(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20220427BHJP
C08G 8/10 20060101ALI20220427BHJP
B22C 9/12 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B22C1/22 M
C08G8/10
B22C9/12 B
(21)【出願番号】P 2019534332
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084267
(87)【国際公開番号】W WO2018115382
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102016125624.2
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591194322
【氏名又は名称】ヒュッテネス-アルベルトゥス ヒェーミッシェ ヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Wiesenstrasse 23,D-40549 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ラデグルディー ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ニッチュ ウルスラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンリッヒ クラウス
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/165916(WO,A1)
【文献】特開昭52-141893(JP,A)
【文献】特開2015-196707(JP,A)
【文献】特表2014-500352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00- 3/02
B22C 5/00- 9/30
C08G 4/00-16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂であって、下記成分を含む、前記フェノール樹脂:
(a)下記の構造単位を有するレゾール:
【化1】
(式中、2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、前記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a2) 式(A2
-A)の1つ以上の構造単位
【化2】
(式中、破線で示されている結合の1つ、2つまたはすべては二重結合を表し、
2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、前記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a3) 式(A3)の1つ以上の構造単位
【化3】
(式中、置換基R'は、2位に置換されており、 (a3-i)置換されていない、(a3-ii)脂肪族の、(a3-iii)分枝されていない、(a3-iv)
合計で1~9個の炭素原子を有する飽和
アルキルの基であり、
残りの4位および6位のうちの1つ
または2つにおいて、水素への結合の代わりに、前記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a4) 2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化4】
(a5) 2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化5】
【請求項2】
成分(a)の前記レゾールにおいて、構造単位a1とa2とのモル比が10:1~99:1の範囲内である、請求項1
に記載のフェノール樹脂。
【請求項3】
成分(a)の前記レゾールにおいて、構造単位a1とa3とのモル比が1:1~10:1の範囲内である、請求項1
または2記載のフェノール樹脂。
【請求項4】
成分(a)の前記レゾールにおいて、構造単位a2とa3とのモル比が5:1~30:1の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項記載のフェノール樹脂。
【請求項5】
成分(a)の前記レゾールにおいて、構造単位a4とa5とのモル比が90:10~10:90の範囲内である、請求項1~
4のいずれか1項記載のフェノール樹脂。
【請求項6】
式(A3)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'はフェノールのOHに対してオルト位に位置し、置換基R'はメチル基である
、請求項1~5のいずれか1項記載のフェノール樹脂。
【請求項7】
ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系の成分として使用するためのフェノール樹脂成分であって、下記成分を含む、前記フェノール樹脂成分
-請求項1~
6のいずれか1項記載のフェノール樹脂、および
-前記フェノール樹脂用の溶媒。
【請求項8】
フェノール樹脂成分とそれとは別のイソシアネート成分とを含む、ポリウレタンコールドボックス法に使用するための二成分バインダー系であって、前記フェノール樹脂成分が請求項1~
6のいずれか1項記載のフェノール樹脂を含みかつ/または請求項
7記載のフェノール樹脂成分である、前記二成分バインダー系。
【請求項9】
第三級アミンまたは2種以上の第三級アミンの混合物と接触させることにより硬化させるための混合物であって、請求項
8記載の二成分バインダー系の成分を混合することにより調製することができる、前記混合物。
【請求項10】
ポリウレタンコールドボックス法におけるモールド基材またはモールド基材の混合物を結合させるための、請求項1~
6のいずれか1項記載のフェノール樹脂、請求項
7記載のフェノール樹脂成分、請求項
8記載の二成分バインダー系もしくは請求項
9記載の混合物の使用。
【請求項11】
請求項
