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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】共鳴型吸音パネル
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/172 20060101AFI20220427BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20220427BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220427BHJP
   E04C 2/36 20060101ALI20220427BHJP
   F01N 1/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G10K11/172
E01F8/00
E04B1/86 K
E04B1/86 Q
E04C2/36 G
F01N1/02 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018020323
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019138977
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】榎本 俊治
(72)【発明者】
【氏名】石井 達哉
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519103(JP,A)
【文献】特開2005-031240(JP,A)
【文献】特開2005-023619(JP,A)
【文献】特開2017-015972(JP,A)
【文献】特開平07-210172(JP,A)
【文献】特開2017-151325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/172
E01F 8/00
E04B 1/86
E04C 2/36
F01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルを区画する隔壁と、前記区画されたセルの上下に設けられ、少なくとも一方に貫通孔が設けられた表面板及び背後壁とから構成されるセル構造と、
前記貫通孔の表面側端部及び裏面側端部の少なくとも一方の壁側より前記貫通孔の中心軸方向に突出し、前記貫通孔の直径の20%以下の突出長の突出部と
を具備する共鳴型吸音パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部は、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向に円環状に突出する
共鳴型吸音パネル。
【請求項3】
請求項1に記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部は、前記貫通孔の中心軸方向に沿って間隔をもって配置され、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向に突出する複数の突出部材から構成される
共鳴型吸音パネル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部は、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向になるに従い薄くなる
共鳴型吸音パネル。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部は、前記貫通孔の軸方向のいずれか一方の方向に反りを有する
共鳴型吸音パネル。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部は、前記貫通孔内側の面が多角形状又はR形状である
共鳴型吸音パネル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部を有する円環部材を有し、
前記表面板又は背後壁の前記貫通孔の周囲に座刳りを設け、
前記座刳りに前記円環部材を嵌め込む
共鳴型吸音パネル。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部を有する円筒部材を有し、
前記貫通孔に前記円筒部材を嵌め込む
共鳴型吸音パネル。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記貫通孔より穴径の小さい孔が空けられた薄いシート状の部材を有し、
前記貫通孔内に前記小さい孔が位置するように、前記表面板又は背後壁の表面に前記シート状の部材を張り付けて、前記貫通孔内に前記シート状の部材が張り出すようにして前記突出部を構成した
共鳴型吸音パネル。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の共鳴型吸音パネルであって、
