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特許7064504プラスチックの着色および強化のための万能的な色素製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】プラスチックの着色および強化のための万能的な色素製剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220427BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220427BHJP
   C09B 67/04 20060101ALI20220427BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20220427BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20220427BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220427BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220427BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20220427BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20220427BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220427BHJP
   C09B 57/00 20060101ALN20220427BHJP
   C09B 57/04 20060101ALN20220427BHJP
   C09B 47/04 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C08L101/00
C09B67/20 G
C09B67/20 F
C09B67/04
C09D17/00
C09C1/48
C08K3/04
C08K3/00
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
C08J3/12 A
C08L101/02
C09B57/00 Z
C09B57/04
C09B47/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019545845
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2017077554
(87)【国際公開番号】W WO2018078072
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】102016000109323
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519155309
【氏名又は名称】ブロッジー ジョヴァンニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ブロッジー ジョヴァンニ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01249720(GB,A)
【文献】特開平09-143276(JP,A)
【文献】特開平08-302030(JP,A)
【文献】特開昭63-008458(JP,A)
【文献】特開平02-034638(JP,A)
【文献】特表2011-511142(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0322879(US,A1)
【文献】特開平10-060157(JP,A)
【文献】米国特許第06017993(US,A)
【文献】特開平09-111178(JP,A)
【文献】米国特許第03778288(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C09B 67/20
C09B 67/04
C09D 17/00
C09C 1/48
C08J 3/22
C08J 3/12
C09B 57/00
C09B 57/04
C09B 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素親和性基を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基で変性されたポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタンポリマー、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤であって、50~150℃の範囲の融点を有する前記少なくとも1種の分散湿潤剤と、
無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤とを含有する乾式粉砕色素製剤:
ここで、前記色素製剤中の前記少なくとも1種の色素添加剤の粒径D50(個数基準)は0.5~3.5μmの範囲にあり、かつ
前記色素製剤は、前記色素製剤の総重量に対し、少なくとも70重量%の前記少なくとも1種の色素添加剤を含有し、
前記色素製剤は、a)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器で測定した場合に、D20が0.8ミクロン以上でありかつD90が5ミクロン以下である粒子を有する自由流動性粉末、または、b)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器で測定した場合に、D20が10ミクロン以上でありかつD90が1000ミクロン以下である顆粒を有するマイクロ顆粒の形態である。
【請求項2】
前記色素製剤が3%未満の水を含む、請求項1に記載の乾式粉砕色素製剤。
【請求項3】
前記色素製剤中の前記少なくとも1種の色素添加剤の平均粒径D90(個数基準)が0.9~4μmの範囲にある、請求項1~2のいずれか1項に記載の乾式粉砕色素製剤。
【請求項4】
前記色素製剤が、ポリエチレン系ポリマー、ポリスチレン、SAN、HIPS、ABS、ASA、塩化ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、および、熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも3種のポリマーと混和性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾式粉砕色素製剤。
【請求項5】
ポリエチレン系ポリマー、ポリスチレン、SAN、HIPS、ABS、ASA、塩化ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーから選択されるポリマーを用いた、前記色素製剤の混合物であって、0.5~1重量%の色素添加剤を含むような前記混合物が、同じ組成を有するが各成分を個々に混合機に加えかつ当該成分を混合することによって調製された混合物よりも、少なくとも20%大きい着色力を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の乾式粉砕色素製剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の色素製剤を2種以上乾式混合することによって得られうる、所望の色調の複数の色素製剤を含む色付けシステム。
【請求項7】
プラスチック材料を着色するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の乾式粉砕色素製剤の使用。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の乾式粉砕色素製剤とプラスチック材料とを含む着色組成物。
【請求項9】
前記着色組成物が、0.5~1重量%の色素添加剤を含み、および、同じ組成を有するが各成分を個々に混合機に加えかつ当該成分を均一な混合物に混合することによって調製された混合物よりも、少なくとも20%大きい着色力を示す、請求項8に記載の着色組成物。
【請求項10】
下記を含む色素製剤の製造方法:
色素親和性基を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基を有する変性ポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタン、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤であって、50~150℃の範囲の融点を有する前記少なくとも1種の分散湿潤剤と、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤とを、少なくとも2つのローターを有する乾式粉砕機に導入すること;
