(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】昇降機位置特定システムおよび昇降機位置特定方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20220427BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 P
(21)【出願番号】P 2019104390
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 洋一
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 泰
(72)【発明者】
【氏名】井元 涼大郎
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-51641(JP,A)
【文献】特開2013-220917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0346287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客端末からの通報を受信する通信部と、
監視を行う昇降機の乗場の画像を蓄積する画像情報蓄積部と、
前記通信部が受信した通報に付加された画像と、前記画像情報蓄積部が蓄積した乗場の画像との比較により、対象とする昇降機の位置を特定する現場推定部と、
前記現場推定部が位置を特定した昇降機の監視情報を生成して、監視センタの端末または作業員の端末に伝送する監視情報生成部と、を備える
昇降機位置特定システム。
【請求項2】
前記現場推定部は、前記通信部が通報を受信した顧客端末の位置情報に基づいて、前記画像情報蓄積部が蓄積した画像の中の候補画像を抽出し、抽出した候補画像と前記通信部が受信した通報に付加された画像との比較で、対象とする昇降機の位置を特定する
請求項1に記載の昇降機位置特定システム。
【請求項3】
前記現場推定部が、対象とする昇降機の位置を特定できないとき、前記通信部は、前記顧客端末に対して追加情報の入力要求を通知し、
前記現場推定部は、対象とする昇降機の位置を特定する際に、前記入力要求に基づいて得られた追加情報を参考にする
請求項1に記載の昇降機位置特定システム。
【請求項4】
前記端末からの通報は、所定のWEBページにアクセスして行われる通報であり、
前記WEBページに前記顧客端末がアクセスしたとき、昇降機の乗場を撮影する際のガイドを前記顧客端末が表示するようにした
請求項1に記載の昇降機位置特定システム。
【請求項5】
前記監視情報生成部は、位置を特定した昇降機の故障情報を故障監視サーバから取得し、取得した故障情報を監視センタの端末または作業員の端末に伝送する
請求項1~4のいずれか1項に記載の昇降機位置特定システム。
【請求項6】
顧客端末からの通報を受信する通信処理と、
監視を行う昇降機の乗場の画像を蓄積する画像蓄積処理と、
前記通信処理により受信した通報に付加された画像と、前記画像蓄積処理により蓄積した乗場の画像との比較で、対象とする昇降機の位置を特定する現場推定処理と、
前記現場推定処理により位置を特定した昇降機の監視情報を生成する監視情報生成処理と、を含む
昇降機位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機位置特定システムおよび昇降機位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターなどの昇降機は、保守会社が運営する監視センタで監視され、何らかの異常や故障が発生した際に、監視センタからの指示で保守員の派遣などを行うようにしている。
エレベーターの異常時に行う対処の一つとして、エレベーターかごに乗客が閉じ込められた際の救助がある。すなわち、地震などの災害が発生した場合や、エレベーターの故障や制御システムの異常が発生した場合に、エレベーターかごに乗客が閉じ込められた状態が発生することがある。しかしながら、監視センタやビルの管理者側では、エレベーターかごに乗客が閉じ込められた状態が発生していることを簡単には確認できないケースが多々ある。
【0003】
エレベーターかごの乗客閉じ込め時の問題に対処する技術として、エレベーター異常発生時に、エレベーターかご内に設置されたカメラの画像を、エレベーター乗場で確認できるようにして、関係者に通知するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、エレベーターかごのドアが開かない異常が発生し、ビル管理人などから監視センタにその旨の電話等での連絡があった場合、エレベーターかご内に乗客が閉じ込められている可能性があるため、監視センタは、該当するエレベーターに対して保守員を派遣する。
