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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】草刈作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/535 20060101AFI20220427BHJP
   A01D 34/54 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A01D34/535
A01D34/54
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018082084
(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2019187266
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 貴之
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-268444(JP,A)
【文献】特開昭58-155004(JP,A)
【文献】実公昭48-003763(JP,Y1)
【文献】特開2000-228901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0024225(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 59/00 - 59/06
A01B 63/14 - 63/32
A01D 34/42 - 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される走行車連結部を有する機体と、
この機体に設けられ、草刈作業をする作業体と、
前記機体に設けられ、作業対象面に接地して前記作業体の作業高さを設定する接地体と、
前記走行車に乗った作業者が操作する操作部を有し、この操作部の操作によって前記作業体の作業高さを調整可能な調整手段とを備え、
前記機体は、前記調整手段を支持する脱着可能な支持部材を有し、
一の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第1状態で取り付け、
前記一の走行車とは異なる他の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第2状態で取り付ける草刈作業機であって、
前記支持部材を前記第1状態から前記第2状態に変更することにより、前記操作部と前記走行車との間の距離を調整することが可能である
ことを特徴とする草刈作業機。
【請求項2】
走行車に連結される走行車連結部を有する機体と、
この機体に設けられ、草刈作業をする作業体と、
前記機体に設けられ、作業対象面に接地して前記作業体の作業高さを設定する接地体と、
前記走行車に乗った作業者が操作する操作部を有し、この操作部の操作によって前記作業体の作業高さを調整可能な調整手段とを備え、
前記機体は、前記調整手段を支持する脱着可能な支持部材を有し、
一の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第1状態で取り付け、
前記一の走行車とは異なる他の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第2状態で取り付ける草刈作業機であって、
前記支持部材は、前後反転させることによって前記第1状態から前記第2状態に変更可能である
ことを特徴とする草刈作業機。
【請求項3】
支持部材は、被取付部に脱着可能に取り付けられる取付部を下側に有し、かつ、調整手段を支持する支持部を上側に有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の草刈作業機。
【請求項4】
走行車に連結される走行車連結部を有する機体と、
この機体に設けられ、草刈作業をする作業体と、
前記機体に設けられ、作業対象面に接地して前記作業体の作業高さを設定する接地体と、
前記走行車に乗った作業者が操作する操作部を有し、この操作部の操作によって前記作業体の作業高さを調整可能な調整手段とを備え、
前記機体は、前記調整手段を支持する脱着可能な支持部材を有し、
一の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第1状態で取り付け、
