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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】外部環境に応じて変色するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20220427BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20220427BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20220427BHJP
   B60B 3/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C13/00
B60C7/00
B60B3/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020194202
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2021095120
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0165512
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519272178
【氏名又は名称】ハンクック タイヤ アンド テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】エオム ジェホ
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-158297(JP,A)
【文献】特開平08-156501(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0771685(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
B60B 1/00- 11/10
B60B 17/00- 19/14
C09J 7/00- 7/50
C09D 11/00- 13/00
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
B44C 1/16- 1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度及び/又は光によって変色する混合顔料を含むタイヤであって、
前記タイヤのトレッド(Tread)部、サイドウォール(Sidewall)部、スポーク(Spoke)部の中の一つ以上は、前記混合顔料を備える変色部を含み、
前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された二つ以上を含み、
前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された第1の顔料、第2の顔料及び第3の顔料を含み、
前記第1の顔料~前記第3の顔料は、変色の色が互いに相違し、
前記混合顔料の全重量を基準として、前記第1の顔料は25~45重量%、前記第2の顔料は25~45重量%、前記第3の顔料は25~45重量%で含むことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記変色部は、タイヤ用ゴム組成物をさらに含み、
前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中の一つ以上の本体の中で全体又は一部で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記混合顔料は、前記変色部の全重量を基準として、1.0~5.0重量%で含まれることを特徴とする、請求項に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中の一つ以上の表面に形成されており、
前記変色部は、前記混合顔料を含むインク組成物が塗布されたことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中の一つ以上の表面に形成されており、