【0006】
すなわち、連絡があった監視センタは、異常が発生したエレベーターが設置されたビル名などを連絡者から聞き出して、現場を特定する。しかしながら、ビルによっては、多数台の号機のエレベーターが設置されている場合があり、電話連絡があった際に、いずれの号機に異常があるのかを正確に知らせるのが難しいという問題がある。
【0007】
具体的には、エレベーターのりかご内には、号機を特定するための識別番号などが記載された札が掲示されていることが多く、のりかご内のインターフォンで監視センタに連絡があった際には、その識別番号を聞き出すことで、異常があった号機を特定することができる。
一方、エレベーターの乗場側には、通常、そのような識別番号が記載された札の設置はなく、ビル側からの連絡時に、どの号機で乗客閉じ込めが発生している可能性があるのかを、監視センタで特定するのが困難なケースが多々ある。
【0008】
そして、異常が発生した号機が特定できない場合、監視センタ側では、異常が発生した号機を特定する作業に手間と時間がかかってしまい、保守員の派遣が遅れてしまう等の問題が発生してしまう。また、異常が発生した号機が正確に特定できないと、エレベーターに設置された制御装置による自動的な異常検知機能により、該当するエレベーターに既に保守員が派遣されているような場合、ビル側からの連絡でさらに別の保守員が派遣されるような事態も起こり得る。
【0009】
本発明は、エレベーターなどの昇降機についての通報時に、通報位置の特定が確実にできる昇降機位置特定システムおよび昇降機位置特定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明の昇降機位置特定システムは、顧客端末からの通報を受信する通信部と、監視を行う昇降機の乗場の画像を蓄積する乗場画像蓄積部と、通信部が受信した通報に付加された画像と、乗場画像蓄積部が蓄積した乗場の画像との比較により、対象とする昇降機の位置を特定する現場推定部と、現場推定部が位置を特定した昇降機の監視情報を生成して、監視センタの端末または作業員の端末に伝送する監視情報生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、昇降機の乗場から顧客端末を使って通報があった際に、通報に付加された乗場の画像を使って、故障した昇降機の位置を特定することができ、監視センタ側では迅速かつ正確に、故障が発生した昇降機を特定できるようになる。したがって、本発明によると、作業員の派遣などの対処を迅速に指示できるようになる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態例に係るシステム全体の例を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施の形態例に係る監視システムのハードウェアの例を示す構成図である。
【
図3】本発明の一実施の形態例に係るシステムでの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施の形態例によるガイド画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
【0014】
[システムの構成例]
図1は、本例の昇降機位置特定システムの全体構成を示す。
本例の昇降機位置特定システムは、ビルなどに設置された昇降機(ここではエレベーター)を遠隔で統括的に監視する監視システム(以下、本例の「監視システム」ともいう)に適用されるものである。すなわち、
図1に示すように、監視システム100が設置され、この監視システム100が、エレベーター210を直接監視する監視装置220と、通信ネットワーク91を経由して通信を行い、エレベーター210の状態を監視する。ここで、エレベーター210および監視装置220が設置された箇所を、現地作業部200と称する。また、
図1では説明を簡単にするために、1台のエレベーター210のみを示すが、実際には監視システム100は通信ネットワーク91を経由して多数のエレベーターを監視する。
【0015】
監視システム100には、監視センタ400が備える監視端末410が接続される。監視端末410には、各エレベーター210の状態などが表示される。また、エレベーター210の乗りかご内に設置されたインターフォンからの呼び出し時には、監視端末410を使ってオペレータ(監視員)が通話を行うことができる。さらに、監視端末410は、顧客300の後述する顧客端末310との通話を行うこともできる。
