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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】観察装置および細胞観察方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220427BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220427BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12M1/00 C
C12M1/02 A
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020523169
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022520
(87)【国際公開番号】W WO2019235563
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/022027
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】平田 唯史
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140006(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217180(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217148(WO,A1)
【文献】特表2004-512845(JP,A)
【文献】特開2005-241791(JP,A)
【文献】特開2010-128354(JP,A)
【文献】特開2011-247965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養容器内の培養液中に浮遊する細胞を撮像するステレオ撮像光学系と、
該ステレオ撮像光学系によって取得された互いに視差を有する少なくとも2つの画像に基づいて、前記細胞の細胞密度を算出する画像解析部と、
偏斜照明部とを備え、
前記ステレオ撮像光学系が、前記培養液中に浮遊している同一の細胞に対して、異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させるステレオ光学系と、該ステレオ光学系によって結像された2つの前記像をそれぞれ撮影する撮像素子とを備え、
前記偏斜照明部が、前記ステレオ光学系の前記視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて前記細胞に照明光を照射する偏斜照明を行い、
前記少なくとも2つの画像が、前記偏斜照明で撮像された偏斜照明画像であり、
前記画像解析部が、前記少なくとも2つの偏斜照明画像に含まれている前記細胞の3次元位置を各細胞の位置ずれ量に基づいて特定し、所定の3次元領域内の細胞と前記所定の3次元領域外の細胞とに区別し、前記所定の3次元領域内に存在する前記細胞の数に基づいて前記細胞密度を算出する観察装置。
【請求項2】
前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光する対物光学系と、該対物光学系により集光された光を分割する絞り開口部と、該絞り開口部により分割された光を偏向するプリズムとを備える請求項に記載の観察装置。
【請求項3】
前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光する対物光学系と、該対物光学系により集光された光を分割する絞り開口部と、該絞り開口部により分割された光をそれぞれ別個に結像させる結像光学系とを備える請求項に記載の観察装置。
【請求項4】
前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光することによって2つの前記像に分割するプリズムを備える請求項に記載の観察装置。
【請求項5】
光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を側面に有する前記培養容器を備え、
前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記細胞から前記観察窓を透過して前記培養容器外に出射された光を結像させる請求項から請求項のいずれかに記載の観察装置。
【請求項6】
前記細胞からの光を偏向することによって前記培養容器外に出射するプリズムを側面に有する前記培養容器を備え、
前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記プリズムによって前記培養容器外に出射された光を結像させる請求項から請求項のいずれかに記載の観察装置。
【請求項7】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構とを備え、
前記攪拌軸が、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を有し、
前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸内に収納され、前記観察窓を透過して前記攪拌軸内に入射する前記細胞からの光を結像させる請求項から請求項のいずれかに記載の観察装置。
【請求項8】
前記攪拌軸の径方向外方から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、
前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸回りに回転しない請求項に記載の観察装置。
【請求項9】
前記攪拌軸の径方向外方から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、
前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸とともに該攪拌軸回りに回転する請求項に記載の観察装置。
【請求項10】
前記攪拌軸の径方向外方における周方向の全域から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、
前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸とともに該攪拌軸回りに回転する請求項に記載の観察装置。
【請求項11】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記攪拌軸に該攪拌軸と共に回転可能に設けられ、前記攪拌軸の径方向外方に向けて照明光を発する複数の光源とを備え、
これら複数の光源が、前記攪拌軸の周方向に配列されている請求項に記載の観察装置。
【請求項12】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記攪拌軸内に収納され、該攪拌軸と共に回転しながら前記攪拌軸の周方向の全周から径方向外方に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記攪拌軸が、前記光源の周囲を囲む光学的に透明な材質からなる環状の透過窓を有する請求項に記載の観察装置。
【請求項13】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
該攪拌機構の前記攪拌軸内に収納され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記攪拌軸が、前記光源の周囲を囲む光学的に透明な材質からなる環状の透過窓を有し、
前記光源が、前記攪拌軸回りに回転しない請求項に記載の観察装置。
【請求項14】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記培養容器の外側に、前記攪拌軸を挟んで該攪拌軸の径方向に前記観察窓と対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、
前記攪拌軸の前記照明光の光路上に配置される領域が光学的に透明な材質によって形成されている請求項に記載の観察装置。
【請求項15】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養容器内の前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記培養容器の外側に配置され、前記攪拌軸に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、
前記攪拌軸の前記照明光の光路上に配置される領域が、前記照明光を前記観察窓に向けて反射する材質によって形成されている請求項に記載の観察装置。
【請求項16】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記培養容器の外側において、前記攪拌機構を挟み、かつ、前記攪拌軸の径方向に位置をずらして前記観察窓に対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、
前記光源から発せられた前記照明光が、前記攪拌翼に対して前記攪拌軸の長手方向にずれた位置を通過して前記観察窓に入射される請求項に記載の観察装置。
