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  • 特許-音響機器および音響機器用プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】音響機器および音響機器用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220427BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H04R3/00
G10H1/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019562715
(86)(22)【出願日】2017-12-29
(86)【国際出願番号】 JP2017047406
(87)【国際公開番号】W WO2019130595
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 仁史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼城 七生
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-119512(JP,A)
【文献】特開平07-199918(JP,A)
【文献】特開2015-149115(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030862(WO,A1)
【文献】特開2002-091290(JP,A)
【文献】国際公開第2013/030863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G10H 1/00
G11B 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生する楽曲データに関する情報が表示される表示部と、
前記楽曲データの拍位置を解析、または解析結果を取得する拍位置取得部と、
前記楽曲データの現在の再生位置を示す画像を前記表示部に対して固定表示するとともに、前記再生位置を基準として、前記楽曲データのプラス方向およびマイナス方向に、拍数の差分数値の目盛を固定表示する拍位置表示部と、
を備えていることを特徴とする音響機器。
【請求項2】
請求項1に記載の音響機器において、
前記楽曲データの任意の時間的位置を登録したキューポイントを前記目盛に重畳して表示するキューポイント表示部を備えていることを特徴とする音響機器。
【請求項3】
請求項2に記載の音響機器において、
前記キューポイント表示部は、前記楽曲データの再生開始の時間位置を登録した再生開始時間位置と、前記楽曲データの検索された時間位置を登録した検索時間位置を区別して表示することを特徴とする音響機器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音響機器において、
前記拍位置表示部は、拍数の差分数値を小節単位で固定表示することを特徴とする音響機器。
【請求項5】
コンピュータを請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の音響機器として機能させることを特徴とする音響機器用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響機器および音響機器用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DJコントローラ等の音響機器は、コンピュータと接続され、コンピュータ上で実行されるアプリケーションソフトウェアでMP3等のデジタル楽曲データを再生することが行われている。
その際、コンピュータの表示部や、DJコントローラの表示部には、再生される楽曲データの進行状況や、再生される楽曲データのBPM(Beats Per Minute)値、再生経過時間等の情報が表示され、操作者は、その表示部に表示された画像を見ながら、DJパフォーマンスを行う。