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  • 特許-筒型リニアモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018201762
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020068624
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】柿内 隆司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-210048(JP,A)
【文献】実開昭55-094167(JP,U)
【文献】特開2010-246346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127175(US,A1)
【文献】特開2010-279121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
F16F 15/03
B60G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石を有する筒状の界磁と、
前記界磁の内周に軸方向移動自在に挿入される電機子と、
筒状であって前記界磁の軸方向端部に対向する段部と前記界磁の内周或いは外周に配置される筒部とを有して前記界磁を保持する界磁保持部材と、
前記段部と前記界磁の軸方向端部との間に介装されるスペーサとを備え、
前記界磁保持部材における前記段部と前記筒部との境に湾曲面あるいはテーパ面を有し、
前記スペーサは、前記段部に面する端面に前記湾曲面あるいは前記テーパ面への当接を避ける逃げ部を有する
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、外筒の内周に軸方向にS極とN極とが交互に並ぶように収容される複数の永久磁石を有する界磁と、界磁の内周に移動自在に挿入される電機子と、界磁を保持する筒状のヨークとを備えるものがある。
【0003】
このように構成された筒型リニアモータでは、ヨークが内周に全周に亘って形成される環状溝を備えており、積層された永久磁石で構成される界磁がヨークに形成された環状溝内に収容されてヨークに固定されている。より詳しくは、ヨークの内周に設けられた環状溝は、界磁の軸方向端部に面する一対の環状の側面と、界磁の外周に対向する円筒形の底面とでなり、界磁は、一対の側面で挟持されてヨークに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-29159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の筒型リニアモータは、電機子の巻線への通電によって電機子と界磁との間に生じる吸引力で電機子を駆動するが、電機子が界磁に対して移動するとその反力として界磁にも軸方向の荷重(軸力)が作用する。
【0006】
界磁に作用する軸力をヨークで受け止めるが、界磁の軸力はヨークの側面に作用してヨークにせん断力を与え、ヨークの断面で見ると側面と底面とが直交するため側面と底面との境の断面形状の変化が大きいため前記境に応力が集中してしまう。
【0007】
よって、従来の筒型リニアモータでは、このような応力集中にも耐えうるようにヨークの肉厚を厚くする必要があり、質量が嵩張り、質量当たりの推力である質量推力密度を低下させてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、質量推力密度を向上できる筒型リニアモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石を有する筒状の界磁と、界磁の内周に軸方向移動自在に挿入される電機子と、筒状であって界磁の軸方向端部に対向する段部と界磁の内周に配置される筒部とを有して界磁を保持する界磁保持部材と、段部と界磁の軸方向端部との間に介装されるスペーサとを備え、界磁保持部材における段部と筒部との境に湾曲面あるいはテーパ面を有し、スペーサは、段部に面する端面に湾曲面への当接を避ける逃げ部を有している。
【0010】
このように構成された筒型リニアモータでは、電機子を軸方向に駆動する際に反力として界磁保持部材の段部に軸力が作用しても、段部と筒部との境の部分への応力集中を緩和できるとともにスペーサと段部との接触圧力を低減できるので、筒型リニアモータの質量を軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の筒型リニアモータによれば、質量推力密度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石10a,10bを有する筒状の界磁6と、界磁6の内周に軸方向移動自在に挿入される電機子2と、筒状であって界磁6を保持する界磁保持部材9と、界磁6と界磁保持部材9との間に介装されるスペーサ40とを備えて構成されている。
【0014】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3と巻線5とを備えて構成されている。コア3は、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース3bとを備えて構成されている。
【0015】
コア3は、前述の通り筒状であって、図1に示すように、コア本体3aの外周に軸方向に等間隔に並べて設けられた10個のティース3bを備えており、ティース3b,3b間には、巻線5が装着される空隙でなるスロット4が形成されている。また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット4が合計で9個設けられている。そして、このスロット4には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相巻線、V相巻線およびW相巻線の三相の巻線で構成されている。9個のスロット4には、図1中左側から順に、W相、W相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相が装着されている。
