(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
A62C 37/00 20060101AFI20220427BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A62C37/00
G08B17/00 C
G08B17/00 J
(21)【出願番号】P 2019184136
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2019-11-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】藤田 慎一朗
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】佐々木 正章
【審判官】金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120035(JP,A)
【文献】特開2019-148845(JP,A)
【文献】特開平8-294546(JP,A)
【文献】特開平8-280838(JP,A)
【文献】特開平3-78567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/00
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区画に設置された端末装置と、火災受信機との間で信号を中継するための中継装置であって、
前記端末装置は、
前記防護区画に設置された噴射ヘッドから消火ガスを放出することを指示するための手動放出スイッチであって、利用者により操作されると第1起動信号を出力する手動放出スイッチと、
前記噴射ヘッドから消火ガスを放出することを緊急停止するための緊急停止スイッチであって、利用者により操作されると停止信号を出力する緊急停止スイッチと、
第2起動信号が入力されると、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されることを警告する警告装置
であって、前記防護区画を構成する部屋の内部に設置される警告装置と
を含み、
前記中継装置は、
筐体内に、
前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記火災受信機に対して中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を前記火災受信機に対して中継し、前記火災受信機から出力される第2起動信号を受けて前記警告装置を起動する入出力制御部と、
前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されるまでの時間を表示する表示部と
を備え
、
前記手動放出スイッチ、前記緊急停止スイッチ及び前記警告装置は、前記筐体に収容された又は取り付けられた装置ではなく、
前記中継装置は前記部屋の外部に設置される
ことを特徴とする中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス系消火設備の端末装置と火災受信機の間で信号を中継するための中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素等の消火ガスを放出して火災を消火するガス系消火設備が知られている。例えば、特許文献1には、防護区画の各々に、火災を感知するための火災感知器と、消火ガスを放出するための噴射ヘッドと、消火ガスの放出を手動で行ったり、消火ガスの放出を非常停止したりするための操作箱と、消火ガスが放出されていることを通知するための放出表示灯及びスピーカとを備えるガス系消火設備が記載されている。このガス系消火設備はさらに、防護区画の外部に、消火ガスを貯蔵するための消火ガス貯蔵容器と、このガス系消火設備を制御する制御盤とを備えている。この制御盤は、ある防護区画において火災感知器により火災が感知されたり、操作箱の消火ガス放出スイッチが操作されたりすると、消火ガス貯蔵容器の開放弁を駆動して、当該防護区画の噴射ヘッドから消火ガスを放出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のガス系消火設備では、防護区画の各々に設置される操作箱、放出表示灯及びスピーカは、それぞれ別の信号線で制御盤と接続されている。そのため、各防護区画につき少なくも3個の中継器を用意し、これらの中継器の各々と制御盤を信号線で接続する必要があり、配線作業が複雑になっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ガス系消火設備の端末装置と火災受信機の間の配線作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る中継装置は、防護区画に設置された端末装置と、火災受信機との間で信号を中継するための中継装置であって、前記端末装置は、前記防護区画に設置された噴射ヘッドから消火ガスを放出することを指示するための手動放出スイッチであって、利用者により操作されると第1起動信号を出力する手動放出スイッチと、前記噴射ヘッドから消火ガスを放出することを緊急停止するための緊急停止スイッチであって、利用者により操作されると停止信号を出力する緊急停止スイッチと、第2起動信号が入力されると、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されることを警告する警告装置とを含み、前記中継装置は、前記手動放出スイッチから出力される第1起動信号を前記火災受信機に対して中継し、前記緊急停止スイッチから出力される停止信号を前記火災受信機に対して中継し、前記火災受信機から出力される第2起動信号を受けて前記警告装置を起動する入出力制御部と、前記噴射ヘッドから消火ガスが放出されるまでの時間を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス系消火設備の端末装置と火災受信機の間の配線作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】動作モードが自動モードに設定されている防護区画に対する消火動作の一例を示すシーケンス図