前記一の走行車とは異なる他の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第2状態で取り付ける草刈作業機であって、
前記調整手段は、前記機体及び前記接地体間に架設された伸縮可能な手動伸縮体によって構成され、
前記手動伸縮体は、前記走行車に乗った作業者が操作する前記操作部を上端側に有する
ことを特徴とする草刈作業機。
【請求項5】
手動伸縮体は、
筒状部材と、
この筒状部材内にスライド可能に挿入され、前記筒状部材内からの突出長さを調整可能なスライド部材とを有する
ことを特徴とする請求項4記載の草刈作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈作業を行う草刈作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された草刈作業機が知られている。
【0003】
この従来の草刈作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される機体と、この機体に設けられ回転しながら草刈作業をする作業体と、機体に設けられ地面に接地して作業体の作業高さを設定するゲージ輪と、このゲージ輪を上下動させるためのハンドルとを備えている。
【0004】
ここで、トラクタには例えば3点リンク(作業機支持装置)の構成が異なる複数の種類が存在するため、トラクタと作業機の接続姿勢も多様である。それゆえ、トラクタによっては、ハンドル位置が遠くてトラクタに乗った作業者の手が届かない場合があったり、逆にハンドル位置が近すぎて作業機の最上げ時にハンドルがトラクタに干渉する場合があったりする。
【0005】
そこで、従来の草刈作業機では、そのような不具合を回避するために、例えば長さが異なる複数のハンドル(複数の交換部品)を予め用意しておき、トラクタに合わせて最適な長さのハンドルに交換するという方法で対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-268444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の草刈作業機のように、複数の交換部品を予め用意するには、その分コストが嵩み、その保管にも手間がかかるため、作業者への負担が大きい。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者の負担軽減を図ることができる草刈作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る草刈作業機は、走行車に連結される走行車連結部を有する機体と、この機体に設けられ、草刈作業をする作業体と、前記機体に設けられ、作業対象面に接地して前記作業体の作業高さを設定する接地体と、前記走行車に乗った作業者が操作する操作部を有し、この操作部の操作によって前記作業体の作業高さを調整可能な調整手段とを備え、前記機体は、前記調整手段を支持する脱着可能な支持部材を有し、一の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第1状態で取り付け、前記一の走行車とは異なる他の走行車に前記走行車連結部を連結して使用する場合には、前記支持部材を第2状態で取り付けるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業者の負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る草刈作業機(支持部材の第1状態時)の側面図である。
図2】同上草刈作業機の側面図(図1とは作業高さが異なる)である。
図3】同上草刈作業機の平面図である。
図4】同上草刈作業機の部分左側面図である。
図5】同上草刈作業機の部分右側面図である。
図6】同上草刈作業機の後方視の部分断面図である。
図7】同上草刈作業機のローラ支持部材の回動支点部分の断面図である。
図8】同上草刈作業機の要部背面図である。
図9】同上草刈作業機の要部側面図である。
図10図1におけるA矢視図である。
図11】同上草刈作業機(支持部材の第2状態時)の側面図である。
図12図11におけるB矢視図である。
図13】(a)は同上草刈作業機を一のトラクタに連結した状態の図であり、(b)は他のトラクタに連結した状態の図である。
図14】同上草刈作業機の調整手段の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一の実施の形態について図1ないし図13を参照して説明する。
【0013】
