(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】オートコールシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
H04M 3/432 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
H04M3/432
(21)【出願番号】P 2020113852
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2017092600の分割
【原出願日】2016-07-13
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】396015541
【氏名又は名称】富士フイルムデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】小柳 仁
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216411(JP,A)
【文献】特開2000-305583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/432
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクライアントとネットワークを介して接続するオートコールシステムのオートコール方法であって、
クライアントの指定する言語、またはクライアントの作成するオートコール情報に含まれる言語情報
であって、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データとは異なる言語情報に応じて、日本語用の第1音声合成処理と、外国語用の第2音声合成処理いずれか一方の処理を実行することにより、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを音声データに変換し、
生成された音声データに基づき、オートコール対象者と自動音声による通話を行う
ことを特徴とするオートコール方法。
【請求項2】
通話中のオートコール対象者からの応答に応じて、第1音声合成処理と第2音声合成処理との間で音声合成処理を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のオートコール方法。
【請求項3】
複数のクライアントとネットワークを介して接続し、
呼制御部と、
オートコール制御部と、
自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを、日本語用の音声データに変換する第1音声合成処理と、
自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを、外国語用の音声データに変換する第2音声合成処理とを備え、
クライアントの指定する言語、またはクライアントの作成するオートコール情報に含まれる言語情報であって、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データとは異なる言語情報に応じて、前記第1音声合成処理と前記第2音声合成処理のいずれかを実行することを特徴とするオートコールシステム。
【請求項4】
日本語用の自動音声の内容を記したテキストを作成する画面と、外国語用の自動音声の内容を記したテキストを作成する画面のいずれか一方が、クライアントによって設定されることにより、クライアントによって言語が指定されることを特徴とする請求項
1に記載のオートコール
方法。
【請求項5】
複数のクライアントとネットワークを介して接続するオートコールシステムにおいて、
クライアントの指定する言語、またはクライアントの作成するオートコール情報に含まれる言語情報
であって、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データとは異なる言語情報に応じて、オートコールの言語を設定するステップと、
オートコールを行うとき、日本語用の第1音声合成処理と、外国語用の第2音声合成処理のうち設定された言語の音声合成処理を実行することにより、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを音声データに変換するステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートコールシステムに関し、特に、サーバを介して自動メッセージを対象者に送信するサーバアクセス型オートコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声・電話サービス業務では、未入金者などに対するリマインド、予約状況の顧客への確認、宅配業者の配達事前案内などを、自動音声によって通知するオートコールシステムが採用している(非特許文献1参照)。そこでは、クライアントが、電話対象者のリスト、オートコールの実行日時、自動音声による通知内容を記した文書などのデータをインターネット経由でサーバに送信する。
【0003】