【
図6】動作モードが自動モードに設定されている防護区画に対する消火動作の一例を示すシーケンス図
【
図7】動作モードが手動モードに設定されている防護区画に対する消火動作の一例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
本発明の一実施形態に係るガス系消火設備1について、図面を参照して説明する。
1-1.構成
図1は、ガス系消火設備1の構成の一例を示す図である。同図に示すガス系消火設備1は、建物Bに設置されている。この建物Bは、それぞれ異なる防護区画である部屋R1~R3と、監視室R4と、シリンダ室R5とを備える。これらの部屋のうち、防護区画である部屋R1~R3の各々の内部には、火災感知器2、噴射ヘッド3、ベル4及びストロボ5が設置されている。また、部屋R1~R3の各々の外部には、手動放出スイッチ6、緊急停止スイッチ7、放出表示灯8及びガス消火制御装置9が設置されている。監視室R4には、火災受信機10が設置されている。シリンダ室R5には、消火ガス貯蔵容器11、選択弁12、起動用ガス容器13及び中継器14が設置されている。以下、ガス系消火設備1の各構成要素について説明する。
【0010】
火災感知器2は、防護区画の天井に設置され、信号線を介して火災受信機10と接続されている。火災感知器2は、火災を感知すると、作動信号を火災受信機10に出力する。
【0011】
噴射ヘッド3は、防護区画の天井に設置され、配管を介して消火ガス貯蔵容器11と接続されている。噴射ヘッド3は、消火ガス貯蔵容器11から供給される消火ガスを放出する。
【0012】
ベル4は、防護区画内に噴射ヘッド3から消火ガスが放出されていることを警告するための音響装置である。ベル4は、防護区画の壁面に設置され、信号線を介してガス消火制御装置9と接続されている。ベル4は、ガス消火制御装置9から起動信号が入力されると、鳴動する。
【0013】
ストロボ5は、防護区画内に噴射ヘッド3から消火ガスが放出されていることを警告するための照明装置である。ストロボ5は、防護区画の壁面に設置され、信号線を介してガス消火制御装置9と接続されている。ストロボ5は、ガス消火制御装置9から起動信号が入力されると、発光する。
【0014】
手動放出スイッチ6は、防護区画内に噴射ヘッド3から消火ガスを放出することを指示するためのスイッチである。手動放出スイッチ6は、防護区画の出入口付近の壁面に設置され、信号線を介してガス消火制御装置9と接続されている。手動放出スイッチ6は、利用者により操作されると、ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する。
【0015】
緊急停止スイッチ7は、防護区画内に噴射ヘッド3から消火ガスが放出されることを緊急停止するためのスイッチである。緊急停止スイッチ7は、防護区画の出入口付近の壁面に設置され、信号線を介してガス消火制御装置9と接続されている。緊急停止スイッチ7は、利用者により操作されると、ガス消火制御装置9に対して停止信号を出力する。
【0016】
放出表示灯8は、防護区画内に噴射ヘッド3から消火ガスが放出されていることを警告するための表示装置である。放出表示灯8は、防護区画の出入口付近の壁面に設置され、信号線を介してガス消火制御装置9と接続されている。放出表示灯8は、ガス消火制御装置9から起動信号が入力されると、点灯する。
【0017】
ガス消火制御装置9は、防護区画に設置された端末装置と、信号線を介して接続される火災受信機10との間で信号を中継するための中継装置である。ここで、防護区画に設置された端末装置には、ベル4、ストロボ5、手動放出スイッチ6、緊急停止スイッチ7及び放出表示灯8が含まれる。このうち、ベル4、ストロボ5は、警告装置の一例である。ガス消火制御装置9の具体的な構成については後述する。
【0018】
火災受信機10は、ガス系消火設備1の消火動作を制御する装置である。火災受信機10の具体的な構成については後述する。
【0019】
消火ガス貯蔵容器11は、二酸化炭素やハロンガス等の消火ガスを貯蔵する容器である。消火ガス貯蔵容器11の各々は、容器弁を介して集合配管に接続されている。この集合配管は、防護区画ごとに設置される選択弁12を介して分枝されている。分枝された配管は、それぞれ異なる防護区画に設置された噴射ヘッド3に接続されている。
【0020】
起動用ガス容器13は、消火ガス貯蔵容器11の容器弁と選択弁12を開放するための起動用ガスを貯蔵する容器である。起動用ガス容器13は、選択弁12ごとに(言い換えると、防護区画ごとに)設置されている。起動用ガス容器13の各々は、消火ガス貯蔵容器11の容器弁と、対応する選択弁12とに配管を介して接続されている。また、起動用ガス容器13の各々の容器弁ソレノイドは、中継器14を介して信号線で火災受信機10と接続されている。火災受信機10から中継器14に起動信号が入力されると、中継器14はこの容器弁ソレノイドを作動させ、起動用ガス容器13から起動用ガスを放出させる。その起動用ガスのガス圧により、消火ガス貯蔵容器11の容器弁と、対応する選択弁12を開放する。その結果、消火ガス貯蔵容器11に貯蔵された消火ガスは、当該選択弁12により分枝される配管を通って、当該配管に接続されている噴射ヘッド3から放出される。
【0021】
次に、ガス消火制御装置9の具体的な構成について説明する。
【0022】