前記変色部は、前記混合顔料を含むステッカー、フィルム、シート及びテープからなる群から選択されたいずれか一つが貼り付けられたことを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤは、空気入りタイヤ(Pneumatic tire)及び非空気入りタイヤ(Non-pneumatic tire)からなる群から選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部環境に応じて変色するタイヤに関し、より詳しくは、タイヤのトレッド(Tread)部、サイドウォール(Sidewall)部及びスポーク(Spoke)部の中の一つ以上に混合顔料を備える変色部を含むことで、タイヤの管理を容易にできるよう、外部環境の変化に応じて変色するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム系素材からなるタイヤは、路面との繰り返される摩擦によって生じた熱や外部の光などによって損傷・劣化する虞があるという問題がある。タイヤは光を容易に吸収する色であるため、熱や紫外線によってさらに脆弱になるという問題がある。
【0003】
劣化・損傷したタイヤは、走行中に破損された場合、事故を引き起こす原因となるため、タイヤの状態を予め確認してタイヤを交換することが事故を防止する上で重要である。
【0004】
一方、使用中のタイヤの他に、スペアタイヤを管理する際も、低温で管理する場合には、タイヤにクラックが生じやすく、高温で管理する場合には、タイヤが変色・変形する可能性が高く、タイヤの寿命が短くなる虞があるため、望ましい管理環境下でタイヤを管理することが求められる。
【0005】
これらの問題点を解決するために、タイヤの表面に温度変化による指示部を備えた製品は開発されているが、温度や光を感知してタイヤの様々な状態情報を即座に提示することができる技術の開発は、不十分なのが実情である。
【0006】
一般的な空気入りタイヤ(Pneumatic tire)は黒の単一色を持つため、タイヤが適用される自動車などの本体に比べては美感を引き起こす部分として認識されにくかったし、タイヤゴムの基本的な物性を満足し、タイヤの性能を維持しながらも、タイヤの色を変化させるなどの変形を加えることは容易ではなかった。
【0007】
一方、最近、単一の素材を活用した環境にやさしいタイヤとして非空気入りタイヤ(Non-pneumatic tire)が開発された。空気入りタイヤにおいて空気が詰まっていて荷重を支持し、衝撃を吸収していた部分がスポーク(Spoke)という構造的支持体に形成されることにより、ゴムの他にウレタンのようにポリマーなどの様々な素材を使用することができたし、それによって、タイヤに様々な色を採用することができるようになった。
【0008】
また、様々な素材からなる非空気入りタイヤの場合にも、外部の温度や光によって変形したり劣化したりする虞があり、それによって、運行中に重大な事故を引き起こす可能性があるので、非空気入りタイヤの状態を持続的に確認することができる技術の研究が求められるのが実情である。
【0009】
これにより、ますます多様化するユーザーのニーズと色がもたらす様々な視覚的効果をタイヤに適用するために、様々な色を持つタイヤを具現化するための技術開発が求められる状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、温度や光といった、タイヤの寿命や異常状態を引き起こす可能性のある外部環境の変化を認知することができるよう、タイヤの外部から肉眼で色変化を観察することができるようにすることで、タイヤの管理を容易にし、タイヤの損傷や劣化による事故を未然に防ぐことができるタイヤを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、色の視認性によってタイヤの状態を簡単に知ることができるようにすることにより、消費者にとって容易な管理が可能になり、タイヤの寿命を向上させることができる効果を有するタイヤを提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、タイヤの色変化によって消費者に美感を引き起こすことができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、温度及び/又は光によって変色する混合顔料を含むタイヤであって、前記タイヤのトレッド(Tread)部、サイドウォール(Sidewall)部及びスポーク(Spoke)部の中の一つ以上は、前記混合顔料を備える変色部を含み、前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された二つ以上を含むタイヤを提供する。
【0014】
本発明の一実施例において、前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された第1の顔料と第2の顔料を含み、前記第1の顔料と前記第2の顔料は、変色の色が互いに相違し、前記混合顔料の全重量を基準として、前記第1の顔料は25~75重量%、前記第2の顔料は、25~75重量%で含むことができる。
【0015】
本発明の一実施例において、前記混合顔料は、温度感応顔料、紫外線感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された第1の顔料、第2の顔料及び第3の顔料を含み、前記第1の顔料~前記第3の顔料は、変色の色が互いに相違し、前記混合顔料の全重量を基準として、前記第1の顔料は25~45重量%、前記第2の顔料は25~45重量%、前記第3の顔料は25~45重量%で含むことができる。
