IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧 ▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-非水電解質二次電池 図1
  • 特許-非水電解質二次電池 図2
  • 特許-非水電解質二次電池 図3
  • 特許-非水電解質二次電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20220427BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220427BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20220427BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20220427BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20220427BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/052
H01M50/107
H01M50/119
H01M50/531
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019544302
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2018025742
(87)【国際公開番号】W WO2019064806
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2017189366
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104732
【弁理士】
【氏名又は名称】徳田 佳昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164035
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 正人
(72)【発明者】
【氏名】石黒 祐
(72)【発明者】
【氏名】見澤 篤
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-012813(JP,A)
【文献】特開平8-153542(JP,A)
【文献】特開2012-178237(JP,A)
【文献】特開平6-052867(JP,A)
【文献】特開平5-101815(JP,A)
【文献】特開2010-186740(JP,A)
【文献】特表2010-533952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 10/052
H01M 50/107
H01M 50/119
H01M 50/531
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板及び正極板がセパレータを介して巻回され、上部及び下部の周回テープによって固定された電極体と、
非水電解質と、
前記電極体及び前記非水電解質を収容する有底筒状の電池缶と、
前記電池缶の開口部を封止する封口体とを備える非水伝電解質二次電池であって、
前記負極板が巻回方向の内周側及び外周側の端部のそれぞれに負極活物質層が形成されていない第1負極集電体露出部及び第2負極集電体露出部を有し、
負極集電リードが前記第1負極集電体露出部に接合され、前記第2負極集電体露出部の少なくとも一部が前記電池缶の内壁と接触し、
正極板は負極集電リードより外周側の一部において、正極活物質層が形成されていない第1正極集電体露出部を有し、
正極集電リードが前記第1正極集電体露出部に接合されており、
電極体の巻回軸と垂直な平面において、巻回軸と前記正極集電リードの中心を結ぶ第1半直線と、巻回軸と負極板の負極活物質層の外周側の終端部と正極板の外周側の終端部との中心とを結ぶ第2半直線とが一致しない、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記第1半直線と前記第2半直線がなす角が20~160°である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記電極体の巻回軸と垂直平面において、
放電時における、前記電極体の外径と前記電池缶の外径との比(電極体の外径/電池缶の外径)が0.97以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記電極体の巻回軸と垂直平面において、
前記電極体の真円度が0.98以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極板の終端部から前記負極活物質層の外周側の終端部までの長さが4mm以上である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記正極の終端部と前記負極活物質層の外周側の終端部とが、巻回軸と前記正極集電リードの中心を結ぶ直線によって分けられる領域の一方にのみ配置されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量化に適した集電構造を有する非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池はスマートフォン、タブレット型コンピュータ、ノートパソコン及び携帯型音楽プレイヤーなどの携帯型電子機器の駆動電源として広く用いられている。非水電解質二次電池の用途は電動工具、電動アシスト自転車及電気自動車などに拡大しており、非水電解質二次電池には高出力化が求められている。