図2は、ガス消火制御装置9の正面図である。同図に示すガス消火制御装置9は、直方体形状の筺体91を備え、その筺体91の正面に、状態表示灯921、カウントダウン表示器922及びモード選択スイッチ93を備える。
【0023】
状態表示灯921は、ガス消火制御装置9の電源オン時に点灯する電源灯9211、自動モード選択中に点灯する自動モード表示灯9212、手動モード選択中に点灯する手動モード表示灯9213、消火ガスが放出されるまでのカウントダウン中に点灯する放出予告灯9214、消火ガス放出中に点灯する放出灯9215、手動放出スイッチ6が操作されると点灯する手動放出灯9216、及び緊急停止スイッチ7が操作されると点灯する緊急停止灯9217からなる。
【0024】
カウントダウン表示器922は、消火ガスが放出されるまでのカウントダウンを表示する7セグメントディスプレイである。
【0025】
モード選択スイッチ93は、ガス消火制御装置9が設置されている防護区画における動作モードを、自動モードと手動モードの間で選択するためのキースイッチである。このモード選択スイッチ93により選択される動作モードのうち、自動モードは、当該防護区画に設置された火災感知器2が火災を感知したとき、又は、当該防護区画に設置された手動放出スイッチ6が利用者により操作されたときに、当該防護区画内に消火ガスを放出させる動作モードである。一方、手動モードは、当該防護区画に設置された手動放出スイッチ6が利用者により操作されたときにのみ、当該防護区画内に消火ガスを放出させる動作モードである。このモード選択スイッチ93を用いて選択された動作モードは、防護区画と対応付けられて火災受信機10において記憶される。
【0026】
次に、
図3は、ガス消火制御装置9の内部構成を示す図である。同図に示すガス消火制御装置9は、筺体91内に、表示部92、上記のモード選択スイッチ93、入出力制御部94を収容する。
【0027】
表示部92は、上記の状態表示灯921及びカウントダウン表示器922からなる。
【0028】
入出力制御部94は、マイクロコントローラを備える。入出力制御部94は、信号線を介して火災受信機10と表示部92とに接続され、火災受信機10から出力される信号を受けて表示部92を起動する。
【0029】
また、入出力制御部94は、信号線を介してモード選択スイッチ93に接続され、モード選択スイッチ93から出力される信号を火災受信機10に中継する。
【0030】
また、入出力制御部94は、信号線を介して手動放出スイッチ6に接続され、手動放出スイッチ6から出力される起動信号を火災受信機10に中継する。
【0031】
また、入出力制御部94は、信号線を介して緊急停止スイッチ7に接続され、緊急停止スイッチ7から出力される停止信号を火災受信機10に中継する。
【0032】
また、入出力制御部94は、信号線を介してベル4に接続され、火災受信機10から出力される起動信号を受けてベル4を起動する。
【0033】
また、入出力制御部94は、信号線を介してストロボ5に接続され、火災受信機10から出力される起動信号を受けてストロボ5を起動する。
【0034】
また、入出力制御部94は、信号線を介して放出表示灯8に接続され、火災受信機10から出力される起動信号を受けて放出表示灯8を起動する。
【0035】
次に、火災受信機10の具体的な構成について説明する。
【0036】
図4は、火災受信機10の内部構成を示すブロック図である。同図に示す火災受信機10は、制御部101、表示部102、ブザー103及び伝送部104を備える。
【0037】
制御部101は、プロセッサと、制御プログラムを記憶するメモリを備える。このプロセッサは、メモリに記憶される制御プログラムを起動して、後述する消火動作を実行する。
【0038】
表示部102は、火災灯1021、放出予告灯1022、放出灯1023及びカウントダウン表示器1024を備える。火災灯1021は、1個の火災感知器2が作動するか、手動放出スイッチ6が操作されると点灯する。放出予告灯1022は、2個の火災感知器2が作動すると、消火ガスが放出されるまでのカウントダウン中に点灯する。放出灯1023は、消火ガス放出中に点灯する。カウントダウン表示器1024は、消火ガスが放出されるまでのカウントダウンを表示する7セグメントディスプレイである。
【0039】
ブザー103は、火災の発生を警告するための音響装置である。
【0040】
伝送部104は、火災感知器2、ガス消火制御装置9及び中継器14と信号線を介して接続され、これらの装置と信号の送受信を行う。
【0041】
1-2.動作
次に、ガス系消火設備1の動作について説明する。具体的には、動作モードが自動モードに設定されている防護区画に対する消火動作について説明する。また、動作モードが手動モードに設定されている防護区画に対する消火動作について説明する。
【0042】
1-2-1.自動モード
図5及び
図6は、動作モードが自動モードに設定されている防護区画に対する消火動作の一例を示すシーケンス図である。
動作モードが自動モードに設定されている防護区画(以下、本動作の説明において「防護区画P1」という。)において火災が発生し、発生した火災が、防護区画P1に設置されている火災感知器2により感知されると、当該火災感知器2は火災受信機10に対して作動信号を出力する。この作動信号が入力された火災受信機10の制御部101は(ステップSa1)、火災受信機10の火災灯1021を点灯させるとともに、ブザー103を鳴動させる(ステップSa2)。その結果、監視室R4に滞在する監視員は、防護区画P1において火災が感知されたことを知ることができる。
【0043】
また、制御部101は、防護区画P1に設置されているベル4を間欠鳴動させるために、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa3)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ベル4を間欠鳴動させる(ステップSa4)。その結果、防護区画P1に滞在する者は、当該防護区画P1において火災が感知されたことを知ることができる。