前記突出部の厚さは、前記貫通孔の直径の5%以下である
共鳴型吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶用エンジンの騒音低減(騒音伝播経路での減音)や建築物、公共設備、自動車用道路、鉄道施設の騒音低減(騒音伝播経路での遮音)、車両、自動車、航空機などの車内、客室内の騒音低減(閉空間の減音)、精密機器を収納するフェアリング内部の騒音振動軽減(閉空間の減音)等に用いられる共鳴型吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
共鳴型吸音パネルは、一般的には、セル構造のパネルの表裏に表面板及び背後壁を貼り、セルを区画する隔壁に囲まれた各小空間に通じる貫通孔を表面板に設けてなる。
【0003】
共鳴型吸音パネルに関連する技術は従来からいくつか提案されてきた。
【0004】
特許文献1は、孔部をセル内部に伸長させた吸音構造を有しており、共鳴周波数を低周波数側にシフトすることを提案する。これは、吸音率を極大とする周波数を低周波数にシフトさせることはできるが、積極的に吸音率を増加させることには繋がらない。
【0005】
特許文献2は、セル内部に中間連通孔を介して別のセルを設けたものであり、いわゆるダブルレイヤ共鳴型吸音パネルの第2層のセルを第1層のセル間に配置した格好となっているものと考えられる。そうであるなら、単位ユニットの吸音効果はダブルレイヤの吸音パネルと等価である反面、第1層のセル面積が相対的に減少する~同一面積をダブルレイヤ吸音パネルで充填した場合に対して吸音性能が低下する、と推察される。
【0006】
特許文献3は、二次元スリット状の孔部を有する吸音パネルを形成する。長方形状の吸音構造体に複雑なセル形状、孔形状をはめ込んで、共鳴周波数を調整するものとみられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-8012号公報
【文献】特開2001-92468号公報
【文献】特開平9-3833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの従来の技術は、吸音パネルの共鳴周波数に着目して、孔長さ、セル形状を調整するものであって、吸音量の増加という課題を積極的に示唆するものではない。
【0009】
また、吸音パネルに入射する音の振幅に応じた検討がなされていない。しかし、様々な要件で吸音パネルを適用する場合には、既存の吸音パネルに対して大幅な形状変更なく吸音性能を高めることが求められる。例えば、ダクト内壁に用いる場合には、吸音パネル表面に気流が存在するために、パネル形状の大幅な変更は、ダクト内の圧力損失となって現れ、音響面以外の設計要件に影響を与える。
【0010】
更に、例えば貫通孔を伸長する部材を付加すると、吸音パネルの重量増加にも繋がるため、軽量性を要求される航空機用エンジンなどでは不利となる。
【0011】
なお、特許文献3で示唆される屈曲した孔部形状は二次元スリットではよいものの、三次元的な孔形状では実現困難か製造コストの増大が見込まれる。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、できる限り簡易な形状変更をもって、吸音性能を高め、形状変更による大幅な重量増加をすることがなく、しかも既存の吸音パネルへの適用も容易にできる共鳴型吸音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、セルを区画する隔壁と、前記区画されたセルの上下に設けられ、少なくとも一方に貫通孔が設けられた表面板及び背後壁とから構成されるセル構造と、前記貫通孔の表面側端部及び裏面側端部の少なくとも一方の壁側より前記貫通孔の中心軸方向に突出し、前記貫通孔の直径の20%以下の突出長の突出部とを具備する。
【0014】
本発明では、上記構成の突出部を設けることで、吸音性能を高めことができる。また、単に突出部を設けるだけの構成なので、簡易な形状変更でよく、形状変更による大幅な重量増加をすることがなく、しかも既存の吸音パネルへの適用も容易にできる。
【0015】
本発明に係る突出部は下記のとおり様々形態で実現できる。
【0016】
本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部が、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向に円環状に突出してもよい。
【0017】
本発明は、突出部が貫通孔の軸周りに一様ではなく、周期的あるいは非周期的に存在するものであってもよい。すなわち、本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部を、前記貫通孔の径方向に沿って間隔をもって配置され、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向に突出する複数の突出部材から構成してもよい。
【0018】