【0016】
そして、電機子2は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着されている。ロッド11は、筒状の第一ロッド20と、筒状であって外周にコア3が装着されるとともに第一ロッド20の内周に螺合される第二ロッド21とを備えている。
【0017】
第一ロッド20は、筒状であって図1中左端外周と図1中右端内周にそれぞれ螺子部22a,22bを有するロッド本体22と、筒型リニアモータ1を機器へ取り付けるブラケット23aを有してロッド本体22の図1中左端の螺子部22aに螺着されてロッド本体22の左端を閉塞するエンドキャップ23とを備えている。
【0018】
また、ロッド本体22の図1中右端外周には、環状のスライダ25が嵌合されている。スライダ25は、後述する筒部9bの内周に摺接する摺接部25aと、摺接部25aの図1中左方側であるロッド11の基端側に設けられた外径が摺接部25aよりも小径な小径部25bと、小径部25bの外周に周方向に沿って設けられた環状溝25cと、図1中右端内周に設けられたフランジ25dとを備えている。そして、スライダ25の環状溝25cには、弾性体としてのゴム製のシールリング26が装着されている。また、スライダ本体25dの内径は、ロッド本体22の内径以上であってロッド本体22の外径以下となっており、スライダ25をロッド本体22に嵌合するとスライダ本体25dがロッド本体22の図1中右端面に当接する。
【0019】
第二ロッド21は、外周にコア3が装着される筒状のコア保持筒21aと、コア保持筒21aの図1中右端となる先端の外周に設けられる環状のスライダ21bとを備えている。また、コア保持筒21aの図1中左端となる基端の外周には、螺子部21cが設けられており、コア保持筒21aの基端側内周には内径が他の部位よりも大きな内径大径部21dが設けられている。そして、コア保持筒21aの基端を第一ロッド20におけるロッド本体22の図1中右端の内周に挿入しつつ螺子部21cを螺子部22bに捩じ込むと、第一ロッド20と第二ロッド21とが連結される。このようにロッド11は、本実施の形態では、第一ロッド20と第二ロッド21とで構成されて筒状とされている。
【0020】
また、第二ロッド21におけるコア保持筒21aの外周には、コア3が嵌合されて装着されている。コア保持筒21aの外径は、第一ロッド20におけるロッド本体22の外径よりも小径となっているので、スライダ25を装着した第一ロッド20に電機子2を装着した第二ロッド21を前記した要領で連結すると、電機子2およびスライダ25が第一ロッド20の図1中右端と第二ロッド21のスライダ21bとで挟み込まれて固定される。このようにロッド11に電機子2を装着すると、コア3がスライダ21bおよびスライダ25に挟まれる格好でロッド11に固定される。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、コギング推力の軽減等のために複数のコア3を持つ構成とされてもよい。
【0021】
つづいて、ロッド11には、ロッド11の外周を覆って空隙Gを形成するカバー17が設けられている。具体的には、カバー17は、筒状であって一端がロッド11の外周に設けた環状のカバーエンド18の外周に嵌合されるとともに他端がスライダ25の小径部25bの外周に嵌合されてロッド11に装着されている。
【0022】
カバー17とロッド11との間の空隙G内には、コア3に装着された各相の巻線5を外部の図示しない駆動回路へ接続するリード線Lが収容されており、カバー17を取外した状態で巻線5とリード線Lとの配線作業を行えるようになっており、筒型リニアモータ1の組立作業を容易ならしめている。
【0023】
つづいて、本実施の形態では、界磁6は、軸方向に交互に積層され複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。また、界磁6は、外周に装着される円筒状の磁性体で形成されるバックヨーク8とともに、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入される円筒状の非磁性体の界磁保持部材9との間の環状隙間内に収容されている。
【0024】
界磁保持部材9は、アウターチューブ7の開口端に装着されるヘッド部9aと界磁6の内周に配置される筒部9bとを備えており、筒部9bの外周に界磁6が軸方向移動不能に取り付けられている。
【0025】
界磁6は、筒状のバックヨーク8の内周に軸方向に交互に積層されて挿入される複数の環状の主磁極となる永久磁石10aと複数の環状の副磁極となる永久磁石10bとを備えて構成されている。なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
【0026】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さは、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くなっている。このように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを長くすればコア3との間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
【0027】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けると磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さの短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さを副磁極の永久磁石10bの軸方向長さよりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。