9記載の混合物
を硬化させる工程を含む、フィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群から
選択される物品
の製造方法。
【請求項12】
フェノール樹脂の調製方法であって、下記の工程を含む、前記方法:
(A)フェノールを準備または調製する工程、
(B)
下記一般式
(A2-A)を有する化合物を準備または調製する工程
【化6】
(A2-A)
(式中、破線で示されている結合の1つ、2つまたはすべては二重結合を表す)、
(C)一般式(II)を有する1種以上の化合物の準備または調製する工程
【化7】
(式中、置換基R'は、2位で置換されており、 (a3-i)置換されていない、(a3-ii)脂肪族の、(a3-iii)分枝されていない、(a3-iv)
合計で1~9個の炭素原子を有する飽和
アルキル基である)、
(D)ホルムアルデヒドを準備または調製する工程、
(E)金属二価イオンを金属触媒として準備する工程および
(
F)工程(A)~(D)で準備または調製された前記化合物を工程(E)で準備された金属二価イオンを金属触媒として使用して縮合により組み込まれる工程であり、前記縮合は弱酸性媒体中で行われる、前記工程。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂、ポリウレタンコールドボックス法に使用するための二成分バインダー系、第三級アミンとの接触により硬化させるための成形材料混合物、対応するフェノール樹脂、対応するフェノール成分、対応する二成分バインダー系もしくは対応する成形材料混合物の使用に関する。本発明は、さらに、対応する成形材料混合物から製造できる、フィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群からの物品、上記フェノール樹脂の調製方法、ならびにフィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群からの物品の製造方法に関する。
【0002】
フィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアの製造では、ポリウレタンの形成を伴って常温硬化する二成分バインダー系を使用してモールド基材をしばしば結合させる。これらのバインダー系は、2つの成分:溶媒に溶解した、分子中に少なくとも2つのOH基を有するフェノール樹脂(フェノール樹脂成分)、および溶媒に溶解したまたは無溶媒の、分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有するイソシアネート(イソシアネート成分)からなる。成形された成形材料混合物において、モールド基材を含む成形材料混合物に別々に添加される2つの成分は、付加反応で反応して硬化したポリウレタンバインダーを形成する。この硬化は、塩基性触媒の存在下で、好ましくは第三級アミンの形態で行われ、これらは成形材料混合物が成形された後に成形モールドにキャリアガスで導入される。
フェノール樹脂成分は、溶媒に溶解したフェノール樹脂、すなわち1種以上の(置換されていてもよい)フェノールと1種以上のアルデヒド(特にホルムアルデヒド)との縮合生成物である。フェノール樹脂が高粘度のために、フェノール樹脂成分のフェノール樹脂を溶媒に溶解する必要があり、そうでなければさらなる加工は不可能であるからである。特に、フェノール樹脂成分とイソシアネート成分およびモールド基材との均質混合は、不可能であるか、または相当な追加の努力があってのみ可能であろう。さらに、フェノール樹脂を溶解することにより、イソシアネート成分との反応性が低下し、それで触媒が添加される前に反応が開始されない。従って、フェノール樹脂成分は、通常、フェノール樹脂成分の全質量に対して40%~60%の範囲内のフェノール樹脂の濃度を有する溶液の形態である。
【0003】
使用するイソシアネート成分は、溶媒に溶解していない形態でまたは溶媒に溶解した、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するイソシアネート(通常ポリイソシアネート)である。芳香族イソシアネート(通常はポリイソシアネート)が好ましい。溶液の形態のイソシアネート成分の場合、イソシアネートの濃度は、イソシアネート成分の全質量に対して一般に70%を超える。
ポリウレタンコールドボックス法(「ウレタンコールドボックス法」とも呼ばれる)によるフィーダー、鋳造用コアおよび鋳造用モールドの製造のために、成形材料混合物は最初に粒状モールド基材と上記二成分バインダー系の2つ成分とを混合することにより調製される。ここで、二成分バインダー系の2つの成分の割合は、OH基の数に対してほぼ化学量論比または過剰のNCO基が生じるようにするのが好ましい。現在一般的な二成分バインダー系は、典型的には、OH基の数に対して20%までの過剰のNCO基を有する。鋳造用コアおよび鋳造用モールドの場合、バインダー(バインダー成分中に存在する添加剤と溶媒が含まれる)の総量は、用いられるモールド基材の質量に対して通常約1%~2%の範囲内であり、フィーダー組成物のその他の成分に対して通常約5%~18%の範囲内である。
【0004】
次いで、成形材料混合物を成形させる。これに続いて、触媒としての第三級アミンによる短期間のガス発生により、成形された成形材料混合物の硬化が続く。第三級アミンの形の触媒の必要量は、それぞれの場合のモールド基材の使用質量に対して0.035%~0.11%の範囲内である。結合剤の質量に対して、第三級アミンの形態の触媒の必要量は、使用される第三級アミンの種類に応じて、典型的には3%~15%である。続いて、フィーダー、鋳造用コアまたは鋳造用モールドを成形用モールドから取り出し、例えばエンジンのキャスティングのような金属のキャスティングに使用することができる。
上記のようにポリウレタン形成を伴って常温硬化する二成分バインダー系はポリウレタンノーベーク法においても使用する。そのプロセスにおいて、硬化は、成形材料混合物に添加される第三級アミンの溶液の形態の液体触媒にさらして行われる。
【0005】
