の幾何学的不整合に起因して生じる誤差に関連する可能性がある第1の誤差に移り、
図6及び
図7を参照する。
図6は、第2の誤差が
図2の分析TDRに導入された場合の分析TDR50の挙動を示している。
図6のTDR50は、a=4mmでL=5cmの導波路の分析インピーダンスから導かれるが、エバネセントモード係数は、L=130の音響質量によってシミュレートされる。
図6から分かるように、TDR信号50は、符号53及び54で示される丸く囲まれた領域で実質的に不規則になっている。更に、
図7から分かるように、反射率推定誤差の実部51及び虚部52は、TDRの非因果的挙動を明確に示している。従って、音響負荷の測定を実施する場合には、音響プローブ組立体と比較して、音響負荷の開口間に幾何学的不整合が存在し、これは、
図6に示される不規則部53,54を実質的に引き起こす。この幾何学的不整合は、一般に、エバネセントモードを引き起こすことが知られている。このようなエバネセントモードはまた、例えば人の外耳道に挿入される場合のような現場測定の際に音響プローブが音響負荷に挿入されるときに生じ、従って、現場インピーダンス測定の際に補償される必要がある。上述したのと同様の方法で、エバネセントモードに起因して導入される誤差は、本明細書で記載される方法を用いることによって補償することができる。すなわち、エバネセントモードの寄与は、反射率測定値(R)の実部から反射率測定値(R)の虚部のヒルベルト変換を減算したものと、反射率測定値(R)の虚部から反射率測定値(R)の実部の逆ヒルベルト変換を減算して虚数単位(I)を乗算したものとを加算することにより反射率推定誤差(ε
R)を演算した後、反射率推定誤差(ε
R)の実部及び反射率推定誤差(ε
R)の虚部を演算し、最終ステップにおいて、エバネセントモードに起因して反射率測定値に生じる第1の誤差を提供するように、反射率推定誤差(ε
R)の虚部が最小になるまで音響質量(L)が繰り返し調整されることによって補償される。
【0072】
従って、本方法によれば、現場測定の際に導入されたエバネセントモードの補償が達成される。
【0073】
第2の誤差と同様に、本方法は、上記で詳細に説明したようにヒルベルト変換から第1の実部51及び第2の虚部52との間の関係を確立する。このような関係から、ヒルベルト変換を用いて、反射率測定値の虚部から反射率測定値の実部の1又は2以上の誤差推定値及び/又は反射率測定値の実部から反射率測定値の虚部の1又は2以上の誤差推定値の演算が実施され、例えば、第1の誤差について
図7に示される反射率推定誤差が得られる。
図3及び7から分かるように、これらの図を比較すると、第1の誤差を導入する
図6の分析TDRは非因果的であり、導入される誤差が反射率誤差推定値の実部51及び虚部52の両方に影響を与えることは明らかである。しかしながら、虚部の誤差推定値は、周波数に比例する関係を示すようであり、他方、実部は予測が難しいことが、
図7から分かる。
【0074】
本開示による1つの実施形態において、本方法は更に、インピーダンスZmに加算される初期補償係数を含み、エバネセントモードの影響の初期推測を提供する。第2の誤差に対する誤差推定値の演算にこのような初期推定を加算する効果で、より迅速な収束が達成される。初期推測は、音響質量(L)を調整するための初期値とみなされる。
【0075】
図7による挙動の調査から、第2の誤差に関する
図5の誤差推定を調べると、第2の誤差は、反射率推定誤差の実部(Reε
R)にのみ影響を与え、他方、第1の誤差は、反射率推定誤差の実部及び反射率推定誤差の虚部(Imε
R)の両方に影響を与えることが明らかである。要約すると、このことは、特性インピーダンスの不整合が、主として反射率推定誤差の実部に誤差を導入し、幾何学的不整合(例えば、エバネセントモードを引き起こす)が、主として反射率誤差推定値の虚部(Imε
R)に誤差を導入することを意味している。従って、正確な音響インピーダンス測定及び反射率測定を達成するために、好ましくは、両方の誤差が補償されて、反射率の因果関係が復元されるようにされるべきである。
