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特許7064484流動触媒のためにアルミナを解膠するプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】流動触媒のためにアルミナを解膠するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/023 20220101AFI20220427BHJP
   B01J 29/08 20060101ALI20220427BHJP
   B01J 29/16 20060101ALI20220427BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20220427BHJP
   B01J 29/85 20060101ALI20220427BHJP
   C01B 37/08 20060101ALI20220427BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20220427BHJP
   C01B 39/38 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C01F7/023
B01J29/08 M
B01J29/16 M
B01J29/40 M
B01J29/85 M
C01B37/08
C01B39/24
C01B39/38
【請求項の数】 47
(21)【出願番号】P 2019505400
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2017043698
(87)【国際公開番号】W WO2018026574
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】62/369,313
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウダイシャンカー
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナムーシー,スンダラム
(72)【発明者】
【氏名】ジーバース,マイケル・スコット
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウー-チェン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06114267(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0005565(US,A1)
【文献】特開昭63-151356(JP,A)
【文献】特表2009-519203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0252484(US,A1)
【文献】国際公開第2015/157429(WO,A1)
【文献】米国特許第05925592(US,A)
【文献】国際公開第2001/083373(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00 - 7/788
B01J 21/00 - 38/74
C01B 33/20 - 39/54
C01G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベーマイトアルミナの水溶液と、0.16~0.65の酸/アルミナのモル数比で一定時間の間、自由流動性の固体微粒子を形成するためのエネルギー及び強度を有する混合機を用いて、混合すること、及び954℃(1750°F)で1時間の総揮発分として測定された45~65重量%の固体含有量を有する自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子を形成すること、を含み、
前記酸の水溶液の量が、前記アルミナのインシピエントウェットネス細孔容積未満である、
アルミナを解膠するプロセス。
【請求項2】
前記自由流動性の固体微粒子が、20重量%の固体濃度の水溶液中でスラリー化されるとき、2.5~4.0のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
酸対アルミナの前記比が、0.20~0.50の酸のモル/アルミナのモルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記自由流動性の固体微粒子の前記固体含有量が、47~62重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスが、バッチプロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスが、連続プロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記一定時間が、10分未満である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記比が、0.20~0.50の酸/アルミナのモル数比である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記比が、0.25~0.45の酸/アルミナのモル数比である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記比が、0.3~0.40の酸/アルミナのモル数比である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子の前記固体含有量が、50~60重量%である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項12】
前記混合機が、解膠固体混合物1kgあたり8.2×10 -4 ~0.16キロワット時(5.0×10-4~0.1馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加えるための高強度混合機である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記高強度混合機が、解膠固体混合物1kgあたり0.0016~0.08キロワット時(0.001~0.05馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加える、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記スラリー溶液の前記pHが、2.75~3.75である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項15】
前記スラリー溶液の前記pHが、3.0~3.5である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記自由流動性の解膠したアルミナ固体微粒子が、前記解膠したアルミナ固体微粒子の総重量に基づいて、80.0~100重量%のアルミナ含有量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記自由流動性の固体微粒子が、1~200μmの平均粒径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記平均粒径が、5~20μmである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記自由流動性の固体微粒子が、0.3~2.0g/cmの見かけ嵩密度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
0.4~1.0g/cmの前記見かけ嵩密度である請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
0.5~0.8g/cmの前記見かけ嵩密度である請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
流動触媒を生成するためのプロセスであって、
(a)ベーマイトアルミナの水溶液と、0.16~0.65の酸のモル/アルミナのモルの比で一定時間の間、自由流動性の固体を形成するための強度及びエネルギーを有する混合機を用いて、混合すること、並びに954℃(1750°F)で1時間の総揮発分として測定された45~65重量%の固体含有量を有するに自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子を形成することと、
(b)前記解膠したアルミナ固体微粒子をゼオライト及び水と組み合わせて、噴霧乾燥機供給材料を形成することと、
(c)前記噴霧乾燥機供給材料を噴霧乾燥して、噴霧乾燥された流動触媒を形成することと、を含
