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  • 特許-有機性廃棄物の処理装置および処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の処理装置および処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/13 20190101AFI20220427BHJP
【FI】
C02F11/13 ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019541577
(86)(22)【出願日】2017-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2017033308
(87)【国際公開番号】W WO2019053855
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 大
(72)【発明者】
【氏名】中村 友二
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511693(JP,A)
【文献】特開2013-193044(JP,A)
【文献】特開2011-088089(JP,A)
【文献】特開2013-190145(JP,A)
【文献】特開2013-117359(JP,A)
【文献】特開2017-006824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を乾燥させて、乾燥物を回収する有機性廃棄物の処理装置であって、
有機性廃棄物を乾燥させる間接加熱式乾燥機と、
前記間接加熱式乾燥機で乾燥させた有機性廃棄物に対して、熱風を接触させ、前記有機性廃棄物をさらに乾燥させる連続式熱風乾燥機と、
前記連続式熱風乾燥機に用いる熱風を生成する熱風生成装置と、
前記間接加熱式乾燥機と前記熱風生成装置の間を接続し、前記間接加熱式乾燥機から排出されるキャリアガスの一部を前記熱風生成装置に供給する供給ラインと、
前記間接加熱式乾燥機から排気されたキャリアガスを除湿する除湿装置と、
前記間接加熱式乾燥機と前記除湿装置の間を繋ぐ循環路と、を有し、
前記循環路は、
前記間接加熱式乾燥機から排気されたキャリアガスを前記除湿装置に供給する第1循環路と、
前記除湿装置から排気された除湿キャリアガスを前記間接加熱式乾燥機に供給する第2循環路を有し、
前記供給ラインは、前記第1循環路または前記第2循環路の少なくとも一方と、前記熱風生成装置との間に設けられていることを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項2】
前記間接加熱式乾燥機は、ディスク式乾燥機、加熱管式乾燥機または遠心薄膜式乾燥機である請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項3】
前記連続式熱風乾燥機は、円管式気流乾燥機、流動乾燥機、バンド乾燥機または直管式気流乾燥機である請求項1記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項4】
前記供給ラインに設けられた熱交換器
前記熱風生成装置で生成した熱風の余剰ガスを前記熱交換器に供給する加熱ラインと、を有し、
前記熱交換器は、前記余剰ガスを熱媒として用いて、前記供給ラインを通過するキャリアガスを加熱する構成とした請求項1~3のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項5】
前記熱風生成装置で生成した熱風の余剰ガスを前記供給ラインに供給する加熱ラインを有し、
前記余剰ガスが、前記供給ラインを通過するキャリアガスと合流し、前記キャリアガスを加熱する構成とした請求項1~3のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物の処理工程は、まず脱水機を用いて有機性廃棄物を脱水し、次に乾燥機を用いて脱水物(脱水後の有機性廃棄物)を乾燥する。乾燥処理した有機性廃棄物(以下、「乾燥物」という。)は、埋め立て処理や産業廃棄物として処理されており、近年では燃料資源として有効利用されている。なお、前記乾燥処理においては、乾燥機から乾燥物と排ガス(熱媒体ガスやキャリアガス)が混合した状態で排出されることがある。この混合物は固気分離機を用いて粉粒体と分離ガスに分離する。そして、分離したガスは脱臭工程および集塵工程を経て大気へ放散している。
【0003】
これに関連する技術として、下記特許文献1には、汚泥を脱水機で脱水し、この脱水汚泥を乾燥機で乾燥した後、乾燥汚泥を焼却炉で焼却処理する汚泥焼却設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-279331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥した有機性汚泥を埋め立てる場合や、肥料、燃料として利用する場合などには、乾燥物の含水率を30%以下にすることが求められることがある。含水率を10%以下にすることが求められることもある。ところが、含水率を30%以下にするためには、従来の脱水機と乾燥機の組み合わせでは困難なことが多いという問題がある。
【0006】
また、前記乾燥機に付着性の高い有機性廃棄物を供給すると、有機性廃棄物が乾燥機内に付着して、有機性廃棄物の通路が閉塞し、連続運転が困難になるおそれがある。このような閉塞を防ぐためには、乾燥機に供給する有機性廃棄物の性状(粒径、付着性、含水率等)が適切なものになるように、脱水機の動作を制御したり、脱水機に注入する薬剤の種類や注入率を調整したりする必要がある。
【0007】
しかし、このような脱水機の制御や調整には限界があるため、いくら制御や調整を行ったとしても望ましい性状を得られない場合があるという問題もある。特に有機性廃棄物の種類によっては、適切な性状の有機性廃棄物を得ることが難しい。例えば、余剰汚泥は、繊維状物質が少なく、粒径が小さいという特質があるため、一般に脱水が困難であり、有機性廃棄物の性状の調整が難しい。
