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特許7064229自動追尾システム、自動追尾方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】自動追尾システム、自動追尾方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/12 20060101AFI20220427BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G05D1/12 F
H04N5/232 990
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017047843
(22)【出願日】2017-03-13
(65)【公開番号】P2018152735
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507234427
【氏名又は名称】公立大学法人岩手県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大門 雅尚
(72)【発明者】
【氏名】堀川 三好
(72)【発明者】
【氏名】岡本 東
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-054544(JP,A)
【文献】特許第6174290(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G05D 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を用いて端末装置の自動追尾を行う自動追尾システムであって、
前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する取得手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する距離推定手段と、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する制御手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記無線信号の放射方向を計算し、該放射方向を前記移動体の方向として推定する方向推定手段と、を備え、
前記少なくとも1つの通信装置は、90°ハイブリッド回路と、180°ハイブリッド回路と、これらの何れか又は両方のハイブリッド回路に接続された3つの分配器と、3つの素子を有するアレーアンテナと、を備えており、
前記3つの分配器の各々は、前記アレーアンテナの前記3つの素子のうち何れかの素子に接続されており、
前記少なくとも1つの通信装置から、前記90°ハイブリッド回路及び前記180°ハイブリッド回路の何れか、前記3つの分配器、及び、前記3つの素子のうち何れかの素子を介して4つの無線信号が前記端末装置に送信され、
前記方向推定手段は、前記少なくとも1つの通信装置から送信された4つの無線信号の各々の受信信号強度と、前記アレーアンテナの前記3つの素子から送信された3つの無線信号の各々の受信信号強度とから伝搬チャネルの相関行列を求め、該相関行列に対してMUSIC(Multiple Signal Classification)法を適用することによって、前記無線信号の放射方向を計算し、
前記制御手段は、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御する自動追尾システム。
【請求項2】
移動体を用いて端末装置の自動追尾を行う自動追尾システムであって、
前記移動体に設けられた2つ以上の通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する取得手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する距離推定手段と、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する制御手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離を推定するとともに、推定された前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離と、前記移動体における前記2つ以上の通信装置の各々の位置とに基づいて、前記移動体の方向を推定する方向推定手段と、を備え、
前記制御手段は、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御する自動追尾システム。
【請求項3】
前記制御手段は、推定された方向に基づいて設定された回転角度に従って前記移動体を回転させることによって、前記移動体の移動方向を制御する、請求項1又は2に記載の自動追尾システム。
【請求項4】
前記距離推定手段は、前記通信装置が2つ以上存在する場合に、前記2つ以上の通信装置のうち第1グループの通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定し、
前記方向推定手段は、前記2つ以上の通信装置のうち第2グループの通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体の方向を推定する、請求項1~3の何れか1項に記載の自動追尾システム。
【請求項5】
前記距離推定手段は、前記移動体及び前記端末装置が存在する環境における受信信号強度と距離との関係に基づいて得られた情報を用いて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する、請求項1~4の何れかに記載の自動追尾システム。
【請求項6】
移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせる自動追尾方法であって、
前記コンピュータは、
前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得するステップと、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定するステップと、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御するステップと、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記無線信号の放射方向を計算し、該放射方向を前記移動体の方向として推定するステップと、の各ステップを実行し、
前記少なくとも1つの通信装置は、90°ハイブリッド回路と、180°ハイブリッド回路と、これらの何れか又は両方のハイブリッド回路に接続された3つの分配器と、3つの素子を有するアレーアンテナと、を備えており、
前記3つの分配器の各々は、前記アレーアンテナの前記3つの素子のうち何れかの素子に接続されており、
前記少なくとも1つの通信装置から、前記90°ハイブリッド回路及び前記180°ハイブリッド回路の何れか、前記3つの分配器、及び、前記3つの素子のうち何れかの素子を介して4つの無線信号が前記端末装置に送信され、
前記取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記無線信号の放射方向を計算し、該放射方向を前記移動体の方向として推定するステップにおいては、前記少なくとも1つの通信装置から送信された4つの無線信号の各々の受信信号強度と、前記アレーアンテナの前記3つの素子から送信された3つの無線信号の各々の受信信号強度とから伝搬チャネルの相関行列を求め、該相関行列に対してMUSIC(Multiple Signal Classification)法を適用することによって、前記無線信号の放射方向を計算し、