前記粉砕機の平均周速度が5~50m/sの条件下で、前記色素製剤を形成するために前記分散湿潤剤と前記少なくとも1種の色素添加剤とを互いに混合しおよび粉砕すること;および
少なくとも70重量%の前記少なくとも1種の色素添加剤を含む前記色素製剤として、前記色素製剤を回収すること
ここで、回収された前記色素製剤は、a)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器で測定した場合に、D20が0.8ミクロン以上でありかつD90が5ミクロン以下である粒子を有する自由流動性粉末、または、b)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器で測定した場合に、D20が10ミクロン以上でありかつD90が1000ミクロン以下である顆粒を有するマイクロ顆粒の形態である。
【請求項11】
前記混合および粉砕が10~90分間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合および粉砕の間に、分散湿潤剤と色素添加剤との混合物によって達成される最高温度が50~150℃である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
回収された前記色素製剤中の前記少なくとも1種の色素添加剤の粒径D90(個数基準)が0.9~4μmの範囲にある、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
回収された前記色素製剤中の前記少なくとも1種の色素添加剤の粒径D50(個数基準)が0.5~3.5μmの範囲にある、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ローターの少なくとも1つがブレードローターである、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
回収された前記色素製剤が、60~500μm、好ましくは80~350μmの範囲の粒度分布を有するマイクロ顆粒の形態である、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
回収された前記色素製剤が、50μm未満の粒度分布を有する自由流動性粉末の形態である、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素および/または他の添加剤および/または充填剤を含むプラスチック材料の着色用および強化用の色素製剤(pigmentary preparations)、および、染料濃縮物(dye concentrates)としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックまたはゴム製の物体および製造品を得るためには、一般に、基本原料中にポリマー、すなわち最終製品において所望される特性をそれらに付与するのに適したいくつかの物質を導入することが必要である。これらの物質は、顔料または染料など、材料に色を付与する物質であったり、または、炎および/または光に対する改善された耐性など、製造品に機能的特性を付与する物質であったり、さらには、最終製品の機械的および/または熱的性質を改善する物質でさえあり得る。プラスチック材料の製造品への変換は一般に高温下かつ関連する機械的負荷の存在下において実施されるため、製造品への変換工程においてポリマーを保護するために、熱安定剤、熱酸化剤、流動化剤など一般に加工添加剤として定義される添加剤がしばしば使用されている。
【0003】
これらの物質を、変性すべきポリマーに直接添加する代わりに、工業的実務においては、主に間接技術、マスターバッチ技術が使用される。
【0004】
色素濃縮物(pigment concentrates)とも呼ばれるマスターバッチは、一般に担体と呼ばれるベース原料、および、多量の1つまたはそれ以上の添加剤からなる製剤である。
【0005】
マスターバッチ技術は、所望の添加剤を含む濃縮物の予備製剤、さらには、製品中の所望の添加剤の割合を得るように計算された量で、この濃縮物をベースポリマーへ添加することを対象としている。マスターバッチ技術の選択は、コスト、添加剤の取り扱いにおける安全性などの理由からである。マスターバッチは、最終プラスチック製品への変換にそれを使用するもの以外の専門会社によってしばしば調製される。
【0006】
色素製剤中に存在する固体担体は、典型的にはポリマー材料、ワックス状製品またはそれらの混合物である。このような担体は、変性されるべきポリマーと混合されなければならず、さらに、最終的には最終製品に組み込まれたままであろうから、それは、最終製品において変性されるべきポリマーと相溶可能でありかつ容易に混和することが不可欠である。
【0007】
この分野の高い複雑さは、担体の数(数十)に加えて、主にそれらと各担体に必要な色の数の組み合わせに依存する。各色は、要求される各色調に必要な色素、すなわち着色添加剤(例えば、緑色を得るために白色色素を黄色色素および青色色素と混合する)を担体と混合することによって調製される。この混合物は、押出され、そして顆粒化される。
【0008】
したがって、マスターバッチの製造は、オーダーメイドであり、かつそれ故に、単一の色素の使用を通して得ることができない色調に対して毎回行わなければならないことは極めて明らかである。この複雑さは供給および貯蔵の非常に面倒な管理を必要とし、その一部は、やがてゆっくり動く在庫、すなわち低速回転の材料になる。したがって、そのような材料は、長期間、貯蔵庫に置かれ、それ故、販売不可能または販売困難なバッチになる可能性があり、これは管理する製品の数と共に必然的に増加する問題である。
【0009】
したがって、本発明の主な目的は、そのような複雑さを排除することができ、かつ、着色された製造品の製造のより安価な管理を提供することができる「万能的な(universal)」色素製剤を提供することである。
【0010】
押出に基づく現在採用されているシステムは、平均40%を超える有機色素濃縮物を有することを可能にしないことを考慮すべきである。
【0011】
欧州特許第0910603号明細書には、低エネルギー混合プロセスを用いたマスターバッチまたは添加剤濃縮物の製造が記載されている。添加剤粒子は、マスターバッチが担体粒子および凝集粒子の凝集体からなるように、それらの粒子の同一性を保持する担体粒子によって一緒に保持されている。
【0012】
米国特許第3778288号明細書には、色素と、例えばフィッシャー・トロプシュ・ワックスのような分散剤とを組み合わせ、そして高強度混合を用いて造粒する方法が開示されている。得られた顆粒は、90~95%の収率で10~70メッシュ(2000~210ミクロン)のサイズを有する(第4欄、第45~46行)。より小さい粒子は、より大きい粒子よりも劣った分散性を示す(第8欄、第67~68行)。
【0013】
したがって、本発明の目的は、それらの現在知られている欠点を克服する万能的な色素製剤を提供することである。
【0014】
より詳細には、本発明の主な目的は以下の通りである。
-色素製品の使用の万能性,
-製造工程の複雑さが少ない;
-在庫の削減
-変換コストの削減;
-色素の高濃縮化
-着色および物理化学的特性の改善;
-食品、医療、さらには玩具分野で使用するための現在の規格への最終製品の適合
【発明の概要】
【0015】
本発明の発明者らは、いくつかの特定の分散剤が湿潤剤の特徴も有することを見出した。これらの化合物により、本発明者らは、プラスチックを着色するための万能的な用途を有する色素製剤を調製することができた。
【0016】
一態様では、本発明は、下記のものを含む、本質的に下記のものからなる、または、下記のものからなる色素製剤に関する:
-色素親和性基(pigment-affinic groups)を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基を有する変性ポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタンポリマー、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤(dispersing-wetting agent)であって、50~150℃の範囲の融点を有する上記少なくとも1種の分散湿潤剤、および
-無機顔料(inorganic pigment)、有機顔料(organic pigment)、カーボンブラックおよび染料(dyes)からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤(pigmentary additive)、および
-任意的な添加剤、