【0008】
さらに、有機性廃棄物の性状を乾燥機の乾燥に適したものにする(粒径を小さく、付着性を少なく、含水率を低くする)ためには、脱水機に高価な薬剤を多く供給する必要があり、ランニングコストが高いという問題もある。
【0009】
前記の問題は、脱水機を用いなければ生じない。そのため、脱水機を用いずに、乾燥能力が高い乾燥機だけを用いるという対処方法もある。
しかし、例えばディスクドライヤーを用いて乾燥物の含水率を30%以下まで乾燥させる場合、乾燥過程で乾燥物によってディスクが摩耗する速度が速く、乾燥機のメンテナンスコストや買い替えコストが高くなるという問題がある。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、乾燥物の含水率を30%以下にすることが可能な有機性廃棄物の処理装置および処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
(1)有機性廃棄物を乾燥させて、乾燥物を回収する有機性廃棄物の処理装置であって、
有機性廃棄物を乾燥させる間接加熱式乾燥機と、
前記間接加熱式乾燥機で乾燥させた有機性廃棄物に対して、熱風を接触させ、前記有機性廃棄物をさらに乾燥させる連続式熱風乾燥機と、
を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【0012】
(作用効果)
本発明に係る処理装置は、前段に間接加熱式乾燥機を配し、後段に連続式熱風乾燥機を配する構成とした。このような構成にすることで、乾燥物の含水率を30%以下にすることが、従来よりも容易になる。また、各乾燥機の運転条件を調整することで、乾燥物の含水率を10%以下にすることも可能になる。
なお、本件明細書において含水率とは、水分の重量を水分と固形分の重量の和で除した、重量含水率を示す。
【0013】
また、間接加熱式乾燥機を用いることで、連続式熱風乾燥機に供給する有機性廃棄物の粒径を小さく、付着性を少なく、含水率を低くすることができる。そのため、連続式熱風乾燥機内に有機性廃棄物が付着して、有機性廃棄物の通路が閉塞することを抑制することができる。
【0014】
さらに、前記のような1台のディスクドライヤー(Disc Dryer)のみ用いる処理装置ではないので、ディスクの摩耗速度が速いというような問題も生じない。
【0015】
(2)前記間接加熱式乾燥機は、ディスク式乾燥機、加熱管式乾燥機または遠心薄膜式乾燥機である前記(1)記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0016】
(作用効果)
ディスク式乾燥機、加熱管式乾燥機、遠心薄膜式乾燥機は、有機性廃棄物の乾燥能力が高い(伝熱容量係数が高い)。そのため、他の乾燥機と比べて、有機性廃棄物の粒径を小さく、付着性を少なく、含水率を低くすることが容易である。
【0017】
(3)前記連続式熱風乾燥機は、円管式気流乾燥機、流動乾燥機、バンド乾燥機または直管式気流乾燥機である前記(1)記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0018】
(作用効果)
円管式気流乾燥機や直管式気流乾燥機は、有機性廃棄物に気流が直接当たるため、間接加熱式乾燥機と比べて乾燥能力が高い(伝熱容量係数が高い)。そのため、乾燥物の含水率を30%以下にすることが容易になる。
【0019】
また、円管式気流乾燥機、直管式気流乾燥機は、他の乾燥機(例えば、Steam Tube Dryer)と比べて、イニシャルコストが安いという利点がある。さらに、乾燥機を設置する際に必要な床面積が小さいという利点もある。
【0020】
(4)前記連続式熱風乾燥機に用いる熱風を生成する熱風生成装置と、
前記間接加熱式乾燥機と前記熱風生成装置の間を接続し、前記間接加熱式乾燥機から排出されるキャリアガスの一部を前記熱風生成装置に供給する供給ラインと、
をさらに有する前記(1)記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0021】
(作用効果)
間接加熱式乾燥機内にはキャリアガスが流れている。このキャリアガスは、乾燥機の一端側に供給され、有機性廃棄物の乾燥に伴って発生した蒸気を伴いながら他端側に向かって流れ、他端側から乾燥機外に排出される。乾燥機外に排出されたキャリアガスは、スクラバー等の除湿装置によって除湿された後、再び乾燥機の一端側へ戻される。
【0022】
本発明においては、間接加熱式乾燥機から排出されたキャリアガスの一部を熱風生成装置へ送り、熱風生成装置で燃焼させる構成とした。これにより、スクラバー等の除湿装置の負荷が減るため、当該装置を小型化することが可能となる。
【0023】
(5)前記間接加熱式乾燥機から排気されたキャリアガスを除湿する除湿装置と、
前記間接加熱式乾燥機と前記除湿装置の間を繋ぐ循環路と、をさらに有し、
前記循環路は、
前記間接加熱式乾燥機から排気されたキャリアガスを前記除湿装置に供給する第1循環路と、
前記除湿装置から排気された除湿キャリアガスを前記間接加熱式乾燥機に供給する第2循環路を有し、
前記供給ラインは、前記第1循環路または前記第2循環路の少なくとも一方と、前記熱風生成装置との間に設けられている前記(4)記載の有機性廃棄物の処理装置
【0024】
(作用効果)
間接加熱式乾燥機と除湿装置の間を循環路で繋ぎ、間接加熱式乾燥機で用いるキャリアガスをリサイクルすることができる。すなわち、間接加熱式乾燥機から排気されたキャリアガスは、第1循環路を経由して除湿装置に送られ、除湿装置で除湿される。除湿後のキャリアガスは、第2循環路を経由して間接加熱式乾燥機へと送られ、間接加熱式乾燥機で再利用することができる。
【0025】