前記移動体の移動を制御するステップにおいて、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御する自動追尾方法。
【請求項7】
移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する機能、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する機能、及び
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記無線信号の放射方向を計算し、該放射方向を前記移動体の方向として推定する機能、
を実現させ、
前記少なくとも1つの通信装置は、90°ハイブリッド回路と、180°ハイブリッド回路と、これらの何れか又は両方のハイブリッド回路に接続された3つの分配器と、3つの素子を有するアレーアンテナと、を備えており、
前記3つの分配器の各々は、前記アレーアンテナの前記3つの素子のうち何れかの素子に接続されており、
前記少なくとも1つの通信装置から、前記90°ハイブリッド回路及び前記180°ハイブリッド回路の何れか、前記3つの分配器、及び、前記3つの素子のうち何れかの素子を介して4つの無線信号が前記端末装置に送信され、
前記取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記無線信号の放射方向を計算し、該放射方向を前記移動体の方向として推定する機能によって、前記少なくとも1つの通信装置から送信された4つの無線信号の各々の受信信号強度と、前記アレーアンテナの前記3つの素子から送信された3つの無線信号の各々の受信信号強度とから伝搬チャネルの相関行列を求め、該相関行列に対してMUSIC(Multiple Signal Classification)法を適用することによって、前記無線信号の放射方向を計算し、
前記移動体の移動を制御する機能によって、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御するためのプログラム。
【請求項8】
移動体を用いて端末装置の自動追尾を行う自動追尾システムであって、
前記移動体に設けられた2つ以上の通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する取得手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する距離推定手段と、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する制御手段と、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離を推定するとともに、推定された前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離と、前記移動体における前記2つ以上の通信装置の各々の位置とに基づいて、前記移動体の方向を推定する方向推定手段と、を備え、
前記制御手段は、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御する自動追尾システム。

移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせる自動追尾方法であって、
前記コンピュータは、
前記移動体に設けられた2つ以上の通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得するステップと、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定するステップと、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御するステップと、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離を推定するとともに、推定された前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離と、前記移動体における前記2つ以上の通信装置の各々の位置とに基づいて、前記移動体の方向を推定するステップと、の各ステップを実行し、
前記移動体の移動を制御するステップにおいて、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御する自動追尾方法。
【請求項9】
移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記移動体に設けられた2つ以上の通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能、
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する機能、
推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する機能、及び
取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離を推定するとともに、推定された前記2つ以上の通信装置と前記端末装置との距離と、前記移動体における前記2つ以上の通信装置の各々の位置とに基づいて、前記移動体の方向を推定する機能、
を実現させ、前記移動体の移動を制御する機能によって、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を用いて端末装置の自動追尾を行う自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば小型の無人マルチコプター等の移動体を様々な領域で活用することが期待されている。かかる移動体の活用例としては、例えば、警備員が発見した不審者をカメラで撮像しながら追尾することや、人間が近くに存在しない環境で野生動物を観察することや、工場や倉庫内の見廻りや点検を行うこと等が挙げられる。
【0003】
このように、様々な領域で移動体の活用が期待されている一方で、当該移動体の操作者が操作を習熟するためには相当の訓練期間が必要になる。そこで、移動体を自律制御させるための技術が提案されている。
【0004】
かかる技術としては、例えば、無人ヘリコプタによる自動探索を、GPS(Global Positioning System)情報を用いて行うものが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、小型無人ヘリコプタの誘導制御を、当該ヘリコプタに搭載されたカメラを用いて撮像された画像情報に基づいて行うものも知られている(例えば、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】中村心哉、他3名、「画像情報およびGPSを用いた無人ヘリコプタによる自動探索,追従システムに関する研究」、日本ロボット学会誌、2000年9月、第18巻、第6号、p.862-872
【文献】森亮介、他3名、「視覚情報に基づく小型無人ヘリコプタの誘導制御」、日本ロボット学会誌、2008年11月、第26巻、第8号、p.905-912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載された技術では、衛星から受信したGPS信号に基づいて無人ヘリコプタの位置制御を行っているので、例えば屋内等のようにGPS信号を受信し難い環境においては、無人ヘリコプタの位置制御を正確に行うことができず、結果として、無人ヘリコプタによる自動探索を正確に行うのが困難になるおそれがあった。
