(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】アーク放電検知回路を備えたアーク放電検知装置、アーク放電警報装置及び遮断器
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20220427BHJP
H02H 3/20 20060101ALI20220427BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
G01R31/12
H02H3/20 A
H02H3/02 L
(21)【出願番号】P 2018074405
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】503152783
【氏名又は名称】龍城工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 公彦
(72)【発明者】
【氏名】附柴 明俊
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173008(JP,A)
【文献】特開平03-134576(JP,A)
【文献】特開平03-222624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
H02H 3/20
H02H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源に接続された電路の線間に並列に接続され、当該電路に流れる電流が、前記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段としてのコンデンサと、当該コンデンサによって通過された高周波信号成分を電圧波形に変換する変換手段としての抵抗と、当該抵抗によって変換された電圧波形を外部に出力する外部出力手段として前記抵抗の両端のそれぞれに接続された端子からなる端子対とを有するアーク放電検知回路と、
当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段と、
前記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段と、
前記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段と、
前記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段によって前記所定の不検知時間だけ遅延された第2パルス信号が発生している間に、前記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合には、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する警報用信号出力手段と、
を有することを特徴とするアーク放電検知装置。
【請求項2】
商用電源に接続された電路の線間に並列に接続され、当該電路に流れる電流が、前記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段としてのコンデンサと、当該コンデンサによって通過された高周波信号成分を電圧波形に変換する変換手段としての抵抗と、当該抵抗によって変換された電圧波形を外部に出力する外部出力手段として前記抵抗の両端のそれぞれに接続された端子からなる端子対とを有するアーク放電検知回路と、
当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段と、
前記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段と、
前記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段と、
前記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段によって前記所定の不検知時間だけ遅延された第2パルス信号が発生している間に、前記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合に、トリガパルスを生成するトリガパルス生成手段と、
前記トリガパルス生成手段によってトリガパルスが生成されたことに応じて、警報用パルス信号を生成し、当該警報用パルス信号を警報用信号として、外部に出力する警報用信号出力手段と、
を有することを特徴とするアーク放電検知装置。
【請求項3】
商用電源に接続された電路の線間に並列に接続され、当該電路に流れる電流が、前記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段としてのコンデンサと、当該コンデンサによって通過された高周波信号成分を電圧波形に変換する変換手段としての抵抗と、当該抵抗によって変換された電圧波形を外部に出力する外部出力手段として前記抵抗の両端のそれぞれに接続された端子からなる端子対とを有するアーク放電検知回路と、
当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段と、
前記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段と、
前記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段と、
前記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段によって遅延された第2パルス信号をトリガパルスとして、当該第2パルス信号の時間長と同じ時間長の第3パルス信号を生成する第3パルス生成手段と、
前記第3パルス生成手段によって第3パルス信号が発生している間に、前記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合には、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する警報用信号出力手段と、
を有することを特徴とするアーク放電検知装置。
【請求項4】
商用電源に接続された電路の線間に並列に接続され、当該電路に流れる電流が、前記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段としてのコンデンサと、当該コンデンサによって通過された高周波信号成分を電圧波形に変換する変換手段としての抵抗と、当該抵抗によって変換された電圧波形を外部に出力する外部出力手段として前記抵抗の両端のそれぞれに接続された端子からなる端子対とを有するアーク放電検知回路と、
当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段と、
前記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段と、