図中の1は草刈作業機で、この草刈作業機1は、例えば走行車であるトラクタTの後部に連結され、そのトラクタTの前進走行により前方(進行方向)に移動しながら草刈作業を行うものである。
【0014】
つまり、この草刈作業機1は、トラクタTの走行により前方へ移動しながら、作業対象面である地面Gに生えた草(刈取対象物)を所望の刈高さで刈り取って細かく破砕するものである。
【0015】
草刈作業機1は、トラクタTの後部の3点リンク(作業機支持装置)に連結される機体2と、この機体2に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら草刈作業をする作業体3とを備えている。
【0016】
また、草刈作業機1は、機体2に回動支点である回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能に設けられ、地面Gに接地して作業体3の作業高さ(刈高さ)を設定する接地体であるゲージローラ体4と、このゲージローラ体4及び機体2間に架設された伸縮可能な作業高さ調整用の手動伸縮体5とを備えている。
【0017】
そして、手動伸縮体5は、トラクタTに乗った作業者の手動操作(例えばハンドル操作)で伸縮動作するもので、この手動伸縮体5の伸び動作によってゲージローラ体4が機体2に対して回動中心軸線Xを中心として下方に回動し、この手動伸縮体5の縮み動作によってゲージローラ体4が機体2に対して回動中心軸線Xを中心として上方に回動する。
【0018】
それゆえ、トラクタTに乗った作業者は、トラクタTに乗ったまま手動伸縮体5の上端側の操作部であるハンドル部7を回転操作することによって、ゲージローラ体4を機体2に対して所望量回動させて作業体3の作業高さを調整することが可能である。
【0019】
すなわち、トラクタTに乗った作業者(図示せず)によるハンドル部(操作部)7の操作によってゲージローラ体4の上下位置を変更して作業体3の作業高さを調整可能な調整手段(刈高さ調整手段)8が、長手状の1本の手動伸縮体5によって構成されている。
【0020】
機体2は、トラクタTの後部の3点リンクに脱着可能に連結される走行車連結部である3点連結部11を有している。3点連結部11は、中央のトップピン12及び左右のロワピン13を有し、トップピン12はトップマスト14に取り付けられ、ロワピン13はロワアーム15に取り付けられている。
【0021】
そして、トップマスト14はマストフレーム16の前端側に取り付けられ、このマストフレーム16には、手動伸縮体5の上端側をタンブラ(回動部材)17を介して回動可能に支持する支持部材である支持フレーム(ハンドル枠)18が脱着可能に取り付けられている。
【0022】
具体的には、図8及び図9に示すように、マストフレーム16は、互いに離間対向する左右1対の板状部材16aと、これら両板状部材16aに固定された前後2つの円筒状のカラー部材16b,16cとを有している。また、トップマスト14は、互いに離間対向する左右1対の板状部材14aと、これら両板状部材14aに固定された上下2つの円筒状のカラー部材14b,14cと、トップピン12が取り付けられたコ字状部材(マスト部)14dとを有している。
【0023】
そして、マストフレーム16の両板状部材16aの上側部分によって被取付部(支持部材被取付部)20が構成され、この被取付部20には前側孔21及び後側孔22がそれぞれ形成されている。
【0024】
また一方、1つの支持フレーム18は、2つの取付手段23,24によってマストフレーム16の被取付部20の外側に脱着可能に取り付けられる取付部25を下側に有し、かつ、手動伸縮体5をタンブラ17を介して脱着可能に支持する長手状の支持部26を上側に有しており、この支持部26は取付部25の前部に一体に立設されている。
【0025】
また、取付部25には、被取付部20の前側孔21及び後側孔22に対応して第1孔27及び第2孔28がそれぞれ形成されている。つまり、取付部25の前後方向両端部に同じ孔27,28が形成されている。支持部26は、互いに離間対向する長手状の左右1対の対向板部分26aと、これら両対向板部分26aの長手方向に沿った端部同士を連結する連結板部分26bとによって構成されている。
【0026】
さらに、支持部26の各対向板部分26aの上端部には取付孔26cが形成され、この取付孔26cにタンブラ17が挿脱可能に挿入されている。つまり、タンブラ17は、支持部26の上端側に脱着可能に取り付けられており、このタンブラ17の挿通孔17aに手動伸縮体5のねじロッド81が挿通されている。
【0027】