WO 2016/165916 A1号は、ポリウレタンコールドボックスおよび/またはノーベーク法に使用するためのフェノール樹脂組成物を記載している。記載のフェノール樹脂組成物は、エーテル化および/または遊離メチロール基を有するオルト縮合フェノールレゾール、遊離ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドと1種以上のC-H-酸性反応化合物との1種以上の反応生成物、および他の成分を含む。その文献に記載されているオルト縮合フェノールレゾールは下記に示される式を有し、レゾールは単一のフェノールを縮合して得られるので、すべての基Rは同じである。上記式において、Rは、水素、またはフェノールのヒドロキシ基に対してメタ位またはパラ位にある置換基に対応する。
【化1】
【0006】
ポリウレタンコールドボックス法に使用するための二成分バインダー系は、例えば、US 3,409,579号、US 4,546,124号、DE 10 2004 057 671号、EP 0 771 599号、EP 1 057 554号、およびDE 10 2010 051 567号に記載されている。
フェノール樹脂成分のための、また、適切な場合にはイソシアネート成分のための溶媒の選択において、触媒の存在下での溶媒はイソシアネートとフェノール樹脂との間の反応に関与しないが、それらはこの反応に確かに影響を与えることは留意すべきである。特に問題となるのは、2つのバインダー成分であるフェノール樹脂とイソシアネートが著しく異なる極性を有するという事実である。イソシアネートとフェノール樹脂との間のこの極性の差は、使用することができる溶媒の数を両方のバインダー成分と相溶性のあるものに制限する。そのような相溶性は、バインダー系の完全な反応および硬化を達成するために必要である。プロトン性あるいは非プロトン性のタイプの極性溶媒はフェノール樹脂に対して通常良好な溶媒であるが、それらはイソシアネートに対してはほとんど適合性がない。一方、芳香族溶媒は実際にイソシアネートと相溶性であるが、それらはフェノール樹脂にはあまり適していない。さらに、芳香族溶媒は、キャスティング後にベンゼン、キシレンまたはトルエンのような有害物質を放出するという欠点を有する。
従って、通常、極性および非極性の芳香族含有溶媒の混合物が実際に使用され、それらはそれぞれのバインダー系(フェノール樹脂およびイソシアネート)に合わせて調整されている。ここで、溶媒混合物の個々の成分は沸点範囲が低すぎないようにすべきであり、そのため溶媒は-特に温かい砂を使用する場合-あまりにも速く蒸発し、それによって砂の流動性および圧縮性が低下する。
【0007】
高沸点芳香族炭化水素の混合物、すなわち常圧下で約150℃を超える沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物を、これまで無極性の芳香族含有溶媒として使用することが好ましかった。用いられる極性溶媒としては、ある種の充分に高沸点のエステル、例えば、DBE(二塩基酸エステル)としても商業的に知られているジメチルアジペート、ジメチルスクシネートおよびジメチルグルタレートの混合物が含まれている。
経済的および環境的な理由から、有機溶媒による鋳造工場で生じる排出を避けるかまたは減らすことが有利である。キャスティング中の排出量だけでなくキャスティング前の蒸発およびガス放出も相当な作業負荷を構成し、これは通常ヒュームフードなどの保護手段によってさえぎられることはない。
DE 1 999 125 115 A1号は、アルキルシリケートの使用を提案している。この手段により、特に、キャスティング後の有害排出物をかなり減らすことが可能になる。しかしながら、アルキルシリケートの極性が低いために、これまで使用されていたフェノール樹脂はアルキルシリケートとの充分な混和性を有していないので、極性有機溶媒の添加を完全に省くことはこれまで不可能であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、無極性溶媒、特にアルキルシリケートとの混和性または溶解性を改善し、フェノール樹脂のその他の性質には悪影響がない、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂、それから製造される二成分バインダー系のフェノール樹脂、または上記二成分バインダー系から製造される物品もしくは成形材料混合物のフェノール樹脂を特定することである。
【0009】
この目的は、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分系バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂であって、上記フェノール樹脂が下記成分を含む、上記フェノール樹脂によって達成される:
(a)下記の構造単位を有するレゾール:
【化2】
(式中、2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、上記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a2)式(A2)の1つ以上の構造単位
【化3】
(式中、置換基Rは、任意の置換基が含まれる、合計で1~35個の炭素原子を有する(a2-i)置換されたもしくは置換されていない、(a2-ii)脂肪族の、(a2-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a2-iv)飽和もしくは不飽和の基であり、
2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、前記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a3)式(A3)の1つ以上の構造単位
【化4】
(式中、置換基R'は、2位または4位に置換されており、任意の置換基が含まれる、合計で1~15個の炭素原子を有する(a3-i)置換されたもしくは置換されていない、(a3-ii)脂肪族の、(a3-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a3-iv)飽和もしくは不飽和の基であり、