本発明は、突出部が先端に向かって(貫通孔の中心軸に向かって)薄くなっているか、先端が鋭角となっていても、或いは先端に向かって貫通孔の外側(空気層側)又は貫通孔の内側に反っている形状でもよい。すなわち、本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部が、前記壁側より前記貫通孔の中心軸方向になるに従い薄くてもよい。本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部が、前記貫通孔の軸方向のいずれか一方の方向に反りを有してもよい。
【0019】
本発明は、突出部の外周と貫通孔の内面とが、多角形で接合するもの、或いは滑らかに接合するものであってもよい。すなわち、本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部が、前記貫通孔内側の面が多角形状又はR形状であってもよい。
【0020】
本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部を有する円環部材を有し、前記表面板又は背後壁の前記貫通孔の周囲に座刳りを設け、前記座刳りに前記円環部材を嵌め込んでもよい。
【0021】
本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部を有する円筒部材を有し、前記貫通孔に前記円筒部材を嵌め込んでもよい。
【0022】
本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記貫通孔より穴径の小さい孔が空けられた薄いシート状の部材を有し、前記貫通孔内に前記小さい孔が位置するように、前記表面板又は背後壁の表面に前記シート状の部材を張り付けて、前記貫通孔内に前記シート状の部材が張り出すようにして前記突出部を構成してもよい。
【0023】
本発明の一形態に係る共鳴型吸音パネルは、前記突出部の厚さが、前記貫通孔の孔長の5%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、できる限り簡易な形状変更をもって、吸音性能を高め、形状変更による大幅な重量増加をすることがなく、しかも既存の吸音パネルへの適用も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る共鳴型吸音パネルの分解斜視図である。
図2図1に示した共鳴型吸音パネルの一部断面図である。
図3A図1及び図2に示した共鳴型吸音パネルの貫通孔付近の拡大断面図である。
図3B図1及び図2に示した共鳴型吸音パネルの貫通孔付近の平面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部が次第に薄くなるように構成された場合を示す断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部の先端が鋭角となるように構成された場合を示す断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部が外側に反りを有する場合の断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部が内側に反りを有する場合の断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部がR形状を有する場合の断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部が多角形状を有する場合の断面図である。
図10A】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部が貫通孔の壁側より貫通孔の中心軸方向に突出する複数の突出部材から構成された場合の断面図である。
図10B図10Aの平面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部を円環部材として、座刳りに嵌め込む場合を説明するための断面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部を円筒部材から構成した場合を説明するための断面図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る突出部であって、突出部をシート状の部材から構成した場合を説明するための断面図である。
図14】本発明の効果を確認するために行った数値解析結果を説明するための図である。
図15A】突出部がない場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図15B】突出部の突出量(突出長)を0.2mmとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図15C】突出部の突出量(突出長)を0.4mmとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図15D】突出部の突出量(突出長)を0.6mmとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図15E】突出部の突出量(突出長)を0.8mmとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図16】突出部の突出量(突出長)と吸音率との関係を示したグラフである。