【請求項17】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記培養容器の外側において、前記攪拌機構を挟み、かつ、前記攪拌軸の径方向に位置をずらして前記観察窓に対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を有し、
前記攪拌翼が、少なくとも一部が光学的に透明な材質によって形成され、
前記光源から発せられた前記照明光が、前記攪拌翼の前記光学的に透明な材質によって形成された領域を透過して、前記観察窓に入射される請求項に記載の観察装置。
【請求項18】
前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養容器内の前記培養液を攪拌する攪拌機構と、
前記培養容器の外側に配置され、前記攪拌翼に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、
前記攪拌翼の前記照明光の光路上に配置される領域が、前記照明光を前記観察窓に向けて反射する材質によって形成されている請求項に記載の観察装置。
【請求項19】
光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を底面に有する前記培養容器と、
該培養容器の上面に配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、
前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記細胞から前記観察窓を透過して前記培養容器外に出射された光を結像させる請求項から請求項のいずれかに記載の観察装置。
【請求項20】
前記光源が、前記観察窓に向けて、前記ステレオ光学系の前記視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて前記照明光を照射する請求項から請求項19のいずれかに記載の観察装置。
【請求項21】
前記培養容器がバイオリアクタであって、
前記ステレオ撮像光学系が、前記バイオリアクタ中で浮遊する前記細胞を撮像する請求項1から請求項20のいずれかに記載の観察装置。
【請求項22】
前記培養容器が培養バッグであって、
前記ステレオ撮像光学系が、前記培養バッグ中で浮遊する前記細胞を撮像する請求項1から請求項20のいずれかに記載の観察装置。
【請求項23】
培養容器内の培養液中に浮遊する細胞に対して、異なる視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて照明光を照射する偏斜照明を行い、
前記培養液中に浮遊している同一の細胞に対して、前記異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させ、
結像された2つの前記像をそれぞれ撮影し
取得された互いに視差を有する少なくとも2つの偏斜照明画像に含まれている前記細胞の3次元位置を各細胞の位置ずれ量に基づいて特定し、
所定の3次元領域内の細胞と前記所定の3次元領域外の細胞とに区別し、
前記所定の3次元領域内に存在する前記細胞の数に基づいて前記培養液中の細胞密度を算出する細胞観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、iPS細胞(人工多能性幹細胞)をはじめとする再生医療分野において、細胞培養のスケールアップが望まれている。細胞の大量生産に向けて、従来のウェルプレートやディッシュと呼ばれる容器を用いた接着培養から、バイオリアクタと呼ばれる浮遊培養容器を用いた浮遊培養に変わりつつある。浮遊培養容器を用いた浮遊培養は、浮遊培養容器内において液体を攪拌することによって細胞を液体中に浮遊させた状態で培養する。
【0003】
浮遊培養容器を用いた細胞の観察方法としては、例えば、特許文献1に記載された方法が知られている。特許文献1に記載の方法は、浮遊培養容器の外側に配置された照明装置および撮像装置により、浮遊培養容器内の液体中に浮遊している細胞の画像を取得する。そして、画像解析と予め入力されたパラメータとを用いた演算処理により、細胞の粒径分布と総細胞数とを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-140006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、浮遊培養容器は用途に応じて多種多様な形状、大きさ、攪拌羽根および材質等があるため、全ての浮遊培養容器に対して、浮遊培養容器の外側から常に同じ向きで同じ方向から、同じ範囲を照明することによって細胞を観察するということができない。そのため、使用する浮遊培養容器によっては、安定した撮影条件で画像を得ることが難しく、画像解析の精度が大きく低下してしまう虞がある。特に、細胞数や細胞密度の解析に至っては、照明範囲等の撮影条件の変化により、細胞密度等の精度が大きく低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、浮遊培養中の培養液内の細胞密度を精度よく測定することができる観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、培養容器内の培養液中に浮遊する細胞を撮像するステレオ撮像光学系と、該ステレオ撮像光学系によって取得された互いに視差を有する少なくとも2つの画像に基づいて、前記細胞の細胞密度を算出する画像解析部と、偏斜照明部とを備え、前記ステレオ撮像光学系が、前記培養液中に浮遊している同一の細胞に対して、異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させるステレオ光学系と、該ステレオ光学系によって結像された2つの前記像をそれぞれ撮影する撮像素子とを備え、前記偏斜照明部が、前記ステレオ光学系の前記視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて前記細胞に照明光を照射する偏斜照明を行い、前記少なくとも2つの画像が、前記偏斜照明で撮像された偏斜照明画像であり、前記画像解析部が、前記少なくとも2つの偏斜照明画像に含まれている前記細胞の3次元位置を各細胞の位置ずれ量に基づいて特定し、前記所定の3次元領域内の細胞と前記所定の3次元領域外の細胞とに区別し、所定の3次元領域内に存在する前記細胞の数に基づいて前記細胞密度を算出する観察装置である。
【0008】
本態様によれば、ステレオ撮像光学系により、ステレオ撮像光学系からの距離に応じて同一の細胞の位置がずれた複数の画像が取得される。したがって、これらの画像に基づいて、各細胞の3次元的な位置が分かるので、画像解析部により、培養液内の細胞密度を精度よく算出することができる。
【0009】
上記態様に係る観察装置は、前記ステレオ撮像光学系が、前記培養液中に浮遊している同一の細胞に対して、異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させるステレオ光学系と、該ステレオ光学系によって結像された2つの前記像をそれぞれ撮影する撮像素子とを備え、前記画像解析部が、前記撮像素子によって取得された2つの前記像の各画像に含まれている前記細胞の位置を特定し、所定の領域内に存在する前記細胞の数に基づいて、前記細胞密度を算出する。
【0010】
ステレオ光学系により、培養液中の同一の細胞に対して、異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させることによって、撮像素子により取得されるこれら2つの像の画像間で、ステレオ光学系からの距離に応じて同一の細胞の位置がずれる。すなわち、ステレオ光学系からの距離が近い細胞ほど画像間のずれ量が小さく、遠い細胞ほど画像間のずれ量が大きくなる。
【0011】
したがって、各細胞の3次元的な位置が分かるので、画像解析部により、所定の領域内に含まれる細胞と含まれない細胞とを正確に区別して、培養液内の細胞密度を算出することができる。よって、使用する培養容器の形状および大きさ等に関わらず、浮遊培養中の培養液内の細胞密度を精度よく測定することができる。
【0012】
上記態様に係る観察装置は、前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光する対物光学系と、該対物光学系により集光された光を分割する絞り開口部と、該絞り開口部により分割された光を偏向するプリズムとを備えることとしてもよい。
【0013】
上記態様に係る観察装置は、前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光する対物光学系と、該対物光学系により集光された光を分割する絞り開口部と、該絞り開口部により分割された光をそれぞれ別個に結像させる結像光学系とを備えることとしてもよい。
【0014】
上記態様に係る観察装置は、前記ステレオ光学系が、前記細胞からの光を集光することによって2つの前記像に分割するプリズムを備えることとしてもよい。
【0015】
上記態様に係る観察装置は、前記ステレオ光学系の前記視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて前記細胞に照明光を照射する偏斜照明部を備える。
この構成によって、培養液中と細胞内との屈折率が異なるため、培養液と細胞との境界で光が曲げられる。この場合において、瞳の外側を通る方向に光が曲がった部分は像面で暗くなり、瞳の内側を通る方向に光が曲がった部分は像面で明るくなる。したがって、細胞のコントラストを向上した画像を取得することができる。