【0003】
非水電解質二次電池の極板には金属箔からなる集電体上に活物質層が形成されており、極板の一部に集電体上に活物質層が形成されていない集電体露出部が設けられている。その集電体露出部に集電リードを接続することにより、極板と外部端子との間の電流経路が確保される。
【0004】
ところが、負極の集電リードを極板最外周の集電体露出部に接続し集電をとると、一本の電極リードに電流が集中するため、出力を確保することが出来ない。そこで、例えば特許文献1では、電極最外周において最外周の電極と缶とを面接触させることによって、高出力型の非水電解質二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007―128747号公報
【発明の概要】
【0006】
一方、本発明は電極群最外周を負極と接触させると共に、内周部に負極集電リードを設けることによって、非水電解質二次電池において高出力化を図った。さらに高容量化をするために、電極体の径を大きくした。しかしながら、電極体を固定し、電池缶に挿入するために電極群の上部及び下部に周回テープを巻く必要があり、さらに、周回テープの厚みによる段差と巻回電極体の膨張収縮の応力によって負極合剤の割れ目が形成され、サイクル維持率が悪化するという課題があった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、負極集電リードと電池缶との電気的接続によって出力特性を向上させると共に、最外周の負極合剤層の割れ目を抑制させる非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
上記課題を解決するために本発明の一態様に係る非水電解質二次電池は、負極板及び正極板がセパレータを介して巻回され、上部及び下部を周回テープによって固定された電極体と、非水電解質と、電極体及び非水電解質を収容する有底筒状の電池缶と、電池缶の開口部を封止する封口体とを備え、
負極板が内周側及び外周側の端部のそれぞれに負極活物質層が形成されていない第1負極集電体露出部及び第2負極集電体露出部を有し、負極集電リードが第1負極集電体露出部に接合され、第2負極集電体露出部の少なくとも一部が電池缶と接触し、
正極板は負極集電リードより外周側の少なくとも一部において、正極活物質層が形成されていない第1正極集電体露出部を有し、正極集電リードが第1正極集電体露出部に接合されており、電極体の巻回軸と垂直な平面において、巻回軸と正極集電リードの中心を結ぶ第1半直線と、巻回軸と負極板の負極活物質層の外周側の終端部と正極板の外周側の終端部との中心とを結ぶ第2半直線とが一致しないことを特徴としている。
【0009】
本発明の一態様によれば、電極体の膨張収縮によって最も応力が集中する電極体軸と正極集電リードの中心を結ぶ半直線上の真円度を高めることができ、周回テープの段差部の応力の集中を緩和することができる。したがって、充放電サイクルを繰り返しても、電極体内の割れ目の形成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の断面斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の負極板の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の正極の平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の電極体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0012】
図1は本発明の一実施形態である非水電解質二次電池10の断面斜視図である。有底筒状の電池缶21に電極体16と非水電解質が収容されている。電池缶21の開口部の近傍に形成された溝入れ部にガスケット19を介して封口体20をかしめ固定することにより電池内部が密閉されている。
【0013】
負極板11は、図2に示すように、負極集電体上に形成された負極活物質層11aを有している。負極活物質層11aは負極集電体の少なくとも一方の面に形成されていればよい。負極板11の長さ方向の両端部に負極集電体の両面に負極活物質層11aが形成されていない負極集電体露出部が設けられている。電極体16を作製する際、負極板11と正極板13は長さ方向に沿って巻回されるため、負極集電体露出部はそれぞれ電極体の内周側及び外周側の端部に配置される。ここでは、内周側の負極集電体露出部を第1負極集電体露出部11bとし、外周側の負極集電体露出部を第2負極集電体露出部11cとする。負極集電リード12は第1負極集電体露出部11bに接合されている。接合方法としては、抵抗溶接、超音波溶接、及びレーザ溶接などの溶接法、並びにグサリ法が例示される。
【0014】