【0016】
また、本例の監視システム100は、顧客300が所持する顧客端末310からの問い合わせに応じることができる。ここでの顧客300とは、エレベーター210が設置されたビルや施設の管理者の場合と、エレベーター210の利用者一般の場合のいずれかを示している。
顧客端末310は、通信ネットワーク92を経由して、監視システム100との通信を行う。
本例の場合、ビルや施設の管理者あるいはエレベーターの利用者は、乗りかごの外(乗場)でエレベーターの故障を発見したとき、その故障の発生を顧客端末310で使って通報することができるようになっている。
【0017】
さらに、監視システム100は、通信ネットワーク93を介して現地作業員500が所持する作業員端末510に対して、エレベーターの保守作業の指示などを行うことができる。
なお、
図1に示す構成では、通信ネットワーク91,92,93は、それぞれ別のネットワークとしたが、これらの通信ネットワーク91,92,93として、公衆電話回線などの共通の通信ネットワークを使用してもよい。
【0018】
次に、監視システム100の構成について説明する。
監視システム100は、故障監視サーバ110、WEBサーバ120、広域災害システム130、現場推定部140、監視情報生成部150、画像解析部160、現場情報蓄積部170、および画像情報蓄積部180を備える。
【0019】
故障監視サーバ110は、現地作業部200の監視装置220と通信を行って、エレベーター210が故障した際の故障情報を取得して、取得した故障情報の管理を行う。この故障情報には、故障以外の要因でエレベーター210が運転できない状態の情報も含まれる。また、故障監視サーバ110での故障情報の管理は、次に述べるWEBサーバ120での処理とは独立して行われる。
【0020】
WEBサーバ120は、位置情報制御部121、画像情報制御部122、および通信部123を備える。通信部123は、WEBサーバ120が用意したWEB(ウェブ)ページにインターネットを経由して顧客端末310からアクセスがあるとき、その顧客端末310と通信処理を行って、WEBページに入力された情報などを顧客端末310から取得する。ここで取得する情報には、顧客端末310自身の位置情報と、顧客端末310に内蔵されたカメラが撮影した画像情報がある。
【0021】
なお、顧客端末310がアクセスするWEBページのアドレスなどのアクセス先の情報は、乗りかご内に掲示した情報や、接続先情報を有するQRコードの乗場などへの掲示などで示すことが考えられる。あるいは、監視システム100を運用する会社のサイト経由で、該当するWEBページにアクセスするようにしてもよい。WEBページ上では、顧客300がWEBページでの表示を確認しながら必要な情報を入力する。このときの入力要求は、例えばチャットボットのように会話形式での応対システムや、予め用意した項目から選択させるようなものでもよい。
【0022】
位置情報制御部121は、顧客端末310から通信部123が取得した情報に含まれる位置情報を取得する。
画像情報制御部122は、顧客端末310から通信部123が取得した情報に含まれる画像情報を取得する。
位置情報制御部121が取得した位置情報と、画像情報制御部122が取得した画像情報は、現場推定部140に送られる。
【0023】
WEBサーバ120は、その通信部123を介して、顧客端末310から所定のWEBページにアクセスがあると、そのアクセスがあった顧客端末310の画面上に、ガイド画面を表示させる。そして、顧客300に対して、顧客端末310の画面上で、エレベーター210の位置を特定するのに必要な情報を入力することを促す。
【0024】
広域災害システム130は、地震や津波による冠水などの広域災害についての情報を、インターネットなどを経由して取得する。
現場推定部140は、位置情報と画像情報とを使って、顧客端末310から通報があったエレベーター210の位置(現場位置)を特定する(現場推定処理)。このとき、現場推定部140は、現場情報蓄積部170に蓄積された現場情報と、画像情報蓄積部180に蓄積された画像情報とを読み出して、現場位置を推定する。
【0025】
現場情報蓄積部170は、この監視システム100が監視している全てのエレベーター210についての位置情報を蓄積した位置情報データベースを保持する。ここで位置情報データベースに蓄積される位置情報には、各エレベーターが設置された位置を示す絶対的な座標位置や詳細な住所の他に、設置されたビルや施設の名称、近隣の駅や交差点、近隣でランドマークとなるビルの名称などの位置特定時に使用できるキーワードも含まれる。