【0016】
上記態様に係る観察装置は、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を側面に有する前記培養容器を備え、前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記細胞から前記観察窓を透過して前記培養容器外に出射された光を結像させることとしてもよい。
【0017】
この構成によって、培養容器の培養液や細胞の流れがステレオ光学系によって邪魔されずに済む。この場合において、細胞からの光を平行平板状の観察窓を透過させてステレオ光学系に入射させることにより、収差の発生を抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る観察装置は、前記細胞からの光を偏向することによって前記培養容器外に出射するプリズムを側面に有する前記培養容器を備え、前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記プリズムによって前記培養容器外に出射された光を結像させることとしてもよい。
【0019】
この構成によって、培養容器の培養液や細胞の流れがステレオ光学系によって邪魔されずに済む。この場合において、細胞からの光をプリズムによって偏向することにより、ステレオ光学系の光軸に交差する方向から発せられる細胞の光をステレオ光学系に入射させることができる。
【0020】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構とを備え、前記攪拌軸が、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を有し、前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸内に収納され、前記観察窓を透過して前記攪拌軸内に入射する前記細胞からの光を結像させることとしてもよい。
この構成によって、攪拌機構の攪拌軸内のスペースを利用して、培養容器内にステレオ光学系を配置することができる。
【0021】
上記態様に係る観察装置は、前記攪拌軸の径方向外方から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸回りに回転しないこととしてもよい。
この構成によって、攪拌軸の回転中において、観察窓がステレオ光学系の入射位置に重なったときに撮影される。この場合において、ステレオ光学系が回転しないので、構成をシンプルにすることができる。また、攪拌軸内にステレオ光学系を収納することによって、ステレオ光学系が培養液および細胞の流れの邪魔にならずに済む。
【0022】
上記態様に係る観察装置は、前記攪拌軸の径方向外方から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸とともに該攪拌軸回りに回転することとしてもよい。
この構成によって、攪拌軸の回転中において、観察窓およびステレオ光学系の入射位置が光源と対向したときに撮影される。この場合において、ステレオ光学系が攪拌軸と共に回転することによって、培養液および細胞の流れに撮影領域を追従させることができる。
【0023】
上記態様に係る観察装置は、前記攪拌軸の径方向外方における周方向の全域から前記観察窓に向けて照明光を発する光源を備え、前記ステレオ光学系が、前記攪拌軸とともに該攪拌軸回りに回転することとしてもよい。
この構成によって、光源から照明光を発生させるタイミングと観察窓およびステレオ光学系の入射位置を光源に対向させるタイミングとを合わせる必要がなく、常時撮影することができる。
【0024】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記攪拌軸に該攪拌軸と共に回転可能に設けられ、前記攪拌軸の径方向外方に向けて照明光を発する複数の光源とを備え、これら複数の光源が、前記攪拌軸の周方向に配列されていることとしてもよい。
【0025】
この構成によって、攪拌軸の回転中において、いずれかの光源が観察窓と対向したときに撮影される。この場合において、ステレオ光学系を攪拌軸内に収納しない分だけ、攪拌軸を細径化することができる。
【0026】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記攪拌軸内に収納され、該攪拌軸と共に回転しながら前記攪拌軸の周方向の全周から径方向外方に向けて照明光を発する光源とを備え、前記攪拌軸が、前記光源の周囲を囲む光学的に透明な材質からなる環状の透過窓を有することとしてもよい。
【0027】
この構成によって、光源から発せられて攪拌軸の透過窓を透過した照明光が、培養液中の細胞に照射される。そして、細胞を透過した照明光の透過光が、培養容器の観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。この場合において、光源が攪拌軸と共に攪拌軸回りに回転しながら、攪拌軸の周方向の全周から径方向外方に向けて照明光を発することによって、1つの光源で常時撮影することができる。
【0028】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる中空の攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、該攪拌機構の前記攪拌軸内に収納され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、前記攪拌軸が、前記光源の周囲を囲む光学的に透明な材質からなる環状の透過窓を有し、前記光源が、前記攪拌軸回りに回転しないこととしてもよい。
【0029】
この構成によって、光源から発せられた照明光が、攪拌軸の透過窓を透過して培養容器内の培養液を経由した後、培養容器の観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。この場合において、光源を回転させないので、光源に接続する回路が複雑にならなくて済む。
【0030】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記培養容器の外側に、前記攪拌軸を挟んで該攪拌軸の径方向に前記観察窓と対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、前記攪拌軸の前記照明光の光路上に配置される領域が光学的に透明な材質によって形成されていることとしてもよい。
【0031】
この構成によって、光源から発せられて照明窓を透過した照明光が、培養容器内において攪拌軸の光学的に透明な領域を透過した後、光源に対して攪拌軸の径方向に対向して配置された観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。この場合において、光源およびステレオ光学系を培養容器の外側に配置することによって、これら光源およびステレオ光学系が培養液および細胞の流れの邪魔にならずに済む。
【0032】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養容器内の前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記培養容器の外側に配置され、前記攪拌軸に向けて照明光を発する光源とを備え、前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、前記攪拌軸の前記照明光の光路上に配置される領域が、前記照明光を前記観察窓に向けて反射する材質によって形成されていることとしてもよい。
【0033】
この構成によって、光源から発せられて照明窓を透過した照明光が、培養容器内において攪拌軸の反射する領域によって反された後、観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。この場合において、光源およびステレオ光学系を培養容器の外側に配置することによって、これら光源およびステレオ光学系が培養液および細胞の流れの邪魔にならずに済む。また、培養容器の外側において光源とステレオ光学系を近接した位置に配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0034】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記培養容器の外側において、前記攪拌機構を挟み、かつ、前記攪拌軸の径方向に位置をずらして前記観察窓に対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、前記光源から発せられた前記照明光が、前記攪拌翼に対して前記攪拌軸の長手方向にずれた位置を通過して前記観察窓に入射されることとしてもよい。
【0035】
この構成によって、光源から発せられて照明窓を透過した照明光が、攪拌軸および攪拌翼によって遮られることなく培養容器内を通過した後、観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。したがって、観察窓および照明窓以外は、従来の培養容器と同様にシンプルな構成にすることができる。