【0076】
実際の測定用途に関連した本方法の効率性を示すために、音響負荷などの実際の導波路における測定に関連して使用した場合の本方法について説明する。ここで、
図2~7の分析調査に関して記載されたのと同じ調査を示す
図8~
図13を参照する。
【0077】
最初に
図8を参照すると、何らかのエバネセントモード補償なしの適正な既知の特性インピーダンスを用いた8×φ0.8cm導波路の音響インピーダンスなどの測定からのTDR60が示される。エバネセントモードに関連する誤差の導入は、
図8に示されるTDR60に影響を与えることが明確であり、ここで、TDRにおける少なくとも3つの不規則部63、64、65が分かる。
図9は、反射率測定値61の実部及び反射率推定誤差62の虚部に対するエバネセントモードの影響を示している。この影響は、
図9に示す反射率への非因果関係の導入であり、誤差は、虚部の推定値における周波数に比例する誤差と
図9で分かる実部61の推定値との幾らかより複雑な周波数関係から明らかであることが分かる。
【0078】
本明細書で記載される方法から、エバネセントモード補償パラメータは、実質的に少なくとも黙示的に求められ、反射率推定誤差の虚部(Imε
R)の推定値の誤差を低減することを試みて測定インピーダンスに適用されて
図13に示す結果が得られる。具体的には、反射率推定誤差の虚部(Imε
R)の推定値に正の誤差が存在する場合、増大する負の質量が測定インピーダンスから減算されて誤差を最小にし、また逆の場合も同様である。因果関係は、時間領域及び周波数領域の両方において反射率に完全に復元されることが明らかである。t=0の後、下方で僅かに重なり合うTDRの小さな不規則部が存在するが、これは、単にウィンドウ処理による信号処理のアーティファクトに起因するものである。この不規則部は、恐らくは、プローブ先端の平面の背後で僅かな過剰な体積を提供するキノコ形ゴム製イヤーチップを用いてプローブを挿入した結果である。恐らくは、ナイキスト周波数を調整することによる反射率スペクトルの連続性を完全に回復できないことに起因し、また音響質量の簡易な加算が補償できない入力面に対するプローブ先端の可能性のある置き違えの導波路様挙動に起因して、より高い周波数に向う誤差の僅かな偏位が存在する。これは、誤差の最小化においてより高い周波数を除外するだけで回避される。
【0079】
エバネセントモードに関連する補償からの結果を用いるが、φ0.75cmの導波路に対応する不正確な特性インピーダンスを適用した場合、結果として得られるTDR70は
図10に示すようなものである。この場合も同様に、不正確な特性インピーダンスによって引き起こされる誤差がTDR70の不規則部73,74を導入することは、
図10から分かる。
図4及び
図8において追加の不規則部について言及されたが、
図10に示すTDRにおいても同様に不規則部が存在する点に留意されたい。しかしながら、この誤差は小さいので、従って
図10から明らかではない。TDRに導入される実部71及び虚部72の誤差は、
図11から明らかである。
図11から、特性インピーダンスの不整合が反射率の実部の推定値の誤差にのみ影響を与えるという分析結果が確認される。特に反射率推定誤差の実部を最小化するため本明細書で記載される方法を適用することで、反射率測定値(R)の因果関係を復元できることは明らかである。
【0080】
従って、特性インピーダンスの不整合は実部のみに影響を与えるので、好ましくはエバネセントモード補償から始めて、エバネセントモード及び特性インピーダンスの不整合からの寄与を別個に及び/又は同時に調整する繰り返しの方法が可能になる。以上のことから、反射率測定値の因果関係が復元され、事実上、音響負荷のより正確な現場測定が可能となる。具体的には、特性インピーダンスにおいて、誤差が負である場合、特性インピーダンスの演算に使用される導波路の直径が増大し、この逆もまた同様である。
【0081】
従って、
図12及び13は、実際の音響導波路測定において反射率推定誤差の実部(Reε