前記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段と、
前記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段によって遅延された第2パルス信号をトリガパルスとして、当該第2パルス信号の時間長と同じ時間長の第3パルス信号を生成する第3パルス生成手段と、
前記第3パルス生成手段によって第3パルス信号が発生している間に、前記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合に、トリガパルスを生成するトリガパルス生成手段と、
前記トリガパルス生成手段によってトリガパルスが生成されたことに応じて、第4パルス信号を生成し、当該第4パルス信号を警報用信号として、外部に出力する警報用信号出力手段と、
を有することを特徴とするアーク放電検知装置。
【請求項5】
前記積分手段は、前記アーク放電検知回路から出力された電圧波形のうち、正側の電圧波形を積分することを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載のアーク放電検知装置。
【請求項6】
前記第1パルス生成手段は、コンパレータからなることを特徴とする
請求項1~5のいずれか1項に記載のアーク放電検知装置。
【請求項7】
前記第2パルス生成手段は、マルチバイブレータからなることを特徴とする
請求項1~6のいずれか1項に記載のアーク放電検知装置。
【請求項8】
前記遅延手段は、抵抗及びコンデンサからなるRC回路からなることを特徴とする
請求項1~7のいずれか1項に記載のアーク放電検知装置。
【請求項9】
前記警報用信号出力手段は、マルチバイブレータからなることを特徴とする
請求項2又は4に記載のアーク放電検知装置。
【請求項10】
前記第3パルス生成手段は、マルチバイブレータからなることを特徴とする
請求項3又は4に記載のアーク放電検知装置。
【請求項11】
前記トリガパルス生成手段は、NAND回路からなることを特徴とする
請求項2又は4に記載のアーク放電検知装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項のアーク放電検知装置と、
当該アーク放電検知装置から出力された警報用信号に応じて、人が知覚可能な態様でアーク放電を報知する報知手段と、
を有することを特徴するアーク放電警報装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項のアーク放電検知装置と、
当該アーク放電検知装置から出力された警報用信号に応じて、前記電路を遮断する電路遮断手段と、
を有することを特徴する遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク放電を検知するアーク放電検知回路を備えたアーク放電検知装置、アーク放電警報装置及び遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク放電には、異極間で生ずるものと同極間で生ずるものがある。異極間で生ずるアーク放電では、大きな短絡電流が流れるので、その検知方法は、従来から種々提案されている。一方、同極間で生ずるアーク放電では、負荷電流により千差万別のエネルギーが発生する。また、同極間で生ずるアーク放電は、微少で間欠的に発生することが多く、さらにはその発生箇所も多々で、確定しない。このため、その検知は困難である。
【0003】
したがって、アーク放電を検知する従来の装置の大半は、異極間で生ずるアーク放電を検知するものであり、同極間で生ずるアーク放電を検知するものは、少なかった。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載されたアーク検出器も、瞬時遮断器では検出できなかったコードや屋内配線で芯線同志でアークを伴うアーク短絡現象、つまり、異極間で生ずるアーク放電を検出するものである。ただし、この技術を、屋内配線で起こる直列アーク、つまり、同極間で生ずるアーク放電にも適用することにより、直列アークを検出し、電路を遮断し、火災を未然に防ぐようにしている。
【0005】
具体的には、上記アーク検出器は、直列アークを検出する方法として、コンセント口の実効値電圧が所定の電圧(例えば、70V)以下になったときに、直列アークによるアーク放電が発生していると判断する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来のアーク検出器では、30V程度の電圧降下を起こす直列アークは検知できるものの、それより小さな電圧降下しか起こさない、より初期段階の直列アークを検知することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、より初期段階の直列アークを確実に、かつ精度良く検知することが可能となるアーク放電検知回路、並びに当該アーク放電検知回路を備えたアーク放電検知装置、アーク放電警報装置及び遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、アーク放電検知回路は、商用電源(200)に接続された電路(201)の線間に並列に接続されるアーク放電検知回路(10)であって、上記電路に流れる電流が、上記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分を選択して通過させる通過手段(11)と、上記通過手段によって通過された高周波信号成分を電圧波形に変換する変換手段(12)と、上記変換手段によって変換された電圧波形を外部に出力する外部出力手段(13,13´)と、を有する。
【0010】
また、アーク放電検知回路において、上記通過手段は、コンデンサからなり、上記変換手段は、抵抗からなり、上記出力手段は、上記抵抗の両端のそれぞれに接続された端子からなる端子対である。