そして、この図8及び図9に図示した状態は、支持フレーム18が取付手段23,24によってマストフレーム16の被取付部20に第1状態(支持部26が立った姿勢の状態)で取り付けられた状態である。つまり、この第1状態では、支持フレーム18の取付部25の第1孔27、マストフレーム16の被取付部20の前側孔21、及びトップマスト14のカラー部材14bの内部に取付手段23のボルト23aが挿入されてそのボルト23aにナット23bが螺合され、かつ、支持フレーム18の取付部25の第2孔28、マストフレーム16の被取付部20の後側孔22、及びマストフレーム16のカラー部材16cの内部に取付手段24のボルト24aが挿入されてそのボルト24aにナット24bが螺合されている。なお、前側の取付手段23によってトップマスト14及び支持フレーム18がマストフレーム16に対して共締めされている。
【0028】
また、支持フレーム18は、前後反転(前後が逆になる180度の回動)させることによって前記の第1状態(支持部26が立った姿勢の状態)から第2状態(支持部26が後傾した姿勢の状態)に変更可能であり、この第2状態では、支持フレーム18の取付部25の第2孔28、マストフレーム16の被取付部20の前側孔21、及びトップマスト14のカラー部材14bの内部に取付手段23のボルト23aが挿入されてそのボルト23aにナット23bが螺合され、かつ、支持フレーム18の取付部25の第1孔27、マストフレーム16の被取付部20の後側孔22、及びマストフレーム16のカラー部材16cの内部に取付手段24のボルト24aが挿入されてそのボルト24aにナット24bが螺合される(図11参照)。
【0029】
なお、マストフレーム16の被取付部20には、トップマスト14及び支持フレーム18のほか、ステー29の上端部が取付手段32で取り付けられている。つまり、ステー29の上端部の孔(図示せず)、マストフレーム16の被取付部20の孔(図示せず)、及びマストフレーム16のカラー部材16bの内部に取付手段32のボルト32aが挿入されて、そのボルト32aにナット32bが螺合されている。
【0030】
さらに、機体2は、左右方向中央部にミッションケース31を有し、このミッションケース31から入力軸33が前方に向かって突出している。入力軸33は、トラクタTのPTO軸にジョイントを介して接続され、この入力軸33に入力された動力が動力伝達手段(図示せず)によって作業体3まで伝達される。なお、動力伝達手段は、ミッションケース31内、パイプフレーム36内及びプーリーカバー37内に収納されている。
【0031】
また、機体2は、作業体3の上方を覆う左右方向長手状のカバー上板39と、作業体3の側方を覆う左右のカバー側板40とを有し、これら互いに離間対向する鉛直状の両カバー側板40のうちの左側のカバー側板40の外側には、箱形状のプーリーカバー37が配置されている。
【0032】
なお、左右の各カバー側板40は、側板本体部40aと、この側板本体部40aの下端部に取付具(ボルト及びナット等)30で脱着可能に取り付けられた脱着側板部40bとによって構成されている。
【0033】
作業体(草刈作業体)3は、機体2の両カバー側板40によって回転可能に支持され動力伝達手段からの動力で駆動回転する左右方向の回転軸41と、この回転軸41の各爪取付部42に取り付けられた刈爪(フレール爪)43とを有している。
【0034】
そして、図1から明かなように、機体2に対するゲージローラ体4の回動中心軸線(回動支点)Xは、側面視で、作業体3の回転軌跡内であって作業体3の回転軸41の後方側に位置する。より具体的には、側面視において、ゲージローラ体4の回動中心軸線Xは、作業体3の回転軸41よりも後方で刈爪43の回転軌跡内に位置し、かつ、作業体3の回転軸41の回転中心軸線Yよりも下方に位置する。
【0035】
ゲージローラ体4は、機体2のカバー側板40に左右方向の回動中心軸線Xを中心として上下方向に回動可能に設けられそのカバー側板40の外側に配置された左右の板状のローラ支持部材46と、これら両ローラ支持部材46によって回転可能に支持され作業体3よりも後方で地面Gに接地する左右方向長手状で円筒状の回転部材である1本のゲージローラ47とを有している。
【0036】
そして、互いに離間対向する鉛直状の両ローラ支持部材(ローラフレーム)46は、左右方向長手状で角筒状の連結部材48によって一体に連結されている。つまり、ゲージローラ体4は、左右の両ローラ支持部材46同士を連結する長手状の補強連結部材である連結部材48を有し、この連結部材48の左右方向両端部にローラ支持部材46の上側の所定部分が溶接等で固着されている。このため、ゲージローラ体4の強度向上を図ることができ、例えばローラ支持部材46が曲げ変形する等の不具合の発生を防止できる。また、この連結部材48の左右方向中央部には取付部材(伸縮体取付部材)49が固着され、この取付部材49には手動伸縮体5の下端部が回動可能に取り付けられている。
