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特許7064452インスリン計画アドヒアランスデータの分析のためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】インスリン計画アドヒアランスデータの分析のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20220427BHJP
【FI】
G16H20/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018568822
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2017065383
(87)【国際公開番号】W WO2018001854
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】16177082.1
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】アーラドッティル, ティナ ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマイヤー, ピート
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2006/129375(JP,A1)
【文献】特開2012-063979(JP,A)
【文献】特表2002-531884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画(206)へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイス(250)であって、前記デバイスが、1つまたは複数のプロセッサ(274)とメモリ(192/290)とを備え、前記対象者に取り付けられた1つ又は複数のグルコースセンサ及び一つ又は複数のインスリンペンから情報を取得するように構成されており、前記メモリが、前記1つまたは複数のプロセッサによって遂行されると、
第1のデータセット(220)を取得することであって、前記第1のデータセットが、前記対象者が関与した複数の代謝事象を備え、前記複数の代謝事象が、第1の時間期間(222)内にあり、前記複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象(224)が、(i)前記それぞれの代謝事象のタイムスタンプ(226)と、(ii)インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである第1の特徴付け(228)とを備え、前記複数の代謝事象における各代謝事象が絶食事象又は食事事象である、ことと、
複数の一次アドヒアランス値(230)を計算することであって、
前記複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値(232)が、前記第1の時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウ(234)を表し、
各一次タイムウィンドウが、同じ第1の固定された持続時間のタイムウィンドウであり、
前記複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値が、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、前記それぞれの一次アドヒアランス値に対応する前記一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する前記複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算される、ことと
前記第1の時間期間にわたって前記複数の一次アドヒアランス値を通信し、それによって、前記対象者の前記処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視することと
の方法を実行する命令を記憶する、デバイス(250)。
【請求項2】
前記方法が、複数の二次アドヒアランス値(236)を計算することをさらに備え、
前記複数の二次アドヒアランス値におけるそれぞれの二次アドヒアランス値(242)が、前記第1の時間期間内に同時に重複する複数の二次タイムウィンドウにおける対応する二次タイムウィンドウ(244)を表し、
前記複数の二次アドヒアランス値におけるそれぞれの二次アドヒアランス値が、インスリン計画アドヒアランスである代謝事象の数を、前記それぞれの二次アドヒアランス値に対応する前記二次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する前記複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算され、
前記複数の二次タイムウィンドウ内の前記二次タイムウィンドウの少なくとも1つのサブセット内の各二次タイムウィンドウが、前記第1の固定された持続時間よりも長い持続時間であり、
前記通信することが、前記第1の時間期間にわたって前記複数の一次アドヒアランス値と前記複数の二次アドヒアランス値との重ね合わせを通信することを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の固定された持続時間が1週間であり、
前記複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウが前記第1の時間期間内の3カ月を表す、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記対象者の前記処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスの傾向を、少なくとも第2のしきい値時間量の間、第一のしきい値アドヒアランス値を下回る前記複数の一次アドヒアランス値または前記複数の二次アドヒアランス値の低下として識別することと、
前記傾向が識別されたときに、前記対象者の前記インスリン薬剤投薬量計画におけるインスリン薬剤投薬量の量を低減することと
をさらに備える、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数の代謝事象における各代謝事象が絶食事象であり、前記インスリン薬剤投薬量計画が基礎インスリン薬剤投薬量計画である、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数の代謝事象における各代謝事象が食事事象であり、前記インスリン薬剤投薬量計画がボーラスインスリン薬剤投薬量計画である、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1の固定された持続時間が1日であり、
前記複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウが、前記第1の時間期間の始めからの移動平均を表す、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
前記複数の一次アドヒアランス値におけるアドヒアランス値の関数として計算されたHbA1c増加を含むHbA1cルックアップテーブル(238)を取得することと、
前記HbA1cルックアップテーブルに従って、前記複数の一次アドヒアランス値のうちのどのそれぞれの一次アドヒアランス値が、前記計算されたHbA1cの増加にしきい値を超えさせるかの指示を通信することと
をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
各二次タイムウィンドウが、前記第1の固定された持続時間よりも長い同じ第2の固定された持続時間のタイムウィンドウである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項10】
設定されたカットオフ時間より早く発生する前記複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象が、それぞれの一次タイムウィンドウにおける前記設定されたカットオフ時間後に発生する前記複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象に対して下方重み付けされる、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象が、それぞれの一次タイムウィンドウにおける時間の線形関数として下方重み付けされる、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスがディスプレイ(282)を含むモバイルデバイスであり、前記通信することが前記ディスプレイ上に前記重ね合わせを提示することを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項13】
第2のデータセット(240)を取得することをさらに備え、前記第2のデータセットが、前記対象者の複数の自律的グルコース測定値と、前記複数の自律的グルコース測定値におけるそれぞれの自律的グルコース測定値(242)ごとに、前記それぞれの測定値がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプ(244)とを備え、
前記通信することが、経時的に前記第1の時間期間内の前記複数の一次アドヒアランス値に時間的に一致する前記複数の自律的グルコース測定値を提供する、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスがワイヤレス受信機(284)をさらに備え、前記第2のデータセットが前記対象者に取り付けられた1つ又は複数のグルコースセンサからワイヤレスで取得される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視する方法であって、
1つまたは複数のプロセッサ(274)が、前記対象者に取り付けられた1つ又は複数のグルコースセンサの1つ又は複数の測定値及び/又は一つ又は複数のインスリンペンの1つ又は複数の記録から第1のデータセット(220)を取得することであって、前記第1のデータセットが、前記対象者が関与した複数の代謝事象を備え、前記複数の代謝事象が、第1の時間期間(222)内にあり、前記複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象(224)が、(i)前記それぞれの代謝事象のタイムスタンプ(226)と、(ii)インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである第1の特徴付け(228)とを備え、前記複数の代謝事象における各代謝事象が絶食事象又は食事事象である、ことと、
前記1つまたは複数のプロセッサ(274)が、複数の一次アドヒアランス値(230)を計算することであって、
前記複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値(232)が、前記第1の時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウ(234)を表し、
各一次タイムウィンドウが、同じ第1の固定された持続時間のタイムウィンドウであり、
前記複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値が、前記それぞれの一次アドヒアランス値に対応する前記一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有するインスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、前記それぞれの一次アドヒアランス値に対応する前記一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する前記複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算される、ことと
前記1つまたは複数のプロセッサ(274)が、前記第1の時間期間にわたって前記複数の一次アドヒアランス値を通信し、それによって、前記対象者の前記処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視することと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視する際に患者および医療従事者を支援するための、ならびに計画アドヒアランスへのどの改善が血糖値に有利に影響を及ぼすかを示唆するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2型真性糖尿病は、正常な生理学的インスリン分泌の進行性崩壊によって特徴付けられる。健常者の体では、食間に長期間にわたって安定した血糖値を維持するために、膵臓β細胞による基礎インスリン分泌が連続的に起こる。健常者の体ではまた、食事に応答して、最初の第一相スパイクにおいてインスリンが急速に放出され、2~3時間後に基礎レベルに戻る長期のインスリン分泌が続く、食事中分泌がある。
【0003】
インスリンは、グルコース、アミノ酸、および脂肪酸の、骨格筋および脂肪への細胞摂取を促進することによって、ならびに肝臓からのグルコースの産出を阻害することによって、血糖を低下させるためにインスリン受容体に結合するホルモンである。通常の健常者の体では、生理的基礎および食事中インスリン分泌は正常血糖を維持し、これは、絶食時血漿グルコースおよび食後血漿グルコース濃度に影響を及ぼす。2型糖尿病では、基礎および食事中インスリン分泌は正常に機能せず、食後の初期反応がない。これらの有害事象に対処するために、2型糖尿病患者にインスリン治療計画が提供される。1型糖尿病の患者にもまた、インスリン治療計画が提供される。
【0004】
一部の糖尿病患者は、膵臓β細胞インスリン分泌の欠陥を補うために、基礎インスリン治療計画のみを必要とする。一部の患者は、基礎インスリン治療とボーラスインスリン治療の両方を必要とする。したがって、基礎インスリン治療とボーラスインスリン治療の両方を必要とする患者は、たとえば1日1回または2回の定期的な基礎インスリン薬剤治療、ならびに食事による1回または複数回のボーラスインスリン薬剤治療を受ける。
【0005】
これらのインスリン治療計画の目標は、安定した血糖値を達成することである。対象者におけるインスリン治療計画の成功は、対象者の血糖値測定を連続的に行うことによって、またはHbA1cレベルを測定することによって、推測され得る。「HbA1c」という用語は、糖化ヘモグロビンを指す。これは、体内の酸素を運ぶ赤血球内のタンパク質であるヘモグロビンが血液中のグルコースと結合するときに生じ、「糖化された」状態になる。糖化ヘモグロビン(HbA1c)を測定することによって、医療従事者は、数週間/数カ月にわたる平均血糖値の全体像を得ることができる。糖尿病患者の場合、HbA1cが高いほど、糖尿病関連の合併症を発症するリスクが高い。
【0006】
インスリン治療計画の非アドヒアランスは、糖尿病患者が適切なHbA1c目標を達成するための障壁である。インスリン計画アドヒアランスは、通常は、患者が医学的助言(たとえば、少なくとも1つの基礎インスリン薬剤投薬量計画を備える、対象者のための常用インスリン計画)に正しく従う程度として定義されるが、それはまた、たとえば食事と運動の一貫性でもあり得る。非アドヒアランスの理由は多く、また異なっている。非アドヒアランスの理由の1つは、健康リテラシーおよび治療の理解の欠如である。患者は、グルコース測定結果を理解できないか、アドヒアランスしているときの正のフィードバックがないか、または緊急性がないと感じる。非アドヒアランスのもう1つの理由は副作用の恐れである。たとえば、患者が常用インスリン計画を厳守する場合、低血糖の恐れがある。非アドヒアランスのさらに別の理由は、ホームロギングデータ、ならびに頻繁な注射およびグルコース測定を伴うことが多い従来の常用インスリン計画療法は、面倒で時間がかかるという局面である。非アドヒアランスのさらに別の理由は、安定した血糖値に対する悪影響の実際の原因である非アドヒアランスの原因を指摘できないことである。
【0007】
Insulin Medical Ltd.の国際公開番号WO 2012/152295 A2は、ユーザの食事ステータス、食事のタイミング、投与された薬のタイミング、薬の投与量、薬の種類、ユーザ活動の記録、およびその分析に関するデータを提供するように設定された1つまたは複数のセンサおよびアクチュエータを使用することによって、インスリン吸収を最適化する。たとえば、WO 2012/152295 A2は、逃した注射に関する警告などのフィードバックをユーザに提供するためのオプションとともに、注射時に注射された薬に関する情報を収集しながら、注射部位の組織を治療するために注射部位または注射ポートの上に配置され得るデバイスを開示する。WO 2012/152295 A2は、グルコースおよびインスリンの全身代謝プロセスの精密制御を提供し、したがって食後高血糖および低血糖事象の発生を最小限に抑えるために、注射事象および任意で食事事象に対する対象者の活動のマッピングを容易にするために、食事データおよび対象者の活動などの他の対象者データを使用して、さらに開示する。しかしながら、WO 2012/152295 A2は、対象者の健康(たとえば対象者の血糖値)に対するインスリン計画アドヒアランス、またはその欠如の影響を決定および定量化するための満足のいく方法を提供すること、またはどのような形態のインスリン計画アドヒアランスが対象者にとって有益であるかに関する手引きを提供することができない。本質的には、WO 2012/152295 A2は、どのような形態の計画非アドヒアランスが血糖値に最も悪影響を及ぼすかを正確に指摘するための満足のいく方法を提供することができない。さらに、一般的に、WO 2012/152295 A2は、インスリン薬剤計画に対する対象者のアドヒアランスについての全体的なフィードバックを提供することができない。さらに、WO 2012/152295 A2における食事検出は自律的グルコース測定に基づいていないため、WO 2012/152295 A2における食事検出の信頼性は不確実である。
【0008】
Roche Diagnostics GMBHの国際公開番号WO 2014/037365 A1は、血糖データおよび事象を分析するための方法および装置、特に、血糖データと、食事などの血糖データに関連付けられる事象との間の相関関係を視覚化するためのコンピュータ実装方法を記載している。しかしながら、WO 2014/037365 A1は、インスリン計画アドヒアランスの観点から食事のカテゴリ化を開示していない。さらに、WO 2014/037365 A1 A2は、対象者の健康に対するインスリン計画アドヒアランス、またはその欠如の影響を決定および定量化するための満足のいく方法を提供すること、またはどのような形態のインスリン計画アドヒアランスが対象者にとって有益であるかに関する手引きを提供することができない。
【0009】