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のアーク放電検知装置は、アーク放電検知回路(10)と、当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段(20)と、上記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段(30)と、上記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段(40)と、上記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段(80,81)と、上記遅延手段によって上記所定の不検知時間だけ遅延された第2パルス信号が発生している間に、上記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合には、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する警報用信号出力手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、請求項2に記載のアーク放電検知装置は、請求項1又は2に記載のアーク放電検知回路(10)と、当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段(20)と、上記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段(30)と、上記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段(40)と、上記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段(80,81)と、上記遅延手段によって上記所定の不検知時間だけ遅延された第2パルス信号が発生している間に、上記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合に、トリガパルスを生成するトリガパルス生成手段(90)と、上記トリガパルス生成手段によってトリガパルスが生成されたことに応じて、警報用パルス信号を生成し、当該警報用パルス信号を警報用信号として、外部に出力する警報用信号出力手段(60)と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、請求項3に記載のアーク放電検知装置は、請求項1又は2に記載のアーク放電検知回路(10)と、当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段(20)と、上記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段(30)と、上記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段(40)と、上記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段(80,81)と、上記遅延手段によって遅延された第2パルス信号をトリガパルスとして、当該第2パルス信号の時間長と同じ時間長の第3パルス信号を生成する第3パルス生成手段(50)と、上記第3パルス生成手段によって第3パルス信号が発生している間に、上記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合には、アーク放電が発生したことを示す警報用信号を生成して、外部に出力する警報用信号出力手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、請求項4に記載のアーク放電検知装置は、請求項1又は2に記載のアーク放電検知回路(10)と、当該アーク放電検知回路から出力された電圧波形を積分し、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形を生成する積分手段(20)と、上記積分手段によって生成された電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号を生成する第1パルス生成手段(30)と、上記第1パルス生成手段によって生成された第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号を生成する第2パルス生成手段(40)と、上記第2パルス生成手段によって生成された第2パルス信号を所定の不検知時間だけ遅延させる遅延手段(80,81)と、上記遅延手段によって遅延された第2パルス信号をトリガパルスとして、当該第2パルス信号の時間長と同じ時間長の第3パルス信号を生成する第3パルス生成手段(50)と、上記第3パルス生成手段によって第3パルス信号が発生している間に、上記第1パルス生成手段によって次の第1パルス信号が生成された場合に、トリガパルスを生成するトリガパルス生成手段(90)と、上記トリガパルス生成手段によってトリガパルスが生成されたことに応じて、第4パルス信号を生成し、当該第4パルス信号を警報用信号として、外部に出力する警報用信号出力手段(60)と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載のアーク放電検知装置は、請求項1~4のいずれかのアーク放電検知装置において、上記積分手段は、上記アーク放電検知回路から出力された電圧波形のうち、正側の電圧波形を積分することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載のアーク放電検知装置は、請求項1~5のいずれかのアーク放電検知装置において、上記第1パルス生成手段は、コンパレータ(30)からなることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載のアーク放電検知装置は、請求項1~6のいずれかのアーク放電検知装置において、上記第2パルス生成手段は、マルチバイブレータ(40)からなることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載のアーク放電検知装置は、請求項1~7のいずれかのアーク放電検知装置において、上記遅延手段は、抵抗及びコンデンサからなるRC回路(80,81)からなることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9に記載のアーク放電検知装置は、請求項2又は4のアーク放電検知装置において、上記警報用信号出力手段は、マルチバイブレータ(60)からなることを特徴とする。
【0020】
また、請求項10に記載のアーク放電検知装置は、請求項3又は4のアーク放電検知装置において、上記第3パルス生成手段は、マルチバイブレータ(50)からなることを特徴とする。
【0021】
また、請求項11に記載のアーク放電検知装置は、請求項2又は4のアーク放電検知装置において、上記トリガパルス生成手段は、NAND回路(90)からなることを特徴とする。
【0022】
上記目的を達成するため、請求項12に記載のアーク放電警報装置は、請求項1~11のいずれか1項のアーク放電検知装置(100)と、当該アーク放電検知装置から出力された警報用信号に応じて、人が知覚可能な態様でアーク放電を報知する報知手段(110)と、を有することを特徴する。
【0023】
上記目的を達成するため、請求項13に記載の遮断器は、請求項1~11のいずれか1項のアーク放電検知装置(100)と、当該アーク放電検知装置から出力された警報用信号に応じて、上記電路を遮断する電路遮断手段と、を有することを特徴する。