【0044】
その後、防護区画P1において別の火災感知器2により火災が感知されると、当該別の火災感知器2は火災受信機10に対して作動信号を出力する。この作動信号が入力された火災受信機10の制御部101は(ステップSa5)、2つの異なる火災感知器2から作動信号が入力されたことをもって、カウントダウン条件が充足されたと判定する。そして、防護区画P1内に消火ガスが放出されるまでのカウントダウン(例えば、60秒)を開始し、当該カウントダウンをカウントダウン表示器1024に表示させる(ステップSa6)。また、制御部101は、火災受信機10の放出予告灯1022を点灯させる(ステップSa7)。その結果、監視室R4に滞在する監視員は、防護区画P1内に消火ガスが放出されることと、放出されるまでの秒数を知ることができる。
【0045】
また、制御部101は、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9において放出予告灯9214を点滅させるとともに、カウントダウン表示器922に上記のカウントダウンを表示させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa8)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、カウントダウン表示器922は、防護区画P1内に消火ガスが放出されるまでのカウントダウンを表示し(ステップSa9)、放出予告灯9214は点滅する(ステップSa10)。その結果、このガス消火制御装置9の表示面を見た者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されることと、放出されるまでの秒数を知ることができる。
【0046】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P1に設置されているベル4を、より短い周期で間欠鳴動させるために、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa11)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ベル4をより短い周期で間欠鳴動させる(ステップSa12)。その結果、防護区画P1に滞在する者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されることを知ることができる。
【0047】
その後、火災受信機10の制御部101によるカウントダウンが終了すると(ステップSa13)、制御部101はガス放出条件が充足されたと判定する。そして、防護区画P1内に消火ガスを放出するために、当該防護区画P1のために設置されている起動用ガス容器13の容器弁ソレノイドを制御する中継器14に対して起動信号を出力する(ステップSa14)。この起動信号が中継器14に入力されると、中継器14は容器弁ソレノイドを作動させ、当該起動用ガス容器13から起動用ガスを放出させる。そして、その起動用ガスのガス圧により、消火ガス貯蔵容器11の容器弁と、防護区画P1のために設置されている選択弁12を開放する。その結果、消火ガス貯蔵容器11に貯蔵された消火ガスは、当該選択弁12により分枝される配管を通って、防護区画P1に設置されている噴射ヘッド3から放出される。
【0048】
選択弁12が開放されると、図示せぬ圧力スイッチが作動して、火災受信機10に対して作動信号を出力する。この作動信号が入力された火災受信機10の制御部101は(ステップSa15)、火災受信機10の放出予告灯9214を消灯し、代わりに放出灯1023を点灯させる(ステップSa16)。その結果、監視室R4に滞在する監視員は、防護区画P1内に消火ガスが放出されていることを知ることができる。
【0049】
また、制御部101は、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9において放出灯9215を点灯させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa17)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、放出予告灯9214は消灯し、代わりに放出灯9215が点灯する(ステップSa18)。その結果、このガス消火制御装置9の表示面を見た者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されていることを知ることができる。
【0050】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P1に設置されているベル4を連続鳴動させるために、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa19)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ベル4を連続鳴動させる(ステップSa20)。その結果、防護区画P1に滞在する者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されていることを知ることができる。