米国特許出願公開第US2015/0006462 A1は、患者の医療アドヒアランスを管理するためのシステムを記載しており、本システムは、患者に関するデータを受信することを備える方法を実行するように適合されており、データは、1つまたは複数の薬剤を有する処方された薬剤計画に関する情報、患者の行動データ、1つまたは複数の薬剤の各々に関連付けられるそれぞれのリテラシーレベルを含む。本方法は、受信したデータに基づいて、1つまたは複数の薬剤の各々の投薬量コンプライアンスおよび時間コンプライアンスを計算することをさらに備える。投薬量コンプライアンスは、たとえば、患者が1日に10単位の薬剤を処方され、8単位のみを投与したように計算され得、疾患に対するそれぞれのコンプライアンスは、実際に消費された単位の量を処方された単位で割ることによって取得される。この場合は0.8になる。時間コンプライアンスは、たとえば以下のように計算され得る。一日を通して処方された10回の投薬量については、その日の全体的な値を計算するためにブール値が利用され得る。たとえば、処方された投薬量回数に従った特定の薬剤について、実際の消費回数が10回のうち8回である場合、それら8回のインスタンスには実際の消費回数に「1」が割り当てられ、残りの2回のインスタンスには「0」が割り当てられる。したがって、全体のブール値を総インスタンス数で割ることによって、その特定の薬剤の時間に対するコンプライアンスについて、0.8のコンプライアンス値が計算され得る。本方法は、投薬量コンプライアンス、時間コンプライアンス、および1つまたは複数の薬剤に関連付けられるそれぞれのリテラシーレベルのうちの少なくとも2つを合計することによって、1つまたは複数の薬剤の各々に関連付けられる薬のアドヒアランスカウントを計算することをさらに備える。リテラシーレベルは、患者と、処方された計画およびその薬剤との親密度を評価するための尺度であり、患者による医療アドヒアランスの欠如に基づく症状の発生、たとえば、薬剤の欠如による血糖値の低下などのユーザの行動に基づく影響に基づいて、影響を受ける可能性がある。本方法はさらに、毎日の薬剤アドヒアランス値、および毎日の薬剤アドヒアランスベースライン値、ならびに2つの値の間の比に基づくしきい値を決定することを備える。しきい値は、介入が必要かどうかを決定するために使用され得る。しかしながら、US2015/006462 A1は、処方されたインスリン薬剤投薬量計画に関連する代謝事象を自動的に取得する方法を開示しておらず、それにより、日常的なルーチンの一部としてそのような代謝事象に関与した対象者のアドヒアランスを体系的に監視することができない。実際、US 2015/0006462 A1はあらゆる薬剤の一般的な方法を提案し、処方された投与量事象はユーザの行動とは無関係であり、たとえば、1日に、または処方された時間に、10単位または10投与量が服用されると仮定されている。そのような方法はアドヒアランスを追跡することができず、ボーラス注射事象の数は、ユーザの行動、たとえば、ユーザが予想よりも多くの食事をしていることによって変わる可能性がある。一般に、US 2015/006462 A1は、時間内に明確に定義された基準点に基づいてアドヒアランスの追跡をいかに体系的に可能にするかという問題を解決せず、期間によって指定される境界内のアドヒアランスを追跡することに限定され、期間の開始と期間の終わりは、暦の構造に関連してあらかじめ定義され、たとえば、1日に10単位である。
【0010】
暦期間に基づくアドヒアランスアルゴリズムの欠点は、24時間の暦日に基づくアドヒアランス追跡アルゴリズムと組み合わせて、1日1回のボーラス注射を指定する基礎インスリン投薬量計画の例を考察することによって説明され得る。暦日は真夜中に始まる。例の初日の午後11時に基礎インスリンが注射され、2日目に基礎インスリンが省略されるが、3日目には午前0時30分と午後11時に基礎インスリンが注射される。その場合、24時間の暦日に基づくアドヒアランスアルゴリズムは、1日目をアドヒアランス状態として特徴付けるが、2日目および3日目は非アドヒアランス状態として特徴付ける。ある程度の規則性をもって3回の注射が適用されたが、3日間のうち1日のみがアドヒアランス状態としてカテゴリ化された。US 2015/006462は、アドヒアランスが時間遅延の関数であり得ることを示唆しているが、この関数関係は、2時30分に食事が消費されることを予想してインスリンが午後2時に注射されるべきである記載例の場合のように、明確に定義された基準時間が確立されている場合にのみ可能である。しかしながら、前述のように、ユーザの行動は必ずしも予想に従うわけではなく、基準時間についての予想の使用に関連付けられる欠点がある可能性があり、また、やはり言及したように、基本アドヒアランスの尺度を確立するために暦日のみを使用することに関連付けられる欠点がある可能性がある。
【0011】
Roche Diagnostics GMBHの国際公開番号WO 2010/149388 A2は、慢性疾患の自己管理を改善するための記載されたターゲット目標を達成するために、処方された療法ステップに従う、または達成することのアドヒアランスを測定する方法を記載している。本方法は、複数のアドヒアランス単位を定義することであって、各アドヒアランス単位が、処方された療法ステップを完了するために遂行される必要がある活動を規制する複数のルールを含有することと、収集されたデータ内の関心のあるタイムウィンドウを指定する活動が遂行されたときにデータを収集することと、関心のある指定されたタイムウィンドウ内に入る収集されたデータ内のアドヒアランス単位の総数を決定することと、収集されたデータが、遂行された活動がルールに従っていたことを示しているときに、指定された関心のあるタイムウィンドウ内のアドヒアランス単位の各々をアドヒアランス単位として数えることと、指定されたタイムウィンドウのアドヒアランス単位の総数に対するアドヒアランス単位の数の割合としてアドヒアランスを決定することと、指定されたタイムウィンドウの、決定されたアドヒアランス割合およびアドヒアランス数のうちの少なくとも1つを提供することとを備える。本公開は、処理デバイス上で起動されるときに、所定の(すなわち入力され選択された)プロトコルに従って個人の活動に関するデータを収集するように処理デバイスに指示するコンピュータプログラムをさらに記載している。各活動に関する情報は、ユーザインターフェースまたは他の適切な出力ハードウェアを介して個人を促し、情報を提供するユーザ入力を受け入れるように処理デバイスに命令するコンピュータプログラムによって処理デバイスによって取り込まれる。次いで、コンピュータプログラムは、入力された情報を収集データとして処理デバイスのメモリに記憶する。一実施形態では、コンピュータプログラムは、開始および完了のタイムスタンプ、コンテキスト情報、ならびに他の関連する定量化された主観的なデータなどを用いて、プロトコルおよび/または活動に関して収集されたデータに注釈を付ける。活動を記録すること、および上述のデータ収集プロセスを介して関連情報を管理することは、個人のアドヒアランスレベルの評価を提供するためにそのようなデータを分析することを可能にする。特に、データ収集プロセスを介して、記録された一連の活動が曖昧さを持たないように、データ情報および関連付けが処理デバイス(または、データベース)のメモリ内に取り込まれる。次いで、収集されたデータは、関連するデータのサブセットを抽出し、アドヒアランスルールを適用し、アドヒアランスが遂行される程度を示す比率または割合形式または同等のものとして数を提供するために、後のステップにおいて利用される。活動単位が一般に有限の持続時間であるとしても、活動の開始は活動単位16の絶対時間と見なされる。たとえば、朝食活動時間は、朝食活動単位が開始される時間である。朝食活動が、たとえば朝食中の炭水化物の推定、続いて血糖(bG)の測定、続いてインスリン投与量の計算、続いて朝食を食べること、続いて食後2時間のbGの測定などのいくつかの活動ステップからなる場合、朝食活動は、たとえば個人が朝食中の炭水化物の推定を開始したときに、医師によって推奨されるように活動をマーキングするための嗜好または選択に従ってタイミングがとられる。明らかなように、WO 2010/149388 A2は、ユーザを促すことによってデータを収集することに依存しており、したがって収集されたデータは、ユーザ入力活動を備える。WO 2010/149388は、ユーザが促されたときに入力を忘れる、促されたときに答えることができない、または何らかの理由で促されたときに誤ったデータをメモリに入力する、という状況における処方された計画に関連する代謝活動のアドヒアランスを測定するという問題を解決するものではなく、また、ユーザが関与していた、単に関与する意図がない、またはしばらく前に関与していた代謝活動に基づいて、アドヒアランスを直接監視するという問題を解決するものではない。言い換えれば、アドヒアランスを監視することに関連するユーザ入力活動と代謝活動との間のタイミングは、不確実性の影響を受ける。上記の背景を考慮すると、当技術分野で必要とされているのは、どのような形態の計画非アドヒアランスが糖尿病患者において血糖値に悪影響を及ぼしているかを指摘するための満足のいく方法を提供するシステムおよび方法である。
【0012】
本開示の目的は、インスリン計画アドヒアランスを確実に監視および通信するためのシステムおよび方法を提供すること、ならびにどのような形態の計画非アドヒアランスが糖尿病患者において血糖値に悪影響を及ぼしているかを指摘することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の開示において、上記の目的の1つまたは複数に対処するか、または以下の開示ならびに例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【0014】
本開示は、糖尿病患者へのインスリン送達を管理する際に患者および医療従事者を支援するための方法および装置を提供することによって、当技術分野における上記で識別された必要性に対処する。本開示のシステムおよび方法を使用して、患者または医療従事者は、どの形態の計画非アドヒアランスが血糖値に最も悪影響を与えるかを決定することができる。たとえば、本開示のシステムおよび方法を使用して、血糖値に対する不適合な食事、絶食事象、ボーラス注射、または基礎注射の効果が確認され、どのような形態の計画非アドヒアランスが血糖値に悪影響を及ぼしているかを指摘するために使用され得る。
【0015】
したがって、本開示は、患者および/または医療従事者に、インスリン治療へのアドヒアランスを監視する能力を提供し、それによって、どの程度そしてどのようにアドヒアランスが計画治療結果に影響を及ぼすかを指摘する能力を提供する、処方されたインスリン薬剤投薬量計画アドヒアランスデータの計算、処理、および視覚化に関する。
【0016】
本開示の一態様では、対象者のインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視するためのシステムおよび方法が提供される。対象者がある時間期間(たとえば、過去1週間、過去2週間、過去1カ月など)内に関与した複数の代謝事象(たとえば、絶食期間、食事など)を備えるデータセットが取得される。それぞれの代謝事象は、その事象のタイムスタンプと、インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである特徴付けとを備える。複数の一次アドヒアランス値が計算される。それぞれの一次アドヒアランス値は、時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウを表す。そのような各一次タイムウィンドウは、同じ第1の固定された持続時間(たとえば24時間)のタイムウィンドウである。それぞれの一次アドヒアランス値は、それぞれの一次アドヒアランス値に対応する一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有するインスリン計画アドヒアランス事象の数を、それぞれの一次アドヒアランス値に対応する一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する事象の総数で割ることによって計算される。時間期間にわたる一次アドヒアランス値は通信され(たとえば、スクリーン上に表示され、遠隔サーバに送信され、計画分析プログラムに入力され)、それによって、インスリン計画へのアドヒアランスを監視する。
【0017】
これによって、対象者が実際に関わっている代謝事象に基づいてアドヒアランス監視を確立し、それによって、ユーザの行動が必ず予想に従うわけではないというリスクを排除する、システムおよび方法が提供される。本システムおよび方法は、時間内に明確に定義された基準点に基づいてアドヒアランスの追跡をいかに体系的に可能にするかという問題を解決する。データセットは、対象者が関与した代謝事象のみを備えるので、システムおよび方法は、ユーザの応答に対する入力に依存せず、それによって先行技術の問題を解決する。データセットは代謝事象ごとにタイムスタンプを備えるので、アドヒアランスに関与している対象者は高度の不確実性で監視される。対象者がアドヒアランスを監視する目的で実際に関与している代謝事象を備えるデータの使用は、以前には使用も記載もされておらず、監視されるアドヒアランスの不確実性を最小限に抑えるためにそのようなデータを使用することの重要性もない。
【0018】
さらなる態様では、代謝事象のタイムスタンプは、代謝事象の指標の自律的タイムスタンプ付き測定値から導出される。
【0019】
さらなる態様では、代謝事象のタイムスタンプは、自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値から導出され、グルコース測定値は代謝事象の指標であり、すなわち、グルコース測定値は血流中のグルコース濃度の測定値である。
【0020】
さらなる態様では、代謝事象のタイムスタンプは、自律的タイムスタンプ付きグルカゴン、脂質、またはアミノ酸の測定値から導出され、グルカゴン、脂質、またはアミノ酸の測定値は代謝事象の指標であり、すなわち、測定値は血流中のそれぞれの分子の濃度の測定値である。
【0021】
さらなる態様では、自律的測定値は、測定デバイスによって取得される測定値であり、測定は、ユーザの外部制御なしに着手または実行される。これによって、対象者またはデバイスのオペレータによって制御される入力に依存しないデータが提供される。
【0022】
さらなる態様では、自律的測定値は、指定されたまたは可変の周波数で測定するデバイスによって取得される測定値である。
【0023】
さらなる態様では、本方法は、複数の二次アドヒアランス値を計算すること(236)をさらに備え、複数の二次アドヒアランス値における各二次アドヒアランス値は、第1の時間期間内に同時に重複する複数の二次タイムウィンドウにおける対応する二次タイムウィンドウを表し、複数の二次アドヒアランス値におけるそれぞれの二次アドヒアランス値は、インスリン計画アドヒアランスである代謝事象の数を、それぞれの二次アドヒアランス値に対応する二次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算され、複数の二次タイムウィンドウにおける二次タイムウィンドウの少なくとも1つのサブセット内の各二次タイムウィンドウは、第1の固定された持続時間よりも長い持続時間であり、通信することは、第1の時間期間にわたって複数の一次アドヒアランス値と複数の二次アドヒアランス値との重ね合わせを通信することを備える。
【0024】
さらなる態様では、本方法は、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスの傾向を、少なくとも第2のしきい値時間量の間、第一のしきい値アドヒアランス値を下回る複数の一次アドヒアランス値または複数の二次アドヒアランス値における低下として識別することと、傾向が識別されたときに、対象者のインスリン薬剤投薬量計画におけるインスリン薬剤投薬量を低減することとをさらに備える。
【0025】
さらなる態様では、複数の代謝事象における各代謝事象は絶食事象であり、インスリン薬剤投薬量計画は基礎インスリン薬剤投薬量計画である。
【0026】
さらなる態様では、第1の固定された持続時間は1週間であり、複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウは第1の期間内の3カ月を表す。
【0027】
さらなる態様では、複数の代謝事象における各代謝事象は食事事象であり、インスリン薬剤投薬量計画はボーラスインスリン薬剤投薬量計画である。
【0028】
さらなる態様では、第1の固定された持続時間は1日であり、複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウは、第1の期間の始めからの移動平均を表す。
【0029】
さらなる態様では、本方法は、複数の一次アドヒアランス値におけるアドヒアランス値の関数として計算されたHbA1c増加を含むHbA1cルックアップテーブルを取得することと、HbA1cルックアップテーブルに従って、複数の一次アドヒアランス値のうちのどのそれぞれの一次アドヒアランス値が、計算されたHbA1cの増加にしきい値を超えさせるかの指示を通信することとをさらに備える。
【0030】
さらなる態様では、各二次タイムウィンドウは、第1の固定された持続時間よりも長い同じ第2の固定された持続時間のタイムウィンドウである。
【0031】
さらなる態様では、設定されたカットオフ時間より早く発生する複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象は、それぞれの一次タイムウィンドウにおける設定されたカットオフ時間後に発生する複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象に対して下方重み付けされる。
【0032】
さらなる態様では、複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象は、それぞれの一次タイムウィンドウにおける時間の線形関数として下方重み付けされる。
【0033】
さらなる態様では、デバイスはディスプレイ(282)を含むモバイルデバイスであり、通信することはディスプレイ上に重ね合わせを提示することを含む。
【0034】
さらなる態様では、本方法は、第2のデータセットを取得することをさらに備え、第2のデータセットは、対象者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値におけるそれぞれの自律的グルコース測定値ごとに、それぞれの測定値がいつ行われたかを表すグルコース測定タイムスタンプとを備える。
【0035】
さらなる態様では、通信することは、経時的に第1の時間期間内の複数の一次アドヒアランス値に時間的に一致する複数の自律的グルコース測定値を提供する。
【0036】
さらなる態様では、デバイスはワイヤレス受信機をさらに備え、第2のデータセットは対象者に取り付けられたグルコースセンサからワイヤレスで取得される。
【0037】
さらなる態様では、本方法は、インスリン薬剤投薬量計画を適用するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンから第3のデータセットを取得することであって、第3のデータセットは、複数のインスリン薬剤記録を備え、複数の薬剤記録における各インスリン薬剤記録は、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペンを使用して対象者に注射されたインスリン薬剤の量を含む、それぞれのインスリン薬剤注射事象と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射事象が発生すると、それぞれのインスリンペンによって自動的に生成される、対応する電子タイムスタンプとを備える、ことと、対象者の複数の自律的グルコース測定値と第2のデータセット内のそれぞれのタイムスタンプとを使用して複数の代謝事象を識別することと、複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象に第1の特徴付けを適用することとを備え、第1の特徴付けは、インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つであり、第2のデータセットが、それぞれの代謝事象の間に、インスリン薬剤投薬量計画を時間的および量的にアドヒアランスすることを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含む場合、それぞれの代謝事象は基礎計画アドヒアランスと見なされ、第2のデータセットが、インスリン薬剤投薬量計画を時間的および量的にアドヒアランスすることを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含まない場合、それぞれの代謝事象はインスリン計画非アドヒアランスと見なされる。