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の技術には、オーディオ信号の楽曲1曲の再生時間を取得し、単位時間当たりの拍数、小節数を検出し、表示部上にオーディオ信号の再生の進行状況を、水平方向に小節数を表示し、垂直方向に拍数を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4348391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、表示部が十分に大きな場合であれば、操作者の視認性も確保できるが、表示部が小さくなると、操作者が視認しにくくなり、楽曲の再生状況を把握しづらくなるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、操作者に再生中の楽曲の進行状況を視認し易くすることのできる音響機器および音響機器用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音響機器は、再生する楽曲データの拍位置を解析、または解析結果を取得する拍位置取得部と、前記楽曲データの現在の再生位置を基準として、前記楽曲データのプラス方向およびマイナス方向に、拍数の差分数値の目盛を表示する拍位置表示部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の音響機器用プログラムは、コンピュータを前述した音響機器として機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る楽曲データ再生制御システムを示す模式図。
図2】前記実施の形態における表示部に表示される表示態様を示す模式図。
図3】前記実施の形態における表示部の表示制御を行うコントローラを示すブロック図。
図4】前記実施の形態における作用を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]全体構成
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1には、本発明の実施の形態に係る楽曲データ再生制御システム1が示されている、楽曲データ再生制御システム1は、コンピュータ2と、このコンピュータ2にUSBケーブル3を介して接続されるDJコントローラ4とを備える。
コンピュータ2は、CPUおよびハードディスク等の記憶装置を備え、記憶装置内に記憶されたMP3等の楽曲データの再生を行う。楽曲データの再生は、CPU上で実行されるアプリケーションソフトウェアによって行われ、再生された楽曲データは、USBケーブル3を介して、DJコントローラ4に出力される。また、USBケーブル3には、DJコントローラ4のミキサー部41、デッキ部42L、42Rを操作することにより生成された再生制御信号が出力され、コンピュータ2に入力される。コンピュータ2では、DJコントローラ4から出力された再生制御信号に基づいて、再生中の楽曲データに種々の音響効果を付与する。
【0011】
音響機器として例示されるDJコントローラ4は、中央に配置されるミキサー部41と、ミキサー部41の左右に配置されるデッキ部42L、42Rとを備える。なお、本発明にいう音響機器は、本実施の形態のように、音響再生制御装置だけでなく、楽曲データを再生する音響再生装置も含む概念である。
ミキサー部41は、コンピュータ2から出力されたオーディオデータの切り替え、各チャンネルの音量調整、音響効果を付与する部分であり、第1チャンネル調整部411から第4チャンネル調整部414、およびマイク調整部415を備える。
ミキサー部41の右下には、エフェクト部41Eが設けられている。エフェクト部41Eは、再生楽曲に対して楽音効果を付与するために、エフェクト選択スイッチ416、チャンネル選択スイッチ417、エフェクト量調整スイッチ418、およびエフェクト付与スイッチ419が設けられている。
【0012】
デッキ部42L、42Rは、操作者が操作をすることにより、コンピュータ2から出力された楽曲データに様々な効果を付与する部分である。デッキ部42L、42Rは、ジョグダイヤル421、テンポスライダー422、パフォーマンスパッド423、キューボタン424、プレイ/ポーズボタン425、ループボタン426、デッキセレクトボタン427、ロードボタン428、およびキュー/ループコールスイッチ429を備える。
【0013】
回転操作子として例示されるジョグダイヤル421は、デッキ部42L、42Rの機器本体に回転可能に設けられ、操作者がジョグダイヤル421の回転操作をすることにより、再生される楽曲データの早送り再生や、逆転再生を行うことができる。
ジョグダイヤル421の中央には、液晶表示装置から構成される表示部43が設けられている。表示部43には、詳しくは後述するが、再生中の楽曲データのBPM(Beats Per Minute)値、経過時間、進行状況、拍位置、および再生中の楽曲データの進行に合わせたLPレコードの33RPMによる回転状態が表示され、操作者に楽曲データの再生進行を視認させている。
【0014】
テンポスライダー422は、再生される楽曲データのテンポを調整するスイッチである。パフォーマンスパッド423は、再生中の楽曲データへの効果を切り替えるボタンであり、操作者がパッドを押すと、再生中の楽曲データに対して、瞬間的にループ、キュー、キーシフト、サンプラー等の効果を付与することができる。