残りの2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、上記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a4)2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化5】
(a5)2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化6】
【0010】
驚くべきことに、本発明のフェノール樹脂は非極性溶媒に非常に高い混和性または溶解性を示すことがわかった。ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に本発明のフェノール樹脂を使用する場合には、有機極性溶媒を完全に省くことが従って可能である。本発明のフェノール樹脂は、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分の製造に必要な混合物中で、溶液の濁りが観察されることなく、アルキルシリケート、例えばテトラエチルシリケートと非常に容易に混和性である。
本発明のフェノール樹脂を使用することにより、芳香族溶媒の放出を減少または排除することが可能である。
さらに、驚くべきことに、上記フェノール樹脂を溶解させるために無極性溶媒を使用することも可能であり、それは同時にイソシアネート(特にポリイソシアネート)のための良好な溶媒も意味する。従って、極性溶媒と非極性溶媒から構成される溶媒混合物の使用を省くことが可能である。
本発明によれば、成分(a)のレゾールにおいて、構造単位
a1とa2とのモル比が10:1~99:1、好ましくは15:1~50:1の範囲内であり、かつ/または
a1とa3とのモル比が1:1~10:1、好ましくは1.5:1~3.5:1の範囲内であり、かつ/また
a2とa3とのモル比が5:1~30:1、好ましくは10:1~20:1の範囲内であり、かつ/また
a4とa5とのモル比が90:10~10:90の範囲内である、フェノール樹脂が好ましい。
【0011】
さらに成分(a)のレゾールの割合がフェノール樹脂の全質量に対して30~75質量%の範囲内である本発明のフェノール樹脂が好ましい。例えば、本発明のフェノール樹脂においては、本発明のレゾールだけでなくさらにレゾールもしくはノボラックが存在してもよく、または本発明のフェノール樹脂にはある割合の遊離モノマーが含まれる。
さらに下記を含む、本発明のフェノール樹脂も同様に好ましい
(b)フェノール樹脂の全質量に対して、ある割合の遊離芳香族モノマー、好ましくは、0~20質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~1.9質量%の範囲内の割合および/または
(c)フェノール樹脂の全質量に対して、ある割合のホルムアルデヒド、好ましくは0~1.0質量%、好ましくは0.0~0.2質量%、より好ましくは0.0~0.02質量%の範囲内の割合および/または
(d)フェノール樹脂の全質量に対して、ある割合のさらなるレゾールもしくはノボラック、好ましくは0質量%と50質量%の範囲内の割合。
本発明によれば、式(A2)の構造単位の置換基Rが5~15個の炭素原子を有する基であるフェノール樹脂も同様に好ましい。
【0012】
本発明によれば、下記のフェノール樹脂が好ましい
式(A2)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基Rは、合計で1~35個の炭素原子、好ましくは合計で5~15個の炭素原子を有する(a2-i)置換されていない、(a2-ii)脂肪族の、(a2-iii)分枝されていない基であり、かつ/または
式(A2)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうち1つにおいて、置換基Rは、(a2-iv)モノ不飽和またはポリ不飽和、好ましくはモノ不飽和、ジ不飽和またはトリ不飽和である。
ここで、式(A2)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基Rは、合計で15個の炭素原子を有する(a2-i)置換されていない、(a2-ii)脂肪族の、(a2-iii)分枝されていない基であり、(a2-iv)は、二重結合が好ましくは8位、11位および14位に位置する場合、トリ不飽和である本発明のフェノール樹脂が好ましい。
【0013】
本発明によれば、式(A2)の構造単位が式(A2-A)の1つ以上の構造単位である場合が特に好ましい:
【化7】
(A2-A)
(式中、破線で示されている結合の1つ、2つまたはすべては二重結合を表す)。
【0014】
本発明によれば、本発明のレゾールにおいて、構造単位(a2)が式(A2-A)の種々の構造単位からなり、破線で示されている結合の1つ、2つまたはすべてが二重結合を表す場合がさらに好ましい。
【0015】
本発明によれば、式(A2)の1つの構造単位もしくは構造単位のうちの1つが式(A2-B)の構造単位である場合が特に好ましい:
【化8】
(A2-B)
【0016】
本発明のこれらの好ましいフェノール類は、特に非極性溶媒易溶性が見られる。驚くべきことに、これらの溶液は、少量の溶媒を添加しただけでも、特に低い粘度を示す。
本発明によれば、式(A3)の構造単位の置換基R'が1~9個の炭素原子を有する基であるフェノール樹脂も同様に好ましい。
本発明によれば、下記のフェノール樹脂が好ましい
式(A3)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'はフェノールのOHに対してオルト位に位置し、かつ/または
式(A3)の1つの構造単位においてまたは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'は、好ましくは1~9個の炭素原子、より好ましくは1、4、8または9個の炭素原子を有する(a3-i)置換されてない、(a3-iii)分枝されたもしくは分枝されてない、(a3-iv)飽和のアルキル基である。
本発明によれば、式(A3)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'がフェノールのOHに対してオルト位に位置し、置換基R'がメチル基を表すフェノール樹脂が好ましい。