【0037】
また、連結部材48には、作業体3によって刈り取られた草が後方側へ飛散するのを防止する左右方向長手状で板状の飛散防止部材であるガード50が固着されている。ガード50は、機体2のカバー上板39に取り付けられたゴム板51の後方でかつゲージローラ47の上方に配置されている(図4参照)。
【0038】
また、両ローラ支持部材46間には、ゲージローラ47の外周面に付着した土等の付着物を除去する左右方向長手状で板状のスクレーパ52が架設され、このスクレーパ52には補強部材である補強パイプ53が固着されている。
【0039】
ここで、図4及び図6等に示すように、左側のローラ支持部材46は、ゲージローラ47のローラ本体部47aの側方を覆う側板部56と、この側板部56の上側外面に固着された長手状の補強板部57と、側板部56の下端側に固着されたボスガード部58とを有している。
【0040】
側板部56は、側面視で機体2のカバー側板40と重なる略三角形状の重なり部分59を前側に有し、この重なり部分59は、そのカバー側板40の外側近傍位置に配置されている。そして、外側の側板部56と内側のカバー側板40との間には、所定寸法の間隔60が存在する(図7参照)。このため、これら側板部56の内面とカバー側板40の外面とが互いに接触することがなく、ローラ支持部材46はカバー側板40に対してスムーズに上下方向に回動可能である。
【0041】
また、重なり部分59には回動中心軸線Xを中心とする円弧状の長孔(円弧孔)61が形成され、この長孔61に取付具30が挿入されている。このため、カバー側板40に対するローラ支持部材46の回動時において、取付具30とローラ支持部材46の側板部56とが互いに干渉するようなことがない。
【0042】
さらに、左側の側板部56は、円形状のボス用孔62を有し、このボス用孔62には円筒状のボス63が一体的に固着され、このボス63の内周側にベアリング64が設けられている。そして、ベアリング64によってゲージローラ47の左端の軸部47bの先端側が回転可能に支持され、この軸部47bの基端側外周には草巻付き防止用のカラー65が回転可能に装着されている。なお、図6中の66はグリスニップル、67は蓋、68は取付ボルト、69は座金、70は止め輪である。
【0043】
右側のローラ支持部材46は、図5に示すように、上述した左側のローラ支持部材46とは左右対称のものであるが、この右側のローラ支持部材46の側板部56には、取付部63aを有したボス63が脱着可能に取り付けられている。そして、図示しないが、右側のローラ支持部材46においても、左側のものと同様、ボス63の内周側のベアリング64によってゲージローラ47の右端の軸部47bの先端側が回転可能に支持され、この軸部47bの基端側外周には草巻付き防止用のカラー65が回転可能に装着されている。なお、草巻付き防止用のカラー65は、必ずしも必要なものではなく、当該カラー65を有しない構造でもよい。
【0044】
また、図3及び図7等に示すように、左右の各ローラ支持部材46は、取付手段71を介して機体2のカバー側板40の側板本体部40aに回動中心軸線Xを中心として上下回動可能に取り付けられている。
【0045】
取付手段71は、例えばボルト72、カラー73、座金74及びナット75によって構成されている。カバー側板40の側板本体部40aにはボルト用孔76が形成され、ローラ支持部材46の側板部56及び補強板部57にはカラー用孔77,78が形成されている。
【0046】
そして、カラー73がカラー用孔77,78に嵌入され、ボルト72がボルト用孔76からカラー73内に挿通され、このボルト72のねじ軸部72aにナット75が螺合されることによって、ローラ支持部材46がカバー側板40に上下回動可能に取り付けられている。
【0047】
手動式の伸縮体である手動伸縮体5は、図1図10図12等に示すように、ベアリング80によって回転可能に支持されたねじロッド(雄ねじ部材)81と、このねじロッド81に螺合された長手状の筒状部材であるねじパイプ(雌ねじ部材)82と、このねじパイプ82に取付ピン84によって脱着可能に取り付けられ下端部の取付部85が取付部材49に回動可能に取り付けられたスライド部材であるスライドパイプ(延長部材)83とを有している。
【0048】
