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特許7064473インフルエンザAウイルスおよびインフルエンザBウイルスを検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】インフルエンザAウイルスおよびインフルエンザBウイルスを検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6888 20180101AFI20220427BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220427BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/70
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019139726
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2020068763
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2019-08-01
(31)【優先権主張番号】107138861
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】516067494
【氏名又は名称】クレド ダイアグノスティックス バイオメディカル プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャン・イ-ジ
(72)【発明者】
【氏名】ス・チア-シン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/095155(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/006720(WO,A1)
【文献】国際公開第1997/016570(WO,A1)
【文献】DI TRANI, L. et al.,BMC Infect. Dis.,2006年,Vol.6,Article no. 87 (pp.1-8)
【文献】ZHANG, Y. et al.,Springerplus,2016年,Vol.5,Article no.1871
【文献】WU, L.-T. et al.,J. Clin. Microbiol.,2013年,Vol.51, No.9,pp.3031-3038
【文献】SELVARAJU, S.B. and SELVARANGAN, R.,J. Clin. Microbiol.,2010年,Vol.48, No.11,pp.3870-3875
【文献】WHO information for the molecular detection of influenza viruses,WHO website,4th revision,2017年07月,https://www.who.int/influenza/gisrs_laboratory/molecular_diagnosis/en/,[retrieved on 2020-07-29], retrieved from the Internet
【文献】SHIN, Y.K. et al.,J. Vet. Med. Sci.,2011年,Vol.73, No.1,pp.55-63
【文献】HUANG, Y. et al.,J. Clin. Microbiol.,2009年,Vol.47, No.2,pp.390-396
【文献】BECK, E.T. et al.,J. Mol. Diagn.,2010年,Vol.12,pp.74-81
【文献】STEPANIUK, S.V. et al.,J. Infect. Dis. Ther.,2015年,Vol.3, No.5,Article no.236(pp.1-7)
【文献】HYMAS, W.C. and HILLYARD, D.R.,J. Virol. Methods,2009年,Vol.156,pp.124-128
【文献】CUI, D. et al.,Springerplus,2016年,Vol.5,Article no.2054(pp.1-8)
【文献】HARMON, K. et al.,Influenza Other Respir. Viruses,2010年,Vol.4, No.6,pp.405-410
【文献】LORUSSO, A. et al.,J. Virol. Methods,2010年,Vol.164,pp.83-87
【文献】FOUCHIER, R.A.M. et al.,J. Clin. Microbiol.,2000年,Vol.38, No.11,pp.4096-4101
【文献】XU, L. et al.,Front. Microbiol.,2018年06月27日,Vol.9,Article no.1405(pp.1-9)
【文献】STEVENSON, J. et al.,J. Virol. Methods,2008年,Vol.150,pp.73-76
【文献】DINEVA, M.A. et al.,J. Clin. Microbiol.,2005年,Vol.43, No.8,pp.4015-4021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一容器の疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9、およびインフルエンザBウイルスの存在を検出する方法であって、前記方法において、前記インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9はそれぞれ互いに区別されず、
前記方法は、
(a)前記インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のマトリックス遺伝子を含むことが疑われる試料を用意するステップであって、前記試料がまた、前記インフルエンザBウイルスの非構造遺伝子を含むことも疑われる、ステップと、