しかし、この循環を繰り返すうちに、キャリアガスの臭気濃度が次第に上昇してしまうという不都合がある。そこで、本発明においては、第1循環路および第2循環路の少なくとも一方と、前記熱風生成装置との間を供給ラインで繋いだ。すなわち、循環路からキャリアガスの一部を抜き出し、熱風生成装置で燃焼処理する構成とした。そして、抜き出したキャリアガスに相当する量(抜き出したキャリアガスと完全に同じ量である必要はなく、だいたい同じ量であればよい。)の新鮮なガスを新たに循環路に加える。このような構成によって、キャリアガスの臭気濃度の上昇を抑えることが可能である。
【0026】
(6)前記供給ラインに熱交換器が設けられ、
前記熱交換器は、前記熱風生成装置で生成した熱風の一部を熱媒として用いて、前記供給ラインを通過するキャリアガスを加熱する構成とした前記(4)記載の有機性廃棄物の処理装置。
【0027】
(作用効果)
供給ラインを通じて、間接加熱式乾燥機から熱風生成装置へキャリアガスが送られるため、供給ラインを設けない場合と比べて、熱風生成装置で生成される熱風量が増える。すなわち、熱風生成装置から排出されるガス量が従来よりも多くなり、余剰ガスが生じるため、これを有効利用することが望まれる。
【0028】
本発明では、余剰ガスを供給ラインへ返送して、供給ライン内のキャリアガスを加熱する構成とした。すなわち、間接加熱式乾燥機から熱風生成装置へ送るキャリアガスを、余剰ガスによって加熱することで、熱風生成装置に負荷が減り、燃料等の節約に繋げることができる。
【0029】
(7)有機性廃棄物を乾燥させて、乾燥物を回収する有機性廃棄物の処理方法であって、
間接加熱式乾燥機によって有機性廃棄物を乾燥させる第1乾燥工程と、
連続式熱風乾燥機内で、前記第1乾燥工程で乾燥させた有機性廃棄物に熱風を接触させ、前記有機性廃棄物をさらに乾燥させる第2乾燥工程と、
を有することを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【0030】
(作用効果)
前記(1)と同様の作用効果を奏する。
【0031】
(8)前記第1乾燥工程において、
含水率60%~90%の有機性廃棄物が前記間接加熱式乾燥機に供給され、
前記間接加熱式乾燥機を用いて、有機性廃棄物の含水率が30%~50%となるよう乾燥処理を行い、
前記第2乾燥工程において、
含水率30%~50%の有機性廃棄物が前記連続式熱風乾燥機に供給され、
前記連続式熱風乾燥機を用いて、有機性廃棄物の含水率が40%以下になるよう乾燥処理を行う前記(7)記載の有機性廃棄物の処理方法。
【0032】
(作用効果)
本発明によれば、有機性廃棄物の含水率を40%以下にすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る有機性廃棄物の処理装置および処理方法によれば、乾燥物の含水率を30%以下にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係る有機性廃棄物の処理装置の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一実施形態を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0036】
図1は、有機性廃棄物の処理装置1の処理フロー図である。この処理装置1は、熱風生成装置4、連続式熱風乾燥機5、固気分離機6などを備えている。以下に、この処理装置1の構成と処理の流れについて詳述する。
【0037】
(有機性廃棄物W)
本発明に係る処理装置1は、有機性廃棄物Wを処理するものである。この有機性廃棄物の例としては、下水汚泥(余剰汚泥、初沈汚泥、混合生汚泥、混合汚泥、消化汚泥、バイオマスを混合消化した汚泥等を含む)、排水処理汚泥、製紙汚泥、活性汚泥、ビルピット汚泥、農業集落排水汚泥、その他の有機性汚泥を挙げることができる。これらの汚泥のうち、特に下水汚泥の処理に好適である。また、有機性廃棄物Wには、無機物が混入しているものも含まれる。
【0038】
有機性廃棄物Wは、有機性廃棄物貯留槽2に貯留されており、供給ポンプ21によって間接加熱式乾燥機3に供給される。
なお、前記有機性廃棄物Wを前記間接加熱式乾燥機3に供給する前に、脱水機(図示しない)で脱水しても良い。脱水機による脱水は、前記貯留槽2に貯留する前に行っても良いし、貯留した後に行っても良い。
このとき、前記間接加熱式乾燥機に供給する有機性廃棄物の含水率は、60%~90%が好ましく、70~80%がより好ましい。そのため、このような含水率になるように、脱水機で脱水すると良い。
【0039】
(間接加熱式乾燥機3)
本発明に係る処理装置1は、有機性廃棄物Wを乾燥させる間接加熱式乾燥機3を有する。図1の形態において、有機性廃棄物Wは、間接加熱式乾燥機3によって脱水された後、連続式熱風乾燥機5へ送られる。
【0040】
間接加熱式乾燥機3の例としては、傾斜ディスク乾燥機(インクラインドディスク型ドライヤー)、ディスク乾燥機、遠心薄膜乾燥機、造粒乾燥機、竪型蒸気間接乾燥機等を挙げることができる。
【0041】
前記乾燥機のうち、特に傾斜ディスク乾燥機が好適である。傾斜ディスク乾燥機は、シャフトに対してディスクが傾斜した状態で取り付けられている。また、通常は複数本のシャフトが並列に配置されている。そして、ディスクが回転することで、隣接するシャフトやケーシングに付着した有機性廃棄物を自動的に掻き取ることができる。また、熱媒がシャフトとケーシングに供給され、例えば、150℃~170℃程度に加熱されたシャフトやケーシングに有機性廃棄物が接触することで、有機性廃棄物が間接的に加熱される。
【0042】
したがって、傾斜ディスク乾燥機は、間接加熱やセルフクリーニングによる伝熱面の更新の効果により、エネルギー効率が高い。また、直接加熱型乾燥機と比べて排ガス量が少ないため、脱臭装置が小型化できる。
【0043】
間接加熱式乾燥機3は、乾燥過程で有機性廃棄物から生じた蒸気を外部に排出するためのキャリアガスを供給するキャリアガス供給口と、キャリアガス排出口が設けられている。図1では、キャリアガスの移動方向が有機性廃棄物の移動方向が対向するようキャリアガス供給口と、キャリアガス排出口が設けられている。すなわち、キャリアガスは図面の右側から左側へ流れているのに対し、有機性廃棄物は図面の左側から右側へ移動している。キャリアガスの流れは、前記のような向流方式に限られず、キャリアガスの移動方向と有機性廃棄物の移動方向が同じ並流方式にしても良い。