【0016】
好ましくは、第1の顔料~第3の顔料を27~42重量%で含み、第1の顔料~第3の顔料の合計が100重量%になるように構成することができる。
【0017】
本発明の一実施例において、前記変色部は、タイヤ用ゴム組成物をさらに含み、前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中の一つ以上の本体の中で全体又は一部で含まれてもよい。
【0018】
前記本発明の一実施例において、前記混合顔料は、前記変色部の全重量を基準として、1.0~5.0重量%で含まれてもよい。
【0019】
本発明の一実施例において、前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中のいずれか一つの表面に形成されており、前記変色部は、前記混合顔料を含むインク組成物が塗布されたものであってもよい。
【0020】
本発明の一実施例において、前記変色部は、前記トレッド部、前記サイドウォール部及び前記スポーク部の中の一つ以上の表面に形成されており、前記変色部は、前記混合顔料を含むステッカー、フィルム、シート及びテープからなる群から選択されたいずれか一つが貼り付けられたものであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、タイヤの寿命や異常状態を引き起こす可能性のある温度や光といった外部環境の変化を認知することができるよう、タイヤの外部から肉眼で色変化を観察することができるようにすることで、タイヤの管理を容易にし、タイヤの損傷や劣化による事故を未然に防ぐことができる効果を有する。
【0022】
また本発明は、外部環境の変化に応じる変色によりタイヤの状態を簡単に知ることができるようにすることにより、消費者にとって容易な管理が可能になり、タイヤの寿命を向上させることができる効果を有する。
【0023】
さらに本発明は、タイヤの色変化によって消費者に美感を引き起こすことができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】温度感応染料:紫外線感応染料:蓄光染料の混合比率が30:35:35(重量%)である混合染料を用いて作製したステッカー試験片に対する温度、紫外線、光の変化に伴う実験結果を示す模式図である。
【0025】
図2】本発明の一実施例に係るタイヤの外部の温度変化に伴う色変化を示す模式図である。
【0026】
図3】本発明の別の実施例に係るタイヤの外部の光変化に伴う色変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の各構成についてより詳しく説明するが、これは一つの例示にすぎず、本発明の権利範囲は下記の内容によって制限されるものではない。
【0028】
本発明に係る外部環境に応じて変色するタイヤは、温度及び/又は光によって変色する混合顔料を含み、前記タイヤのトレッド(Tread)部、サイドウォール(Sidewall)部及びスポーク(Spoke)部の中の一つ以上は、前記混合顔料を備える変色部を含み、前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された二つ以上を含む。
【0029】
本発明は、タイヤの損傷や劣化に最も大きな影響を与える温度、光を感知して変色することにより、即座にユーザーにタイヤの状態情報を提供することができるよう、温度、光によって変色することができる混合顔料を含む。
【0030】
前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された二つ以上を含むことにより、外部環境の温度及び/又は光の変化を肉眼で認知することができるように構成される。
【0031】
具体的には、前記温度感応顔料は、温度変化に伴って色が変わる顔料であれば、特に制限されずに使用することができる。より詳しくは、特定の温度にさらされると、変色したらそれ以上変色することなく色が維持される非可逆性(Irreversible)温度感応顔料を使用することも可能であり、特定の温度にさらされて変色した後、温度変化に伴って再び変色する可逆性(Reversible)温度感応顔料を使用することも可能である。
【0032】
好ましくは、低温と高温の両方の温度変化を全て感知して、タイヤを使用する時だけでなくタイヤを保管する時も、タイヤの状態情報を提供するように構成されることができるよう、可逆性温度感応顔料を使用することができる。
【0033】
前記温度感応顔料は、各顔料ごとに定められた温度で変色するが、本発明においては、前記温度感応顔料の変色温度が-10~60℃の範囲内であれば、特に制限されずに使用することが可能である。
【0034】