【0024】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、商用電源に接続された電路に流れる電流が、上記商用電源から供給される低周波交流信号に高周波信号が重畳されているものであるときに、当該電流から高周波信号成分が選択されて通過し、当該通過された高周波信号成分が電圧波形に変換され、当該変換された電圧波形が外部に出力されるので、外部に電圧波形が出力されているときは、その電圧は、高周波信号によって発生したものであると言うことができる。そして、アーク放電が発生すると、その初期段階でも、高周波信号が発生して、商用電源の低周波交流信号に重畳される。したがって、このような高周波信号の重畳された低周波信号を本発明に適用すれば、上述した従来のアーク検出器に比べて、より初期段階の直列アークを検知することが可能となる。
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、アーク放電検知回路から出力された電圧波形が積分され、当該電圧波形の波形幅に応じた電圧波形が生成される。アーク放電検知回路から出力された電圧波形は通常、周波数の極めて高いものであるので、この出力波形のままでは、取り扱いが困難である。しかし、出力波形の波形幅は、周波数に比べて、取り扱い易い長さであるので、出力波形を当該波形幅に応じた電圧波形に変換している。これにより、特殊なデバイスを用いなくても、アーク放電を原因とする高周波信号を取り扱うことが可能となる。
【0027】
また、請求項1に記載の発明によれば、上記波形幅に応じた電圧波形が所定の閾値電圧以上である間、所定の電圧値の第1パルス信号が生成され、当該第1パルス信号をトリガパルスとして、当該第1パルス信号の時間長より長い所定の時間長の第2パルス信号が生成され、当該第2パルス信号が所定の不検知時間だけ遅延され、当該遅延された第2パルス信号が発生している間に、次の第1パルス信号が生成された場合には、アーク放電が発生したことを示す警報用信号が生成されて、外部に出力される。
【0028】
高周波信号を発生させる原因は、アーク放電以外にも、開閉サージやノイズ等があるため、アーク放電検知回路から電圧波形が出力されたとしても、その電圧波形は、アーク放電が原因となって発生したものであると断定することはできない。
【0029】
そこで、請求項1に記載の発明では、上記所定の不検知時間を設け、この不検知時間内に、次の高周波信号が検知されて、次の第1パルス信号が生成されたとしても、アーク放電以外によって生じた高周波信号とみなして、警報用信号を出力しない。つまり、不検知時間内に発生した次の高周波信号を検知せずに、除去するようにしている。これにより、初期段階の直列アークを確実に、かつ精度良く検知することが可能となる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、第2パルス生成手段及び警報用信号出力手段のいずれも、トリガパルスが入力されることに応じてパルス信号を生成し、出力するようにしたので、回路構成を同じにすることができ、これにより、当該アーク放電検知装置全体の回路構成を簡単化することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、発生した第2パルス信号そのものを遅延させて、警報用信号の生成に用いるのではなく、発生した第2パルス信号を遅延させたものをトリガパルスとして用い、当該第2パルス信号の時間長と同じ時間長の第3パルス信号を新たに生成し、この第3パルス信号を用いて警報用信号を生成するようにした。これにより、第3パルス生成手段として、第2パルス生成手段と同様の回路構成のものを用いることができるとともに、遅延手段の回路構成も単純化することができるので、当該アーク放電検知装置全体の回路構成を簡単化することができる。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、第2パルス生成手段、第3パルス生成手段及び警報用信号出力手段のいずれも、トリガパルスが入力されることに応じてパルス信号を生成し、出力するようにしたので、回路構成を同じにすることができ、これにより、当該アーク放電検知装置全体の回路構成を簡単化することができる。
【0033】
請求項12に記載の発明によれば、アーク放電が発生すると、アーク放電が発生したことを人に直接知らせてくれるので、人は、アーク放電を原因とする火災などが発生する前に、その予防策を講じることができる。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、アーク放電が発生すると、自動的に商用電源の電路が遮断されるので、人は、アーク放電を原因とする火災などに対する事前の予防策すら講じる必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るアーク放電検知回路の回路構成((a))及び当該アーク放電検知回路に含まれるコンデンサの周波数特性((b))を示す図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るアーク放電検知装置に備えられた電子回路のうち、前段部分の回路構成を示す図である。
【
図3】
図2の電子回路の所定の端子対から得られた出力信号の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係るアーク放電検知装置に備えられた電子回路のうち、後段部分の回路構成を示す図である。
【
図5】
図4の電子回路の所定の端子対から得られた出力信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0037】
商用電源の電路上で、初期段階の直列アークが発生すると、これに応じて特有の高周波信号が発生する。そして、当該高周波信号は、商用電源によって供給される低周波(例えば、60Hz)交流信号に重畳されて、電路上を伝送される。ここで、特有の高周波信号とは、10kHzを超える周波数の信号であって、連続的あるいは断続的に発生するものをいう。
【0038】
本発明の一実施の形態に係るアーク放電検知回路は、商用電源の低周波交流信号に高周波信号が重畳されているときに、当該高周波信号を選択して検知するようにしている。以下、この原理、つまり、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して検知する原理を、
図1に基づいて説明する。
【0039】
本実施形態のアーク放電検知回路10は、
図1(a)に示すように、コンデンサ(C)11と、抵抗(R)12と、出力端子対13-13´とによって構成されている。
【0040】
そして、アーク放電検知回路10は、商用電源200の屋内配線201の線間に、商用電源200と並列に接続されている。また、屋内配線201には、負荷300が接続されている。
【0041】
抵抗12を含むすべての抵抗のインピーダンスは、当該抵抗に印加される電気信号の周波数に依存せず、一定である。つまり、抵抗には、インピーダンス周波数特性は存在しない。
【0042】