前記流動触媒が、流動接触分解法(FCC)触媒、深度接触分解法(DCC)触媒またはメタノールからオレフィンへの変換(MTO)触媒から選択され、前記酸の水溶液の量が、前記アルミナのインシピエントウェットネス細孔容積未満である、
プロセス。
【請求項23】
前記工程(a)の自由流動性の解膠したアルミナ固体微粒子が、20重量%の固体濃度を有する水溶液中でスラリー化されるとき、2.5~4.0のpHを有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記スラリー溶液の前記pHが、2.75~3.75である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記工程(a)の自由流動性の固体微粒子の前記固体含有量が、47.0~57.0重量%である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項26】
前記プロセスが、バッチプロセスである、請求項22に記載のプロセス。
【請求項27】
前記プロセスが、連続プロセスである、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
前記工程(a)の混合することが、10分未満の時間の間継続することを更に含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記比が、0.20~0.50の酸のモル/アルミナのモルである、請求項22に記載のプロセス。
【請求項30】
前記比が、0.25~0.45の酸のモル/アルミナのモルである、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記比が、0.3~0.40の酸のモル/アルミナのモルである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子の前記固体含有量が、50.0~60.0重量%である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項33】
前記混合機が、解膠固体混合物1kgあたり8.2×10 -4 ~0.16キロワット時(5.0×10-4~0.1馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加えるための高強度混合機である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項34】
前記高強度混合機が、解膠固体混合物1kgあたり0.0016~0.08キロワット時(0.001~0.05馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加える、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記組み合わせる工程が、粘土を組み合わせることを更に含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項36】
前記ゼオライトが、希土類を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記噴霧乾燥工程が、130~180℃の噴霧乾燥機出口温度で行われる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項38】
前記噴霧乾燥された流動触媒を250℃~800℃の温度で焼成することを更に含む、請求項22に記載のプロセス。
【請求項39】
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子が、前記解膠したアルミナ微粒子の重量に基づいて、80.0~100.0重量%のアルミナ含有量を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項40】
前記FCC触媒が、前記触媒の重量に基づいて、0.0~6.0重量%の希土類レベルを有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項41】
前記FCC触媒が、30~450m/gの総表面積を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項42】
前記FCC触媒が、20~300m/gのゼオライト表面積を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項43】
前記FCC触媒が、10~150m/gのマトリックス表面積を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項44】
前記FCC触媒が、0.4~0.8g/cmの見かけ嵩密度を有する、請求項22に記載のプロセス。
【請求項45】
前記流動触媒が、FCC触媒である、請求項22に記載のプロセス。
【請求項46】
前記ゼオライトが、ZSM-5、Y-ゼオライト、SAPO、又はそれらの混合物から選択される、請求項22又は45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記SAPOゼオライトが、SAPO-34である、請求項46に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本発明は、解膠アルミナを調製するためのプロセスに関する。より具体的には、本発明は、乾燥した微粒子形態の噴霧乾燥された流動触媒のためにアルミナを解膠するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[02] 噴霧乾燥された流動触媒は、燃料又は化学品を構築するブロック若しくはポリマーを生成する精製産業のいたるところで使用されている。例えば、かかる触媒としては、深度接触分解法(DCC)及び流動接触分解法(FCC)、並びにメタノールがエチレン及びプロピレン等のオレフィンに変換されるいわゆるメタノールからオレフィン(Methanol to Olefins(MTO))プロセス等の分解プロセスで使用されるものが挙げられる。特に、流動接触分解ユニットは、現代の石油精製所における主要な炭化水素変換ユニットである。それは、熱及び触媒を使用して、種々の高分子量の供給材料の種類(例えば、ガスオイル、分解ガスオイル、脱アスファルトガスオイル、及び常圧/減圧残油)を、ガソリン、軽質燃料油、並びにプロピレン及びブチレン等の石油化学供給原料等のより軽い、より価値のある生成物へと変換する。FCCユニットの成果における重要な要因は、FCC触媒自体の汎用性である。一般にゼオライト、活性アルミナ、粘土、及び結合剤系を含有する、FCC触媒設計における成分の相補的性質は、石油精製流の広いスレートと共に首尾よく使用することを可能にする。FCC触媒のゼオライト部分は、7.4~12Åの範囲の細孔を有する結晶性シリカ-アルミナ構造体であり、ゼオライト細孔に侵入した10.2Å未満の分子を分解することができる。活性アルミナ部分は、メソ細孔範囲(20~500Å)、並びにマクロ細孔(>500Å)の細孔を有する非晶質シリカ-アルミナ構造体である。ゼオライトは、FCC触媒で起こるコークスの選択的な分解において非常に大きな役割を担っているが、分解することができる分子のサイズが明らかに制限される。対称的に、活性アルミナは、ゼオライト程のコークス選択性で分解を提供しないが、ゼオライトが効果的に処理することができないより大きな分子を分解することができる。その結果、ゼオライトによる分解とマトリックスによる分解との相乗効果があり、その相乗効果では、マトリックスは、ゼオライト自体では分解することができないほど大きい分子をゼオライトが処理することができるサイズへと「予備分解」することができる。ゼオライトに交換される希土類のレベルを調整することによって、広範囲のガソリン選択性及びオクタンもまた得ることができる。これにより、触媒製造業者及び精製業者は、その触媒の特定の構成を調整して、処理される特定の供給材料のその設計を最適化することができる。
【0003】
[03] ベーマイト又は擬ベーマイトは、解膠されているか否かにかかわらず、FCC触媒中の活性アルミナとして又はFCC触媒用のアルミナ系結合剤として時折使用される。解膠アルミナはまた、水素処理触媒の製造にも使用されるが、アルミナが解膠されている様式は、顕著に異なる。FCC触媒用途における解膠アルミナの使用が奏功するには、比較的大きな孔径、即ちいわゆるメソ細孔の存在と共に、アルミナの優れた分解能力にある程度起因する。更に、解膠アルミナは、典型的には、良好な見かけ嵩密度を有し、非常に効果的な結合剤であり、より大きな孔径及び良好な単位保持率を有する触媒を生成する。分解される分子が接近可能である、より大きな孔径は、アルミナ中に活性分解部位を提供し、上述のようにコークス選択性とより関連して作用するが、サイズに依存する。触媒を水素処理する場合には、アルミナは、ペレット形成に良好な結合強度、活性金属化合物の効果的な分散のための高い表面積、及び反応物質分子の効果的な拡散のための調節された細孔特徴を提供する。