(b)第1のプライマーおよび第2のプライマーを含む、前記インフルエンザAウイルスの前記マトリックス遺伝子を検出するための一組のプライマーを用意するステップであって、前記第1のプライマーが、配列番号5、配列番号6、および配列番号7からなる群から選択される配列を有しかつ前記第2のプライマーが、配列番号11、配列番号12、および配列番号18からなる群から選択される配列を有する、ステップと、
(c)第3のプライマーおよび第4のプライマーを含む、前記インフルエンザBウイルスの前記非構造遺伝子を検出するための一組のプライマーを用意するステップであって、前記第3のプライマーが、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、および配列番号26からなる群から選択される配列を有しかつ前記第4のプライマーが、配列番号30、配列番号31、配列番号33、配列番号34、配列番号35、および配列番号36からなる群から選択される配列を有する、ステップと、
(d)内部対照であるms2のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、前記フォワードプライマーが、配列番号38、配列番号39、および配列番号40からなる群から選択される配列を有しかつ前記リバースプライマーが、配列番号45、および配列番号46からなる群から選択される配列を有する、ステップと、
(e)前記試料、前記第1のプライマー、前記第2のプライマー、前記第3のプライマー、前記第4のプライマー、前記ms2の前記フォワードプライマー、前記ms2の前記リバースプライマー、第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ及びms2内部対照を前記単一容器内で処理し、逆転写酵素および鋳型依存性ポリメラーゼを用いて標的核酸を増幅するステップと、
(f)前記第1のプローブおよび前記第2のプローブを前記標的核酸にアニーリングして、第1のハイブリダイズした産物および第2のハイブリダイズした産物をステップ(e)の間に形成するステップであって、前記第1のプローブが、前記インフルエンザAウイルスの前記マトリックス遺伝子に対して特異的であり、前記第1のプローブの配列が配列番号9および配列番号10からなる群から選択される配列を有しかつ前記第2のプローブが、前記インフルエンザBウイルスの前記非構造遺伝子に対して特異的であり、前記第2のプローブの配列が配列番号27および配列番号28からなる群から選択される配列を有する、ステップと、
(g)前記標的核酸に対する前記第3のプローブをアニーリングして、第3のハイブリダイズした産物をステップ(e)の間に形成するステップであって、前記第3のプローブは前記ms2に対して特異的であり、前記第3のプローブの配列が、配列番号42の配列を有する、ステップと、
(h)前記第1のハイブリダイズした産物、前記第2のハイブリダイズした産物及び前記第3のハイブリダイズした産物から生成されたシグナルを、前記標的核酸が存在する指標として検出するステップと
を含み、
前記第1のハイブリダイズした産物からの第1のシグナルの存在により、前記試料中に前記インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9が存在することが示され、前記第1のシグナルの非存在により、前記試料中に前記インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9が存在しないことが示される、方法。
【請求項2】
前記第1のハイブリダイズした産物、前記第2のハイブリダイズした産物及び前記第3のハイブリダイズした産物から生成された前記シグナルが、蛍光シグナルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のプローブ、前記第2のプローブ、および前記第3のプローブのすべての5’末端が、FAM、HEX、VIC、CY3、CY5、TET、ALEXA594、およびALEXA643からなる群から選択される蛍光レポーターを保有し、前述の3つのプローブの3’末端が、TAMRA、MGB、およびBHQからなる群から選択されるクエンチャーを保有し、前記3つのプローブのすべての前記蛍光レポーターが別個である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
3つの前記ハイブリダイズした産物から生成された3つの別個の蛍光シグナルが、DNA依存性ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ加水分解により前記標的核酸とハイブリダイズした前記第1のプローブまたは前記第2のプローブから切断された、前記蛍光レポーターの断片の量によりそれぞれ検出される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2の蛍光シグナルの存在により、前記疑われる試料中に前記インフルエンザBウイルスが存在することが示され、前記第2の蛍光シグナルの非存在により、前記疑われる試料中に前記インフルエンザBウイルスが存在しないことが示される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ヒト組織試料におけるインフルエンザAウイルス(Flu A)およびインフルエンザBウイルス(Flu B)を検出する方法に関する。特に、Flu Aに関しては、本発明は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のうちの少なくとも1つを検出するためのプライマー、プローブおよび他の関連試薬を提供する。Flu Bに関しては、本発明は、インフルエンザBウイルスを検出するためのプライマー、プローブおよび他の関連試薬を提供する。
【0002】
背景
インフルエンザは、局所的アウトブレイクまたは伝染病において、世界中で一般的に見られる。伝染病は、いつでも現れ得るが、通常、湿度が高い月に集中する。これらは、ほとんど、またはまったく予告なしに突然発生する。感染した人数は、数百人から数十万人まで変化し得る。伝染病は短命であり、数日または数週間持続し得るが、伝染病がより大規模になると、数カ月間持続し得る。インフルエンザは、ほとんどの個人において軽度の疾患であるが、高齢者または衰弱した個人にとっては、生命にかかわる疾患である。伝染病は、大きな生産性損失の原因となる。WHOは、感染するウイルスの抗原変化および感染拡大をモニタリングするために、情報交換研究室の国際ネットワークを委任した。