有機性廃棄物Wが乾燥すると、臭気を伴った蒸気が発生する。キャリアガスは、この蒸気を伴いながらキャリアガス供給口のある一端側からキャリアガス排出口のある他端側へ流れ、他端側から間接加熱式乾燥機3の外に排気される。
【0044】
間接加熱式乾燥機を用いることで、有機性廃棄物の含水率を下げることができる。例えば、傾斜ディスク乾燥機を用いた場合、当該乾燥後の有機性廃棄物の含水率を50%~30%程度にすることができる。脱水機(例えば、二液調質型遠心脱水機)を用いて有機性廃棄物を脱水した場合、脱水物の含水率は約80%以上になることが多いため、間接加熱式乾燥機を用いるメリットは明らかである。
【0045】
また、連続式熱風乾燥機5の乾燥に適した有機性廃棄物の性状には、粘性など様々な要素があるが、連続式熱風乾燥機の長期間の連続運転のためには、有機性廃棄物の粒径を小さくすることが重要である。有機性廃棄物の粒径が小さいと、必然的に重量が軽くなり、乾燥機内の熱風で運搬することが容易になるからである。具体的には、最大粒径を60mm以下にすることが好ましく、30mm以下にすることがより好ましい。平均粒径では、1mm~30mmにすることが好ましく、1mm~5mmにすることがより好ましい。
【0046】
(搬送機7)
前記間接加熱式乾燥機3から排出された有機性廃棄物(以下、「間接乾燥物」という。)は、搬送機7に供給される。なお、間接乾燥物の含水率は、30%~50%が好ましく、35%~40%がよりに好ましい。なお、前記間接加熱式乾燥機乾燥機3の性能としては含水率を30%以下にすることも可能であるが、30%を下回ると、ディスクの摩耗が急速に進行するため好ましくない。
図1においては、配管30によって間接加熱式乾燥機3と搬送機7が接続され、間接乾燥物はその配管30の内部を通って搬送機7へと移動する。また、配管30には水分計AMが取り付けられており、間接乾燥物に含まれる水分の量を計測している。
【0047】
前記搬送機7として、機械的な動力によって搬送を行うスクリューコンベアやベルトコンベアなどを用いることができる。図1では、搬送機7としてスクリューコンベアを用いている。また、図1のスクリューコンベア7の長手方向中間部(中央付近)には供給口が設けられており、この供給口からスクリューコンベア7内に間接乾燥物を供給するようになっている。
なお、イニシャルコスト削減を目的として、搬送機7を設けず、間接加熱式乾燥機3から連続式熱風乾燥機5に、間接乾燥物を直接投入しても良い。
【0048】
(間接乾燥物の供給方法)
間接乾燥物を連続式熱風乾燥機5へ供給する際は、連続式熱風乾燥機5への間接乾燥物の供給量(kg-ds/分)をXとし、連続式熱風乾燥機の間接乾燥物の保有量(kg-ds)をYとしたとき、下記式1で定められる間接乾燥物が連続式乾燥機内に滞留する平均滞留時間Tが0.05~10分の範囲内となるように、連続式熱風乾燥機5に供給することが好ましい。
T=Y/X ・・・式1
なお、前記滞留時間Tは、0.1~7分の範囲内にすることが好ましく、0.2~5分の範囲内にすることがさらに好ましい。
連続式熱風乾燥機5への間接乾燥物の供給量を前記範囲内にすることで、連続式熱風乾燥機5内で間接乾燥物が滞留する時間が適切な値となり、最終製品から悪臭が発生することを抑制できる。
【0049】
(最大粒径)
搬送機7に間接乾燥物の粒径を測定する測定手段を設けることができる。間接乾燥物の粒径を測定した結果、間接乾燥物の最大粒径が基準値よりも高い場合は、間接乾燥物を有機性廃棄物貯留槽2へ送り、基準値以下の場合は、間接乾燥物を連続式熱風乾燥機5へ送るようにする。基準値は任意に決定することができるが、間接乾燥物の最大粒径が60mmよりも大きい場合は消化タンク20へ送り、反対に間接乾燥物の最大粒径60mm以下の場合は連続式熱風乾燥機5へ送るようにすることが好ましい。
【0050】
最大粒径が60mmより大きい間接乾燥物を連続式熱風乾燥機5に供給すると、間接乾燥物が連続式熱風乾燥機5内に付着したり、堆積したりするおそれが高い。そして、堆積量が一定量を超えると、連続式熱風乾燥機5の運転を一時的に停止し、堆積物を人為的に排出する必要が生じる。本発明では、最大粒径が60mmより大きい間接乾燥物を供給しないようにすることで、連続式熱風乾燥機5の長期の連続運転を実現している。
【0051】
有機性廃棄物の最大粒径の計測は、例えば、人為的に間接乾燥物の一部をサンプリングとして抜き出し、ノギス等を用いて計測し、測定値の最大径を最大粒径とする。
【0052】
間接加熱式乾燥機3を用いると、間接乾燥物が均質な粒状(粒状物)になりやすく、最大粒径や平均粒径の計測が容易である。間接乾燥物を粒状にすることで、連続式熱風乾燥機5に間接乾燥物を安定供給しやすくなる。さらに、間接乾燥物が粒状であると、連続式熱風乾燥機5内を流れる熱風に対する抵抗が小さくなり、熱風と間接乾燥物の接触機会を増やすことができるという利点もある。
【0053】
間接乾燥物が均質な粒状でない、すなわち間接乾燥物が水分等によって塊になっている場合もある。このように塊となった間接乾燥物(塊状物)があったとしても、連続式熱風乾燥機5に供給することができる。
【0054】
(平均粒径)
平均粒径は、例えば、以下の方法によって測定する。間接乾燥物の粒径が500ミクロン以上の場合は、JIS(日本工業規格) M 8801 石炭試験方法に記載された方法でふるい分けをし、ふるい分け結果をロジンラムラー分布で表し、積算質量(ふるい上)が50%に相当する時の粒子径を平均粒径として定める。間接乾燥物の粒径が500ミクロン未満の場合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名SALD-3100、島津製作所社製)を用いて粒度分布を測定し、累積体積が50%に相当する時の粒子径を平均粒径として定める。
【0055】
なお、本明細書に開示した前記JIS(日本工業規格)による測定方法はあくまでも例示であり、特許発明の技術的範囲を定める際においては、この測定方法に限定されるものではなく、当業者であればこのことを十分に理解するであろう。