【0004】
[04] 典型的には、水素処理触媒を生成するための解膠アルミナは、0.1未満の酸のモル/アルミナのモル(5%未満の酸使用量)を使用して調製される一方で、FCC触媒は、典型的にはより多くの量を使用する。水素処理触媒では、より低い酸の使用量は、最終触媒の孔径分布及び細孔容積を保持するのに重要であり、工業的に有用な形態へと押出成形されることを可能にする。対称的に、FCC触媒は、必須の球状、及び粒子流動化に必要とされる特性(即ち摩耗性、嵩密度、及び表面領域)を得るために、スラリーから噴霧乾燥しなければならない。
【0005】
[05] アルミナの解膠は、化学処理によって大きなアルミナ粒子を小さな粒子に砕き、触媒用途に好適な結合剤を作製することを含むと認識されている。従来の湿式解膠プロセスでは、アルミナは、水性スラリー中で酸処理されて熟成される。プロセスは、典型的には大量の、即ち、アルミナのインシピエントウェットネス(incipient wetness)細孔容積の2倍以上の酸性水溶液を利用し、完了まで数時間かけてバッチ式で実行される。プロセスは、大量の水を使用して、解膠アルミナを他のプロセス工程に汲み出すことができるようにその粘度を低く保つ。この大量の水によって、解膠アルミナ溶液中の最大固体含有量は、典型的には20重量%未満に制限される。FCC又は他の噴霧乾燥触媒を作製するとき、解膠アルミナは、典型的には触媒の20~60重量%を構成する。解膠アルミナ原料流の固体が低い場合、触媒噴霧乾燥機供給材料の固体含有量の低下がもたらされ、触媒製造スループットの低下及びエネルギー使用量の増加が生じる。
【0006】
[06] 触媒性能又はプラントの利用(能力)を改善することのいずれかに関する解膠プロセスの改善は、FCC触媒の使用に関連する経済性に実質的な影響を与えることができる。結果的に、この領域における作業が継続されて、操作が最適化される。
【0007】
[07] 米国特許第6,930,067号は、水性媒体中で触媒成分又はその前駆体を組み合わせて触媒を調製して触媒前駆体混合物を形成するためのプロセスについて開示している。次いで、成形工程の前に、混合物が約300秒未満不安定化される成形装置にこの混合物を供給して、粒子を形成する。
【0008】
[08] 米国特許第4,086,187号は、0.065の酸のモル/アルミナのモルの酸利用(酸/アルミナ)でギ酸を使用して解膠された擬ベーマイトを利用する、耐摩耗性触媒組成物について開示している。
【0009】
[09] 米国特許第4,179,408号米国特許第4,179,408号は、0.03~0.5の酸/アルミナのモル比で、4.0~4.8のpHを有するスラリー中で、湿式解膠プロセスを使用してアルミナを解膠する、スフェロイド形のアルミナ粒子を調製するためのプロセスについて開示している。
【0010】
[010] 米国特許第4,443,553号及び同第4,476,239号は、少量のアルミニウムヒドロキシクロリド又はアルミニウムヒドロキシニトレートをそれぞれ組み込むことによって、ゼオライト、アルミナ含有結合剤、粘土、及びシリカ源を含有する水性スラリーの粘度を顕著に低減することができる流動接触分解触媒の調製のためのプロセスについて開示している。
【0011】
[011] 米国特許第5,866,496号は、流動接触分解触媒を製造するためのプロセスであって、(1)擬ベーマイト成分の添加に先立って、解膠のために使用される無機酸を添加するように、触媒スラリーに成分を添加する順序を変更し、(2)リン含有分散剤を0.05重量%~約0.6重量%の量で添加して、噴霧乾燥機供給材料スラリーの固体含有量を増加することを可能にするプロセスについて開示している。
【0012】
[012] それにもかかわらず、FCC製造プラントの効率、能力、及び操業率を改善するプロセスが現在も必要とされている。本開示に記載の本発明のプロセスが、良好な触媒特性を維持しながらプラントスループットを増加することが、予想外に見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
[013] 本発明の本質は、増加した固体及び酸の含有量と減少した含水量とを同時に有する解膠アルミナを生成するためのプロセス、並びに解膠アルミナを使用して、噴霧乾燥された流動触媒を生成するためのプロセスの発見にある。有利なことに、より高い濃度の酸は、解膠アルミナの製造率を増加し、熟成の必要性を排除する。触媒生成に使用するとき、本発明のプロセスを使用して生成された解膠アルミナは、解膠アルミナ中の高い固体濃度に起因して触媒生成率の増加を提供する。本発明のプロセスはまた、少ないエネルギーの使用に起因して、触媒製造中のコストの減少を提供する。一実施形態では、本開示は、約45~65重量%の固体含有量を有する実質的に自由流動性の固体微粒子を形成するのに十分なエネルギー及び強度を有する混合機を用いて、0.16~0.65の、酸のモル/アルミナのモルの比で、ベーマイトアルミナと酸とを一定の時間混合することを含む、解膠アルミナを調製するためのプロセスを提供する。好ましい実施形態では、得られる自由流動性の固体微粒子が、20重量%の固体濃度を有する水溶液中にスラリー化されるか又は分散されるとき、ベーマイトアルミナ及び酸が2.5~4.0のpHを提供するのに十分な比で混合される。
【0014】
[014] 別の実施形態では、本開示は、噴霧乾燥された流動触媒を生成するためのプロセスであって、本開示に従って生成された自由流動性の解膠アルミナ微粒子を、ゼオライト及び水と組み合わせて、噴霧乾燥機供給材料を形成することと、次いで噴霧乾燥機供給材料を噴霧乾燥して、触媒を提供することとを含む、プロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[015] 本発明の原理の理解を促すため、本発明の特定の実施形態の説明が続き、特定の原語を用いてその特定の実施形態を説明する。とはいえ、特定の原語の使用による本発明の範囲の制限を意図していないことを理解されたい。変更、更なる修正、及び考察されるそのような本発明の原理の更なる用途は、通常、本発明が関係する当業者が想到し得るものとして企図される。
【0016】
[016] 本明細書及び添付の請求項に使用される場合、単数形の「a」、「and」、及び「the」は、文脈が別途明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0017】
[017] 例えば、本開示の実施形態を説明する際に用いられる濃度、容積、プロセス温度、プロセス時間、回収量又は収量、流量、並びにそれらの同様の値及び範囲を修飾する「約」は、例えば、典型的な測定及び取り扱い手順を通じて、これらの手順における不慮のエラーを通じて、これらの方法を実行するために使用される成分の差を通じて、かつ近似を考慮するように、起こり得る数量のばらつきを指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の経時変化によって異なる量、並びに特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の混合又は処理によって異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているかどうかに関わらず、これらの量の同等量を含む。
【0018】
[018] 本明細書で使用される場合、用語「ベーマイト」は、用語「擬ベーマイト」を含み、式Al・HOの固体アルミナ材料を示すために使用され、約20~約1000Åの範囲の結晶サイズを有する良好に結晶化したy-AlOOHの主な反射と一致する広い線を示すX線回折パターンを有する。結果的に、本開示の目的のために、用語「ベーマイト」及び「擬ベーマイト」は、本明細書で交換可能に使用されるであろう。
【0019】
[019] 本明細書で使用される場合、用語「流動性」とは、一般に、20~150μの平均粒径、0.65~1.2g/cmの見かけ嵩密度、及び0~30体積%である触媒粒子の0~40μの留分を有する球形の噴霧乾燥された固体粒子を意味する。
【0020】
[020] 本明細書で使用される場合、用語「自由流動性」は、固体粒子として流動する、自由液体を有さない非粘着性の固体を示すために使用される。
[021] 本明細書で使用される場合、用語「解膠された」又は「解膠」は、酸媒体中でのアルミナ粒子の安定な分散体の形成を示すために使用される。
【0021】
[022] 本明細書で使用される場合、用語「孔径」は、細孔の直径を示すために使用される。
[023] 本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、適切な量を意味するが、絶対値の約0%~約50%、約0%~約40%、約0%~約30%、約0%~約20%、又は約0%~約10%変化する量を含む。
【0022】