【0007】
また、非特許文献2に記載された技術では、画像処理のために十分な特徴量を取得する必要があるので、例えば暗所等のように輝度の低い環境においては、撮像対象の特徴量を十分に取得することができず、結果として、小型無人ヘリコプタの誘導制御を行うのが困難になるおそれがあった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体による端末装置の自動追尾を正確に行うことの可能な自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、移動体を用いて端末装置の自動追尾を行う自動追尾システムであって、前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する取得手段と、取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する距離推定手段と、推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する制御手段と、を備える自動追尾システムを提供する(発明1)。
【0010】
ここで、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値(RSSI値)であってもよいし、RSSI値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0011】
かかる発明(発明1)によれば、少なくとも1つの通信装置又は端末装置が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて移動体と端末装置との距離が推定され、推定された距離に基づいて移動体の移動が制御されるので、通信装置又は端末装置が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて移動体の移動を制御することが可能になる。ここで、通信装置及び端末装置が例えば屋内や暗所等の環境下に置かれている場合であっても、通信装置と端末装置との間で無線信号を送受信することが可能であることから、移動体と端末装置との距離が所定範囲内になるように移動体を移動させることができる。これにより、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体による端末装置の自動追尾を正確に行うことができる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、取得した受信信号強度に関する情報に基づいて前記移動体の方向を推定する方向推定手段を備え、前記制御手段は、推定された方向に基づいて前記移動体の移動方向を制御してもよい(発明2)。
【0013】
かかる発明(発明2)によれば、通信装置又は端末装置が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて移動体の方向が推定され、推定された方向に基づいて移動体の移動方向が制御されるので、通信装置又は端末装置が受信した無線信号の受信信号強度に基づいて移動体の移動方向を設定することが可能になる。これにより、例えば、移動体が端末装置側を向くように当該移動体の移動方向を設定した場合には、移動体を前後方向に移動させるという簡単な操作によって、移動体と端末装置との距離を調整することができる。
【0014】
上記発明(発明2)においては、前記制御手段は、推定された方向に基づいて設定された回転角度に従って前記移動体を回転させることによって、前記移動体の移動方向を制御してもよい(発明3)。
【0015】
かかる発明(発明3)によれば、推定された方向に基づいて設定された回転角度に従って移動体を回転させることによって移動体の移動方向が制御されるので、例えば、移動体が端末装置側を向くように回転角度が設定されている場合には、移動体を回転させることによって移動体を端末装置側に容易に向けることができる。
【0016】
上記発明(発明2,3)においては、前記距離推定手段は、前記通信装置が2つ以上存在する場合に、前記2つ以上の通信装置のうち第1グループの通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定し、前記方向推定手段は、前記2つ以上の通信装置のうち第2グループの通信装置が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体の方向を推定してもよい(発明4)。
【0017】
かかる発明(発明4)によれば、第1グループの通信装置を、移動体と端末装置との距離を推定するための通信装置として用い、第2グループの通信装置を、移動体の方向を推定するための通信装置として用いることによって、移動体による端末装置の自動追尾を行うことができる。
【0018】
上記発明(発明1~4)においては、前記距離推定手段は、前記移動体及び前記端末装置が存在する環境における受信信号強度と距離との関係に基づいて得られた情報を用いて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定してもよい(発明5)。
【0019】
かかる発明(発明5)によれば、移動体と端末装置との距離を、移動体及び端末装置が存在する環境における受信信号強度と距離との関係を考慮した上で推定することができるので、距離の推定精度を向上させることができ、ひいては、移動体による端末装置の自動追尾をより正確に行うことができる。
【0020】
第二に本発明は、移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせる自動追尾方法であって、前記コンピュータは、前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得するステップと、取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定するステップと、推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御するステップと、の各ステップを実行する自動追尾方法を提供する(発明6)。
【0021】
第三に本発明は、移動体を用いた端末装置の自動追尾をコンピュータに行わせるプログラムであって、前記コンピュータに、前記移動体に設けられた少なくとも1つの通信装置及び前記端末装置の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能、取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離を推定する機能、及び、推定された距離に基づいて、前記移動体と前記端末装置との距離が所定範囲内になるように前記移動体の移動を制御する機能、を実現させるためのプログラムを提供する(発明7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムによれば、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体による端末装置の自動追尾を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る自動追尾システムの基本構成を概略的に示す図である。
図2】端末装置の構成を示すブロック図である。
図3】自動追尾システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図4】制御データの構成例を示す図である。
図5】本実施形態における第2通信装置及びアレーアンテナの構成例を示す図である。