IVR(Interactive Voice Response)機能、TTS(Text to Speech)機能、SIP(Session Interaction Protocol)機能などを備えたサーバでは、通知文書を音声合成処理によって音声データに変換するとともに、公衆電話網(PSTN)あるいはIP網を通じて対象者の電話機に発信(発呼)する。対象者が電話をとることで接続(通話)状態になると、合成音声で対象者に自動音声案内を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】三菱電機情報誌「MELTOPIA」2015年12月号(No.212)Customer Report導入事例 "KDDIクラウドオートコール導入事例"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オートコールの対象者の中には、日本語でのコミュニケーションが難しい対象者が含まれる場合もある。
【0006】
したがって、日本語音声案内の聞き取りが難しい対象者(外国人など)に対しても、メッセージを通知することができるオートコールシステムおよびその方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオートコールシステムにおけるオートコール方法は、複数のクライアントとネットワークを介して接続するオートコールシステムのオートコール方法であって、クライアントの指定する言語、またはクライアントの作成するオートコール情報に含まれる言語情報に応じて、日本語用の第1音声合成処理と、外国語用の第2音声合成処理いずれか一方の処理を実行することにより、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを音声データに変換し、生成された音声データに基づき、オートコール対象者と自動音声による通話を行うことにより、日本語音声案内の聞き取りが難しい対象者(外国人など)に対してもメッセージを通知することができる。一人のオートコール対象者に対して一方の言語による音声合成処理を実行してもよく、あるいは、途中で指定言語を切り替え、選択するように構成してもよい。
【0008】
また、本発明の一態様であるオートコールシステムは、呼制御部と、オートコール制御部とを備えたオートコールシステムにおいて、日本語用の第1音声合成処理と、外国語用の第2音声合成処理いずれかを実行するシステムを構築可能であり、オートコールのとき、オートコール対象者に応じて、いずれか一方の音声合成処理を実行する。例えば、日本語用の呼制御部と外国語用の呼制御部を備える。あるいは、1つの呼制御部にそれぞれ異なる言語の音声合成処理エンジンを搭載することも可能である。
【0009】
このようなオートコール方法、オートコールシステムは、クライアントと閉域網で接続してオートコール情報の送信、発信などを行ってもよく、あるいはオートコールシステム側を主体としてオートコール情報の入力、発信を行うようにしてもよい。オートコールシステムの構成、クライアントからのオートコール情報のやりとり、クライアントとの接続構成、電話発信の構成などは任意であり、上述した複数の電場番号を選択するようにしてもよい。
【0010】
クライアントの指定言語は、クライアントの作成するオートコール情報に言語情報を含めてもよく、あるいは、オートコール予約画面などクライアント作成時の様式を言語ごとに用意し、それをクライアントの指定言語とみなすこともできる。また、オートコールシステム側で自動的に言語を判断できるようにしてもよい。例えば、オートコール対象者の戸籍情報(戸籍をもつか否か)住民データなどに基づいて、選択することができる。
【0011】
対象者との通話中、オートコール対象者からの応答に応じて、第1音声合成処理と第2音声合成処理とを切り替えるようにしてもよい。例えば、本人確認などで対象者から応答(トーン信号など)があった場合、切り替えるように構成することが可能である。この場合、日本語、外国語用の呼制御部を切り替え、あるいは、音声合成処理エンジン(ソフトウェア)を切り替えてもよい。
【0012】
本発明の一態様であるプログラムは、複数のクライアントとネットワークを介して接続するオートコールシステムにおいて、クライアントの指定する言語、またはクライアントの作成するオートコール情報に含まれる言語情報に応じて、オートコールの言語を設定するステップと、オートコールを行うとき、日本語用の第1音声合成処理と、外国語用の第2音声合成処理のうち設定された言語の音声合成処理を実行することにより、自動音声の内容を記したテキストに応じた文書データを音声データに変換するステップとを実行させる。
【0013】
例えばオートコールシステムのオートコール方法は、オートコール指定日時になると、対象者の電話番号のデータおよび発呼に関するデータを、オートコールを指示するクライアント(以下、オートコール指示クライアントという)が指定する音声通信装置へ送信する。これによって、公衆電話網もしくはIP網と接続する音声通信装置から、上記電話番号に該当する(電話番号が割り当てられた)電話機(ここでは、対象者電話機という)に対して発呼が行われる。そして、対象者電話機との間で通話状態になると、自動音声通話データを音声通信装置へ送信する。これによって、音声通信装置から対象者との自動音声通話が行われる。音声通信装置は、音声ゲートウェイで構成することが可能である。