これに対して、コンデンサ11を含むすべてのコンデンサのインピーダンスは、当該コンデンサに印加される電気信号の周波数に依存する。
図1(b)は、コンデンサ11のインピーダンス周波数特性の一例を示している。
【0043】
同図(b)に示すように、コンデンサ11のキャパシタンス(容量)が、例えば、0.1μFであるとき、コンデンサ11のインピーダンスは、商用電源の低周波数(例えば、60Hz)信号が印加された場合には、35kΩであるのに対して、アーク放電の高周波数(例えば、10kHz)信号が印加された場合には、150Ωである。
【0044】
そして、抵抗12として、抵抗値が、例えば、30Ωのものを用いた場合、低周波数信号についてのコンデンサ11と抵抗12とのインピーダンス比は、1167:1となり、抵抗値が、例えば、90Ωのものを用いたとしても、低周波数信号についてのコンデンサ11と抵抗12とのインピーダンス比は、389:1となる。
【0045】
一方、高周波信号についてのコンデンサ11と30Ωの抵抗12とのインピーダンス比は、5:1となり、高周波信号についてのコンデンサ11と90Ωの抵抗12とのインピーダンス比は、1.7:1となる。
【0046】
また、コンデンサ11のキャパシタンスが、さらに小さい、例えば、0.022μFであるときには、低周波数信号についてのコンデンサ11と30Ωの抵抗12とのインピーダンス比は、6667:1となり、90Ωの抵抗12とのインピーダンス比も、2222:1となって、コンデンサ11のインピーダンスは、さらに増大する。
【0047】
一方、高周波信号についてのコンデンサ11と30Ωの抵抗12とのインピーダンス比は、23:1となり、90Ωの抵抗12とのインピーダンス比も、7.8:1となる。
【0048】
以上の結果は、商用電源の低周波数信号にアーク放電の高周波信号が重畳されたものをコンデンサ11に印加した場合、コンデンサ11は、低周波数信号成分を通さず、高周波信号成分のみ通すことを意味している。
【0049】
したがって、本実施形態のアーク放電検知回路10のように、コンデンサ11と抵抗12を直列接続した回路構成にすると、重畳された信号のうち、低周波信号成分はコンデンサ11を通らないので、低周波数信号成分によって抵抗12に電圧が発生しないのに対して、高周波信号成分はコンデンサ11を通るので、高周波信号成分によって抵抗12に電圧が発生する。つまり、抵抗12の両端である、出力端子対13-13´に電圧が発生しているときは、その電圧は、高周波信号によって発生したものであると言うことができる。
【0050】
このため、出力端子対13-13´の電圧を監視し、電圧が発生したことを検知すれば、その電圧は、高周波信号によって発生したものであることが分かる。
【0051】
ただし、高周波信号を発生させる原因は、アーク放電以外にも、開閉サージやノイズ等があるため、出力端子対13-13´に電圧が発生したとしても、その電圧は、アーク放電が原因となって発生したものであると断定することはできない。
【0052】
以上説明した原理により、本実施形態のアーク放電検知回路10は、高周波信号が重畳された低周波交流信号から高周波信号を選択して検知することができる。
【0053】
なお、
図1(b)で例示した高周波信号の周波数、10kHzは、コンデンサにインピーダンス周波数特性があることを説明するために、便宜上採用したに過ぎず、直列アークによって実際に発生した高周波信号の周波数を示している訳ではない。
【0054】
また、実機では、コンデンサ11として、キャパシタンスが0.022μFのものを、抵抗12として、抵抗値が100Ωのものを採用している。そして、キャパシタンス及び抵抗値の各幅としては、例えば、0.01~0.06μF及び50~150Ωが好ましいが、これらに限られる訳ではない。
【0055】
次に、
図2~
図5に基づいて、本発明の一実施の形態に係るアーク放電検知装置100を説明する。本実施形態のアーク放電検知装置100は、構成要素の1つとして、上述したアーク放電検知回路10を備えている。
【0056】
本実施形態のアーク放電検知装置100は、
図2及び
図4に示すように、主として、アーク放電検知回路10と、積分回路20と、コンパレータ30と、3つの単安定マルチバイブレータ40,50,60(
図4参照)とによって構成されている。
【0057】
図2中のアーク放電検知回路10は、
図1(a)に基づいて上述したアーク放電検知回路10と同じものであり、商用電源200の屋内配線201の線間に接続されている。端子Taと端子Tbは、屋内配線201の各異極からそれぞれ取られたものである。
【0058】
アーク放電検知回路10の出力端子対13-13´には、2個のツェナーダイオード70a,70bをそれぞれ逆向きに直列に接続したものが並列に接続されている。ここで、「逆向きに直列に接続」とは、ツェナーダイオード70aのカソードとツェナーダイオード70bのカソードを接続して、両ツェナーダイオード70a,70bを直列に接続することを意味している。
【0059】
この2個のツェナーダイオード70a,70bは、出力端子対13-13´間に順方向及び逆方向のいずれに過大電圧が印加されたとしても、その後段の積分回路20に所定値以上の電圧を印加しない、保護回路として機能する。
【0060】
出力端子対13-13´には、積分回路20が接続されている。積分回路20は、ダイオード21と、2個の抵抗22,23と、コンデンサ24とによって構成されている。
【0061】
ダイオード21のアノードは、端子13に接続され、ダイオード21のカソードは、2個の抵抗22,23の各一端に接続されている。
【0062】
抵抗22の他端は、端子13´に接続され、抵抗23の他端は、コンデンサ24の一端に接続されている。コンデンサ24の他端は、端子13´に接続されている。
【0063】
そして、コンデンサ24の両端にそれぞれ端子25,25´が形成され、積分回路20の出力端子対25-25´となっている。
【0064】
今、商用電源200(
図1(a)参照)の低周波数信号に、アーク放電による高周波信号が重畳された信号が端子対Ta-Tbに印加されたとすると、アーク放電検知回路10の出力端子対13-13´(
図2中、符号“A”で示される位置)には、当該高周波信号に応じた電圧波形が発生する。
図3(a)は、この電圧波形の一例を示している。
【0065】
この電圧波形は、周波数が500ns程度であるので、このままの状態で検知することは困難であるが、波形全体の長さ、つまり波形幅が100μs程度であるので、波形幅に変換できれば、検知が容易となる。
【0066】
そこで、本実施形態のアーク放電検知装置100は、積分回路20を用いて、アーク放電検知回路10の出力端子対13-13´に発生した、アーク放電による高周波信号の正側の波形成分を積分し、波形幅に変換している。
【0067】
図3(b)は、
図3(a)の電圧波形をその波形幅に変換した結果を示しており、