【0003】
世界保健機関の調査およびデータによれば、インフルエンザAおよびBウイルスは、インフルエンザ検出の大部分を占めた。ヒトインフルエンザAおよびBウイルスは、ほとんど毎冬、北米、東アジア、および東南アジアにおいて疾患の季節的流行を引き起こす。インフルエンザC型感染症は、一般に、軽度の呼吸器疾患を引き起こし、伝染病の原因となるとは考えられない。インフルエンザDウイルスは、ウシにのみ感染し、ヒトにおいて疾病を感染させる、またはヒトにおいて疾病の原因となるとは知られていない。
【0004】
インフルエンザAウイルスは、ウイルスの表面上の2つのタンパク質、ヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)に基づいて亜型に分けられる。18種の異なるヘマグルチニン亜型および11種の異なるノイラミニダーゼ亜型がある。インフルエンザAウイルスは、異なる株にさらに分類することができる。インフルエンザAウイルスは、螺旋対称型の、ssRNAエンベロープウイルスの一種である、オルソミクソウイルス科のオルソミクソウイルス属に属する。インフルエンザAウイルスのゲノムは、8つのRNA断片に分かれている。インフルエンザAウイルスには4つの抗原が存在し、これは、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、ヌクレオカプシド(NP)およびマトリックス(M)タンパク質である。NAは、A、BおよびCの3つの型に発生する型特異的抗原であり、これは、ヒトインフルエンザウイルスを分類する上での基礎を提供する。マトリックスタンパク質は、ヌクレオカプシドを囲み、35~45%の粒子量を占める。HAは、ウイルスが細胞受容体へ付着するのを媒介する。ノイラミニダーゼ分子は、エンベロープ中に、より少量存在する。
【0005】
インフルエンザAウイルスは、あらゆる年齢の人に感染し、死に至ることさえあり得る重篤な疾病を引き起こし得る、ヒト季節性インフルエンザの主要なものの1つである。季節性インフルエンザは、温暖な地域では主に冬に発生するが、熱帯地域では一年中蔓延し、いくつかの季節流行的特徴を有する、インフルエンザAウイルスによって引き起こされる重要な世界的ヒト呼吸器疾患である。現在、世界的に大流行する感染症となり得る、ヒトに蔓延するインフルエンザAウイルスの2つの亜型、すなわちH1N1およびH3N2がある。また、ヒトがH5N1およびH7N9に感染すると、重度の疾患を引き起こす可能性があり死亡率が高まるため、H5N1およびH7N9は、重要な亜型と考えられている。
【0006】
インフルエンザBウイルスは、オルソミクソウイルス科の別の属である。インフルエンザBウイルスゲノムは、14548ヌクレオチド長であり、直鎖状マイナスセンス一本鎖RNAの8つの分節からなる。分節ゲノムは、カプシドに覆われており、各分節は、別々のヌクレオカプシド中に存在し、ヌクレオカプシドは、1つのエンベロープにより囲まれている。インフルエンザBウイルスは、亜型には分けられないが、系統および株にさらに細分化することができる。現在、表面糖タンパク質ヘマグルチニンの抗原特性に基づいた、インフルエンザBウイルスの2つの共循環系統がある。この系統は、B/Yamagata/16/88様およびB/Victoria/2/87様ウイルスと名付けられている。インフルエンザBウイルスのカプシドは、エンベロープに覆われており、さらに、そのビリオンは、エンベロープ、マトリックスタンパク質、核タンパク質複合体、ヌクレオカプシド、およびポリメラーゼ複合体からなる。
【0007】
インフルエンザAおよびBウイルス感染症は、呼吸飛沫を介して伝播する。ウイルス粒子は、ウイルス受容体に富んだ呼吸上皮の細胞に結合する。ウイルス粒子上に存在するノイラミニダーゼは、上皮細胞の表面に存在する粘膜により結合している、ウイルス粒子を放出することにより感染過程を助ける。インフルエンザの典型的な症状は、感染後に現れ、著しい発熱、頭痛、羞明、悪寒、乾性咳嗽、倦怠感、筋肉痛、および咽喉における乾性のむずがゆさを伴う。発熱は持続性であり、3日ほど続く。インフルエンザBウイルスの症状および治療は、インフルエンザAウイルスの症状および治療に類似しているが、インフルエンザBウイルスから重度の合併症が進行する確率は、インフルエンザAウイルスから進行する確率よりも低い。
【0008】
インフルエンザA亜型であるH1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9は、すべて伝染性が高く、重度の合併症を引き起こし得る。インフルエンザA亜型のうちの1つである、H5N1は、他のインフルエンザA亜型およびインフルエンザBウイルスよりも、はるかに急速に変異するため特に懸念されており、病原性が高く、男性において重度の疾患を引き起こし得ると判明している。したがって、リアルタイムで変異をモニタリングするために、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9とインフルエンザBウイルスとを見分けることが重要である。
【0009】
最近では、インフルエンザAおよびBウイルスのRNAの検出に利用可能な、最大感度および特異性を提供するRT-PCRアッセイがある。さらに、株の同定のために、そのPCR産物を配列決定することができる。最も高感度かつ認識可能な検体は、鼻咽頭スワブである。しかし、鼻咽頭スワブを採取する困難さを考慮すると、咽頭および鼻腔スワブが、より一般的に使用されている。
【0010】
上記の観点から、疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つを同時に検出するための、正確性および安定性の高いアッセイを開発することが必要とされている。
【0011】
概要