ここで、色素製剤中の少なくとも1種の色素添加剤の粒径D50(個数基準)は0.5~3.5μmの範囲にあり、かつ
色素製剤は、色素製剤の総重量に対し、少なくとも60重量%の少なくとも1種の色素添加剤を含有する。
【0017】
本発明によれば、色素製剤の唯一の必須成分は、少なくとも1種の分散湿潤剤および少なくとも1種の色素添加剤である。
【0018】
本発明者らは、湿潤特性を有することができる、すなわち一次色素粒子の凝集体の界面強度を低下させることができる、すなわち上記一次色素粒子を安定化し、これによりそれらの再凝集を回避できる化合物群を見出した。このような湿潤分散剤は、芳香族環、ポリエーテル、例えば一級、二級および三級アミンおよびアミド、イミドおよびイミン含有基などの例えば窒素含有基などの水素結合基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、カルボニル基、並びに、カルボキシル基のような色素親和性基を含むことが好ましい。ポリマーまたはオリゴマーの湿潤分散剤の場合には、色素親和性基は主鎖の一部であるかまたは側鎖に組み込まれていてもよい。
【0019】
この二重の性質を考慮すると、単一のポリマーに特異的な湿潤剤および分散剤は、ポリマーの色付けにおいて回避することができる。本発明の湿潤分散剤は、着色されるべき全ての種類のプラスチックと相溶性であることをもたらした。このようにして、本発明の色素製剤は、使用の万能性を有する、すなわち、複数のポリマー、例えば少なくとも3つの異なるポリマーにそれらを使用することができるため、万能的な色付けシステム(tinting system)を可能にする。例示的なポリマーとしては、ポリエチレン系ポリマー、ポリスチレン、SAN、HIPS、ABS、ASA、塩化ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、および熱可塑性エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。色素フィラー充填量が0.5~1重量%となるようにポリマーと均一に混合した場合、得られる着色組成物(coloured composition)は、同じ組成を有するが各成分(例えば、色素フィラー、分散湿潤剤、ポリマー)を個々に混合機に加えかつ当該成分を混合することによって調製された混合物よりも、好ましくは、少なくとも20%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも35%大きい、少なくとも40%大きい、例えば20~50%大きい着色力を示す。好ましくは、上記色素製剤は、少なくとも3つの異なるポリマーに着色力のこの改善をもたらす。
【0020】
一態様では、本発明は、少なくとも1種の色素添加剤が0.5から3.5μmの範囲の粒径D50(個数基準)を有し、かつ、色素製剤の総重量に対し、少なくとも60重量%の少なくとも1種の色素添加剤を含む最終色素製剤に関する。最終色素製剤中の色素添加剤の粒径は、色素製剤中の色素添加剤の分散の度合を示す。粉砕前には、色素添加剤粉末は、典型的には7マイクロメートルを超える、例えば7~10マイクロメートルの粒径を有する凝集体および/または凝集粒子の形態である。有機顔料の場合、凝集体は、それらの表面に一緒に成長した複数の顔料微結晶を含む。顔料微結晶および凝集体は、それらの端部および角部で合体して凝集体を形成する。粉砕プロセスは、分散湿潤剤の助けを借りて有機顔料の凝集体を互いに分離し、また凝集体サイズを縮小し、そして分散湿潤剤は、単結晶または一次粒子を含み得る個々の粉砕粒子が再付着しおよび凝集することを防止する。対照的に、カーボンブラックは、ブドウの房と同じように構成された一次粒子の集合体である。一次粒子は共有結合性の相互作用によって互いに付着しており、個々の凝集体は一般に粉砕によって一次粒子に分解されない。カーボンブラック凝集体は、非共有結合性の相互作用によって互いに付着して凝集体を形成する。この場合、粉砕処理は、カーボンブラック凝集体を互いに分離し、そして分散湿潤剤はカーボンブラック凝集体が再凝集することを防止する。
【0021】
本発明の色素製剤は、自由流動性粉末(free-flowing powder)またはマイクロ顆粒(microgranules)として得ることができ、これらは両方とも、例えばフィルトラバイブレーション(Filtra Vibration)のデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いて、ふるい分けすることによって測定することができる。
【0022】
マイクロ顆粒の好ましい実施形態では、色素製剤のすべてのマイクロ顆粒の粒度分布は、(例えばフィルトラバイブレーションのデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いて)測定したときに、60~500μm、より好ましくは80~350μmの範囲にある。好ましくは、このマイクロ顆粒は、(マスターバッチ組成物において使用されることが望まれている)全ての活性成分および全ての添加剤を含有する、すぐに使用可能なマイクロ顆粒であり、すぐに使用可能な色素製剤として使用される。
【0023】
本発明において定義「色素添加剤(pigmentary additive)」が用いられる場合、それは、無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される任意の色素添加剤を意味する。
【0024】
特に明記しない限り、本発明において色素添加剤の粒径D10、D50およびD90が示される場合、それは、最終色素製剤中で測定される少なくとも色素添加剤の粒径(個数基準)を指す。この測定は、最終色素製剤を溶媒に分散し、および、例えばレーザーベックマンコールター粒径分析器、光学モデルFraunhofer.rf780zのレーザ粒径分析器を用いてその分散液を分析することによって行う。最終色素製剤中の色素添加物の粒径は、例えば酢酸ブチルのような適切な溶媒ビヒクルに色素製剤を分散させることによって得ることができる。分散湿潤剤は試験条件下において完全に可溶化されているので、装置を用いて、溶媒中に分散された粉砕色素のサイズのみを測定できる。D10は、所与の母集団中の粒子の10%の直径以上であり、D50は、その母集団中の粒子の50%の直径以上であり、D90は、その母集団中の粒子の90%の直径以上である。
【0025】
本発明において、マイクロ顆粒または粉末の粒度分布が示される場合、それは適切なフィルターを用いて測定されるような粒子直径を意味する。
【0026】
本発明において定義「自由流動性粉末(free-flowing powder)」が使用される場合、それは、50μm未満の粒度分布を有する最終的な色素製剤の粒子を示すことを意味する。
【0027】
本発明の色素製剤は、好ましくは自由流動性粉末の形態であるか、またはマイクロ顆粒である。選択的にまたは追加的に、色素製剤は、a)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器(例えば、シロッコ(Scirocco)2000乾燥粉末試料導入アクセサリーを備えたマルヴァーンマスターサイザー(Malvern Mastersizer)2000粒径分析器)で測定した場合に、0.8ミクロン以上のD20および5ミクロン以下のD90を有する自由流動性粉末、または、b)3.5バールの圧力下、乾燥状態においてレーザー粒径分析器で測定した場合に、10ミクロン以上のD20および1000ミクロン以下のD90を有するマイクロ顆粒の形態である。
【0028】
マイクロ顆粒としての色素製剤の全ての実施形態は、好ましくは60~500μm、より好ましくは80~350μmの範囲の成分の粒度分布を有する。
【0029】
本発明の全ての実施形態における最終色素製剤の上記少なくとも1種の色素添加剤は、好ましくは0.9~4μmの範囲の粒径D90(個数基準)も有する。
【0030】
本発明の全ての実施形態における最終色素製剤の上記少なくとも1種の色素添加剤は、好ましくは0.5~1μmの範囲の粒径D10(個数基準)も有する。
【0031】
別の態様では、本発明は、上記少なくとも1種の色素添加剤の粒径D50(個数基準)が0.5~3.5μmの範囲にあると推測できるように装置で成分を処理する、本発明の色素製剤の調製方法に関する。
【0032】
好ましい態様において、本発明は、本発明による色素製剤に関連し、ここで、この色素製剤は、下記工程を含む方法により色素組成物(pigmentary composition)から得ることができる:
1)下記のものを含む、本質的に下記のものからなる、または、下記のものからなる色素組成物を粉砕機、好ましくは乾式粉砕機に導入すること:
-色素親和性基を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基を有する変性ポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタンポリマー、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤であって、50~150℃の範囲の融点を有する上記少なくとも1種の分散湿潤剤と、