図2中、符号“B”で示される位置、つまり、出力端子対25-25´に発生した電圧波形を示している。これにより、変換後の電圧波形は、変換前の電圧波形と比較して、周波数が低くなるため、取り扱いが容易になる。
【0068】
図2に戻り、積分回路20の出力端子対25-25´には、コンパレータ30が接続されている。コンパレータ30は、6個の抵抗31~36と、オペアンプ37とによって構成されている。
【0069】
抵抗31の一端は、電源Vdd(例えば、6V)に接続され、抵抗31の他端は、抵抗32及び抵抗33の各一端に接続されている。抵抗32の他端は、接地(G)されている。抵抗31と抵抗32は、電源Vddから供給される電源電圧を分圧する機能を果たしている。
【0070】
また、抵抗33の他端は、オペアンプ37のマイナス(-)側入力端に接続されている。抵抗34の一端は、上記端子25に接続され、抵抗34の他端は、オペアンプ37のプラス(+)側入力端に接続されている。
【0071】
そして、抵抗35が、オペアンプ37の出力端と+側入力端との間に挿入され、正帰還を形成している。
【0072】
さらに、オペアンプ37の出力端には、抵抗36の一端が接続され、抵抗36の他端は、接地(G)されている。そして、抵抗36の両端にそれぞれ端子38,38´が形成され、コンパレータ30の出力端子対38-38´となっている。
【0073】
抵抗31及び抵抗32は、上述のように、電源Vddから供給される電源電圧を分圧し、オペアンプ37の-側入力端に、例えば、+1.0Vの電圧が印加されるようにする。これにより、オペアンプ37は、+側入力端に+1.0V以上の電圧が印加された場合には、ハイ(H)、Vdd(例えば+6V)を出力する一方、+側入力端に+1.0V未満の電圧が印加された場合には、ロー(L)、例えば0Vを出力する。
【0074】
したがって、
図3(b)の電圧波形がコンパレータ30に入力された場合、コンパレータ30は、その入力電圧が+1.0V以上の区間だけ、+6Vの“H”レベルを出力する。
図3(c)は、コンパレータ30からの出力信号を示しており、
図2中、符号“C”で示される位置、つまり、出力端子対38-38´に発生した電圧波形を示している。
【0075】
図3(b)に示す、波形幅変換後の電圧波形の電圧は、時刻T0から時刻T1までの間、+1.0V以上となっているので、コンパレータ30は、
図3(c)に示すように、時刻T0から時刻T1までの時間に相当する80μsの時間長の矩形波パルスを生成して出力する。
【0076】
コンパレータ30の出力端子対38-38´のうち、一方の端子38は、
図4に示すように、抵抗72を介して、フォトカプラ71の発光ダイオード71aのアノードと接続されている。発光ダイオード71aのカソードは、上記出力端子対38-38´のうち、他方の端子38´と接続されている。
【0077】
また、電源Vcc(例えば、5V)には、抵抗73の一端が接続され、抵抗73の他端は、トランジスタ77のベース及び抵抗74の一端に接続されている。そして、抵抗74の他端は、フォトカプラ71のフォトトランジスタ71bのコレクタに接続され、フォトトランジスタ71bのエミッタは、接地(G)されている。
【0078】
トランジスタ77のエミッタは、電源Vccに接続され、トランジスタ77のコレクタは、抵抗75の一端に接続されている。そして、抵抗75の他端は、抵抗76の一端に接続され、抵抗76の他端は、接地されている。
【0079】
フォトカプラ71は、アーク放電検知装置100のフォトカプラ71までの回路10,20,30と、フォトカプラ71以降の回路40,50,60等とを電気的に絶縁するために用いられる。つまり、アーク放電検知装置100のフォトカプラ71までの回路10,20,30は、フォトカプラ71以降の回路40,50,60等と比較して、消費電力が低いため、前者の回路10,20,30が、後者の回路40,50,60等の影響を受けて、アーク放電の検出精度が悪化する虞がある。フォトカプラ71は、この検出精度を悪化させないように、両者を電気的に切り離す役割を果たしている。
【0080】
フォトカプラ71のフォトトランジスタ71bのコレクタには、単安定マルチバイブレータ40の入力端が接続されている。単安定マルチバイブレータ40は、2個のNAND回路41,42と、コンデンサ43と、抵抗44とによって構成されている。
【0081】
NAND回路41の一方の入力端には、上記フォトトランジスタ71bのコレクタが接続され、NAND回路41の他方の入力端には、他方のNAND回路42の出力端が接続されている。
【0082】
NAND回路41の出力端は、コンデンサ43の一端に接続され、コンデンサ43の他端は、NAND回路42の両入力端及び抵抗44の一端に接続されている。抵抗44の他端は、接地されている。
【0083】
NAND回路42は、NOT回路、つまりインバータとして使用されている。NAND回路41の出力は、出力端子45を介し、単安定マルチバイブレータ40の出力として、後段の回路に供給される。
【0084】
コンパレータ30の出力端子対38-38´は、上述のように、抵抗72とフォトカプラ71の発光ダイオード71aとの直列回路に接続されている。当該出力端子対38-38´に、上述した
図3(c)に示す矩形波パルスが出力されると、当該矩形波パルスの立ち上がりで、つまり、時刻T0で、発光ダイオード71aはオンとなって、発光する。これに応じて、フォトトランジスタ71bもオンとなって、そのコレクタ電位が接地レベルとなり、電源Vccから抵抗73及び抵抗74に電流が流れる。
【0085】
その結果、トランジスタ77のベース電位が下降し、トランジスタ77がオンとなり、電源Vccから抵抗75及び抵抗76に電流が流れる。これに応じて、抵抗75と抵抗76との接点、つまり、
図4中、符号“C”で示される位置の電位も上昇する。
【0086】
この状態は、上記矩形波パルスが立ち下がるまで継続するので、抵抗75と抵抗76との接点には、当該矩形波パルスと同一形状の矩形波パルスが発生する。このため、抵抗75と抵抗76との接点には、出力端子対38-38´と同じ符号“C”が付けられている。
【0087】
図5(a)は、アーク放電検知回路10の出力端子対13-13´から、
図3(a)に示す電圧波形、つまり、アーク放電による高周波信号に応じた電圧波形が出力されたときに、抵抗75と抵抗76との接点に発生した電圧波形を示している。
図5(a)に示す電圧波形の形状は、上述のように、
図3(c)に示す電圧波形の形状と同一である。
【0088】
単安定マルチバイブレータ40の入力端は、上述したように、フォトカプラ71のフォトトランジスタ71bのコレクタに接続されている。フォトトランジスタ71bのコレクタ電位は、上述したように、フォトカプラ71が作動しているときは、接地レベルに低下する一方、フォトカプラ71が作動していないときには、電源Vccの電位レベルである。つまり、フォトトランジスタ71bのコレクタ電位は、通常“H”であり、
図3(c)の矩形波パルスが発生すると、その発生開始から終了に至るまで“L”となる。
【0089】