解膠プロセス
[024] 本発明のプロセスは、流動触媒に使用するためにアルミナを解膠するためのプロセスに関する。一般に、本明細書に記載のプロセスは、アルミナのインシピエントウェットネス細孔容積未満である量の酸性水溶液を利用して、固体微粒子の解膠アルミナを作製する。これにより、約45~約65%の固体含有量を有する解膠アルミナが生成される。水の少なさに起因して酸の濃度はより高く、解膠反応の速度を上げ、熟成の必要を除外する。解膠アルミナのより高い固体濃度及びより速い解膠によって、解膠アルミナのより高い製造率及びかなり小さな反応容器を使用できる可能性が生じる。触媒生成に使用されるとき、解膠アルミナのより高い固体濃度は、より高い触媒生成率を生じるより高い触媒噴霧乾燥機供給材料の固体濃度をもたらす。噴霧乾燥中に蒸発させる水が少ないことに起因して、エネルギー使用量もまた低下する。
【0023】
[025] 本開示に従って、ベーマイトアルミナは、水性媒体中で酸性化されることによって解膠される。酸及びアルミナは、典型的には、アルミナのモル当たり約0.16~約0.65モルの酸の量で使用され、好ましくは、酸及びベーマイトアルミナは、約0.20~約0.50の酸のモル/アルミナのモルで使用される。より好ましくは、酸及びベーマイトアルミナは、約0.25~約0.45の酸のモル/アルミナのモルで使用される。最も好ましくは、酸及びベーマイトアルミナは、約0.3~約0.40の酸のモル/アルミナのモルで使用される。
【0024】
[026] アルミナを解膠するために使用される酸は、アルミナ粒子の安定な分散体を形成するのに好適な任意の酸である。一実施形態では、酸は一塩基酸から選択される。より好ましくは、酸は、ギ酸、硝酸、塩酸、酢酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。更により好ましくは、アルミナを解膠するために使用される酸は、塩酸又は硝酸である。
【0025】
[027] 本開示に従って、ベーマイトアルミナを酸と混合することによって、実質的に自由流動性の微粒子固体である解膠アルミナが生じる。好ましくは、固体微粒子は、インシピエントウェットネス点即ち、細孔容積の飽和が達成される点未満の液体含有量を有する。
【0026】
バッチプロセス及び連続プロセス
[028] 解膠アルミナは、バッチプロセス又は連続プロセスのいずれかによって生成されることができる。バッチプロセスで生成されるとき、アルミナは、反応流を収容することができる任意の好適な開放反応器(複数可)又は容器(複数可)で調製することができる。上述のベーマイトアルミナ、水、及び酸は、初期温度が約40°F~約100°F、好ましくは約60°F~約90°Fであるバッチ容器に運ばれる。アルミナの温度は、反応中の最高温度が約130°F~約200°F、好ましくは、約150°F~約180°Fであるように、解膠中の反応熱及び混合に起因する入熱に起因して上昇させる。バッチ混合プロセスの混合時間は、好ましくは0.1~5.0時間、より好ましくは約0.5~約3.0時間、及び更により好ましくは約1.0~約2.0時間である。
【0027】
[029] 解膠アルミナが連続プロセスで生成されるとき、アルミナは、反応流を収容することができる任意の好適な反応器又は開放容器で調製することができる。好ましくは、反応器は、加熱又は冷却を可能にするためにジャケット付きである。ベーマイトアルミナ、水及び酸は、上述の初期温度及び最高温度で、容器内で混合される。連続プロセスでの混合時間は、好ましくは10分未満、より好ましくは約1.0~約5.0分、及び更により好ましくは約2.0~約3.0分である。
【0028】
[030] バッチプロセス及び連続プロセスの両方では、反応器内で使用される混合システムは、実質的に自由流動性の微粒子固体を形成するのに十分な強度及びエネルギーを有する混合システムである。一実施形態では、混合システムは、高強度混合システムであり、本明細書の目的では、用語「高強度混合システム」とは、約5.0×10-4~約0.1馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加えるシステムを意味する。本発明の別の実施形態では、混合システムは、約0.001~約0.05馬力/時間/解膠固体混合物のポンドを加えるものである。好ましくは、バッチプロセスが使用されるとき、反応器は、Eirich Machines等によって製造された回転型、又は、Sigma若しくはMikrons混合機のような定置型であってもよく、垂直混合機インペラを利用する。連続プロセスが使用されるとき、混合機インペラは、垂直インペラ、又は水平軸パドルアセンブリであってもよい。連続混合機の例としては、Readco Kurimoto Inc.、Leistritz Corporation、及びLittleford Dayによって製造されたものが挙げられる。好ましくは、連続プロセスでは、混合機は、高い機械的エネルギー入力を付与する特定の構成で設計されたパドル又はスクリュ等の混合要素を有する、単軸又は二軸設計を特徴とする。好ましくは、高強度混合機は、パドルとバレル壁との間に狭い隙間を備え、バッチ混合機よりも短い時間長でより効率的かつ均一な混合を提供する、水平型の連続混合機である。
【0029】
解膠固体微粒子の特性
[031] 典型的には、本発明のプロセスによって形成された解膠アルミナ固体微粒子材料の平均粒径は、200μ未満、好ましくは100μ未満である。一実施形態では、本発明のプロセスによって形成された解膠アルミナの平均粒径は、約1μ~約200μ、好ましくは約3μ~約100μ、最も好ましくは約5μ~約30μの範囲である。更により好ましい実施形態では、本発明のプロセスによって生成された解膠アルミナの微粒子の平均粒径は、約10μ~約15μである。平均粒径は、ASTM D4464によって測定する。
【0030】
[032] 本発明のプロセスに従って形成された解膠アルミナ固体微粒子の見かけ嵩密度は、約0.3~約2.0g/cmである。好ましい実施形態では、見かけ嵩密度は、0.4~1.0g/cm、及びより好ましくは0.5~0.8g/cmである。見かけ嵩密度は、ASTM D1895によって測定する。
【0031】
[033] 本発明のプロセスによって生成された解膠アルミナ固体微粒子は、1750°Fで1時間の総揮発分として測定された、約45.0~約65.0重量%の固体含有量を有する。
【0032】
本発明の一実施形態では、解膠アルミナ固体微粒子の固体含有量は、固体微粒子の総重量に基づいて約47.0重量%~約62.0重量%である。好ましい実施形態では、解膠アルミナ固体微粒子の固体含有量は、固体微粒子の総重量に基づいて約50.0重量%~約60.0重量%である。解膠アルミナ固体微粒子のAl含有量は、固体微粒子の総重量に基づいて、約80~約100重量%、好ましくは約90~約100重量%の範囲である。
【0033】
スラリー化微粒子固体のpH
[034] 本明細書に開示の解膠プロセスから生じる固体は、自由液体を含まず、自由流動性、非粘着性である。しかしながら、溶液を形成するためにスラリー化する場合、得られる溶液のpHは、溶液中の未反応の遊離酸の測定値、これはひいてはアルミナの酸の吸収の指標である。かかるスラリーは、20重量%の固体濃度で解膠アルミナの固体を水でスラリー化することによって調製される。室温の水を使用し、標準的なガラス電極プローブを使用してpHを測定する。測定に先立ち、プローブは、室温で、pH4.0及びpH7.0のバッファ溶液で較正される。20重量%の固体濃度でスラリー化するとき、解膠固体は、好ましくは2.5~4.0のpHを有する。より好ましくは、得られるスラリーは、2.75~3.75のpH、及び更により好ましくは3~3.5のpHを有する。
【0034】
触媒
[035] 解膠アルミナは、噴霧乾燥された流動触媒に組み込まれることができる。かかる触媒は、例えばFCC反応器スタンドパイプでの輸送に好適である。好ましくは、流動触媒は、DCC、MTO又はFCC触媒から選択される。更により好ましくは、触媒は、ゼオライト、解膠アルミナ、粘土、結合剤、並びに任意選択的に添加シリカ及び他のマトリックス材料を含むFCC触媒である。
【0035】
ゼオライト/分子ふるい
[036] 流動触媒に使用される分子ふるいは、DCC、MTO、又はFCC触媒に典型的に使用される任意の分子ふるいであり得、これらに限定されないが、Y-ゼオライト、ZSM-5ゼオライト、SAPO若しくはALPO分子ふるい、又はそれらの混合物が挙げられる。流動触媒が、SAPO分子ふるいを含有するとき、SAPO分子ふるいは、SAPO-34が好ましい。流動触媒がFCC触媒であるとき、FCC触媒に利用されるゼオライトは、炭化水素変換プロセスにおいて触媒活性を有する任意のゼオライトであってもよい。一般に、ゼオライトは、少なくとも0.7nmの開口部を有する細孔構造を特徴とする大孔径ゼオライト、及び0.7nmよりも小さいが約0.40nmよりも大きい孔径を有する中孔径又は小孔径のゼオライトであってもよい。好適な大細孔ゼオライトについては、以下更に記載する。好適な中孔径ゼオライトとしては、それらの全てが既知の材料である、ZSM-5、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-50、ZSM-57、MCM-22、MCM-49、MCM-56等のペンタシル型ゼオライトが挙げられる。