-無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤、および
-任意的な添加剤。
2)工程1)の色素組成物を混合しおよび粉砕すること。
3)そのようにして得られた色素製剤を自由流動性粉末またはマイクロ顆粒として取り出すこと。
【0033】
好ましくは、工程1)において、本明細書の他の箇所で論じられている帯電防止剤、充填剤などのさらなる添加剤を添加することができる。
【0034】
分散湿潤剤の数平均分子量は、5000~35000g/molが好ましい。色素添加剤は固体として上記粉砕機に追加することが好ましいので、得られる色素製剤は、低レベル、例えば3重量%未満、2.5%未満または2%未満の水または他の溶媒を有することが好ましい。例えば、色素製剤は、3重量%未満、2.5%未満、または2%未満の水を含み得る。
【0035】
いかなる理論にも縛られることなく、そして詳細な説明および実施例から明らかであるように、本発明の方法は、色素の一次粒子の優れた粉砕および解離を得ることをもたらし、したがってそれらの優れた均質化および分散を得ることをもたらす。本発明の方法は、(伝統的な押出法により得られたものと比べて)非常に微細な粒子分散物を用いて粉砕の均質性および細かさを得ることを可能にし、これにより、先行技術の色素製剤の欠点を克服する。
【0036】
本発明の方法は、工程3)において、自由流動性粉末またはマイクロ顆粒として色素製剤を得ることを可能にし、ここで、色素製剤中の上記少なくとも色素添加剤は、例えばレーザーベックマンコールター粒径分析器、光学モデルFraunhofer.rf780zのレーザ粒径分析器を用いて、溶媒中に分散させた後に測定したときに、0.5~3.5μmの範囲の粒径D50(個数基準)を有し;また、0.9~4μmの範囲の粒径D90(個数基準)を有し;さらにまた、0.5~1μmの範囲の粒径D10(個数基準)を有する。
【0037】
有利には、本発明のマイクロ顆粒は、すぐに使用可能な製品である。
【0038】
したがって、本発明のマイクロ顆粒状色素製剤は万能的であり、高濃度の色素および狭い粒度分布(60~500μm)を有する。
【0039】
別の態様において、本発明は、異なる色合いを有する製造されたプラスチック製品およびゴム製品の調製に適した、限られたセットの色素製剤に対応する限られた数の基本色を含む万能的な色付けシステムに関する。本発明の色素製剤は、押出成形プロセスを通した色素の混合物のオーダーメイド加工を必要とせずに、本発明の単色(単色素)基本色素製剤(例えば、約16~22)の単純な乾式混合による色調の調製を可能にする。
【0040】
したがって、本発明はまた、本発明による2種以上の色素製剤の乾式混合によって簡単に得られうる所望の色合いを有する一連の色素製剤(RAL(Reichsausschuss fuer Lieferbedingungen)、NCS(ナチュラルカラーシステム(Natural Color System))、BS(英国規格(British Standards))など)を含む色付けシステムに関する。
【0041】
したがって、別の態様において、本発明は、あらゆる種類のプラスチック材料、例えば、ポリエチレン系ポリマー、ポリスチレン、SAN、HIPS、ABS、ASA、塩化ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーを着色するための本発明による色素製剤の使用に関する。好ましくは、着色プラスチック組成物が0.5~1重量%の色素添加剤を含む場合には、それは、同じ組成を有するが各成分を個々に混合機に加えかつ当該成分を均一な混合物に混合することによって調製された混合物よりも、少なくとも20%大きい、例えば20~50%大きい着色力を示す。
【0042】
好ましくは、所与の色素製剤は、少なくとも3種類のプラスチック材料、例えば、ポリエチレン系ポリマー、ポリスチレン、SAN、HIPS、ABS、ASA、塩化ビニルポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも3種類を着色するのに適している。好ましくは、結果として得られる第1、第2および第3の混合物が0.5~1重量%の色素添加剤を含むような、色素製剤と第1、第2および第3のポリマーとの第1、第2および第3の均一な混合物のそれぞれが、同じ組成を有するが各成分を個々に混合機に加えかつ当該成分を均一な混合物に混合することによって調製された混合物よりも、少なくとも20%大きい、例えば20~50%大きい着色力を示す。
【0043】
プラスチック材料は、例えば、ポリエチレン生成物(例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、MDPE(中密度ポリエチレン)、EVA(エチレンビニルアセテート)、EVOH(エチレンビニルアルコール));ポリプロピレン生成物(例えば、PP(ポリプロピレン)、PPコポリマー、EPR(エチレンプロピレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー(Mクラス)ゴム));スチレン(例えば、PS(ポリスチレン)、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ASA(アクリル-スチレン-アクリロニトリルコポリマー));塩化ビニルポリマー(例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、非可塑化のものおよび可塑化のもの);アクリル(例えば、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))、ポリアクリレート);ポリアミド(例えば、PA6、PA6,6、PA11、PA12、およびそれらのコポリマー);ポリカーボネートおよびその混合物(例えば、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PC/ポリエステル);ポリエステル(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、コポリエステル);ポリウレタン(例えば、TPU(熱可塑性ポリウレタン));熱可塑性エラストマー(例えば、TPO(熱可塑性オレフィン)、TPV(熱可塑性加硫物))から選択される。ポリエチレンおよびポリプロピレン生成物は、メタロセン触媒を使用して、または、当業者に知られている他の重合方法を使用して得ることができる。
【0044】
さらに、そして驚くべきことに、本発明の色素製剤は、本発明の実験部分から明らかであるように、最終着色プラスチック製品の技術的性質および機械的性能を改善することを可能にした。
【0045】
具体的には、MFRデータは、着色サンプルの加工性および良好な分散を示す(無着色サンプルと比較した場合、関連性のある違いはない)。アイゾット(IZOD)試験(衝撃強度)は、均一な白化およびよく発達した変形過程を示す、破砕にさらされた領域を検査することで確認すると、(本発明の色素製剤を用いた)着色サンプルについて、無着色サンプルと比較してはるかに高い結果(+77%)を示した。ロックウェル硬度試験またはロックウェル硬度は、キセノテスト(Xenotest)エージング前において、本発明の色素製剤で着色されたサンプルについては著しく高い値(+37%)であり、さらに、1000時間のキセノテストエージング後においては、着色サンプルと無着色サンプルの間の対照的な振舞いを示した。着色サンプルは実質的に元の値を保持しており、わずかな変化しか見られなかったが、無着色サンプルは大幅に減少した。この現象は、(衝撃試験の結果によって確認されるように)着色されていないサンプルの脆弱性の増加を裏付けた。キセノテストに暴露してから1000時間後に測定された色堅牢度試験の結果は、着色サンプルについては驚くべきものであった。比色分析およびグレースケールにおいて変色は観察されなかった。要するに、着色サンプルの挙動は、無着色サンプルのそれよりも著しく優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、例1の最終的な色素製剤の色素添加剤の寸法値のグラフである。
図2図2は、例6の最終的な色素製剤の色素添加剤の寸法値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
したがって、一態様では、本発明は、下記のものを含む、本質的に下記のものからなる、または、下記のものからなる色素製剤に関する。