【0017】
本発明によれば、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂であって、上記フェノール樹脂が下記成分を含む、上記フェノール樹脂が特に好ましい:
(a)下記の構造単位を有するレゾール:
【化9】
(式中、2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、上記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a2)式(A2-A)の1つ以上の構造単位
【化10】
(A2-A)
(式中、破線で示されている結合のうちの1つ、2つ、またはすべてが二重結合を表し、2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、上記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a3)式(A3-A)の1つ以上の構造単位
【化11】
(式中、2位、4位および6位のうちの1つ、2つまたは3つにおいて、水素への結合の代わりに、上記レゾールのさらなる構造単位への結合がある)、
(a4)2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化12】
(a5)2つのフェノール環を結合するリンクとして
【化13】
【0018】
本発明によれば、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分に使用するためのフェノール樹脂であって、上記ゲノール樹脂が下記成分を含む、上記フェノール樹脂が特に好ましい:
(a)下記の成分とホルムアルデヒドの重縮合によって調製されたレゾール:
(a1)
【化14】
(a2)式(I)の1種以上の化合物
【化15】
(式中、置換基Rは、任意の置換基が含まれる、合計で1~35個の炭素原子を有する(a2-i)置換されたもしくは置換されていない、(a2-ii)脂肪族の、(a2-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a2-iv)飽和もしくは不飽和基の基である)、および
(a3)式(II)の1種以上の化合物
【化16】
(式中、置換基R'は、2位または4位で置換されており、任意の置換基が含まれる、合計で1~15個の炭素原子を有する(a3-i)置換されたもしくは置換されてない、(a3-ii)脂肪族の、(a3-iii)分枝されたもしくは分枝されてない、(a3-iv)飽和もしくは不飽和の基である)。
【0019】
本発明によれば、フェノール類とホルムアルデヒドとの重縮合は、好ましくは、適切な金属触媒を使用して弱酸性媒体中で行われる。適切な金属触媒は、Mn、Zn、Cd、Mg、Co、Ni、Fe、Pb、Ca、およびBaのような金属の二価イオンの塩である。通常酢酸亜鉛二水和物の形で用いられている酢酸亜鉛を使用することが好ましい。使用量は重要ではない。酢酸亜鉛二水和物の典型的な量は、フェノール類とホルムアルデヒドの合計量に対して0.02~0.3質量%、好ましくは0.02~0.2質量%である。
式(A2)および(A3)の構造単位において上記で好ましいと特定された基RおよびR'の実施態様は、化合物(I)および(II)にも同様に当てはまる。
【0020】
式(I)の化合物は、式(I-A)の化合物であることが特に好ましい。
【化17】
(I-A)
(式中、破線で示されている結合の1つ、2つ、またはすべては二重結合を表す)。
【0021】
特に好ましくは、式(I)の化合物は式(I-B)の化合物である
【化18】
(I-B)
【0022】
特に好ましくは、式(I)の化合物はカルダノールである。
非常に好ましくは、式(II)の化合物は、式(II-A)の化合物である
【化19】
(式中、式(II-A)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'はフェノールのOHに対してオルト位に位置し、かつ/または
式(II-A)の1つの構造単位においてもしくは少なくとも構造単位のうちの1つにおいて、置換基R'は、好ましくは1~9個の炭素原子、より好ましくは1、4、8または9個の炭素原子を有する、(a3-i)置換されてない、(a3-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a3-iv)飽和のアルキル基である)。
特に好ましくは、式(II)の化合物はオルトクレゾールである。
【0023】
明確にするために、明細書WO2016/165916 A1号の開示内容からすると、下記に示す式の化合物は本発明によらないことが指摘され得る
【化20】
(式中、Rは、各々均等に、水素またはフェノールのヒドロキシ基に対してメタ位またはパラ位にある置換基、例えば、メチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、オクチル、ノニル、ペンタデセニル、ペンタデカジエニルおよびペンタデカトリエニルであり、mおよびnの合計は、少なくとも2であり、比m/nは、少なくとも1であり、Xは、水素、CH
2OHまたはエーテル化メチロール基である)。
【0024】
本発明のさらなる態様は、ポリウレタンコールドボックス法用の二成分バインダー系の成分として使用するためのフェノール樹脂成分であって、下記成分を含む、上記フェノール樹脂成分に関する
-本発明のフェノール樹脂、および
-上記フェノール樹脂用の溶媒。
本発明によれば、フェノール樹脂成分であって、上記溶媒がアルキルシリケート、アルキルシリケートオリゴマー、アルキルシリケートポリマー、C10-C13-アルキルベンゼン、イソパラフィン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、およびこれらの化合物の少なくとも1種を含む混合物からなる群から選択され、かつ/または
上記溶媒が、25℃の上記フェノール樹脂がフェノール樹脂と溶媒との質量比が7:3~3:7、好ましくは6:4~4:6、より好ましくは5.5:4.5~4.5:5.5で溶媒と混和性であるように選択され、均質な溶液を形成する、上記フェノール樹脂成分が好ましい。