【0036】
[037] 好適な大細孔ゼオライトは、合成フォージャサイト、即ちY型ゼオライト、X型ゼオライト、及びゼオライトベータ、並びに熱処理(焼成)されたそれらの誘導体等の結晶性アルミノ-シリケートゼオライトを含む。特に好適であるゼオライトとしては、米国特許第3,293,192号に開示の超安定Y型ゼオライト(USY)が挙げられる。ゼオライトはまた、米国特許第4,764,269号に開示のSAPO及びALPO等の分子ふるいとブレンドされてもよい。
【0037】
[038] 好ましくは、ゼオライトは、Y型ゼオライトである。本発明に有用なゼオライトとしてはまた、希土類と事前に交換されたゼオライトが挙げられる。希土類はまた、触媒を生成するための噴霧乾燥中に、又はゼオライト含有粒子の処理後に、即ち、Y型ゼオライトを含有する噴霧乾燥機供給材料中に、希土類化合物、例えば希土類塩を添加することによって、又は噴霧乾燥されたY型ゼオライト粒子を、希土類含有溶液で処理することによって、添加されてもよい。好ましくは、希土類は、触媒の総重量に基づいて、約0.0~約8.0重量%、より好ましくは約1.0~約6.0重量%の量で存在する。
【0038】
[039] 標準的なY型ゼオライトは、ケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムとの結晶化によって、商業的に生成されている。このゼオライトは、元の標準的なYゼオライト構造体のシリコン/アルミニウム原子比を増加させる脱アルミニウムによって、USY型に変換することができる。脱アルミニウムは、蒸気焼成によって、又は化学処理によって達成されることができる。
【0039】
[040] 好ましい未使用のY-ゼオライトの単位格子サイズは、約24.45~約24.7Åである。ゼオライトの単位格子サイズ(UCS)は、ASTM D3942の手順に基づいてX線分析によって測定することができる。ゼオライト自体、及び流動接触分解触媒のマトリックスは、シリカ及びアルミナの両方を通常含有するが、触媒マトリックスのSiO/Al比は、ゼオライトのものと混同するべきではない。ゼオライトに相当する触媒表面積、即ち、<20Åの範囲の細孔に相当する表面積は、好ましくは20~300m/g、より好ましくは60~200m/gの範囲である。
【0040】
[041] 本発明の目的のために、用語「ゼオライト」は、非ゼオライトふるい材料もまた含んで本明細書で使用される。流動触媒中に存在し得る例示的な非ゼオライトふるい材料としては、様々なシリカ-アルミナ比のシリケート(メタロシリケート、及びチタノシリケート等)、メタロアルミネート(ゲルマニウムアルミネート等)、メタロホスフェート、金属含有アルミノホスフェート(MeAPSO、及びELAPO)と称されるシリコ-及びメタロアルミノホスフェート等のアルミノホスフェート、金属含有シリコアルミノホスフェート(MeAPSO及びELAPSO)、シリコアルミノホスフェート(SAPO)、ガロゲルミネート(gallogerminate)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。SAPO、AIPO、MeAPO、及びMeAPSOの構造的な関係についての考察は、Stud.Surf.Catal.37 13~27(1987)の資源の号に見出され得る。AIPOは、アルミニウム及びリンを含有するが、SAPOでは、いくらかのリン及び/又はリンとアルミニウムの両方のうちのいくらかがシリコンに置換されている。MeAPOには、アルミニウム及びリンに加えて、Li、B、Be、Mg、Ti、Mn、Fe、Co、An、Ga、Ge、及びAs等の様々な金属が存在するが、MeAPSOは、加えてシリコンを含有する。MeAlSiの格子の負電荷は、カチオンによって補われ、式中、Meが、マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄及び/又は亜鉛である。MeAPSOは、米国特許第4,793,984号に記載されている。SAPO型ふるい材料は、米国特許第4,440,871号に記載されており、MeAPO型触媒は、米国特許第4,544,143号及び同第4,567,029号に記載されており、ELAPO触媒は、米国特許第4,500,651号に記載され、ELAPSO触媒は、欧州特許出願第159,624号に記載されている。特定の分子ふるいは、例えば、以下の特許:MgAPSO又はMAPSO-米国特許第4,758,419号、MnAPSO-米国特許第4,686,092号、CoAPSO-米国特許第4,744,970号、FeAPSO-米国特許第4,683,217号、及びZnAPSO米国特許第4,935,216号に記載されている。使用され得る特定のシリコアルミノホスフェートとしては、SAPO-11、SAPO-17、SAPO-34、SAPO-37が挙げられ、他の特定のふるい材料としては、MeAPO-5、MeAPSO-5が挙げられる。
【0041】
[042] 使用され得る別の部類の結晶性材料は、MCM-41及びMCM-48材料によって例示されるメソ細孔結晶性材料の群である。これらのメソ細孔結晶性材料は、米国特許第5,098,684号、同第5,102,643号、及び同第5,198,203号に記載されている。米国特許第5,098,684号に記載のMCM-41は、少なくとも約1.3nmの直径を有する細孔の、均一な六方晶の配置を有する微細構造を特徴とし、焼成後、約1.8nmを超える少なくとも1つのd-間隔を有するX線回折パターン、及び約1.8nmを超えるX線回折パターンのピークのd-間隔に相当するd100の値で示されることができる六方晶の電子回折パターンを呈する。この材料の好ましい触媒の形態は、アルミノシリケートであるが、他のメタロシリケートもまた利用され得る。MCM-48は、立方体構造を有し、同様の調製手順によって作製され得る。
【0042】
[043] 一般に、ゼオライト成分は、分解触媒の約5重量%~約50重量%を構成する。好ましくは、ゼオライト成分は、総触媒組成物の約12重量%~約40重量%を構成する。
【0043】
マトリックス
[044] 触媒はまた、上述の解膠アルミナに加えて、活性マトリックスを含み得る。これは、触媒的に活性な、細孔シリカ-アルミナ材料であるが、ゼオライトとは対照的に、非結晶性、即ち非晶質である。活性マトリックスは、メソ細孔の範囲(約20~約500Å)、並びにマクロ細孔(>500Å)の細孔を含有する。マトリックスに相当する表面積、即ち触媒の約20~約10000Åの範囲の細孔の表面は、失活化に先立って、約10~約250m/g、好ましくは約60~約200m/g、より好ましくは約80~約150mm/g、及び更に好ましくは約90~約100m/gの範囲である。好適な追加のマトリックス材料は、非解膠アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。マトリックス材料は、本発明の触媒中に、総触媒組成物の約1重量%~約70重量%の範囲の量で存在し得る。
【0044】
[045] 触媒の総表面積は、好ましくは、失活化に先立って、Brunauer,Emmett and Teller(BET)方法によって決定された、約30~約450m/g、より好ましくは約120~約350m/gである。
【0045】
粘土
[046] FCC触媒はまた、粘土を含む。粘土は、概ね、触媒活性には寄与しないが、触媒粒子全体に機械的強度及び密度をもたらし、その流動化を強化する。カオリンが好ましい粘土成分であるが、改質カオリン(例えば、メタカオリン)のような他の粘土が、任意選択的に本発明の触媒に含まれている場合があるということも企図される。典型的には、粘土成分は、触媒組成物の総重量の約5重量%~約80重量%、好ましくは触媒組成物の総重量の約25重量%~約55重量%を構成するであろう。
【0046】
添加シリカ
[047] 本発明の主題のFCC触媒に有用な添加シリカ成分は、マトリックスの成分として使用されるか、又は固体、スラリー若しくはゾルの形態で成分として別個に添加される任意のシリカ酸化物であってもよい。用語「添加シリカ」とは、触媒の粘土、結合剤又はゼオライト成分のいずれかに存在するシリカ酸化物を含まない。一実施形態では、添加シリカ成分は、これらに限定されないが、沈降シリカ、シリカゲル、コロイド状シリカ、又はそれらの組み合わせを含むシリカ成分を含む。添加シリカ成分は、提供される微粒子シリカアルミナに含有されるシリカを含むであろうが、シリカアルミナは、シリカアルミナの総重量に基づいて、60重量%を超えるシリカ、好ましくは75重量%を超えるシリカ、最も好ましくは80重量%を超えるシリカを含むこともまた、本発明の主題の範囲内である。典型的には、添加シリカ成分は、触媒組成物総重量に基づいて、少なくとも約2重量%のシリカを提供するのに十分な量で本開示の触媒組成物中に存在する。一実施形態では、添加シリカ成分は、触媒組成物の総重量に基づいて、約2~約20重量%、及び好ましくは約3~約10重量%のシリカを提供するのに十分な量で触媒中に存在する。
