(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/32 20060101AFI20220427BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B41J2/32 C
B41J25/304 H
(21)【出願番号】P 2020502795
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035516
(87)【国際公開番号】W WO2019167321
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2018034817
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角井 康之
(72)【発明者】
【氏名】島崎 博仁
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-334953(JP,A)
【文献】特開平09-011579(JP,A)
【文献】米国特許第08890914(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 25/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドが取り付けられるヘッドユニットと、
前記サーマルヘッドとの間で前記印字媒体を挟持するプラテンローラと、
前記サーマルヘッドを前記ヘッドユニットの取付位置に保持する第1位置と前記サーマルヘッドの前記取付位置への保持が解除される第2位置との間で移動可能な保持部と、
前記サーマルヘッドが前記プラテンローラから離れた状態で、前記保持部が
前記第2位置に位置する状態において、前記サーマルヘッドを受け止める受止部と、
を備える、プリンタ。
【請求項2】
印字媒体に印字を行うサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドが取り付けられるヘッドユニットと、
前記サーマルヘッドとの間で前記印字媒体を挟持するプラテンローラと、
前記サーマルヘッドを前記ヘッドユニットの取付位置に保持する第1位置と前記サーマルヘッドの前記取付位置への保持が解除される第2位置との間で移動可能な保持部と、
前記サーマルヘッドが前記プラテンローラから離れた状態で、前記保持部が
前記第2位置に位置する状態において、前記ヘッドユニットから離間した前記サーマルヘッドを
前記取付位置よりも下方で受け止める受止部と、
を備える、プリンタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリンタであって、
前記受止部は、前記保持部が前記第2位置になったときに前記サーマルヘッドが落下する方向に設けられ、前記サーマルヘッドを受け止める、
プリンタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のプリンタであって、
前記サーマルヘッドの一部を遮蔽する遮蔽位置と前記サーマルヘッドを開放する開放位置との間で移動可能な遮蔽部材と、
前記遮蔽部材が前記遮蔽位置になると前記保持部を前記第1位置に移動し、前記遮蔽部材が前記開放位置になると前記保持部を前記第2位置に移動する連動機構と、をさらに備える、プリンタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のプリンタであって、
前記保持部は、前記第1位置になったときに前記サーマルヘッドに接続され、前記第2位置になったときに前記サーマルヘッドとの接続が解除されるコネクタである、プリンタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のプリンタであって、
前記受止部は、
前記サーマルヘッドの下端に当接する第1当接部と、
前記第1当接部から曲折して前記サーマルヘッドの正面に当接する第2当接部と、
を有し、
前記サーマルヘッドは、前記受止部に受け止められた状態では当該サーマルヘッドの上端が前記ヘッドユニットから離れるように傾斜する姿勢をとる、プリンタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のプリンタであって、