図17A】突出部の厚さゼロの場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図17B】突出部の厚さ0.05mmの場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図17C】突出部の厚さ0.1mmの場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図17D】突出部の厚さ0.2mmの場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す図である。
図18A】突出部の厚さをゼロとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。
図18B】突出部の厚さを0.05mmとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。
図18C】突出部の厚さをゼロとし、形状をシャープエッジとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。
図18D】突出部の厚さを0.05mmとし、形状をシャープエッジとした場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。
図19】本発明に係る共鳴型吸音パネルの適用例を示す図である。
図20】本発明の変形例に係る突出部の断面図である。
図21】本発明の別の変形例に係る突出部の断面図である。
図22】本発明の更に別の変形例に係る突出部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0027】
<共鳴型吸音パネルの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る共鳴型吸音パネルの分解斜視図,図2はその共鳴型吸音パネルの一部断面図、図3Aはその共鳴型吸音パネルの貫通孔付近の拡大断面図、図3Bはその共鳴型吸音パネルの貫通孔付近の平面図である。
【0028】
共鳴型吸音パネル1は、パネル本体10、表面板20及び背後壁30を含む。
【0029】
パネル本体10は、多数のセル11を有し、これらセル11は、隔壁12により区画されている。
【0030】
パネル本体10の表面側には、表面板20が貼り付けられ、パネル本体10の裏面側には、背後壁30が貼り付けられている。これにより、共鳴型吸音パネル1は、セル11を区画する隔壁12と、区画されたセル11の上下に設けられ、表面板20と、背後壁30とからなる、多数のセル構造40を構成する。
【0031】
表面板20は、外部の空気層とセル11とを貫通する貫通孔21が設けられている。実施形態では、1つセル11について7つの貫通孔21が設けられているが、本発明はこれに限定されず、貫通孔21の数は1つでもよく、また2つ以上のいずれであってもよい。
【0032】
貫通孔21の表面側端部21aには、その壁側より貫通孔21の中心軸方向に円環状に突出する突出部50が設けられている。突出部50の突出長εは、貫通孔21の直径dの20%以下、すなわち、
ε/d≦0.2
の関係を有する。
これにより、貫通孔21に突出部50を設けない場合に比べて吸音率が高くなる。この点については後述する。
【0033】
共鳴型吸音パネル1は、その表面に入射する音波のエネルギーを吸収する機能を有している。共鳴型吸音パネル1の表面は、音波が入射する空間側から見れば、平面のみならず、曲面、任意の形状を有していてもよい。
【0034】
共鳴型吸音パネル1は、パネル表面から三層の構造で成り立つ。これらは、表面板20、多数のセル(cell)11からなるパネル本体10、背後壁30として認識される。表面板20には貫通孔21が開けられており、表面板20に接する空気とセル構造40とを連通する。セル構造40は、表面板20、背後壁30及びセル11を区画する隔壁12に囲まれた小空間である。共鳴型吸音パネル1の用途によっては、セル11を区画する隔壁12の一部にセル内に浸入した水を抜くための小孔が設けられる場合もある。また、後述するように、背後壁30に小孔を設けてその背後にセル11と背後層を設ける多層吸音パネル、所謂マルチレイヤー吸音パネルという構造も存在する。セル構造40が貫通孔21空き表面板20と背後壁30によって挟まれていることから、「サンドイッチ構造」と呼ばれることもある。
【0035】
個々のセル構造40の断面形状は任意であって、三角形、四角形、多角形でも円形でもよい。六角形のものを特に「ハニカム(honeycomb)」構造と呼ぶ。セル構造40は、原則として表面板20に設けた貫通孔21を介してのみ外部と連通する。背後壁30は空気の振動に対して十分剛性を有するものと仮定する。また、通常の扱いでは、セル構造40を取り囲む隔壁12はすべて、内部の空気に比べて十分剛性があるものとして扱われる。