低温ではタイヤにクラックが生じる可能性が高く、高温ではタイヤが変色・変形したり、タイヤが破裂したりするなどの問題が生じる虞がある。必要に応じては、互いに異なる温度で変色する温度感応顔料を混合した混合物を使用することも可能である。
【0035】
前記温度感応顔料の変色温度範囲よりも低いか高い温度で変色する場合には、タイヤの損傷が起こり始める温度範囲よりも相当低いか高くて、タイヤの変性を効果的に防止することが難しいという問題があるので、タイヤの変色を通じてタイヤの状態情報を提供するという目的とタイヤを製造する際の経済性を踏まえて、前記範囲内の変色温度を有する温度感応顔料を使用することが好ましい。
【0036】
好ましくは、-5~20℃の範囲内の変色温度を有する低温感応顔料、20~30℃の範囲内の変色温度を有する常温感応顔料及び、30~50℃の範囲内の変色温度を有する高温感応顔料からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0037】
前記低温感応顔料は、-5~20℃の範囲内の変色温度を有するため、タイヤの外部環境が低温である場合、変色を通じて温度を感知することができる。前記常温感応顔料は、20~30℃の範囲内の変色温度を有するため、常温で変色した状態で維持されていて、外部環境が低温又は高温になる場合、本来の色や他の色に変色することにより、温度を感知することができる。ただし、この場合には、可逆性温度感応顔料であるものが好ましい。また、前記高温感応顔料は、30~50℃の範囲内の変色温度を有するため、外部環境が高温になる場合、変色を通じてこれを感知することができる。
【0038】
前記光感応顔料は、光の強さや光の波長によって変色する顔料であって、紫外線、可視光線、赤外線などの光によって変色する顔料のことを意味するが、本発明において、好ましくは、紫外線に感応して変色する紫外線感応顔料であるものが好ましい。
【0039】
これにより、太陽の光の中で、地上に到達してタイヤの損傷に最も大きく影響を与える紫外線を肉眼で簡単に感知することができるようにすることにより、タイヤの管理を容易にすることができる。
【0040】
前記光感応顔料は、前述した温度感応顔料と同様に、可逆性及び非可逆性の光感応顔料を使用することができ、好ましくは、可逆性光感応顔料を使用することができる。
【0041】
前記蓄光(Luminescence)顔料は、暗いところで発光する顔料であって、通常、夜光顔料と呼ばれる顔料のことを意味する。光に感応するよりは、光にさらされた時、エネルギーを吸収・保存して、暗い環境で光を発光する。本発明は、前記蓄光顔料を含むことにより、光が弱いか無い環境を肉眼で認知することができるようにする。
【0042】
本発明は、前記のような混合顔料を含むことにより、温度の変化や光の変化に伴うタイヤの変色を肉眼で確認して即座に、タイヤの外部環境に関する情報をユーザーに提供することができ、これにより、タイヤの損傷や機能低下を予め認識して、事故の発生を防ぐことができる効果がある。
【0043】
また、肉眼でタイヤの外部環境情報を即座に認知することにより、タイヤを適切な温度と光の環境で保管しやすくすることができる。
【0044】
本発明の一実施例において、前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料からなる群から選択された第1の顔料と第2の顔料を含むことができ、前記混合顔料の全重量を基準として、前記第1の顔料と前記第2の顔料がそれぞれ25~75重量%で含まれてもよい。
【0045】
前記第1の顔料と第2の顔料は、互いに異なる種類の顔料を意味するものであり、互いに異なる2つの種類の顔料を含む場合、タイヤの変色に伴う外部環境変化の情報を多様な形で提供することができる利点がある。特に、このような場合、第1の顔料と第2の顔料は、変色後の色が互いに相違するものが好ましい。これは、変色の色が指示する情報の混同を防止するためである。
【0046】
前記含有量よりも少なく添加される場合には、混合顔料の変色が十分に起こらないという問題があり、前記含有量よりも過量で添加される場合には、発色力対比顔料の添加量が過多であるため、タイヤの製造効率性が低下するという問題がある。
【0047】
本発明は特に、互いに異なる環境に応じて変色する第1の顔料と第2の顔料が一つの変色部を構成しながらも、変色時の発色力が優れていて、ユーザーが様々な要因の外部環境の変化を肉眼で同時に認知することができる点に発明の特徴がある。
【0048】
また、本発明の別の実施例において、前記混合顔料は、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料を全て含むことができる。互いに異なる3つの顔料は、任意に第1の顔料、第2の顔料及び第3の顔料と称することができ、前記混合顔料の全重量を基準として、前記第1の顔料~前記第3の顔料はそれぞれ25~45重量%で含まれてもよい。