このスライドパイプ83は、ねじパイプ82内にそのねじパイプ82の長手方向にスライド可能に挿入され、そのねじパイプ82内からの突出長さが調整可能となっている。すなわち例えば、スライドパイプ83の上端部には第1ピン用孔83aが形成され、スライドパイプ83の中間部には第2ピン用孔83bが形成され、これらピン用孔83a,83bの選択によってスライドパイプ83のねじパイプ82内からの突出長さを調整可能である。
【0049】
また、手動伸縮体5は、ねじロッド81を覆う円筒状のカバー86と、ねじロッド81の上端部にボルト88及びナット89で取り付けられた操作ハンドル87とを有している。そして、この操作ハンドル87は、トラクタTに乗った作業者がトラクタTに乗ったまま手動操作可能な位置に配置されている。なお、この操作ハンドル87によって、手動伸縮体5の上端側のハンドル部(調整手段8の操作部)7が構成されている。また、この操作ハンドル87の基端側の端面とタンブラ17との間にベアリング80が挟まれている。
【0050】
ねじロッド81は、ねじ溝91が外周面に形成された雄ねじ部92を有し、また、ねじパイプ82は、ねじ溝93が内周面に形成された雌ねじ部94を有している。また、この雌ねじ部94の外周側の凹部には、カバー86の内周面に摺接するブレ止め用のゴムリング95が設けられている。
【0051】
そして、ねじロッド81の雄ねじ部92にねじパイプ82の雌ねじ部94が螺合されている。このため、トラクタTに乗った作業者がトラクタTに乗ったまま操作ハンドル87を回転操作することで、ねじロッド81がその操作ハンドル87とともに所望量回転すると、このねじロッド81に対してねじパイプ82がスライドパイプ83とともに軸方向に移動する。その結果、手動伸縮体5が伸縮し、この伸縮に応じてゲージローラ体4が上下回動して所望状態に位置決め固定される。こうして、手動伸縮体5の伸縮に基づいて作業体3の作業高さの調整が行われる。
【0052】
次に、草刈作業機1の作用等を説明する。
【0053】
例えば地面Gの硬さ(土質)や刈取対象物等の状況に応じて、作業体3の作業高さ(刈高さ)を調整する場合、トラクタTのキャビン(運転席)Kに乗った作業者は、トラクタTのキャビンKに乗ったまま、後方に手を伸ばして手動伸縮体5のハンドル部7(言い換えると調整手段8の操作部)を把持して回転操作すればよい。
【0054】
例えばトラクタTのキャビンKに乗った作業者が操作ハンドル87を一方向(縮み方向)に回転操作すると、この操作に応じて手動伸縮体5が縮んで、ゲージローラ体4が機体2に対して回動中心軸線Xを中心として上方に回動し、その結果、作業体3の作業高さが低くなる。例えば図1に示す状態では、作業体3の作業高さH1は、約20mmである。
【0055】
他方、例えばトラクタTのキャビンKに乗った作業者が操作ハンドル87を他方向(伸び方向)に回転操作すると、この操作に応じて手動伸縮体5が伸びて、ゲージローラ体4が機体2に対して回動中心軸線Xを中心として下方に回動し、その結果、作業体3の作業高さが高くなる。例えば図2に示す状態では、作業体3の作業高さH2は、約60mmである。
【0056】
そして、このような作業体3の作業高さの調整後、トラクタTの走行により草刈作業機1を進行方向に向けて移動させると、作業体3が回転しながら草刈作業をする。
【0057】
この際、ゲージローラ体4は、地面Gに接地した状態で走行しながら、作業体3の作業高さを保持する。それゆえ、作業体3は、ゲージローラ体4によって設定された作業高さをもって前方へ移動しつつ回転するため、地面Gに生えた草を所望の刈高さで刈り取って細かく破砕する。
【0058】
ここで、例えば図13(a)に示す一のトラクタT(以下では「トラクタTa」という場合がある)を使用する場合には、支持フレーム18をマストフレーム16の被取付部20に第1状態で取り付ければ何ら不具合は生じないが、図13(b)に示す他のトラクタT(トラクタTaとは3点リンクの構成が異なるもので、以下では「トラクタTb」という場合がある)を使用する場合には、第1状態では手動伸縮体5のハンドル部7がトラクタTbのキャビンKに接近しすぎて草刈作業機1の最上げ時にそのハンドル部7がキャビンKの一部(例えば後方へ開いた後窓等)に干渉する不具合が生じるおそれがある。
【0059】
そこで、かかる不具合を回避するためには、支持フレーム18の前後を逆にすることで第1状態から第2状態に変更して、この変更後の支持フレーム18をマストフレーム16の被取付部20に第2状態で取り付ければよい。
【0060】