【0036】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記培養容器の外側において、前記攪拌機構を挟み、かつ、前記攪拌軸の径方向に位置をずらして前記観察窓に対向して配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を有し、前記攪拌翼が、少なくとも一部が光学的に透明な材質によって形成され、前記光源から発せられた前記照明光が、前記攪拌翼の前記光学的に透明な材質によって形成された領域を透過して、前記観察窓に入射されることとしてもよい。
【0037】
この構成によって、光源から発せられて照明窓を透過した照明光が、攪拌翼の光学的に透明な領域を透過した後、観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。したがって、培養容器内において、攪拌翼が配置されている深さに相当する領域の細胞密度も測定することができる。
【0038】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器内を該培養容器の深さ方向に延びる攪拌軸と、該攪拌軸回りに回転する攪拌翼とを備え、該攪拌翼が前記攪拌軸回りに回転することによって前記培養容器内の前記培養液を攪拌する攪拌機構と、前記培養容器の外側に配置され、前記攪拌翼に向けて照明光を発する光源とを備え、前記培養容器が、前記光源から発せられた前記照明光を透過させる平行平板状の照明窓を前記側面に有し、前記攪拌翼の前記照明光の光路上に配置される領域が、前記照明光を前記観察窓に向けて反射する材質によって形成されていることとしてもよい。
【0039】
この構成によって、光源から発せられて照明窓を透過した照明光が、攪拌翼によって反された後、観察窓を透過してステレオ光学系に入射される。この場合において、光源およびステレオ光学系を培養容器の外側に配置することによって、これら光源およびステレオ光学系が培養液および細胞の流れの邪魔にならずに済む。また、培養容器の外側において光源とステレオ光学系を近接した位置に配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0040】
上記態様に係る観察装置は、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓を底面に有する前記培養容器と、該培養容器の上面に配置され、前記観察窓に向けて照明光を発する光源とを備え、前記ステレオ光学系が、前記培養容器の外側に配置され、前記細胞から前記観察窓を透過して前記培養容器外に出射された光を結像させることとしてもよい。
この構成によって、培養容器の培養液や細胞の流れがステレオ光学系によって邪魔されずに済む。また、培養容器の形状をシンプルにすることができる。
【0041】
上記態様に係る観察装置は、前記光源が、前記観察窓に向けて、前記ステレオ光学系の前記視点の配列方向に対して交差する方向に角度を付けて前記照明光を照射することとしてもよい。
この構成によって、培養液中と細胞内との屈折率が異なるため、培養液と細胞との境界で光が曲げられる。この場合において、瞳の外側を通る方向に光が曲がった部分は像面で暗くなり、瞳の内側を通る方向に光が曲がった部分は像面で明るくなるので、細胞のコントラストを向上した画像を取得することができる。
【0042】
上記態様に係る観察装置は、前記培養容器がバイオリアクタであって、前記ステレオ撮像光学系が、前記バイオリアクタ中で浮遊する前記細胞を撮像することとしてもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、浮遊培養中の培養液内の細胞密度(細胞濃度(例えば、cells/mm3またはcells/L))を精度よく測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の第1実施形態に係る観察装置の縦断面図である。
図2図1の先端ユニットおよび先端ユニットを装着する前のカメラユニットの縦断面図である。
図3図2のカメラユニットを先端側から長手方向に沿って見た正面図である。
図4図2のカメラユニットのX-Z断面を示す図である。
図5図2のカメラユニットのY-Z断面を示す図である。
図6図2のカメラユニットのY-Z断面を示す図である。
図7図6のカメラユニットの先端付近を示す縦断面図である。
図8図6の偏向プリズムの拡大図である。
図9偏斜照明によるコントラストの付与について説明する図である。
図10】上側画像と下側画像とこれら上側画像および下側画像を重ね合わせた状態を示す図である。
図11】像面に投影される細胞のY座標と細胞のZ位置との関係を示す図である。
図12】像面での細胞の位置ずれ量と細胞のZ位置との関係を示す図である。
図13】細胞の位置ずれ量がフォーカス位置に比例する様子を説明する図である。
図14】フォーカス位置による画像の変化の一例を示す図である。
図15】本発明の第2実施形態に係るカメラユニットのY-Z断面を示す図である。
図16図15のカメラユニットの先端付近を示す縦断面図である。
図17】本発明の第3実施形態に係るカメラユニットのY-Z断面を示す図である。
図18図17のカメラユニットの先端付近を示す縦断面図である。
図19】本発明の第4実施形態に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図20】本発明の第4実施形態の変形例に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図21】本発明の第5実施形態に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図22】本発明の第5実施形態の第1変形例に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図23】本発明の第5実施形態の第1変形例に係る別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図24】本発明の第5実施形態の第2変形例に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図25】本発明の第5実施形態の第3変形例に係る観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図26】本発明の第5実施形態の第2変形例に係る別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図27】本発明の第5実施形態の第2変形例に係るさらに別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である
図28】本発明の第5実施形態の第3変形例に係る別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図29】本発明の第5実施形態の第4変形例に係る別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図30】本発明の第5実施形態の第5変形例に係る別の観察装置の横断面と縦断面を示す図である。
図31】本発明の第6実施形態に係るバッグ培養装置の縦断面図である。
図32図31のバッグ培養装置の別の縦断面図である。
図33】本発明の第6実施形態の変形例に係るバッグ培養装置の縦断面図である。
図34図33のバッグ培養装置の別の縦断面図である。
図35】本発明の第6実施形態の他の変形例に係るバッグ培養装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る観察装置1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1は、図1および図2に示されるように、培養容器9内の培養液(培地)W中に浮遊している細胞S(図10等参照。)を観察するカメラユニット3と、カメラユニット3の先端に着脱可能に装着される先端ユニット5と、培養液W内の細胞密度を算出する画像解析部7とを備えている。
【0046】
培養容器9は、上面が閉塞された有底円筒状のバイオリアクタであり、内部に培養液Wとともに細胞Sを収容する。この培養容器9は、培養液Wの温度を調整する筒状の温度調整ジャケット11によって、周囲が覆われている。この培養容器9には、各種のホース13およびプローブ15を挿入するための複数のポート9aと、攪拌機構17を挿入するための挿入口9bとが上面に設けられている。
【0047】
図1に示す例では、培養容器9の上面に6つのポート9aが設けられている。これらのポート9aには、培養液Wを輸送する培地輸送ホース13Aと、培養液Wに空気を送る送気ホース13Bと、培養液WのpHを測定するpHプローブ15Aと、培養液Wの温度を測定する温度測定プローブ15Bと、培養液WのCO2圧力を測定するCO2圧力プローブ15Cとが挿入されている。カメラユニット3は、先端ユニット5を装着した状態で、培養容器9の残りの1つのポート9aに挿入することができる。
【0048】
攪拌機構17は、培養容器9の挿入口9bを経由して培養容器9内に挿入される攪拌軸17aと、攪拌軸17aに設けられた複数の攪拌翼17bとを備えている。複数の攪拌翼17bは、攪拌軸17aの長手方向の3ヶ所において、それぞれ周方向に間隔をあけて複数枚ずつ配置されている。
【0049】
この攪拌機構17は、図示しないモータ等の駆動部により、攪拌軸17aおよび攪拌翼17bを長手軸回りに回転させることによって、培養液Wを攪拌することができる。そして、攪拌機構17により培養液Wを攪拌することによって、培養容器9の内面に細胞Sが張り付くのを防ぎ、培養液W中に細胞Sを浮遊させながら培養することができる。
【0050】