-色素親和性基を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基を有する変性ポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタンポリマー、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤であって、50~150℃の範囲の融点を有する上記少なくとも1種の分散湿潤剤、および
-無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤、および
-任意的な添加剤、
ここで、色素製剤中の少なくとも1種の色素添加剤の粒径D50(個数基準)は0.5~3.5μmの範囲にあり、かつ
色素製剤は、色素製剤の総重量に対し、少なくとも60重量%の少なくとも1種の色素添加剤を含有する。
【0048】
上記のように、本発明において定義「色素添加剤」が使用されるとき、それは無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される色素添加剤を意図する。高分子量という用語は、好ましくは5000~35000g/molの数平均分子量を示す。両親媒性コポリマーは、ランダムに、ブロック状に、または勾配などの他の配置で配置された、親水性および疎水性の両方のモノマーを含むコポリマーである。
【0049】
例えば、色素添加剤は、下記の化合物のうちの1つ以上であり得る。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
本発明の色素製剤は、自由流動性粉末の形態またはマイクロ顆粒の形態である。
【0053】
本発明の色素製剤は、色素製剤の総重量に対して少なくとも60重量%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは85%、例えば95重量%までの少なくとも1種の色素添加剤を含む。
【0054】
マイクロ顆粒の形態の色素製剤は、(例えばフィルトラバイブレーションのデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いて)測定した場合に、60~500μm、より好ましくは80~350μmの範囲の成分の粒度分布を有する。
【0055】
本発明の最終色素製剤中の少なくとも1種の色素添加剤は、0.9~4μmの範囲の粒径D90(個数基準)も有する。
【0056】
本発明の最終色素製剤中の少なくとも1種の色素添加剤はまた、0.5~1μmの範囲の粒径D10(個数基準)も有する。
【0057】
本発明の色素製剤を得るための色素組成物は、熱、酸素(酸化防止)、および光に対する安定剤、電荷(帯電防止)および熱の輸送剤、熱添加剤、ブロッキング防止添加剤、崩壊防止添加剤、酸化防止添加剤、帯電防止添加剤、紫外線安定添加剤、充填剤、フィブリル化防止剤、加工助剤、発泡剤、乾燥/相溶化添加剤、潤滑剤、造核/清澄添加剤、難燃剤、光学的光沢/トレーシング添加剤、スリップ添加剤からなる群から選択される他の任意添加剤をさらに含む。
【0058】
熱に対する安定剤の中では、有機亜リン酸塩およびフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0059】
熱伝導体の中では、熱伝導性プラスチック、グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が挙げられる。
【0060】
ブロッキング防止添加剤の中では、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ-シリケートセラミック、マイカ、ビス-アミド、一級および二級アミド、有機および金属のステアリン酸塩、シリコーン、並びにポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0061】
帯電防止剤の中では、導電性フィラー、グリセロールモノステアレート、エトキシル化脂肪酸アミン、ジエタノールアミド、ポリエーテルブロックアミドが挙げられる。
【0062】
紫外線安定剤の中では、しゅう酸アニリド、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニルトリアジンが挙げられる。
【0063】
充填剤の中では、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、タルク、珪灰石、シリカおよび例えばヒュームドシリカのようなそれらの誘導体、並びにマイカが挙げられる。
【0064】
フィブリル化防止剤の中では、炭酸カルシウム、タルク、並びに天然および合成ゴムが挙げられる。
【0065】
加工助剤の中では、フルオロポリマー、沈降炭酸カルシウム、およびステアリン酸金属塩が挙げられる。
【0066】
発泡剤の中では、脂肪族炭化水素、不安定な窒素化合物、および炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとクエン酸との混合物が挙げられる。
【0067】
相溶化添加剤の中では、ステアリン酸、安息香酸、スチレン無水マレイン酸、スチレンアクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
【0068】
潤滑剤の中では、硫化モリブデンおよびグラファイトが挙げられる。
【0069】
造核/清澄添加剤の中では、イソフタル酸およびテレフタル酸、有機二塩基酸と第II族酸化物との混合物、水酸化物、または酸、タルク、安息香酸ナトリウム、およびアイオノマーが挙げられる。
【0070】
難燃剤の中では、ハロゲン化有機化合物が挙げられる。
【0071】
光学的光沢剤の中では、ベンゾトリアゾールフェニルクマリン、ナフトトリアゾールフェニルクマリン、およびトリアジンフェニルクマリンのようなビス-ベンゾオキサゾール型の誘導体が挙げられる。
【0072】
スリップ添加剤の中では、不飽和脂肪酸アミド、第二級アミド、およびワックスが挙げられる。
【0073】
酸化防止剤の中では、ヒンダードフェノール、亜リン酸塩、ホスホン酸塩、第二級芳香族アミンが挙げられる。
【0074】
光安定剤の中では、ヒンダードアミン(HALS(ヒンダードアミン光安定剤)またはHAS(ヒンダードアミン安定剤))ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0075】
もう1つの観点においては、本発明は、本発明の色素製剤の製造方法に関し、ここで、少なくとも色素添加剤に0.5から3.5μmの範囲の粒径D50(個数基準)を付与し、かつ色素製剤の総重量に対して60重量%の量の少なくとも1種の色素添加剤を達成することを可能にする装置を用いて、成分が処理される。少なくとも1種の色素添加剤の量は、色素製剤の総重量に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは85%である。
【0076】
本発明によれば、色素製剤は、好ましくは色素組成物によって得られうる。
【0077】
より好ましくは、色素製剤は下記の工程を含む方法により得られうる。
1)下記のものを含む、本質的に下記のものからなる、または、下記のものからなる本発明による色素組成物を乾式粉砕機に導入すること;
-色素親和性基を有するワックス系粉末状加工添加剤、色素親和性基を有する酸性ポリエステル系添加剤、高い色素親和性の基を有する変性ポリエーテル、スチレンとポリエーテルのコポリマー、マレイン酸のアミド、両親媒性コポリマー、高い色素親和性の基を有する変性ポリアクリレート、ポリエステル系ブロックコポリマー、高分子量ポリウレタンポリマー、ポリエステル-ポリアミン-ポリオレフィンターポリマー、および、エポキシ基またはウレタン基を有する変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の分散湿潤剤であって、50~150℃の範囲の融点を有する上記少なくとも1種の分散湿潤剤、および
-無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の色素添加剤、
2)工程1)の成分を混合し、乾式粉砕すること、
3)そのようにして得られた色素製剤を自由流動性粉末またはマイクロ顆粒として取り出すこと。
【0078】
乾式粉砕機は、ジェット式粉砕機および湿式粉砕機に比べて本発明において好ましい。 事実、乾式粉砕機は適切な粉砕力を可能にするが、公知のジェット式粉砕機は過度にエネルギーがあり、このため分散色素粒子の後処理、そして最終的な色の安定性が損なわれる。 他方、湿式粉砕機は、一般に色素粒子を<15ミクロンの粒子サイズに分散させることができず、そして全工程をより高価にするさらなる乾燥工程を必要とする。
【0079】
上記方法において、全ての既知の有機、無機顔料、カーボンブラックおよび染料が、色素製剤を調製するための使用に適している。
色素添加剤の例は上記に列挙されている。
【0080】
本発明の方法で使用される好ましい乾式粉砕機は少なくとも2つのローターを有することができ、そして不連続的または連続的であり得る。
【0081】