【0038】
さらなる態様では、本方法は、インスリン薬剤投薬量計画を適用するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンから第3のデータセットを取得することであって、第3のデータセットは、複数のインスリン薬剤記録を備え、複数の薬剤記録における各インスリン薬剤記録は、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペンを使用して対象者に注射されたインスリン薬剤の量を含む、それぞれのインスリン薬剤注射事象と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射事象が発生すると、それぞれのインスリンペンによって自動的に生成される、対応する電子タイムスタンプとを備える、ことと、対象者の複数の自律的グルコース測定値と第2のデータセット内のそれぞれのタイムスタンプとを使用して複数の絶食事象を識別することと、複数の絶食事象におけるそれぞれの絶食事象に第1の特徴付けを適用することとを備え、第1の特徴付けは、インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つであり、第2のデータセットが、それぞれの絶食事象の間に、インスリン薬剤投薬量計画を時間的および量的にアドヒアランスすることを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含む場合、それぞれの絶食事象は基礎計画アドヒアランスと見なされ、第2のデータセットが、それぞれの絶食事象の間に、インスリン薬剤投薬量計画を時間的および量的にアドヒアランスすることを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含まない場合、それぞれの絶食事象はインスリン計画非アドヒアランスと見なされる。
【0039】
さらなる態様では、薬剤記録は、インスリン薬剤の種類をさらに備え、それぞれの絶食事事象は、複数の薬剤記録のうちの1つまたは複数の薬剤記録が第3のデータセットにおいて、インスリン薬剤の種類に基づいて、それぞれの絶食事象の間、常用インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスをさらに示す場合、インスリン計画アドヒアランスであると見なされ、それぞれの絶食事事象は、第3のデータセット内の複数の薬剤記録が第3のデータセットにおいて、インスリン薬剤の種類に基づいて、それぞれの絶食時期間の間、インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスをさらに示さない場合、インスリン計画非アドヒアランスであると見なされる。
【0040】
さらなる態様では、インスリン計画アドヒアランスは基礎計画アドヒアランスと定義され、インスリン計画非アドヒアランスは基礎計画非アドヒアランスと定義される。
【0041】
さらなる態様では、本方法は、インスリン薬剤投薬量計画を適用するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンから第3のデータセットを取得することであって、第3のデータセットは、複数のインスリン薬剤記録を備え、複数の薬剤記録における各インスリン薬剤記録は、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペンを使用して対象者に注射されたインスリン薬剤の量を含む、それぞれのインスリン薬剤注射事象と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射事象が発生すると、それぞれのインスリンペンによって自動的に生成される、対応する電子タイムスタンプとを備える、ことを備え、本方法は、複数の自律的グルコース測定値と、対応する第2のデータセット内のそれぞれのタイムスタンプとを使用して複数の食事事象を識別することと、複数の食事事象におけるそれぞれの食事事象に第2の特徴付けを適用することとをさらに備え、第2の特徴付けは、インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つであり、それぞれの食事事象は、それぞれの食事の間に、複数の薬剤記録のうちの1つまたは複数の薬剤記録が、第3のデータセットにおいて時間的に、量的に、インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを示す場合、インスリン計画アドヒアランスと見なされ、それぞれの食事事象は、それぞれの食事の間に、第3のデータセット内の複数の薬剤記録が、第3のデータセットにおいて時間的に、量的に、インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを示さない場合、インスリン計画非アドヒアランスと見なされる。
【0042】
さらなる態様では、薬剤記録はインスリン薬剤の種類をさらに備え、それぞれの食事事象は、それぞれの食事の間に、複数の薬剤記録のうちの1つまたは複数の薬剤記録が、第3のデータセットにおいて、インスリン薬剤の種類に基づいて、インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスをさらに示す場合、インスリン計画アドヒアランスと見なされ、それぞれの食事事象は、それぞれの食事の間に、第3のデータセット内の複数の薬剤記録が、インスリン薬剤の種類に基づいて、インスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスをさらに示さない場合、インスリン計画非アドヒアランスと見なされる。
【0043】
さらなる態様では、インスリン計画アドヒアランスはボーラス計画アドヒアランスとして定義され、インスリン計画非アドヒアランスはボーラス計画非アドヒアランスとして定義される。
【0044】
さらなる態様では、代謝事象は、咀嚼または嚥下などの代謝事象を示す身体機能に関する測定から自動的に取得される。強度に応じて、咀嚼または嚥下は食事事象の徴候であり得る。
【0045】
さらなる態様では、代謝事象は本質的にタイムスタンプ付きであり、すなわち、代謝事象のタイムスタンプは代謝事象の発生の直接の結果であり、タイムスタンプはこの発生に応答して取得される。
【0046】
これにより、対象者が関与している代謝事象に関してアドヒアランスが監視されることを確実にするシステムが提供され、代謝事象がタイムスタンプされるときに、明確に定義された参照が時間内に提供され、タイムスタンプを利用するためのアドヒアランスの特徴付けを可能にする。
【0047】
さらなる態様では、それぞれの代謝事象に関連するタイムスタンプは、代謝事象がインスリン計画アドヒアランスか、またはインスリン計画非アドヒアランスかを調べるための出発点として使用される。
【0048】
さらなる態様では、代謝事象が絶食事象である場合、絶食事象は対象者の自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値を使用して識別される。
【0049】
さらなる態様では、代謝事象が食事事象である場合、食事事象は自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値を使用して識別される。
【0050】
さらなる態様では、代謝事象は薬剤計画において定義されている代謝事象であり得、対象者の代謝状態に関連する事象の指標を連続的に測定するデバイスから自動的に識別され得、それによって、デバイスは、代謝事象がタイムスタンプされ、そして計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスとして、薬剤計画に関して特徴付けられることを可能にする。たとえば、薬剤計画に従って定義される代謝事象は食事事象であり得、薬剤計画は、この事象に関するグルコース測定値に基づいてボーラスインスリンが投与されるべきであると決定し、または、それは絶食事象であってもよく、薬剤計画は基礎インスリンがこの事象に関連するグルコース測定値に基づいて投与されるべきであると決定する。
【0051】
いくつかの実施形態では、インスリン計画アドヒアランスとしての代謝事象の特徴付けは、インスリン薬剤投薬量計画に従って、推奨より遅く投与量を服用すること、または推奨される投与量を下回る、もしくは上回る投与量を服用することの推定血糖効果に依存して、インスリン計画アドヒアランスの程度または割合として決定され得る。
【0052】
本開示の別の態様では、1つまたは複数のプロセッサによって遂行されると、
第1のデータセットを取得することであって、第1のデータセットが、対象者が関与した複数の代謝事象を備え、複数の代謝事象が、第1の時間期間内にあり、複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象が、(i)それぞれの代謝事象のタイムスタンプと、(ii)インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである第1の特徴付けとを備える、ことと、
複数の一次アドヒアランス値を計算することであって、
複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値が、第1の時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウを表し、
各一次タイムウィンドウが、同じ第1の固定された持続時間のタイムウィンドウであり、
複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値は、それぞれの一次アドヒアランス値に対応する一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有するインスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、それぞれの一次アドヒアランス値に対応する一次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算される、ことと、
第1の時間期間にわたって複数の一次アドヒアランス値を通信し、それによって、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視することとを備える方法を実行する命令を備えるコンピュータプログラムが提供される。
【0053】
さらなる態様では、コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読データキャリアが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本開示の実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するための計画アドヒアランスモニタデバイスと、計画アドヒアランスデータを分析および準備するための計画アドヒアランス評価デバイスと、対象者からのグルコースデータを測定する1つまたは複数のグルコースセンサと、処方されたインスリン薬剤投薬量計画に従ってインスリン薬剤を注射するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンまたはポンプとを含み、上記で識別された構成要素が、任意で、通信ネットワークを通じて相互接続される、例示的なシステムトポロジを示す図である。
図2】本開示の実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイスを示す図である。
図3】本開示の別の実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイスを示す図である。
図4A】本開示の様々な実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートを提供する図である。
図4B】本開示の様々な実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートを提供する図である。
図4C】本開示の様々な実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートを提供する図である。
図5】本開示の実施形態による、接続されたインスリンペン、連続的なグルコースモニタ、メモリ、および自律的グルコースデータのアルゴリズムカテゴリ化を実行するためのプロセッサの例示的な統合システムを示す図である。
図6】本開示の実施形態による、一次アドヒアランス値、一次タイムウィンドウ、代謝事象、二次アドヒアランス値、および二次タイムウィンドウの間の時間的関係を示す図である。
図7】本開示の実施形態による、第1の時間期間にわたる一次アドヒアランス値と二次アドヒアランス値との重ね合わせの通信を示す図である。
図8A】本開示の実施形態による、第1の時間期間にわたる一次アドヒアランス値と二次アドヒアランス値との重ね合わせの通信を示し、一次アドヒアランス値の各々は毎週の基礎アドヒアランスを表し、二次アドヒアランス値の各々は数週間にわたって連続的な重み付けされていない平均アドヒアランスである図である。
図8B】本開示の実施形態による、第1の時間期間にわたる一次アドヒアランス値と二次アドヒアランス値との重ね合わせの通信を示し、一次アドヒアランス値の各々は毎週の基礎アドヒアランスを表し、二次アドヒアランス値の各々は移動平均アドヒアランスであり、数週間にわたって時間とともに線形的に重み付けされる図である。
図8C】本開示の実施形態による、第1の時間期間にわたる一次アドヒアランス値と二次アドヒアランス値との重ね合わせの通信を示し、一次アドヒアランス値の各々は毎週の基礎アドヒアランスを表し、二次アドヒアランス値の各々は移動平均アドヒアランスであり、過去4週間が100%重み付けされ、過去4週間より前の週は50パーセント重み付けされるように重み付けされた図である。
図9】本開示の実施形態による、ボーラス計画アドヒアランスデータについて、HbA1cに対するアドヒアランス効果がどのように通信されるかの例を示す図である。
図10】本開示の実施形態による、基礎計画アドヒアランスデータについて、HbA1cに対するアドヒアランス効果がどのように通信されるかの例を示す図である。
図11】本開示の別の実施形態による、ボーラスアドヒアランスがどのように通信されるかの例を示す図である。
図12】本開示の別の実施形態による、基礎アドヒアランスがどのように通信されるかの例を示す図である。
図13】本開示の実施形態による、各一次タイムウィンドウが1日の持続時間を有し、またそれぞれの二次タイムウィンドウが第1の期間の始めからの移動平均を表す実施形態における一次アドヒアランス値、一次タイムウィンドウ、代謝事象、二次アドヒアランス値、および二次タイムウィンドウの間の時間的関係を示す図である。
図14】本開示の実施形態による、一次アドヒアランス値、一次タイムウィンドウ、代謝事象、二次アドヒアランス値、および二次タイムウィンドウの間の時間的関係を示し、各一次タイムウィンドウは1週間の持続時間を有し、各二次タイムウィンドウは2週間の持続時間を有し、二次タイムウィンドウにおいて、設定されたカットオフ時間よりも早く発生する代謝事象は、設定されたカットオフ時間より後に発生する代謝事象に対して下方重み付けされる図である。
図15】本開示の実施形態による、代謝事象を特徴付けるためのアルゴリズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図面のいくつかの図を通して、同じ参照番号は対応する部分を指す。
【0056】
本開示は、ある期間にわたって関与している対象者の、絶食事象または食事などの複数の代謝事象に関するデータの取得に依存する。そのような代謝事象ごとに、データは、タイムスタンプと、インスリン計画アドヒアランスまたはインスリン計画非アドヒアランスのいずれかである代謝事象の特徴付けとを含む。図1はそのようなデータを取得するための統合システム502の一例を示し、図5はそのようなシステム502のさらなる詳細を提供する。統合システム502は、1つまたは複数の接続されたインスリンペンまたはポンプ104、1つまたは複数の連続グルコースモニタ102、メモリ506、および対象者の自律的グルコースデータのアルゴリズムカテゴリ化を実行するためのプロセッサ(図示せず)を含む。
【0057】
代謝事象は代謝に関する事象であり、原形質の構築および破壊におけるプロセス、たとえば、重要なプロセスおよび活動のためにエネルギーが提供され、新しい物質が同化される、すなわち栄養として利用される、生細胞における化学変化の合計である。
【0058】
生体内の代謝は様々な状態で定義され得、吸収状態、または摂食状態は、身体が食べ物を消化し栄養分を吸収しているときの食事の後に発生する。食べ物はその構成部分に分解されて腸を通じて吸収されるため、食べ物が口に入った瞬間に消化が始まる。炭水化物の消化は口の中から始まるが、タンパク質や脂肪の消化は胃や小腸の中から始まる。これらの炭水化物、脂肪、およびタンパク質の構成部分は腸壁を横切って運ばれ、そして血流(糖およびアミノ酸)またはリンパ系(脂肪)に入る。これらのシステムは、それらを腸から、エネルギーを処理して使用するか、または貯蔵する肝臓、脂肪組織、または筋肉細胞に運ぶ。吸収状態では、グルコース、脂質、アミノ酸が血流に入り、インスリンが放出されることがある(糖尿病の状態や種類などの他の症状によって異なる)。吸収後状態、または絶食状態は、食べ物が消化され、吸収され、そして貯蔵されたときに発生する。人は通常一晩中断食するが、日中に食事をとばすこともまた人の体を吸収後状態にする。この状態の間、体は最初に、貯蔵されたグリコーゲンに依存しなければならない。血糖値は、それが細胞によって吸収され使用されるにつれて低下し始める。グルコースの減少に応答して、インスリンレベルも低下する。グリコーゲンおよびトリグリセリドの貯蔵は遅くなる。しかしながら、組織や臓器の要求により、血糖値は80~120mg/dLの正常範囲に維持される必要がある。血糖濃度の低下に応答して、ホルモングルカゴンが膵臓のアルファ細胞から放出される。グルカゴンは肝細胞に作用し、そこでグリコーゲンの合成を阻害し、貯蔵されたグリコーゲンのグルコースへの分解を促進する。このグルコースは、末梢組織と脳によって使用されるために肝臓から放出される。その結果、血糖値は上昇し始める。糖新生は、末梢組織によって使用されてきたグルコースに取って代わるために、肝臓でも始まる。さらなる情報は、OpenStax College,Anatomy and Physiologyにおいて見つけられる。OpenStax CNX.http://cnx.org/contents/14fb4ad7-39a1-4eee-ab6e-3ef2482e3e22@8.81.