【0056】
間接乾燥物の平均粒径を計測し、平均粒径が1mm~30mmである場合は連続式熱風乾燥機5へ送り、その範囲外にある場合は消化タンク20へ送るようにしても良い。平均粒径が30mmより大きいと、連続式熱風乾燥機5内で乾燥が十分に行われずに排出されてしまい、最終製品の含水率が30%を超えてしまうおそれがある。また、平均粒径が30mmより大きいと、間接乾燥物が連続式熱風乾燥機5内に付着したり、堆積したりするおそれが高くなる。
【0057】
(粒度分布)
連続式熱風乾燥機5の運転を安定させるため、単位時間当たりに供給する間接乾燥物の粒度分布の変動を少なくすることが好ましい。粒度分布の値が広く変化すると不具合が生じるからである。具体的には、間接乾燥物の粒度分布の値が広くなると、連続式熱風乾燥機5から排出される乾燥物(以下、「熱風乾燥物」という。)の水分が不均一になりやすく、粒度分布の値が狭く均一になると、熱風乾燥物の水分が均一になりやすい。
【0058】
(その他)
搬送機7と連続式熱風乾燥機5の間に、予備的な施設として破砕機(図示しない)を設けても良い。間接乾燥物の最大粒径や平均粒径が大きい場合に、この破砕機で破砕し、所望の大きさにした上で、連続式熱風乾燥機5へ供給するようにしても良い。この場合、破砕後の粒状物の粒径を計測し、最大粒径や平均粒径が望ましいか否かを判断し、連続式熱風乾燥機5に供給するか否かを決めればよい。
【0059】
なお、搬送機7と連続式熱風乾燥機5の間に間接乾燥物の貯留施設(図示しない)を設け、その貯留施設から間接乾燥物を定期的に連続式熱風乾燥機5に送る方法も考えることができる。
【0060】
(循環路25)
間接加熱式乾燥機3で用いるキャリアガスは、間接加熱式乾燥機3と除湿装置11Aの間を循環する。キャリアガスの循環路25は、第1循環路25Aと第2循環路25Bを有する。
【0061】
詳しくは、間接加熱式乾燥機3から排気されたキャリアガス(飽和ガス)は、第1循環路25Aを通じて除湿装置11Aに供給され、除湿される。除湿されたキャリアガスは、第2循環路25Bを通じて再び間接加熱式乾燥機3に供給される。これらの構成により間接加熱式乾燥機3に供給するキャリアガスを循環利用することができる。
【0062】
前記除湿装置11Aとしては、例えば、スクラバー、機械式除湿機、熱交換器(シェル&チューブ式、プレート式等であって、ガス/ガス交換や液/ガス交換を行うもの)を用いることができる。なお、除湿装置11Bも同様である。
また、第2循環路25Bには、除湿されたキャリアガスを間接加熱式乾燥機3に供給するためのファン12Aが設けられている。前記第2循環路25Bのファンととともに、または、前記第2循環路25Bのファンに代えて、ファン12Aを第1循環路25Aに設けることも可能である。
【0063】
なお、除湿装置11Aから排出されたキャリアガスの温度は、例えば40℃程度に低下している。
【0064】
前記のようにキャリアガスを循環利用することにより、乾燥過程でキャリアガスに含まれる臭気成分(硫化水素、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化メチルなど)が次第に濃縮されるという不都合がある。
【0065】
そこで、間接加熱式乾燥機3から排出されたキャリアガス(排ガス)の一部を熱風生成装置4に供給する構成とした。循環するキャリアガスの一部を抜き出して熱風生成装置4へ送り、熱風生成装置4で燃焼させることで、新たに脱臭装置を設けることなく、臭気の除去が可能となる。
【0066】
具体的な構成としては、図1に示す処理装置1では、第2循環路25Bと熱風生成炉4の間を、供給ライン40で連通している。
そのほか、第1循環路25Aと熱風生成装置4の間を供給ライン40で連通する構成にしても良い。第1循環路25Aに供給ライン40を連結することで、除湿装置11Aに供給されるキャリアガス量が減らすことができる。そのため、除湿装置11Aの小型化が可能となり、処理装置1のイニシャルコストを低減することもできる。
なお、供給ライン40を通過するキャリアガスの流量を制御するために、供給ライン40または循環路25(25Aまたは25B)の少なくとも一方に、流量調整弁(図示しない)を設けることが好ましい。
【0067】
他方、キャリアガスの一部を熱風生成装置4へ送るため、キャリアガス量が少なくなるという不都合がある。そのため、キャリアガスの循環路25(25Aまたは25B)に、外気を新たに導入する配管(図示しない)を接続すると良い。
また、間接加熱式乾燥機3の内部は負圧になっている。したがって、搬送機7を設けた場合には、間接加熱式乾燥機3と搬送機7を繋ぐ配管から、新たな空気が逆流して間接加熱式乾燥機3内に流れ込むため、これをキャリアガスとして利用しても良い。
【0068】
(熱風生成装置4)
間接加熱式乾燥機3から排出された間接乾燥物は、連続式熱風乾燥機5へ送られ、連続式熱風乾燥機5内で熱風と接触して乾燥する。この連続式熱風乾燥機5に用いる熱風は、熱風生成装置4によって生成する。詳しくは、燃料タンク(図示しない)から燃料F(LPG等)を供給されたバーナー4Aが、空気圧縮機17で生成した圧縮空気を貯留する貯留タンク18から送られた圧縮空気を加熱して、熱風を生成する。なお、有機性廃棄物Wが汚泥である場合、汚泥を消化した際に発生する消化ガスを燃料Fとして用いるようにしても良い。この熱風生成装置4の制御は、熱風生成装置4の出口温度を計測し、目的の温度となるように、熱風生成装置4へ供給される燃料Fと空気Aの量を制御する。
【0069】
熱風温度は特に限定しないが、熱風温度を250℃~500℃にすることが好ましい。この範囲の熱風を用いることにより、熱風乾燥物の含水率を30%以下、好ましくは10%以下にすることができる。
【0070】
前記熱風温度は、より好ましくは350℃~450℃、さらに好ましくは390℃~410℃、最も好ましくは400℃にすると良い。熱風温度が低い場合、間接乾燥物を十分に乾燥させることができず、熱風乾燥物の含水率が高くなる。他方、熱風温度が高い場合は、熱風生成装置4の燃料費が嵩み、経済性が悪くなる。したがって、乾燥物の含水率と燃料費という経済性のバランスをとると、400℃前後の温度にすることが最も適当である。