2つの前記受止部が前記サーマルヘッドの長手方向に間隔を持って設けられる、プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字を行うサーマルヘッドを備えるプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2014-133364Aには、印字媒体に印字を行うサーマルヘッドと、サーマルヘッドが取り付けられるヘッドベースと、ヘッドベースにサーマルヘッドを保持するヘッドホルダと、を備えるプリンタが開示されている。
【0003】
上記ヘッドホルダは、弾性部材からなる。サーマルヘッドの交換時には、ヘッドホルダを手で持って弾性変形させながら、サーマルヘッドをヘッドベースに取り付ける作業が行われる。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、一般のユーザは、サーマルヘッドの交換に慣れていないことが多い。このようなユーザにとって、サーマルヘッドをヘッドベースから落下させずに交換する作業が難しいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドの交換を容易にするプリンタを提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、印字媒体に印字を行うサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドが取り付けられるヘッドユニットと、前記サーマルヘッドとの間で前記印字媒体を挟持するプラテンローラと、前記サーマルヘッドを前記ヘッドユニットの取付位置に保持する第1位置と前記サーマルヘッドの前記取付位置への保持が解除される第2位置との間で移動可能な保持部と、前記サーマルヘッドが前記プラテンローラから離れた状態で、前記保持部が前記第2位置に位置する状態において、前記サーマルヘッドを受け止める受止部と、を備える、プリンタが提供される。
【0007】
上記態様によれば、サーマルヘッドの交換作業時に、作業者が保持部を第2位置に移動してサーマルヘッドの保持を解除する。このとき、サーマルヘッドが受止部によって受け止められることで、サーマルヘッドが落下して他の部位に衝突することが回避される。これにより、作業者がサーマルヘッドを手で受け止める必要がなく、サーマルヘッドの交換を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、カバーを開放した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、リボン供給軸をリボン交換位置にした状態を示す図である。
【
図4】
図4は、サーマルヘッド及びヘッドユニットを示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、サーマルヘッドを取り付けた状態を示す断面図である。
【
図5B】
図5Bは、サーマルヘッドを交換する動作を示す断面図である。
【
図5C】
図5Cは、サーマルヘッドを取り外す動作を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、サーマルヘッド及びヘッドユニットの変形例を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、サーマルヘッドを交換する動作の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態に係るプリンタ100について説明する。
【0010】
図1に示すように、プリンタ100は、インクリボンRを熱してインクリボンRのインクを印字媒体Mに転写することで印字を行う熱転写方式のプリンタ100である。印字媒体Mは、例えば、帯状の台紙に複数のラベルが所定の間隔で連続して仮着されたラベル連続体である。なお、ここでは、熱転写方式のプリンタで説明をするが、インクリボンを用いない感熱方式のプリンタであってもよい。
【0011】
プリンタ100は、筐体10と、筐体10の開口部を覆うカバー11と、を備える。
【0012】
カバー11は、支持軸13により一端側の端部が回動自在に支持される。カバー11は、支持軸13を支点として回動させることで、筐体10の開口部を開放する開放状態(
図2参照)と、閉止する閉止状態(
図1参照)と、を切り替えることができる。