【0036】
共鳴型吸音パネル1は、上記構造から定まる音響的な共鳴周波数の下で、吸音性能を高める働きを有する。一般に空気中を伝播する音は、周波数によって時間的に再現性のある波を形成する。音には複数の周波数とそれに伴う振幅や位相を有する音が含まれていることが通常である。共鳴型吸音パネル1は、特定の周波数を中心とする周波数帯域で吸音性能を高める。
【0037】
共鳴型吸音パネル1の共鳴周波数fは、セル構造40の体積V、セル11に対応する表面の貫通孔21の面積の合計S、貫通孔21の長さ(言い換えれば表面板20の厚さに相当)dによって、次のように定義される。ここで、d'はdに対して開口端補正量を加えたものである。
f~c/2π√(s/Vd')
【0038】
共鳴型吸音パネル1の表面板20に音波、即ち微小な圧力変動が到達すると、表面板20の貫通孔21の空部内部の空気が変位する。この貫通孔21の空部内部の空気がセル構造40側に押されるとセル構造40の内部の空気が圧縮され、貫通孔21の空部内部の空気が引っ張られるとセル構造40の内部の空気が膨張する。ただし、貫通孔21の空部内部の体積は、セル構造40の体積に比べて十分小さいので、上記圧縮と膨張による体積変化量はセル構造40の体積に比べて十分小さい。入射音は周期(或いは周波数)で変動するため、貫通孔21の空部内部の空気も入射音波の周波数で変位し、結果としてセル構造40の内部の微小圧力も入射音波の周波数で変動することとなる。
【0039】
共鳴型吸音パネル1をバネ・マス・ダンパ系と等価とした場合、エネルギー散逸(吸音)はダンパが担っており、貫通孔21の空部内部の空気の変位の時間変動(粒子速度)と相関がある。入射音波がパネルの共鳴周波数に近い周波数を有する場合、バネ・マス・ダンパ系の周波数応答と同じように変位の一次時間微分である粒子速度は大きくなる。マクロな系で見れば、粒子速度の増大は、ダンパによるエネルギー散逸を増加させ、外部加振である入射音波のエネルギーの散逸を増大させる結果となり、吸音パネルでの入射音波の減衰となって現れる。
【0040】
このように共鳴型吸音パネル1は、機械系のバネ・マス・ダンパのモデルに等値できる。貫通孔21の空気はマス(質量)に相当し、外力である入射音に対して変位する。変位を受けてセル構造40の内部の空気は圧縮・膨張して貫通孔21の空気に対する復元力をもたらす(バネ)の役割を果たす。ダンパは、貫通孔21の空気が変位するのに伴って生ずため、変位の時間微分(粒子速度)によって発生する。つまり、理論的には共鳴型吸音パネル1の減衰効果は、セル構造40の内部よりも表面板20の貫通孔21の空気の変動によるものが支配的といえる。
【0041】
貫通孔21の空気層が運動することによって励起される粒子速度によって発生するエネルギー散逸とマクロな視点での吸音効果とを関連付けて、エネルギー散逸が支配的である貫通孔21の、しかも粒子速度振幅が大きくなると予想される開口部(表面側端部21a)の孔形状に着目する。本発明は、典型的には、貫通孔21の表面側端部21aの孔形状に僅かな変化を与える、つまり突出部50を設けることで、吸音パネル1の主たる性質を変更することなく、吸音性能(ここでは、入射音波のエネルギーに対する反射音波のエネルギーの比として吸音率を例に取る)を改善するものである。ここで、吸音パネルの主たる性質とは、共鳴周波数、重量や嵩、表面粗さなどを含む。
【0042】
ここで、表面板20の表面及び背面に対して、貫通孔21の内面の接線が垂直をなす場合、つまり図1から図3の共鳴型吸音パネル1において突出部50がない場合を、基準(ベースライン)形状と定義する。ベースラインは、いわば、貫通孔21が表面板20に垂直に空けられていて、横から見ると貫通孔21側面と表面板20の板表面並びに板裏面とが直角をなすものである。
【0043】
このベースライン形状に対して、本実施形態に係る共鳴型吸音パネル1は貫通孔21に上記の突出部50を設けたものである。
【0044】
すなわち、この共鳴型吸音パネル1は、表面板20の貫通孔21、或いは後述するようにパネルのセル内部の中間隔壁の貫通孔の裏面側端部及び/又は表面側端部に突起をなす突出部50を設けて貫通孔21を部分的に塞いだ孔とし、突出部50である突起物の高さである突出長は、貫通孔21の直径(非円形孔では等価直径)の20%以下とする。
【0045】
例えば、貫通孔21が円形で、貫通孔21の直径が1.65mmで12%高さの突起を想定すると、内径1.65×0.12=0.2mmの同心円状の微小突起(突出部50)を形成する。突出部50の突起形状は、貫通孔21の流路(直線部)から孔に直角な方向に滑らかに接続してもよいし、直角に変化してもよい。
【0046】
より具体的には、突出部50は、表面板20の貫通孔21の開口端部に薄い突起があり、その突出部50は端部の角から貫通孔21の中心軸方向に伸張している。突出部50の厚さは孔径に比べて工学的に十分薄いものを想定する。例えば、その厚さは、貫通孔21の直径の5%以下、端部角からの突出量は、最大でも貫通孔21の直径の20%とする。突出部50を貫通孔21の中心軸から見ると貫通孔に対して同心円状となっている。すなわち、突出部50は円環状の形状をなしている。