【0071】
(連続式熱風乾燥機5)
連続式熱風乾燥機5は、前記間接加熱式乾燥機3からの間接乾燥物と、前記熱風生成装置4からの熱風とを接触させ、間接乾燥物を乾燥して粉粒体にする。
【0072】
一般的には、間接加熱式乾燥機(攪拌伝熱式装置)が多用されているが、本発明では連続式熱風乾燥機5を用いることが好ましい。
連続式熱風乾燥機5としては、(1)噴霧乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機、回転乾燥機などのように、熱風中に間接乾燥物を分散させて乾燥させる形態のもの、(2)通気バンド乾燥機、トンネル乾燥機(並行流バンド乾燥機)、噴出流乾燥機などのように、間接乾燥物を静置した状態のまま移送し、その移送過程で間接乾燥物に熱風を接触させて乾燥させる形態のもの、(3)撹拌乾燥機などのように、間接乾燥物を機械的に攪拌しながら、その間接乾燥物に熱風を接触させて乾燥させる形態のものを例示することができる。なお、連続式熱風乾燥機5の「連続式」とは、連続的に運転可能なことを意味する。
【0073】
前記連続式熱風乾燥機5のうち、気流乾燥機5Fを用いることが好ましい。安価でメンテナンス性に優れているからである。
【0074】
気流乾燥機5Fには様々な種類があるが、間接加熱式乾燥機3を用いて有機性廃棄物Wを乾燥させると、間接乾燥物の付着性を弱くすることができるため、間接乾燥物を解砕する解砕機が無い気流乾燥機5Fを用いることができる。
【0075】
図1に気流乾燥機5Fの一例を示した。この気流乾燥機5Fは、熱気流が通る配管(以下、「パイプ」ともいう。)を環状に配置した円管式気流乾燥機5CFである。図示した円管式気流乾燥機5CFは、熱風生成装置4から送られてきた熱風が最初に到達すパイプ5aと、前記パイプ5aから上方へ延在するパイプ5bと、前記パイプ5bから引き返す方向へ水平に延在するパイプ5cと、前記パイプ5cから下方へ延在するパイプ5dとからなる。隣り合う各パイプの間(例えば、パイプ5aとパイプ5bの間)には、R状に湾曲したパイプが位置している。パイプ5dの下端部は、パイプ5aの左側端部と接合されており、この接合部分においてパイプの内部が相互に繋がっている。パイプ5aの中間部分には間接乾燥物の供給口5Xが設けられ、パイプ5dの中間部分には乾燥物の排出口5Yが設けられている。
【0076】
熱風生成装置4で生成した熱風は、パイプ5aに供給される。それとともに、前記搬送手段7によって搬送された間接乾燥物は、供給口5Xからパイプ5aの熱風(熱気流)中へ落下する。落下した間接乾燥物は、熱風中で粉粒状に分散する。そして、その粉粒体は、熱気流と並流に送られながら(熱風により気流搬送されながら)、瞬間的に乾燥する。詳しくは、粉粒体を伴う熱風は、パイプ5a、パイプ5b、パイプ5c、パイプ5dの順に流れ、その一部が排出口5Yから器外へ排気される。他方、排出口5Yから排気されなかった間接乾燥物は、熱風生成装置4から新しく送られてきた熱風と合流し、再びパイプ5a、パイプ5b、パイプ5c、パイプ5dと流れ、その一部が排出口5Yから器外へ排気される。以上のように、熱風の一部は排出口5Yから排気され、その他の熱風はパイプ5a~5d内を循環することになる。このように、新しく投入された間接乾燥物と管内を循環する間接乾燥物は、管内で混合し、それによって付着性や含水量が調整される。すなわち、円管式気流乾燥機5CFにおいては、間接乾燥物は熱風中の熱を吸い取ることで乾燥する。したがって、この円管式気流乾燥機5CFは、加熱されたパイプに間接乾燥物が接触することによって乾燥する間接加熱型乾燥機などとは根本的に異なる構造のものである。
【0077】
円管式気流乾燥機5CFに供給した直後の間接乾燥物は、遠心力の影響によって、各パイプ5a~5dの外周側を流れることが多い。そして、間接乾燥物の乾燥が進むにつれて間接乾燥物の凝集状態が解けて平均粒径が小さくなるため、各パイプ5a~5dの内周側を流れるようになり、パイプ5dの内側に設けた排出口5Yから排出される。
【0078】
円管式気流乾燥機5CFの運転においては、各パイプ5a~5d内の熱風の風速を10m/s以上にすることが好ましい。より好ましくは、熱風によって間接乾燥物を円滑に搬送するため、15m/s以上にすると良い。さらに好ましくは、供給口5Xから供給された間接乾燥物を循環している熱風と高速で衝突させることにより、間接乾燥物を熱風中に分散させることができるため、20m/s以上にすると良い。
【0079】
図1においては、パイプ5a~5dを環状に構成した円管式気流乾燥機5CFを示した。しかし、連続式熱風乾燥機5は環状の気流乾燥機5Fものに限られず、すべてのパイプを直線状または略直線状に配置した直管式気流乾燥機5LFにしても良い。円管式気流乾燥機5CFは、直管式気流乾燥機5LFよりも設置スペースが小さいという点で優れている。もっとも、直管式気流乾燥機5LFであっても、管を高さ方向に延在させた場合は、設置スペースを小さくすることが可能である。
【0080】
なお、円管式気流乾燥機5CFのサイズを大きくしても、小さくしても、乾燥機5CF内に間接乾燥物が滞留する滞留時間にほとんど変化は生じない。
【0081】
連続式熱風乾燥機5の代わりに攪拌伝熱式乾燥機を用いたり、連続式熱風乾燥機5として解砕機付きの気流乾燥機を用いたりすることもできる。連続式熱風乾燥機5の代わりに、間接加熱式乾燥機(スチームチューブドライヤー)を設けるようにしても良いが、イニシャルコストが圧倒的に低く、設備の接地面積も取らず、納期も短くなることから、連続式熱風乾燥機5(特に、円管式気流乾燥機5CFや直管式気流乾燥機5LF)が好ましい。
【0082】
本発明の連続式熱風乾燥機5は、連続式熱風乾燥機5の大きさと供給される熱風ガスの温度と量から求める熱容量係数が、2000~4000kcal/m3h℃の範囲になる連続式熱風乾燥機5を用いることが好ましい。この熱容量係数が高いほどより多くの熱エネルギーを汚泥に伝えることができ、そのエネルギーを汚泥の水分の蒸発に使うことができる。前記円管式気流乾燥機5CFは、インクラインドディスク型ドライヤなどの間接加熱式乾燥機と比べて熱容量係数が極めて高いため、少ない滞留時間で十分な乾燥を行うことができる。