【0013】
印字媒体Mは、ロール状に巻き回された状態で媒体供給軸12に係止される。なお、印字媒体Mとして、台紙なしラベルやファンフォールド型媒体を使用することもできる。
【0014】
カバー11の他端側の端部と筐体10との間には、印字部15で印字された印字媒体Mがプリンタ100から排出される排出口16が形成される。
【0015】
カバー11には、排出口16に臨むカッタ17が取り付けられる。これにより、排出口16から排出された印字済の印字媒体Mを切断することができる。なお、プリンタ100は、様々なユニットを取り付けることができ、例えば、帯状の台紙からラベルを剥離する剥離ユニット、ライナーレスラベル(帯状の台紙がないラベル)を切断するカッタユニットがある。
【0016】
また、カバー11には、プリンタ100を操作するための操作ユニット19が設けられる。
【0017】
プリンタ100の内部には、印字媒体Mに印字を行うための印字ユニット30、プリンタ100の動作を制御するコントローラ(図示せず)等が収容される。
【0018】
印字ユニット30は、一端側が支持軸13に回動自在に支持されるフレーム31と、フレーム31に設けられるヘッドユニット50と、ヘッドユニット50に取り付けられるサーマルヘッド32と、を備える。
【0019】
サーマルヘッド32は、筐体10側に設けられたプラテンローラ20と共に、印字媒体Mに印字を行う印字部15を構成する。
【0020】
印字ユニット30は、サーマルヘッド32とプラテンローラ20との間に印字媒体Mが挟持される印字位置(
図1参照)と、サーマルヘッド32がプラテンローラ20から離間する非印字位置(
図2、
図3参照)と、の間で回動自在とされる。
【0021】
また、印字ユニット30は、印字部15に供給されるインクリボンRをロール状に係止するリボン供給軸33と、使用済のインクリボンRを巻き取るリボン巻取軸34と、インクリボンRと印字媒体Mとの間を仕切る仕切部材35と、を備える。仕切部材35は、フレーム31に回動自在に支持される。リボン供給軸33は、仕切部材35に着脱可能に取り付けられている。リボン供給軸33は、プラテン駆動モータによってギア(図示せず)を介して回転駆動される。
【0022】
印字媒体Mは、媒体供給軸12に係止されたロール状の印字媒体Mから印字部15に供給され、サーマルヘッド32とプラテンローラ20との間にインクリボンRと共に挟持される。
【0023】
印字ユニット30は、印字媒体M及びインクリボンRがサーマルヘッド32とプラテンローラ20との間に挟持された状態で印字を行う。すなわち、印字ユニット30が印字位置にある状態でサーマルヘッド32の発熱素子への通電が行われると、発熱素子の熱によってインクリボンRのインクが印字媒体Mに転写され、印字媒体Mへの印字が行われる。
【0024】
また、プラテン駆動モータ(図示せず)によってプラテンローラ20を正回転させると、印字媒体M及びインクリボンRが搬送方向下流側へと搬送されて印字媒体Mが排出口16からプリンタ100の外部に排出される。
【0025】
プリンタ100による印字を行う際に、カバー11は
図1に示す閉止状態とされる。カバー11を閉止状態から開放状態にすると、
図2に示すように印字ユニット30がカバー11内に収納された状態で一体となって回動して起立し、筐体10の開口部が開放される。さらに、仕切部材35をカバー11に対して筐体10側に向けて回動させると、仕切部材35とカバー11との係合が外れ(仕切部材35の回動軸付近にカバー11との係合機構があるが不図示)、印字ユニット30及び仕切部材35が
図3に示す開放位置になる。
【0026】
このとき、印字ユニット30はカバー11の外側に露出した状態で筐体10側に向けて傾斜する姿勢を取り、リボン供給軸33に係止されたロール状のインクリボンRがリボン巻取軸34に対して相対的に移動し、印字媒体Mの排出口16側に露出する。
【0027】
これにより、リボン供給軸33がプリンタ100から着脱可能な交換位置となり、インクリボンRの交換作業を行うことができる。後記するように、交換位置では、インクリボンR等を取り外した状態において、サーマルヘッド32の交換作業を行うことができる。
【0028】
次に、
図4~
図5Cを参照してサーマルヘッド32が着脱可能に取り付けられる構成について説明する。
【0029】