【0047】
<突出部の態様>
この実施形態では、突出部50は円環状の形状をなしているが、本発明に係る突出部は図4図13に示すように様々形態で実現できる。
【0048】
例えば、図4に示すように、突出部50は、貫通孔21の壁側より貫通孔21の中心軸方向になるに従い薄くなるように構成してもよい。その場合に、図5に示すように、突出部50の先端が鋭角となるように構成してもよい。更に、図6及び図7に示すように、突出部50は、貫通孔21の軸方向のいずれか一方の方向に反りを有してもよい。すなわち、図6に示したように、突出部50は貫通孔21の外側(空気層側)に反っていてもよいし、図7に示したように、突出部50は貫通孔21の内側に反っていてもよい。また、突出部50は、その貫通孔21内側の面が、図8に示すようにR形状であってもよいし、図9に示すように多角形状であってもよい。
【0049】
図10A及び図10Bに示すように、突出部50を、貫通孔21の径方向に沿って間隔をもって配置され、貫通孔21の壁側より貫通孔21の中心軸方向に突出する複数の突出部材51から構成してもよい。
【0050】
図11に示すように、突出部50を有する円環部材52を有し、表面板20の貫通孔21の周囲に座刳り22を設け(図11(a))、座刳り22に円環部材52を嵌め込んでもよい(図11(b))。
【0051】
図12に示すように、突出部50を有する円筒部材53を用意し(図12(a))、貫通孔21に円筒部材53を嵌め込んでもよい(図12(b))。
【0052】
図13に示すように、貫通孔21より穴径の小さい孔55が空けられた薄いシート状の部材54を用意し(図13(a))、貫通孔21内に小さい孔55が位置するように、表面板20の表面にシート状の部材54を張り付けて(図13(b))、貫通孔21内にシート状の部材54が張り出すようにして突出部50を構成してもよい。
【0053】
<突出部による効果>
本発明に係る突出部50を設けたときに音波の入射に伴う粒子速度変動を数値流体解析によって算出した例を図14に示す。
【0054】
図14は、孔径1.65mmの貫通孔21、突出長0.4mmの突出部50(突出部の厚さは0とした。)と共鳴周波数2150Hzを有する共鳴型吸音パネル1をモデルとし、120dBの音波を垂直入射させたときの貫通孔21周辺の粒子速度並びに生成エンタルピーを数値流体解析した結果である。瞬時粒子速度分布は矢印、瞬時エントロピー生成はグレースケールの濃淡で表している。
【0055】
図は軸対象セル構造の貫通孔21近傍を表しており、段差の左側が貫通孔21を意味する。段差下部がセル11と呼ばれる空間に繋がっており、段差上部は管路、つまり音波の通路を意味し、上から段差に向かって音波が入射する。
この瞬間、セル11の音圧が高い位相にあるので、セル11から管路に向かって粒子速度ベクトルが形成され、突出部50で循環する部分がある。突出部50の先端Aで剥離が起こっていることが判る。損失(吸音)が大きく生じるのは、この突出部50の先端Aでの剥離流れに起因している。
【0056】
図15A図15Eは、突出部50の突出量(突出長)をゼロから0.8mmまで0.2mmずつ増やしつつ、孔直径を増やした時の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。ベースラインの貫通孔21の直径は1.65mmである。
図15Aは突出部50の突出量(突出長)をゼロ、図15Bは突出部50の突出量(突出長)を0.2mm、図15Cは突出部50の突出量(突出長)を0.4mm、図15Dは突出部50の突出量(突出長)を0.6mm、図15Eは突出部50の突出量(突出長)を0.8mmとした場合である。以下の表は最大吸音率を整理したものである。
【0057】
【表1】
図16はこれらの結果から、突出部50の突出量(突出長)と吸音率との関係を示したグラフである。
【0058】
突出量なしの場合(Baseline)に比べて、貫通孔21の孔径の10%で概ね最大の吸音率増加が得られており、同20%に相当でも吸音率の増加は認められる。
【0059】
解析では、垂直入射管を模擬して、表面板20に入射する音波を仮定したときの垂直入射管内に生成される定在波を求めている。定在波の振幅比に基づいて、吸音パネルでの垂直入射吸音率を求めている。計算結果によれば、本発明の解決手段を講じたケースでは、講じないケース(つまり単純に表面板に垂直に貫通孔21を設けたケース)に比べて吸音率が増加する結果を得た(図15A図15E)。
【0060】
また、貫通孔21端部周辺でのエントロピーの生成量に注目すると、図15A図15Eの濃淡から、本発明に係る突出部50を設けた場合の方がエントロピーの生成量が増加している傾向が認められる。このことは、粒子速度によって生じる熱散逸の増加を説明しており、巨視的観点では吸音率増加を裏付けている。同じことは、多層吸音パネルの中間板に設けられた貫通孔形状についても適用可能と考えられる。