下記に-好ましいテトラエチル(オルト)シリケートから始めて-一連の特に好ましいアルキルシリケート、アルキルシリケートオリゴマー、アルキルシリケートポリマーを明記する:
テトラアルキルシリケート:テトラエチル(オルト)シリケート;テトラ-n-プロピルシリケート;テトラブチルグリコールシリケート
トリアルキルシリケート:トリエチルシリケート;第4の酸素原子にアリール官能基を有するトリアルキルシリケート(特にトリエチルシリケート)(Si-O-Ar;Ar = アリール基)
ジアルキルシリケート:ジエチルシリケート;第3および/または第4の酸素原子にアリール官能基を有するジアルキルシリケート(Si-O-Ar)
モノアルキルシリケート:モノエチルシリケート;第2および/または第3および/または第4の酸素原子にアリール官能基を有するモノアルキルシリケート(Si-O-Ar)
置換シリケート:
(a)アリール-アルコキシ-シランまたはアルキル-アルコキシ-シラン、すなわちR1n=1-3Si(OR2)m=4-n型の化合物、ここで、R1 = アルキル基またはアリール基、およびR2 = アルキル基;例えばジメチル-ジメトキシ-シラン(R1 = CH3;n = 2;R2 = CH3;m = 4-n = 2);
(b)有機官能性シラン、すなわちR1n=1-3Si(OR2)m=4-n型の化合物、ここで、R1官能基、例えば3-アミノプロピルまたは3-ウレイドプロピルまたは3-グリシジルオキシプロピルおよびR2 = アルキル基;例えば、3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、3-ウレイドプロピル-トリエトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシラン
エチルポリシリケート:ポリケイ酸またはオリゴケイ酸のエチルエステル、種々のポリケイ酸またはオリゴケイ酸のエチルエステルの混合物、好ましくは35質量%を超える、好ましくは39質量%を超える、より好ましくは40~42質量%の範囲内のSiO2分率を有する (SiO2含有量はAN-SAA 0851に従って決定することができる)。
【0025】
特に、ポリケイ酸またはオリゴケイ酸のエチルエステルおよびそれらの混合物は高い引火点が見られる。高い引火点を有する溶媒は、これらが操作の安全性の改善を可能にするので好ましい。
上記の非極性溶媒に加えて、またはその代わりとして、使用する溶媒には下記からなる群から選択される化合物が含まれてもよい
-脂肪酸アルキルエステル、好ましくは脂肪酸メチルエステル、より好ましくは植物油メチルエステル、より好ましくはグレープシードオイルメチルエステル、
-トール油エステル
-アルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネート、
-シクロアルカン
-環状ホルマール、および
-C2~C6ジカルボン酸、例えば、1,2-エタン二酸(シュウ酸、C2-ジカルボン酸)、1,3-プロパン二酸(マロン酸、C3-ジカルボン酸)、1,4-ブタン二酸(コハク酸、C4-ジカルボン酸)、1,5 ペンタン二酸(グルタル酸、C5-ジカルボン酸)または1,6-ヘキサン二酸(アジピン酸、C6-ジカルボン酸);特に、C4-C6-ジカルボン酸のジアルキルエステル、特にC4-C6-ジカルボン酸のジメチルエステルが好ましい(そのような混合物は、いわゆる「二塩基酸エステル」または「DBE」として当業者に知られている)。
【0026】
本発明によれば、上記溶媒が、フェノール樹脂成分の全量に対して30~70質量%の範囲、好ましくは40~60質量%の範囲、より好ましくは45~55質量%の範囲の量で存在するフェノール樹脂成分も同様に好ましい。
本発明のフェノール樹脂の非極性溶媒における易溶性のために、本発明のフェノール樹脂成分は特に良好な貯蔵安定性を示す。-15℃と0℃の間の温度でさえも、溶液の濁りがない。
本発明によれば、フェノール樹脂成分が20℃で1000mPa・s未満、好ましくは500mPa・s未満、特に好ましくは150mPa・s未満の粘度を有するフェノール樹脂成分が好ましい。
本発明のフェノール樹脂成分の場合、特に低い粘度を得ることが可能であることが我々の研究でわかった。低粘度はフェノール樹脂成分の加工性を改善するとともに成形材料混合物の製造における均質混合を促進する。
本発明のさらなる態様は、フェノール樹脂成分と別のイソシアネート成分(好ましくはポリイソシアネート成分)とを含む、ポリウレタンコールドボックス法に使用するための二成分バインダー系であって、上記フェノール樹脂成分が本発明のフェノール樹脂を含み、かつ/または本発明のフェノール樹脂成分である、上記二成分バインダー系に関する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、第三級アミンまたは2種以上の第三級アミンの混合物と接触させることにより硬化させるための成形材料混合物であって、上記成形材料混合物が本発明の二成分バインダー系の成分を混合することにより製造できる、上記成形材料混合物に関する。
本発明によれば、ポリウレタンコールドボックス法における上記成形材料混合物を硬化させるのに使用される上記アミンは、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチルプロピルアミンまたは上記アミンの混合物のいずれかであることが好ましい。
本発明によれば、モールド基材または2種以上のモールド基材の混合物をさらに含む成形材料混合物が好ましく、上記成形材料混合物のモールド基材の全質量と他の成分の全質量との比が100:10~100:0.4、好ましくは100:3~100:0.5、より好ましくは100:1.5~100:0.6の範囲内である。
本発明のさらなる態様は、ポリウレタンコールドボックス法においてモールド基材またはモールド基材の混合物を結合させるための、本発明のフェノール樹脂、本発明のフェノール樹脂成分、本発明の二成分バインダー系もしくは本発明の成形材料混合物の使用に関する。
【0028】
本発明のさらなる態様は、本発明の成形材料混合物から製造できる、フィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群からの物品に関する。