キューボタン424は、再生する楽曲の頭出しを行うボタンである。
プレイ/ポーズボタン425は、楽曲データの再生開始、再生中の楽曲データのポーズを行うボタンである。ループボタン426は、再生中の楽曲データのループ再生を行うボタンである。
【0015】
デッキセレクトボタン427は、ミキサー部41の第1チャンネル調整部411から第4チャンネル調整部414のうち、どのチャンネルで再生中の楽曲データを操作するかを選択するボタンである。本実施の形態では、左側のデッキ部42Lで第1チャンネル調整部411と第3チャンネル調整部413との切り替えを行い、右側のデッキ部42Rで第2チャンネル調整部412と第4チャンネル調整部414との切り替えを行うことができる。
キュー/ループコールスイッチ429は、メモリされたキューポイントを呼び出すスイッチである。
【0016】
ロードボタン428は、コンピュータ2から楽曲データをロードするボタンであり、コンピュータ2上で再生する楽曲データが選択された後、このロードボタン428を押すと、楽曲データが第1チャンネル調整部411から第4チャンネル調整部414のいずれかのチャンネルにロードされる。
【0017】
[2]表示部43の表示態様
このようなDJコントローラ4のデッキ部42L、42Rには、それぞれ表示部43が設けられている。表示部43は、ジョグダイヤル421の回転中心に配置される。
表示部43は、液晶表示装置から構成され、バックライト、液晶パネル、およびカラーフィルタが積層された構造を備えている。
表示部43には、図2に示すように、再生中の楽曲データに関する情報が表示される。具体的には、表示部43には、再生中の楽曲データのBPM画像(Beats Per Minute)G1、再生中の楽曲データの経過時間画像G2、再生中の楽曲データの進行状況に関する画像G3、楽曲データが持つジャケット画像G4等が表示される。
【0018】
また、表示部43には、回転表示画像G5が表示され、楽曲データの再生中、LPレコードの回転数33RPMと同様の速度で回転し、ジョグダイヤル421を操作すると、操作量に応じて回転表示画像G5も追従して表示位置が移動する。さらに、表示部43には、マーカー画像G6が表示され、操作者がマーカー画像G6の位置を適宜の位置に設定することにより、キューポイント等の位置を視認できるようになっている。
本実施の形態では、再生中の楽曲データの進行状況に関する画像の下には、再生する楽曲データの現在の再生位置を基準として、楽曲データのプラス方向およびマイナス方向に、拍数の差分数値の目盛を表示する拍位置表示画像G7が表示される。
【0019】
このような表示部43の表示態様は、図3に示す機能ブロック図に示す、DJコントローラ4内のコントローラ44によって表示される。
コントローラ44は、音響機器用プログラムを構成する、拍位置取得部441、拍位置表示部442、キューポイント表示部443、および画像重畳部444を備える。
拍位置取得部441は、コンピュータ2で再生される楽曲データ中の拍位置を取得する。拍位置の取得は、コンピュータ2のCPU上で実行されるアプリケーションソフトウェアにより解析された解析結果を取得してもよいし、拍位置取得部441が、入力された楽曲データを解析して、拍位置を取得してもよい。
【0020】
拍位置表示部442は、表示部43上に表示させる拍位置表示画像G7を生成する。具体的には、拍位置表示部442は、図4に示すように、横線画像G71に目盛を打った画像を生成し、横線画像G71に長い縦線画像G72を重畳させる。
縦線画像G72の位置は、楽曲データの現在の再生位置として基準表示され、横線画像G71の下に、縦線画像G72の現在位置を0として、拍数、本実施の形態では小節数の差分数値の目盛画像G73が表示される。具体的には、本実施の形態では、拍位置表示部442は、現在再生位置に対して、マイナス方向に4小節分の数値の目盛、プラス方向に16小節分の数値の目盛画像G73を表示する。
また、拍位置表示部442は、拍位置画像G74を目盛画像G73上に重畳して表示する。
【0021】
キューポイント表示部443は、再生中の楽曲データの任意の時間的位置を登録したキューポイントを、目盛画像G73上に重畳して表示する。キューポイント表示部443は、2種類のキューポイントを区別して表示する。
具体的には、ホットキューポイントおよびメモリキューポイントであり、ホットキューポイントは、楽曲データの再生開始の時間位置を登録した再生開始時間位置である。メモリキューポイントは、楽曲データの検索された時間位置を登録した検索時間位置である。ホットキューポイントは、ホットキューがパフォーマンスパッド423によって呼び出されると、ただちにそこから再生開始位置にジャンプして楽曲データが再生される。一方、メモリキューポイントは、検索位置として記憶されており、キュー/ループコールスイッチ429によって呼び出されると、再生開始位置にジャンプして再生が止まり、操作者がプレイ/ポーズボタン425を押すことにより、再生が開始される。