カメラユニット3は、図3図4および図5に示すように、光源21と、光源21から発せられた照明光を導光するライトガイドファイバ23と、同一の細胞Sに対して、異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させるステレオ光学系(ステレオ撮像光学系)25と、ステレオ光学系25によって結像された2つの像をそれぞれ撮影する撮像素子(ステレオ撮像光学系)27と、これら光源21、ステレオ光学系25および撮像素子27を収容する細長い略四角筒状の筐体29とを備えている。図3において、符号Kは発光領域を示している。
【0051】
光源21は、筐体29の基端側に配置されている。
ライトガイドファイバ23は、光源21からの照明光を筐体29の先端に導光する。
ステレオ光学系25は、先端側から順に、細胞Sからの光を集光する対物光学系31と、対物光学系31により集光された光を分割する絞り開口部33と、絞り開口部33により分割された光をそれぞれ偏向する偏向プリズム35と、偏向プリズム35により偏向された光をそれぞれ結像させる結像光学系37とを備えている。
【0052】
このステレオ光学系25は、例えば、倍率が4倍で、NAが0.089を有している。また、ステレオ光学系25は、実視野が、X方向に1.06mmで、Y方向に0.6mmを有している。Y方向はステレオになっていている。以下、ステレオ光学系25の視点の配列方向をステレオ方向という。また、ステレオ光学系25の光軸に沿う方向をZ方向とし、ステレオ光学系25の光軸に直交し、かつ、ステレオ方向に直交する方向をX方向とする。
【0053】
対物光学系31は、図6および図7に示すように、両凹レンズと両凸レンズとを接合したレンズ成分31aと、凸凹レンズ31bとから構成されている。この対物光学系31は、例えば、直径が5.5mmを有している。また、対物光学系31は、例えば、作動距離(WD)が4mmを有している。図6および図7において、符号Fはベストフォーカス面の位置を示し、符号39はカバーガラスを示している。図7には主に主光線が表示されている。
【0054】
絞り開口部33は、図7に示すように、瞳位置に配置されている。この絞り開口部33には、例えば、直径1.4mmの孔33aがステレオ方向に間隔をあけて2個設けられている。
【0055】
偏向プリズム35は、例えば、図8に示すように、撮像素子27側の面が、Y方向の絶対値が大きくなるにつれて厚さが増す方向に傾斜した平面を有するプリズム35Aとプリズム35Bを張り合わせたものである。この撮像素子27側の面の傾きは、例えば、光軸に対して+Y方向では2.9°の角度を有し、-Y方向では-2.9°の角度を有している。また、プリズム35Aとプリズム35Bとの間には、光が透過しない遮光塗料35aが塗布されている。遮光塗料35aに代えて、プリズム35Aとプリズム35Bとの間に遮光部材を設けることとしてもよい。
【0056】
結像光学系37は、図5および図6の示すように、両凹レンズ37aと、凸凹レンズと両凸レンズとを接合したレンズ成分37bとから構成されている。この結像光学系37は、直径が11mmを有している。偏向プリズム35と結像光学系37との間、および、結像光学系37と撮像素子27との間には、図6に示すように、+Y方向を通る光と-Y方向を通る光とが混ざり合うのを防ぐ遮光部材36がそれぞれ設けられている。
【0057】
撮像素子27は、筐体29の最も基端側に配置されている。この撮像素子27は、X方向に4.28mmで、Y方向に5.9mmの撮像領域を有している。撮像素子27により取得された細胞の画像情報は、画像解析部7に送られる。
【0058】
先端ユニット5は、図2に示すように、カメラユニット3が挿入される略四角筒状の保護カバー41と、ステレオ方向に対して交差する方向に角度を付けて細胞Sに照明光を照射するミラー(偏斜照明部)43とを備えている。この先端ユニット5は、保護カバー41が滅菌処理されており、1回の使用毎に使い捨てるディスポーザブルな部品として交換することができる。
【0059】
保護カバー41は、先端よりも基端側において、幅方向に対向する両側面に開口する開口窓41aを有している。これら開口窓41aは、保護カバー41にカメラユニット3が挿入された状態において、ミラー43と対物光学系31との間に配置される。また、開口窓41aは、細胞Sおよび培養液Wが保護カバー41の内部を幅方向に通過可能な大きさを有している。これら開口窓41aは、例えば、保護カバー41を長手方向の先端側と基端側とに分けて、これら先端側と基端側とを保護カバー41の周方向の2ヶ所で連結することによって形成される開口部であってもよい。
【0060】
ミラー43は、保護カバー41の先端において、基端側を向いて配置されている。また、ミラー43は、反射面が対物光学系31の光軸に対して6.5°の傾きを有している。このミラー43は、例えば、ライトガイドファイバ23によって導光されてきた照明光をカメラユニット3の対物光学系31に向けてステレオ方向に対して直交する方向に角度を付けて反射することにより、培養液W中の細胞Sを偏斜照明する。
【0061】
培養液W中と細胞S内は互いに屈折率が異なるため、培養液Wと細胞Sとの境界で光が曲げられる。例えば、図9に示すように、瞳Eの外側を通る方向に光が曲がった部分は像面Iで暗くなり、瞳Eの内側を通る方向に光が曲がった部分は像面Iで明るくなる。したがって、ミラー43によって細胞Sを偏斜照明することにより、細胞Sのコントラストを向上した画像を取得することができる。図9において、R1,R2はレンズを示している。
【0062】
画像解析部7は、撮像素子27によって取得された2つの像の各画像に含まれている細胞Sの位置を特定する。そして、画像解析部7は、所定の領域内に存在する細胞Sの数に基づいて、培養液W内の細胞密度を算出する。所定の領域は、例えば、フォーカスが合う範囲であり、予め設定しておく。本実施形態においては、例えば、所定の領域のZ方向は、ベストフォーカス位置からの距離がZ±0.2mmの範囲が好ましい。
【0063】
次に、本実施形態に係る観察装置1の作用について説明する。
上記構成の観察装置1により、培養容器9において培養液W中に浮遊させながら培養している細胞Sを観察するには、まず、図1に示すように、カメラユニット3に先端ユニット5を装着した状態で、培養容器9のポート9aを経由させて、培養液W内にカメラユニット3および先端ユニット5を挿入する。
【0064】
次いで、カメラユニット3の光源21から照明光を発生させて、ライトガイドファイバ23により照明光を導光し、ライトガイドファイバ23の先端から先端ユニット5のミラー43に向けて照明光を出射させる。これにより、ミラー43によって反射された照明光が、培養液W中に浮遊しながら開口窓41aを通過して先端ユニット5内に侵入している細胞Sに対して照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光がカメラユニット3のステレオ光学系25に入射する。
【0065】
ステレオ光学系25においては、細胞Sを透過した照明光の透過光が対物光学系31により集光された後、絞り開口部33により分割されて、偏向プリズム35によりそれぞれ偏向される。これにより、培養液W中に浮遊している複数の細胞Sに対して、個々の細胞Sごとにそれぞれ異なる視点から見た互いに視差がある2つの像が結像される。そして、結像された2つの像が撮像素子27により撮影される。
【0066】
撮像素子27によって取得された2つの像の各画像情報は、それぞれ画像解析部7に送られる。そして、画像解析部7により、入力された画像情報に基づいて、図10に示すように、複数の細胞Sに対して、個々の細胞Sごとにそれぞれ異なる視点から見た互いに視差がある2次元的な2つの画像、すなわち、図10に示す上側画像および下側画像が生成される。
【0067】
次いで、画像解析部7により、生成した複数の細胞Sの2つの画像に含まれる各細胞Sの位置が特定される。そして、画像解析部7により、所定の領域内に存在する細胞Sの数に基づいて、培養液W中の細胞密度が算出される。
【0068】
この場合において、ステレオ光学系25により、培養液W中の複数の細胞Sに対して、個々の細胞Sごとに異なる視点から見た互いに視差がある2つの像を結像させることによって、撮像素子27により取得されるこれら2つの像の画像間で、ステレオ光学系25からの距離に応じて同一の細胞SのY方向の位置が互いに反対方向にずれる。
【0069】
ベストフォーカス面Fにある同一細胞Sを撮影して得られる撮像面での2つの細胞像のY座標の差をΔY0とし、任意のZ位置にある細胞Sを撮影して得られる撮像面での2つの細胞像のY座標の差をΔYとして、ずれ量δ=ΔY-ΔY0と定義する。そうすると、例えば、図10図11および図12に示すように、ステレオ光学系25からの距離が近い細胞Sほど画像間のずれ量が小さくなり、すなわち負の値になり、遠い細胞Sほど画像間のずれ量が大きくなる。つまり、図13に示すように、細胞Sの位置ずれ量は、フォーカス位置に比例する。図13は、各細胞Sの大きさがそれぞれ20μmで、細胞Sの屈折率が1.36で、培養液Wの屈折率が1.332で、表示画像の大きさが0.48mm×0.48mm(物体側換算0.12mm×0.12mm。)の場合を示したものである。図14も同様である。
【0070】
したがって、各細胞Sの位置ずれ量に基づいて各細胞Sの3次元的な位置が分かるので、画像解析部7により、所定の領域内に含まれる細胞Sと含まれない細胞Sとを正確に区別して、培養液W内の細胞密度を算出することができる。これにより、本実施形態に係る観察装置1によれば、使用する培養容器9の形状および大きさ等に関わらず、培養液W内の細胞密度を精度よく測定することができる。