本発明の目的は、疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のマトリックス遺伝子(以下「M遺伝子」)の存在を検出するため、ならびに疑われる試料中のインフルエンザBウイルスの非構造遺伝子(以下「NS遺伝子」)の存在を同時に検出するための検出方法を提供することである。より正確には、疑われる試料が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のうちの少なくとも1つを含む場合、これは、本発明により検出され得る。疑われる試料が、少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株を含む場合、これは、本発明により検出され得る。また、疑われる試料が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つを含む場合、これは、本発明により別々に検出され得る。
【0012】
本発明の目的は、特に、疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスの存在を、それぞれ検出するための、指定のプライマーおよびプローブを提供することである。指定のプローブおよびプライマーは、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスに対して特異的である。エキソヌクレアーゼ加水分解能を有する鋳型依存性ポリメラーゼはまた、このプロセスに含まれる。この目的は、疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つの存在の検出のための方法であって、
(a)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、もしくはH7N9のM遺伝子、および/またはインフルエンザBウイルスのNS遺伝子を含むことが疑われる試料を用意するステップと、
(b)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のM遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18の群から選択される、ステップと、
(c)インフルエンザBウイルスのNS遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、および配列番号25の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、および配列番号36の群から選択される、ステップと、
(d)逆転写酵素および鋳型依存性ポリメラーゼを用いて、疑われる試料中に含まれる核酸を増幅するステップと、
(e)疑われる試料中に含まれる核酸に2つの異なるプローブをアニーリングして、ハイブリダイズした産物をステップ(d)の間に形成するステップであって、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9に対して特異的な第1のプローブが、配列番号9および配列番号10の群から選択され、インフルエンザBウイルスに対して特異的な第2のプローブが、配列番号27および配列番号28の群から選択される、ステップと、
(f)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルスの標的核酸が存在する指標として、RT-PCR産物から生成された2つの別個のシグナルをそれぞれ検出するステップと
を含む、方法により、本発明に従って実現される。
本発明によれば、ハイブリダイズした産物から生成されたシグナルは、蛍光検出システムにより検出することができる。第1のプローブに対して特異的な2つの別個のシグナルのうちの一方は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1および/またはH7N9が存在する指標であり、第2のプローブに対して特異的な他方は、インフルエンザBウイルスが存在する指標である。
【0013】
この概要は、以下の詳細な説明にさらに記載する、本発明のいくつかの態様を簡潔に特定するために提供する。この概要は、本開示の重要な、または本質的な特徴を示すことを意図するものではなく、任意の特許請求の範囲を限定することを意図するものでもない。用語「態様」は、「少なくとも1つの態様」と解釈される。本明細書に記載の、上記の態様および本開示の他の態様は、例として示すものであり、添付の図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】4つのインフルエンザA亜型のM遺伝子プライマー配列領域を示す図である。
図2】実施形態1の動態PCR増殖曲線を示す図である。
図3】実施形態2の動態PCR増殖曲線を示す図である。
図4】実施形態3の動態PCR増殖曲線を示す図である。
図5】実施形態4の特異性試験結果を示す図である。
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下は、本発明の原理を単に示すものである。したがって、本明細書に明示的には記載または表示しないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨および範囲内に含まれる様々な改編を、当業者が考案可能であることが理解される。
【0016】
さらに、本明細書に列挙する、すべての例および条件的言語は、本開示の原理および発明者らが技術の拡大に寄与した概念を理解する上で読者を助けるため、明確に教育上の目的のみとなるように主に意図しており、このような詳細に列挙した例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。
【0017】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態、ならびにその特定の例を列挙する、本明細書のすべての記載は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図する。さらに、このような等価物が、現在既知の等価物ならびに将来開発される等価物、すなわち、構造にかかわらず同一の機能を果たす、後進のすべての要素の両方を含むことを意図する。
本明細書において他に明示的に指定しない限り、図面は、縮尺どおりではない。
【0018】