図6】算出された無線信号の方向の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る自動追尾システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
図8】変形例に係る自動追尾システムにおける移動体の方向を推定する方法の一例を示す図である。
図9】変形例に係る自動追尾システムにおける端末装置の移動方向の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(1)自動追尾システムの基本構成
図1は、本発明の一実施形態に係る自動追尾システムの基本構成を概略的に示す図である。図1に示すように、この自動追尾システムは、所定の空間(例えば屋外だけでなく、屋内や暗所等を含む)において、マルチコプター10を用いて端末装置30の自動追尾を行うシステムであって、マルチコプター10に設けられた通信装置20、及び、端末装置30のうち何れか一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいてマルチコプター10と端末装置30との距離を推定し、推定した距離に基づいて、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲内になるようにマルチコプター10の移動を制御するようになっている。
【0026】
マルチコプター10は、複数(図1の例では、4つ)のローターを搭載した小型の無人回転翼機であって、例えば、無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee(登録商標)、UWB、光無線通信(例えば赤外線)等の無線通信方式を用いて端末装置30と無線通信を行うように構成されている。また、マルチコプター10は、端末装置30から送信された制御コマンド(例えば、離着陸、停止、前後左右の移動、上下方向の移動、移動速度、回転、回転角度、カメラを用いた撮像等)に従って動作するようになっている。なお、本実施形態において、マルチコプター10は、本発明の「移動体」の一例である。
【0027】
通信装置20は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)ビーコン等の通信装置であってもよく、例えばBLE等の無線通信規格を用いて端末装置30と無線通信を行うように構成されている。本実施形態において、通信装置20は、例えば、BLEのアドバタイジングにおいてアドバタイズ信号を所定間隔(例えば100ミリ秒間隔)で送信する。
【0028】
本実施形態では、通信装置20として、少なくとも1つ(本実施形態では、4つ)の第1通信装置21(第1グループの通信装置)と、少なくとも1つの第2通信装置22(第2グループの通信装置)とが設けられている。4つの第1通信装置21の各々は、マルチコプター10の複数(図1の例では、4つ)の脚部(ローターを支持する部分)の各々に設けられており、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定するのに用いられる。
【0029】
第2通信装置22は、マルチコプター10のフレームに設けられており、マルチコプター10の方向を推定するのに用いられる。また、第2通信装置22は、無線通信において少なくとも1つ(本実施形態では、4つ)の無線信号を送信するように構成されている。さらに、第2通信装置22には、複数素子(本実施形態では、3素子)のアレーアンテナ23が接続されており、第2通信装置22から送信された無線信号は、アレーアンテナ23を介して送出されるようになっている。なお、アレーアンテナ23は、例えば、マルチコプター10の前面部に設けられていてもよい。
【0030】
なお、ここでは、BLEを用いて無線通信を行う場合を一例として説明しているが、この場合に限られない。通信装置20は、例えば、無線LAN(例えばWi-Fi(登録商標))、ZigBee(登録商標)、UWB、光無線通信(例えば赤外線)等の無線通信方式を用いて無線通信を行ってもよい。また、第1通信装置21及び第2通信装置22は、同じ種類の通信装置であってもよいし、異なる種類の通信装置であってもよい。
【0031】
端末装置30は、マルチコプター10及び通信装置20の各々との間で無線通信を行い、通信装置20から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度を測定するように構成されている。端末装置30は、例えば、携帯端末、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、双方向の通信機能を備えたテレビジョン受像機(いわゆる多機能型のスマートテレビも含む。)等のように、個々のユーザによって操作される通信端末であってよい。
【0032】
(2)端末装置の構成
図2を参照して端末装置30について説明する。図2は、端末装置30の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、端末装置30は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、不揮発性メモリ34と、表示処理部35と、表示部36と、入力部37と、通信インタフェース部38とを備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス39が設けられている。
【0033】
CPU31は、電源が端末装置30に投入されると、ROM32又は不揮発性メモリ34に記憶された各種のプログラムをRAM33にロードして実行する。本実施形態では、CPU31は、ROM32又は不揮発性メモリ34に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する取得手段41、距離推定手段42、方向推定手段43及び制御手段44(図3に示す)の機能を実現する。CPU31は、通信装置20から送信された信号を、通信インタフェース部38を介して受信し、その信号を解釈する。また、CPU31は、マルチコプター10を操作するためのプログラムを実行して、マルチコプター10の制御コマンド(例えば、離着陸、停止、前後左右の移動、上下方向の移動、移動速度、回転、回転角度、カメラを用いた撮像等)を、通信インタフェース部38を介してマルチコプター10に送信してもよい。
【0034】
不揮発性メモリ34は、例えばフラッシュメモリ等であって、CPU31が実行するプログラムやCPU31が参照するデータを格納する。また、不揮発性メモリ34には、後述する制御データ(図4に示す)が記憶されていてもよい。
【0035】
表示処理部35は、CPU31から与えられる表示用データを表示部36に表示する。表示部36は、例えば、マトリクス状に画素単位で配置された薄膜トランジスタを含むLCD(Liquid Crystal Display)モニタであり、表示用データに基づいて薄膜トランジスタを駆動することで、表示されるデータを表示画面に表示する。
【0036】
端末装置30が釦入力方式の通信端末である場合には、入力部37は、ユーザの操作入力を受け入れるための方向指示釦及び決定釦などの複数の指示入力釦を含む釦群と、テンキーなどの複数の指示入力釦を含む釦群とを備え、各釦の押下(操作)入力を認識してCPU31へ出力するためのインタフェース回路を含む。
【0037】
端末装置30がタッチパネル入力方式の通信端末である場合には、入力部37は、主として表示画面に指先又はペンで触れることによるタッチパネル方式の入力を受け付ける。タッチパネル入力方式は、静電容量方式などの公知の方式でよい。
【0038】