【0014】
これにより、対象者電話機と同じエリアコードをもつ音声通信装置から発信することができ、対象者が通話拒否することなくクライアントのメッセージを通知することができる。例えば音声通信装置は、オートコール指示クライアントの属するエリアコード(市外局番)をもち、公衆電話網もしくはIP網と接続する音声通信装置で構成される。
【0015】
音声通信装置は、オートコール指示クライアントの属するエリアコードの電話番号をもつことが可能であり、あるいは、音声通信装置は、オートコール指示クライアントの属するエリアコードとは異なる他のエリアコードの電話番号をもつことが可能である。
【0016】
例えばオートコールシステムは、オートコール指示クライアントを含む複数のクライアントとネットワークを介して接続することが可能であり、閉域網によって複数のクライアントと接続することができる。そして、オートコール指示クライアントに従属していてオートコール指示クライアントが指定する従属クライアントに対して、上記電話番号のデータおよび発呼のデータを送信することができる。これによって、従属クライアントの属する従属エリアコードをもち、公衆電話網もしくはIP網と接続する音声通信装置からその従属エリアコードをもつ上記電話番号に該当する対象者電話機に対して発呼が行われる。
【0017】
また、音声通信装置が、複数の発信者電話番号を所有することが可能である。例えば、オートコール指示クライアントの選択する発信者電話番号のデータを音声通信装置へ送信することができる。これによって、オートコール指示クライアントの選択する発信者番号で対象者電話機に対して発呼が行われる。
【0018】
対象者電話機との間で通話状態になると、音声合成処理によって自動音声の文書のデータを音声データに変換し、音声通信装置へ送信することができる。音声合成処理はその言語によって処理内容が異なることから、オートコール指示クライアントの指定する言語に応じて、日本語用の音声合成処理もしくは外国語用の音声合成処理を実行すればよい。クライアントの指定言語は、オートコール指示時の言語様式(サイトの違いなど)の違い、オートコール情報に含まれる言語情報などによって判断することができる。あるいは、対象者電話機との間で通話状態になると、収録音声のデータを音声通信装置へ送信することもできる。
【0019】
例えば、オートコールシステムは、呼制御部と、呼制御部を制御して発呼および通話させるオートコール制御部とを備え、呼制御部が、オートコール指定日時になると、対象者の電話番号のデータおよび発呼に関するデータを、オートコール指示クライアントが指定する音声通信装置へ送信する。これによって、公衆電話網もしくはIP網と接続する音声通信装置から、上記電話番号に該当する対象者電話機に対して発呼が行われる。そして、呼制御部は、対象者電話機との間で通話状態になると、自動音声通話データを音声通信装置へ送信する。これによって、音声通信装置から対象者との自動音声通話が行われる。
【0020】
例えば、オートコールシステムのプログラムは、オートコールシステムにおいて、オートコール指定日時になると、公衆電話網もしくはIP網と接続する音声通信装置から、上記電話番号に該当する対象者電話機に対して発呼が行われるように、対象者の電話番号のデータおよび発呼に関するデータを、オートコール指示を行ったクライアントが指定する音声通信装置へ送信するステップと、対象者電話機との間で通話状態になると、音声通信装置から対象者との自動音声通話が行われるように、自動音声通話データを音声通信装置へ送信するステップとを実行させる。
【0021】
自動音声の内容を記した文書データを音声合成処理によって合成音声に変換してもよく、あるいは収録音声、もしくは合成音声と収録音声の組合せであってもよい。また、複数のクライアントと閉域網によってオートコールシステムを接続させ、オートコール情報などのデータの相互通信を行ってもよく、あるいは、オートコールシステム側でオートコール情報の作成などを行ってもよい。例えば、クライアントから対象者電話機の電話番号、自動音声の文書をシステム側で直接受ける、あるいはネットワークを通じて受信することで、システム側が保有するあるいは利用する電話通信網を通じて、指定日時に対象者へ一斉発信することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によれば、オートコールシステムおよびその方法において、日本語音声案内の聞き取りが難しい対象者(外国人など)に対してもメッセージを通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】オートコールシステムとクライアントとを含むオートコールネットワークシステムの構成を示した図である。
【
図2】オートコールシステムおよびクライアントのブロック図である。
【
図3】オートコールシステム、クライアントおよび対象者との間のオートコール実行時のデータ通信を示した図である。
【