【0059】
したがって、代謝事象は、ある代謝状態が発生する事象に関連し得、その発生は事象の指標の濃度を測定することによって検出され得る。代謝事象は状態の種類および状態の進行の指標となり、代謝事象の指標は血流中のグルコース、グルカゴン、脂質、およびアミノ酸の濃度であり得る。他のホルモンもコルチゾールやアドレナリンのなどの代謝に関連する事象を決定する際に役立つ可能性がある。
【0060】
自律的測定値、または自律的データは、指定されたまたは可変の周波数で測定するデバイスによって取得される測定値またはデータであり、測定は、外部制御なしに着手または実行され、たとえば、デバイスが測定モードで動作しているとき、測定は、デバイスを使用している対象者からの制御なしに実行され得る。統合システム502を用いて、対象者の自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値が取得される(520)。また、処方されたインスリン計画を対象者に適用するために使用される1つまたは複数のインスリンペンおよび/またはポンプからのデータが複数の記録として取得される(540)。各記録は、処方されたインスリン薬剤投薬量計画の一部として対象者が受け取った、注射された(または、ポンプされた)インスリン薬剤の量を指定するタイムスタンプ付き事象を備える。絶食事象は対象者の自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値を使用して識別される。任意で、食事事象も自律的タイムスタンプ付きグルコース測定値502を使用して識別される。このようにして、グルコース測定値がフィルタリングされ(504)、非一時的メモリ(506)に記憶される。
【0061】
代謝事象はアドヒアランスまたは非アドヒアランスとして特徴付けられる。代謝事象は、1つまたは複数の接続されたインスリンペンまたはポンプ104からの1つまたは複数の記録が、処方されたインスリン薬剤計画へのアドヒアランスを時間的および量的に確立する場合、アドヒアランスである。逆に、代謝事象は、1つまたは複数の接続されたインスリンペンまたはポンプ104からの記録のいずれもが、処方された基礎インスリン薬剤計画へのアドヒアランスを時間的および量的に確立しない場合、非アドヒアランスとして特徴付けられる。
【0062】
各絶食事象は、アドヒアランスまたは非アドヒアランスとして特徴付けられる(508)。絶食事象は、絶食事象中に、1つまたは複数の接続されたインスリンペンまたはポンプ104からの1つまたは複数の記録が、処方された基礎インスリン薬剤計画へのアドヒアランスを時間的および量的に確立する場合、アドヒアランスである。逆に、絶食事象は、1つまたは複数の接続されたインスリンペンまたはポンプ104からの記録のいずれもが、処方された基礎インスリン薬剤計画へのアドヒアランスを時間的および量的に確立しない場合、非アドヒアランスとして特徴付けられる。
【0063】
それぞれの食事は、それぞれの食事中に、1つまたは複数の薬剤記録が、時間的に、量的に、およびインスリン薬剤の種類的に、処方されたボーラスインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを示す場合、ボーラス計画アドヒアランスと見なされる。逆に、それぞれの食事は、それぞれの食事中に、複数の薬剤記録が、時間的に、量的に、およびインスリン薬剤の種類的に、処方されたボーラスインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを示さない場合、ボーラス計画非アドヒアランスと見なされる。
【0064】
このフィルタリングされカタログ化されたグルコースデータは、本開示の方法に従って分析され視覚化される(510)。そのような視覚化により、血糖値やHbA1cレベルなどの重要な対象者のマーカーに対するインスリン計画アドヒアランスの効果を対象者または医療従事者が見ることが可能になる。
【0065】
次に実施形態を詳細に参照するが、その例は添付の図面に示されている。以下の詳細な説明において、本開示の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本開示がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは当業者には明らかであろう。他の例では、よく知られている方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に曖昧にしないように詳細には説明されていない。
【0066】
また、第1の、第2の、などの用語は、様々な要素を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用されている。たとえば、本開示の範囲から逸脱することなしに、第1の対象者を第2の対象者と呼ぶことができ、同様に、第2の対象者を第1の対象者と呼ぶことができる。第1の対象者および第2の対象者はどちらも対象者であるが、それらは同じ対象者ではない。さらに、「対象者」および「ユーザ」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0067】
本開示において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することが意図されるものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連付けられる列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる可能な組合せを指し、それらを包含するということも理解されよう。「備える」および/または「備えている」という用語は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう
【0068】
本明細書で使用される、「場合」という用語は、文脈に応じて、「とき」または「すると」または「決定に応じて」または「検出に応じて」を意味すると解釈され得る。同様に、「決定された場合」または「[述べられた条件またはイベント]が検出された場合」という語句は、文脈に応じて、「決定すると」または「決定に応じて」または「[述べられた条件またはイベント]を検出すると」または「[述べられた条件またはイベント]の検出に応じて」を意味すると解釈され得る。
【0069】
本開示による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206へのアドヒアランスを経時的に監視するためのシステム48の詳細な説明は、図1図3に関連して説明される。このように、図1から図3は、本開示によるシステムのトポロジを集合的に示している。トポロジには、処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視するためのデバイス(「モニタデバイス250」)(図1図2、および図3)、計画アドヒアランスを評価するためのデバイス(「アドヒアランスデバイス200」)対象者に関連付けられる1つまたは複数のグルコースセンサ102(図1)、およびインスリン薬剤を対象者に注射するための1つまたは複数のインスリンペンまたはポンプ104(図1)がある。本開示を通して、アドヒアランスデバイス200およびモニタデバイス250は、明確さの目的のためだけに別個のデバイスとして参照される。すなわち、アドヒアランスデバイス200の開示された機能とモニタデバイス250の開示された機能とは、図1に示されるように別個のデバイスに含有される。しかしながら、実際には、いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200の開示された機能とモニタデバイス250の開示された機能とは単一のデバイスに含有されることが理解されるであろう。
【0070】
図1を参照すると、モニタデバイス250は、対象者に処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視する。これを行うために、モニタデバイス250と電気的に連絡しているアドヒアランスデバイス200は、継続的に対象者に取り付けられた1つまたは複数のグルコースセンサ102から生じる自律的グルコース測定値を受信する。さらに、アドヒアランスデバイス200は、インスリン薬剤を注射するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンおよび/またはポンプ104からインスリン薬剤注射データを受信する。いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200は、対象者によって使用されるグルコースセンサ102およびインスリンペンおよび/またはポンプ104からそのようなデータを直接受信する。たとえば、いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200は無線周波数信号を通じてこのデータをワイヤレスで受信する。いくつかの実施形態では、そのような信号は、802.11(WiFi)、Bluetooth、またはZigbee規格に準拠している。いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200は、そのようなデータを直接受信し、データ内の代謝事象を計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスとして特徴付け、特徴付けられたデータをモニタデバイス250に渡す。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ102および/またはインスリンペン/ポンプはRFIDタグを含み、RFID通信を使用してアドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250と通信する。
【0071】
いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250は、対象者に近接していないか、かつ/もしくはワイヤレス機能を持たないか、またはそのようなワイヤレス機能は、グルコースデータおよびインスリン薬剤注射データを取得する目的では使用されない。そのような実施形態では、グルコース測定値をグルコースセンサ102からアドヒアランスデバイス200に、および1つまたは複数のインスリンペンまたはポンプ104からアドヒアランスデバイス200に通信するために、通信ネットワーク106が使用され得る。
【0072】
ネットワーク106の例は、これらに限定されないが、ワールドワイドウェブ(WWW)、セルラー電話ネットワークなどのイントラネットおよび/またはワイヤレスネットワーク、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(LAN)、および/またはメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ならびにワイヤレス通信による他のデバイスを含む。ワイヤレス通信は、任意で、これらに限定されないが、グローバルシステムフォーモバイルコミュニケーションズ(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)、エボリューションデータオンリー(EV-DO)、HSPA、HSPA+、デュアルセルHSPA(DC-HSPDA)、ロングタームエボリューション(LTE)、近距離無線通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、Bluetooth、ワイヤレスフィデリティ(Wi-Fi)(たとえば、IEEE 802.11a、IEEE 802.11ac、IEEE 802.11ax、IEEE 802.11b、IEEE 802.11g、および/またはIEEE 802.11n)、ボイスオーバーインターネットプロトコル(VoIP)、Wi-MAX、電子メール用のプロトコル(たとえば、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)および/またはポストオフィスプロトコル(POP))、インスタントメッセージング(たとえば、拡張メッセージングおよびプレゼンスプロトコル(XMPP)、インスタントメッセージングおよびプレゼンス利用拡張向けセッション開始プロトコル(SIMPLE)、インスタントメッセージングおよびプレゼンスサービス(IMPS))、および/もしくはショートメッセージサービス(SMS)、または本開示の出願日の時点でまだ開発されていない通信プロトコルを含む任意の他の適切な通信プロトコルを含む、複数の通信規格、プロトコル、および技術のいずれかを使用する。
【0073】
いくつかの実施形態では、対象者には単一のグルコースセンサが取り付けられており、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250はグルコースセンサ102の一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250ならびにグルコースセンサ102は単一のデバイスである。
【0074】
いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250はインスリンペンまたはポンプ104の一部である。すなわち、いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250、ならびにインスリンペンまたはポンプ104は単一のデバイスである。
【0075】
もちろん、システム48の他のトポロジも可能である。たとえば、通信ネットワーク106に依存するのではなく、1つまたは複数のグルコースセンサ102ならびに1つまたは複数のインスリンペンおよび/またはポンプ104は、情報をアドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250に直接ワイヤレスで送信し得る。さらに、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250は、ポータブル電子デバイス、サーバコンピュータを構成してもよく、または、実際には、ネットワーク内で互いにリンクされているかもしくはクラウドコンピューティングのコンテキストにおける仮想マシンであるいくつかのコンピュータを構成してもよい。このように、図1に示される例示的なトポロジは、当業者には容易に理解されるように本開示の実施形態の特徴を説明するために役立つにすぎない。
【0076】
図2を参照すると、典型的な実施形態では、モニタデバイス250は1つまたは複数のコンピュータを備える。図2における説明の目的のために、モニタデバイス250は、処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視するための機能性のすべてを含む単一のコンピュータとして表されている。しかしながら、本開示はそのように限定されない。処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視するための機能性は、任意の数のネットワーク化されたコンピュータにわたって広がってもよく、かつ/またはいくつかのネットワーク化されたコンピュータの各々に存在してもよく、かつ/または通信ネットワーク106を介してアクセス可能な遠隔地において1つまたは複数の仮想マシン上でホストされてもよい。当業者であれば、用途に対して多様な異なるコンピュータトポロジが可能であり、そのようなトポロジはすべて本開示の範囲内であることを理解するであろう。
【0077】
前述のことを念頭に置いて図2に目を向けると、処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを監視するための例示的なモニタデバイス250は、1つまたは複数の処理ユニット(CPU)274、ネットワークまたは他の通信インターフェース284、メモリ192(たとえば、ランダムアクセスメモリ)、1つまたは複数のコントローラ288によって任意にアクセスされる1つまたは複数の磁気ディスクストレージおよび/または固定デバイス290、前述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数の通信バス212、および前述の構成要素に電力を供給するための電源276を備える。メモリ192内のデータは、キャッシングなどの知られている計算技法を使用して不揮発性メモリ290とシームレスに共有され得る。メモリ192および/またはメモリ290は、中央処理装置274に対して遠隔に配置された大容量ストレージを含むことができる。言い換えれば、メモリ192および/またはメモリ290に記憶されたいくつかのデータは、実際には、モニタデバイス250の外部にあるが、ネットワークインターフェース284を使用してインターネット、イントラネット、または他の形態のネットワークもしくは電子ケーブル(図2において要素106として示されている)を介してモニタデバイス250によって電子的にアクセスされ得るコンピュータ上でホストされ得る。
【0078】
対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量へのアドヒアランスを監視するためのモニタデバイス250のメモリ192は、以下のものを記憶する。
・様々な基本システムサービスを処理するための手順を含むオペレーティングシステム202、
・インスリン計画モニタリングモジュール204、
・対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206であって、基礎インスリン薬剤投薬量計画208と、任意で、いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画214とを備える、処方されたインスリン薬剤投薬量計画、
・第1のデータセット220であって、第1の時間期間222を表し、この第1の時間期間中に対象者が関与した複数の代謝事象と、複数の代謝事象における代謝事象224ごとに、それぞれの代謝事象がいつ発生したかを表すタイムスタンプ226と、それぞれの代謝事象の特徴付け228とを備える、第1のデータセット220、
・複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値232が、第1の時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウ234を表す、対象者の複数の一次アドヒアランス値230、
・対象の任意の複数の二次アドヒアランス値236、
・任意のHbA1cルックアップテーブル、および
・対象の任意の第2のデータセット。
【0079】
いくつかの実施形態では、インスリン計画モニタリングモジュール204は、任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップ/デスクトップ)内でアクセス可能である。いくつかの実施形態では、インスリン計画モニタリングモジュール204は、ネイティブデバイスフレームワーク上で起動し、アンドロイドまたはiOSなどのオペレーティングシステム202を起動しているモニタデバイス250上にダウンロードするために利用可能である。
【0080】
いくつかの実装形態では、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視するためのモニタデバイス250の上記で識別されたデータ要素またはモジュールのうちの1つまたは複数は、前述のメモリデバイスのうちの1つまたは複数に記憶され、そして、上述の機能を実行するための命令のセットに対応する。上記で識別されたデータ、モジュール、またはプログラム(たとえば、命令のセット)は、別個のソフトウェアプログラム、手順、またはモジュールとして実装される必要はなく、したがって、これらのモジュールの様々なサブセットは、様々な実装形態において組み合わされてもよく、または別の方法で再構成されてもよい。いくつかの実装形態では、メモリ192および/または290は、任意で、上記で識別されたモジュールおよびデータ構造のサブセットを記憶する。さらに、いくつかの実施形態では、メモリ192および/または290は、上記で説明されていない追加のモジュールおよびデータ構造を記憶する。