以下、各図面において互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定して説明する。なお、サーマルヘッド32が着脱されるX軸方向を着脱方向と称し、後述するようにサーマルヘッド32を保持するコネクタ55が移動するY軸方向を保持方向と称し、Z軸方向を長手方向と称する。
【0030】
プリンタ100は、サーマルヘッド32が取り付けられるヘッドユニット50を備える。ヘッドユニット50は、印字ユニット30のフレーム31に固定される。
【0031】
ヘッドユニット50は、支持部51、凸部52、及び受止部40等のサーマルヘッド32が取り付けられる部位を収容する収容部として設けられる。
【0032】
支持部51は、保持方向及び長手方向に延在する平面状の部位を有する。サーマルヘッド32は、その背面32B(
図5A参照)が支持部51に当接することによってヘッドユニット50に支持される。
【0033】
凸部52は、支持部51から着脱方向に突出する円柱軸状に形成される。サーマルヘッド32は、凸部52に嵌合する円形穴状の凹部32Cを有する。
【0034】
凸部52は、凹部32Cを摺動自在に嵌合させることにより、サーマルヘッド32の着脱方向の移動を許容し、かつ着脱方向以外の保持方向及び長手方向への移動を規制して、支持部51に対するサーマルヘッド32の位置決めをする規制部を構成する。実際には、凸部52と凹部32Cの間にはすきまばめがあるため、サーマルヘッド32はすきまばめの範囲内で着脱方向以外の保持方向及び長手方向への移動が許容される。
【0035】
なお、上記した構成に限らず、サーマルヘッド32の背面32Bから突出する凸部が形成され、規制部として凸部が嵌合する凹部がヘッドユニット50に形成される構成としてもよい。
【0036】
2つの凸部52は、サーマルヘッド32の長手方向に十分な間隔を持って配置される。
【0037】
なお、上記した構成に限らず、単一の凸部がサーマルヘッド32の長手方向に十分な寸法を持って延在する構成としてもよい。また、3つ以上の凸部がサーマルヘッド32の長手方向に間隔を持って設けられる構成としてもよい。
【0038】
サーマルヘッド32の交換作業時に、
図3に示すように、印字ユニット30は、カバー11の外側に露出した状態で筐体10側に向けて傾斜する姿勢を取るため、着脱方向(X軸)が水平線Lに対して傾斜する。このため、凹部32Cを凸部52に嵌合させるだけでは、サーマルヘッド32が傾斜した凸部52から外れて落下することがある。
【0039】
これに対処して、受止部40は、
図5Cに示すように、サーマルヘッド32の交換作業時に凸部52から外れて落下するサーマルヘッド32を受け止めるようになっている。
【0040】
図4~
図5Cに示すようにサーマルヘッド32の交換位置にあるヘッドユニット50において、受止部40は、支持部51及び凸部52の下方に配置される。
【0041】
L字形状の受止部40は、支持部51に対して略直交する第1当接部41と、第1当接部41から曲折して支持部51に対して略平行に延在する第2当接部42と、を有する。
【0042】
図5Cに示すようにサーマルヘッド32が受止部40に受け止められた状態で、サーマルヘッド32の下端32Dが第1当接部41に当接し、サーマルヘッド32の正面32Aが第2当接部42に当接する。このとき、サーマルヘッド32は、その上端32Fがヘッドユニット50の支持部51から離れるように傾斜する姿勢をとる。なお、サーマルヘッド32が受止部40に受け止められた状態の別のパターンとして、サーマルヘッド32の下端32Dが第1当接部41に当接することなく、サーマルヘッド32の接続部32Eの下端が支持部51に当接し、サーマルヘッド32の正面32Aが第2当接部42に当接する、というパターンもある(不図示)。
【0043】
2つの受止部40は、サーマルヘッド32の長手方向に十分な間隔を持って配置される。2つの受止部40の間には、サーマルヘッド32の接続部32Eが配置される。
【0044】
なお、上記した構成に限らず、単一の受止部がサーマルヘッド32の長手方向に十分な寸法を持って延在する構成としてもよい。
【0045】
プリンタ100は、サーマルヘッド32に接続されるコネクタ55を備える。コネクタ55は、サーマルヘッド32を取付位置に保持する保持部を構成する。
【0046】
サーマルヘッド32は、コネクタ55が差し込まれる接続部32Eを有し、コネクタ55を介して発熱素子への通電が行われる。