負極活物質層11aは、負極活物質と結着剤を分散媒中で混練して作製した負極合剤スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥して形成することができる。乾燥後の負極活物質層11aはローラーで所定厚みになるように圧縮することが好ましい。負極活物質層11aを圧縮することで非水電解質二次電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0015】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出することができる炭素材料やリチウムと合金化することができる金属材料を用いることができる。炭素材料としては、天然黒鉛及び人造黒鉛などの黒鉛が例示される。金属材料としては、ケイ素及びスズ、並びにこれらの酸化物が挙げられる。炭素材料及び金属材料は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、充放電に伴う体積変化の大きいケイ素やスズの酸化物を含む負極活物質を用いることによって、本発明の効果をより明確に得ることが明確に得ることができる。
【0016】
負極集電体としては、例えば、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、及びステンレス鋼から形成された金属箔を使用することができる。これらの中で、銅及び銅合金から形成された金属箔が好ましい。また、負極集電リード12としては、負極集電体に例示された金属からなる金属板を用いることが好ましい。
【0017】
正極板13は、正極集電体上に形成された正極活物質層を有している。正極活物質層は正極集電体の少なくとも一方の表面に形成されていればよい。正極板13の少なくとも一部に正極集電体露出部が設けられている。正極集電体露出部は、正極集電リード14が正極集電体露出部に接合されている。接合方法としては、抵抗溶接、超音波溶接、及びレーザ溶接などの溶接法、並びにグサリ法が例示される。
【0018】
正極集電体露出部は、正極集電体の巻回方向端部以外の領域(例えば、両方の端部から正極集電体の長さの20%以上の距離を離れた位置)に形成されている。これにより、抵抗が小さくなる。この場合、正極集電リードは、巻回式電極群の内部領域から突出する。内部領域とは、巻回式電極群の軸方向と垂直な断面を見たとき、最内周と最外周との中央に位置する中心円から、最外周側に最内周と最外周との距離の30%までの領域と、上記中心円から最内周側に最内周と最外周との距離のまでの領域とを合わせた領域である。言い換えれば、正極集電体露出部は、内部領域から正極集電リードが突出するように、配置されている。
【0019】
正極集電リード上と、正極集電リードが接合された正極集電体の裏面には絶縁テープを貼り付けることが好ましい。これにより、正極集電リードに起因する内部短絡を防止することができる。
【0020】
正極活物質層は、正極活物質と導電剤と結着剤を分散媒中で混練して作製した正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して形成することができる。乾燥後の正極活物質層はローラーで所定厚みになるように圧縮することが好ましい。正極活物質層を圧縮することで非水電解質二次電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0021】
正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出することができるリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、一般式LiMO(MはCo、Ni、及びMnの少なくとも1つ)、LiMn及びLiFePOが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。Al、Ti、Mg、及びZrからなる群から選ばれる少なくとも1つをリチウム遷移金属複合酸化物に添加し、又は遷移金属元素と置換して用いることもできる。
【0022】
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、及びステンレス鋼から形成された金属箔を使用することができる。これらの中で、アルミニウム及びアルミニウム合金から形成された金属箔が好ましい。また、正極集電リードとしては、正極集電体に例示された金属からなる金属板を用いることができる。
【0023】
電極体16は、負極板11と正極板13とをセパレータ15を介して巻回し、周回テープで電極体の上部及び下部を固定して作製される。負極板11は、負極集電リード12が溶接された側の端部を巻き始めとするように、巻回されており、負極集電リード12は電極体の下方向に突出し、正極集電リード14は電極体の上方向に突出している。
【0024】
正極13の巻終わり端部及び負極の塗工端を図3に示す。電極体16は負極11が最外周に形成されるように巻回されており、セパレータを介して正極板が対向している。
【0025】
負極11は、負極集電体の内周面と外周面に負極活物質層11aが形成されている。負極活物質層11aの塗工端は、内周面と外周面とで異なっており、外周面側よりも内周面側の負極活物質層の塗工端が外周側で終端している。負極集電体はさらに延伸しており、少なくとも電極体一周分以上巻回して終端している。
【0026】
正極13は、正極集電体の内周面と外周面に正極活物質層13aが形成されている。正極活物質層13aの内周面と外周面の塗工端は略同一位置であり、正極集電体も略同一の位置で終端している。
【0027】