【0026】
そして、現場推定部140は、位置情報データベースに蓄積された位置情報と位置情報制御部121が取得した位置情報とを比較して、顧客端末310から通報があった現場の位置を推定する。
画像情報蓄積部180には、この監視システム100が監視している全てのエレベーター210の乗場を撮影した画像情報を蓄積した画像情報データベースを保持する(画像蓄積処理)。ここで、乗場の画像情報は、乗場のドアを撮影した画像(静止画像)であり、例えば、1階の乗場のような代表階のドアとその周囲を撮影した画像とする。あるいは、全ての停止階の乗場の画像を乗場の画像情報として用いてもよい。
【0027】
また、1つのビルに複数台の号機が設置されている場合には、それぞれの号機の代表階またはすべての階の乗場を撮影した画像を画像情報蓄積部180に蓄積する。なお、時間帯で明るさなどが変化する乗場では、1つの乗場で条件が異なる(撮影時間などが異なる)ので、時間帯に応じた複数枚の画像を蓄積するようにしてもよい。
【0028】
画像情報蓄積部180に蓄積された画像情報は、画像解析部160により読み出され、画像解析部160で、顧客端末310から送信された画像情報と比較される。この画像解析部160における比較結果に基づいて、現場推定部140は、顧客端末310から送信された画像が、いずれの箇所の乗場画像であるのかを判断する。なお、現場推定部140が画像などから現場を推定する際には、故障監視サーバ110で取得される故障が発生したエレベーター210の情報や、広域災害システム130が取得した災害発生地域の情報も参照される。
【0029】
顧客端末310から通報があったエレベーター210の位置が現場推定部140で特定されると、現場推定部140は、その特定した位置の情報を、監視情報生成部150に送る。
監視情報生成部150は、特定した位置のエレベーター210に関する故障情報や災害発生情報を、故障監視サーバ110および広域災害システム130から取得し、該当するエレベーター210についての故障状況などの詳細を示す監視情報を生成する。そして、監視情報生成部150は、生成した監視情報を監視センタ400の監視端末410に送り、監視端末410に表示させる。
また、位置を特定したエレベーター210の近傍に現地作業員500がいる場合には、その現地作業員500の作業員端末510に、監視情報生成部150が生成した監視情報を送り、現地作業員500による復旧作業の指示を行う。
【0030】
[ハードウェア構成例]
図2は、
図1に示す監視システム100の各部をコンピュータ装置で構成した場合のハードウェア構成例を示す。
図2に示すコンピュータ装置10は、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)11、ROM(Read Only Memory)12、およびRAM(Random Access Memory)13を備える。さらに、コンピュータ装置10は、不揮発性ストレージ14、ネットワークインタフェース15、入力装置16、および表示装置17を備える。
【0031】
CPU11は、監視システム100が備える各処理部110~160を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM12から読み出して実行する演算処理部である。
RAM13には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0032】
入力装置16には、例えば、キーボード、マウスなどが用いられる。
表示装置17は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、この表示装置17によりコンピュータ装置で実行される計算処理の結果が表示される。
【0033】
不揮発性ストレージ14には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ14には、監視システム100の各部の処理機能を実行するプログラムが記録される。また、不揮発性ストレージ14は、現場情報蓄積部170および画像情報蓄積部180としても使用され、位置情報データベースおよび画像情報データベースが記録される。
【0034】
ネットワークインタフェース15には、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられる。ネットワークインタフェース15は、LAN(Local Area Network)、専用線などを介して外部と各種情報の送受信を行う。