図4】クライアントのセクションに配置されたPCにおいて行われるオートコール予約設定のフローチャートである。
【
図5】オートコールサーバにおいて実行されるオートコール制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本実施形態であるオートコールシステムについて説明する。
【0025】
図1は、オートコールシステムとクライアントとを含むオートコールネットワークシステムの構成を示した図である。
【0026】
オートコールシステム10は、オートコールサーバ20、呼制御サーバ30を備え、複数のクライアント100、200、300、・・とネットワークを介して接続されている。ここでは、複数のクライアントは行政主体となるクライアントであり、具体的には、市役所、町役場など市町村自治体がクライアントして構成される。
【0027】
クライアント100は、ルータ120、ゲートウェイ140、パーソナルコンピュータ(PC)160を備え、閉域網の1つであるVPN(Virtual Private Network)によってオートコールシステム10と接続されている。すなわち、クライアント100は、PC160との間でオートコールシステム10と相互通信可能である。他のクライアントも同様に、VPNでオートコールシステム10と接続されている。
【0028】
市町村などの地方自治体である複数のクライアント100、200、300、・・・は、それぞれ異なるエリアコード(市外局番)が割り当てられた地域に所在する。ここでは便宜上、クライアント100のエリアコードを「00」、クライアント200のエリアコードを「01」、クライアントのエリアコードを「02」としている。一方、クライアント100’は、クライアント100が電話発信場所として指定するクライアントであり、ルータ120’、ゲートウェイ140’を備える。
【0029】
オートコールシステム10は、オートコールサービスを各クライアントに対して提供することが可能である。具体的には、税金など公租公課の未納者、健康診断対象者といった人々に対し、指定した日時に一斉に電話発信し、自動音声でその内容を通知することができる。各クライアントは、自動音声の内容が書き込まれた文書データ、オートコール対象者の電話番号、オートコール実行日時などが含まれる情報(オートコール情報)を事前に作成し、オートコールシステム10へ送信する。
【0030】
図2は、オートコールシステム10およびクライアント100のブロック図である。なお、以下ではクライアント100を対象として説明するが、他のクライアントも同様の構成となっている。
【0031】
オートコールシステム10は、オートコールサーバ20、呼制御サーバ30とともに、スイッチ回路40、ルータ50を備える。電源62から電源供給されるオートコールサーバ20は、呼制御サーバ30を制御し、所定のタイミングによる電話発信、自動音声通話の指示を行う。呼制御サーバ30は、日本語自動音声対応の第1呼制御サーバ30Aと、外国語(ここでは英語)自動音声対応の第2呼制御サーバ30Bとを備える。オートコール実行に関するプログラムは、あらかじめメモリ(図示せず)に記録されている。
【0032】
電源64から電源供給される第1呼制御サーバ30A、第2呼制御サーバ30Bは、音声合成処理によって合成音声を生成するとともに、制御信号(シグナル)のやり取り(シグナリング)を行い、発呼、着呼、回線接続や切断など対象者と自動音声による通話を行うための制御を行う。
【0033】
スイッチ回路40は、ルータ50を介してクライアント100から送られてくるデータを、オートコールサーバ20、もしくは第1、第2呼制御部サーバ30A、30Bへ送信する。第1、第2呼制御サーバ30A、30Bから出力されるシグナルは、端末装置であるONU60を経由してシステム外部に出力される。
【0034】
オートコールシステム10は、上述したように第3者に干渉されない専用ネットワークとして機能するPVNによってクライアント100と接続されており、クライアント100のルータ120がオートコールシステム10において特定されている。また、IPsec方式に従って暗号化によるパケット通信が行われる。
【0035】
クライアント100のルータ120は、端末装置110を経由してオートコールシステム10からのデータを受信し、パーソナルコンピュータ(PC)150、ゲートウェイ140などへデータを振り分ける。公衆電話網(PSTN)と接続され、音声通信装置として機能するゲートウェイ140は、呼制御サーバ30から送られてきた発信(以下、発呼ともいう)に関するデータ(シグナル)および音声データを、PSTNに応じたデータに変換することを行う。対象者の電話機に向けての発呼、対象者との自動音声通話は、オートコールシステム10の呼制御サーバ30からクライアント100へ送られてくる発呼に関するデータ、自動音声通話データに基づいてそれぞれ行われる。
【0036】
クライアント100では、セクション100A、セクション100Bにおいて異なる業務が行われる。例えば、セクション100Aは健康保険料徴収課、セクション100Bは健康支援課に該当する。セクション100Bは、セクション100Aと同様にパーソナルコンピュータ(PC)150を備える。
【0037】