【0051】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P1に設置されているストロボ5を発光させるために、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa21)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ストロボ5を発光させる(ステップSa22)。その結果、防護区画P1に滞在する者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されていることを視覚的に知ることができる。
【0052】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P1に設置されている放出表示灯8を点灯させるために、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSa23)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、放出表示灯8を点灯させる(ステップSa24)。その結果、防護区画P1の出入口付近にいる者は、防護区画P1内に消火ガスが放出されていることを知ることができる。
以上が、動作モードが自動モードに設定されている防護区画に対する消火動作についての説明である。
【0053】
なお、上記の消火動作において、防護区画P1に滞在する者が火災に気づき、当該防護区画P1に設置されている手動放出スイッチ6を操作した場合には、当該手動放出スイッチ6は起動信号を出力する。この起動信号は、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9の入出力制御部94により中継されて、火災受信機10に入力される。この起動信号が入力された火災受信機10の制御部101は、別の火災感知器2からの作動信号の出力を待たずに、上記のステップSa6以降を実行する。加えて、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9において手動放出灯9216を点灯させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92の手動放出灯9216を点灯させる。
【0054】
また、上記の消火動作において、カウントダウンの開始後に、防護区画P1に滞在する者が非火災を確認し、防護区画P1に設置されている緊急停止スイッチ7を操作すると、当該緊急停止スイッチ7は停止信号を出力する。この停止信号は、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9の入出力制御部94により中継されて、火災受信機10に入力される。この停止信号が入力された火災受信機10の制御部101は、カウントダウンを停止する。加えて、防護区画P1に設置されているガス消火制御装置9においてカウントダウン表示器922に表示されているカウントダウンを停止させるとともに、緊急停止灯9217を点灯させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、カウントダウン表示器922はカウントダウンを停止し、緊急停止灯9217は点灯する。
【0055】
1-2-1.手動モード
図7は、動作モードが手動モードに設定されている防護区画に対する消火動作の一例を示すシーケンス図である。
動作モードが手動モードに設定されている防護区画(以下、本動作の説明において「防護区画P2」という。)において火災が発生し、この火災に気づいた者が、防護区画P2に設置されている手動放出スイッチ6を操作すると、当該手動放出スイッチ6は起動信号を出力する(ステップSb1)。この起動信号は、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9の入出力制御部94により中継されて、火災受信機10に入力される(ステップSb2)。この起動信号が入力された火災受信機10の制御部101は、火災受信機10の火災灯1021を点灯させるとともに、ブザー103を連続鳴動させる(ステップSb3)。
【0056】
また、制御部101は、手動放出スイッチ6が操作されたことをもって、カウントダウン条件が充足されたと判定する。そして、防護区画P2内に消火ガスが放出されるまでのカウントダウン(例えば、25秒)を開始し、当該カウントダウンをカウントダウン表示器1024に表示させる(ステップSb4)。また、制御部101は、火災受信機10の放出予告灯1022を点灯させる(ステップSb5)。
【0057】
また、制御部101は、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9において放出予告灯9214を点滅及び手動放出灯9216を点灯させるとともに、カウントダウン表示器922に上記のカウントダウンを表示させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb6)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、カウントダウン表示器922は、防護区画P2内に消火ガスが放出されるまでのカウントダウンを表示し(ステップSb7)、放出予告灯9214は点滅し、手動放出灯9216は点灯する(ステップSb8)。
【0058】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P2に設置されているベル4を短い周期で間欠鳴動させるために、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb9)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ベル4を短い周期で間欠鳴動させる(ステップSb10)。
【0059】