【0035】
なお、監視システム100の各処理部を
図2に示すコンピュータ装置で構成するのは一例であり、コンピュータ以外のその他の演算処理装置で構成してもよい。例えば、監視システム100が行う機能の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアによって実現してもよい。
【0036】
[顧客端末からのアクセス時の処理の流れ]
図3は、顧客端末310からアクセスがあった際の、監視システム100での処理の流れを示すフローチャートである。
まず、顧客端末310は、登録されたアドレスのサイト(WEBページ)にアクセスする(ステップS11)。このWEBページへのアクセスの代わりに、WEBサーバ120にアクセスするためのアプリケーションプログラムを用意して、そのアプリケーションプログラムを予め顧客端末310に実装しておいてもよい。
【0037】
WEBページにアクセスした顧客端末310は、そのWEBページ上の画面での指示に基づいて、位置情報の入力を実行する(ステップS12)。位置情報の入力は、顧客端末310に内蔵されたGPS(Global Positioning System)などの位置測位機能で、現在位置が検出できる場合には、その検出した位置情報をそのまま利用する。また、現在位置の測位ができない状況の場合には、WEBページ上で住所やビル名称などの入力を行う。現在位置の測位ができなく、かつ住所などの位置情報の入力が完了しない状況の場合にも、次のステップに移行する。
【0038】
そして、顧客端末310に表示されるWEBページ上には、WEBサーバ120から送信された乗場画像の撮り方を示す参考画像が表示される(ステップS13)。
図4は、顧客端末310がWEBサーバ120にアクセスしたときに表示される、乗場画像の撮り方である撮影ガイドを示す参考画像の例を示している。
図4に示す参考画像には、エレベーターの乗場のドアがほぼ正面に写っており、ドアの上または脇の各種案内表示灯やかご呼びボタンが含まれている。
【0039】
また、参考画像では、文字で撮影ガイドとして、撮影時に注意する点を告知するようにしている。具体的には、撮影時の横幅を示す矢印と共に、「1.かごの端からホールボタンまでが入るように横幅を調整してください。※ホールボタンが左側の場合もあります。」と表示する。
また、撮影時の縦幅を示す矢印と共に、「2.かごの上部の行先階表示から、かごの下端までが入るように高さを調整して下さい。※行先表示がない場合はかご上部から下端までで調整してください。」と表示する。
さらに、撮影時の対角線を示す矢印と共に、「3.かごの全体がなるべく大きくなるように調整してください。」と表示する。
【0040】
これらの撮影ガイドの表示を顧客端末310で確認した顧客300は、顧客端末310が備えるカメラ機能を使って、故障が発生したエレベーター210の乗場を撮影し、撮影した画像をWEBページ上で入力する(ステップS14)。
顧客端末310から入力された情報は、WEBサーバ120に送信され、WEBサーバ120で抽出される(ステップS15)。すなわち、位置情報制御部121で位置情報が取得され、画像情報制御部122で画像情報が取得される。
【0041】
位置情報制御部121と画像情報制御部122で位置情報および画像情報が取得されると、現場推定部140は、これらの位置情報および画像を使って情報現場のエレベーターを特定する処理を行う。ここでは、現場推定部140は、例えば位置情報に基づいて候補エレベーターを絞り込む処理を行い、その絞り込んだ候補エレベーターについての乗場画像が、画像情報蓄積部180から読み出される。そして、画像解析部160が、候補の乗場画像と顧客端末310で撮影された乗場画像とを比較することで、最も一致度が高い候補の乗場画像のエレベーターを、現場のエレベーター210として特定する(画像解析処理)。
現場推定部140により現場のエレベーター210が特定されると、特定されたエレベーター210の情報が監視情報生成部150に送られる。
【0042】
図3のフローチャートの説明に戻ると、監視情報生成部150は、位置情報と画像情報から顧客端末310で通報があったエレベーター210の特定が可能か否かを判断する(ステップS16)。このステップS16で、エレベーター210の特定が可能であると判断された場合(ステップS16のYES)には、監視情報生成部150は、特定した現場のエレベーター210の現状についての情報を、故障監視サーバ110および広域災害システム130から取得する(ステップS17)。そして、特定した現場のエレベーター210の現状情報から、監視情報生成部150は、該当するエレベーター210について、故障または乗客の閉じ込めが発生しているか否かを判断する(ステップS18)。