好ましい実施形態では、色素製剤は、下記の工程を含む方法によって得られうる。
1)好ましくは少なくとも1つのローターがブレードローターである少なくとも2つのローターを備えた粉砕機に上記の色素組成物を導入すること。
2)色素組成物を混合しおよび粉砕すること。
3)そのようにして得られた色素製剤を取り出すこと。
【0082】
上記方法で使用される連続装置および不連続装置の両方は、工程3)において、自由流動性粉末としてまたはマイクロ顆粒として、0.5~3.5μmの範囲の粒径D50(個数基準)を有する少なくとも1種の色素添加剤を含む色素製剤を得ることを可能にする。
【0083】
不連続乾式粉砕機は、2~7個のローター、例えば3個、4個、5個または6個のローター、好ましくは4個のローターを含む。
【0084】
不連続混合機を使用する場合、平均周速度VPEは5~50m/sの範囲内に含まれ、混合および乾式粉砕の工程2)は、好ましくは10分~90分、例えば50~150℃の範囲の温度に達するまで15~90分または20~90分の範囲内の時間で実施される。
【0085】
いかなる理論にも縛られることなく、本発明の発明者らは、少なくとも1種の色素添加剤の粒子の最終直径および色素製剤の粉砕の細かさが製品の最終性能(分散性および着色力)に不可欠であると考える。
【0086】
粒子と例えばローターのような装置の部品との間に多数の反復衝突を与え、これにより本発明の成分の粒子に衝撃を与えることを可能にする全ての装置は、本発明において使用するのに適している。
【0087】
色素製剤中の色素添加剤の細かさは、色素粒子が互いに衝突しさらにはローターと衝突したとき、および粉砕室の内部ジャケットと衝突したときに、色素粒子が受けた衝撃の数に相関する。いかなる理論にも縛られることなく、長期間、例えば10~90分にわたる乾式粉砕の粉砕作業は、水または他の溶媒の使用を必要とすることなく、色素添加剤の粒子間に分散湿潤剤を均一に分配すると考えられる。
【0088】
VPEの好ましい態様について、時間および最終温度は、成分の特性、好ましくは加工されるべき無機顔料、有機顔料、カーボンブラックおよび染料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤の特性に従って確立され得る(すなわち、密度、吸油量、比表面積など)。
【0089】
このようにして工程3)で自由流動性粉末またはマイクロ顆粒の形で得られた生成物は取り出され、そして有利に包装される。
好ましくは、ダストフリーマイクロ顆粒は、80~350μmの範囲の粒径を有する。
【0090】
乾式粉砕機が不連続であるとき、工程c)の生成物が自由流動性粉末であるときにも造粒プラントを提供することができる。あるいは、不連続装置は、(例えばフィルトラバイブレーションのデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いて)測定したときに、60~500μm、より好ましくは80~350μmの範囲の粒径を有するダストフリーマイクロ顆粒を得ることを可能にする。
【0091】
好ましくは、造粒工程は、60℃~140℃の範囲の好ましい温度に達した生成物を、非常に均質な球形顆粒の形成を引き起こす規則的な渦で旋回させる回転スクリューフィーダーを介して行われる。スクリューフィーダの周速度(VPE)は、15から50m/sの間に含まれることが好ましい。約5分後、均一なマイクロ顆粒が形成される。温度は好ましくは50℃未満にされ、このようにして担体の完全な再凝固を引き起こし、そして球状顆粒を安定にする。
【0092】
得られた生成物のダストフリーマイクロ顆粒は、(例えばフィルトラバイブレーションのデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いて)測定されたときに、60~500μm、より好ましくは80~350μmの範囲の粒度を有する狭い粒度曲線を有する均一なマイクロ顆粒の形態を有する。
【0093】
本発明の色素製剤の性能、すなわち色素粒子の優れた解凝集および/または離散、分散の均一性、ならびに実験の部に示されるような分散性および着色力は、従来の押出成形法で得られうる性能と同等であるか、場合によってはそれよりもさらに優れている。本発明の色素製剤の驚くべき特徴は、色素製剤の総重量に対する上記少なくとも1種の色素添加物の割合が60重量%、より好ましくは70重量%、さらにより好ましくは85重量%、好ましくは95重量%であっても、最終色素製剤がこれらの性能を維持するという事実である。
【0094】
以下の実験の部に明確に示されるように、本発明の最終色素製剤の少なくとも1種の色素添加物の粉砕粒子の細かさは、限られた間隔で有利に表される。
【0095】
本発明の最終的な色素製剤は、粉砕された色素粒子の粒径D90(個数基準)が最大で4マイクロメートルであること、さらには5マイクロメートルより大きいサイズを有する粒子は非常に少ないことからして、並外れた均質性を有する。
【0096】
上記のように、万能的な色素製剤は、色素製剤の総重量に対して少なくとも60重量%、より好ましくは70重量%の少なくとも1種の色素添加剤を含み、好ましくは85重量%の有機顔料および好ましくは95重量%までの無機顔料を含む。
【0097】
本発明の色素製剤は万能的でありかつ高濃度の色素を有するので、別の態様において本発明は、異なる色合いを有する製造されたプラスチック製品およびゴム製品の調製に適した、限られたセットの色素製剤に対応する限られた数の基本色を含む万能的な色付けシステムに関する。本発明の色素製剤は、押出成形プロセスを通した色素の混合物のオーダーメイド加工を必要とせずに、本発明の単色基本色素製剤(例えば、約16~22)の単純な乾式混合による色調の調製を可能にする。
【0098】
したがって、本発明はまた、本発明による2種以上の色素製剤の乾式混合によって得られうる所望の色合い(RAL、NCS、BSなど)を有する一連の色素製剤を含む色付けシステムに関する。
【0099】
色付けシステムは任意のプラスチック材料に使用することができる。好ましくは、任意の所与の色付けシステムを少なくとも3つのプラスチック材料に使用することができる。
したがって、別の態様において、本発明は、あらゆる種類のプラスチック材料を着色するための本発明による色素製剤の使用に関する。
【0100】
プラスチック材料は、例えば、ポリエチレン生成物(例えば、HDPE、LDPE、LLDPE、MDPE、EVA、EVOH、メタロセン触媒系から得られるとしても);ポリプロピレン生成物(例えば、PP、メタロセンから得られたとしても、PPコポリマー、EPR、EPDM);スチレン(例えば、PS、SAN、HIPS、ABS、ASA);塩化ビニルポリマー(例えば、PVC、非可塑化のものおよび可塑化のもの);アクリル(例えば、PMMA、ポリアクリレート);ポリアミド(例えば、PA6、PA6,6、PA11、PA12、およびそれらのコポリマー);ポリカーボネートおよびその混合物(例えば、PC/ABS、PC/ポリエステル);ポリエステル(例えば、PET、PBT、コポリエステル);ポリウレタン(例えば、TPU);熱可塑性エラストマー(例えば、TPO、TPV)から選択される。
【0101】
ここで、例法によるいくつかの例を示して本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0102】
<実験の部>
本発明の製剤
使用された全ての色素は、色素の識別に広く使用されているカラーインデックスの名称と共に以下に示される。
【0103】
例1
色素製剤XP303-Cの調製(色素濃度=85%)
6800gのP.Red254ピグメント(シニック(Cinic)社によりSR2Pとして入手可能)を、BYK社により提供される1.200gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
乾式粉砕機は4つのローターを備えた不連続装置であった。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度15m/sで14分、次いで周速度25m/sで6分;温度は72℃に達した。
そのようにして得られた色素製剤はマイクロ顆粒に相当した。
【0104】
色素製剤中の色素添加剤粒径の以下の寸法値は、レーザーベックマンコールター粒径分析器を用いて酢酸ブチル分散液中で分析された。
D10=0.571μm
D50=0.790μm
D90=1.034μm
マイクロ顆粒の粒度分布:80~350μmの範囲内。
【0105】
例2
色素製剤XP901の調製(色素濃度=80%)
4つのローターを備えた不連続乾式粉砕機を用いて、6400gのカーボンブラックピグメントPBL-7(オリオン(Orion)社のCarbon Black Special Black100)、および、BYK社による1600gの分散剤Disperplast1018を混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度15m/sで14分、次いで周速度25m/sで6分;温度は132℃に達した。得られた組成物は、ダストフリーのマイクロ顆粒の形態であった。