通信インタフェース部38は、上述した無線通信方式を用いて通信を行うためのインタフェース回路を含む。このインタフェース回路には、通信装置20から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度の値(RSSI値)を検出するRSSI回路が設けられている。ここで、CPU31は、検出されたRSSI値を、例えば無線信号を送信した通信装置20の識別情報等と対応付けて、RAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。ここで、通信装置20の識別情報は、例えば、端末装置30が通信装置20から無線信号を受信した場合に、当該通信装置20から取得してもよい。
【0039】
(3)自動追尾システムにおける各機能の概要
本実施形態の自動追尾システムで実現される機能について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の自動追尾システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。図3の機能ブロック図では、取得手段41、距離推定手段42及び制御手段44が本発明の主要な構成に対応している。他の手段(方向推定手段43)は必ずしも必須の構成ではないが、本発明をさらに好ましくするための構成要素である。
【0040】
なお、本実施形態の自動追尾システムにおける各機能を説明するにあたって、通信装置20は、無線信号を常時又は所定間隔(例えば100ミリ秒間隔)で送信しているものと想定する。また、端末装置30は、マルチコプター10及び通信装置20の各々と無線通信を行うことが可能な位置に存在しているものと想定する。
【0041】
取得手段41は、マルチコプター(移動体)に設けられた少なくとも1つの通信装置20及び端末装置30の一方から送信された無線信号を他方が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する機能を備える。なお、ここでは、取得手段41が、通信装置20から送信された無線信号を端末装置30が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明する。
【0042】
また、受信信号強度に関する情報とは、例えば、受信信号強度の値(RSSI値)であってもよいし、RSSI値を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよいし、受信信号強度の度合いを表す情報であってもよい。
【0043】
取得手段41の機能は、例えば以下のように実現される。端末装置30のCPU31は、通信装置20から送信された無線信号を受信する毎に、通信インタフェース部38で検出されたRSSI値と、当該無線信号を送信した通信装置20の識別情報とを対応付けて、例えばRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。
【0044】
距離推定手段42は、取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、マルチコプター10(移動体)と端末装置30との距離を推定する機能を備える。
【0045】
また、距離推定手段42は、マルチコプター10及び端末装置30が存在する環境における受信信号強度と距離との関係に基づいて得られた情報を用いて、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定してもよい。この場合、マルチコプター10と端末装置30との距離を、マルチコプター10及び端末装置30が存在する環境における受信信号強度と距離との関係を考慮した上で推定することができるので、距離の推定精度を向上させることができ、ひいては、マルチコプター10による端末装置30の自動追尾をより正確に行うことができる。
【0046】
さらに、距離推定手段42は、通信装置20が2つ以上存在する場合に、2つ以上の通信装置20のうち第1通信装置21(第1グループの通信装置)が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定してもよい。この場合、第1通信装置21を、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定するための通信装置20として用いることによって、マルチコプター10による端末装置30の自動追尾を行うことができる。
【0047】
距離推定手段42の機能は、例えば以下のように実現される。端末装置30のCPU31は、例えば、マルチコプター10及び端末装置30が存在する環境において、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定の長さ(例えば、5m)に設定された状態で受信信号強度と距離との関係をもとめることによって、環境係数(受信信号強度と距離との関係に基づいて得られた情報)を事前に生成してもよい。この場合、CPU31は、環境係数C(dBm)を含む、自由空間における受信信号強度の減衰特性を示す以下の式(1)を用いて、環境係数Cを算出してもよい。
【数1】
【0048】
式(1)中、dは、マルチコプター10と端末装置30との距離(m)を示しており、λは、無線信号の波長(m)を示している。ここで、λは、例えば、無線信号の電波速度が光の速度と同じであり、無線信号の周波数が2.4(Ghz)と想定した場合、約0.125(m)である。CPU31は、マルチコプター10と端末装置30との距離d(ここでは、5m)と、距離dのときの受信信号強度RSSIと、無線信号の波長λ(ここでは、0.125m)とを式(1)に代入して、環境係数Cを算出する。なお、受信信号強度RSSIの値は、少なくとも1つの通信装置20のうち何れか1つの通信装置20から送信された無線信号の受信信号強度の所定時間(例えば、数~数十秒間)内の平均値であってもよいし、少なくとも1つの通信装置20のうち複数の通信装置20から送信された無線信号の受信信号強度の当該複数の通信装置20間の平均値であってもよい。そして、CPU31は、算出(生成)した環境係数Cを例えばRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。
【0049】
また、CPU31は、取得手段41の機能に基づいて通信装置20から無線信号を受信する毎に、例えば、複数(ここでは、4つ)の第1通信装置21の各々から送信された無線信号の受信信号強度の当該複数の第1通信装置21間の平均値を算出してもよい。そして、CPU31は、例えば、算出した平均値の移動平均(例えば、数秒間の移動平均)を受信信号強度RSSIとして式(1)に代入することによって、マルチコプター10と端末装置30との距離dをもとめてもよい。
【0050】
CPU31は、マルチコプター10と端末装置30との距離dをもとめると、受信信号強度RSSIと、距離dとを、図4に示す制御データに記憶する。制御データは、第1通信装置21から送信された無線信号の受信信号強度(ここでは、移動平均値)と、第2通信装置22から送信された複数(ここでは、4つ)の無線信号の各々の受信信号強度(ここでは、平均値)と、マルチコプター10と端末装置30との距離と、マルチコプター10の方向と、マルチコプター10と端末装置30との距離に応じて設定されるマルチコプター10の移動速度と、マルチコプター10の方向に応じて設定されるマルチコプター10の回転角度と、が記述されているデータである。
【0051】
なお、CPU31は、複数の第1通信装置21の各々から送信された無線信号の受信信号強度の平均値の移動平均を用いて受信信号強度の標準偏差σ(dBm)をもとめ、もとめた標準偏差σをRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶してもよい。なお、受信信号強度の標準偏差σは、後述するマルチコプター10の移動制御処理において用いられてもよい。