【0028】
また、界磁6の内周側には、電機子2が軸方向移動自在に挿入されており、界磁6は、コア3に磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア3の可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア3の可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7と筒部9bとの環状隙間のうち、コア3に対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。なお、バックヨーク8の長さは、永久磁石10a,10bを積層した長さと等しい長さとされており、永久磁石10a,10bがコア3のストローク範囲外に磁界を作用させて推力低下を招かないように配慮されている。
【0029】
また、アウターチューブ7は、図1中右端側が縮径されていて底部7aが設けられており、底部7aの右端に筒型リニアモータ1の機器への取り付けを可能とするブラケット7bを備えている。
【0030】
さらに、界磁保持部材9は、非磁性体で形成されており、筒状であって、外周に螺子部を有してアウターチューブ7の図1中左端開口端に螺子締結されるヘッド部9aと、ヘッド部9aよりも肉厚が薄くヘッド部9aの内周から図1中右方へ突出する筒部9bとを備えて構成されている。よって、界磁保持部材9は、ヘッド部9aの図1中右端に、筒部9bの外周に装着される界磁6の軸方向端部6aに対向する段部9cを備えている。そして、筒部9bの外周には、図1中左から環状のスペーサ40、界磁6、環状のストッパ41が順に嵌合されていて、界磁保持部材9のヘッド部9aをアウターチューブ7に螺子締結すると、スペーサ40、界磁6およびストッパ41が界磁保持部材9におけるヘッド部9aとアウターチューブ7の底部7aとで挟持され、界磁6が筒部9bの外周に固定される。なお、界磁6の外周に装着されるバックヨーク8は、界磁6の磁力によって界磁6に拘束されるのでアウターチューブ7内で移動しない。
【0031】
また、界磁保持部材9は、ヘッド部9aの図1中右端である段部9cと筒部9bとの境に湾曲面9dを備えており、段部9cにのみ軸力が作用しても段部9cと筒部9bの境に応力が集中しないようになっている。なお、このように応力集中を回避するには、段部9cと筒部9bとの境にテーパ面を設けるようにしてもよい。
【0032】
他方、スペーサ40は、筒状であって、図1中右側の界磁側の外径が反界磁側よりも大きく大径部40aと小径部40bとを備えており、大径部40aの図1中左端が界磁保持部材9の段部9cに当接し、小径部40bの図1中右端が界磁6に当接している。また、スペーサ40の大径部40aの反界磁側端の端面40cの内周には面取りされて界磁保持部材9の湾曲面9dを避ける逃げ部40dが設けられている。このようにスペーサ40が逃げ部40dを備えることで、スペーサ40の大径部40aの図1中右端である反界磁側端が段部9cに正対して当接できる。
【0033】
小径部40bの外径は、バックヨーク8の内径よりも小径となっており、筒部9bとバックヨーク8との間に隙間に入り込んで界磁6の軸方向端部6aに正対して当接している。
【0034】
なお、ヘッド部9aの内周には、第一ロッド20の外周を覆うカバー17の外周に摺接する環状のシール部材28が設けられており、筒型リニアモータ1内への塵や水などの侵入が防止されている。
【0035】
そして、界磁保持部材9内には、電機子2が装着されたロッド11が軸方向移動自在に挿入され、筒部9bの内周にスライダ21b,25が摺接して、電機子2の軸方向の移動が案内される。
【0036】
筒部9bは、コア3の外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ21b,25と協働してコア3の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、本実施の形態では、電機子2は、単一のコア3のみを有して構成されているが、複数のコア3を持つ場合、電機子2の軸方向両端だけでなくコア3,3間にも筒部9bの内周に摺接するスライダを設けてもよい。
【0037】
さらに、アウターチューブ7の底部7aの内周には、ガイドロッド16が取り付けられている。ガイドロッド16は、底部7aの内周に固定される基端部16aと、基端部16aからロッド11側へ延びてロッド11内に摺動自在に挿入されるガイド部16bとを備えており、筒型リニアモータ1が伸縮しても常にロッド11の内周に摺接している。より詳細には、ガイドロッド16のガイド部16bは、第二ロッド21の内径大径部21dよりも先端側に摺動自在に挿入されている。
【0038】
このように本実施の形態における筒型リニアモータ1では、ガイドロッド16がロッド11の内周に摺接し、スライダ21b,25が筒部9bに摺接しているので、電機子2はロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。
【0039】
また、このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2の軸方向移動をガイドして界磁6に対する電機子2の偏心を防止する筒部9bがヘッド部9aと一体構造になっているので、筒部9bとヘッド部9aに歪が生じにくくスライダ21b,25が筒部9bの内周を滑らかに摺動でき、スムーズに伸縮できる。