本発明の方法が、正常に処理され得ることを確実にするために、本発明は、共役したマイナーグルーブバインダー(MGB)リガンドを有するTaqManプローブを使用した、迅速な同定のためのPCRまたはリアルタイムPCRアッセイを提供する。
【0019】
このようなアッセイでは、型特異的プローブを、異なる蛍光レポーターで標識化することによって、型特異的蛍光の検出を確実としている。このアッセイにおいて適用したTaqポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼ加水分解能を有するDNA依存性ポリメラーゼである。蛍光シグナルは、DNA依存性ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ加水分解により標的核酸とハイブリダイズしたプローブから切断された、蛍光レポーターの断片の量により検出される。プライマーおよび/またはプローブは、修飾ヌクレオチドまたは非ヌクレオチド化合物を含む。
【0020】
現在、H1N1およびH3N2は、ヒトにおいて蔓延する世界的に大流行する感染症を引き起こす、一般的に見られる2つのインフルエンザA亜型である。一方、H5N1、およびH7N9は、まれに見るインフルエンザA亜型であるが、これらは、重度の疾患を引き起こす可能性が非常に高く、結果としてヒトにおける死亡率を高める。したがって、このような4つのインフルエンザA亜型を可能な限り早く検出し、それによって、治療を早期に開始できることが重要である。また、このような4つの亜型は、すべて重要であるため、疑われる試料中のこれらのうちの任意の1つを他から識別する必要はない。本発明は、4つのインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のすべてに共有され、存在する特異的な配列を検出する方法を開示する。本発明の検出結果が、疑われる試料に対して陽性である場合、これは、少なくとも1つの亜型が存在することを意味する。その結果、早期治療を開始することができる。
【0021】
M遺伝子(配列番号1)は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9に存在しており、二量体の形態でウイルスエンベロープの下に存在し、ウイルスリボ核タンパク質(vRNP)複合体と相互作用して、内部コア成分と膜タンパク質との間をつなぐマトリックスタンパク質(以下「Mタンパク質」)に転換する。vRNPは、宿主域の決定因子を保有している。Mタンパク質は、ウイルスRNAおよびvRNPの両方と接触して、RNP複合体の形成を促進し、RNPを核マトリックスから解離させる。M遺伝子は、集合部位へのウイルス成分の動員による集合において重要な役割を、およびウイルス粒子の形成を含む出芽過程において必要不可欠な役割を果たす。Mタンパク質を標的として、異なる亜型間を越えた保護を与える、新規ワクチンが有望であることが明らかとなってきている。
【0022】
したがって、M遺伝子が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9に存在することを考慮すると、本発明に開示のすべてのプライマーおよびプローブは、図1に示すように、4つのすべての亜型のM遺伝子から選択され、この4つのすべての亜型のM遺伝子に対して特異的である。より正確には、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9の検出のためのフォワードプライマーは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8の群から選択され、リバースプライマーは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18の群から選択される。配列番号9および配列番号10の群のうちの1つであるプローブはまた、M遺伝子に対して特異的である。蛍光シグナルの存在により、試料中にインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1またはH7N9が存在することが示される。
【0023】
NS遺伝子は、複製段階でNSタンパク質を発現する、インフルエンザAウイルスおよびインフルエンザBウイルスの両方に存在する。しかし、インフルエンザBウイルスのNS遺伝子は、mRNA前駆体のプロセシングを阻害することがないこと、およびインフルエンザAウイルスのNS遺伝子に対する<20%の配列同一性を有することが、特有の生物活性であると指摘される。NSタンパク質は、インフルエンザBウイルスに見られるホモ二量体RNA結合タンパク質であり、これは、ウイルス複製に必須の因子である。複製段階では、NSタンパク質は、mRNAのポリAテールを核内に保持するために、mRNAのポリAテールに結合する。インフルエンザBウイルスのNS遺伝子(配列番号19)が、インフルエンザB/Yamagata/16/88様およびB/Victoria/2/87様ウイルスの両方において高度に保存されているということを考慮すると、本発明に開示のインフルエンザBウイルスに対して特異的なプライマーおよびプローブ配列は、NS遺伝子から選択される。
【0024】
ssRNAバクテリオファージであるms2は、予備逆転写プロセス後の生物学的実験およびウイルス/病原体の検出において、内部対照として一般的に使用される。標的ウイルスの適切なプロセシングおよびRT-PCR反応における阻害因子の存在のモニタリングに内部対照を適用して、阻害またはヒューマンエラーに起因する偽陰性の結果が生じるのを防ぐ。したがって、以下の実施形態では、検出するインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、H7N9、および/またはインフルエンザBウイルスを含む検知管に内部対照としてms2を加える。逆転写により生成したms2の部分相補的DNAは、配列番号37に代表されるものである。
【0025】
TaqManプローブを使用する本発明は、従来方法よりも高感度であり、本発明の検出限界(以下LOD)は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9について、ならびにインフルエンザBウイルスについて、10コピーに達し得る。したがって、本発明は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスの迅速かつ明確な検出に適する。