驚くべきことに、本発明の物品を使用することによって、一般に使用される芳香族溶媒がアルキルシリケートによって部分的にまたは完全に置き換えられる場合、キャスティング中に生じるベンゼン、キシレンまたはトルエンのような芳香族の排出を減少または完全に回避することが可能であることがわかった。
通常、成形材料混合物から製造されているフィーダー、鋳造用金型および鋳造用コアのような物品は、ガス補給中だけで測定可能な強度(この強度は「初期強度」または「瞬間強度」と呼ばれる)を必要とし、ガス補給の終了後、最終的な強度値にゆっくりと増大する。実際には、非常に高い初期強度が望まれるので、ガス補給後上記物品を成形モールドからできるだけ早く取り外すことができ、成形モールドは新たな作業のために再び利用可能になる。特に、ロボットによる成形材料混合物から製造された上記物品の自動除去およびさらなる加工の場合、強度だけでなく上記物品が高い弾性をも有するならば有利であることが証明されている。一般に使用されているロボットアームは充分な感度がなく、従って製造品のわずかな偏差またはその位置に反応することができないので、上記物品がロボットの不正確さを補うことが可能である充分な弾性を有していない場合、製造品はロボットアームによって破壊されことがしばしば発生する。
【0029】
驚くべきことに、本発明の成形材料混合物から製造した本発明の物品は高い初期強度、また「瞬間強度」を有し、同時に高い弾性(高い破壊変位)を有することがわかった。結果として、本発明の成形材料混合物から製造した本発明の物品は、決定的な利点を有する。本発明の成形材料混合物から製造した本発明の物品は自動的に取り出してさらに処理することができ、物品を破砕することから生じる不良品を大幅に減らすことができる。
物品を製造するために、上記二成分バインダー系の成分は、最初に(耐火性の)モールド基材と混合して成形材料混合物を得る。成形物をPU no-bake法で製造する場合は、上記成形材料混合物自体に適切な触媒を添加してもよい。
このために、液体アミンを成形材料混合物に添加することが好ましい。これらのアミンは、4~11のpKbを有することが好ましい。適切な触媒の例は、アルキル基が1~4個の炭素原子を含む4-アルキルピリジン、イソキノリン、アリールピリジン、例えばフェニルピリジン、ピリジン、アクリリン、2-メトキシピリジン、ピリダジン、キノリン、n-メチルイミダゾール、4,4'-ビピリジン、フェニルプロピルピリジン、1-メチルベンズイミダゾール、1,4-チアジン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンおよびトリエタノールアミンである。触媒は、不活性溶媒によって、例えば2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、または脂肪酸エステルによって希釈されてもよい。触媒の添加量は、ポリオール成分の質量に対して0.1~15質量%の範囲内で選択される。
【0030】
次いで、上記成形材料混合物は慣用の手段によりモールドに導入され、そこで圧縮される。次に、上記成形材料混合物を硬化させて物品を形成する。硬化の過程で、上記物品は好ましくはその外形を保持する必要がある。
特に鋳造用コアの製造においては、上記鋳造用コアを互いにまたは鋳造用モールドに結合することが必要である。この結合は、コアに打ち込まれてそれらを互いに結合する金属ピンによってしばしば行われる。驚くべきことに、本発明の成形材料混合物から製造した本発明の物品は、さらなる加工で、特に金属ピンで結合の間、増大した弾性のためにあまり頻繁に破損しないことがわかった。
【0031】
本発明のさらなる態様は、フェノール樹脂の製造方法であって、下記の工程を含む、上記方法に関する:
(A)フェノールを準備または調製する工程、
(B)一般式(I)を有する1種以上の化合物を準備または調製する工程
【化21】
(式中、置換基Rは、任意の置換基が含まれる、合計で1~35個の炭素原子を有する(a2-i)置換されたもしくは置換されていない、(a2-ii)脂肪族の、(a2-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a2-iv)飽和もしくは不飽和の基である)
(C)一般式(II)を有する1種以上の化合物を準備または調製する工程
【化22】
(式中、置換基R'は、2位または4位で置換されており、任意の置換基が含まれる、合計で1~12個の炭素原子を有する(a3-i)置換されたもしくは置換されていない、(a3-ii)脂肪族の、(a3-iii)分枝されたもしくは分枝されていない、(a3-iv)飽和もしくは不飽和の基である)、
(D)ホルムアルデヒドを準備または調製する工程、および
(E)工程(A)~(D)で準備または調製した化合物を縮合により混合させる工程。
【0032】
本発明のさらなる態様は、フェノール樹脂を製造するための本発明の方法によって製造したフェノール樹脂に関する。
本発明のさらなる態様は、フィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群から物品を製造する方法であって、下記の工程を含む、前記方法に関する:
-モールド基材または2種以上のモールド基材の混合物を準備または製造する工程、
-上記モールド基材または2種以上のモールド基材の混合物を、本発明の二成分バインダー系のフェノール樹脂成分およびイソシアネート成分(またはポリイソシアネート成分)と混合して、気体の第三級アミンまたは2種以上の気体の第三級アミンの混合物と接触させることにより硬化させるのに適切な成形材料混合物を形成する工程、
-上記成形材料混合物を成形する工程、
-成形した上記成形材料混合物をポリウレタンコールドボックス法により気体の第三級アミンまたは2種以上の気体の第三級アミンの混合物と接触させて、成形した上記成形成形材料混合物が硬化してフィーダー、鋳造用モールドおよび鋳造用コアからなる群からの物品を形成する工程。
本発明の文脈では、好ましいものとして上述した態様の2つ以上が同時に実現されることが好ましい;そのような態様と添付の特許請求の範囲から明らかな対応する特徴の組み合わせが特に好ましい。