【0052】
方向推定手段43は、取得した受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10(移動体)の方向を推定する機能を備える。ここで、マルチコプター10の方向とは、例えば、無線信号の放射方向(DOD:Direction of Departure)に基づくもの(例えば、DODと同一の方向等)であってもよいし、無線信号の到来方向(DOA:Direction of Arrival)に基づくもの(例えば、DOAと同一の方向等)であってもよい。
【0053】
また、方向推定手段43は、通信装置20が2つ以上存在する場合に、2つ以上の通信装置20のうち第2通信装置22(第2グループの通信装置)が送信又は受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいて、マルチコプター10の方向を推定してもよい。この場合、第2通信装置22を、マルチコプター10の方向を推定するための通信装置20として用いることによって、マルチコプター10による端末装置30の自動追尾を行うことができる。
【0054】
方向推定手段43の機能は、例えば以下のように実現される。なお、ここでは、端末装置30のCPU31が、第2通信装置22から送信された4つの無線信号の受信信号強度を用いて無線信号のDODを計算することによって、マルチコプター10の方向を推定する場合(つまり、無線信号のDODをマルチコプター10の方向として推定する場合)を一例として説明する。
【0055】
方向推定手段43の機能を説明するにあたり、本実施形態における第2通信装置22及びアレーアンテナ23の構成例を図5に示す。図5に示すように、第2通信装置22は、90°ハイブリッド回路と、180°ハイブリッド回路と、これらの何れか又は両方のハイブリッド回路に接続された3つの分配器と、を備えており、3つの分配器の各々は、アレーアンテナ23の3素子Tx1,Tx2,Tx3のうち何れかの素子に接続されている。第2通信装置22から送信される4つの無線信号は、何れかのハイブリッド回路、分配器、及び、3素子Tx1,Tx2,Tx3のうち何れかの素子を介して端末装置30のアンテナRxに送られる。ここで、第2通信装置22から送信される4つの無線信号の各々の受信信号強度をh90,1,h90,2,h180,1,h180,2とし、アレーアンテナ23から送信された3つの無線信号の各々の受信信号強度をh,h,hとした場合、h90,1,h90,2,h180,1,h180,2と、h,h,hとの関係は、以下の式(2)のように示される。
【数2】
【0056】
式(2)中、Aは、|h+|hであり、Bは、|h+|hである。また、{・}は、複素共役を表す。端末装置30のCPU31は、この関係を用いて、伝搬チャネルの相関行列Rをもとめ、この相関行列Rに対してMUSIC(Multiple Signal Classification)法を適用することによって、無線信号のDODを推定する。相関行列Rは、直接波が支配的であると仮定した場合、以下の式(3)のように示される。
【数3】
【0057】
式(3)中、α,βの各々は、R12,R13の偏角を表しており、以下の式(4)及び式(5)のように示される。
【数4】

【数5】
【0058】
式(4)及び式(5)において、α,βの各々は2つずつ算出される。ここで、αとβの全ての組み合わせについてαとβの差がもとめられ、差が最も小さくなるαとβの組み合わせが真の解の組み合わせとして選択される。
【0059】
端末装置30のCPU31は、無線信号の方向(DOD)を、第2通信装置22から送信された4つの無線信号の各々の受信信号強度の平均(例えば、数秒間の平均)を用いて算出してもよい。ここで、算出された無線信号の方向は、例えば図6に示すように、xy平面において、マルチコプター10のアレーアンテナ23から送信される無線信号の放射軸AXに対する水平方向の角度θ(deg)で表される。なお、角度θは、鉛直方向の角度であってもよい。
【0060】
CPU31は、無線信号の方向(角度θ)をもとめると、この方向(角度θ)をマルチコプター10の方向として推定する。そして、CPU31は、制御データにアクセスして、第2通信装置22から送信された4つの無線信号の各々と、推定されたマルチコプター10の方向とを、距離推定手段42の機能に基づいて記憶した受信信号強度及び距離に対応付けて記憶する。
【0061】
制御手段44は、推定された距離に基づいて、マルチコプター10(移動体)と端末装置30との距離が所定範囲内になるようにマルチコプター10の移動を制御する機能を備える。
【0062】
また、制御手段44は、方向推定手段43によってマルチコプター10の方向が推定された場合に、推定された方向に基づいてマルチコプター10の移動方向を制御してもよい。この場合、通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10の方向が推定され、推定された方向に基づいてマルチコプター10の移動方向が制御されるので、通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプター10の移動方向を設定することが可能になる。これにより、例えば、マルチコプター10が端末装置30側を向くようにマルチコプター10の移動方向を設定した場合には、マルチコプター10を前後方向に移動させるという簡単な操作によって、マルチコプター10と端末装置30との距離を調整することができる。
【0063】
さらに、制御手段44は、推定された方向に基づいて設定された回転角度に従ってマルチコプター10を回転させることによって、マルチコプター10の移動方向を制御してもよい。この場合、推定された方向に基づいて設定された回転角度に従ってマルチコプター10を回転させることによってマルチコプター10の移動方向が制御されるので、例えば、マルチコプター10が端末装置30側を向くように回転角度が設定されている場合には、マルチコプター10を回転させることによってマルチコプター10を端末装置30側に容易に向けることができる。
【0064】
制御手段44の機能は、例えば以下のように実現される。端末装置30のCPU31は、距離推定手段42及び方向推定手段43の機能に基づいて、マルチコプター10と端末装置30との距離と、マルチコプター10の方向とを推定すると、制御データにアクセスし、マルチコプター10の移動制御処理を行う。例えば、CPU31は、推定された距離及び方向に応じてマルチコプター10の移動速度及び回転角度を設定することによって、マルチコプター10の移動制御処理を行ってもよい。
【0065】
また、CPU31は、例えば、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲よりも短い場合(つまり、マルチコプター10と端末装置30との距離が近すぎる場合)には、マルチコプター10を後退させる(つまり、マルチコプター10の移動速度が負の速度になる)ように移動速度を設定してもよい。さらに、CPU31は、例えば、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲よりも長い場合(つまり、マルチコプター10と端末装置30との距離が遠すぎる場合)には、マルチコプター10を前進させる(つまり、マルチコプター10の移動速度が正の速度になる)ように移動速度を設定してもよい。
【0066】
さらにまた、CPU31は、例えば、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲内である場合には、マルチコプター10の移動を停止させる(つまり、マルチコプター10の移動速度がゼロになる)ように移動速度を設定してもよい。
【0067】