【0026】
本発明の一実施形態では、既知濃度(ウイルス粒子コピー数)の試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスのLODを試験するための段階的ステップであって、
(a)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のうちの少なくとも1つの亜型の単一の段階希釈液を、10から10ウイルスコピー数で2つ、および10ウイルスコピー数で調製するステップであって、このような3つの段階希釈液が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のM遺伝子を含む、ステップと、
(b)インフルエンザBウイルスの少なくとも1つの亜型の単一の段階希釈液を、10から10ウイルスコピー数で2つ、および10ウイルスコピー数で調製するステップであって、このような3つの段階希釈液が、インフルエンザBウイルスのNS遺伝子を含む、ステップと、
(c)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のM遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18の群から選択される、ステップと、
(d)インフルエンザBウイルスのNS遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、および配列番号25の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、および配列番号36の群から選択される、ステップと、
(e)インフルエンザAウイルスおよびインフルエンザBウイルスのすべての段階希釈液中にms2を加え、次いで、ms2のフォワードおよびリバースプライマーを内部対照として含む一組のプライマーを、すべての段階希釈液中に加えるステップであって、フォワードプライマーが、配列番号38、配列番号39、配列番号40、および配列番号41の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号43、配列番号44、配列番号45、および配列番号46の群から選択される、ステップと、
(f)既知濃度のインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルスおよび内部対照の試料中に含まれる核酸を、逆転写酵素および鋳型依存性ポリメラーゼを用いて増幅するステップと、
(g)既知濃度の試料中に含まれる核酸に2つの異なるプローブをアニーリングして、ハイブリダイズした産物をステップ(f)の間に形成するステップであって、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9に対して特異的な第1のプローブが、配列番号9および配列番号10の群から選択され、インフルエンザBウイルスに対して特異的な第2のプローブが、配列番号27および配列番号28の群から選択される、ステップと、
(h)ms2に対して特異的なプローブをアニーリングして、ハイブリダイズした産物をステップ(f)の間に形成するステップであって、プローブ配列が、配列番号42の配列である、ステップと、
(i)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルス、ならびに内部対照の標的核酸が存在する指標として、ハイブリダイズした産物から生成された3つの別個のシグナルをそれぞれ検出するステップと
を含む、段階的ステップを提供する。
【0027】
本発明の別の実施形態では、1つの疑われる試料中のインフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つの存在の検出のための方法であって、以下のステップ、
(a)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のM遺伝子、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのNS遺伝子を含むことが疑われる試料を用意するステップと、
(b)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のM遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18の群から選択される、ステップと、
(c)インフルエンザBウイルスのNS遺伝子に対して特異的なフォワードおよびリバースプライマーを含む、一組のプライマーを用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、および配列番号25の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、および配列番号36の群から選択される、ステップと、
(d)ms2、ならびにms2のフォワードおよびリバースプライマーを含む一組のプライマーを内部対照として用意するステップであって、フォワードプライマーが、配列番号38、配列番号39、配列番号40、および配列番号41の群から選択され、リバースプライマーが、配列番号43、配列番号44、配列番号45、および配列番号46の群から選択される、ステップと、
(e)逆転写酵素および鋳型依存性ポリメラーゼを用いて、疑われる試料および内部対照に含まれる核酸を増幅するステップと、
(f)疑われる試料中に含まれる核酸に2つの異なるプローブをアニーリングして、ハイブリダイズした産物をステップ(e)の間に形成するステップであって、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9に対して特異的な第1のプローブが、配列番号9および配列番号10の群から選択され、インフルエンザBウイルスに対して特異的な第2のプローブが、配列番号27および配列番号28の群から選択される、ステップと、
(g)ms2に対して特異的なプローブをアニーリングして、ハイブリダイズした産物をステップ(e)の間に形成するステップであって、プローブ配列が、配列番号42の配列である、ステップと、