クライアント100は、エリアコード01に属する場所に立地しており、これに応じてゲートウェイ140には、エリアコード01を先頭に含む電話番号が割り当てられている。また、ゲートウェイ140は複数の電話番号を所有し、発信者の電話番号を切り替えて電話発信させることが可能である。クライアントに選択、あるいは指定された電話番号を発信者電話番号として発信することにより、対象者の電話機に、その発信者電話番号が着信(着呼)すると表示される。ここでは、セクション100A、100Bが異なる電話番号で発信するように構成されている。
【0038】
クライアント100’は、クライアント100に従属するクライアントであり、端末装置110’を通じて呼制御サーバ30からの発信、自動音声通話に関するデータを受信する。そして、ゲートウェイ140’は、PSTNを通じて発信、自動音声通話が可能である。
【0039】
図3は、オートコールシステム10、クライアント100、電話対象者との間のオートコール実行時のデータ通信を示した図である。なお、他のクライアントにおいても、同様のデータ通信が行われる。
【0040】
クライアント100では、クライアント100の住民に関する健康保険徴収、健康診断などの情報がデータ管理システム190に保存されており、データ管理システム190は、外部の不特定者がアクセス可能なネットワークに接続されていない。また、クライアント100のセクション100A、セクション100Bに設置されたコンピュータ160、150も、データ管理システム190と接続されていない。
【0041】
クライアント100のセクション100Aに属するオペレータは、オートコール情報を、PC160を用いて作成する。オペレータは、滞納者リストなどオートコール対象者の宛先などが記録された携帯型メモリDMをPC160に取り込み、そのデータを読み出す。携帯型メモリDMには、データ管理システム190において保存されているデータが記録されている。
【0042】
オペレータは、オートコール指示内容を入力操作する画面(サイト)を開き、オートコール実行日時を指定し、また、自動音声用シナリオ(スクリプト)の文書を入力する。さらに、電話発信するときの発信電話番号を指定、選択する。これらの内容を含むオートコール情報のデータを、例えばCSVファイルとして作成し、オートコールシステム10へアップロードする。このようなクライアント側で作成されるオートコール情報は、セクション100Bでも作成可能である。
【0043】
オートコールシステム10は、オートコール指定日時に従い、発呼に関するデータをクライアント100に向けて送信する。ゲートウェイ140は、公衆電話網(PSTN)を通じて、オートコールの対象者(滞納者など)に対して順次発信していく。このとき、ゲートウェイ140は、オートコールを実行するセクションの電話番号によって発信する。なお、IP網とゲートウェイ140を接続するようにしてもよい。
【0044】
対象者の電話機A1が着呼(着信)状態になって対象者が電話をとると、オートコールシステム10から送られてくる合成音声データに基づいて自動音声通話が行われる。電話機A1による自動音声通話が終了すると、次の電話機A2に対して発信、通話する。なお、対象者の電話機A1、A2は、固定電話、携帯電話いずれであってもよい。
【0045】
このように対象者へ自動音声による電話をかけるとき、クライアント100に設置されたゲートウェイ140から発信されるため、対象電話機A1、A2のディスプレイには、エリアコード01で始まる電話番号が表示される。
【0046】
ところで、クライアント100が地方自治体などの行政システムの場合、オートコールを受ける対象者は、税金などの公租公課の未納者、健康診断予定者など様々であるが、いずれも行政サービスを受ける人に限定される。すなわち、そのクライアント100の管轄地域に居住する人が、オートコール対象者となる。したがって、オートコール対象者は、クライアント100の電話番号の表示を自身の電話機で見たとき、同じ自治体あるいはエリアコードが同一である近隣自治体からの電話であると認識する。
【0047】
一般的に人は、見慣れないエリアコードの番号から始まる電話番号の相手から電話がかかってきた場合、通話状態にする(接続する)のを躊躇する。なぜなら、自身と関係性の薄い相手(サービス業者からの案内)、間違い電話であると判断するからである。特に、特殊詐欺など悪質な電話に対する警戒心から、通話拒否されやすい。
【0048】
一方、自分の居住する自治体と同じエリアコード番号から始まる電話番号が表示された場合、仮にクライアント100の電話番号である(市役所からの電話である)と認識しなくても、日常生活において自身と関係性のあるもの(例えば美容院、図書館などの行政サービス)からの電話と推測し、接続状態にして通話することにそれほど障害がない。
【0049】
したがって、クライアント100のゲートウェイ140から電話発信した場合、対象者電話機A1で着呼状態になると、対象者はその電話を受けて通話状態に進み、これによって合成音声による自動音声通話が開始される。その結果、対象者はクライアント100からのメッセージを確認することになる。
【0050】