【0043】
ステップS18で、故障の発生または乗客の閉じ込めが発生していると判定した場合(ステップS18のYES)、監視情報生成部150は、監視センタ400の監視端末410で、該当する乗りかご内のインターフォンでの呼び出しが受電済みか否かを判断する(ステップS19)。
ステップS19で、インターフォンでの呼び出しを受電済みであると判定した場合には(ステップS19のYES)、監視情報生成部150は、該当するエレベーター210の故障に対する状況データを作成する(ステップS20)。そして、監視情報生成部150は、作成した状況データをWEBサーバ120に送り、顧客端末310の画面上に、故障受付状況と、閉じ込め発生状況の情報を表示させる(ステップS21)。
【0044】
また、ステップS18で、故障が発生しておらず、かつ乗客の閉じ込めも発生していないと判定した場合(ステップS18のNO)には、監視情報生成部150は、現場の対応状況と現在の状態が分かる状況データを作成する(ステップS23)。そして、監視情報生成部150は、作成した状況データに基づいた状況表示を顧客端末310で行うと共に、監視センタ400の監視端末410にも状況を表示させ、さらに、現地作業員500が派遣されている場合には、作業員端末510にも状況を表示させるようにする(ステップS24)。
【0045】
また、ステップS16で、位置情報と画像情報から顧客端末310で通報があったエレベーター210の特定ができないと判断したときには、監視情報生成部150は、顧客端末310で、位置などについて既に2回の入力が行われたか否かを判断する(ステップS25)。このステップS25で、まだ位置などについての2回の入力が行われていないと判断したとき(ステップS25のNO)、WEBサーバ120では、現場を特定するのに有効な質問を生成して、顧客端末310の画面上に生成した質問文を表示する(ステップS26)。この質問の生成は、監視情報生成部150からの指示で行われる。
【0046】
ここでの質問としては、例えば「現在の階床は何階ですか?」、「ビルの名称は?」、「現場周囲の駅の名前は?」、「周囲の建物名は?」、「ビル内のテナント名は?」、「別角度の写真を送付して下さい」などが考えられる。
これらの質問は、例えば監視情報生成部150で予め用意しておき、現場推定部140での推定状況に応じて、いずれかの質問を選ぶ。あるいは、これらの質問を一覧で顧客端末310に送り、顧客300側で、いずれかの項目を選んで入力させてもよい。
【0047】
ステップS26で通知された質問を確認した顧客300は、顧客端末310で質問文に回答するようにして追加情報を入力することで(ステップS27)、その追加情報を加えた上での現場推定部140での位置特定処理が行われ、ステップS16での判断に戻る。追加情報が入力されることで、現場推定部140での位置特定処理時には、入力された情報(ビル名などのキーワード)を使って、現場の候補が絞られるようになる。
【0048】
ステップS25で既に2回目の入力が行われたと判断した場合(ステップS25のYES)には、WEBサーバ120は顧客端末310を監視センタ400の監視端末410に接続する(ステップS22)。
また、ステップS19で、インターフォンでの呼び出しを受電していない場合(ステップS19のNO)にも、WEBサーバ120は顧客端末310を監視センタ400の監視端末410に接続する(ステップS22)。このステップS22での顧客端末310と監視端末410との接続があることで、監視センタ400のオペレータと顧客300とが直接通話できる状態になる。
【0049】
以上説明したように、本例の監視システム100によると、エレベーター210の故障などを顧客300が見つけたとき、顧客端末310を使ってWEBサーバ120にアクセスし、案内表示に従って操作することで、監視システム100側で現場を特定することが可能になる。すなわち、監視システム100側では、管理を行っているすべてのエレベーターの乗場画像を保存しておき、顧客端末310から送信された乗場画像との比較で、どのエレベーターの乗場かが、画像解析で特定できるようになる。したがって、乗りかごのドアが開かないなどの状況が発生して、乗りかご内に記載されたエレベーターの識別番号などの確認ができない場合であっても、顧客端末310からの通報で確実に故障したエレベーター210を特定できるようになる。そして、エレベーターの故障現場が特定できることで、現地作業員500への連絡についても迅速に行うことができる。