(h)インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルス、ならびに内部対照の標的核酸が存在する指標として、ハイブリダイズした産物から生成する3つの別個のシグナルをそれぞれ検出するステップと
を含む、方法を提供する。
【実施例
【0028】
実施形態1 インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9のLOD
インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9の代表として、既知濃度のH3N2粒子を本実施形態で使用した。段階希釈液を10から10コピー数で2つ、および10コピー数で調製した。配列番号5(F)および配列番号18(R)を有するプライマーを使用して、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のM遺伝子を増幅した。配列番号9を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プローブはまた、配列番号10に交換してもよい。内部対照については、配列番号39(F)および配列番号45(R)を有するプライマーを使用して、ms2を増幅した。配列番号42を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プライマーおよびプローブ配列を、表1に示す。
【表1】
【0029】
増幅を行い、Roche Light Cycler 96 Real-time System(Roche Molecular Systems,Inc.)上で、リアルタイムで測定およびモニタリングした。各反応混合物量は、20μlであり、以下の条件下で増幅した。
【表2】
【0030】
反応混合物を最初に、2分間50℃で逆転写に供した。実際の増幅反応は、まず、95℃で2分間インキュベートし、次いで、以下のスキームに従って50サイクル実行した。
95℃で1秒→60℃で1秒
【0031】
図2は、所与の組のプライマー、プローブ、および内部対照の動態PCR増殖曲線を示す。10、10、および10のH3N2粒子の増殖曲線が、閾値を超えた場合、明確かつ特異的なシグナルが、最初に検出可能である。検出限界は、このような条件およびプライマー配列の下で10コピー数に達することができた。
【0032】
言い換えると、疑われる試料が、すべてM遺伝子配列を含む、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9に感染していた場合、動態PCR増殖曲線に上昇曲線が表れることとなる。その間に、ms2シグナルがまた、適切なプロセスを表すものとして検出可能である。
【0033】
実施形態2 インフルエンザBウイルスのLOD
インフルエンザB/Victoria/2/87様ウイルス株である、Malaysia2506/2004株をインフルエンザBウイルスの2つの系統の代表として、本実施形態で使用した。10から10ウイルスコピー数で2つ、および10ウイルスコピー数で段階希釈液を調製した。配列番号22(F)および配列番号33(R)を有するプライマーを使用して、インフルエンザBウイルスの疑われるNS遺伝子を増幅する。配列番号28を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プローブはまた、配列番号27に交換してもよい。内部対照については、配列番号39(F)および配列番号45(R)を有するプライマーを使用して、ms2を増幅する。配列番号42を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プライマーおよびプローブ配列を、表3に示す。
【表3】
【0034】
増幅を行い、Roche Light Cycler 96 Real-time System(Roche Molecular Systems,Inc.)上で、リアルタイムで測定およびモニタリングした。各反応混合物量は、20μlであり、以下の条件下で増幅した。
【表4】
【0035】
反応混合物を最初に、2分間50℃で逆転写に供した。実際の増幅反応は、まず、95℃で2分間インキュベートし、次いで、以下のスキームに従って50サイクル実行した。
95℃で1秒→60℃で1秒
【0036】
図3は、所与の組のプライマー、プローブ、および内部対照の動態PCR増殖曲線を示す。10、10、および10のMalaysia2506/2004粒子の増殖曲線が、閾値を超えた場合、明確かつ特異的なシグナルが、最初に検出可能である。検出限界は、この条件下で10コピー数に達することができた。
【0037】
言い換えると、疑われる試料が、NS遺伝子配列を含むインフルエンザBウイルスに感染していた場合、動態PCR増殖曲線に上昇曲線が表れることとなる。その間に、ms2シグナルがまた、適切なプロセスを表すものとして検出可能である。
【0038】
実施形態3 インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスの検出
本発明は、4つのインフルエンザ亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つの存在をそれぞれ検出する方法を開示する。本発明は、試料調製のステップを含まないことが好ましい。咽頭/鼻腔スワブまたは鼻咽頭スワブであり得る、疑われる試料から核酸を精製または単離した後、試料採取緩衝液に核酸を含む。
【0039】