【0071】
図14に示すように、ベストフォーカス位置からの距離がZ±0.2mmを超えると、画像が大幅にボケるため、測定に影響が殆どなくなる。細胞密度以外にも、フォーカスが合った位置では、細胞Sや細胞塊の大きさや形状も測定することができる。これにより、細胞Sの状態を把握することができる。図14において、Zの単位はmmである。
【0072】
本実施形態に係るステレオ光学系25によって測定できる領域の体積は、X方向の実視野とY方向の実視野とZ方向のピントが合う範囲との積より、1.06mm×0.6mm×0.4mm=0.2544mmとなる。また、ステレオ光学系25によって測定できる領域内の細胞Sの数は、例えば、最小で10個/mm×0.2544mm=2.544個であり、最大で10個/mm×0.2544mm=254.4個である。
【0073】
本実施形態では細胞Sを培養する培養容器としてバイオリアクタである培養容器9を例示したが、培養容器はバイオリアクタ以外にも細胞培養用バッグでもよい。細胞培養用バッグを用いる場合には、本観察装置1のカメラユニット3および先端ユニット5を細胞培養用バッグの内部に挿入して使用する。第2実施形態および第3実施形態も同様である。
【0074】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1は、図15および図16に示すように、ステレオ光学系25の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態の説明において、上述した第1実施形態に係る観察装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
本実施形態のステレオ光学系25は、偏向プリズム35を備えず、細胞Sからの光を集光する対物光学系31と、対物光学系31により集光された光を分割する絞り開口部33と、絞り開口部33により分割された光をそれぞれ別個に結像させる結像光学系45とを備えている。
【0076】
結像光学系45は、凹凸レンズ45aと、両凹レンズと両凸レンズとを接合したレンズ成分45bと、凸凹レンズ45cとにより構成されている。これら凹凸レンズ45a、レンズ成分45bおよび凸凹レンズ45cは、左右のレンズ対により構成されている。各レンズ対の間には、それぞれ遮光部材36が挟まれている。凹凸レンズ45a、レンズ成分45bおよび凸凹レンズ45cの各レンズ対は、それぞれ光軸が左右に間隔をあけて配置されており、絞り開口部33によって分割された光をそれぞれ透過させることができる。
【0077】
上記構成のステレオ光学系25を備える本実施形態に係る観察装置1においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0078】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1は、図17および図18に示すように、ステレオ光学系25の構成が第1実施形態と異なる。
本実施形態の説明において、上述した第1実施形態に係る観察装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
本実施形態のステレオ光学系25は、細胞Sからの光を2つの像に分割する先端プリズム(プリズム)47Aを備えている。また、このステレオ光学系25は、絞り開口部33に代えて、2つに分割されていない単一の開口を有する絞り開口部48を備えている。このステレオ光学系25は、例えば、倍率が4倍で、NAが0.087を有している。また、ステレオ光学系25は、実視野が、X方向に1.07mmで、Y方向に0.5mmを有している。
【0080】
図17および図18において、符号49aは凸凹レンズと両凸レンズとを接合したレンズ成分を示し、符号49bは両凸レンズを示し、符号49cは凹凸レンズを示し、符号49dは凹凸レンズと凹凸レンズとを接合したレンズ成分を示し、符号47Bは基端プリズムを示している。
【0081】
先端プリズム47Aおよび基端プリズム47Bは、図18の紙面の奥行き方向に一定の厚さを有している。また、先端プリズム47Aは、入射面が-2°の傾き角を有し、出射面が7°の傾き角を有し、光軸に対して+Y側と-Y側とで線対称になっている。これにより、絞り開口部48への主光線入射角を+Y側と-Y側とで互いに反対方向の傾きを持ち、ステレオ光学系を実現している。
【0082】
基端プリズム47Bは、入射面および出射面が相互に平行に形成され、入射面が7°の傾き角を有し、出射面が7°の傾き角を有している。また、基端プリズム47Bは、光軸に対して+Y側と-Y側とで線対称になっている基端プリズム47B1と基端プリズムB2とにより構成されている。
【0083】
この基端プリズム47Bは、+Y側の像と-Y側の像とを近接させることによって、1つの撮像素子(図示略)によりステレオ像を同時に撮影させるものである。基端プリズム47Bがないと、+Y側の像位置と-Y側の像位置とがY方向に離れ過ぎることによって、中間付近、すなわち光軸付近において密度の解析に不要な無駄な領域が生じてしまうため、撮像素子の撮像領域がより広いものを使用しなければならなくなる。
接合したレンズ成分49dから撮像素子(図示略)の間には、+Y側の光線と-Y側の光線とが混ざり合うのを防ぐ遮光部材36が設けられている。
【0084】
上記構成のステレオ光学系25を備える本実施形態に係る観察装置1においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0085】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置51は、例えば、図19に示すように、光源21がカメラユニット3の外部に配置されている点で第1~第3実施形態と異なる。
本実施形態の説明において、上述した第1~第3実施形態に係る観察装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。本実施形態では、上述した第1実施形態のステレオ光学系25を例示して説明する。
【0086】
本実施形態に係る観察装置51は、図19に示すように、攪拌軸17aが、中空の円筒部材によって形成されている。カメラユニット3は、光源21およびライトガイドファイバ23を備えず、先端ユニット5に装着されていない状態で、攪拌軸17a内に収納されている。
【0087】
また、攪拌軸17aが、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓53を有している。観察窓53は、例えば、攪拌軸17aの先端側から1つ目の攪拌翼17bと2つ目の攪拌翼17bとの間に配置されている。
【0088】
ステレオ光学系25は、攪拌軸17aの長手方向に沿って配置されており、観察窓53を透過して攪拌軸17a内に入射する細胞Sからの光を結像させる。また、ステレオ光学系25は、攪拌軸17a回りに回転しない。
【0089】
観察窓53とステレオ光学系25との間には、観察窓53から攪拌軸17a内に入射した光を攪拌軸17aの長手方向に偏向する直角プリズム55が配置されている。直角プリズム55により、観察窓53から攪拌軸17a内に入射した光がステレオ光学系25に入射される。
【0090】
光源21は、培養容器9の外側に配置されており、培養容器9の外側から観察窓53に向けて照明光を発する。また、光源21は、観察窓53と高さをずらして配置されている。また、光源21の横方向(ステレオ方向=視差が発生する方向)発光領域は、ステレオ光学系25の視野内の主光線が到達する幅より広く取ってある。これにより、細胞Sを偏斜照明することができ、細胞Sのコントラストを向上した画像を取得することができる。
【0091】
培養容器9は、光源21から発せられた照明光を透過させる平行平板状の照明窓9cを側面に有している。これにより、光源21から発せられた照明光が、照明窓9cを透過して培養液W中の細胞Sに照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓53を透過した後、直角プリズム55により偏向されてステレオ光学系25に入射される。
【0092】
本実施形態に係る観察装置51によれば、攪拌軸17aの回転中において、観察窓53がステレオ光学系25の入射位置に重なったときに細胞Sの像が撮影される。この場合において、ステレオ光学系25が回転しないので、構成をシンプルにすることができる。また、攪拌軸17a内にステレオ光学系25を収納することによって、ステレオ光学系25が培養液Wおよび細胞Sの流れの邪魔にならずに済む。本実施形態においては、直角プリズム55に代えて、45°ミラーを採用することとしてもよい。
【0093】
本実施形態においては、ステレオ光学系25が、攪拌軸17aとともに攪拌軸17a回りに回転することとしてもよい。
この構成によって、攪拌軸17aの回転中において、観察窓53およびステレオ光学系25の入射位置が光源21と対向したときに、細胞Sの像が撮影される。この場合において、ステレオ光学系25が攪拌軸17aと共に回転することによって、培養液Wおよび細胞Sの流れに撮影領域を追従させることができる。
【0094】
また、本実施形態においては、例えば、図20に示すように、光源21が、培養容器9の外側における周方向の全域から観察窓53に向けて照明光を発生させることとしてもよい。また、ステレオ光学系25が、攪拌軸17aとともに攪拌軸17a回りに回転することとしてもよい。この場合、培養容器9の周方向の全域に亘って照明窓9cが形成されていることとすればよい。