【0047】
結合剤
[048] 上述の解膠アルミナ微粒子固体は、結合剤として存在する。任意選択的に、二次結合剤もまた存在してもよい。好適な二次結合剤としては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミニウムホスフェート、並びに他の金属系ホスフェート等の当該技術分野において既知の無機酸化物が挙げられる。W.R.Grace&Co.-Connより入手可能なLudox(登録商標)コロイド状シリカ及びイオン交換水ガラス等のシリカゾルもまた、好適な結合剤である。ある特定の二次結合剤、例えば、結合剤前駆体から形成されたもの、例えばアルミニウムクロロヒドロールは、結合剤の前駆体の溶液を混合機に導入し、次いで結合剤を噴霧乾燥すること及び/又は更に処理することによって形成される。好ましくは、本発明の主題に従って組成物を調製するのに有用な二次無機結合剤材料としては、これらに限定されないが、アルミナゾル、50重量%未満のシリカを含有するシリカアルミナ、又はそれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、二次結合剤はアルミナゾルである。
【0048】
触媒調製プロセス
[049] 本発明のFCC触媒は、解膠アルミナ、触媒的に活性なゼオライト成分、結合剤、粘土、並びに任意選択的に添加シリカ成分及び/又は他の活性アルミナを含有する均質な又は実質的に均質な水性スラリーを形成することによって生成される。最終触媒組成物は、約5~約50重量%の触媒的に活性なゼオライト成分、約2重量%~約30重量%の添加シリカ成分、結合剤として約5重量%~約60重量%の解膠アルミナ微粒子固体、約5重量%~約80重量%の粘土、及び任意に、約1重量%~70重量%の他の活性アルミナマトリックスを含むマトリックス材料、及び上述の任意選択的な結合剤を含み得、当該重量パーセントは、総触媒組成物に基づく。好ましくは、水性スラリーは、粉砕されて均質又は実質的に均質なスラリーを得る、即ち、スラリーの全ての固体成分が10μm未満の平均粒径を有するスラリーである。あるいは、スラリーを形成している諸成分が、スラリーの形成に先立って粉砕されていてもよい。水性スラリーはその後混合されて、均質又は実質的に均質な水性スラリーを得る。
【0049】
噴霧乾燥
[050] 水性スラリーは、粒子を形成するのに好適な任意の従来の乾燥技術を使用して乾燥されてもよい。好ましい実施形態では、スラリーは、噴霧乾燥されて、約20~約200μの範囲、好ましくは約50~約100μの範囲の平均粒径を有する粒子を形成する。噴霧乾燥機の入口温度は、約220℃~約540℃の範囲、及び出口温度は、約130℃~約180℃の範囲であってもよい。
【0050】
焼成
[051] 次いで、噴霧乾燥された触媒は、完成したのと「同様に」仕上がっているか、又は揮発物を除去するための使用に先立って、活性化のために焼成されてもよい。触媒粒子は、例えば、約250℃~約800℃の範囲の温度で、約10秒~約4時間の期間の間焼成され得る。好ましくは、触媒粒子は、約350℃~約600℃の温度で約10秒~約2時間の間焼成される。
【0051】
[052] 焼成触媒は、ASTM D4512による測定で、約0.65~約1.122g/cmの見かけ嵩密度を有する。好ましくは、焼成触媒のAl含有量は、触媒の総重量に基づいて、約35.0~約70.0重量、好ましくは約45.0~約60.0重量%である。
【0052】
洗浄
[053] 任意選択的に、触媒は、触媒、特にFCC触媒にとって汚染物質として知られている余剰なアルカリ金属を除去するために洗浄されてもよい。触媒は、1回以上好ましくは水、水酸化アンモニウム、及び/又は硫酸アンモニウム溶液等の水性アンモニウム塩溶液で洗浄されてもよい。
【0053】
[054] 洗浄された触媒は、従来技術、例えば濾過によって洗浄スラリーから分離され、乾燥されて、典型的には約100℃~約300℃の範囲の温度で粒子の水分含有量を所望のレベルまで低下させる。一実施形態は、瞬間気流乾燥を使用して触媒を乾燥することを含む。
【0054】
[055] 触媒へ組み込むために解膠アルミナを生成するための本発明の方法は、生成能力を増加し、優れた触媒摩耗特徴を生じながら、従来の湿式解膠技術を使用して作製されたものと一致する、表面積及び見かけ嵩密度、並びに性能活性/選択性等の物理的特性を有する材料を生じる。より高い固体含有量の解膠アルミナが噴霧乾燥機に供給され、結果的に水を除去する負荷を低減するので、生成能力の増加が得られる。改善された摩耗特徴は、典型的にはより低いDIとして定量化される。Diとは、当該技術分野において既知の耐磨耗性測定値であるダビソン磨耗指数(Davison Attrition Index)を指す。要約すると、DIは、ある特定の時間にわたって発生する<20μの微粉の量として定義される。本発明のダビソン摩耗指数(DI)を決定するために、7.0ccの試料触媒をスクリーニングして、0~20μの範囲の粒子を除去する。これらの残留粒子は、次いで、21リットル/分で1時間の間加湿された(60%)空気のエアジェットを通過させる、精密に穴を空けられたオリフィスを有する硬化鋼ジェットカップに接触させる。DIは、初期に存在する>20μの物質の量に対して、試験中に発生する0~20μの微粉のパーセント、即ち以下の式:
[056] DI=100(試験中に形成された0~20μの物質の重量%)/(20μを超える物質の試験前の元の重量)として定義される。
【0055】
[057] 典型的には、本開示に従って生成されるFCC触媒のDIは、20未満、好ましくは15未満である。更により好ましくは、DIは、1~10、及び最も好ましくは3~8の範囲である。
【0056】
[058] 本発明及びその利点を更に説明するために、具体的な実施例が次に提示される。実施例は、特許請求される発明の具体的例示として提示されている。しかしながら、本発明は、実施例に記載される具体的な詳細に限定されるものではないということを理解すべきである。当業者は、本発明の趣旨及び本請求の範囲から逸脱しない多くの変更例を認識するであろう。
【0057】
[059] 固体の組成又は濃度を指す、実施例中及び明細書の残りの部分における全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。しかしながら、気体の組成を指す、実施例中並びに明細書の残りの部分における全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、モル又は体積基準である。
【0058】
[060] 更に、特性の特定のセット、計測の単位、条件、物理的状態、又はパーセンテージを表すような、明細書又は特許請求の範囲において引用される数字のいずれの範囲も、そのような範囲内に含まれる全ての数、並びにそのように示されている全ての範囲内の数の全ての部分集合を含めて、言及するか又は他の方法で示すことによって文字どおり明示的に含むものであると意図されている。
【0059】
実施例
比較例1:
[061] 湿式解膠アルミナの標準的な調製:37%のHCl1625gを16138gのDI水と混合することによってHClの希釈液を調製した。7500gの擬ベーマイト/ベーマイトアルミナ(結晶サイズ35Å、30%の含水量)を10ガロンタンク中で上の希釈したHCl溶液と撹拌しながら再度スラリー化した。スラリー(0.35の酸/アルミナの解膠モル比を目標とする)を一晩熟成させた。得られた湿式解膠アルミナを、以下の特性:室温でpH2.8、20重量%の固体含有量を有した。このレシピを使用して調製した湿式解膠アルミナの典型的な固体含有量は、22重量%未満であった。
【0060】
実施例2:
[062] 乾燥微粒子アルミナのバッチ式解膠:比較例1で使用した3000gの擬ベーマイト/ベーマイトアルミナを、1ガロンのバッチEirich混合機内で37%のHCl836gと4gのDI水との混合物に添加した。次いで、90分間混合した。0.35の酸/アルミナの解膠モル比を使用した。得られた自由流動性の解膠アルミナ固体微粒子は、以下の特性:pH3.3(室温の水中で20%の固体で再度スラリー化後)、55重量%の固体含有量を有した。このレシピを使用して調製した乾燥微粒子解膠アルミナの典型的な固体含有量は、45~60重量%であった。
【0061】
実施例3:
[063] 乾燥微粒子アルミナの連続式解膠:比較例1で使用した擬ベーマイト/ベーマイトアルミナを、ロス-イン-ウエイトフイーダを使用して12ポンド/分で5インチReadco二軸式連続混合機を介して供給した。0.35の酸/アルミナの解膠モル比を目標として、32重量%の塩酸を3.3ポンド/分の合計速度で混合機に供給した。加えて、混合機に1.41ポンド/分の速度で水を添加した。得られた自由流動性の解膠アルミナ固体微粒子は、以下の特性:pH3.5(室温の水中で20%の固体で再度スラリー化後)、50重量%の固体含有量を有した。乾燥微粒子解膠アルミナの典型的な固体含有量は、45~60重量%であった。
【0062】
比較例4:
[064] 1145gの洗浄したUSYゼオライト、389gの希土類塩化物溶液(乾燥ベースで105gのLa)、8334g(乾燥ベースで1500g)の実施例1からの湿式解膠アルミナ、750g(乾燥ベースで300g)のコロイド状シリカを含有する水性スラリー、及び2295g(乾燥ベースで1950g)のカオリン粘土を、高せん断Myers混合機内で10分間混合した。混合物を粉砕して粒径を低減し、32重量%の固体含有量(955℃で測定)で、Bowen噴霧乾燥機内で噴霧乾燥した。噴霧乾燥した粒子を焼成、洗浄してNaOを低下させ、132℃のオーブンで一晩乾燥した。これを比較触媒Aと呼び、その特性を表1に列挙する。
【0063】
実施例5:
[065] 1145gの洗浄したUSYゼオライト、389gのランタン塩溶液(乾燥ベースで105gのLa)、2727g(乾燥ベースで1500g)の実施例2からの微粒子解膠アルミナ、750g(乾燥ベースで300g)のコロイド状シリカ、及び2295g(乾燥ベースで1950g)のカオリン粘土を含有する水性スラリーを、高せん断Myers混合機内で10分間混合した。混合物を粉砕して粒径を低減し、40重量%の固体含有量(955℃で測定)で、Bowen噴霧乾燥機内で噴霧乾燥した。噴霧乾燥した粒子を焼成、洗浄してNaOを低下させ、132℃のオーブンで一晩乾燥した。これを触媒Bと呼び、その特性を表1に列挙する。
【0064】
[066] 新しい本発明のプロセスによって達成される約40%のより高い(対標準的なプロセスによる約32%の)噴霧乾燥機供給材料固体は、標準的な湿式解膠プロセスと比較して、約42%の触媒生成率の増加を提供する(表2)。これは主に、噴霧乾燥機内で、一定の供給率で蒸発させる水が少ないことに起因する。
【0065】
[067] 表1のデータは、比較触媒A、及び異なる噴霧乾燥機供給材料固体レベルで配合した触媒Bの未使用での特性は、同様の特性を有することを示している。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
実施例6:
比較触媒A及び触媒Bの失活化及び性能試験
[068] FCC用途での比較触媒A及び触媒Bの安定性を決定するために、触媒を、2000ppmのNi及び3000ppmのVに含浸し、次いでLori T.Boock,Thomas F.Petti,and John A.Rudesill,ACS Symposium Series,634,1996,171~183に記載のように、788℃で環状プロピレン蒸気(CPS)プロトコルを使用して蒸気失活化した。両方の触媒は、同様の単位格子サイズを有したが、触媒Bは、未使用及び失活化後の両方で顕著により高い表面積を有した(表1及び3)ことを蒸気特性の分析は示している。
【0069】
【表3】
【0070】
比較触媒A及び触媒BのDCR性能試験:
[069] G.W.Young,G.D.Weatherbee,and S.W.Davey,「Simulating Commercial FCCU Yields with the Davison Circulating Riser Pilot Plant Unit,」National Petroleum Refiners Association(NPRA)Paper AM88-52に記載のように、538℃の反応器温度のダビソンサーキュラライザー(Davison Circular Riser(DCR))で性能試験を行った。DCR試験に、実施例4及び5からの比較触媒A及び触媒Bの失活化された種類を使用した。71重量%の一定の変換で補間した収量を、表4に示す。乾燥微粒子解膠アルミナを配合した触媒Bは、標準的な湿式解膠アルミナを配合した比較触媒Aのものと同様の性能を有することをデータは示している。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例7:
触媒結合特性における解膠比の効果
[070] 触媒結合特性における解膠比の効果を調査するために、乾燥微粒子解膠アルミナを異なる酸対アルミナのモル比で、バッチEirich混合機内で調製した。乾燥微粒子アルミナを、実施例2に記載のように調製した。0.15、0.25、0.35、及び0.45の解膠モル比を達成するように、酸投入を調整した。全試料を、固体含有量約50重量%で調製した。試料を、それぞれ、固体微粒子解膠アルミナをAl-1、Al-2、Al-3、及びAl-4と標識付けした。表5は、微粒子解膠アルミナの特性を列挙している。データは、アルミナ表面積が、解膠比の増加につれて減少することを示している。
【0073】
【表5】
【0074】
実施例8:
[071] 微粒子解膠アルミナAl-1(解膠比0.15)を使用したことを除いて実施例5に記載の触媒Bと同じ手順を使用して、触媒Cを作製した。
【0075】
実施例9:
[072] 微粒子解膠アルミナAl-2(解膠比0.25)を使用したことを除いて実施例5に記載の触媒Bと同じ手順を使用して、触媒Dを調製した。
【0076】
実施例10:
[073] 固体微粒子解膠アルミナAl-3(解膠比0.35)を使用したことを除いて実施例5に記載の触媒Bと同じ手順を使用して、触媒Eを調製した。
【0077】
実施例11:
[074] 固体微粒子解膠アルミナAl-4(解膠比0.45)を使用したことを除いて実施例5に記載の触媒Bと同じ手順を使用して、触媒Fを調製した。
【0078】
[075] 触媒C~Fの特性を表6に示す。良好な結合特性を有する触媒を作製するのに、より高い解膠比が好ましいことが観察された。データは、DI<20の許容可能な摩耗性を有する触媒を作製するのに、0.15を超える解膠比が必要であることを示している。
【0079】
【表6】
【0080】
比較例12:
[076] 比較例4に記載の方法を使用して、比較触媒Gを調製した。本実施例の触媒用の噴霧乾燥機供給材料固体は、32重量%であった。比較触媒Gの特性を表7に列挙する。
【0081】
実施例13:
[077] 使用したアルミナが実施例3からのものであることを除いて、実施例5に記載の触媒Bと同じ手順を使用して、触媒Hを調製した。これで達成された噴霧乾燥機供給材料固体は、約40重量%であり、標準的な湿式解膠プロセスと比較して、約42%の触媒生成率の増加を提供する。これは主に、噴霧乾燥機内で、一定の供給率で蒸発させる水が少ないことに起因する。比較触媒Gに対して比較した触媒Hの特性を表7に列挙する。物理的及び化学的特性の分析は、2つの触媒が同様の特性を有することを示している。アルミナを解膠するための乾燥解膠プロセスの使用は、湿式プロセスによって解膠されたアルミナ、即ち解膠アルミナによって調製された触媒と比較して、より高い生成率であるが同様の特性を有する最終触媒を生じると、データは結論付けている。
【0082】
【表7】
【0083】
実施例14:
比較触媒G及び触媒Hの失活化及び性能試験
[078] FCC用途での比較触媒G及び触媒Hの安定性を決定するために、触媒を、2000ppmのNi及び3000ppmのVに含浸し、次いで、788℃で環状プロピレン蒸気手順を使用して蒸気失活化した。両方の触媒は、同様の単位格子サイズを有したが、乾燥解膠アルミナを配合した触媒Hは、未使用及び失活化後の両方でより高い表面を有することを蒸気特性の分析は示している(表7及び8)。
【0084】
【表8】
【0085】
比較触媒G及び触媒HのACE性能試験:
[079] 米国特許第6,069,012号に記載の高接触分解評価(Advanced Cracking Evaluation(ACE))反応器中で、538℃の温度で性能試験を行った。評価に使用した反応器は、Kayser TechnologyからのACEモデルAP流動床マイクロアクティビティユニットであった。ACE試験に、実施例12及び13からの比較触媒G及び触媒Hの失活化された種類を使用した。71重量%の一定の変換で補間した収量を、表9に示す。乾燥微粒子解膠アルミナを配合した触媒Hは、標準的な湿式解膠アルミナを配合した比較触媒Gのものと同様の性能を有することをデータは示している。結果は、実施例6と一致し、乾燥プロセスによって解膠されたアルミナから調製した触媒は、湿式プロセスによって調製したアルミナと同様の特性及び性能を有することを示している。
【0086】
【表9】
【0087】
実施例15
微粒子解膠アルミナを配合したZSM5系触媒