本実施形態は、インフルエンザ様症状を有する未知の患者の疑われる試料において、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のM遺伝子の存在を検出するための検出方法であって、上述のように、疑われる試料の核酸を試料採取緩衝液に含む、検出方法を提供するものである。インフルエンザBウイルスのNS遺伝子の存在はまた、同時に検出される。より正確には、疑われる試料が、少なくとも1つのインフルエンザ亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9を含む場合、これら4つの亜型のうちどれが存在するかにかかわらず、インフルエンザAウイルスの少なくとも1つの亜型が、この疑われる試料中に存在するという結果を、検出結果が反映することとなる。また、疑われる試料が、少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株を含む場合、これも本発明により同時に検出される。そしてまた、疑われる試料が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびに/またはインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つを含む場合、これは、別々に検出される。
【0040】
インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のうちの少なくとも1つを検出するには、配列番号5(F)および配列番号18(R)を有するプライマーを使用して、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9のM遺伝子を増幅する。配列番号9を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。内部対照については、配列番号39(F)および配列番号45(R)を有するプライマーを使用して、ms2を増幅する。配列番号42を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プライマーおよびプローブ配列を、表1に示す。
【0041】
インフルエンザBウイルスを検出するには、配列番号22(F)および配列番号33(R)を有するプライマーを使用して、インフルエンザBウイルスの疑われるNS遺伝子を増幅する。配列番号28を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。内部対照については、配列番号39(F)および配列番号45(R)を有するプライマーを使用して、ms2を増幅する。配列番号42を有するプローブをまた、本実施形態で使用する。プライマーおよびプローブ配列を、表3に示す。
【0042】
増幅を行い、Roche Light Cycler 96 Real-time System(Roche Molecular Systems,Inc.)上で、リアルタイムで測定およびモニタリングした。各反応混合物量は、20μlであり、以下の条件下で増幅した。
【表5】
【0043】
反応混合物を最初に、2分間50℃で逆転写に供した。実際の増幅反応は、まず、95℃で2分間インキュベートし、次いで、以下のスキームに従って50サイクル実行した。
95℃で1秒→60℃で1秒
【0044】
図4は、所与の組のプライマー、プローブ、および内部対照の動態PCR増殖曲線を示す。図4では、検出結果は、疑われる試料が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスのうちの少なくとも1つを含んでいたことを示す。次いで、配列決定手順を用いて疑われる試料を処理し、この結果、疑われる試料が、インフルエンザA H3N2およびインフルエンザBウイルスMalaysia2506/2004を含んでいたことを示した。
【0045】
実施形態4 インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスのランダム検出
本実施形態では、本発明の検出特異性についての試験を提供する。臨床的検出の特異性とは、疾患/症状の存在しない試料を正確に同定する検出能力を指す。したがって、100%の特異性を有する検出では、疾患/症状の存在しない、すべての試料を正確に同定する。80%の特異性を有する検出では、疾患/症状の存在しない試料の80%を検出陰性(真陰性)として正確に報告するが、疾患/症状の存在しない試料の20%は、検出陽性(偽陽性)として誤って同定される。本発明の特異性を試験するために、以下に列挙する、オルソミクソウイルス種に属さない4つの試料を本実施形態で提供する。各種のTCID50は、1.43×10/mlより高い。
【表6】
【0046】
インフルエンザA H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9(プライマー:配列番号5および配列番号18、プローブ:配列番号9)、ならびにインフルエンザBウイルス(プライマー:配列番号22および配列番号33、プローブ:配列番号28)に対して特異的な指定のプライマーおよびプローブを含む、同様の調製手順および増幅条件を、これらの4つの試料にそれぞれ使用する。ms2粒子、プライマー、およびプローブ(プライマー:配列番号39および配列番号45、プローブ:配列番号42)をまた、本実施形態で内部対照として使用する。
【0047】
増幅を行い、Roche Light Cycler 96 Real-time System(Roche Molecular Systems,Inc.)上で、リアルタイムで測定およびモニタリングした。各反応混合物量は、20μlであり、以下の条件下で増幅した。
【表7】
【0048】
反応混合物を最初に、2分間50℃で逆転写に供した。実際の増幅反応は、まず、95℃で2分間インキュベートし、次いで、以下のスキームに従って50サイクル実行した。
95℃で1秒→60℃で1秒
【0049】
図5は、所与の組のプライマー、プローブ、および内部対照の動態PCR増殖曲線を示す。図5では、このような4つの試料の検出結果は、試料が、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、およびH7N9としても、インフルエンザBウイルスとしても検出、認識されなかったが、各種の内部対照は、正常に検出されたことを示す。したがって、本発明の特異性は、インフルエンザA亜型H1N1、H3N2、H5N1、またはH7N9、ならびにインフルエンザBウイルスの同定において100%の特異性補正を達成することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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