一方、対象者の中には、クライアント100からの電話を受けると、詳細な内容確認などクライアント100へ電話をかける者も存在する。上述したように、オートコールを実行するセクションの電話番号で発信するため、そのセクションの担当者に直接電話が繋がる。
【0051】
さらに、クライアント100は、ゲートウェイ140’を有するクライアント100’を指定して電話発信することが可能である。例えば、クライアント100が2つの隣接する市の合併によって誕生した場合、旧市に割り当てられたエリアコードがそのまま存続する。クライアント100は、オートコール情報にゲートウェイ140’からの発信に関する指示データを含ませることにより、ゲートウェイ140’から電話を発信させることができる。また、クライアント100が政令指定都市である場合、市内の各区にエリアコードが割り当てられていることもある。このような場合でも、対象者の居住する地域のエリアコードの電話番号をもつクライアントが所有するゲートウェイから発信させることができる。
【0052】
例えば、エリアコード「10」の旧市に居住する対象者に対してオートコールを行う場合、居住していなかったもう一方の旧市のエリアコード「00」よりも、居住していた旧市のエリアコード「10」に馴染みがある。したがって、エリアコード「10」に応じたエリアに居住している対象者に対しては、ゲートウェイ140’から電話発信させることで、通話状態になることが実現しやすくなる。
【0053】
図4は、クライアント100のセクション100Aに配置されたPC160において行われるオートコール予約設定処理のフローチャートである。セクション100Aのオペレータは、オートコールシステム10の提供するオートコール予約サイトにおいて入力操作を行う。セクション100BのPC150においても、同様の予約設定処理が可能である。
【0054】
オートコール予約の設定画面では、自動音声のシナリオ(スクリプト)を入力する画面表示になっており、イントロガイダンス、エンディングガイダンス、質問ガイダンスなどを入力するための枠が表示される。オペレータは、それらのガイダンス枠に通知内容の文書を書き込む。例えば、イントロガイダンスでは、「こちらは、・・・市役所です。・・・」などと入力する。
【0055】
その続きには、本人確認のためのシナリオを記入するイントロガイダンス枠も設けられており、「ご本人の場合には、電話機の※(コメ)ボタンと「1」を押してください。そうでない方は、電話をお切りください。・・・」といった文書を書き込むことができる。また、オペレータは、オートコールを実行する日時(例えば、休日の午前中の時間帯)を画面上において指定するとともに、ゲートウェイ140で発信可能な複数の電話番号の中から自身のセクションに該当する電話番号を指定する。さらに、クライアント100’からの発信を行う場合、発信対象機器となるゲートウェイを選択する操作を行う。オペレータは、これら文書入力、日時指定、発信者電話番号の指定など必要な入力操作を行う。
【0056】
一方で、オートコール予約設定時には、日本語でのコミュニケーションが難しい対象者に対してもオートコールを実施できるように構成されている。例えば、クライアント100の管轄エリアにビジネス目的で外国人が長期在住している場合(住民登録を行っている場合)、文書で通知しても読解できないためオートコールを利用することが望ましいが、日本語による自動音声メッセージを発信しても、そのスピーチを理解することができない。そのような対象者に対しては、外国語(英語)による自動音声通話を行う。
【0057】
ところで、PC160の入力部(キーボード)では、当然にアルファベットを入力可能であるため、日本語用のオートコール予約設定画面においても、英文シナリオ文書を作成することができる。しかしながら、日本語用の音声合成処理によって得られる合成音声は、あくまでも日本人特有の発音、イントネーションに基づいた合成音声であるため、ネイティブである外国人にはその合成音声を聞いても内容理解が難しい。例えば、日本語用設定画面で、アルファベット「Water」を入力した場合、その音声はカタカナ表記で「ウォーター」といった発音になる。しかしながら、ネイティブの発音はカタカナ表記で「ワーラー」に近い。
【0058】
すなわち、日本語用の音声合成処理機能をもつ第1呼制御サーバ30Aを用いて英語による自動音声を行っても、日本人らしい(ネイティブにはリスニングできない)発音、イントネーションの合成音声に変換されてしまう。したがって、日本語スピーチを理解できないような対象者に対しては、外国語用の音声処理機能を備えた第2呼制御サーバ30Bに基づいて英語の自動音声を行う必要がある。
【0059】
PC160では、日本語入力用の画面を表示するサイトと、英語入力用の画面を表示するサイトを切り替えて表示することが可能である。英語画面表示の場合、イントロガイダンス枠に対し、「This is the City Hall of ・・」などと英語入力を行う。オペレータは、対象者に応じて入力画面を切り替える。ここでは、英語による自動音声を発信する対象者と、日本語による自動音声を発信する対象者それぞれの宛先リストが別々に携帯型メモリDMに記録されており、オペレータは、宛先リストデータの種類に基づいて入力画面を切り替える。
【0060】