また、CPU31は、マルチコプター10と端末装置30との距離が長い又は短いほど、マルチコプター10の移動速度の絶対値が高くなるように移動速度を設定してもよい。これにより、マルチコプター10を、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲内の位置に速やかに移動させることができる。
【0068】
ここで、マルチコプター10と端末装置30との距離の所定範囲(例えば、10m以上30m以内等)は、任意に設定されてもよいが、例えば、距離推定手段42の機能に基づいてもとめられた標準偏差σを用いて設定されてもよい。具体的に説明すると、例えば、第1通信装置21から送信された無線信号の受信信号強度がRSSI(dBm)であるときのマルチコプター10と端末装置30との距離をdRSSI(m)とし、この距離dRSSI(m)を所望の距離とした場合、マルチコプター10と端末装置30との距離の所定範囲は、dRSSI+σ(m)以上dRSSI-σ(m)以下として設定されてもよい。
【0069】
CPU31は、マルチコプター10と端末装置30との距離に基づいてマルチコプター10の移動速度を設定すると、設定した移動速度を、マルチコプター10と端末装置30との距離に対応付けた状態で制御データに記憶する。
【0070】
また、CPU31は、推定された無線信号の方向(角度θ)に基づいてマルチコプター10の回転角度(移動方向)を設定する。ここで、回転角度は、推定されたマルチコプター10の方向(角度θ)と同じ値に設定されてもよい。例えば、推定されたマルチコプター10の方向(角度θ)が-20(deg)であった場合には、マルチコプター10の回転角度は-20(deg)に設定されてもよい。CPU31は、推定されたマルチコプター10の方向(角度θ)に基づいてマルチコプター10の回転角度を設定すると、設定した回転角度を、マルチコプター10の方向に対応付けた状態で制御データに記憶する。
【0071】
なお、マルチコプター10の移動速度及び回転速度の各々は、例えば、マルチコプター10と端末装置30との距離又はマルチコプター10の方向を所定の計算式に代入することによってもとめられてもよいし、マルチコプター10の移動速度と、マルチコプター10と端末装置30との距離と、が予め対応付けられたテーブル情報、及び、マルチコプター10の回転角度とマルチコプター10の方向とが予め対応付けられたテーブル情報の各々から移動速度及び回転速度を抽出することによってもとめられてもよい。
【0072】
そして、CPU31は、設定したマルチコプター10の移動速度及び回転角度に従ってマルチコプター10を移動させるための制御コマンドを、通信インタフェース部38を介してマルチコプター10に送信する。一方、マルチコプター10は、制御コマンドを制御装置30から受信すると、受信した制御コマンドに含まれる移動速度及び回転角度に従って移動処理を行う。
【0073】
(4)本実施形態の自動追尾システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の自動追尾システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
先ず、端末装置30のCPU31は、例えば、マルチコプター10及び端末装置30が存在する環境において、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定の長さ(例えば、5m)に設定された状態で受信信号強度と距離との関係をもとめることによって、環境係数(受信信号強度と距離との関係に基づいて得られた情報)を生成する(ステップS100)。
【0075】
次に、端末装置30のCPU31は、第1通信装置21から受信した無線信号の受信信号強度(RSSI)に関する情報を取得する(ステップS102)。具体的に説明すると、CPU31は、複数の第1通信装置21の各々から送信された無線信号を受信する毎に、通信インタフェース部38で検出されたRSSI値と、当該無線信号を送信した第1通信装置21の識別情報とを対応付けて、例えばRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。
【0076】
また、端末装置30のCPU31は、ステップS102で取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定する(ステップS104)。ここで、CPU31は、ステップS100で生成した環境係数を用いて、マルチコプター10と端末装置30との距離を推定してもよい。
【0077】
次いで、端末装置30のCPU31は、第2通信装置22から受信した無線信号の受信信号強度(RSSI)に関する情報を取得する(ステップS106)。具体的に説明すると、CPU31は、第2通信装置22から送信された4つの無線信号の各々を受信する毎に、通信インタフェース部38で検出されたRSSI値と、4つの無線信号の識別情報とを対応付けて、例えばRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。
【0078】
さらに、端末装置30のCPU31は、ステップS106で取得した受信信号強度に関する情報に基づいて、マルチコプター10の方向を推定する(ステップS108)。ここで、CPU31は、第2通信装置22から送信される4つの無線信号の各々の受信信号強度と、アレーアンテナ23から送信された3つの無線信号の各々の受信信号強度との関係を用いて伝搬チャネルの相関行列Rをもとめ、この相関行列Rに対してMUSIC法を適用することによって、無線信号の方向(DOD)を算出し、算出された方向(DOD)をマルチコプター10の方向として推定してもよい。
【0079】
次に、端末装置30のCPU31は、推定された距離及び方向に基づいて、マルチコプター10の移動を制御する(ステップS110)。具体的に説明すると、CPU31は、マルチコプター10と端末装置30との距離に基づいてマルチコプター10の移動速度を設定するとともに、推定されたマルチコプター10の方向(角度θ)に基づいてマルチコプター10の回転角度(移動方向)を設定する。そして、CPU31は、設定したマルチコプター10の移動速度及び回転角度に従ってマルチコプター10を移動させるための制御コマンドを、通信インタフェース部38を介してマルチコプター10に送信する。一方、マルチコプター10は、制御コマンドを制御装置30から受信すると、受信した制御コマンドに含まれる移動速度及び回転角度に従って移動処理を行う。
【0080】
そして、CPU31は、ステップS110の処理を行った後に、ステップS102の処理に移行する。このようにして、CPU31は、マルチコプター10の移動制御を経時的に繰り返し行う。
【0081】
上述したように、本実施形態の自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムによれば、少なくとも1つの通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10と端末装置30との距離が推定され、推定された距離に基づいてマルチコプター10の移動が制御されるので、通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプター10の移動を制御することが可能になる。ここで、通信装置20及び端末装置30が例えば屋内や暗所等の環境下に置かれている場合であっても、通信装置20と端末装置30との間で無線信号を送受信することが可能であることから、マルチコプター10と端末装置30との距離が所定範囲内になるようにマルチコプター10を移動させることができる。これにより、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、マルチコプター10による端末装置30の自動追尾を正確に行うことができる。