【0040】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、ロッド11内にストロークセンサSを収容している。ストロークセンサSは、本実施の形態では、線形可変差動変圧器とされており、詳しくは図示しないが、プライマリコイルと二つのセカンダリコイルとを収容した筒状のセンサ本体30と、センサ本体30内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに先端に被検出子であるセンサ用コア31を有するプローブ32とを備えて構成されている。なお、線形可変差動変圧器は、プライマリコイルへ交流電圧を印加した際に誘導さえる二つのセカンダリコイルの誘導電圧の差からセンサ用コア31の位置を検知する。
【0041】
センサ本体30を予め第一ロッド20内に挿入しておき、スライダ25を第一ロッド20の端部に嵌合して、第二ロッド21を第一ロッド20に螺着すると、センサ本体30は、第二ロッド21における内径大径部21dの右端に形成される段部と第一ロッド20のエンドキャップ23とで挟持されて第一ロッド20内に固定される。このように、センサ本体30は、外周に電機子2が装着されない第一ロッド20内に収容されており、ロッド11の径方向で電機子2と対向しない範囲に収容されている。
【0042】
また、ストロークセンサSにおけるプローブ32は、ロッド状であってガイドロッド16におけるガイド部16bの先端に取り付けられている。よって、被検出子としてのセンサ用コア31は、プローブ32、ガイドロッド16およびアウターチューブ7を介して界磁6に対して固定的に連結されている。プローブ32は、前述したとおり、先端にセンサ用コア31を備えていて、先端側をセンサ本体30内に挿入している。よって、電機子2が界磁6に対して軸方向へ移動するのに伴ってプローブ32がセンサ本体30に対して軸方向へ相対移動して、センサ用コア31がセンサ本体30内で移動する。
【0043】
センサ本体30を収容するロッド11内にはプローブ32を保持するガイドロッド16が摺動自在に挿入されているので、センサ本体30に対するセンサ用コア31の径方向への偏心が防止される。なお、センサ本体30のプライマリコイルへの通電用の配線およびセカンダリコイルに接続される配線は、図示はしないがエンドキャップ23に設けた孔から外部へ引き出されて図外のコントローラに接続される。
【0044】
そして、図外のコントローラは、ロッド11の界磁6に対する位置をストロークセンサSで検知し、コア3の界磁6に対する電気角を把握して通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御して、筒型リニアモータ1における推力と電機子2の移動方向とを制御する。なお、前述のコントローラにおける制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子2と界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギー回生も可能である。
【0045】
以上のように、本発明の筒型リニアモータ1は、軸方向の内周にN極とS極とが交互に配置されるように積層される環状の複数の永久磁石10a,10bを有する筒状の界磁6と、界磁6の内周に軸方向移動自在に挿入される電機子2と、筒状であって界磁6の軸方向端部に対向する段部9cと界磁6の内周に配置される筒部9bとを有して界磁6を保持する界磁保持部材9と、段部9cと界磁6の軸方向端部6aとの間に介装されるスペーサ40とを備え、界磁保持部材9における段部9cと筒部9bとの境に湾曲面9dを有し、スペーサ40は、段部9cに面する端面40cに湾曲面9dへの当接を避ける逃げ部40dを有している。
【0046】
このように構成された筒型リニアモータ1では、電機子2を軸方向に駆動する際に反力として界磁保持部材9の段部9cに軸力が作用しても、段部9cと筒部9bとの境に湾曲面9dが設けられているので、界磁保持部材9の前記境の部分への応力集中を緩和できる。また、スペーサ40が湾曲面9dを避ける逃げ部40dを備えているので、スペーサ40の端面40cが段部9cに正対して当接できるので、電機子2の駆動時の界磁6に作用する軸力によるスペーサ40と段部9cとの接触圧力を低減できる。このように界磁保持部材9の応力集中を緩和できるとともにスペーサ40と段部9cとの接触面圧を低減できるので、界磁保持部材9の肉厚を厚くして界磁保持部材9の強度を確保する必要なくなり、筒型リニアモータ1の質量を軽減できる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、界磁保持部材9の質量増加を招かないので質量推力密度を向上できる。また、スペーサ40を段部9cと界磁6との間に介装しているので、湾曲面9dを備えた段部9cを界磁6の端面6aに直接当接させずにすむので、界磁6の端面6aに湾曲面9dを避ける面取りを設ける必要がなくなり、界磁6の端面6aの段部9cに対向する端面の面積を大きくできる。よって、界磁6の接触面圧も軽減できるので、界磁6に過負荷がかかるのを防止できるし、磁力低下も防止できる。
【0047】
また、前述したように、界磁保持部材9の段部9cと筒部9bとの境に設けるのは、湾曲面9dの代わりにテーパ面とされてもよく、スペーサ40の逃げ部40dは、テーパ状の面取りやR面取りによって形成されればよいが、界磁保持部材9の湾曲面9d或いはテーパ面を避けて端面40cが段部9cに正対して当接できる形状であればよい。
【0048】
なお、前述したところでは、界磁保持部材9は、界磁6の内周に配置される筒部9bを備えているが、界磁6の外周に筒部を持ち界磁保持部材9の内周側に段部と湾曲面あるいはテーパ面をもつ構造とされてもよい。界磁保持部材9が界磁6の外周に筒部を持つ場合には、界磁保持部材9を磁性体としてバックヨークとして機能させてもよいし、界磁保持部材9を非磁性体で形成してバックヨーク8ごと界磁6を保持する構造となっていてもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、6・・・界磁、6a・・・界磁の軸方向端部、9・・・界磁保持部材、9b・・・筒部、9c・・・段部、9d・・・湾曲面、10a,10b・・・永久磁石、40・・・スペーサ、40c・・・スペーサの端面、40d・・・逃げ部
図1