【0049】
混合顔料が第1の顔料と第2の顔料を含む場合と同様に、互いに異なる3つの種類の顔料を含む場合、タイヤの変色に伴う外部環境変化の情報をより多様な形で提供することができる利点がある。同様に、各情報間の混同を防止するために、3つの顔料は変色後の色が互いに相違するものが好ましい。
【0050】
前記含有量よりも少なく添加される場合には、混合顔料の変色が十分に起こらないという問題があり、前記含有量よりも過量で添加される場合には、他の顔料の含有量が少なくなるため、他の顔料の変色時の発色力が低下するという問題がある。
【0051】
前記のように、温度感応顔料、光感応顔料及び蓄光顔料を所定の含有量で全て含むことにより、温度変化や光変化を肉眼で効果的に認知することができる利点がある。
【0052】
本発明は、ユーザーが即座にタイヤの外部環境の変化やタイヤの状態情報を肉眼で認知することができるようにして、タイヤの保管と管理を容易にすることに発明の目的があるので、ユーザーが肉眼で変色を直接確認することができるよう、タイヤのトレッド(Tread)部、サイドウォール(Sidewall)部及びスポーク(Spoke)部の中の一つ以上に前記混合顔料を備える変色部を含むように構成される。
【0053】
前記変色部は、トレッド部、サイドウォール部及びスポーク部の中の一つ以上の本体の全体又は一部で構成されてもよく、その表面に形成されてもよい。
【0054】
前記トレッド部は、路面と接触する部分であって、厚いゴム層で構成され、前記サイドウォール部は、タイヤの側面部分であって、両方ともタイヤの外部から観察される部分である。前記スポーク部は、非空気入りタイヤにおいて路面で発生する衝撃を吸収する部分である。
【0055】
本発明の前記変色部は、前記混合顔料の他に、タイヤ用ゴム組成物をさらに含み、この場合、前記変色部は、トレッド部、サイドウォール部及びスポーク部の中の一つ以上の本体の中で全体又は一部で含まれてもよい。
【0056】
前記変色部がタイヤ用ゴム組成物をさらに含む場合には、前記変色部の全重量を基準として、前記混合顔料を1.0~5.0重量%で含むことができる。
【0057】
前記含有量よりも少量で添加する場合には、外部環境の変化に伴う変色部の変色時の発色力が低下してしまい、意図した発色にならない虞があり、前記含有量よりも過量で添加する場合には、トレッドやサイドウォールに使用するのには、前記混合顔料が含まれているゴム組成物の物性が変化(特に、コンパウンドの剛性が低下)したり、スポークに使用された材料の物性が低下してしまうので、前記含有量で添加することが、意図したパフォーマンスを発現するのに適している。
【0058】
一方、トレッド部、サイドウォール部及びスポーク部の中の一つ以上の表面に変色部が形成された場合には、前記混合顔料を含むインク組成物がタイヤ表面に塗布されたり、混合顔料を含むステッカー、フィルム、シート及びテープなどが貼り付けられることにより、変色部を形成することができる。
【0059】
前述したインク組成物を用いる方法の場合、前記混合顔料を含むインク組成物を塗布することができる方法であればいかなる物性の組成物も制限されずに使用することができ、また、塗布方法も多様な使用が可能である。
【0060】
前述した接着性材料を付着させる方法の場合、前記混合顔料を含むステッカー、フィルム、シート及びテープなどを作製して、これを、トレッド部、サイドウォール部及びスポーク部の中の一つ以上に貼り付けることであってもよい。直接前記材料に接着性を有するように構成することもできるが、タイヤに貼り付ける直前に接着剤を塗布して貼り付ける方法などのように、表面に変色部を貼り付けることができる方法であれば制限されずに使用することが可能である。
【0061】
前記のように変色部がトレッド部、サイドウォール部及びスポーク部の中の一つ以上の表面に形成される場合、変色部の発色を補助するための発色補助剤を用いることができる。発色補助剤は、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、炭酸カルシウム(CaCO)などといった白色顔料からなるため、変色部の下面に塗布されることにより、変色部の色の視認性を向上させることができる役割を果たす。
【0062】
一方、本発明のタイヤは、空気入りタイヤと非空気入りタイヤの両方に適用されてもよく、より詳しくは、用途によって乗用車用タイヤ、競走用タイヤ、飛行機タイヤ、農機械用タイヤ、オフロード(Off-the-road)タイヤ、トラックタイヤ又はバスタイヤなどであってもよい。また、前記タイヤは、ラジアル(Radial)タイヤ又はバイアス(bias)タイヤであってもよい。
【0063】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例について詳しく説明するが、これは一つの例示にすぎず、本発明の権利範囲は下記の内容によって制限されるものではない。