【0047】
サーマルヘッド32は、支持部51によって支持される背面32Bと、背面32Bと反対側に延在する正面32Aと、を有する。サーマルヘッド32は、正面32A側でインクリボンRを加熱することで、インクリボンRのインクが印字媒体Mに転写され、印字媒体Mへの印字を行うようになっている。
【0048】
接続部32Eは、交換位置にあるサーマルヘッド32の下端32Dに設けられる。接続部32Eは、コネクタ55が差し込まれる部位が凹状に窪む形状を有する。なお、これに限らず、接続部32Eは、コネクタ55が差し込まれる部位が凸状に突出する形状を有してもよい。
【0049】
プリンタ100は、サーマルヘッド32の一部を遮蔽する遮蔽部材61を備える。遮蔽部材61は、ヘッドユニット50に設けられた支持軸62により一端側の端部が回動自在に支持される。遮蔽部材61は、支持軸62を支点として回動させることで、サーマルヘッド32の正面32Aを開放する開放位置(
図5B、
図5C参照)と、サーマルヘッド32の正面32Aの一部を遮蔽する遮蔽位置(
図5A参照)と、を切り替えることができる。
【0050】
プリンタ100は、遮蔽部材61が開閉される動きをコネクタ55が保持方向に移動する動きに変換する連動機構60を備える。連動機構60は、コネクタ55をサーマルヘッド32に接続される第1位置(
図5A参照)と、サーマルヘッド32との接続が解除される第2位置(
図5B、
図5C参照)と、に移動させる。
【0051】
連動機構60は、コネクタ55を保持方向に移動自在に支持するレール部69と、遮蔽部材61に設けられたギヤ63と、ギヤ63に噛み合うギヤ64と、を備える。
【0052】
コネクタ55には、レール部69によって保持方向に移動自在に支持されるスライダ55Aが設けられる。
【0053】
レール部69、スライダ55A、連動機構60は、遮蔽部材61の長手方向について両端部にそれぞれ一対で設けられる。
【0054】
ギヤ64は、ヘッドユニット50に設けられた支持軸65により回動自在に支持される。ギヤ64は、スライダ55Aに係合するカム64Aを有する。カム64Aは、支持軸65を中心として回動し、コネクタ55を保持方向に移動させる。
【0055】
次に、サーマルヘッド32の交換作業時に行われる操作について説明する。
【0056】
サーマルヘッド32の交換作業時には、作業者がカバー11を閉止状態(
図1参照)から開放状態(
図2参照)に回動させる。その後に、作業者が仕切部材35を筐体10側に向けて回動させて、印字ユニット30を
図3に示すようにカバー11の外側に露出させる交換位置に切り替える。その後に、作業者がインクリボンR等を取り外して、サーマルヘッド32の交換作業を行う。
【0057】
図5Aに示すように、遮蔽部材61が遮蔽位置にある状態では、サーマルヘッド32が支持部51、凸部52、及びコネクタ55によって所定の取付位置に保持されている。
【0058】
サーマルヘッド32をヘッドユニット50から取り外す際には、
図5Bに示すように、作業者が遮蔽部材61を回動させて開き、コネクタ55を下降させて第2位置に移動した開状態とする。
【0059】
この状態では、ヘッドユニット50の凸部52が水平線に対して傾斜しているため、サーマルヘッド32が重力によって
図5Bに矢印Aで示すように着脱方向についてヘッドユニット50と反対側に移動する。そして、サーマルヘッド32は、凹部32Cが凸部52から外れることにより、作業者がサーマルヘッド32を手で持って凸部52から外す操作が不要になる。なお、これに限らず、サーマルヘッド32をヘッドユニット50から取り外す際に、ヘッドユニット50の凸部52が水平方向に延びる構成としてもよい。この場合には、作業者がサーマルヘッド32を手で持って移動させる操作が必要になる。
【0060】
上記作業者が遮蔽部材61を回動させて開くときに、コネクタ55が
図5Cに矢印Dで示すように下降してサーマルヘッド32の接続部32Eから抜き取られるので、上記のように、サーマルヘッド32が重力によって着脱方向についてヘッドユニット50と反対側に移動し、これに伴って、サーマルヘッド32が凸部52から外れて矢印Eで示すように落下する。
【0061】
この場合に、受止部40は、落下するサーマルヘッド32をヘッドユニット50において受け止める。
【0062】