この時、負極活物質層11aの最外周である塗工端(すなわち内周面側の塗工端)と正極板の終端部の中心と巻回軸とを結ぶ半直線(第2半直線)と、正極集電リードの中心部と巻回軸とを結ぶ半直線(第1半直線)とが一致しないように、負極活物質層11aと正極13と正極集電リード14を配置する。このように配置することによって、充放電によって最も膨張収縮応力が働く巻回軸と正極集電リード14を結ぶ半直線方向に、真円度の高い電極体の最外周面を配置することができ、サイクルによる活物質層の割れ等を抑制することができる。
【0028】
第1半直線と第2半直線のなす角は、例えば20度以上160度以下であり、30度以上150度以下が好ましく、さらに70度以上110度以下が好ましく、特に85度以上95以下である。
【0029】
また、正極13の終端部と軸中心とを結ぶ半直線と、負極活物質層11aの終端部と軸中心とを結ぶ半直線とがなす角の間に第1半直線がないことが好ましい。言い換えると、巻回軸と前記正極集電リードの中心を結ぶ直線によって分けられる領域のどちらか一方に、正極端及び負極活物質層端の両方ともが配置されている。
【0030】
なお、正極13の終端部から負極活物質層11aの終端部までの長さは、例えば4mm以上であり、さらに好ましくは7mm以上である。
【0031】
また、電極体16の巻回軸と垂直平面において、放電時における、前記電極体16の外径と電池缶21の外径との比(電極体16の外径/電池缶21の外径)が0.97以上とすると、特に高エネルギー密度化の観点で好ましい。またこのように、比較的大きな電極体16を挿入するために、上記のように正極13の終端部と負極活物質層11aの終端部と正極集電リード14位置を適切に配置することによって、電極体の真円度を高めることができる。電極体の真円度は0.98以上にすることが好ましい。
【0032】
有底筒状の電池缶21は、例えば金属板を絞り加工することにより作製することができる。その金属板に用いることのできる金属として、鉄、ニッケル、及びステンレスが例示される。鉄を用いる場合はその表面にニッケルめっきをすることが好ましい。
【0033】
セパレータ15としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィンを主成分とする微多孔膜を用いることができる。微多孔膜は1層単独で、又は2層以上を積層して用いることができる。2層以上の積層セパレータにおいては、融点が低いポリエチレン(PE)を主成分とする層を中間層に、耐酸化性に優れたポリプロピレン(PP)を表面層とすることが好ましい。セパレータには酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)及び酸化ケイ素(SiO)のような無機粒子を添加することができる。このような無機粒子はセパレータ中に担持させることができ、セパレータ表面に結着剤とともに塗布することもできる。セパレータの表面にアラミド系の樹脂を塗布することもできる。
【0034】
非水電解質として、非水溶媒中に電解質塩としてのリチウム塩を溶解させたものを用いることができる。
【0035】
非水溶媒として、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状カルボン酸エステルを用いることができ、これらは2種以上を混合して用いることが好ましい。環状炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネート(BC)が例示される。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のように、水素の一部をフッ素で置換した環状炭酸エステルを用いることもできる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)などが例示される。環状カルボン酸エステルとしてはγ-ブチロラクトン(γ-BL)及びγ-バレロラクトン(γ-VL)が例示され、鎖状カルボン酸エステルとしては酢酸メチル(MA)、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート及びメチルプロピオネートが例示される。
【0036】
リチウム塩として、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiAsF、LiClO、Li10Cl10及びLi12Cl12が例示される。これらの中でもLiPFが好ましく、非水電解液中の濃度は0.5~2.0mol/Lであることが好ましい。LiPFにLiBFなど他のリチウム塩を混合することもできる。
【実施例
【0037】
本発明の実施形態について、以下に具体的な実施例を用いてより詳細に説明する。
【0038】
(実施例1)
(負極板の作製)
負極活物質としての黒鉛とSiOを95:5で混合し、増粘剤としての1.5質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としての1.5質量部のスチレンブタジエンゴムを混合した。その混合物を分散媒としての水へ投入し、混練して負極合剤スラリーを作製した。その負極合剤スラリーを、厚み8μmの銅製の負極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、乾燥して負極活物質層11aを形成した。このとき、完成した負極板11の長さ方向の両端部に対応するそれぞれの位置に第1負極集電体露出部11bと第2負極集電体露出部11cを設けた。次いで、負極活物質層11aをローラーにより圧縮し、圧縮された極板を所定サイズに切断した。最後に、第1負極集電体露出部11bに負極集電リード12を超音波溶接で接合して図2に示す負極板11を作製した。