単安定マルチバイブレータ40は、入力が“H”から“L”に立ち下がったときに、動作を開始する。なお、単安定マルチバイブレータ40の動作を開始させる、このようなパルスは、トリガパルスと呼ばれている。
【0090】
単安定マルチバイブレータ40が動作を開始すると、出力端子45からは、コンデンサ43のキャパシタンスと抵抗44の抵抗値によって決まる時定数、つまりCR時定数に応じた時間長の矩形波パルスが出力される。
図5(b)は、一例として、出力端子45の位置、つまり、
図4中、符号“D”で示される位置に発生した10msの時間長の矩形波パルスを示している。
【0091】
単安定マルチバイブレータ40の出力端子45は、抵抗80の一端に接続され、抵抗80の他端は、コンデンサ81の一端及びNAND回路82の両入力端に接続されている。そして、コンデンサ81の他端は、接地されている。
【0092】
また、NAND回路82の出力端は、単安定マルチバイブレータ50の入力端に接続されている。
【0093】
単安定マルチバイブレータ40の出力が、
図5(b)に示すように、時刻T0で“L”から“H”に切り替わると、抵抗80に電流が流れる。この電流は、コンデンサ81に電荷を供給し、コンデンサ81が満充電になるまで流れる。コンデンサ81が満充電になると、抵抗80には電流が流れなくなり、コンデンサ81と抵抗80との接続点の電位が上昇する。これに応じて、NAND回路82は動作を開始する。
【0094】
NAND回路82は、上述したNAND回路42と同様に、インバータとして機能する。したがって、NAND回路82の入力端が“H”になると、NAND回路82の出力端は“L”になる。
【0095】
単安定マルチバイブレータ50は、単安定マルチバイブレータ40と同様に、2個のNAND回路51,52と、コンデンサ53と、抵抗54とによって構成されている。そして、コンデンサ53のキャパシタンス及び抵抗54の抵抗値も、それぞれ、単安定マルチバイブレータ40に含まれるコンデンサ43のキャパシタンス及び抵抗44の抵抗値と同じものを用いている。
【0096】
したがって、単安定マルチバイブレータ50も、トリガパルスとして、“H”から“L”に立ち下がるものが入力されたときに、つまり、NAND回路82の出力が“H”から“L”に切り替わったときに、動作を開始して、10msの時間長の矩形波パルスを出力する。
【0097】
しかし、NAND回路82は、単安定マルチバイブレータ40から“H”が出力されたとしても、直ちに“L”を出力しない。これは、NAND回路82は、コンデンサ81のキャパシタンスと抵抗80の抵抗値によって決まるCR時定数に応じた時間だけ遅れてから、“L”を出力するからである。
【0098】
図5(c)は、8msだけ遅延した時刻T2から、単安定マルチバイブレータ50が矩形波パルスの出力を開始する様子を示している。この遅延時間“8ms”は、商用電源200の周波数が“60Hz”である場合の半周期に相当する。なお、
図5(c)は、単安定マルチバイブレータ50の出力端子55から、つまり、
図4中、符号“E”で示される位置から出力された矩形波パルスの一例を示している。
【0099】
単安定マルチバイブレータ50の出力端子55は、NAND回路90の一方の入力端に接続されている。NAND回路90の他方の入力端は、上述した抵抗75と抵抗76との接点に接続されている。そして、NAND回路90の出力端は、単安定マルチバイブレータ60の入力端に接続されている。
【0100】
単安定マルチバイブレータ60も、単安定マルチバイブレータ40,50と同様に、2個のNAND回路61,62と、コンデンサ63と、抵抗64とによって構成されている。しかし、単安定マルチバイブレータ60は、単安定マルチバイブレータ40,50に対して、コンデンサ63のキャパシタンスと抵抗64の抵抗値が異なっている。つまり、単安定マルチバイブレータ60から出力される矩形波パルスの時間長が異なっている。
【0101】
単安定マルチバイブレータ60は、NAND回路90の出力が“H”から“L”に切り替わったときに、動作を開始する。NAND回路90の出力が“H”から“L”に切り替わる場合は、NAND回路90の2つの入力が、いずれも“H”である場合である。つまり、単安定マルチバイブレータ50が矩形波パルスを出力し、かつ、抵抗75と抵抗76との接点が“H”である場合である。換言すると、単安定マルチバイブレータ40が矩形波パルスを出力してから、半周期遅延して、単安定マルチバイブレータ50が矩形波パルスを出力している間に、次のアーク放電に応じた矩形波パルスが生成されたときに、単安定マルチバイブレータ60から矩形波パルスが出力される。
【0102】
図5(d)は、単安定マルチバイブレータ60の出力端子65、つまり、本実施形態のアーク放電検知装置100の出力端子対101-101´(
図4中、符号“F”で示される位置)から出力された矩形波パルスの一例を示している。
図5(d)に示すように、当該矩形波パルスは、時刻T4で、次のアーク放電の発生に基づいて生成された矩形波パルス(
図5(a)参照)の立ち上がりに同期して、発生している。なお、単安定マルチバイブレータ60が出力した矩形波パルスは、アーク放電が発生したことを知らせるためのものである。
【0103】
以上説明したように、本実施形態のアーク放電検知装置100は、アーク放電検知回路10から検知された、高周波信号に応じた電圧波形に基づいて、当該電圧波形の波形幅に応じた第1矩形波パルスを生成するとともに、当該第1矩形波パルスをトリガパルスとして、所定の時間長(例えば、10ms)の第2矩形波パルスを生成し、さらに、当該第2矩形波パルスをトリガパルスとして、当該第2矩形波パルスの発生時刻から所定時間(例えば、商用電源200の半周期である8ms)だけ遅延させて、所定の時間長(例えば、10ms)の第3矩形波パルスを生成し、当該第3矩形波パルスの生成中に、次の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されると、当該高周波信号は、アーク放電が原因の信号であると判定して、アーク放電の発生を知らせる第4矩形波パルスを外部に出力する。
【0104】
そして、上記所定の遅延時間(例えば、8ms)は、次の高周波信号についての不検知期間として機能する。つまり、アーク放電が原因の高周波信号は、続いて発生するとしても、隣接して発生する信号間の時間間隔は、通常、所定時間(例えば、8ms)以上空いている。したがって、当該所定時間以内に、次の高周波信号が発生した場合、その高周波信号は、アーク放電とは別の原因によるものと判定する必要がある。そこで、本実施形態のアーク放電検知装置100は、当該所定時間以内に、次の高周波信号が発生したとしても、その高周波信号を検知しないように、上記不検知期間を設けている。
【0105】