【0081】
いくつかの実施形態では、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206へのアドヒアランスを経時的に監視するためのモニタデバイス250は、スマートフォン(たとえばiPHONE)、ラップトップ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または他の形態の電子デバイス(たとえば、ゲーム機)である。いくつかの実施形態では、モニタデバイス250はモバイルではない。いくつかの実施形態では、モニタデバイス250はモバイルである。
【0082】
図3は、本開示とともに使用され得るモニタデバイス250の具体的な実施形態のさらなる説明を提供する。図3に示されるモニタデバイス250は、1つまたは複数の処理ユニット(CPU)274、周辺機器インターフェース370、メモリコントローラ368、ネットワークまたは他の通信インターフェース284、メモリ192(たとえば、ランダムアクセスメモリ)、ユーザインターフェース278、ディスプレイ282および入力280(たとえばキーボード、キーパッド、タッチスクリーン)を含むユーザインターフェース278、任意の加速度計317、任意のGPS319、任意のオーディオ回路372、任意のスピーカ360、任意のマイクロフォン362、モニタデバイス250上の接触の強度を検出するための1つまたは複数の任意の強度センサ364(たとえば、モニタデバイス250のタッチセンシティブディスプレイシステム282などのタッチセンシティブ面)、任意の入力/出力(I/O)サブシステム366、1つまたは複数の任意の光学センサ372、前述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数の通信バス212、ならびに前述の構成要素に電力を供給するための電力システム276を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、入力280は、タッチセンシティブ面などのタッチセンシティブディスプレイである。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース278は1つまたは複数のソフトキーボードの実施形態を含む。ソフトキーボードの実施形態は、表示されたアイコン上に標準(QWERTY)および/または非標準構成の記号を含み得る。
【0084】
図3に示されるモニタデバイス250は、加速度計317に加えて、モニタデバイス250の位置および向き(たとえば、ポートレートまたはランドスケープ)に関する情報を取得するための、および/または対象者による身体運動量を決定するための磁力計(図示せず)およびGPS319(もしくは、GLONASSまたは他の全地球的ナビゲーションシステム)受信機を任意で含む。
【0085】
図3に示されるモニタデバイス250は、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206へのアドヒアランスを経時的に監視するために使用され得る多機能デバイスの一例に過ぎず、モニタデバイス250は、任意で、示されたものよりも多いもしくは少ない構成要素を有するか、任意で2つ以上の構成要素を組み合わせるか、または任意で構成要素の異なる構成もしくは配置を有することが理解されよう。図3に示される様々な構成要素は、1つまたは複数の信号処理および/または特定用途向け集積回路を含む、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せで実装される。
【0086】
図3に示されるモニタデバイス250のメモリ192は、任意で高速ランダムアクセスメモリを含み、また任意で、1つまたは複数の磁気ディスクストレージデバイス、フラッシュメモリデバイス、または他の不揮発性ソリッドステートメモリデバイスなどの不揮発性メモリも含む。CPU274などのモニタデバイス250の他の構成要素によるメモリ192へのアクセスは、任意で、メモリコントローラ368によって制御される。
【0087】
デバイスの入力および出力周辺機器をCPU274およびメモリ192に結合するために、周辺機器インターフェース370が使用され得る。1つまたは複数のプロセッサ274は、モニタリングデバイス250の様々な機能を実行し、データを処理するために、インスリン計画モニタリングモジュール204などの、メモリ192に記憶された様々なソフトウェアプログラムおよび/または命令のセットを起動または遂行する。
【0088】
いくつかの実施形態では、周辺機器インターフェース370、CPU274、およびメモリコントローラ368は、任意で、単一のチップ上に実装される。いくつかの他の実施形態では、それらは任意で、別個のチップ上に実装される。
【0089】
ネットワークインターフェース284のRF(無線周波数)回路は、電磁信号とも呼ばれるRF信号を送受信する。いくつかの実施形態では、対象者に関連付けられるグルコースセンサ102、対象者に関連付けられるインスリンペンもしくはポンプ104、および/またはアドヒアランスデバイス200などの1つまたは複数のデバイスから、このRF回路を使用して、処方されたインスリン薬剤投薬量計画、第1のデータセット220、HbA1cルックアップテーブル238、および/または第2のデータセット240が受信される。いくつかの実施形態では、RF回路108は、電気信号を電磁信号に/から変換し、電磁信号を介して通信ネットワークおよび他の通信デバイス、グルコースセンサ102、ならびにインスリンペンもしくはポンプ104および/またはアドヒアランスデバイス200と通信する。RF回路284は、これらに限定されないが、アンテナシステム、RFトランシーバ、1つまたは複数の増幅器、チューナ、1つまたは複数の発振器、デジタル信号プロセッサ、CODECチップセット、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリなどを含むこれらの機能を実行するためのよく知られている回路を任意で含む。RF回路284は、任意で通信ネットワーク106と通信する。いくつかの実施形態では、回路284は、RF回路を含まず、実際には、1つまたは複数のハードワイヤ(たとえば、光ケーブル、同軸ケーブルなど)を通じてネットワーク106に接続される。
【0090】
いくつかの実施形態では、オーディオ回路372、任意のスピーカ360、および任意のマイクロフォン362は、対象者とモニタデバイス250との間のオーディオインターフェースを提供する。オーディオ回路372は、周辺機器インターフェース370からオーディオデータを受信し、オーディオデータを電気信号に変換し、電気信号をスピーカ360に送信する。スピーカ360は、その電気信号を人間が聴ける音波に変換する。オーディオ回路372はまた、マイクロフォン362によって音波から変換された電気信号を受信する。オーディオ回路372は電気信号をオーディオデータに変換し、処理のためにオーディオデータを周辺機器インターフェース370に送信する。オーディオデータは、任意で、周辺機器インターフェース370によって、メモリ192および/もしくRF回路284から検索され、かつ/またはメモリ192および/もしくはRF回路284に送信される。
【0091】
いくつかの実施形態では、電源276は、電力管理システム、1つまたは複数の電源(たとえば、バッテリ、交流(AC))、再充電システム、停電検出回路、電力変換器またはインバータ、電力ステータス指標(たとえば、発光ダイオード(LED))およびポータブルデバイスにおける電力の生成、管理、および分配に関連付けられる任意の他の構成要素を任意で含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、モニタデバイス250は、任意で1つまたは複数の光学センサ372も含む。光学センサ372は、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)フォトトランジスタを任意で含む。光学センサ372は、1つまたは複数のレンズを通して投影された環境から光を受け取り、その光を、画像を表すデータに変換する。光学センサ372は、任意で、静止画像および/またはビデオを取り込む。いくつかの実施形態では、光学センサは、デバイス250の前面のディスプレイ282とは反対側のモニタデバイス250の背面に配置され、それにより、入力280は、静止画像および/またはビデオ画像取得のためのファインダとしての使用が可能になる。いくつかの実施形態では、対象者の画像が取得されるように(たとえば、対象者の健康状態または症状を確認するため、対象者の身体活動レベルを決定するため、または対象者の症状を遠隔で診断するのを手伝うために)別の光学センサ372がモニタデバイス250の前面に配置される。
【0093】
図3に示されるように、モニタデバイス250は、様々な基本システムサービスを処理するための手順を含むオペレーティングシステム202を備えることが好ましい。オペレーティングシステム202(たとえば、iOS、DARWIN、RTXC、LINUX、UNIX、OS X、WINDOWS、またはVxWorksなどの組込みオペレーティングシステム)は、一般的なシステムタスク(たとえば、メモリ管理、ストレージデバイス制御、電力管理など)を制御および管理するための様々なソフトウェア構成要素および/またはドライバを含み、様々なハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素との間の通信を容易にする。
【0094】
いくつかの実施形態では、モニタデバイス250はスマートフォンである。他の実施形態では、モニタデバイス250はスマートフォンではなく、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、緊急車両用コンピュータ、または他の形態のワイヤードもしくはワイヤレスネットワークデバイスである。いくつかの実施形態では、モニタデバイス250は、図2または図3に示されるモニタデバイス250に見られる回路、ハードウェア構成要素、およびソフトウェア構成要素のいずれかまたはすべてを有する。簡潔さおよび明瞭さのために、モニタデバイス250の可能な構成要素のうちのいくつかのみが、モニタデバイス250にインストールされる追加のソフトウェアモジュールをより良く強調するために示されている。
【0095】
図1に開示されているシステム48は独立して動作することができるが、いくつかの実施形態では、任意の方法で情報を交換するために、電子的医療記録とリンクされることもできる。
【0096】
本開示のある実施形態による、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206へのアドヒアランスを経時的に監視するためのシステム48の詳細、システムのプロセスおよび特徴のフローチャートに関する詳細が、図4A図4Cを参照して開示されている。いくつかの実施形態では、システムのそのようなプロセスおよび特徴は、図2および図3に示されているインスリン計画モニタリングモジュール204によって実施される。
【0097】
ブロック402。図4Aのブロック402を参照すると、1型真性糖尿病または2型真性糖尿病のいずれかを有する対象者におけるインスリン療法の目標は、絶食を制御するための正常な生理学的インスリン分泌、および食後血漿グルコースをできるだけ一致させることである。これは、対象の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206を用いて行われる。本開示の一態様は、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画206へのアドヒアランスを経時的に監視するためのモニタリングデバイス250を提供する。本開示では、処方されたインスリン薬剤投薬量計画は、基礎インスリン薬剤投薬量計画208を備える。モニタリングデバイスは、1つまたは複数のプロセッサ274およびメモリ192/290を備える。メモリは、1つまたは複数のプロセッサによって遂行されると、方法を実行する命令を記憶する。本方法では、第1のデータセット220が取得される。
【0098】
第1のデータセットは、対象者が関与した複数の代謝事象を備える。複数の代謝事象は第1の時間期間222内にある。様々な実施形態において、第1の時間期間は、1日以上、3日以上、5日以上、10日以上、1カ月以上、2カ月以上、3カ月以上、または5カ月以上である。複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象224は、(i)それぞれの代謝事象のタイムスタンプ226、および(ii)インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである第1の特徴付け228を備える。
【0099】
いくつかの実施形態では、第1のデータセット220内の各代謝事象224は、表1に記載の1つまたは複数の特徴付け228を有する。
【0100】
表1に記載の特徴付けを使用して、同じ時間期間に異なるラベルを有する代謝事象を含有することができる。たとえば、1日に基礎アドヒアランス外としてマーク付けされた代謝事象(絶食事象)B2を含有することができるが、その日のうちの3つの代謝事象(食事事象)は、ボーラスアドヒアランスA1とラベル付けされ得る。図15は、代謝事象を特徴付けるためのアルゴリズムを示しており、ここにおいて例は絶食事象であり、計画によって定義される関連する時間期間は1日である。特徴付けは、表1のカテゴリに従って提供される。そのような実施形態では、連続的にマーク付けされた期間、たとえば一次期間は1日であり、B2でマーク付けされた絶食事象またはA1でマーク付けされた食事事象を含有し、特徴付けられた代謝事象と呼ばれる。別の例として、1週間の期間の最初の3日間の各々における3つの絶食事象が100%の基礎アドヒアランスとしてマーク付けされ(たとえば基礎およびタイミングアドヒアランスB1、C1内)、それに続く2日の各々における2つの絶食事象が50%の基礎アドヒアランスとしてマーク付けされ(たとえば、基礎アドヒアランス内であるが、タイミングアドヒアランス外)、および、最後の2日以内の2つの絶食事象が0%の基礎アドヒアランスとしてマーク付けされる(たとえば、基礎アドヒアランス外であり、タイミングアドヒアランス外B2、C2)場合を考察する。絶食事象が基礎およびタイミングアドヒアランスとして特徴付けられ、マーク付けされている場合、その事象は、一例として、100%インスリン計画アドヒアランスとして定義され得、代謝事象が基礎アドヒアランス内とマーク付けされているが、タイミングアドヒアランス外である場合、その事象は、一例として、50%インスリン計画アドヒアランスとして定義され得、これは推奨より遅く投与量を服用する推定効果に基づいて異なる割合になる可能性がある。絶食事象が基礎アドヒアランス外である場合、その事象は、インスリン計画非アドヒアランスに対応する0%インスリン計画アドヒアランスである。したがって、この例におけるインスリン計画アドヒアランス代謝事象の数は、3+2×50%+2×0%である。したがって、この例では、先週のアドヒアランス(先週の一次タイムウィンドウ234に対する一次アドヒアランス値232)は次のようになる。
【0101】
他の実施形態では、そのような特徴付けは、代謝事象を絶食事象または食事事象であると見なし、インスリン薬剤計画アドヒアランスのために各絶食事象または食事事象を特徴付けることによって課される。
【0102】
いくつかの実施形態では、代謝事象は薬剤計画において定義されている代謝事象であり得、関連する事象の指標を連続的に測定するデバイスから自動的に識別され得、事象は対象者の代謝状態に関連し、それによって、デバイスは、代謝事象がタイムスタンプされ、そして計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスとして、薬剤計画に関して特徴付けられることを可能にする。たとえば、薬剤計画に従って定義される代謝事象は食事事象であり得、薬剤計画は、この事象に関するグルコース測定値に基づいてボーラスインスリンが投与されるべきであると決定し、または、それは絶食事象であってもよく、薬剤計画は基礎インスリンがこの事象に関連するグルコース測定値に基づいて投与されるべきであると決定する。
【0103】
いくつかの実施形態では、対象者によって維持された記録に依存することなしに、対象者によって引き起こされた代謝事象(たとえば、食事事象、絶食事象など)が識別される。たとえば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のグルコースセンサ102からの、対象者の自律的グルコース測定値242を備える第2のデータセット240が取得される。そのような各自律的グルコース測定値242は、それぞれの測定がいつ行われたかを表すために、グルコース測定タイムスタンプ244でタイムスタンプされる。
【0104】
ABBOTTによるFREESTYLE LIBRE CGM(「LIBRE」)は、グルコースセンサ102として使用され得るグルコースセンサの一例である。LIBREは、近づいたときに近距離無線通信を介してリーダデバイス(たとえば、アドヒアランスデバイス200および/またはモニタデバイス250)に最大8時間のデータを送信することができる、皮膚上のコインサイズのセンサを用いた無較正グルコース測定を可能にする。LIBREは、すべての日常生活の中で14日間着用され得る。いくつかの実施形態では、自律的グルコース測定は、5分以内、3分以内、または1分以内の間隔で対象者から行われる。場合によっては、サンプリング中にサンプリングレートが変わる可能性がある。以下の実施例1は、代謝事象を識別することと、それらの各々をインスリン計画アドヒアランスまたはインスリン計画非アドヒアランスとして特徴付けることとの両方のために、そのような自律的グルコース測定がどのように使用されるかを説明する。
【0105】
ブロック404。図4Aのブロック404を参照すると、プロセスは、複数の一次アドヒアランス値230の計算を続ける。複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値232は、第1の時間期間内の複数の一次タイムウィンドウにおける対応する一次タイムウィンドウ234を表す。各一次タイムウィンドウは、同じ第1の固定された持続時間のタイムウィンドウである。図6が示す。図6において、第1の時間期間222がタイムラインとして示されている。各一次タイムウィンドウ234、およびそれに対応する一次アドヒアランス値232は、このタイムラインの等しい部分に割り振られる。
【0106】