図5Cに示すようにサーマルヘッド32が受止部40によって受け止められた状態では、サーマルヘッド32の下端32Dが第1当接部41に当接し、サーマルヘッド32の正面32Aが第2当接部42に当接する。また、上述のように、サーマルヘッド32が受止部40に受け止められた状態の別のパターンとして、サーマルヘッド32の下端32Dが第1当接部41に当接することなく、サーマルヘッド32の接続部32Eの下端が支持部51に当接し、サーマルヘッド32の正面32Aが第2当接部42に当接する(不図示)。こうして、サーマルヘッド32は、その上端32Fがヘッドユニット50の支持部51から離れるように傾斜する姿勢をとる。この状態で、作業者は受止部40に受け止められたサーマルヘッド32を手で持ってヘッドユニット50から取り外す。こうして、サーマルヘッド32をヘッドユニット50から取り外す作業が円滑に行われる。
【0063】
一方、サーマルヘッド32をヘッドユニット50に取り付ける際には、作業者がサーマルヘッド32を
図5Bに矢印Bで示すように着脱方向についてヘッドユニット50側に移動する。これにより、サーマルヘッド32は、凹部32Cを凸部52に嵌合させて、所定の取付位置に保持される。そして、作業者が遮蔽部材61を回動させて閉じると、コネクタ55が上方に移動して第1位置に切り替えられる。第1位置では、コネクタ55がサーマルヘッド32の接続部32Eに差し込まれ、サーマルヘッド32を取付位置に保持する。こうして、サーマルヘッド32をヘッドユニット50に取り付ける作業が円滑に行われる。
【0064】
図6A及び
図6Bは、本実施形態の変形例によるサーマルヘッド及びヘッドユニットを示す断面図である。この変形例では、受止部140の構成が、前述の受止部40とは異なる。
【0065】
図6Aに示すように、受止部140は、前述の
図5A~5Cに示す構成と同様に、ヘッドユニット50において支持部51及び凸部52の下方に配置される。
【0066】
受止部140は、支持部51に対して略直交して突設される第1当接部141と、第1当接部141から上方側に曲折して支持部51に対して略平行に延在する第2当接部142と、を有するL字形状に形成される。
【0067】
受止部140の第2当接部142は、サーマルヘッド32が取り付けられている状態でサーマルヘッド32の正面32Aに当接するように形成されている。サーマルヘッド32は、支持部51に固定された状態で、受止部140の第2当接部142によって受け止められている。
【0068】
サーマルヘッド32をヘッドユニット50から取り外す際には、
図6Bに示すように、作業者が遮蔽部材61を回動させて開き、コネクタ55を下降させて第2位置に移動した開状態とする。このとき、前述のような構成により、受止部140によりサーマルヘッド32がヘッドユニット50の支持部51に固定された状態でサーマルヘッド32がヘッドユニット50側に受け止められているので、サーマルヘッド32の落下が防止される。
【0069】
なお、受止部140は、弾性を有する樹脂又は金属により形成される。これにより、受止部140の第2当接部142は、ヘッドユニット50の支持部51に対して変位可能となる。
【0070】
サーマルヘッド32を取り外す際には、サーマルヘッド32を、その上端32Fがヘッドユニット50の支持部51から離れるように傾斜させる。このとき、
図6Bの一点鎖線で示すように、受止部140の第2当接部142は、ヘッドユニット50の支持部51から離れる側に弾性変形する。これにより、サーマルヘッド32の凹部32Cが凸部52から外れるので、サーマルヘッド32をヘッドユニット50から容易に取り外すことができる。
【0071】
また、サーマルヘッド32を取り付ける際には、サーマルヘッド32を受止部140の第2当接部142とヘッドユニット50の支持部51との間に挿入する。このとき、
図6Bの一点鎖線で示すように、受止部140の第2当接部142が支持部51から離れる側に弾性変形する。これにより、受止部140とヘッドユニット50との間隔が拡大してサーマルヘッド32の凹部32Cを凸部52に嵌合させることができるので、サーマルヘッド32をヘッドユニット50へと容易に取り付けることができる。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、印字媒体Mに印字を行うサーマルヘッド32と、サーマルヘッド32が取り付けられるヘッドユニット50と、サーマルヘッド32をヘッドユニット50の取付位置に保持する第1位置とサーマルヘッド32の取付位置への保持が解除される第2位置との間で移動可能なコネクタ55(保持部)と、コネクタ55が第2位置になったときにサーマルヘッド32を受け止める受止部40と、を備えるプリンタ100が提供される。