【0022】
キューポイント表示部443は、図4に示すように、拍位置表示部442によって表示された拍位置表示画像G7の上部にホットキューポイント画像G75、メモリキューポイント画像G76を重畳させて表示する。なお、ホットキューポイントおよびメモリキューポイントが重なる位置となった場合、キューポイント表示部443は、ホットキューポイント画像G75を最前面に表示させ、その背面にメモリキューポイント画像G76を表示する。
【0023】
画像重畳部444は、拍位置表示部442によって生成された拍位置表示画像G7、およびキューポイント表示部443によって生成されたホットキューポイント画像G75、メモリキューポイント画像G76の他、前述したBPM画像G1、楽曲データの経過時間画像G2、楽曲データの進行状況に関する画像G3、回転表示画像G5、およびマーカー画像G6を重畳させて、表示部43上に表示する。
【0024】
[3]実施の形態の作用および効果
このような本実施の形態では、図4に示すように、拍位置表示画像G7および目盛画像G73は、表示部43の一定位置に固定表示される。楽曲データの進行により、拍位置画像G74、ホットキューポイント画像G75、およびメモリキューポイント画像G76は、楽曲の進行とともに、左側に移動していく。
【0025】
これにより、簡素な拍位置表示画像G7上で現在の楽曲データの再生位置と、その前後の拍位置を操作者が視認できるため、操作者に再生中の楽曲の進行状況を視認し易くすることができる。
また、拍位置表示画像G7が、プラス方向のみならず、マイナス方向の拍位置を表示するように構成されているので、DJコントローラ4のスクラッチ動作のような、逆転再生においても、拍位置表示画像G7で既に再生されたキューポイント等を確認しながら、DJパフォーマンスを行うことができ、DJコントローラ4の操作性を向上することができる。
【0026】
拍位置表示画像G7上にキューポイント画像G75、G76が重畳表示されているため、楽曲データの再生位置に応じて、どの位置にキューポイントが設定されているかが、視認し易くなるため、操作者に楽曲データのキューポイント位置を認識しやすくすることができ、操作性の向上を図ることができる。
拍数の差分数値の目盛画像G73が、小節単位で表示されるため、長い小節数を短い長さで表示することができ、操作者の視認性が一層向上する。
【0027】
[4]実施の形態の変形
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、以下のような変形をも含むものである。
前述した実施の形態に係る拍位置表示画像G7は、目盛画像G73が、小節単位の数値として表示されていたが、本発明は、これに限られない。たとえば、拍位置表示画像G7における目盛画像を、拍数とし、差分数値の目盛画像を、-16拍、0拍、16拍、32拍、48拍、64拍のように表示してもよい。
【0028】
また、前述した拍位置表示画像G7は、マイナス方向に4小節、プラス方向に16小節の拍位置が表示されていたが、本発明は、これに限られない。たとえば、マイナス方向に8小節、プラス方向に8小節の拍位置を表示してもよく、プラス方向、マイナス方向の拍位置の表示は適宜の拍位置に設定してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…楽曲データ再生制御システム、2…コンピュータ、3…USBケーブル、4…DJコントローラ、41…ミキサー部、41E…エフェクト部、42L…デッキ部、42R…デッキ部、43…表示部、44…コントローラ、411…第1チャンネル調整部、412…第2チャンネル調整部、413…第3チャンネル調整部、414…第4チャンネル調整部、415…マイク調整部、416…エフェクト選択スイッチ、417…チャンネル選択スイッチ、418…エフェクト量調整スイッチ、419…エフェクト付与スイッチ、421…ジョグダイヤル、422…テンポスライダー、423…パフォーマンスパッド、424…キューボタン、425…プレイ/ポーズボタン、426…ループボタン、427…デッキセレクトボタン、428…ロードボタン、429…キュー/ループコールスイッチ、441…拍位置取得部、442…拍位置表示部、443…キューポイント表示部、444…画像重畳部、G1…BPM画像、G2…経過時間画像、G3…画像、G4…ジャケット画像、G5…回転表示画像、G6…マーカー画像、G7…拍位置表示画像、G71…横線画像、G72…縦線画像、G73…目盛画像、G74…拍位置画像、G75…ホットキューポイント画像、G76…メモリキューポイント画像。
図1
図2
図3
図4