複数の一次アドヒアランス値におけるそれぞれの一次アドヒアランス値232は、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、それぞれの一次アドヒアランス値232に対応する一次タイムウィンドウ234内のタイムスタンプを有する複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算される。たとえば、図6の一次タイムウィンドウ234-1を考察すると、一次タイムウィンドウ234-1内に、合計で3つの代謝事象224に対して、2つのインスリン計画アドヒアランス代謝事象(224-1および224-3)と、1つのインスリン計画非アドヒアランス代謝事象とがある。この例では、一次アドヒアランス値232-1は、対応する一次タイムウィンドウ234-1(224-1および224-3の2つ)内のインスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、対応する一次タイムウィンドウ(224-1、224-2、および224-3の3つ)においてタイムスタンプを有する代謝事象の総数で割ることによって、すなわち、「2」を「3」で割ることによって計算される。当然のことながら、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を複数の代謝事象における代謝事象の総数で割るプロセスは、いくつもの方法で行うことができ、そのような方法はすべて、「インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、複数の代謝事象における代謝事象の総数で割る」という語句に包含される。たとえば、除算は、実際には、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数に、複数の代謝事象における代謝事象の総数の逆数を掛けることによって(たとえば、上記の例では、(2)×(1/3)を計算することによって)もたらされ得る。
【0107】
ブロック406。図4Aのブロック404を参照すると、複数の一次アドヒアランス値230が第1の時間期間222にわたって通信され、それによって、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視する。図7が示す。図7において、複数の一次アドヒアランス値における各アドヒアランス値230は、線702上のデータ点として通信される。
【0108】
そのような一実施形態では、代謝事象224は食事事象であり、各一次タイムウィンドウ234は1日であり、線702の複数の一次アドヒアランス値232は毎日のボーラスアドヒアランスを表す。
【0109】
他の実施形態では、代謝事象224は食事事象であり、各一次タイムウィンドウ234は4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、または4日間であり、線702の複数の一次アドヒアランス値232はボーラスアドヒアランスを表す。
【0110】
図7がさらに示すように、いくつかの実施形態では、線702上の一次アドヒアランス値とともに線704に沿って二次アドヒアランス値236がプロットされる。たとえば、図4Aのブロック408に示されるように、いくつかの実施形態では、複数の二次アドヒアランス値236が計算される。複数の二次アドヒアランス値における各二次アドヒアランス値は、第1の時間期間内に同時に重複する複数の二次タイムウィンドウにおける対応する二次タイムウィンドウ244を表す。図6が示している。
【0111】
図6において、各二次タイムウィンドウ244、およびそれに対応する二次アドヒアランス値244は、第1の時間期間の一部に割り振られる。しかしながら、複数の二次タイムウィンドウ244におけるそれぞれの二次タイムウィンドウ244は、このタイムラインに沿って複数の二次タイムウィンドウ244における少なくとも1つの他の二次タイムウィンドウ244と同時に重複している。複数の二次アドヒアランス値におけるそれぞれの二次アドヒアランス値236は、インスリン計画アドヒアランスである代謝事象224の数を、それぞれの二次アドヒアランス値に対応する二次タイムウィンドウにおけるタイムスタンプを有する複数の代謝事象における代謝事象の総数で割ることによって計算される。たとえば、図6の二次タイムウィンドウ244-1を考察すると、二次タイムウィンドウ244-1内に、合計で6つの代謝事象224に対して、3つのインスリン計画アドヒアランス代謝事象(224-1、224-3、および224-4)と、3つのインスリン計画非アドヒアランス代謝事象(224-2、224-5、および224-6)がある。この例では、二次アドヒアランス値236-1は、対応する二次タイムウィンドウ236-1(224-1、224-3、および224-4の3つ)内のインスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、対応する二次タイムウィンドウ(224-1から224-6の6つ)においてタイムスタンプを有する代謝事象の総数で割ることによって、すなわち、「3」を「6」で割ることによって計算される。当然のことながら、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を複数の代謝事象における代謝事象の総数で割るプロセスは、いくつもの方法で行うことができ、そのような方法はすべて、「インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数を、複数の代謝事象における代謝事象の総数で割る」という語句に包含される。たとえば、除算は、実際には、インスリン計画アドヒアランス代謝事象の数に、複数の代謝事象における代謝事象の総数の逆数を掛けることによって(たとえば、上記の例では、(3×(1/6))を計算することによって)もたらされ得る。
【0112】
図6に示されるように、複数の二次タイムウィンドウにおける二次タイムウィンドウの少なくとも1つのサブセットにおける各二次タイムウィンドウ244は、一次タイムウィンドウの持続時間を設定する第1の固定された持続時間よりも長い持続時間である。図6において、二次タイムウィンドウはそれぞれ同じ長さであり、一次タイムウィンドウ234のちょうど2倍の長さである。他の様々な実施形態では、二次タイムウィンドウはそれぞれ同じ長さであり、一次タイムウィンドウ234のちょうど3倍の長さ、ちょうど4倍の長さ、ちょうど5倍の長さ、ちょうど6倍の長さ、ちょうど7倍の長さ、ちょうど8倍の長さ、ちょうど9倍の長さ、またはちょうど10倍の長さである
【0113】
いくつかの実施形態では、各二次タイムウィンドウ244は1週間の長さであり、それぞれの二次タイムウィンドウ244は別のそれぞれの二次タイムウィンドウ244と6日だけ重複する。いくつかの実施形態では、各二次タイムウィンドウ244は1週間の長さであり、それぞれの二次タイムウィンドウ244は別のそれぞれの二次タイムウィンドウ244と1日、2日、3日、4日、5日、または6日だけ重複する。いくつかの実施形態では、各二次タイムウィンドウ244は1週間以上の長さであり、それぞれの二次タイムウィンドウ244は他のどの二次タイムウィンドウ244とも重複しない。
【0114】
いくつかの実施形態では、図6に示されるように、それぞれの二次タイムウィンドウ244は、それぞれの二次タイムウィンドウ244の時間の長さに関して、複数のタイムウィンドウにおける別の二次タイムウィンドウと50パーセントの時間的重複を示す。いくつかの実施形態では、それぞれの二次タイムウィンドウ244は、それぞれの二次タイムウィンドウ244の時間の長さに関して、複数のタイムウィンドウにおける別の二次タイムウィンドウと10パーセント未満の時間的重複を示す。いくつかの実施形態では、それぞれの二次タイムウィンドウ244は、それぞれの二次タイムウィンドウ244の時間の長さに関して、複数のタイムウィンドウにおける別の二次タイムウィンドウと10パーセントから30パーセントの間の時間的重複を示す。いくつかの実施形態では、それぞれの二次タイムウィンドウ244は、それぞれの二次タイムウィンドウ244の時間の長さに関して、複数のタイムウィンドウにおける別の二次タイムウィンドウと30パーセントから60パーセントの間の時間的重複を示す。いくつかの実施形態では、それぞれの二次タイムウィンドウ244は、それぞれの二次タイムウィンドウ244の時間の長さに関して、複数のタイムウィンドウにおける別の二次タイムウィンドウと60パーセントから90パーセントの間の時間的重複を示す。
【0115】
図7に示されるように、一次アドヒアランス値と二次アドヒアランス値の両方が計算される実施形態では、通信ステップは、第1の時間期間にわたって複数の一次アドヒアランス値と複数の二次アドヒアランス値との重ね合わせを通信することを備える。図7において、複数の一次アドヒアランス値は線602として通信され、複数の二次アドヒアランス値は線704として通信される。いくつかの実施形態では、計算された一次アドヒアランス232値および/または二次アドヒアランス値244は、それらの本来の範囲以外の範囲に入るようにスケーリングされる。したがって、いくつかの実施形態では、計算された一次アドヒアランス値232および/または二次アドヒアランス値244の本来の範囲は0から1であるが、その後、それらは0から100、0から1000、または任意の他の適切なスケールに一様にスケーリングされる。そのようなスケーリングは、代謝事象224のあらゆる下方重み付けとは無関係に作用する。
【0116】
いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス250は、対象者が事象を手動で追加およびマーク付けすることを可能にする。いくつかのそのような実施形態では、アドヒアランスデバイス250は、たとえば、食事などの事象、インスリンおよびグルコース測定、睡眠期間、身体活動の期間、病気の日などの、対象者が選択するためのカテゴリを提案する。いくつかの実施形態では、これらの事象は具体的なカテゴリ名でマーク付けされ、次いで、これは血糖コントロール不良の原因を識別し、治療の透明性を向上させるために使用される。たとえば、いくつかの実施形態では、これは、これらの追加の事象を一次アドヒアランス値および/または二次アドヒアランス値に時間的に重ね合わせて、重ね合わせをモニタデバイス250のディスプレイに表示することによって遂行される。いくつかの実施形態では、これらの追加の事象はウェアラブルデバイスによって検出される。
【0117】
図4Aのブロック410を参照すると、いくつかの実施形態では、各二次タイムウィンドウ244は、一次タイムウィンドウの第1の固定された持続時間よりも長い同じ第2の固定された持続時間のタイムウィンドウである。これは図6に示されており、二次タイムウィンドウ244は一次タイムウィンドウ234よりも長い固定された持続時間であることが分かる。図11は、本開示の実施形態による、ボーラスアドヒアランスがどのように通信されるかの例を示す図であり、線1102は一次アドヒアランス値であり、線1104は二次アドヒアランス値である。図12は、本開示の実施形態による、基礎アドヒアランスがどのように通信されるかの例を示す図であり、線1202は一次アドヒアランス値であり、線1204は二次アドヒアランス値である。
【0118】
図4Bのブロック412を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の代謝事象における各代謝事象224は絶食事象であり、処方されたインスリン薬剤投薬量計画206は基礎インスリン薬剤投薬量計画208である。いくつかのそのような実施形態では、各一時タイムウィンドウ234の第1の固定された持続時間は1週間であり、複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウは第1の期間内の3カ月を表す。そのような実施形態による一次アドヒアランス値232と二次アドヒアランス値242との通信が図8Aに示されており、一次アドヒアランス値232は線802として報告され、二次アドヒアランス値242は線804として報告されている。ユーザは線802から毎週の基礎アドヒアランスを確かめることができるだけでなく、線804から計画アドヒアランスのより時間平均化された見通しも取得することができるため、このように計画アドヒアランスデータを通信することは非常に有利である。
【0119】
図4Bのブロック416を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の代謝事象における各代謝事象224は食事事象であり、インスリン薬剤投薬量計画206はボーラスインスリン薬剤投薬量計画214である。図4Bのブロック418を参照すると、いくつかのそのような実施形態では、各一次タイムウィンドウ234の第1の固定された持続時間は1日であり、また複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウ244は第1の期間の始めからの移動平均を表す。図13が示す。図13において、各一次タイムウィンドウ234は1日であり、また複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウ244は第1の期間の始めからの移動平均を表す。したがって、たとえば、図13の二次アドヒアランス値236-Pは、第1の時間期間222{224-1、224-3、224-4、224-7、224-8、224-9、224-11、224-12、224-13、224-14、...、224-(Q-2)、224-(Q-1)、224-Q}における計画適合代謝事象の数を、第1の時間期間(Q)における計画代謝事象の総数で割ることによって計算される。
【0120】
図4Bのブロック420を参照すると、いくつかの実施形態では、設定されたカットオフ時間より早く発生する複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象224は、それぞれの一次タイムウィンドウにおける設定されたカットオフ時間後に発生する複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象に対して下方重み付けされる。
【0121】
いくつかの実施形態では、設定されたカットオフ時間の適用は一次アドヒアランス値232の計算に適用され、二次アドヒアランス値242には適用されない。
【0122】
いくつかの実施形態では、設定されたカットオフ時間の適用は、一次アドヒアランス値232と二次アドヒアランス値242の両方の計算に適用される。
【0123】
いくつかの実施形態では、設定されたカットオフ時間の適用は、二次アドヒアランス値242の計算にのみ適用され、一次アドヒアランス値232には適用されない。そのような実施形態では、一次アドヒアランス値232は上述のように計算され、二次アドヒアランス値242はカットオフ時間を考慮して計算される。たとえば、図6を参照すると、設定されたカットオフ時間が1週間であり、一次タイムウィンドウの第1の固定された持続時間が一週間であるのに対して、二次タイムウィンドウ244は2週間に設定されており、そのような下方重み付けは二次アドヒアランス値の計算にのみ影響し、一次アドヒアランス値には影響しない。これは、カットオフ時間が各一次および/または二次タイムウィンドウの終わりから遡及的に適用されるからである。図14が示している。図14に示される例において、二次タイムウィンドウ244-2は2週間の持続時間を有し、一次タイムウィンドウは1週間の持続時間を有し、設定されたカットオフ時間は1週間であり、矢印1406によって示されるように、タイムウィンドウ244-2の終わりから遡及的に適用される。したがって、二次アドヒアランス値236-2の計算において、代謝事象224-4から224-6は、代謝事象224-7および224-8に比べて下方重み付けされる。下方重み付けをすることなしに、二次アドヒアランス値は、アドヒアランス代謝事象の数(3つ:224-4、224-5、および224-7)を代謝事象の総数(5つ:224-4から224-8)で割ったもの、または3/5として計算される。1週間の設定されたカットオフ時間では、図14のボックス1402内の1週目の代謝事象は、図14のボックス1404内の2週目の代謝事象と比較して下方重み付けされている。
【0124】
下方重み付けは、図13の例において特に有用であり、複数の二次タイムウィンドウにおけるそれぞれの二次タイムウィンドウ244は、第1の時間期間の始めからの移動平均を表す。そのような実施形態では、二次アドヒアランス値を計算するときに、より古い代謝事象を下方重み付けする、または無視すらすることが有用である。これは、時間の線形関数、時間の非線形関数、または具体的な時間期間より古いデータが完全に排除される場合のメモリカットオフによって行われ得る。一例では、12週間の二次アドヒアランスを計算するときのアドヒアランスデータの線形重み付けは、以下の計算によって行われ得る。
上式で、
である。
【0125】
この一例は、入力として図13に示される二次タイムウィンドウを使用して図8Bにおける線806としてプロットされた二次アドヒアランス値に対して示されているが、線802は毎週の一次アドヒアランス値である。
【0126】
非線形重み付けの例は、たとえば、それぞれのアドヒアランス値を計算する際に、最近4週間の代謝事象を100%重み付けし、その前の4週間の代謝事象を50%重み付けし、8週間よりも古いすべての代謝事象を無視することであり得る。そのような例は、入力として図13に示される二次タイムウィンドウを使用して図8Cにおける線808としてプロットされた二次アドヒアランス値に対して示されているが、線802は毎週の一次アドヒアランス値である。
【0127】
下方重み付けに使用される設定されたカットオフ時間より前に発生する代謝事象の程度は用途に依存する。いくつかの実施形態では、そのような代謝事象は、50パーセントなどの、0から99パーセントの間のあらかじめ定められた量だけ一様に重み付けされる。したがって、下方重み付けが50パーセントである図14の例では、代謝事象224-4、224-7、および224-8を、代謝事象224-4から224-8で割るために、代謝事象224-4から224-6は50パーセント下方重み付けされ、二次アドヒアランス値236-2は(0.5+1.0+1.0)/(0.5+0.5+0.5+1+1)として計算される。下方重み付けが75パーセントである図14の例では、代謝事象224-4、224-7、および224-8を、代謝事象224-4から224-8で割るために、代謝事象224-4から224-6は75パーセント下方重み付けされ、二次アドヒアランス値236-2は(0.25+1.0+1.0)/(0.25+0.25+0.25+1+1)として計算される。下方重み付けが90パーセントである図14の例では、代謝事象224-4、224-7、および224-8を、代謝事象224-4から224-8で割るために、代謝事象224-4から224-6は90パーセント下方重み付けされ、二次アドヒアランス値236-2は(0.10+1.0+1.0)/(0.10+0.10+0.10+1+1)として計算される。
【0128】
いくつかの実施形態では、設定されたカットオフ時間より前に発生する代謝事象は時間の関数として下方重み付けされるため、後の事象よりも時間的に早く発生する事象は、より下方重み付けされるようになる。そのような例で図14を参照すると、代謝事象224-4は、代謝事象224-5よりも下方重み付けされ、次に、代謝事象224-5は代謝事象224-6よりも下方重み付けされるが、代謝事象224-7および224-8はそれぞれ最大値を有する。
【0129】
図4Bのブロック422を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象は、それぞれの一次タイムウィンドウにおける時間の線形関数として下方重み付けされる。たとえば、図6を参照すると、代謝事象224-1は、代謝事象224-2よりも下方重み付けされ、次に、代謝事象224-2は代謝事象224-3よりも下方重み付けされ、そのような重み付けの程度は時間の線形関数である。いくつかの実施形態では、複数の代謝事象におけるそれぞれの代謝事象は、それぞれの一次タイムウィンドウおよび/または二次タイムウィンドウにおける時間の線形関数として下方重み付けされる。
【0130】