R)及び反射率推定誤差の虚部(Imε
R)を最小化することによって見出された、エバネセントモードの補償及び正確な特性インピーダンスの適用の効果を明示している。特性インピーダンスを補償する補償パラメータC
1(ω)は、インピーダンスの実部の推定値の誤差を調整(すなわち、誤差の最小化)することによって得られる。同様に、エバネセントモードを補償する補償パラメータは、反射率誤差推定値の少なくとも虚部の誤差を最小化することによって得られる。請求項1に記載の方法を用いることによって
図12の反射率80において因果関係が完全に復元されたことは、
図12及び
図13に示される周波数領域及び時間領域から明らかである。TDRにおける小さな不規則部83,84は、非因果的現象を表すものではなく、むしろ、プローブが平面で挿入されずにイヤーチップを用いている結果である。この場合、キノコ形イヤーチップは、プローブの先端の背後で僅かな円形体積を有することに寄与し、これは、小さな正の反射を引き起こす。
図13から、本明細書で記載されるように適用された方法による実部81及び虚部82の最小化により、反射率の因果関係が復元され、エバネセントモード及び特性インピーダンスの不整合に起因して生じるTDR80への寄与が排除されたことは明らかである。
【0082】
本明細書で記載される方法を用いた結果として、外耳道などの音響導波路の現場測定に導入された誤差を補償するために提供された補償方式はまた、プローブマイクロフォンによって記録される等価平面波音圧の演算に用いることができる。すなわち、等価平面波インピーダンスが演算/測定されると、インピーダンスに対する補償係数はまた、次式によって等価平面波音圧の演算を可能にする。
【数14】
ここでP
meas(ω)は、プローブによって記録され、場合によってはエバネセントモードによる影響を受ける音圧であり、Z
meas(ω)は補償されていないインピーダンス、及びZ(ω)はエバネセントモード補償がされたインピーダンスである。この補償は、例えば、前方音圧レベル較正法又は伝送線路モデルを用いて外耳道における異なる位置で音圧を推定する基盤として、外耳道において音圧が測定されることになる全ての測定法で潜在的に用いられる。
【0083】
本発明の別の実施形態は、以下の実施形態を含む。
【0084】
音響負荷のインピーダンス測定から1又は2以上の補償パラメータを推定する方法であって、上記方法が、
第1及び第2の端部を有する音響負荷においてプローブ組立体を位置付けるステップと、
上記プローブ組立体が上記音響負荷の第1の端部に位置付けられたときに、上記プローブ組立体内の音響源に電気入力信号を発生して、上記音響源への上記電気入力信号に応答して音響スティミュラスを生成するステップと、
上記プローブ組立体内の音響エネルギー検出器を用いて音響反射信号を測定するステップと、
上記測定した音響反射信号に基づいて、上記音響負荷の特性及び/又はプローブと音響負荷との間のカップリングを記述する1又は2以上の補償パラメータを推定するステップと、
を含み、
上記音響反射信号が第1の音響インピーダンスの測定値として与えられ、上記推定するステップが更に、上記音響負荷の上記第1の音響インピーダンス及び第2の特性インピーダンスから上記1又は2以上の補償パラメータを演算するステップを含み、これにより上記第1の音響インピーダンス及び上記第2の特性インピーダンスに関連する1又は2以上の誤差推定値を最小化するにことにより上記補償パラメータが求められるようにする、実施形態。
【0085】
上記演算するステップが更に、
上記音響インピーダンス及び上記特性インピーダンスから反射率の測定値を推定するステップと、
上記推定された反射率及び/又は音響インピーダンスを第1の実部及び第2の虚部に分離するステップと、
上記第1の実部及び第2の虚部から上記1又は2以上の補償パラメータを演算するステップと、
を含む、実施形態。
【0086】