その後、火災受信機10の制御部101によるカウントダウンが終了すると(ステップSb11)、制御部101はガス放出条件が充足されたと判定する。そして、防護区画P2内に消火ガスを放出するために、当該防護区画P2のために設置されている起動用ガス容器13の容器弁ソレノイドを制御する中継器14に対して起動信号を出力する(ステップSb12)。この起動信号が中継器14に入力されると、中継器14は容器弁ソレノイドを作動させ、当該起動用ガス容器13から起動用ガスを放出させる。そして、その起動用ガスのガス圧により、消火ガス貯蔵容器11の容器弁と、防護区画P2のために設置されている選択弁12を開放する。その結果、消火ガス貯蔵容器11に貯蔵された消火ガスは、当該選択弁12により分枝される配管を通って、防護区画P2に設置されている噴射ヘッド3から放出される。
【0060】
選択弁12が開放されると、図示せぬ圧力スイッチが作動して、火災受信機10に対して作動信号を出力する。この作動信号が入力された火災受信機10の制御部101は(ステップSb13)、火災受信機10の放出予告灯9214を消灯し、代わりに放出灯1023を点灯させる(ステップSb14)。
【0061】
また、制御部101は、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9において放出灯9215を点灯させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb15)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、放出予告灯9214は消灯し、代わりに放出灯9215が点灯する(ステップSb16)。
【0062】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P2に設置されているベル4を連続鳴動させるために、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb17)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ベル4を連続鳴動させる(ステップSb18)。
【0063】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P2に設置されているストロボ5を発光させるために、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb19)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、ストロボ5を発光させる(ステップSb20)。
【0064】
また、火災受信機10の制御部101は、防護区画P2に設置されている放出表示灯8を点灯させるために、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する(ステップSb21)。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、放出表示灯8を点灯させる(ステップSb22)。
以上が、動作モードが手動モードに設定されている防護区画に対する消火動作についての説明である。
【0065】
なお、上記の消火動作において、カウントダウンの開始後に、防護区画P2に滞在する者が非火災を確認し、防護区画P2に設置されている緊急停止スイッチ7を操作すると、当該緊急停止スイッチ7は停止信号を出力する。この停止信号は、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9の入出力制御部94により中継されて、火災受信機10に入力される。この停止信号が入力された火災受信機10の制御部101は、カウントダウンを停止する。加えて、防護区画P2に設置されているガス消火制御装置9においてカウントダウン表示器922に表示されているカウントダウンを停止させるとともに、緊急停止灯9217を点灯させるために、当該ガス消火制御装置9に対して起動信号を出力する。この起動信号を受けて、ガス消火制御装置9の入出力制御部94は、表示部92を制御する。表示部92のうち、カウントダウン表示器922はカウントダウンを停止し、緊急停止灯9217は点灯する。
【0066】
以上説明した実施形態に係るガス消火制御装置9は、同じ防護区画に設置された端末装置と火災受信機10との間で信号を中継するための入出力制御部94を備える。そして、各端末装置はこのガス消火制御装置9と信号線を介して接続され、このガス消火制御装置9を介して火災受信機10と信号の送受信を行う。そのため、各端末装置を火災受信機10と直接接続する場合と比較して、配線作業が容易になる。
【0067】
2.変形例
上記の実施形態は以下のように変形してもよい。以下に記載する変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0068】
2-1.変形例1
防護区画に設置する音響装置として、ベル4に代えてホーンを採用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ガス系消火設備、2…火災感知器、3…噴射ヘッド、4…ベル、5…ストロボ、6…手動放出スイッチ、7…緊急停止スイッチ、8…放出表示灯、9…ガス消火制御装置、10…火災受信機、11…消火ガス貯蔵容器、12…選択弁、13…起動用ガス容器、14…中継器、91…筺体、92…表示部、93…モード選択スイッチ、94…入出力制御部、101…制御部、102…表示部、103…ブザー、104…伝送部、921…状態表示灯、922…カウントダウン表示器、1021…火災灯、1022…放出予告灯、1023…放出灯、1024…カウントダウン表示器、9211…電源灯、9212…自動モード表示灯、9213…手動モード表示灯、9214…放出予告灯、9215…放出灯、9216…手動放出灯、9217…緊急停止灯、B…建物、R1~R3…部屋、R4…監視室、R5…シリンダ室