図4Bのブロック424を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の複数のアドヒアランス値または第2の複数のアドヒアランス値は、アドヒアランスにおける低下について分析される。いくつかのそのような実施形態では、そのような傾向は、少なくとも第2のしきい値時間量の間、第1のしきい値アドヒアランス値を下回る低下として識別される。図10は、少なくとも第2のしきい値時間量の間、第1のしきい値アドヒアランス値を下回る低下を示す。
【0131】
いくつかのそのような実施形態では、そのような傾向が識別された場合、対象者のインスリン薬剤投薬量計画におけるインスリン薬剤投薬量が減少する。言い換えれば、対象者がインスリン計画にアドヒアランスしていないと決定された場合、インスリン計画は、有害事象から対象者を保護するために、より保守的な計画にシフトされる。第1のしきい値アドヒアランス値および第2のしきい値時間量の値は用途に大きく依存し、また、医療従事者の判断、基礎となる糖尿病の症状の段階、対象者の健康状態におけるさらなる合併症、および対象者が服用しているインスリン薬剤の種類などのいくつかの要因に依存する。一般に、第2のしきい値時間量は、治療計画の変更が正当化されることを保証するために約数週間または約数カ月である。
【0132】
図4Bのブロック426を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の複数のアドヒアランス値におけるアドヒアランス値の関数として計算されたHbA1c増加を含むHbA1cルックアップテーブル238が取得される。たとえば、Poulsen and Randlov、2009、「How Much Do Forgotten Insulin Injections Matter to Hemoglobin A1c in People with Diabetes? A Simulation Study」、Journal of Diabetes Science and Technology Mar;2(2):229-235に開示されている方法であり、参照により本明細書に組み入れられるものは、逃した投与量がHbA1cレベルにどのように影響するかを決定するために使用される。参照した研究は、1週間に2.1回のボーラス注射を忘れるとHbA1cが約0.3から0.4パーセント増加し、同じ量の基礎注射を忘れると(1日に2回の基礎投与が必要な投薬量計画と仮定する)HbA1cレベルが0.2から0.3パーセント上昇すると推定している。さらに、参考文献は、39%の基礎またはボーラス注射を忘れると、HbA1cが1.8パーセントも増加すると推定している。そのような数値は、非アドヒアランスが患者の治療結果にどの程度影響を与えているかを推定するために使用され得る。図9は、以下の計算による、1週間に2.1回のボーラスインスリン注射を忘れる例を示す。
1週間に2.1回のボーラス投与を忘れると、
のアドヒアランスに相当する。
【0133】
したがって、約90%のアドヒアランスはHbA1cを約0.3~0.4%増加させ、約60%のアドヒアランスはHbA1cを1.8%増加させる。基礎アドヒアランスについても同じことが行われ得る。
【0134】
さらに、複数の一次アドヒアランス値におけるどの一次アドヒアランス値が、HbA1cルックアップテーブルに従って計算されたHbA1c増加にしきい値を超えさせるかの指示が通信される。図9は、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスに関するこの特徴を示しており、HbA1cルックアップテーブル238は、90パーセントから100パーセントの間のボーラス計画アドヒアランス(たとえば、1週間に2回未満のボーラス注射の欠如)が対象者に対して約0.1%のHbA1cの増加を引き起こし得(906)、82パーセントから90パーセントの間のボーラス計画アドヒアランス(たとえば、1週間に2~3回のボーラス注射の欠如)が、対象者に対して約0.3%~0.4%のHbA1cの増加を引き起こし得(908)、60パーセントから82パーセントの間のボーラス計画アドヒアランス(たとえば、1週間に3回を超えるボーラス注射の欠如)が、対象者に対して約1.8%のHbA1cの増加を引き起こし得る(910)ことを示している。図9から、どの代謝事象がどのHbA1cの増加の原因であるかが分かる。たとえば、線902および/または904がゾーン910に入るときに発生する代謝事象は、1.8パーセントHbA1cの増加を引き起こしている。
【0135】
図9は、1週間に逃したボーラス注射に関するアドヒアランスを表している。しかしながら、ボーラス注射は、第1のデータセット210のいくつかの実施形態において、そのような代謝事象に特徴付け228を提供するために、代謝事象(たとえば食事事象)に時間的に一致される。したがって、いくつかのそのような実施形態では、アドヒアランスは、不適合な代謝事象224の割合に関して同等に表される。
【0136】
図10は、基礎インスリン薬剤投薬量計画208へのアドヒアランスの特徴を示しており、HbA1cルックアップテーブル238は、88パーセントから100パーセントの間の基礎計画アドヒアランス(たとえば、1週間に1回未満の基礎注射の欠如)が、対象者に対して約0.1%のHbA1cの増加を引き起こし得(1010)、62パーセントから88パーセントの間の基礎計画アドヒアランス(たとえば、1週間に1~2回の基礎注射の欠如)は、対象者に対して約0.2%~0.3%のHbA1cの増加を引き起こし得(1012)、50パーセントから62パーセントの間の基礎計画アドヒアランス(たとえば、1週間に3回の基礎注射の欠如)は、対象者に対して約1.8%のHbA1cの増加を引き起こし得る(1014)ことを示している。図10から、どの代謝事象がどのHbA1cの増加の原因であるかが分かる。たとえば、線1002および/または1004がゾーン1012に入るときに発生する代謝事象は0.2から0.3パーセントのHbA1cの増加を引き起こしている。
【0137】
図10は、1週間に逃した基礎注射に関するアドヒアランスを表している。しかしながら、第1のデータセット210のいくつかの実施形態では、そのような代謝事象に特徴付け228を提供するために、基礎注射が代謝事象(たとえば、絶食事象)に時間的に一致されるので、いくつかのそのような実施形態では、アドヒアランスは、不適合な代謝事象224の割合に関して同等に表される。
【0138】
図4Cのブロック428を参照すると、有利なことに、第1の時間期間にわたる複数の一次アドヒアランス値、および/または第1の時間期間にわたる複数の一次アドヒアランス値および複数の二次アドヒアランス値の重ね合わせは、モバイルであるモニタデバイス250に通信され得、それによって、対象者の処方されたインスリン薬剤投薬量計画へのアドヒアランスを経時的に監視する。したがって、いくつかの実施形態では、モニタデバイス250はディスプレイ208を含むモバイルデバイスであり、アドヒアランス値の通信は、アドヒアランス値をディスプレイ上に提示することを含む。図11および図12は、それぞれボーラスアドヒアランスおよび基礎アドヒアランスについてのこの特徴を示す。
【0139】
図4Cのブロック430を参照すると、いくつかの実施形態では、第2のデータセット240が取得される。第2のデータセットは、対象者の複数の自律的グルコース測定値と、複数の自律的グルコース測定値におけるそれぞれの自律的グルコース測定値242ごとに、それぞれの測定が行われたときを表すタイムスタンプ244とを備える。いくつかのそのような実施形態では、これらのグルコース測定値は、経時的に第1の時間期間内の複数の一次アドヒアランス値および/または一次二次アドヒアランス値と時間的に一致し、一次アドヒアランス値および/または一次二次アドヒアランス値に重ね合わされるグルコース測定値は、アドヒアランスがグルコース値にリアルタイムでどのように影響するかを対象者が理解することができるように、モニタデバイス250に表示される。図4Cのブロック432を参照すると、いくつかのそのような実施形態では、アドヒアランスデバイス250は、対象者に取り付けられたグルコースセンサ102からワイヤレスで第2のデータセットを受信するためのワイヤレス受信機284を備える。
【0140】
実施例1:代謝事象を識別し、それらをインスリン計画アドヒアランスまたはインスリン計画非アドヒアランスとして特徴付けるための自律的グルコース測定値の使用。上述のブロック402は、いくつかの実施形態において、複数のグルコース測定値を備える第2のデータセット240がどのように自律的に取得されるかを説明した。この例では、自律的グルコース測定に加えて、インスリン投与事象が、処方されたインスリン計画を適用するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンおよび/またはポンプ104からのインスリン薬剤記録の形で取得される。これらのインスリン薬剤記録はどのような形式でもよく、実際には複数のファイルまたはデータ構造にわたっていることもある。このように、いくつかの実施形態では、本開示は、過去に投与されたインスリン薬剤のタイミングおよび量を思い出すことができるという意味で「スマート」になった、最近のインスリン投与ペンの進歩を利用する。そのようなインスリンペン104の一例は、NovoPen5である。そのようなペンは、患者が投与量を記録するのを支援し、二重投与を防ぐ。インスリンペンは、インスリン薬剤の投与量およびタイミングを送受信することができ、したがって、連続グルコースモニタ102、インスリンペン104、および本開示のアルゴリズムの統合が可能になると考えられる。このように、1つまたは複数のインスリンペン104からのそのようなデータのワイヤレス取得を含む、1つまたは複数のインスリンペン104および/またはポンプからのインスリン薬剤記録が考えられる。
【0141】
いくつかの実施形態では、各インスリン薬剤記録は、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおけるそれぞれのインスリンペンを使用して対象者に注射されたインスリン薬剤の量を含む、それぞれのインスリン薬剤注射事象と、(ii)それぞれのインスリン薬剤注射事象が発生すると、それぞれのインスリンペン104によって自動的に生成される、対応する電子タイムスタンプとを備える。
【0142】
いくつかの実施形態では、代謝事象224の一形態である複数の絶食事象は、第2のデータセット240内の対象者の自律的グルコース測定値242およびそれらの関連グルコース測定タイムスタンプ244を使用して識別される。絶食事象の間のグルコース測定は、基礎血糖値、すなわち基礎注射事象に関連する血糖値を測定するために重要である。基礎血糖値は基礎注射事象の効果の評価を可能にする。
【0143】
グルコースモニタ102からの自律的グルコース測定値242を使用して絶食事象を検出するための多数の方法がある。たとえば、いくつかの実施形態では、第1の絶食事象(複数の絶食事象における)は、複数の自律的グルコース測定値にわたる分散の移動期間δ を最初に計算することによって複数の自律的グルコース測定値によって包含される第1の時間期間(たとえば、24時間)において識別され、
であり、上式で、Gは、複数のグルコース測定値の部分kのi番目のグルコース測定値であり、Mは、複数のグルコース測定値におけるいくつかのグルコース測定値の数であり、連続するあらかじめ定められた時間幅を表し、
は、複数のグルコース測定値から選択されたM個のグルコース測定値の平均であり、kは第1の時間期間内である。一例として、グルコース測定値は数日または数週間にわたることがあり、自律的グルコース測定値は5分ごとに取られる。この全時間幅内の第1の時間期間k(たとえば、1日)が選択され、したがって、複数の測定値のうちの部分kが最小分散期間にわたって調べられる。第1の絶食期間は、第1の時間期間内の最小分散期間
であると見なされる。次に、別の最小分散期間にわたって複数のグルコース測定値の次の部分kを調べ、それによって別の絶食期間を割り当てることによって、複数のグルコース測定値の部分kを用いてプロセスが繰り返される。複数のグルコース測定値のすべての部分kを通してこの方法を繰り返すことは、複数の絶食期間を構築するために使用される。
【0144】
上述の方法または任意の他の方法によって絶食事象が識別されると、複数の識別された絶食事象におけるそれぞれの絶食事象に第1の特徴付け228が適用される。したがって、それぞれの絶食事象ごとに、それぞれの絶食事象についての第1の特徴付け228がある。第1の特徴付けは、インスリン計画アドヒアランスおよびインスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである。より具体的には、本明細書では、第1の特徴付けは、基礎インスリン計画アドヒアランスおよび基礎インスリン計画非アドヒアランスのうちの1つである。
【0145】
それぞれの絶食事象は、それぞれの絶食事象の間に、取得した1つまたは複数の薬剤記録が処方された基礎インスリン薬剤投薬量計画に時間的および量的にアドヒアランスすることを確立している場合、基礎インスリン計画アドヒアランスと見なされる。それぞれの絶食事象は、それぞれの絶食事象の間に、取得した1つまたは複数の薬剤記録が処方された基礎インスリン薬剤投薬量計画に時間的および量的にアドヒアランスすることを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含まない場合、基礎計画非アドヒアランスと見なされる。いくつかの実施形態では、基礎計画208は、長時間作用型インスリン薬剤210の基礎投与量が複数の時期におけるそれぞれの時期212の間に服用されるべきであることと、それぞれの絶食事象が、それぞれの絶食事象に関連付けられる時期212の薬剤記録がない場合に非アドヒアランスである基礎インスリン薬剤計画208と見なされることとを指定する。様々な実施形態において、複数の時期における各時期は、2日以下、1日以下、または12時間以下である(418)。したがって、第2のデータセット240が絶食期間を識別するために使用され、処方された基礎インスリン薬剤投薬量計画208が長時間作用型インスリン薬(薬)210の投薬量Aを24時間ごとに服用することを指定している場合を考察する。したがって、この例では、時期は1日(24時間)である。絶食事象は、タイムスタンプ付きグルコース測定値における最小分散の期間から、またはタイムスタンプ付き自律的グルコース測定値の他の形態の分析によって導出されるので、本質的にタイムスタンプ付きである。したがって、それぞれの絶食事象によって表されるタイムスタンプ、または絶食の期間は、絶食事象が基礎インスリン薬剤計画アドヒアランスであるかどうかを調べるための出発点として使用される。たとえば、それぞれのタイムスタンプに関連付けられる絶食の期間が5月17日火曜日の午前6:00である場合、薬剤注射記録において求められているのは、対象者が、5月17日火曜日の午前6:00までの24時間(時期)以内に長時間作用型のインスリン薬剤の投薬量A(および、処方された投薬量より多くもなく、少なくもない)を服用したという証拠である。対象者がこの時期の間に長時間作用型インスリン薬剤の処方された投薬量を服用した場合、それぞれの絶食時事象(ならびに/または、この時間の間の基礎注射事象および/もしくはグルコース測定)は基礎計画アドヒアランスと見なされる。この時期212の間に、対象者が長時間作用型インスリン薬剤210の処方された投薬量を服用しなかった場合(または、この期間の間に長時間作用型インスリン薬剤を処方された投薬量よりも多く服用した場合)、それぞれの絶食事象(ならびに/または、この時間の間の基礎注射事象および/もしくはグルコース測定)は基礎計画非アドヒアランスと見なされる。
【0146】
基礎注射事象が基礎インスリン薬剤計画アドヒアランスであるか否かを遡及的に決定するための絶食事象の使用が記載されているが、本開示はそのように限定されない。いくつかの実施形態では、時期は、基礎インスリン薬剤計画によって定義され、対象者が時期の間の基礎計画によって必要とされる(そして、それよりも多くはない)量の基礎インスリンを服用している限り、たとえ絶食事象後でも、絶食事象は基礎インスリン薬剤計画アドヒアランスと見なされる。たとえば、時期が真夜中の直後に毎日始まる1日である(言い換えれば、基礎計画が1日に服用されるべき1つまたは複数の基礎インスリン薬剤投薬量を指定し、さらに、1日を真夜中に開始および終了するものとして定義する)場合、絶食事象は正午に発生し、対象者がその日のある時点でその日のために処方された基礎注射を受けたならば、その絶食事象は適合していると見なされる。
【0147】
いくつかの実施形態では、絶食事象は、実際には、基礎インスリン薬剤計画が、基礎インスリン注射事象が発生しなければならないことを指定している時期の間は検出されない。したがって、基礎注射は処方された基礎薬剤計画208に従って行われるべきである。上記の使用事例によると、この時期は絶食事象を見つけることができなかった場合の基礎アドヒアランスカテゴリ化を有していない。いくつかのそのような実施形態では、基礎インスリン薬剤投薬量計画208が知られているので、(当該時期の間のグルコース測定および/またはその時期内の基礎注射事象の)アドヒアランスに関する決定は、基礎インスリン薬剤計画自体および注射事象データに基づいており、したがって、注射事象データから絶食期間を検出する必要はない。別の例として、基礎インスリン薬剤計画が週1回の基礎注射である場合、例示的な手順は、たとえ絶食事象が見つからなくても7日間のウィンドウ以内に基礎注射を探すことである。
【0148】
いくつかの実施形態では、処方されたインスリン薬剤投薬量計画206は、基礎インスリン薬剤投薬量計画208に加えて、またはその代わりに、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画214をさらに備える。
【0149】
対象者が複数の複数の種類のインスリン薬剤を投与している実施形態では、複数の薬剤記録におけるそれぞれのインスリン薬剤注射事象は、(i)長時間作用型インスリン薬剤、および(ii)短時間作用型インスリン薬剤のうちの1つから、対象者に注射されたそれぞれの種類のインスリン薬剤を提供する。典型的には、長時間作用型インスリン薬剤は基礎インスリン薬剤投薬量計画208に対するものであるのに対し、短時間作用型インスリン薬剤はボーラスインスリン薬剤投薬量計画214に対するものである。
【0150】
したがって、有利なことに、本開示はまた、第1のデータセット220内の追加の種類のカテゴリ化された代謝事象224を提供するために、ボーラスインスリン薬剤注射事象が利用可能である場合に、ボーラスインスリン薬剤注射事象を利用することができる。いくつかのそのような実施形態では、ボーラスインスリン薬剤注射事象は以下の方法で利用される。複数の食事事象は、食事検出アルゴリズムを使用して、第2のデータセット240内の複数の自律的グルコース測定値242および対応するタイムスタンプ244を使用して識別される。食事が検出されない場合、プロセスは終了する。食事が検出された場合、特徴付けがそれぞれの食事事象に適用される。このようにして、「ボーラス計画アドヒアランス」および「ボーラス計画非アドヒアランス」のうちの1つである特徴付けを含むそれぞれの食事事象を有する、複数の食事事象が取得される。次いで、そのような情報は、本開示のシステムおよび方法において使用され得、各食事は代謝事象224と見なされ、「ボーラス計画アドヒアランス」および「ボーラス計画非アドヒアランス」などの食事の特徴付けは代謝事象の特徴付け228である。
【0151】