【0039】
(正極板の作製)
正極活物質として100質量部のLiNi0.82Co0.15Al0.03と、導電剤としての1質量部のアセチレンブラックと、結着剤としての0.9質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合した。その混合物を分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に投入し、混練して正極合剤スラリーを調製した。その正極合剤スラリーをドクターブレード法により厚みが15μmのアルミニウム製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成した。このとき、完成した正極板13の中央部に対応する位置に正極集電体露出部を設けた。次いで、正極活物質層をローラーにより圧縮し、圧縮された極板を所定サイズに切断した。最後に、正極集電体露出部に正極集電リード14を超音波溶接で接合して正極板13を作製した。
【0040】
(電極体の作製)
負極板11及び正極板13を、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ15を介して巻回することにより電極体16を作製した。電極体16の作製の際、第1負極集電体露出部11bを電極体16の内周側に配置し、第2負極集電体露出部11cを電極体16の外周側に配置した。さらに、第2負極集電体露出部11cが電極体16の最外周部に配置されるようにセパレータの長さを調整した。電極体16の上下部をそれぞれ巻き止めテープで固定した。
【0041】
(非水電解質の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を30:70の体積比(1気圧、25℃)で混合して非水溶媒を調製した。この非水溶媒に電解質塩としてのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を1mol/Lの濃度で溶解して非水電解質を調製した。
【0042】
(非水電解質二次電池の作製)
環状の絶縁板17を電極体16の下部の端面に貼り付けた。その際、負極集電リード12の電極体16の端面からの突出部12aを絶縁板17の開口部に挿入した。そして図3に示すように、負極集電リード12の突出部12aを電極体16の端面上及び電極体16の外周側面上に沿って折り曲げた後、有底筒状の電池缶21の開口部から電極体16を挿入した。なお、負極集電リード12を電池缶21の底部に溶接により接合した。
【0043】
次に、電極体16の上部に絶縁板18を配置し、電池缶21の開口部の近傍の外側面に回転する円板を押し当てて溝入れ加工を行った。その溝入れ部にガスケット19を配置し、正極集電リード14を封口体20に接続した。そして、非水電解質を電池缶21の内部へ注入した後、封口体20を電池缶の溝入れ部にガスケット19を介してかしめ固定することにより図1に示す円筒形の非水電解質二次電池10を作製した。
【0044】
実施例1では、正極端部と負極活物質層端部との距離を5mm、第1半直線と第2半直線の角度を30度とした。なお、電池サイズはいわゆる18650セルとし、容量2.6Ahとした。
【0045】
(実施例2~8)
正極端部と負極活物質層端部との距離と、第1半直線と第2半直線の角度を表1に記載のようにする以外は実施例1と同様に作製した。
【0046】
(比較例1)
第1半直線と第2半直線の角度を0度、すなわち一致するようにした以外は実施例1と同様に作製した。
【0047】
(サイクルによる評価)
実施例1~8及び比較例1の各電池を作製し、それぞれの電池を1.0Itの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vの定電圧で電流が0.02Itになるまで充電した。20分の休止後、各電池を1.0Itの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電をした。このサイクルを45℃環境下で500サイクル行い、サイクル維持率を測定した。なお、初期容量に対する500サイクル時の容量維持率をサイクル維持率とした。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~8と比較例1の結果を比較すると、第1半直線と第2半直線とを一致しないようにずらすことによって、サイクル特性が良化することが確認できた。さらに、実施例3のサイクル特性が最も優れていることが確認できた。つまり90度に近づけば近づくほど良好な結果が得られることが分かった。
【0050】
次に、実施例1と実施例7、実施例3と実施例8とを比較すると、正極終端と負極合剤終端部との距離がながくなることによって、さらにサイクル特性が優れていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。そのため、本発明の産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0052】
10 非水電解質二次電池
11 負極板
11a 負極活物質層
11b 第1負極集電体露出部
11c 第2負極集電体露出部
12 負極集電リード
12a 突出部
13 正極板
14 正極集電リード
15 セパレータ
16 電極体
17 絶縁板
18 絶縁板
19 ガスケット
20 封口体
21 電池缶
図1
図2
図3
図4