下記に、実施例によって本発明をさらに説明する。
【0033】
実施例1:本発明のフェノール樹脂の調製
コンデンサ、温度計およびスターラーを備えた反応容器に下記の成分を入れた:
20質量部のフェノール
15質量部のオルトクレゾール
0.025質量部の酢酸亜鉛二水和物
0.015質量部のステアリン酸亜鉛。
このコンデンサを還流に設定した。その温度を1時間以内に110℃に連続して上昇させ、この温度に維持した。
90分かけて、17質量部のパラホルムアルデヒド(91%)を20回に分けて添加した。
続いて、この反応混合物をさらに撹拌し、3.0質量部のカルダノールを添加する。この反応混合物をさらに30分間110℃に加熱する。
続いて、このコンデンサを常圧蒸留に切り替え、1時間以内に温度を125~126℃に上昇させて、揮発性成分を生成物溶液から留去した。
その後、真空蒸留を実施し、そこで残留揮発性成分を除去した。
本発明のフェノール樹脂は約80%の収率で得られる。
【0034】
実施例2:本発明によらないフェノール樹脂の調製:
コンデンサ、温度計およびスターラーを備えた反応容器に下記の成分を入れた:
20質量部のフェノール
15質量部のオルトクレゾール
0.025質量部の酢酸亜鉛二水和物
0.015質量部のステアリン酸亜鉛。
このコンデンサを還流に設定した。その温度を1時間以内に110℃に連続して上昇させ、この温度に維持した。
90分かけて、17質量部のパラホルムアルデヒド(91%)を20回に分けて添加した。
続いて、この反応混合物をさらに30分間110℃に加熱する。
続いて、このコンデンサを常圧蒸留に切り替え、1時間以内に温度を125~126℃に上昇させて、揮発性成分を生成物溶液から留去した。
その後、真空蒸留を実施し、そこで残留揮発性成分を除去した。
フェノール/o-クレゾール樹脂が約80%の収率で得られる。
【0035】
実施例3:本発明によらないフェノール樹脂の調製:
コンデンサ、温度計およびスターラーを備えた反応容器に下記の成分を入れた:
33質量部のフェノール
0.025質量部の酢酸亜鉛二水和物
0.015質量部のステアリン酸亜鉛。
このコンデンサを還流に設定した。その温度を1時間以内に110℃に連続して上昇させ、この温度に維持した。
90分かけて、17質量部のパラホルムアルデヒド(91%)を20回に分けて添加した。
続いて、この反応混合物をさらに30分間110℃に加熱する。
続いて、このコンデンサを常圧蒸留に切り替え、1時間以内に温度を125~126℃に上昇させて、揮発性成分を生成物溶液から留去した。
その後、真空蒸留を実施し、そこで残留揮発性成分を除去した。
フェノール樹脂が約80%の収率で得られる。
【0036】
実施例4:実施例1~3で調製した樹脂とテトラエチルシリケートとの混和性の測定:
100gの試験用樹脂をガラスビーカーに入れ、得られた樹脂溶液が25℃で濁りが見られるまで、テトラエチルシリケートを分けて添加した。ここで、テトラエチルシリケート部分のそれぞれの添加後、均質な溶液を生成するのに充分な時間撹拌した。
テトラエチルシリケートの最初の部分の添加後、得られた混合物を60℃に加熱し、次の添加の前に25℃に戻した。25℃でその溶液を充分に長く(>90分)撹拌することによってさえも排除することはできないその樹脂の濁りが観察されるまでそのテトラエチルシリケート部分の添加を複数回繰り返した。
測定を3回繰り返して平均値を求めた。
【0037】
結果を下記の表1に示す:
*混和性の限界は、混合物が濁ったときに達したと見なされる。
【0038】
結果から、実施例1からの本発明のフェノール樹脂は、本発明によらない実施例2および3からのフェノール樹脂よりもテトラエチルシリケートとより高い混和性を有することが明らかである。
【0039】
実施例5:破壊力、破壊変位および瞬間強度の測定
実施例1および2で調製したフェノール樹脂をそれぞれ13質量部のDBEと37質量部のテトラエチルシリケートの混合物と1:1で混合した。試験標本を製造するために、得られたフェノール樹脂成分を使用した。
調製したフェノール樹脂成分、モールド基材およびポリイソシアネート成分を使用して、成形材料混合物を製造した。コールドボックス法において、下記のように曲げ棒の形態の試験標本を製造し、それらの初期曲げ強度を決定した。
そのイソシアネート成分は、特許DE 102012201971号に従って、80部のジフェニルメタンジイソシアネート(例えば、Lupranat M20S、BASF)、19部のテトラエチルシリケートおよび1部の添加剤を混合することによって調製する。
試験標本(+GF+曲げ強度標準試験標本)の製造は、VDGデータシートP73に沿って実施する。このために、モールド基材を混合容器に入れる。次いで、フェノール樹脂成分とポリイソシアネート成分を互いに直接混合しないように混合容器へ計量する。続いて、モールド基材、調製したフェノール樹脂成分およびポリイソシアネート成分をパドルミキサー(Multiserw、モデルRN10/P)中で約220回転/分で2分間混合して成形材料混合物を得る。
【0040】
この試験標本は、どちらもMultiserwからのLUT/G Gasomatを備えたユニバーサルコアシューティングマシンLUTを使用して製造する。完成した成形材料混合物は、上記の製造直後、そのシューティングマシンのシューティングヘッドに直接導入する。
コアシューティング手順のパラメータは下記の通りである:シューティング時間:3秒、シューティング後の遅延時間:5秒、シューティング圧力:4バール(400kPa)。硬化のために、ジメチルプロピルアミン(DMPA)を用いて2バール(200kPa)のガス圧で10秒間この試験標本をガス処理する。続いて、4バール(400kPa)のパージ圧で9秒間空気をパージし、生じた試験標本の破壊変位、破壊力および瞬間強度を測定した。
瞬間強度は、パージの終了後の所定の時間(15秒、1時間、24時間;表2参照)でMultiserw試験機器LRu-2eを使用して測定する。
破壊力と破壊変位は、パージの終了後の所定の時間(15秒、1時間、24時間;表2参照)でMultiserw試験機器LRu-DMAを使用して測定する。
測定の結果を下記の表、表2に示す。
【0041】