上記1又は2以上の補償パラメータを演算するステップの前に、上記測定された第1の音響インピーダンスに初期補償係数が加算され、及び/又は上記演算するステップにおいて、前記特性インピーダンスの初期値が入力として使用される、実施形態。
【0087】
上記初期補償係数は、上記測定された第1の音響インピーダンスに誤差を引き起こすエバネセントモード誤差の推定値である、実施形態。
【0088】
上記演算するステップが更に、
上記第1の実部と第2の虚部との間の関係をヒルベルト変換から確立するステップと、
ヒルベルト変換を用いて、反射率及び/又は音響インピーダンスの測定値の虚部から反射率及び/又は音響インピーダンスの測定値の実部の1又は2以上の誤差推定値及び/又は反射率及び/又は音響インピーダンスの測定値の実部から反射率及び/又は音響インピーダンスの測定値の虚部の1又は2以上の誤差推定値を演算するステップと、
因果関係が得られるまで繰り返しプロセスにおいて上記1又は2以上の誤差推定値を最小化するステップと、
を含む、実施形態。
【0089】
上記最小化が、ヒルベルト変換を用いて反射率及び/又は音響インピーダンスの第2の虚部から第1の実部の第1の誤差推定値を提供し、上記第1の誤差推定値が、反射率の演算に関して上記音響負荷の特性インピーダンス不整合に関連する誤差を主として記述する第1の補償パラメータを特徴付ける、実施形態。
【0090】
上記最小化が、ヒルベルト変換を用いて反射率及び/又は音響インピーダンスの第1の実部から第2の虚部の第2の誤差推定値を提供し、上記第2の誤差推定値が、上記音響負荷へのプローブ組立体のカップリングから生じるエバネセントモードに関連する誤差を主として記述する第2の補償パラメータを特徴付ける、実施形態。
【0091】
上記推定するステップが更に、上記1又は2以上の誤差推定値から上記1又は2以上の補償パラメータの組み合わせセットを繰り返し推定するステップを含む、実施形態。
【0092】
上記1又は2以上の補償パラメータの組み合わされた繰り返し推定が、エバネセントモードに関連する第2の誤差及び反射率の演算に関して音響負荷の特性インピーダンスの不整合に関連する第1の誤差を同時に最小化することを含む、実施形態。
【0093】
上記第2の誤差推定値の最小化により求められた上記補償パラメータが、エバネセントモードを考慮するために検出された音響反射信号に加算されることにより上記補償係数を更新することを目的とした更新パラメータを含み、
上記第1の誤差推定値の最小化により求められた上記補償パラメータが、反射率の演算に使用される上記特性インピーダンスの初期値を更新することを目的とした更新パラメータを含む、実施形態。
【0094】
上記初期補償係数が、上記測定された第1の音響インピーダンスに加算される音響質量として与えられる、実施形態。
【0095】
上記音響負荷が、導波路、楽器、消音器、人の外耳道、又は音響インピーダンスが重要である他の何れかの音響負荷である、実施形態。
【0096】
1つの実施形態において、音響用途の音響インピーダンスを測定する音響インピーダンス測定システムであって、該測定システムが、
第1及び第2の端部を有する音響負荷に位置付けられるよう構成されたプローブ組立体と、
上記プローブ組立体が上記音響負荷の第1の端部に位置付けられたときに、上記プローブ組立体内の音響源に電気入力信号を発生して、上記音響源への上記電気入力信号に応答して音響スティミュラスを生成する信号発生ユニットと、
上記プローブ組立体内の音響エネルギー検出器を用いて音響反射信号を測定する信号測定ユニットと、
上記検出された音響反射信号に基づいて、上記音響負荷の特性を記述する1又は2以上の補償パラメータを推定するよう構成された演算ユニットと、
を備え、
上記音響反射信号が第1の音響インピーダンスの測定値として与えられ、上記推定が、上記音響負荷の第1の音響インピーダンス及び第2の特性インピーダンスから上記1又は2以上の補償パラメータを演算するよう構成される上記演算ユニットに基づいており、上記1又は2以上の補償パラメータが、上記第1の音響インピーダンス及び上記第2の特性インピーダンスに関連する1又は2以上の誤差推定値の最小化により求められる、実施形態。