オペレータが指定する言語のオートコール予約設定画面が表示されると(S101~S104)、オペレータはシナリオ文書の入力操作などを行う。そして、予約実行操作が行われると(S105)、リストデータ、シナリオの文書データ、オートコール指定日時、発信者電話番号などに関するオートコール情報のデータが、アップロードされる。また、それと同時に予約終了の画面がPC160において表示される(S106)。
【0061】
図5は、オートコールサーバ20において実行されるオートコール制御処理のフローチャートである。
【0062】
クライアントからオートコール情報を受信すると、指定言語に応じた呼制御サーバによるオートコールの実行が設定され、スタンバイ状態となる(S201~S204)。すなわち、日本語対応の第1呼制御サーバ30A、外国語対応の第2呼制御サーバ30Bのうち、入力操作の行われた予約設定画面に対応する言語の呼制御サーバによるオートコールが設定される。
【0063】
オートコール指定日時になると(S205)、指定言語に応じた呼制御サーバは、宛先リストの先頭対象者の電話番号のデータと、発信に関するデータを、クライアント100へ送信する(S206)。ゲートウェイ140では、対象者の電話番号データに基づき、オペレータによって指定された発信者電話番号によって対象者電話機に向けて発信する(シグナルを出力する)。なお、クライアント100’のエリアコード「10」と同じエリアコードをもつ電話番号の対象者にオートコールを実行する場合、ゲートウェイ140’のIPアドレスを指定し、電話番号のデータ、発信に関するデータなどが、クライアント100’のゲートウェイ140’へ向けて送信される。なお、ゲートウェイ140’が複数の電話番号を持つ場合、その電話番号をオートコール予約時に選択できるようにすることも可能である。
【0064】
対象者の電話機で着呼、通話状態になると(S207)、文書データを音声データに変換する音声合成処理が行われる(S208)。ここでの音声合成処理は、コーパスベース音声合成(CTTS)方式によって行われる。具体的には、音声コーパス構築技術によって音声合成時に必要となる韻律モデルと音声データベースとをあらかじめ作成し、テキストデータ(シナリオ文書データ)の解析結果から韻律モデルを用いて韻率情報を推定し、その情報に最もマッチする音素波形の組を音声データベースから選択して合成音を得る。これにより、人と同じ肉声感のある表現豊かな音声によって自動スピーチを行うことができる。
【0065】
通話が終了すると、そのときの呼出し時間、通話時間、切断理由(通話切断、無応答など)といったオートコール実行結果のデータがオートコールサーバ20において収集、記録される(S210)。また、対象者の応答操作によって送られてくるトーン信号に含まれる確認情報(納付書紛失、口座振替希望など)も合わせて収集される。
【0066】
一人の対象者に対して電話が終了すると、次の対象者に向けて電話が発信される。宛先リストの対象者すべてに対する電話が終了するまで、ステップS206~S209が繰り返される。なお、一定時間発信しても対象者が応答しない場合、強制的に電話切断し、次の対象者に向けて電話発信する。
【0067】
すべての対象者に向けたオートコール終了後、オペレータは、クライアント100からオートコール実行結果(発信結果)情報をダウンロードすることができる。ダウンロード要求があると、オートコールシステム10では、記録したオートコール実行結果データをクライアント100に送信する。クライアントは、このデータに基づいて対象者の応答率などを分析することができる。
【0068】
このように本実施形態によれば、クライアント100とVPNによって接続するオートコールシステム10において、クライアント100からオートコール情報を受け、指定されたオートコール日時になると、宛先リストにある対象者の電話番号のデータと電話発信に関するデータとをクライアント100に送信する。クライアント100のゲートウェイ140では、オペレータの指定した電話番号が発信者電話番号となるように、対象者の電話機に発信する。対象者が電話に出て通話状態になると、音声合成処理によってシナリオの文書データを音声データに変換し、自動音声による通話を行う。
【0069】
オートコールシステム10とクライアント100との接続が閉域網であるため、全国を網羅するような大規模電話網をもつ通信事業者でなくても、第3者に情報が漏洩するのを防ぐオートコールシステムを構築することができる。一方、オートコールシステム側ではなく、クライアント100の所有する音声通信機能を備えたゲートウェイ140から発信することによって、対象者の電話機には、同じエリアコード(市外局番)の電話番号が表示され、対象者が電話に出る機会が高められる。
【0070】
特に、クライアントのセクションに応じた電話番号を発信電話番号として対象者に知らせるため、対象者が、オートコール受信後に確認事項、質問などのためにオートコール実行者であるクライアントに発信電話番号によって電話をかけると、例えば、外部の通信事業者によるサービスで担当者の机に設置された電話機に転送する機能を装備させた場合、そのオートコールを実行したセクションの担当者に直接繋がる。そのため、クライアントでは、対象者が通話者として要求する担当者をクライアント内、セクション内で探し出すといった手間を要せず、対象者も聞きたいことを担当者からすぐに聞き出すことができる。