【0082】
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
上記実施形態では、取得手段41が、マルチコプター10に設けられた通信装置20から送信された無線信号を端末装置30が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、取得手段41は、端末装置30から送信された無線信号を通信装置20が受信したときの受信信号強度に関する情報を取得してもよい。この場合、通信装置20には、端末装置30から送信された無線信号を受信したときの受信信号強度の値を検出するRSSI回路が設けられていてもよい。
【0083】
この場合、端末装置30のCPU31は、取得手段41の機能として、通信装置20に対して、端末装置30から受信した電波のRSSI値を端末装置30に送信するように要求してもよい。そして、CPU31は、通信装置20から送信された情報を通信インタフェース部38を介して受信(取得)すると、受信した情報を例えばRAM33又は不揮発性メモリ34に記憶する。なお、距離推定手段42、方向推定手段43及び制御手段44の機能は、上述した実施形態と同様であってもよい。
【0084】
このように、本変形例にかかる自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムによれば、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0085】
(変形例2)
上記実施形態では、第1通信装置21が複数(4つ)設けられている場合を一例として説明したが、第1通信装置21の数は1つであってもよい。この場合においても、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0086】
(変形例3)
上記実施形態では、通信装置20として、第1通信装置21及び第2通信装置22の各々が設けられている場合を一例として説明したが、第1通信装置21及び第2通信装置22の何れか一方のみを用いてマルチコプター10と端末装置30との距離が推定されるとともに、マルチコプター10の方向が推定されてもよい。この場合においても、上述した実施形態と同様の作用効果を発揮することが可能である。
【0087】
(変形例4)
上記実施形態では、方向推定手段43が、第2通信装置22から取得した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10の方向を推定する場合を一例として説明したが、この場合に限られない。例えば、方向推定手段43は、第1通信装置21から取得した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10の方向を推定しててもよい。この場合、通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に関する情報に基づいてマルチコプター10の方向が推定され、推定された方向に基づいてマルチコプター10の移動方向が制御されるので、通信装置20又は端末装置30が受信した無線信号の受信信号強度に基づいてマルチコプター10の移動方向を設定することが可能になる。これにより、例えば、マルチコプター10が端末装置30側を向くようにマルチコプター10の移動方向を設定した場合には、マルチコプター10を前後方向に移動させるという簡単な操作によって、マルチコプター10と端末装置30との距離を調整することができる。
【0088】
本変形例において、マルチコプター10には、図8に示すように、3つの第1通信装置21a,21b,21cが設けられている。3つの第1通信装置21a,21b,21cの各々は、指向性を有していてもよい。ここで、端末装置30のCPU31は、3つの第1通信装置21a,21b,21cの各々と端末装置30との距離d1,d2,d3と、マルチコプター10における3つの第1通信装置21a,21b,21cの各々の位置とに基づいて、マルチコプター10の方向を推定してもよい。これにより、例えば第2通信装置22を用いて無線信号の方向を推定することなく、3つの第1通信装置21a,21b,21cの各々と端末装置30との距離d1,d2,d3に基づいて、マルチコプター10の移動方向を制御することができる。
【0089】
なお、本変形例では、3つの第1通信装置21a,21b,21cが設けられている場合を一例として説明したが、第1通信装置21の数は2つ以上であってもよい。
【0090】
(変形例5)
上記実施形態では、方向推定手段43を用いてマルチコプター10の方向を推定し、推定した方向に基づいてマルチコプター10の移動方向を制御する場合を一例として説明したが、例えば、図9に示すように、端末装置30が直線状に移動(前進又は後退)する場合には、マルチコプター10の方向を推定することなく、マルチコプター10と端末装置30との距離に基づいてマルチコプター10の移動を制御してもよい。
【0091】
なお、本発明のプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、図2に示された不揮発性メモリ34であってもよい。また、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0092】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0093】
例えば、上述した実施形態では、一つのマルチコプター10の移動を制御する場合を一例として説明していたが、制御対象のマルチコプター10の数は複数であってもよい。
【0094】
上述した実施形態では、マルチコプター10を移動体として用いた場合を一例として説明したが、移動体は、例えば、他の無人の移動体(例えば車両、船舶、航空機等)であってもよいし、有人の移動体であってもよい。
【0095】
上述した実施形態では、端末装置30によって、取得手段41、距離推定手段42、方向推定手段43及び制御手段44の各機能を実現する構成としたが、この構成に限られない。例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を介して端末装置30と通信可能に接続されたコンピュータ(例えば汎用のパーソナルコンピュータ等)によって、上記各手段41,42,43,44の機能を実現する構成としてもよい。また、上記各手段41,42,43,44のうち少なくとも一部の手段の機能を上記コンピュータによって実現する構成としてもよい。さらに、これらの全ての手段をマルチコプター10、通信装置20又は端末装置30によって実現する構成としてもよいし、少なくとも一部の手段をマルチコプター10、通信装置20又は端末装置30によって実現する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
上述したような本発明の自動追尾システム、自動追尾方法、プログラムは、例えば屋内や暗所等の環境下であっても、移動体による端末装置の自動追尾を正確に行うことができ、例えば、端末装置を保持する作業員(例えば警備員や農作業者等)の作業を移動体を用いて支援するサービスや、当該作業員の作業内容や安全等を移動体を用いて確認するサービス等に好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0097】
10…マルチコプター
20…通信装置
21,21a,21b,21c…第1通信装置
22…第2通信装置
30…端末装置
41…取得手段
42…距離推定手段
43…方向推定手段
44…制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9