【0106】
例1と同様にして測定した、色素製剤中の色素添加剤のD50=1.5μm
マイクロ顆粒の粒度分布:80~350μm
【0107】
例3
色素製剤XP307Cの調製(色素濃度=90%)
4個のローターを備えた不連続乾式粉砕機を用いて、5400gのピグメントPRed101(ランクセス(Lanxess)社のBayferrox130M)を、BYK社による600gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度25m/sで14分;温度は50℃に達した。
得られた組成物は自由流動性粉末の形態であった。
【0108】
例1と同様にして測定した、色素製剤中の色素添加剤のD50=1.2μm
粉末の粒子の粒度分布<50μm
【0109】
例4
色素製剤XP001PW6の調製(色素濃度=90%)
4個のローターを備えた不連続乾式粉砕機を用いて、5400gのピグメントPW6 101(トロノックス(Tronox)社のCR-826)を、BYK社による600gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度25m/sで14分、次いで周速度30m/sで6分。
得られた組成物は、マイクロ顆粒の形態であった。
【0110】
例1と同様にして測定した、色素製剤中の色素添加剤のD50=0.7μm
粒度分布:80~350μm
【0111】
例5
色素製剤XP105-Cの調製(色素濃度=80%)
4個のローターを備えた不連続乾式粉砕機を用いて、4800gのピグメントPY139(BASF社のPaliotol L2140)を、BYK社による1200gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度15m/sで14分;温度は52℃に達した。
このようにして得られた製剤は、自由流動性粉末の形態であった。
【0112】
例1と同様にして測定した、色素製剤中の色素添加剤のD50=1.6μm
粉末の粒子の粒度分布<50μm
【0113】
例6
色素製剤XP502-Cの調製(色素濃度=80%)
4個のローターを備えた不連続乾式粉砕機を用いて、4800gのピグメントブルーフタロ PB15:1(クラリアント(Clariant)社のMP PV Blu Soliod、4R)を、BYK社による1200gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度15m/sで14分。
【0114】
このようにして得られた製剤は、自由流動性粉末の形態であり、そしてレーザーベックマンコールター粒径分析器、光学モデルFraunhofer.rf780zにより酢酸ブチル分散液中で分析された。色素製剤中の色素添加物の粒径は、
D10=0.746μm
D50=1.526μm
D90=3.269μm
粉末の粒子の粒度分布<50μm フィルトラバイブレーションのデジタル電磁気篩振とう機モデルFTL0200を用いた測定時
【0115】
例7
本発明の色付けシステム用の緑色調の調製
緑色の色合いを得るために、ミキサーを用いて、本発明の3つの生成物を乾式混合した(時間=2分):例4で調製した生成物XP001 PW6(用量=例4の生成物の75%、これは色素濃度90%の白色である)+例6で調製された生成物XP502-C PB15:1(用量=80%の色素濃度を有する例6の生成物の39%)+例5で調製された黄色の生成物XP105-C PY139(用量=80%の色素濃度を有する例5の生成物の1.63%)。緑色の色調が得られた。目視検査においては、緑色の色調は完全に均一であった。
【0116】
例8
本発明の混合システム用の濃紺色の調製
濃い青色の色合いを得るために、本発明の3つの生成物を通常のミキサーによって乾式混合した(時間=2分):例2の生成物XP901 PBL-7(用量 例2の生成物の30%、これは色素濃度80%の黒色である)+例4のXP001 PW6(用量=例4の生成物の70%、これは色素濃度90%の白色である)+例6のXP502-C PB15:1(用量=例6の生成物の16.25%、これは色素濃度80%の青色である)。本発明の上記製剤を乾式混合した場合、濃紺色が得られる。伝統的な押出し法により加工された既知のマスターバッチで得られる品質と完全に匹敵する濃紺色の色調が得られる。
【0117】
例9
本発明の色素製剤で着色されたサンプルの評価
以下の方法で着色したABS/SAN版を作製した。
【0118】
サンプル1:XP303-Cで着色されたプレート
CDMエンジニアリングsrlによる押出機、モデルES-65内に、ABS+SAN(50-50%)を例1の製剤(XP303-C)と一緒に導入した。後者は0.70重量%の量であった。
押出温度は以下の通りであった。
シリンダ1:200℃、シリンダ2:210℃、シリンダ3:230℃、シリンダ(Cil. Deg.)4:240℃、シリンダ5:235℃、プレート:230℃、ヘッド:230℃。
次に、押出機を出た生成物をアイメクスイタリー(IMEX ITAL)社のプレス機SM50Tで印刷した。成形温度は:ゾーン1:220℃、ゾーン2:230℃、ゾーン3:240℃、ノズル:230℃であった。
【0119】
サンプル2:XP307Cで着色されたABS-SANプレート
サンプル1の手順に従いかつ同じ装置を用いて、0.60重量%の量で例3の製剤XP307Cを使用してサンプル2を製造した。
【0120】
サンプル3:着色されていないABS-SANプレート
サンプル1の手順に従いかつ同じ装置を用いて、着色されていないABS-SAN混合物を用いてサンプル3を製造した。
【0121】
このようにして調製された3つのサンプルを以下の試験(ポリテクニックオブミラン、ケミカルマテリアルズおよびケミカルエンジニアリング部“ジュリオナッタ(Giulio Natta)”ポリテクニックポリマー試験所により実施された。)にかけた。色堅牢度(Colour fastness)(キセノテストの前後);メルトフローレート(MFR);熱重量分析;硬度ロックウェル;ノッチ付きアイゾット;マイグレーション;化学物質に対する耐性(ESC)。
【0122】
ソーラーボックス3000e装置を用いたISO4892-2:2006(AMF2009)に従ったエージング試験(キセノテスト)およびキセノンへの曝露、放射照度:550W/m2、ランプ:2500W;強度はサンプル表面で測定された、空冷;フィルター:ランプと試験室の間に設置されたUVアウトドアフィルター(280nm);温度計:B.S.T.(黒体基準温度計(black-standard thermometer))温度:65±3℃(ランプ点灯時);サイクル:連続照射。
【0123】
エージング(キセノテスト)前後のサンプルについて以下の試験を行った。
色堅牢度:UNI EN 20105/A02:1996の方法を用いた、1から5の間の色変動の方法に従ったグレースケール(1=最大変動;5=変化なし);
メルトフローレート:ASTM D1238:2013の方法を用いた(荷重=5Kg;試験温度=230℃)
ロックウェル硬度:UNI EN ISO2039-2:2001の方法を用いた。
アイゾット衝撃試験:UNI EN ISO 180:2009の方法を用いた。
【0124】
カラーバリエーション(UNI EN 20105/A02:1996):キセノテストの前と後
水中での全体的マイグレーション:製造されたばかりのサンプル1~3を約40℃の温度の水に24時間接触させることによる、2004年4月6日、イタリア保健省、DM74の方法による色マイグレーション。
【0125】
テーブル1に示す結果が得られた。
【0126】
【表3】
【0127】
テーブル1に示すように、MFRデータは、着色サンプルの加工性および良好な分散を示している(無着色サンプルと比較した場合、関連性のある違いはない)。キセノテストの結果は、無着色サンプル(サンプル3)および本発明の製剤で着色されたサンプル(サンプル1および2)の両方について、最小の変動を示している。いずれの場合であっても、観察された約1~2単位の変動は、キセノテストによる1000時間のエージングを受けた既知の着色サンプルの範囲を下回っている。
【0128】
アイゾット試験(衝撃強度)は、均一な白化およびよく発達した変形過程を示す、破砕にさらされた領域を検査することで確認すると、(本発明の色素製剤を用いた)着色サンプルについて、無着色サンプルと比較してはるかに高い結果(+77%)を示した。着色サンプル3の破砕面は、代わりに均質性が低く、不規則な窪みを有する領域を示した。
【0129】
キセノテストによる1000時間のエージング後の初期値のより高い減少は、サンプル3(着色されていない)の参照により検出された。
【0130】