【0095】
この構成によって、光源21から照明光を発生させるタイミングと観察窓53およびステレオ光学系25の入射位置を光源21に対向させるタイミングとを合わせる必要がなく、常時撮影することができる。
【0096】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態に係る観察装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置61は、例えば、図21に示すように、培養容器9の外側にカメラユニット3が配置されている点で第4実施形態と異なる。
本実施形態の説明において、上述した第4実施形態に係る観察装置51と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0097】
本実施形態に係る観察装置61は、図21に示すように、培養容器9が、光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓63を側面に有している。
ステレオ光学系25は、培養容器9の外側に配置され、観察窓63を透過した細胞Sからの光を結像させる。
【0098】
攪拌軸17aには複数の光源21が取り付けられ、各光源21から攪拌軸17aの径方向外方に向けて照明光が発せられる。各光源21は、観察窓63と高さとずらして配置されている。また、各光源21は、攪拌軸17aと共に攪拌軸17a回りに回転される。これにより、各光源21から発せられた照明光が培養液W中の細胞Sに照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。
【0099】
本実施形態に係る観察装置61によれば、攪拌軸17aの回転中において、いずれかの光源21が観察窓63と対向したときに、細胞Sの像が撮影される。この場合において、ステレオ光学系25を攪拌軸17a内に収納しない分だけ、攪拌軸17aを細径化し、培養容器9を小型化することができる。
【0100】
また、ステレオ光学系25を培養容器9の外側に配置することにより、培養容器9の培養液Wや細胞Sの流れがステレオ光学系25によって邪魔されずに済む。また、照明光が照射された培養液W中の細胞Sからの光が平行平板状の観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射することにより、収差の発生を抑制することができる。また、光源21として、LEDなどの小型のものを使用することができる。また、光源21を観察窓53と高さをずらして配置することにより、細胞Sを偏斜照明することができる。
【0101】
本実施形態は以下の構成に変形することができる。
第1変形例としては、例えば、図22に示すように、攪拌軸17aを中空にして、攪拌軸17a内に光源21を収納することとしてもよい。また、光源21が攪拌軸17aと共に攪拌軸17a回りに回転しながら、攪拌軸17aの周方向の全周から攪拌軸17aの径方向外方に向けて照明光を発することとしてもよい。
【0102】
この場合、攪拌軸17aが、光源21の周囲を囲む光学的に透明な材質からなる環状の透過窓65を有することとすればよい。透過窓65は、透過した照明光に様々な角度成分を持たせる比較拡散機能を有することとしてもよい。
【0103】
本変形例によれば、光源21から発せられて攪拌軸17aの透過窓65を透過した照明光が、培養液W中の細胞Sに照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。この場合において、光源21が攪拌軸17aと共に回転しながら、攪拌軸17aの周方向の全周から径方向外方に向けて照明光を発することによって、1つの光源21で常時撮影することができる。
【0104】
本変形例においては、光源21が攪拌軸17aと共に回転することとしたが、これに代えて、例えば、図23に示すように、光源21が、攪拌軸17a回りに回転せず、観察窓63に向けて照明光を発することとしてもよい。
【0105】
この構成によって、光源21から発せられて攪拌軸17aの透過窓65を透過した照明光が、培養液W中の細胞Sに照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。この場合において、光源21を回転させないので、光源21に接続する回路が複雑にならなくて済む。
【0106】
第2変形例としては、例えば、図24に示すように、光源21が、培養容器9の外側に配置され、観察窓63に向けて照明光を発することとしてもよい。また、光源21と観察窓63とが攪拌軸17aを挟んで、攪拌軸17aの径方向に対向して配置されることとしてもよい。
【0107】
また、培養容器9が、光源21から発せられた照明光を透過させる平行平板状の照明窓9cを有することとしてもよい。さらに、攪拌軸17aの照明光の光路上に配置される領域を光学的に透明な材質からなる光透過部材17cによって形成することとしてもよい。
【0108】
この構成によって、光源21から発せられて照明窓9cを透過した照明光が、攪拌軸17aの光透過部材17cを透過する。そして、培養液W中の細胞Sに照明光が照射され、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。この場合において、光源21およびステレオ光学系25を培養容器9の外側に配置することによって、これら光源21およびステレオ光学系25が培養液Wおよび細胞Sの流れの邪魔にならずに済む。
【0109】
第3変形例としては、例えば、図25に示すように、光源21が、培養容器9の外側に配置され、攪拌軸17aに向けて照明光を発することとしてもよい。また、培養容器9が、光源21から発せられた照明光を透過させる平行平板状の照明窓9cを側面に有することとしてもよい。さらに、攪拌軸17aの照明光の光路上に配置される領域が、照明光を観察窓63に向けて反射する材質からなる反射部材17dによって形成されていることとしてもよい。
【0110】
本変形例によれば、光源21から発せられて照明窓9cを透過した照明光が、攪拌軸17aの反射部材17dによって反射される。そして、培養液W中の細胞Sに照明光が照射され、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。
【0111】
この場合において、光源21およびステレオ光学系25を培養容器9の外側に配置することによって、これら光源21およびステレオ光学系25が培養液Wおよび細胞Sの流れの邪魔にならずに済む。また、培養容器9の外側において光源21とステレオ光学系25を近接した位置に配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0112】
上記第2変形例においては、例えば、図26に示すように、光源21および照明窓9cと観察窓63とが、攪拌軸17aの径方向に位置をずらして互いに対向して配置されていることとしてもよい。また、光源21から発せられた照明光が、攪拌翼17bに対して攪拌軸17aの長手方向にずれた位置を通過して、観察窓63に入射されることとしてもよい。
【0113】
この構成によって、光源21から発せられて照明窓9cを透過した照明光が、攪拌軸17aおよび攪拌翼17bによって遮られることなく培養液W中の細胞Sに照射される。そして、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。したがって、観察窓63および照明窓9c以外は、従来の培養容器と同様にシンプルな構成にすることができる。
【0114】
図26に示す例では、光源21から発せられた照明光が、攪拌翼17bに対して攪拌軸17aの長手方向にずれた位置を通過することとした。これに代えて、例えば、図27に示すように、攪拌翼17bの少なくとも一部が光学的に透明な材質によって形成され、光源21から発せられた照明光が、攪拌翼17bの光学的に透明な材質によって形成された領域を透過することとしてもよい。
【0115】
この構成によって、光源21から発せられて照明窓9cを透過した照明光が、攪拌翼17bの光学的に透明な材質によって形成された領域を透過する。そして、培養液W中の細胞Sに照明光が照射され、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。したがって、培養容器9内において、攪拌翼17bが配置されている深さに相当する領域の細胞密度も測定することができる。
【0116】
上記第3変形例においては、例えば、図28に示すように、光源21が、攪拌翼17bに向けて照明光を発することとしてもよい。また、攪拌翼17bの照明光の光路上に配置される領域が、照明光を観察窓63に向けて反射する材質によって形成されていることとしてもよい。
【0117】
この構成によって、光源21から発せられて照明窓9cを透過した照明光が、攪拌翼17bによって反射される。そして、培養液W中の細胞Sに照明光が照射され、細胞Sを透過した照明光の透過光が、観察窓63を透過してステレオ光学系25に入射される。
【0118】
この場合において、光源21およびステレオ光学系25を培養容器9の外側に配置することによって、これら光源21およびステレオ光学系25が培養液Wおよび細胞Sの流れの邪魔にならずに済む。また、培養容器9の外側において光源21とステレオ光学系25を近接した位置に配置することができ、省スペース化を図ることができる。
【0119】