【0083】
以上のように、間接加熱式乾燥機3と連続式熱風乾燥機5を備えた有機性廃棄物Wの処理装置1を用いることで、最終製品(固気分離後の粉粒体)の含水率を従来よりも著しく低くすることができる。具体的には、含水率を40%以下にすることができる。運転条件(例えば、熱風温度を高温にするなどの制御)によって、30%以下にすることや、10%以下にすることも可能である。
【0084】
(保温手段)
連続式熱風乾燥機5には、各パイプ5a~5dの周囲に保温手段(図示しない)を設けることが好ましい。この保温手段を設けることにより、連続式熱風乾燥機5内での結露の発生を防止することができ、安定的に乾燥物を排出することができる。この保温手段の例としては、断熱シート、加熱管などを挙げることができる。また、結露を防止するために、連続式熱風乾燥機5と固気分離機6の間の配管においても、同様の保温手段を設けることが好ましい。
【0085】
(固気分離機6)
粉粒体を乾燥させることで湿度が増した熱風は、排ガスとして前記連続式熱風乾燥機5から排気され、固気分離機6へ送られる。この排ガスには粉粒体が含まれているため、固気分離機6を用いて、粉粒体と分離ガス(粉粒体と分離したガス)に分離する。
【0086】
なお、前記の気流乾燥機5F(円管式気流乾燥機5CFや直管式気流乾燥機5LF)を用いることで、気流乾燥機5Fから固気分離機6まで粉粒体を熱風で運ぶことができるという利点がある。すなわち、気流乾燥機5Fから固気分離機6まで粉粒体を運ぶ搬送手段(コンベア等)を設ける必要がないため、処理装置1全体としてのイニシャルコストを低減させることができる。
【0087】
この固気分離機6としては、例えば、遠心力により集塵を行うサイクロン、重力により集塵を行う重力沈降室、慣性により集塵を行うミストセパレーター、濾布により集塵を行うバグフィルター、充てん層により集塵を行う移動粒子層エアフィルター、電気により集塵を行う電気集塵機等を用いることができる。
【0088】
(排気処理)
前記固気分離機6によって粉粒体と分離した分離ガスは、洗浄により集塵を行う除湿装置11B(例えば、ベンチュリースクラバー)によって除塵された後、ファン12Bによって吸引されて、脱臭装置(例えば、プラズマ脱臭装置)13で脱臭される。脱臭された分離ガスは、除湿装置11Bの上部に設けられた煙突14から、大気中Eへ放散される。なお、固気分離機6から排出される分離ガスの処理方法は、前記の内容に限られるものではなく、各設備を適宜変更しても良い。
【0089】
(返送ライン43)
固気分離機6から排気口と熱風生成装置4の給気口の間を配管で接続し、固気分離機6から排気される排ガスの一部を熱風生成装置4へ返送し、熱風生成装置4での燃焼によって脱臭しても良い。このような返送を行うことで、後段の除湿装置11Bや脱臭装置13で処理する排ガス量が減るため、除湿装置11Bを小型化することができるとともに、脱臭装置13に用いられる濾過フィルタなどの交換部材を節約することができる。
【0090】
この返送ライン43の返送は、例えばファン12Cを用いて行われる。
なお、前記供給ライン40によって、キャリアガスの一部が熱風生成装置4へ送られるため、返送ライン43によって返送される排ガスの量は少ないものとなる。なぜならば、熱風生成装置4が必要とする空気量は、決まっているからである。
したがって、前記供給ライン40を設けることにより、結果的に、返送ラインのファン12Cの流量を減らすことができ、ファン12Cの小型化によるイニシャルコストの低減を図ることができる。
【0091】
(加熱ライン41)
供給ライン40や返送ライン43によって、熱風生成装置4に供給される気体量が増えるため、結果として、熱風生成装置4から連続式熱風乾燥機5へ送風される熱風量が増える。しかし、連続式熱風乾燥機5で必要とする熱風量は、連続式熱風乾燥機5の運転状況によって自ずと決まるため、場合によっては熱風生成装置4で生成された熱風が不要になることがある。
【0092】
本発明では、連続式熱風乾燥機5で用いない熱風を有効利用するため、熱風生成装置4の排気口から排気される熱風の一部を供給ライン40へ返送する配管を設けた。この配管によって返送された熱風は、供給ライン40のキャリアガスを温める。結果として、熱風生成装置4へ送られるキャリアガスの温度が高くなるため、熱風生成装置4で用いる燃料Fを節約することができる。
【0093】
なお、図1では、加熱ライン41を通過する熱風は熱交換器42Aで、供給ライン40を通過するキャリアガスを加熱した後、大気Eへ排気される。
【0094】
しかし、このような形態に限られず、加熱ライン41の配管と、供給ライン40の配管を接合させ、加熱ライン41によって返送された熱風が、供給ライン40を流れるキャリアガスと合流し、キャリアガスと熱風がともに熱風生成装置4へ送られる構成にしても良い。
なお、加熱ライン41には、加熱ライン41を通過する熱風の流量を制御する流量制御弁(図示せず)を設けることができる。
【0095】
(補助加熱ライン45)
熱風生成装置4から排気される熱風を有効利用する目的で、補助加熱ライン45を設けても良い。この補助加熱ライン45を通過する熱風は、熱交換器42Bで、返送ライン43を通過する返送ガスを加熱した後、大気Eへ排気される。
【0096】
(熱風の流量制御)
熱風生成装置4から排気された熱風は、加熱ライン41、補助加熱ライン45および連続式熱風乾燥機5に供給される。このとき、各供給先に供給する熱風量を制御する流量制御手段を設けることが好ましい。具体的には、熱風生成装置4と連続式熱風乾燥機5を接続する熱風供給ライン46や、加熱ライン41、補助加熱ライン45に流量調整バルブを設け、その開度を調整することで流量を制御すると良い。なお、流量調整バルブは、熱風供給ライン46、加熱ライン41および補助加熱ライン45のうち、少なくとも2つの流路に設置されていればよい。
【0097】
(白煙防止ライン44)