【0061】
以上のことから、微小突起である突出部50を貫通孔21の表面側端部である開口部に設けた表面板20の貫通孔21の形状(表面板20の断面形状)は、単純な孔を空けた場合に比べて、入射する音波のエネルギー減衰を促進する働きがあること、即ち吸音率を増加させる効果があることを示唆している。
なお、Baselineから20%以上の吸音率増加を目安とすると少なくとも15%の突出量であれば、より有意な吸音率の増加が見込まれると考えられる。
【0062】
図17A~17Dは突出部50の突出長を0.4mmとして突出部50の厚さを変化させた場合の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。貫通孔21の直径は1.65mmである。
図17Aは突出部50の厚さがゼロ、図17Bは突出部50の厚さが0.05mm、図17Cは突出部50の厚さが0.1mm、図17Dは突出部50の厚さが0.2mmの場合である。
下表はその場合の最大吸音率を整理したものである。
【0063】
【表2】
以上より突出部50の厚さが増すと吸音率は減少する傾向を示すことが分かる。
【0064】
図18A~18Dは突出部50の突起形状を現実的なものに変更した時の粒子速度分布とエントロピー分布を示す。貫通孔21の直径は1.65mm、突出部50の突起高さ(突出長)は0.4mmである。
図18Aは突出部50の厚さをゼロとした場合で吸音率は0.997となった。図18Bは突出部50の厚さを0.05mmとした場合で吸音率は0.991となった。図18Cは突出部50の先端に向かって薄くしたシュープエッジの場合であって基部の厚さをゼロとした場合で吸音率は0.991となった。図18Cは突出部50の先端に向かって薄くしたシュープエッジの場合であって基部の厚さを0.05mmとした場合で吸音率は0.977となった。突起部50の厚さが0.05mm(現実的には薄い)とシャープエッジ(現実的な形状)とが同様な吸音率である。
【0065】
<本発明に係る共鳴型吸音パネルの適用例>
以下のとおりの本発明に係る共鳴型吸音パネルの適用の類型が考えられる。なお、簡略化して、共鳴型吸音パネルを吸音パネルと記載する。
【0066】
その1)伝播経路の壁面に設置して、騒音の伝播を妨げる。
【0067】
伝播経路は通常、ダクトのような流路である。本類型では、伝播経路の壁面に孔空き表面板が設置され、その背後にセル構造と背後壁が存在する。伝播経路内部に気流が存在してもよく、気流には経路断面方向に速度分布や温度分布が存在してもよい。騒音は気流と同じ方向に伝播する場合と反対方向に伝播する場合がある。また、騒音に経路断面形状に応じた音響モード(音圧の腹と節が存在する音圧分布であって、同一の周波数に複数の音圧分布が存在することや、音圧分布の空間的位置が時間変化することを含む)が存在することがある。具体的には、航空機用ターボファンエンジンの吸入ダクトや排気ダクト内壁に吸音パネルを設置することで、ファンで発生する騒音をエンジンの外部に放出される前にその音圧レベルを軽減する例が挙げられる。ジェットエンジンの地上運転設備では、冷却後の高速排気ジェットを導入して外部に排気するダクト内壁に吸音パネルを設置することで、ジェット騒音による高音圧騒音を軽減する例が挙げられる。発電プラントでは、同じく空気吸入側ダクト内壁に吸音パネルを設置して、ブロアや圧縮機から発生する騒音を外部に放出する前に減衰させる例が挙げられる。
【0068】
その2)騒音が入射する壁面に設置して、騒音の反射を妨げる。
【0069】
本類型は、開放空間に置かれた壁や塀、構造物の表面にパネルを設置するものである。パネル表面に気流があってもよい。入射騒音の進行方向は、パネル表面板と垂直方向でなくともよい。具体例として、静粛性を要求する部屋の壁面に吸音パネルを設置し、室内の反響を抑制すること、高速車両が通行する路線に設けた塀の表面に吸音パネルを設置して、車両、路面から発生して塀に入射する騒音の反射を弱めて、周囲への騒音暴露量を減らすこと、航空機の機体(胴体表面、フラップなどの高揚力装置、脚や格納ドアなどの着陸装置)表面に吸音パネルを設置することで、空力騒音やエンジン騒音を騒音発生源で極力抑制して遠方への騒音放射を抑制すること、などが挙げられる。
【0070】
その3)閉空間を覆う境界面の全部または一部に設置して、内部の騒音を低減する。
【0071】
閉空間であって、騒音源を含むゆえに騒音場が形成される場合と、騒音源を含まないが、外部騒音源から振動を通じて導入された騒音場が形成される場合を想定する。閉空間の全部または一部にパネルを設置することで、閉空間内を伝播する騒音の振幅をパネル表面で減衰させることで、閉空間内の騒音をパネルがない場合に比べて低減させることを想定する。具体例として、ボイラや燃焼器の内壁に耐熱性吸音パネルを設置して、燃焼室内部で発生する不安定燃焼振動や燃焼騒音を吸音することで、不安定振動の抑制や外部に伝播する燃焼騒音低減を図ること、ロケットフェアリング内壁に吸音パネルを設置することで、ロケット打上時に発生する外部音響がフェアリングの振動を介してフェアリング内部に励起する音場を軽減すること、航空機の機内壁に吸音パネルを設置して、外部から伝搬するエンジン騒音、機体騒音、境界層騒音を機内で軽減すること、などが挙げられる。