【0050】
また、現場推定部140で現場を推定する際には、顧客端末310の位置情報や位置を判断するのに必要なキーワード(住所、ビル名、近隣の建物名など)を使って、候補となるエレベーターを絞るようにしたので、画像解析時の負担を少なくすることができる。特に、最初に入力した位置に関する情報で現場を特定できない場合には、追加の情報を顧客端末310に入力させるようにしたので、良好に候補を絞ることができるようになる。
【0051】
また、顧客端末310では、WEB画面上での指示に基づいて乗場を撮影するか、あるいは位置を特定するための追加情報を入力するだけでよく、正確な住所などを覚えてなくても、確実に故障したエレベーター210についての通報ができるようになる。
さらに、乗場画像や追加情報によっても現場を特定できない場合には、監視センタ400のオペレータに接続して通話するようにしたため、監視センタ400では画像解析で特定できない場合であっても的確に対処できるようになる。
【0052】
また、故障などを通報する顧客端末310は、特定のWEBページにアクセスするだけでよく、QRコード(登録商標)などの接続先情報の乗場などへの掲示を行うだけで、スマートフォンなどのインターネットに接続可能な端末を所持していれば、誰でも通報できるようになる。
あるいは、故障などを通報する特定のWEBページは、監視システム100を運営している会社(エレベーターの製造会社)のホームページのトッページから移行できるようにしてもよい。このようにすることで、顧客300はエレベーターの会社名を確認して、その会社名の検索などで簡単に該当するWEBページにたどり着いて、通報できるようになる。
【0053】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0054】
例えば、
図3のフローチャートに示す処理では、2回まで追加情報の入力を顧客に実行させ、それ以降は監視センタのオペレータに接続するようにしたが、この追加情報を入力させる回数の2回は一例であり、その他の回数としてもよい。
【0055】
また、画像解析部160が候補画像を選ぶ際には、位置情報やビル名、住所などのキーワードを利用するようにしたが、その他の情報から候補画像を選ぶようにしてもよい。例えば、故障監視サーバ110からの情報に基づいて、通報があった時点で故障中のエレベーターの情報を監視情報生成部150が取得して、その故障中のエレベーターの乗場画像から優先的に現場を探すようにしてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態例では、昇降機の一例としてエレベーターに適用した例とした。これに対して、本発明は、その他の昇降機(荷物用リフト、エスカレーターなど)にも適用が可能である。すなわち、それぞれの昇降機の乗場画像(設置場所の画像)を蓄積して、顧客端末から送信された画像との比較で、それぞれの現場を特定することに適用ができる。
【0057】
また、
図1の構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、
図3に示すフローチャートに示す処理の順序についても、一例を示すものであり、処理結果に変更がない範囲で、各ステップの順序を変更したり、複数のステップを同時に実行するようにしてもよい。
【0058】
また、実施の形態例で説明した構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラムなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0059】
10…コンピュータ装置、11…中央制御ユニット(CPU)、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性ストレージ、15…ネットワークインタフェース、16…入力装置、17…表示装置、91,92,93…通信ネットワーク、100…監視システム、110…故障監視サーバ、120…WEBサーバ、121…位置情報制御部、122…画像情報制御部、123…通信部、130…広域災害システム、140…現場推定部、150…監視情報生成部、160…画像解析部、170…現場情報蓄積部、180…画像情報蓄積部、200…現地作業部、210…エレベーター、220…監視装置、300…顧客、310…顧客端末、400…監視センタ、410…監視端末、500…現地作業員、510…作業員端末