ロックウェル硬度試験またはロックウェル硬度は、次のことを強調している:a)キセノテストエージング前において、本発明の色素製剤で着色されたサンプルについては著しく高い値(+37%)であり、b)1000時間のキセノテストエージング後においては、着色サンプルと無着色サンプルの間の対照的な振舞いを示した。着色サンプルは実質的に元の値を保持しており、わずかな変化しか見られなかったが、無着色サンプルは大幅に減少した。この現象は、(衝撃試験の結果によって確認されるように)着色されていないサンプルの脆弱性の増加を裏付けた。
【0131】
キセノテストに暴露してから1000時間後に測定された色堅牢度試験の結果は、着色サンプルについては驚くべきものであった。比色分析およびグレースケールにおいて変色は観察されなかった。要するに、着色サンプルの挙動は、無着色サンプルのそれよりも著しく優れていた。
【0132】
全てのサンプルにおいて、試験の特定の条件下での総マイグレーションは検出限界以下であることがわかった。
全てのサンプルは食物との接触に適格であった。
【0133】
例10
本発明の色素製剤で着色されたサンプルの評価
ポリプロピレンを着色することにより、例1の色素製剤(XP303C)を純粋な色素と比較した。
【0134】
テストは以下の機器を使用して実行された。
分析天秤(精度:0.001g)、精密天秤(精度:0.01g)、ミキサー(モデル:CY-37、回転速度:0~55r/分、タイマー:0.1s~99.99H、モーター出力:90~180W、内筒径:50mm、深さ:60mm)、二軸押出機(モデル:CTE20、回転速度:600rpm/分、モーター出力:4KW、L/D=56、径:21.7mm)、射出成形機(モデル:HTF58X1、ネジの型番:A-D26、締め付け力:580KN、射出量:66cm3)、分光光度計(モデル:コニカ-ミノルタ社製CM-2600d)
【0135】
ポリプロピレンの試料を0.5%の色素含有量または0.1%の色素含有量で試験した。
【0136】
この手順は、ポリプロピレン樹脂と、色素粉末または本発明の例1の色素製剤XP303Cと、シリコーン油とを均質な混合物が達成されるまで手で混合することからなる。こうして得られた混合物を射出成形してチップを製造した。
【0137】
両方のサンプル(比較用および本発明用)は良好な分散性を示した。
目に見える斑点は検出されなかった。
本発明の方法は、そのFPV(DIN EN 13900-5で測定されたフィルター値)を著しく改善した。
【0138】
そのままの色素を使用したフィルター値=5.250バール/g;XP303Cのとき=2.420バール/g
縮小1:10において、本発明による製剤XP303Cはより高い着色力を有する。
【0139】
0.5%の色素含有量または等しい含有量の製剤(15%少ない色素に対応する)では、本発明の製剤XP303Cは、純粋な色素の場合よりも130%大きい着色力を有した。分散性は、本発明の製剤XP303Cがより良好な分散性を有することを明らかに示しており、これもまたフィルター値を測定することによって証明された。
【0140】
例11
本発明の色素製剤で着色されたサンプルの評価
HP714およびHP729(色素濃度=90%)
HP714:
3本のローターを備えた不連続乾式粉砕機を使用して、4.500gの色素P.Brown24(ホイバッハ(Heubach)社のHeucodur Yellow G9239)を、BYK社による500gの分散剤Disperplast1018と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度30m/sで29分、温度は110℃に達した。
得られた組成物は顆粒の形態であった。
顆粒の粒子の粒度分布<500μm
HP729:
3つのローターを備えた不連続乾式粉砕機を使用して、4.500gの色素P.Brown24(ホイバッハ社のHeucodur Yellow G9239)を、BYK社による500gの分散剤P4100と混合しおよび粉砕した。
プロセスパラメータ:周速度6m/sで1分、周速度30m/sで29分、温度は110℃に達した。
得られた組成物は顆粒の形態であった。
顆粒の粒子の粒度分布<500μm
【0141】
色素製剤(HP714およびHP729)を、DIN EN ISO294-1に従った試験を通してABSを着色することによって比較した。
【0142】
テストは以下の機器を使用して実行された。
精密天秤(精度:0.002g)、二軸押出機(モデル:ライストリッツ(Leistritz)社、ZSE18HP-35D、回転速度:125rpm/min、モーター出力:9.4kW、L/D=35、直径:18mm)、射出成形機(モデル:アルブルク(Arburg)社、300C500-170、ネジの型番:30L873SW、射出量:13.5cm3)、分光光度計(モデル:データカラー(Datacolor)社、Spectraflash SF300)。
【0143】
着色力測定:相対着色力は、DIN EN ISO787-24に準拠して、基準に対する減少率から計算される。
【0144】
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のサンプルを0.1%の色素含有量で1:10の縮小で試験した。
【0145】
製剤HP714は、HP729よりも著しく良好な分散性を示した。これは、着色力の差によって証明された。HP714の着色力は、HP729のそれより37%高かった。
【0146】
【表4】
【0147】
より良好な分散性の他の指標は、調製されたバッチの品質であった。射出成形前に、二軸スクリュー押出機によって各色製剤を担体材料(ABS)と予備混合した。HP714とは対照的に、製造されたHP729のバッチは、非常に異なる着色力の顆粒を含有する不均質物であった。
【0148】
2つの製剤間の唯一の違いが使用された分散剤であるという事実を考慮すると、分散剤P4100は、ABSの着色には適していなかった。
【0149】
例12
比較例
色素製剤の調製(色素濃度=80%)
1760gのモナーク(Monarch)1100カーボンブラック(キャボットコーポレイション(Cabot Corporation)社より入手可能)を、クローダ(Cloda)社により提供される440gの分散剤アトマー(Atmer)116(室温で液体)と混合しおよび粉砕した。
乾式粉砕機は3つのローターを備えた不連続装置であった。
プロセスパラメータ:周速度6.1m/sで1分、次いで周速度31m/sで39分;温度は66℃に達した。
そのようにして得られた色素製剤は粉末の形態であった。
【0150】
30%カーボンブラックを含有するマスターバッチは、ファレル(Farrel)社製の1.644Lのバンバリー(Banbury)混合機を使用して、色素製剤を、スチレンアクリロニトリルポリマー(コスチル(Kostill)B755)と混合することにより得た。下記の処理条件を適用した:チャンバー温度40℃;ローター温度40℃;フラックス混合後の時間90秒;動圧4.2バール;ローター速度182RPM。生成物は190℃で排出された。この生成物を冷却し、3つの回転刃を有するポールマン(Pallman)PS3粉砕機を用いて粗い顆粒に粉砕した。
【0151】
次いで、上記マスターバッチを一軸スクリュー(ラボテック(LabTec)-30mm、30L/D、ダイからホッパーまでの温度:220-220-220-210-200℃)上での押出しによって希釈し(GP22アクリロニトリルブタジエンスチレンポリマー中において30=>5%カーボンブラック)、および、ストランドカット方式のペレット化システムによりペレット状にカットした。
ペレットを70℃で一晩乾燥した。
【0152】
得られた生成物を、プラークおよび衝撃試験用板に射出成形する中で、ABS GP22を用いて、5から0.75%のカーボンブラックに再び希釈した。成形温度は:ゾーン1:200℃、ゾーン2:220℃、ゾーン3:240℃、ノズル:230℃であった。
【0153】
スチレンアクリロニトリルポリマー中の比較のマスターバッチを、ブラックパールズ(Black Pearls)1100カーボンブラック(キャボットコーポレーション)を用いて調製した、ここで、このカーボンブラックは、モナーク1100カーボンブラックと同じ表面積を有するが、上記色素製剤について上記したのと同じ方法を用いてペレット形態で製造されたものである。マスターバッチ(30重量%のカーボンブラック)を希釈し、上記のようにプラークおよび衝撃試験板に成形した。
【0154】
プレートを、ハンターラボ(Hunterlab)からのUltraScan Visを用いて色Cie L*a*b*について分析した。
ノッチ付き試験片のアイゾット衝撃抵抗性は、CEAST振子衝撃試験機によりISO180/A:2000に従って測定した。
【0155】
結果:
【表5】
【0156】
上記データは、色素製剤を形成するために室温で液体であるアトマー116分散剤を使用することは、純粋な色素で調製されたプラスチックと比較して、色素製剤で調製されたプラスチックにおける色性能および衝撃強度の両方にとって有害であることを示す。
図1
図2