熱風生成装置4から排気される熱風を有効利用する目的で、白煙防止ライン44を設けても良い。この白煙防止ライン44を構成する配管は、除湿装置11Bの上部に設けられた煙突14に接続されており、大気Eへ排出されるガスが温められることにより、白煙の発生を抑制することができる。
【0098】
(粉粒体の貯留)
固気分離機6の下端部に溜まった粉粒体は、ロータリーバルブ19で切り出された後、配管31を通って粉粒体上流搬送機9へ供給される。固気分離機6の下端部にある粉粒体の水分が高い場合、粉粒体がバルブに付着して排出が上手くいかないことがある。そのため、回転羽根によって掻き出すロータリーバルブ19を用いることが好ましい。
【0099】
また、図示形態では、配管31に水分計AWを設け、配管31を通る粉粒体の含水率を計測する。計測した含水率が適切な範囲外である場合は、熱風生成装置4から連続式熱風乾燥機5へ供給する熱風の温度を上げるなどの制御を行う。
【0100】
粉粒体上流搬送機9としては、機械的な動力によって搬送を行うスクリューコンベアやベルトコンベアなどを用いることができる。図示形態では、二軸のスクリューからなるスクリューコンベアを用いている。二軸のスクリューコンベアを用いることで、一方のシャフトに付着した粉粒体を他方の回転羽根で掻き出すことができる。
【0101】
前記スクリューコンベア9は、粉粒体の供給口がスクリューコンベア9の長手方向の中間部分に設けられ、粉粒体の排出口がスクリューコンベア9の長手方向の一端側端部(図面右側)と他端側端部(図面左側)に設けられている。供給口から供給された粉粒体は、スクリューコンベア9が正回転することによって一端側端部へ運ばれ、一端側端部の排出口から排出される。反対に、スクリューコンベア9が逆回転すると、粉粒体が他端側端部へ運ばれ、他端側端部の排出口から排出される。下流に配置した複数のコンテナ15に粉粒体をバランス良く貯留するため、スクリューコンベア9を一定時間正回転した後、同じ時間逆回転するという様に、正回転と逆回転を交互に均等に行い、一端側端部から排出される粉粒体の量と、他端側端部から排出される粉粒体の量を同量にすることが好ましい。
【0102】
スクリューコンベア9に供給される粉粒体の温度は約65℃~90℃という高温である。そこで、粉粒体の粗熱を取って65℃程度まで下げるため、スクリューコンベア9を水冷式にすることが好ましい。具体的には、スクリューコンベア9のジャケットの外側に冷却用の水を流すとともに、シャフトの内部にも水を流すことで、外側と内側の両方から粉粒体を冷却する。
【0103】
スクリューコンベア9の各排出口(一端側排出口および他端側排出口)から排出された粉粒体は、配管32内を通って、別々の粉粒体下流搬送機10に供給される。図示した各粉粒体下流搬送機10は一軸のスクリューコンベア10であり、冷却機能を有さない点と一軸のスクリューである点以外は、粉粒体上流搬送機9と同様の構造である。
【0104】
このスクリューコンベア10が正回転または逆回転することにより、粉粒体がスクリューコンベア10の一端側と他端側に振り分けられる。そして、一端側排出口または他端側排出口から排出された粉粒体は、配管33を通って、各コンテナ15(図示形態では、四個のコンテナ)に貯留される。このように、スクリューコンベア10を用いて粉粒体を複数のコンテナ15に振り分けることで、コンテナ15がすぐに満杯になることを防いでいる。
【0105】
コンテナ15内に貯留された粉粒体は、コンテナ15内の酸素や一酸化炭素によって温度が上昇するおそれがある。そのため、コンテナ15に温度計を取り付け、外部から温度を監視するとともに、窒素タンク(図示しない)からコンテナ15内に窒素を供給すると良い。また、温度が急上昇した場合に備えて、コンテナ15内に水を降らせる機構を設けても良い。
【0106】
(有機性廃棄物の処理方法)
本発明は、有機性廃棄物Wを乾燥させて、最終製品たる粉粒体を回収する有機性廃棄物Wの処理方法も提供する。当該処理方法は、間接加熱式乾燥機3によって有機性廃棄物Wを乾燥させる第1乾燥工程と、連続式熱風乾燥機5の内部で、前記第1乾燥工程で乾燥させた間接乾燥物に熱風を接触させ、間接乾燥物をさらに乾燥させる第2乾燥工程とを有している。
【0107】
この処理方法は、第1乾燥工程と第2乾燥工程の間に、間接加熱式乾燥機3と除湿装置11A間で循環するキャリアガスの一部を抜き出し、熱風生成装置4へ供給するキャリアガスの供給工程を設けても良い。
【0108】
この熱風生成装置4で生成した熱風は、連続式熱風乾燥機5に用いられるが、供給工程を設けたことにより、生成する熱風の量が必要以上になる場合がある。したがって、このような場合は、供給工程と第2工程の間に、熱風生成装置4で生成した熱風の一部を供給ライン40へ返送して、供給ライン40のキャリアガスを加熱する加熱工程を設けても良い。
【0109】
そのほか、第2乾燥工程の後に、固気分離機6を用いて熱風乾燥物を固体(粉粒体)と気体に分離する分離工程を設けることもできる。また、分離工程の後に、固気分離機6から排出される気体の一部を熱風生成装置4へ送る返送工程を設けても良い。
【0110】
前記返送工程の後に、熱風生成装置4で生成した熱風の一部を返送ライン43へ返送して、返送ライン43の気体を温める補助加熱工程を設けても良い。
【符号の説明】
【0111】
1:処理装置、2:有機性廃棄物貯留槽、3:間接加熱式乾燥機、4:熱風生成装置、5:連続式熱風乾燥機、5F:気流乾燥機、5CF:円管式気流乾燥機、5LF:直管式気流乾燥機、5a~5d:パイプ、5X:供給口、5Y:排出口、6:固気分離機、7:搬送機、8:測定装置、9:粉粒体上流搬送機、10:粉粒体下流搬送機、11:除湿装置、12:ファン、13:脱臭装置、14:煙突、15:コンテナ、17:空気圧縮機、18:貯留タンク、19:ロータリーバルブ、20:消化タンク、21:供給ポンプ、31~33:配管、40:供給ライン、41:加熱ライン、42:熱交換器、43:返送ライン、44:白煙防止ライン、45:補助加熱ライン、46:熱風供給ライン、AM:水分計、E:大気、F:燃料、M:モーター、W:有機性廃棄物
図1