なお、本実施形態では、不検知期間として、商用電源周波数の半周期に相当する期間を採用しているが、これは、本発明が着目する次のアーク放電現象が次の半周期内に発生することが多いと考えるからである。そして、アーク放電が原因であると推定される高周波信号が発生してから次の半周期内に次のアーク放電が原因であると推定される高周波信号が発生した場合には、当該高周波信号は、アーク放電が原因であるものと判定(断定)しても、ほぼ間違いがないので、本実施形態では、当該高周波信号を2回検知しただけで、アーク放電の発生を知らせる信号を外部に出力するようにしている。
【0106】
このように、本実施形態のアーク放電検知装置100によれば、最初の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されてから、所定の不検知期間経過後に、次の高周波信号がアーク放電検知回路10から検知されると、当該高周波信号をアーク放電が原因の高周波信号と判定して、アーク放電の発生を示す信号を外部に出力するようにしたので、アーク放電検知回路10から検知される高周波信号の中から、アーク放電が原因となって発生する高周波信号を選択して検知でき、これにより、アーク放電の誤検知を防止することができる。
【0107】
また、本実施形態のアーク放電検知装置100では、アーク放電が原因となって発生する高周波信号に基づいて、アーク放電を検知するようにしたので、つまり、電圧降下をほとんど伴わないアーク放電も検知できるようにしたので、より初期段階の直列アークを確実に、かつ精度良く検知することが可能となる。
【0108】
次に、本発明の一実施の形態に係るアーク放電警報装置を説明する。
【0109】
本実施形態のアーク放電警報装置は、上述したアーク放電検知装置100の出力側に警報報知回路110を接続したものである。
【0110】
図4に示すように、アーク放電検知装置100の出力端子対101-101´は、警報報知回路110に接続されている。警報報知回路110は、単安定マルチバイブレータ60から矩形波パルスが出力されると、これに応じて警報報知を行う。ここで、警報報知の具体例としては、ブザー等の音による報知、赤色回転灯等の光による報知、バイブレータ等の振動による報知、等が考えられる。つまり、警報は、人が知覚できる態様で報知できれば、どのような態様のものを用いてもよい。
【0111】
このように、本実施形態のアーク放電警報装置によれば、アーク放電が発生すると、アーク放電が発生したことを人に直接知らせてくれるので、人は、アーク放電を原因とする火災などが発生する前に、その予防策を講じることができる。
【0112】
また、警報報知回路110に代えて、商用電源200の電路を遮断する遮断器を設けるようにしてもよい。これによれば、アーク放電が発生すると、自動的に商用電源200の電路が遮断されるので、人は、アーク放電を原因とする火災などに対する事前の予防策すら講じる必要がなくなる。
【0113】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
【0114】
(1)本実施形態のアーク放電検知装置では、不検知期間として、商用電源の電源周波数を基準に、その半周期に相当する時間(例えば、電源周波数が60Hzであるときには、8ms)を採用したが、これに限らず、1/4周期や1周期、あるいは、電源周波数とは無関係に、所定の時間等、アーク放電を原因としない高周波信号を検知しない時間であれば、どのような時間を採用してもよい。
【0115】
(2)本実施形態のアーク放電検知装置では、高周波信号を検知してから不検知期間が経過後、当該高周波信号に応じて生成された所定の時間長の矩形波パルスが発生している間に、次の高周波信号が検知された場合に、当該高周波信号とその前の高周波信号はいずれも、アーク放電を原因として発生したものであると判定して、アーク放電が発生したことを知らせるための信号(矩形波パルス)を外部に出力するようにしている。つまり、1つの高周波信号と、これに後続する1つの高周波信号の2つの高周波信号に基づいて、アーク放電が発生したことを判定しているが、この判定を、2つより多い数の高周波信号に基づいて、行うようにしてもよい。
【0116】
具体的には、前述した出力端子対101-101´と警報報知回路110との間に、カウンタを含む回路を挿入し、出力端子対101-101´から矩形波パルスが出力される度に、上記カウンタをカウントアップする。そして、カウンタのカウント値が、“2”以上の所定値になったときに、当該回路からアーク放電が発生したことを知らせるための信号を警報報知回路110に出力する。これにより、4つ以上の高周波信号に基づいて、アーク放電が発生したことの判定がなされるので、初期段階の直列アークの誤検知をさらに減少させることができる。
【0117】
あるいは、単安定マルチバイブレータ50から出力される矩形波パルスの時間長を、10msより長くして、その矩形波パルスがハイの状態で、後続する複数の高周波信号を検出可能にし、3つ以上の高周波信号に基づいて、アーク放電が発生したことの判定を行うようにしてもよい。
【0118】
(3)本実施形態のアーク放電検知装置では、アーク放電を原因とする高周波信号を検知する時間間隔として、10msを採用したが、これに限らず、アーク放電を原因とする高周波信号を検知できる時間であれば、どのような時間を採用してもよい。
【0119】
(4)本実施形態のアーク放電検知装置では、時間長の長い矩形波パルスを発生させるために、単安定マルチバイブレータを用いたが、これに限らず、非安定マルチバイブレータを用いてもよいし、他の回路を用いてもよい。要するに、必要な時間長の矩形波パルスを発生できれば、どのようなものを用いてもよい。ただし、他の回路を用いる場合でも、各回路を同様の構成にすると、当該アーク放電検知装置全体の回路構成を簡単化することができる。本実施形態のアーク放電検知装置では、3つの単安定マルチバイブレータ40,50,60(
図4参照)として、同一の回路構成のものを用いているが、これは、当該アーク放電検知装置全体の回路構成を簡単化するためである。
【0120】
(5)本実施形態のアーク放電検知装置では、前述した
図5(c)に示す矩形波パルスは、単安定マルチバイブレータ50によって生成されたものであるが、これに限らず、単安定マルチバイブレータ40によって生成された矩形波パルスを、遅延時間“8ms”だけ遅延させて用いるようにしてもよい。ただし、これを実現するためには、回路構成を変更する必要がある。
【0121】
(6)本実施形態のアーク放電検知装置では、アーク放電が発生したことを知らせる信号として、矩形波パルスを用いたが、パルス信号に限らず、正弦波やノコギリ波などの他の形状の信号でもよい。
【符号の説明】
【0122】
10…アーク放電検知回路、11,81…コンデンサ、12,80…抵抗、
13,13´…端子対、20…積分回路、21…ダイオード、
30…コンパレータ、40,50,60…単安定マルチバイブレータ、
71…フォトカプラ、71a…発光ダイオード、71b…フォトトランジスタ、
77…トランジスタ、82,90…NAND回路、110…警報報知回路、
200…商用電源、201…屋内配線。