第4変形例としては、図29に示すように、光源21が培養容器9の外側に配置され、培養容器9内に向けて照明光を発することとしてもよい。また、培養容器9が、光源21から発せられた照明光を培養容器9内において内周面に沿う方向に偏向する第1プリズム57と、第1プリズム57により偏向された後に培養液W中の細胞Sに照射された照明光の透過光を培養容器9の外側に向けて偏向する第2プリズム59とをそれぞれ側面に有することとしてもよい。そして、ステレオ光学系25が、培養容器9の外側に配置され、第2プリズム59によって培養容器9の外側に出射された光を結像させることとしてもよい。
【0120】
本変形例によれば、培養容器9の培養液Wや細胞Sの流れがステレオ光学系25によって邪魔されずに済む。この場合において、細胞Sからの光を第2プリズム59によって偏向することにより、ステレオ光学系25の光軸に交差する方向から発せられる細胞Sの光をステレオ光学系25に入射させることができる。また、照明光が培養容器9内を横断せず、第1プリズム57と第2プリズム59との距離を短くすることができる。これにより、照明光の光路中の培養液Wの体積が小さく、細胞Sの数も少ないので、照明光の散乱の影響を抑制して、コントラストが高い像を得ることができる。
【0121】
第5変形例としては、例えば、図30に示すように、培養容器9が、観察窓63を底面に有することとしてもよい。また、光源21が、培養容器9の上面に配置され、観察窓63に向けて照明光を発することとしてもよい。また、ステレオ光学系25が、培養容器9の底面の下方に配置され、観察窓63を透過して培養容器9外に出射された細胞Sからの光を結像させることとしてもよい。
【0122】
この場合、ステレオ光学系25を培養容器9の底面に沿って配置することとしてもよい。また、観察窓63とステレオ光学系25との間に、観察窓63を透過した光を培養容器9の底面に沿う方向に偏向することによって、ステレオ光学系25に入射させる直角プリズム55を配置することとしてもよい。
【0123】
この構成によって、培養容器9の培養液Wや細胞Sの流れがステレオ光学系25によって邪魔されずに済む。また、培養容器9の形状をシンプルにすることができる。
【0124】
上述した第4実施形態および第5実施形態では、ステレオ光学系25の観察窓63の高さ位置と光源21の高さ位置とが異なるように配置することを例示した。ステレオ光学系25の光軸に対して斜めに照明光が入射することによって偏斜照明画像の取得が可能であるため、ステレオ光学系25の光軸に対して光源21をずらして配置してもよい。例えば、光源21から発せられる照明光の光軸に対してステレオ光学系25を傾けて配置してもよい。
【0125】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態に係るバッグ培養装置(観察装置)について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るバッグ培養装置71は、例えば、図31および図32に示すように、袋状の培養バッグ(培養容器)73内に培養液Wとともに収容された状態で培養されている細胞Sを観察するものである点で第1~第5実施形態と異なる。
本実施形態の説明において、上述した第1~第5実施形態に係る観察装置1,51,61と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0126】
バッグ培養装置71は、カメラユニット3を収容する箱状の筐体部75と、筐体部75に搭載され、培養バッグ73を載置する載置部77と、筐体部75に対して載置部77を揺動させる揺動機構79とを備えている。
【0127】
カメラユニット3は、光源21およびライトガイドファイバ23を備えず、先端ユニット5に装着されていない状態で、筐体部75内に収容されている。また、カメラユニット3は、ステレオ光学系25の前方に配置される光学的に透明な材質からなる平行平板状の観察窓81を備えている。カメラユニット3は、筐体部75の上面から観察窓81を突出させ、観察窓81を透過して筐体29内に入射する光をステレオ光学系25によって結像させる。
【0128】
載置部77は、筐体部75の上面に設置されている。載置部77は、ステレオ光学系25の観察窓81を貫通させる孔部77aを有している。孔部77aは、載置部77が観察窓81に干渉するのを回避可能な十分な大きさを有している。
【0129】
筐体部75は、光源21を支持する光源支持部83を備えている。光源支持部83は、載置部77に載置される培養バッグ73に対して上方に間隔をあけた位置に光源21を配置し、光源21を観察窓81に向けて保持する。光源21は、光源支持部83により、ステレオ光学系25の光軸上から光軸に交差する方向にずれた位置に配置されている。光源21は、観察窓81に向けて斜め上方から照明光を照射する。これにより、培養バッグ73内の細胞Sを偏斜照明で照明し、細胞Sのコントラストを向上した画像を取得することができる。
【0130】
揺動機構79は、筐体部75上面と載置部77下面との間に配置されている。揺動機構79は、光源21およびステレオ光学系25に対して、載置部77をステレオ光学系25の光軸に交差する方向に揺動させる。揺動機構79によって培養バッグ73を揺動させることにより、培養バッグ73内の細胞Sを攪拌することができる。
【0131】
本実施形態によれば、培養液Wおよび細胞Sが収容された培養バッグ73が載置部77上に載置され、揺動機構79によって載置部77が揺動されることにより、培養バッグ73内で培養液Wが攪拌されながら細胞Sが培養される。
【0132】
この状態で、光源21から発せられた照明光が培養バッグ73内の細胞Sに照射される。細胞Sを透過した照明光の透過光は、観察窓81を透過してステレオ光学系25に入射し、撮像素子27によって撮影される。本実施形態に係るバッグ培養装置71においても、ステレオ光学系25からの距離に応じて同一の細胞Sの位置がずれた複数の画像が取得されるので、画像解析部7により、培養液W内の細胞密度を精度よく算出することができる。したがって、使用する培養バッグ73の形状および大きさ等に関わらず、培養液W内の細胞密度を精度よく測定することができる。
【0133】
本実施形態は、以下の構成に変形することができる。
本実施形態においては、光源21およびステレオ光学系25に対して載置部77上の培養バッグ73が揺動することとした。これに代えて、例えば、図33および図34に示すように、揺動機構79により、載置部77上の培養バッグ73とともに光源21およびステレオ光学系25が揺動することとしてもよい。
【0134】
この場合、光源21およびステレオ光学系25の先端をそれぞれ載置部77上の培養バッグ73に密着させることとしてもよい。光源21およびステレオ光学系25の観察窓81を培養バッグ73に密着させることによって、細胞密度の計測時の状態をより安定させることができる。例えば、ステレオ光学系25の観察窓81を培養バッグ73に密着させるために、載置部77上の培養バッグ73に対してステレオ光学系25をカメラユニット3ごと近接および離間させるステレオ光学系位置調整機構85を設けることとしてもよい。また、光源21を培養バッグ73に密着させるために、光源支持部83が、載置部77上の培養バッグ73に対して光源21を近接および離間させる光源位置調整機構87を備えることとしてもよい。
【0135】
本実施形態においては、培養バッグ73の下方にステレオ光学系25が配置され、培養バッグ73の上方に光源21が配置されることとした。これに代えて、例えば、図35に示すように、培養バッグ73の上方にステレオ光学系25が配置され、培養バッグ73の下方に光源21が配置されることとしてもよい。図35において、符号89は、カメラユニット3を支持するカメラユニット支持部を示している。
【0136】
この場合、載置部77上に光源21を配置し、載置部77に載置される培養バッグ73に対して光源21が下方から照明光を照射することとしてもよい。また、載置部77の上方にカメラユニット3を配置し、光源21から照明光が照射されることによって培養バッグ73の細胞Sを上方に向かって透過した透過光をステレオ光学系25に入射させることとしてもよい。
【0137】
また、光源21およびステレオ光学系25が固定された状態で、揺動機構79によって培養バッグ73上の載置部77が揺動させられることとしてもよい。あるいは、揺動機構79によって、載置部77上の培養バッグ73とともに光源21およびステレオ光学系25が揺動することとしてもよい。この場合は、ステレオ光学系25の観察窓81を載置部77上の培養バッグ73に密着させるステレオ光学系位置調整機構85を採用することとしてもよい。
【0138】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0139】
1,51,61,71 観察装置
7 画像解析部
9 培養容器
9c 照明窓
25 ステレオ光学系(ステレオ撮像光学系)
27 撮像素子(ステレオ撮像光学系)
17 攪拌機構
17a 攪拌軸
17b 攪拌翼
21 光源
31 対物光学系
33 絞り開口部
35 偏向プリズム(プリズム)
37 結像光学系
43 ミラー(偏斜照明部)
63 観察窓
65 透過窓
73 培養バッグ(培養容器)
S 細胞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22
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図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35