[080] 4000g(乾燥ベース)の洗浄したZSM-5ゼオライト、1780gのリン酸(乾燥ベースで1096gのP)、2727g(乾燥ベースで1200g)の実施例2からの微粒子解膠アルミナ、3478g(乾燥ベースで800g)のコロイド状シリカ、及び1064g(乾燥ベースで904g)のカオリン粘土を含有する水性スラリーを、高せん断Myers混合機内で10分間混合した。混合物を粉砕して粒径を低減し、34重量%の固体含有量(955℃で測定)で、Bowen噴霧乾燥機内で噴霧乾燥した。噴霧乾燥した粒子を焼成し、触媒Iと呼ぶ。この触媒の特性を、表10に列挙する。
【0088】
[081] 物理的及び化学的特性の分析は、微粒子解膠アルミナを使用して、良好な摩耗特性及び低いNaOを有するZSM-5系触媒を作製することができることを示している。SM-5系触媒は、DCC若しくはFCC用途において、又はZSM-5触媒を利用する任意の他のプロセスにおいて使用することができる。
【0089】
【表10】
【0090】
表10
実施例16:
微粒子解膠アルミナを配合したSAPO34系触媒
[082] 3100g(乾燥ベース)の洗浄したSAPO34、3822g(乾燥ベースで1860g)の実施例2からの微粒子解膠アルミナ、2696g(乾燥ベースで620g)のコロイド状シリカ、及び730g(乾燥ベースで620g)のカオリン粘土を含有する水性スラリーを、高せん断Myers混合機内で10分間混合した。混合物を粉砕して粒径を低減し、38重量%の固体含有量(955℃で測定)で、Bowen噴霧乾燥機内で噴霧乾燥した。噴霧乾燥した粒子を焼成し、触媒Iと呼ぶ。この触媒の特性を、表11に列挙する。
【0091】
[083] 物理的及び化学的特性の分析は、微粒子解膠アルミナを使用して、良好な摩耗特性及び低いNaOを有するSAPO34系触媒を作製することができることを示している。SAPO-34系触媒は、MTOプロセス用途において、又はSAPO-34触媒を利用する任意の他のプロセスにおいて使用することができる。
【0092】
【表11】
[発明の態様]
[1]
ベーマイトアルミナと酸とを、約0.16~約0.65の酸/アルミナのモル数比で一定時間の間、実質的に自由流動性の固体微粒子を形成するのに十分なエネルギー及び強度を有する混合機を用いて、混合すること、及び約45~約65重量%の固体含有量を有する実質的に自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子を形成すること、を含む、プロセス。
[2]
前記自由流動性の固体微粒子が、20重量%の固体濃度の水溶液中でスラリー化されるとき、2.5~4.0のpHを有する、1に記載のプロセス。
[3]
酸対アルミナの前記比が、約0.20~約0.50の酸のモル/アルミナのモルである、1に記載のプロセス。
[4]
前記自由流動性の固体微粒子の前記固体含有量が、47~62重量%である、1に記載のプロセス。
[5]
前記プロセスが、バッチプロセスである、1に記載のプロセス。
[6]
前記プロセスが、連続プロセスである、1に記載のプロセス。
[7]
前記一定時間が、10分未満である、6に記載のプロセス。
[8]
前記比が、0.20~0.50の酸/アルミナのモル数比である、1に記載のプロセス。
[9]
前記比が、0.25~0.45の酸/アルミナのモル数比である、8に記載のプロセス。
[10]
前記比が、0.3~0.40の酸/アルミナのモル数比である、9に記載のプロセス。
[11]
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子の前記固体含有量が、50~60重量%である、4に記載のプロセス。
[12]
前記混合機が、5.0×10-4~0.1馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加えるための高強度混合機である、1に記載のプロセス。
[13]
前記高強度混合機が、0.001~0.05馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加える、12に記載のプロセス。
[14]
前記スラリー溶液の前記pHが、2.75~3.75である、2に記載のプロセス。
[15]
前記スラリー溶液の前記pHが、3.0~3.5である、14に記載のプロセス。
[16]
前記自由流動性の解膠したアルミナ固体微粒子が、前記解膠したアルミナ固体微粒子の総重量に基づいて、約80.0~約100重量%のアルミナ含有量を有する、1に記載のプロセス。
[17]
前記自由流動性の固体微粒子が、約1~約200μmの平均粒径を有する、1に記載のプロセス。
[18]
前記平均粒径が、約5~約20μmである、17に記載のプロセス。
[19]
前記自由流動性の固体微粒子が、約0.3~約2.0g/cmの見かけ嵩密度を有する、1に記載のプロセス。
[20]
約0.4~約1.0g/cmの前記見かけ嵩密度である19に記載のプロセス。
[21]
約0.5~約0.8g/cmの前記見かけ嵩密度である20に記載のプロセス。
[22]
流動触媒を生成するためのプロセスであって、
(a)ベーマイト又は擬ベーマイトアルミナと酸とを、約0.16~約0.65の酸のモル/アルミナのモルの比で一定時間の間、実質的に自由流動性の固体を形成するのに十分な強度及びエネルギーを有する混合機を用いて、混合すること、並びに45~65重量%の固体含有量を有する実質的に自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子を形成することと、
(b)前記解膠したアルミナ固体微粒子をゼオライト及び水と組み合わせて、噴霧乾燥機供給材料を形成することと、
(c)前記噴霧乾燥機供給材料を噴霧乾燥して、噴霧乾燥された流動触媒を形成することと、を含む、プロセス。
[23]
前記触媒が、FCC触媒、DCC触媒、又はMTO触媒である、22に記載のプロセス。
[24]
前記工程(a)の自由流動性の解膠したアルミナ固体微粒子が、20重量%の固体濃度を有する水溶液中でスラリー化されるとき、約2.5~約4.0のpHを有する、22に記載のプロセス。
[25]
前記スラリー溶液の前記pHが、約2.75~約3.75である、24に記載のプロセス。
[26]
前記工程(a)の自由流動性の固体微粒子の前記固体含有量が、47.0~57.0重量%である、22に記載のプロセス。
[27]
前記プロセスが、バッチプロセスである、22に記載のプロセス。
[28]
前記プロセスが、連続プロセスである、22に記載のプロセス。
[29]
前記工程(a)の混合することが、10分未満の時間の間継続することを更に含む、28に記載のプロセス。
[30]
前記比が、約0.20~約0.50の酸のモル/アルミナのモルである、22に記載のプロセス。
[31]
前記比が、約0.25~約0.45の酸のモル/アルミナのモルである、30に記載のプロセス。
[32]
前記比が、約0.3~約0.40の酸のモル/アルミナのモルである、31に記載のプロセス。
[33]
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子の前記固体含有量が、約50.0~約60.0重量%である、26に記載のプロセス。
[34]
前記混合機が、5.0×10-4~0.1馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加えるための高強度混合機である、22に記載のプロセス。
[35]
前記高強度混合機が、0.001~0.05馬力時間/解膠固体混合物のポンドを加える、34に記載のプロセス。
[36]
前記組み合わせる工程が、粘土を組み合わせることを更に含む、22に記載のプロセス。
[37]
前記ゼオライトが、希土類を含む、22に記載の方法。
[38]
前記噴霧乾燥工程が、約130~約180℃の噴霧乾燥機出口温度で行われる、22に記載のプロセス。
[39]
前記噴霧乾燥された流動触媒を約250℃~約800℃の温度で焼成することを更に含む、22に記載のプロセス。
[40]
前記自由流動性の、解膠したアルミナ固体微粒子が、前記解膠したアルミナ微粒子の重量に基づいて、約80.0~約100.0重量%のアルミナ含有量を有する、22に記載のプロセス。
[41]
前記FCC触媒が、前記触媒の重量に基づいて、約0.0~約6.0重量%の希土類レベルを有する、23に記載のプロセス。
[42]
前記FCC触媒が、約30~約450m/gの総表面積を有する、23に記載のプロセス。
[43]
前記FCC触媒が、約20~約300m/gのゼオライト表面積を有する、23に記載のプロセス。
[44]
前記FCC触媒が、約10~約150m/gのマトリックス表面積を有する、23に記載のプロセス。
[45]
前記FCC触媒が、約0.4~約0.8g/cmの見かけ嵩密度を有する、23に記載のプロセス。
[46]
前記流動触媒が、FCC触媒である、23に記載のプロセス。
[47]
前記ゼオライトが、ZSM-5、Y-ゼオライト、SAPO、又はそれらの混合物から選択される、22に記載のプロセス。
[48]
前記SAPOゼオライトが、SAPO-34である、47に記載のプロセス。