【0064】
[製造例]
【0065】
温度感応顔料(X1、Thermochromic Pigment、変色温度:10℃、40℃、変色の色:青色(低温)、赤色(高温))、紫外線感応顔料(X2、D-S Photochromic Pigment、変色の色:黄色)及び蓄光顔料(X3、Luminescent Pigment、変色の色:緑色)を用いて、下記表1~5に従って混合顔料を製造し、製造された混合顔料を用いてステッカーを作製した。
【0066】
[実験例1:単一因子の変色確認実験]
【0067】
作製されたステッカーをタイヤに貼り付け、互いに異なる試験片に温度変化(常温→10℃→40℃)、紫外線照射(赤外線照射→紫外線照射)、光変化(点灯後消灯)を行った後、これに伴う色変化を肉眼で観察して、その結果を下記表1に図示した。
【0068】
【表1】
【0069】
[実験例2:複合因子の変色確認実験]
【0070】
実験例1と同一の条件で、各試験片について、温度変化、紫外線照射、光変化の中で、二つ以上の変化を順次に与え、これに伴う色変化を肉眼で観察して、その結果を下記表2~5に図示した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
前記表1を参照すると、各変色因子別で変色するかどうかを確認することができる。これを各実験例2の対照群と見て、色変化を確認した。
【0076】
表2~4を参照すると、X1~X3の中で2つを混合して得られた混合顔料の場合、個々の顔料の含有量が30重量%以上である場合に、弱い反応レベルであっても変色を確認することができる。これは、本実験例と同様、互いに異なる変色の色を持つ場合には、弱く変色しても、変色を引き起こす因子を肉眼で認識することが可能であることを確認することができる。
【0077】
表5を参照すると、個々の顔料の含有量が30重量%以上である場合に、温度、紫外線、光に対して全て変色反応を示すので、ユーザーが肉眼で色変化を確認することにより、さらに多様な外部環境情報を認知することができる。
【0078】
以下では、図面に基づき、本発明に係るタイヤをより詳しく説明する。ただし、これは本発明を容易に理解するための一つの実施例にすぎず、本発明の権利範囲はこれによって制限されるものではない。
【0079】
図1は、温度感応染料:紫外線感応染料:蓄光染料の混合比率が30:35:35(重量%)である混合染料を用いて作製したステッカー試験片に対する温度、紫外線、光の変化に伴う実験結果を示す模式図である。
【0080】
図1を参考にすると、混合染料を塗布した状態では、混合染料が塗布される基材の下面の色と同じ色を表示したり、必要に応じて任意に追加される染料の色を発現する。
図1では、変色の確認が容易になるよう、白色の基材の表面に混合染料を塗布して実験を行った。
【0081】
周辺の温度(ステッカーの温度)を10℃以下の常温(25℃)よりも低い温度に設定した場合、青色の色に変色が現れ、周辺の温度(ステッカーの温度)を40℃以上の高い温度に設定した場合、赤色の色に変色が現れた。
【0082】
図2は、本発明の一実施例に係るタイヤの外部の温度変化に伴う色変化を示す模式図である。
図2を参考にすると、図1で進行された外部の環境変化に伴う変色効果をタイヤに直接適用して、温度変化に伴って変色するかどうかを確認することができる。
【0083】
具体的には、常温(25℃)のタイヤは、図1で確認したように、追加の染料や基材の色による発色をそのまま維持する。外部の温度、タイヤの温度が50℃程度で上昇すると、変色部の色が黄色に変化する。
【0084】
これにより、タイヤの周辺の温度の変化をタイヤの色変化を通じて直接認識することができるようになる効果を有する。
【0085】
図3は、本発明の別の実施例に係るタイヤの外部の光(暗さ)変化に伴う色変化を示す模式図である。
【0086】
図3を参考にすると、図1で進行された外部の環境変化に伴う変色効果をタイヤに直接適用して、外部の明るさの変化に伴って変色するかどうかを確認することができる。
【0087】
具体的には、室内の明るい条件では、追加の染料や基材の色による発色をそのまま維持する。外部の環境が暗い条件に変更されると、変色部の色が夜光の緑色に変化する。
【0088】
これにより、タイヤの周辺の光の変化をタイヤの色変化を通じて直接認識することができるようになる効果を有する。
【0089】

図2及び図3を参考にすると、停車状態のタイヤと自動車の走行時に回転中のタイヤにおいても、変色部が回転しながら形成されたリングのような形で観察されて、変色するかどうか(温度変化)を確認することができる。
【0090】
ただし、前記のような変色時の色は、温度感応染料、紫外線感応染料、光感応染料の種類に応じて異なってくるもので、本発明のタイヤに適用する際、外部の変化に伴う変色を示すことができるものであれば変色の色に制限されずに使用することが可能である。
図1
図2
図3