【0071】
オートコール予約設定画面を日本語用、外国語用別々に用意するのではなく、1つの予約サイトで言語を選択するようにしてもよい。また、宛先リストを外国語用、日本語用のリストに分けなくてもよい。この場合、あらかじめ日本語、外国語用のシナリオ文書を作成してオートコール予約するとともに、宛先リスト中の名前から日本人名かそれ以外の名前であるかを自動的に判断し、オートコール実行時に対象者に該当する言語の音声合成処理を行なえばよい。例えば、戸籍情報に基づいて判断し、外国語の自動音声によってメッセージを発信することができる。
【0072】
一方、クライアントの指定した言語による自動音声メッセージを流すとき、言語を選択、指定できるようなメッセージを流し、対象者からの応答(トーン信号など)に応じて、音声合成処理を切り替えるように構成してもよい。例えば、イントロガイダンスにおいて、同じ内容の文書データに対して、日本語用の音声合成処理と、外国語用の音声合成処理とを続けて実行し、日本語と外国語の自動音声による通話を連続して行う。このとき、「・・該当する場合は、・・番号を押してください」というメッセージの番号だけを日本語と外国語とで違う番号に設定する。これにより、対象者からの応答した番号(トーン)に応じて、日本語の音声合成処理、あるいは外国語の音声合成処理による通話を行うように構成することも可能である。
【0073】
また、最初に外国語(あるいは日本語)の音声合成処理で自動音声メッセージを送り、応答に応じて日本語(あるいは外国語)の音声合成処理へ切り替えてもよい。この場合、日本語と外国語用の音声合成処理機能(エンジン)両方を備えた単一の呼制御サーバを構成することも可能である。言語の数は限定されず、中国語、韓国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語などの音声合成処理部を設けてもよい。
【0074】
本実施形態では、ゲートウェイの発信者電話番号をセクションごとに切り替える構成であるが、同じセクション内で複数の発信者電話番号を使い分けてもよい。例えば、日本人を対象者とした場合と外国人を対象者にした場合、対象者からオートコール実行後に電話がかかってくることを想定し、異なる発信者電話番号でゲートウェイから発信するようにしてもよい。これにより、対象者は、外国人担当オペレータと英語など日本語以外の言語で直接会話することが可能となる。また、複数のセクションに跨って発信者電話番号を選択、設定してもよい。
【0075】
本実施形態では、クライアントを市町村レベルの地方自治体として説明しているが、都道府県レベルの地方自治体、国に関わる公共団体、大学、高校などの学校法人、宗教法人、特殊法人といった公益団体、さらには、音声サービス業務を行う民間会社といったクライアントに対しても有効である。
【0076】
例えば、選挙の宣伝、アンケート、サービス案内などをオートオールシステムによって行う場合、特定の地域ではなく、国全体のエリアを対象にして電話発信する必要がある。この場合においても、その地域住民にとって、見慣れないエリアコードをもつ電話番号が発信者として表示された場合、接続拒否する恐れがある。したがって、各特定の地域のエリアコードをもつ電話機を使用して電話発信させるのが望ましい。
【0077】
例えば、音声サービス会社が東京在中であり、名古屋、大阪に居住する人を対象にしてオートコールを実行する場合、名古屋、大阪に設置されたゲートウェイを設置したクライアントを指定し、オートコールシステムの呼制御サーバによる呼制御によってそのクライアントから発信、通話を行なえばよい。この場合、遠隔地にあるクライアントとオートコールシステムを閉域網で接続すればよい。
【0078】
また、オートコール情報が含まれるメモリなどの媒体をクライアントから受領し、あるいはクライアントの意向を聞いてサーバ側でオートコール情報を作成し、電話発信してもよい。また、同一のメッセージ内容をすべての対象者に対して通知するような場合(選挙宣伝など)、音声合成処理で合成音声を生成するのではなく、収録音声によって自動音声案内してもよい。
【0079】
日本語の音声合成処理、外国語の音声合成処理の選択、切替については、クラウドサービスなどをクライアントが自社で操作する(ゲートウェイなどの電話機がオートコールシステム側に設定されている)オートコールシステムに対しても、適用可能である。また、ゲートウェイ以外の音声通信装置を設置することも可能であり、クライアントとの接続はPC以外のコンピュータ(ワークステーションなど)であってもよい。クラウドシステムを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 オートコールシステム
20 オートコールサーバ
30 呼制御サーバ
30A 第1呼制御サーバ
30B 第2呼制御サーバ
100 クライアント
100’ クライアント
100A セクション
100B セクション
140、140’ ゲートウェイ(音声通信装置)
150、160 PC(クライアント)