いくつかの実施形態では、複数の薬剤記録における1つまたは複数の薬剤記録が、それぞれの食事の間に、時間的に、量的に、およびインスリン薬剤の種類的に、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画214へのアドヒアランスを示す場合、それぞれの食事はボーラス計画アドヒアランスと見なされる。いくつかの実施形態では、それぞれの食事608の間に、複数の薬剤記録が常用ボーラスインスリン薬剤投薬量計画を伴う時間的に、量的に、およびインスリン薬剤の種類的に、アドヒアランスを示さない場合、それぞれの食事はボーラス計画非アドヒアランスと見なされる。たとえば、常用ボーラスインスリン薬剤投薬量計画がその投薬量を指定する場合を考察する。インスリン薬剤BのAは、それぞれの食事の30分前に服用されるべきであり、ある食事は、5月17日火曜日の午前7:00に発生する。当然のことながら、投薬量Aは、食事の予測される大きさまたは種類の関数であることが理解されよう。薬剤記録において求められているのは、対象者が、5月17日火曜日の午前7:00までの30分以内にインスリン薬剤Bの投薬量A(および、処方された投薬量より多くもなく、少なくもない)を服用したという証拠である。対象者がそれぞれの食事までの30分の間にインスリン薬剤Bの処方された投薬量Aを服用した場合、それぞれの食事(ならびに/または、この時間の間のボーラス投与および/もしくはグルコース測定)はボーラス計画アドヒアランスと見なされる。対象者がそれぞれの食事までの30分の間にインスリン薬剤Bの処方された投薬量Aを服用しなかった場合(または、この期間の間にインスリン薬剤Bの処方された投薬量Aよりも多く服用した場合)、それぞれの食事(ならびに/または、この時間の間のボーラス投与および/もしくはグルコース測定)は、ボーラス計画非アドヒアランスと見なされる。本明細書における30分の時間期間は例示的であり、他の実施形態では、その時間はより短くてもよく、またはより長くてもよい(たとえば食事の15分から2時間前、および/または処方されるインスリン薬剤の種類に依存する)。
【0152】
いくつかの実施形態では、インスリン計画アドヒアランスとしての代謝事象の特徴付けは、推奨より遅く投与量を服用すること、または推奨される投与量を下回る、もしくは上回る投与量を服用することの推定血糖効果に依存して、インスリン計画アドヒアランスの程度または割合として決定され得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、複数のフィードフォワード事象が取得され、代謝事象を特徴付けるのを助けるために使用される。いくつかの実施形態では、それぞれのフィードフォワード事象は、対象者が食事をしている、または食事をしようとしていることを示した事例を表す。そのような実施形態では、自律的グルコース測定値242を使用して決定された複数の食事事象は、複数のフィードフォワード事象における任意のフィードフォワード事象に時間的に一致させることができない複数の食事事象におけるそれぞれの食事事象を除去することによって、複数のフィードフォワード事象に対して検証される。
【0154】
いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画214は、短時間作用型インスリン薬剤が食事前のあらかじめ定められた時間量までに服用されるべきであることを指定する。いくつかのそのような実施形態では、それぞれの食事前のあらかじめ定められた時間量までの電子タイムスタンプを有する短時間作用型インスリン薬剤種類のインスリン薬剤記録が存在しない場合、それぞれの食事はボーラス計画非アドヒアランスと見なされる。いくつかのそのような実施形態では、あらかじめ定められた時間量は、30分以下、20分以下、または15分以下である。
【0155】
いくつかの実施形態では、長時間作用型インスリン薬剤は、12時間から24時間の間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または12時間から24時間の間の作用持続時間を集合的に有するインスリン薬剤の混合物からなる。そのような長時間作用型インスリン薬剤の例は、これらに限定されないが、Insulin Degludec(NOVO NORDISK社により商標名Tresibaで開発された)、NPH(Schmid、2007年、「New options in insulin therapy」、J Pediatria(Rio J).83(Suppl 5):S146-S155)、Glargine(LANTUS、2007年3月2日、インスリングラルギン[rDNA origin]注射、[prescribing information]、Bridgewater、New Jersey:Sanofi-Aventis)、およびDetermir(Plank et al.、2005、「A double-blind、randomized、dose-response study investigating the pharmacodynamic and pharmacokinetic properties of the long-acting insulin analog detemir」、Diabetes Care 28:1107-1112)を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤は、3時間から8時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または3時間から8時間の作用持続時間を集合的に有するインスリン薬剤の混合物からなる。そのような短時間作用型インスリン薬剤の例は、これらに限定されないが、Lispro(HUMALOG、2001年5月18日、インスリンリスプロ[rDNA origin]注射、[prescribing information]、インディアナポリス、インディアナ州:Eli Lilly and Company)、Aspart(NOVOLOG、2011年7月、インスリンアスパルト[rDNA origin]注射、[prescribing information]、プリンストン、ニュージャージー、NOVO NORDISK Inc.、2011年7月)、グルリシン(Helms Kelley、2009年、「Insulin glulisine:an evaluation of its pharmacodynamic properties and clinical application」、Ann Pharmacother 43:658~668)、およびRegular(Gerich、2002年、「Novel insulins:expanding options in diabetes management」、Am J Med. 113:308-316)を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、第2のデータセット240内の自律的グルコース測定値242からの複数の食事事象の識別は、以下を計算することによって実行される:(i)複数の自律的グルコース測定値を用いたグルコース変化率の後方差分推定を備える第1のモデル、(ii)複数の自律的グルコース測定値を用いた、カルマンフィルタ処理されたグルコース推定値に基づくグルコース変化率の後方差分推定を備える第2のモデル、(iii)複数の自律的グルコース測定値に基づく、カルマンフィルタ処理されたグルコース推定値、および複数の自律的グルコース測定値に基づくカルマンフィルタ処理されたグルコースの変化率(ROC)の推定を備える第3のモデル、ならびに/または(iv)複数の自律的グルコース測定値に基づくカルマンフィルタ処理されたグルコースのROCの変化率の推定を備える第4のモデル。いくつかのそのような実施形態では、第1のモデル、第2のモデル、第3のモデル、および第4のモデルは、それぞれ複数の自律的グルコース測定値にわたって計算され、複数の食事事象におけるそれぞれの食事事象は、4つのモデルのうち少なくとも3つが食事事象を示す場合に識別される。そのような食事事象検出に関するさらなる開示については、参照により本明細書に組み入れられるDassauらの、2008年、「Detection of a Meal Using Continuous Glucose Monitoring」、Diabetes Care 31,pp 295-300を参照されたい。また、参照により本明細書に組み入れられる、Cameronらの、2009年、「Probabilistic Evolving Meal Detection and Estimation of Meal Total Glucose Appearance」、Journal of Diabetes Science and Technology3(5),pp.1022-1030も参照されたい。
【0158】
実施例2:以下の例は、一次アドヒアランス値232が様々な基礎インスリン薬剤投薬量計画208に対してどのように報告されるかを通して機能する。最初に、24時間に2回の基礎注射からなる、処方された基礎インスリン投薬量薬剤計画208を考察する。いくつかの実施形態では、一次タイムウィンドウ234の持続時間は24時間に設定されるが、他の実施形態では、一次タイムウィンドウ234の持続時間は24時間の倍数、たとえば2日ごと、3日ごとなどに設定される。一次タイムウィンドウ234の持続時間が24時間に設定されている場合、所与の一次タイムウィンドウ234における代謝事象224の数は1つであり、単一の絶食事象である。2つの基礎注射が所与の一次タイムウィンドウ234に記録されている場合、注射はアドヒアランスであると見なされ、および/または絶食事象はアドヒアランスであると見なされる。1回または0回の注射が登録されている場合、絶食事象は非アドヒアランスである。この例では、基礎インスリン薬剤投薬量計画アドヒアランスに対する各一次アドヒアランス値232は、絶食事象に基づいてカテゴリ化される。1日に1つの絶食事象があり、そのような各絶食事象は独立してカテゴリ化される。
【0159】
したがって、1日1回の絶食事象、1日2回の基礎注射の投薬量計画、および1日の長さの一次タイムウィンドウ234のシナリオでは、各絶食事象は、過去24時間に2回注射が行われたかどうかに基づいて計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスのいずれかにカテゴリ化される。本開示によれば、第1のデータセット220は、第1の時間期間にわたって、一連のタイムスタンプ付き代謝事象{M、...、M}を提供する。この一連の事象は、対応する一次タイムウィンドウ234のそれぞれの一次アドヒアランス値232を計算するために使用され、そのような各一次アドヒアランス値232は、第1のデータセット220によって表される第1の時間期間222における対応する一次タイムウィンドウ234を表す。一次タイムウィンドウの長さが基礎投薬量計画によって規定されるという要件はない。すなわち、一次タイムウィンドウの持続時間は、1日、1週間、1カ月、または3カ月であってよい。一次タイムウィンドウの持続時間が1日になるように選択されると、一次タイムウィンドウ234に対する一次アドヒアランス値232は、0(その日の絶食事象は計画非アドヒアランスである)か1(その日の絶食事象は計画アドヒアランスであった)の2つの値のうちの1つになる。すなわち、一次タイムウィンドウ234に対して計算された一次アドヒアランス値232は、ゼロまたは1である数になる。
【0160】
いくつかの実施形態では、一次アドヒアランス値232および/または二次アドヒアランス値244は、ゼロから100、ゼロから1000、または任意の他の適切なスケールなどの、ゼロから1以外の範囲に入るようにスケーリングされる。
【0161】
1日1回の絶食事象、1日2回の基礎注射の投薬量計画、および1週間の長さの一次タイムウィンドウのシナリオでは、各絶食事象は、過去24時間に2回注射が行われたかどうかに基づいて計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスのいずれかにカテゴリ化される。一次タイムウィンドウ234の持続時間を1週間に設定すると、一次アドヒアランス値は、:0/7(7日間すべてで計画非アドヒアランスである)、1/7(1日に1つの絶食事象は計画アドヒアランスであったが、他の6日間は計画非アドヒアランスであった)、2/7(2日間の各々における絶食事象は計画アドヒアランスであり、他の5日間は計画非アドヒアランスであった)、...、7/7(7日間すべてで計画アドヒアランスである)、の8つの値のうちの1つになる。したがって、一次アドヒアランス値は、0から1の範囲の8つの値のうちの1つである。いくつかの実施形態では、次いで、これらの一次アドヒアランス値232は、ゼロから100、ゼロから1000、または任意の他の適切なスケールなどの、ゼロから1以外の範囲に入るようにスケーリングされる。
【0162】
次に、週に1回の基礎注射を指定する基礎インスリン薬剤投薬量計画208を考察する。1日に1つの絶食事象があり、そのような各絶食事象は独立してカテゴリ化されている。それぞれの絶食事象は、それぞれの絶食事象の前の週に注射が行われたかどうかに基づいて、計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスとしてカテゴリ化される。したがって、第1の時間期間にわたる一連のタイムスタンプ付き代謝事象{M、...、M}が、第1のデータセット220の形で取得される。次いで、複数の一次アドヒアランス値を計算するためにこの一連の事象が使用され、そのような各一次アドヒアランス値は第1の期間における一次タイムウィンドウ234を表す。一次タイムウィンドウ234の持続時間が基礎投薬量計画によって規定されるという要件はない。すなわち、本明細書では、一次タイムウィンドウの持続時間は、1週間、1カ月、3カ月、または任意の他の適切な時間期間であってよい。実際、各代謝事象(本明細書では、絶食事象)は独立してカテゴリ化されているので、一次タイムウィンドウの持続時間は1日であり得る。
【0163】
一次タイムウィンドウ234の持続時間が24時間に設定されている場合、それぞれの一次タイムウィンドウ234に対する各一次アドヒアランス値234は、「0」(その日の絶食事象は、計画非アドヒアランスであった)または「1」(その日の絶食事象は、計画アドヒアランスであった)の2つの値のうちの1つになる。すなわち、対応する一次タイムウィンドウ234に対して計算された一次アドヒアランス値234は、ゼロから1の範囲の数になる。いくつかの実施形態では、一次タイムウィンドウ234の持続時間は、0から1の間の勾配のより多くについて1週間以上になるように選択される。この一次アドヒアランス値は、対象者の健康のステータスに関する情報を伝達する目的で、一次タイムウィンドウまたは他の何らかのスカラー内の代謝事象の数で乗算され得る。
【0164】
実施例3。以下の例は、一次アドヒアランス値232が様々なボーラスインスリン薬剤投薬量計画214に対してどのように報告されるかを通して機能する。具体的には、摂取された食事ごとに1回のボーラス注射であり、一次タイムウィンドウ234の持続時間が4時間である処方されたボーラス計画を考察する。本明細書では、ボーラス計画アドヒアランスは、食事事象である代謝事象に基づいて決定される。1日に3回の食事事象があってよく、そのような各代謝事象は別個に特徴付けられている。
【0165】
1日3回の食事事象および各食事前にボーラス注射を指定する計画の場合、各食事事象は、その食事前のあらかじめ定められた時間量内にボーラス注射が行われたかどうかに基づいて、計画アドヒアランスまたは計画非アドヒアランスとして特徴付けられる。したがって、第1の時間期間にわたる一連のタイムスタンプ付き代謝事象{M、...、M}が、第1のデータセット220の形で取得される。次いで、複数の一次アドヒアランス値を計算するためにこの一連の事象が使用され、そのような各一次アドヒアランス値232は第1の時間期間222における対応する一次タイムウィンドウ234を表す。一次タイムウィンドウ234の持続時間がボーラス投薬量計画における注射事象のタイミングによって規定されるという要件はない。すなわち、一次タイムウィンドウの持続時間は、1日、1週間、1カ月、もしくは3カ月、または任意の他の適切な時間量であってよい。一次タイムウィンドウ234の持続時間が1日となるように選択された場合、対応する一次タイムウィンドウに対する一次アドヒアランス値232は、0(その日の3回の食事事象はすべて計画非アドヒアランスであった)、1/3(その日の3回の食事事象のうちの1回は計画非アドヒアランスあり、他の2回は計画アドヒアランスであった)、2/3(その日の3回の食事事象のうちの2回は計画非アドヒアランスあり、他の1回は計画アドヒアランスであった)、3/3(その日の3回の食事事象はすべて計画アドヒアランスであった)の4つの値のうちの1つとなる。すなわち、一次タイムウィンドウについて計算された一次アドヒアランス値は、0から1の間の範囲の数となる。この一次アドヒアランス値に一次タイムウィンドウ内の代謝事象の総数を掛けて3×0(その日の3回の食事事象はすべて計画非アドヒアランスであった)、3×1/3(その日の3回の食事事象のうちの1回は計画非アドヒアランスあり、他の2回は計画アドヒアランスであった)、3×2/3(その日の3回の食事事象のうちの2回は計画非アドヒアランスあり、他の1回は計画アドヒアランスであった)、3×3/3(その日の3回の食事事象はすべて計画アドヒアランスであった)を得ることができる。この場合、一次タイムウィンドウについて計算された一次アドヒアランス値は、0から3の間の範囲の数となる。一方、一次タイムウィンドウが1週間になるように選択された場合、一次アドヒアランス値232は22個の値のうちの1つ(0から1の間の範囲(全代謝事象または他の何らかのスカラーに対する乗算前))になる。
【0166】
いくつかの実施形態では、特定の食事のためのボーラスは、ボーラスインスリン薬剤投薬量計画によって必要とされず、したがって、その食事は、たとえ食事前にボーラスがなかったとしてもアドヒアランスである。たとえば、ボーラス計画の中には、夕食時にのみボーラスを想定し、朝食時および昼食時にはボーラスを仮定しないものがある。したがって、検出された昼食事象はあるが、対応するボーラスがない場合、アドヒアランスとして分類される。
【0167】
引用された参考文献、および代替の実施形態
本明細書において引用されたすべての参考文献は、その全体が参照により、また、それぞれの個々の刊行物または特許もしくは特許出願が、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられるように具体的および個別に示されるのと同程度のあらゆる目的のために、本明細書に組み入れられる。
【0168】
本発明は、非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体に組み込まれたコンピュータプログラム機構を備えるコンピュータプログラム製品として実装され得る。たとえば、コンピュータプログラム製品は、図1図2、もしくは図3の任意の組み合わせに示されている、および/または図4に記載されているプログラムモジュールを含有することができる。これらのプログラムモジュールは、CD-ROM、DVD、磁気ディスクストレージ製品、または任意の他の非一時的コンピュータ可読データもしくはプログラムストレージ製品に記憶され得る。
【0169】
当業者には明らかであるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなしに、本発明の多くの修正および変更が行われてよい。本明細書に記載された具体的な実施形態は、例としてのみ提供されている。実施形態は、本発明の原理およびその実際の用途を最も良く説明するために選択および説明され、それによって、他の当業者が、本発明、および考えられる特定の使用に適した様々な修正を伴う様々な実施形態を最も良く利用することを可能にする。本発明は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15