【0073】
これによれば、サーマルヘッド32の交換作業時に、作業者がコネクタ55を第2位置に移動してサーマルヘッド32の保持が解除する。このときサーマルヘッド32が受止部40によって受け止められることで、サーマルヘッド32が落下して他の部位に衝突することが回避される。これにより、作業者がサーマルヘッド32を手で受け止める必要がなく、サーマルヘッド32の交換を容易にすることができる。
【0074】
また、プリンタ100は、サーマルヘッド32の一部を遮蔽する遮蔽位置とサーマルヘッド32を開放する開放位置との間で移動可能な遮蔽部材61を備える。そして、プリンタ100は、遮蔽部材61が遮蔽位置になるとコネクタ55(保持部)を第1位置に移動し、遮蔽部材61が開放位置になるとコネクタ55を第2位置に移動する連動機構60を備える。
【0075】
これによれば、作業者がサーマルヘッド32をヘッドユニット50に取り付けた後に、遮蔽部材61を開閉することにより、コネクタ55を第1位置または第2位置に移動させてサーマルヘッド32に接続または解除する。よって、作業者がコネクタ55を手で持って第1位置方向または第2位置に移動させる操作が不要になり、交換作業が容易に行われる。
【0076】
また、遮蔽部材61は、ヘッドユニット50に対して回動自在に支持される。連動機構60は、遮蔽部材61が回動する動きをコネクタ55がサーマルヘッド32に対して進退する動きに変換するギヤ63、64を備える。
【0077】
これによれば、作業者が遮蔽部材61を回動してサーマルヘッド32を覆うことにより、連動機構60がギヤ63、64を介してコネクタ55を移動させてサーマルヘッド32に接続する。
【0078】
また、サーマルヘッド32をヘッドユニット50の取付位置に保持する保持部として、サーマルヘッド32に接続されるコネクタ55が設けられる。
【0079】
これによれば、コネクタ55がサーマルヘッド32に通電する機能と、サーマルヘッド32を取付位置に保持する機能と、の両方を果たす。よって、プリンタ100は、構造の簡素化が図れる。
【0080】
また、受止部40は、サーマルヘッド32の下端32Dに当接する第1当接部41と、第1当接部41から曲折してサーマルヘッド32の正面32Aに当接する第2当接部42と、を有する。そして、サーマルヘッド32は、受止部40に受け止められた状態ではその上端32Fがヘッドユニット50から離れるように傾斜する姿勢をとる。
【0081】
これによれば、取付位置から落下するサーマルヘッド32の下端32Dが第1当接部41に当接し、サーマルヘッド32の正面32Aが第2当接部42に当接することで、受止部40によってサーマルヘッド32が確実に受け止められる。そして、サーマルヘッド32の上端32Fがヘッドユニット50から離れるように傾斜することにより、作業者がサーマルヘッド32を手に持ってヘッドユニット50から取り外す作業がしやすい。
【0082】
また、2つの受止部40がサーマルヘッド32の長手方向に間隔を持って設けられる。
【0083】
これによれば、サーマルヘッド32は、サーマルヘッド32の長手方向に間隔を持って設けられる2つの受止部40に係合することで、受止部40によってサーマルヘッド32が確実に受け止められる。
【0084】
また、ヘッドユニット50は、サーマルヘッド32をヘッドユニット50の取付位置に位置決めをする凸部52(規制部)を備える。凸部52は、サーマルヘッド32の交換時に下方に向かって傾斜する。
【0085】
これによれば、凸部52が延在するX軸が水平線Lに対して傾斜する角度を任意に設定することで、サーマルヘッド32が重力によって傾斜した凸部52から外れるようにすることができる。これにより、作業者がサーマルヘッド32を手で持って凸部52から外す操作が不要になり、サーマルヘッド32を取り外す作業が容易に行われる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0087】
本願は、2018年2月28日に日本国特許庁に出願された特願2018-34817に基づく優先権を主張する。この出願のすべての内容は参照により本明細書に組み込まれる。