【0097】
上記演算ユニットは、少なくとも上記測定された第1の音響インピーダンスとエバネセントモードを補償する初期補償係数とを入力としてとり、該初期補償係数は、第1の音響インピーダンスに加算される、実施形態。
【0098】
上記演算ユニットが、第1の誤差推定値及び/又は第2の誤差推定値を演算するため本開示による上述の実施形態の方法を実施するよう構成され、上記第1の誤差推定値が、反射率を演算するのに使用される上記音響負荷特性インピーダンス間の特性インピーダンス不整合に関連する補償パラメータを特徴付け、上記第2の誤差推定値が、プローブ組立体と音響負荷との間のカップリングから生じるエバネセントモードによって引き起こされる誤差に関連する補償パラメータを特徴付ける、実施形態。
【0099】
上述の装置の構造的特徴要素は、詳細な説明及び/又は請求項の何れにおいても、対応するプロセスによって適切に置き換えられたときに方法のステップと組み合わせることができることを意図している。
【0100】
本明細書で使用される場合、単数形態は、別途記載のない限り、複数形態も含む(すなわち、「少なくとも1つ」の意味を有する)ものとする。本明細書内で使用する場合に、用語「含む」、「備える」「含んでいる」及び/又は「備えている」は、そこに述べた特徴部、完全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成部品の存在を明示しているが、1又は2以上の他の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成部品及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことは、更に理解されるであろう。また、ある要素が別の要素に「接続」又は「結合」されていると呼ばれる場合には、他の要素に直接接続又は結合することができるが、別途明確に記載のない限り、介在する要素が存在してもよりことは理解されるであろう。更に、本明細書で使用される「接続」又は「結合」は、無線による接続又は結合を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連して列挙された要素の何れか、及び全て、又はこれらの1又はそれ以上の組み合わせを含む。何らかの開示された方法のステップは、別途明確に記載のない限り、本明細書で言及された通りの順序に限定されない。
【0101】
本明細書全体を通じて「することができる」として含まれる「1つの実施形態」又は「一実施形態」又は「一態様」の記載は、当該実施形態に関連して記載された特定の特徴要素、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する点を理解されたい。更に、特定の特徴要素、構造又は特性は、好適な場合には本開示の1又は2以上の実施形態において組み合わせることができる。上述の説明は、当業者が本明細書で記載される種々の態様を実施することを可能にするために提供されている。これらの態様に対する様々な修正形態は、当業者には容易に理解され、本明細書で定義される包括的原理は、他の態様に適用することができる。
【0102】
請求項は、本明細書で示される態様に限定されるものではなく、請求項の文言と一致する全範囲と認められるべきであり、単数形での要素の記載は、特に記載のない限り「唯一」を意味するものではなく、「1又は2以上」を意味している。特に記載のない限り、用語「一部の」は、1又は2以上を意味する。
【0103】
従って、本発明の範囲は、添付の請求項で判断すべきである。
【符号の説明】
【0104】
1 音響インピーダンス測定システム
10 音響負荷
11 第1の開放端部
12 第2の少なくとも部分的に閉鎖された端部
13 チャンネル
20 音響プローブ組立体
21 信号発生ユニット(SG)
22 電気入力信号
23 音響源(スピーカ)
24a 音響スティミュラス
24b 反射音響信号
25 マイクロフォン
26 演算ユニット(CU)