【0072】
(実施例1)
航空機用ジェットエンジン吸入及び排気ダクトに本発明に係る吸音パネル1を設置する。
【0073】
図19に示すように、ダクト61の内壁面に本発明に係る吸音パネル1を設置する。ダクト61の内壁は通常円形であって吸音パネル1は曲率を有するとともに、ダクト61の軸方向に半径が変化する。なお、図19において、符号62はエンジンの空気吸引口を示し、63はファン動翼、64はファン静翼を示す。
【0074】
表面板20、セル構造40、背後壁30が単層の場合(シングルレイヤ吸音パネルの場合)、本発明に係る貫通孔21は表面板20に加工する。複層の場合(ダブルレイヤ吸音パネル、トリプルレイヤ吸音パネルなど)、本発明に係る貫通孔は、表面板20の貫通孔21のみならず、セプタムと呼ばれる層間隔壁に設ける貫通孔に適用することも含む。このとき、表面板20の貫通孔21とセプタムとで孔の閉塞部(突出部50)の形状を変更してもよい。表面板20にはファン吸気あるいは排気が通過するため、孔形状を大幅に変更すると流れ場が変わり、ダクト内の圧力損失への影響が避けられない。本発明のように、直線状或いは他の小さな突起を使って、貫通孔の孔径の高々15%程度の部分的な閉塞を施す場合には、流れ場への影響を減らすことが見込まれ、圧力損失を維持したまま吸音性能を向上できると推測される。
【0075】
(実施例2)
発電プラント等の吸入・排気ダクトに本発明に係る吸音パネル1を設置する。
【0076】
発電用プラントや一般プラントでは、作動流体として外気を導入し、熱機関等で用いた後で排気している。外気を吸入する流路(ダクト)或いは排出する流路(ダクト)の内壁に本発明に係る吸音パネル1を設置する。この場合に、例えば既存の吸音パネルに孔空き薄膜を後付けで設置することで(図13参照)、吸音性能の改善を図ることができる。
【0077】
(実施例3)
部屋の壁、建物の外壁、沿線の塀に本発明に係る吸音パネル1を設置する。
【0078】
壁面や塀に吸音パネル1を設置する。パネル1に入射する騒音を軽減して、壁周囲の騒音を吸音パネルがない場合に比べて低減する。自動車道路や鉄道路の沿線に設けた塀内面に吸音パネル1を取り付けることで、路線の騒音を抑制し、周囲環境への騒音暴露量を軽減する。
【0079】
(実施例4)
機内、車内の内壁に本発明に係る吸音パネル1を設置する。
【0080】
航空機の機内、車両の車室内、ロケットフェアリング内など閉空間の内壁に吸音パネル1を設置する。航空機や車両の内部は、原動機による音、気流音などが隔壁を伝搬する結果、内部の騒音が残存する。内壁に吸音パネル1を付けることで騒音を軽減することが期待され、既存の吸音パネルの効果を向上させることが見込まれる。
【0081】
ロケット打上時には高振幅の音源や振動源が存在し、機体を介してフェアリング内部に伝搬する。その結果、フェアリング内部のペイロードに不要な振動をもたらす。吸音パネル1の表面板20の貫通孔21に僅かな突起である突出部50をつけることで、重量増加なくフェアリング内壁の吸音量を増加させることが期待される。
【0082】
以上のとおり、本発明に係る共鳴型吸音パネル1を自動車、プラント、航空機の騒音伝播経路に適用して、環境騒音の低減を図ることができる。
【0083】
また、本発明に係る共鳴型吸音パネル1を交通機械の車内、機内の内壁などに適用して、客室騒音を低減し、快適性改善を図ることができる。
【0084】
更に、本発明に係る共鳴型吸音パネル1を建築物、道路などの壁面や塀に適用して、環境騒音を低減して、生活・労働環境改善を図る。
【0085】
また、本発明に係る共鳴型吸音パネル1をロケットフェアリングや宇宙機に適用して、機器の損傷回避を図る。
【0086】
<その他>
本発明は上記の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で様々な変形が可能であり、その変形の範囲も本発明の技術的範囲に属する。
【0087】
例えば、図20に示すように、突出部50は、貫通孔21の裏面側端部に設けてもよい。また、図21に示すように、突出部50は貫通孔21の表面側端部及び裏面側端部の両方に設けてもよい。
【0088】
また、図22に示すように、多層吸音パネルの中間板70に設けられた貫通孔71の表面側端部に突出部50を設けてもよい。突出部50は貫通孔71の裏面側端部に設けてもよく、貫通孔71の表面側端部及び裏面側端部の両方に設けてもよい。表面板20の貫通孔21に突出部50を設け、更に中間板70の貫通孔71に突出部50を設けてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 共鳴型吸音パネル
11 セル
12 隔壁
20 表面板
21 貫通孔
30 背後壁
40 セル構造
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21
図22