つまり、図13(b)の如く、支持フレーム18をマストフレーム16の被取付部20に第2状態で取り付けると、ハンドル部7とキャビンKとの間の距離L2が、図13(a)の場合における距離L1と略同一になる。よって、草刈作業機1の最上げ時(上昇時)に、ハンドル部7とキャビンKとが互いに干渉する不具合は生じない。なお、支持フレーム18を第2状態にして取り付ける際には、取付ピン84を第2ピン用孔83bに挿入してスライドパイプ83のねじパイプ82内からの突出長さを短くする。
【0061】
また、このようにトラクタTbを使用する場合に支持フレーム18を第2状態で取り付ければ何ら不具合は生じないが、トラクタTaを使用する場合には第2状態では逆にハンドル部7がキャビンKから離れすぎて作業者の手が届かないという不具合が生じるおそれがある。
【0062】
そして、この不具合を回避するためには、支持フレーム18の前後を逆にすることで第2状態から第1状態に変更して、この変更後の支持フレーム18をマストフレーム16の被取付部20に第1状態で取り付ければよい。
【0063】
つまり、図13(a)の如く、支持フレーム18をマストフレーム16の被取付部20に第1状態で取り付けると、ハンドル部7とキャビンKとの間の距離L1が、図13(b)の場合における距離L2と略同一になる。よって、トラクタTのキャビンKに乗った作業者の手が届かないという不具合は生じない。なお、支持フレーム18を第1状態にして取り付ける際には、取付ピン84を第1ピン用孔83aに挿入してスライドパイプ83のねじパイプ82内からの突出長さを長くする。
【0064】
このように、図13(a)に示す第1の場合(標準3点リンクを有するトラクタTaを使用する場合)及び図13(b)に示す第2の場合(特殊3点リンクを有するトラクタTbを使用する場合)のいずれの場合であっても、異なる3点リンクによる草刈作業機1の最上げ時におけるハンドル部7とキャビンKとの間の距離が略同じとなり、トラクタTに乗った作業者に対するハンドル部7の位置が同じ位置(略同じ位置を含む)となる。
【0065】
そして、上記草刈作業機1によれば、機体2は調整手段8を支持する脱着可能な支持フレーム18を有し、一のトラクタTaの3点リンクに機体2の3点連結部11を連結して使用する場合にはその支持フレーム18を第1状態で被取付部20に取り付け、一のトラクタTaとは異なる他のトラクタTbの3点リンクに機体2の3点連結部11を連結して使用する場合にはその支持フレーム18を第1状態とは前後逆の第2状態で同じ被取付部20に取り付けることによって、部品交換を伴わず、複数種類の各トラクタTに対応する適切な位置にハンドル部7を配置できる。したがって、従来とは異なりトラクタごとの長さが異なる複数のハンドル(複数の交換部品)を予め用意しておく必要がなく、交換部品のコストの無駄等を防止でき、よって作業者の負担軽減を図ることができる。
【0066】
また、トラクタTに乗った作業者は、トラクタTに乗ったまま、適切な位置にあるハンドル部7を操作してゲージローラ体4を機体2に対して所望量回動させることで、作業体3の作業高さを容易かつ適切に調整でき、よって精度の高い草刈作業が可能となる。
【0067】
さらに、機体2に対するゲージローラ体4の回動支点(回動中心軸線X)は、側面視で作業体3の回転軌跡内に位置するため、ゲージローラ47を作業体3側に近付けることができ、コンパクト化を図ることができ、しかも手動伸縮体5の長さを比較的短くすることができる。
【0068】
なお、草刈作業機1の手動伸縮体(作業高さ調整用の調整手段8)5は、図10等に示すスライドパイプ83を有した構成には限定されず、例えば図14に示すように、スライドパイプ83を有さず、ねじロッド81やねじパイプ82等を長くした構成でもよく、この構成ではねじパイプ82の下端部に取付部85が形成され、この取付部85が取付部材49に回動可能に取り付けられる。
【0069】
また、作業高さを設定する接地体は、ゲージローラ体4からなるものには限定されず、例えばゲージ輪等からなるものでもよい。
【0070】
さらに、調整手段を支持する支持部材は、例えば被取付部に対する取付位置の選択によって第1状態から第2状態に変更可能なもの等でもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 草刈作業機
2 機体
3 作業体
4 接地体であるゲージローラ体
5 手動伸縮体
7 操作部であるハンドル部
8 調整手段
11 走行車連結部である3点連結部
18 支持部材である支持フレーム
20 被取付部
25 取付部
26 支持部
82 筒状部材であるねじパイプ
83 スライド部材であるスライドパイプ
T 走行車であるトラクタ
G 作業対象面である地面
図1
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