(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】薄膜太陽電池の製造方法及び薄膜太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20220427BHJP
H01L 31/0445 20140101ALI20220427BHJP
【FI】
H01L31/04 260
H01L31/04 530
(21)【出願番号】P 2020531619
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2019089806
(87)【国際公開番号】W WO2020237694
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】201910452515.8
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520188949
【氏名又は名称】信利半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】TRULY SEMICONDUCTORS LTD.
【住所又は居所原語表記】North of the Dong Chong Road,Truly Industrial Area Shanwei City,Guangdong 516600 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 源
(72)【発明者】
【氏名】趙 云
(72)【発明者】
【氏名】張 為蒼
(72)【発明者】
【氏名】▲すい▼ 斌
(72)【発明者】
【氏名】張 文進
(72)【発明者】
【氏名】楊 亮
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-018683(JP,A)
【文献】特開2016-224427(JP,A)
【文献】国際公開第2008/131743(WO,A1)
【文献】中国実用新案第206757240(CN,U)
【文献】中国実用新案第206757239(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107845688(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102478678(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0185120(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0263197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 51/42-51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜太陽電池の製造方法であって、
透明基板を提供し、表示モジュールに向かう透明基板の一方側に、前面電極、光吸収層及び裏面電極を順次堆積して成膜するステップS100と、
裏面電極、光吸収層及び前面電極を順次エッチングするステップS200と、
前記裏面電極と光吸収層を覆い、前面電極に接触して接続するまで延びている絶縁層を成膜により製造するステップS300と、
絶縁層上に、前面電極に接触するまで延びている金属補助電極を成膜してエッチングする、ステップS400と、を含み、
前記絶縁層の製造過程において、前記絶縁層の外周と前面電極との間に、角度範囲35°~75°のTaper角を形成
し、
前記金属補助電極の製造過程において、前記絶縁層において前記Taper角が形成された面上から前記前面電極まで延在するように形成する
ことを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
ステップS200では、前記裏面電極と光吸収層には、ビア領域がさらに開口しており、ステップS300では、前記絶縁層は、ビア領域において前面電極に接触するまで延びている、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層は、ビア領域を不完全に充填することで、前記金属補助電極をビア領域で前面電極に接触させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前面電極を製造する前に、透明基板に対してセル分割ラインの遮蔽層を製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記金属補助電極を製造した後、前記金属補助電極を覆う反射防止層を製造する、
ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項6】
薄膜太陽電池であって、透明基板と、前記透明基板上に設けられ、表示モジュールに向かって配置される太陽光ユニットと、を備え、前記太陽光ユニットは、前記透明基板上に設けられる前面電極、前記前面電極上に設けられる光吸収層、及び前記光吸収層上に設けられる裏面電極を備え、金属補助電極と絶縁層をさらに備え、前記絶縁層は、前記裏面電極及び光吸収層を覆い、前面電極に接触して接続するまで延びており、前記金属補助電極は、前面電極に接触して接続され、絶縁層まで延びており、前記絶縁層の外周と前面電極との間に、角度範囲35°~75°のTaper角が形成され
、前記金属補助電極は、前記絶縁層において前記Taper角が形成された面上から前記前面電極まで延在するように形成される
ことを特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項7】
前記裏面電極と光吸収層には、ビア領域がさらに開口しており、前記絶縁層は、ビア領域において前面電極に接触して接続される、
ことを特徴とする請求項5に記載の薄膜太陽電池。
【請求項8】
前記絶縁層は、ビア領域を不完全に充填し、そして、前記金属補助電極は、ビア領域で前面電極に接触する、
ことを特徴とする請求項6に記載の薄膜太陽電池。
【請求項9】
前記金属補助電極には、前記金属補助電極を覆う反射防止層がさらに設けられる、
ことを特徴とする請求項5-7のいずれか一項記載の薄膜太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池製造の技術分野に関し、より具体的には、薄膜太陽電池の製造方法及び薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩及びエネルギー問題の解決の緊急の必要性に伴い、太陽電池は、エネルギー変換デバイスとして広く研究・使用されている。たとえば、太陽電池は表示可能な電子製品(ウェアラブルデバイスなど)に適用され、一般に、電子製品には額縁領域と中央表示領域があり、製品の表示外形の特性に応じて、単電池または複数の電池を直列接続する設計が採用され、また、電池の太陽光変換効率を向上させるために、通常、表示領域にも太陽光変換ユニットが設置される。ただし、表示領域の光透過率及び視覚的効果の両方を考慮すると、表示領域の光電変換ユニットの幅は非常に狭く設計されており、金属電極の幅は一般に約10μmである。
【0003】
幅が非常に狭く設計されているため、製造プロセスは、光電変換ユニットの有効面積と製品の信頼性に大きな影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術の欠点を解決するために、本発明は、前記絶縁層の外周と前面電極との間に角度範囲35°~75°のTaper角を形成することによって、最大の太陽光吸収面積と最低の金属補助電極の反射視認性を両立させ、且つ製品の信頼性を確保することができる、薄膜太陽電池の製造方法及び薄膜太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が実現しようとする技術的効果は、以下の技術案によって実現される。薄膜太陽電池の製造方法であって、
透明基板を提供し、表示モジュールに向かう透明基板の一方側に、前面電極、光吸収層及び裏面電極を順次堆積して成膜するステップS100と、
裏面電極、光吸収層及び前面電極を順次エッチングするステップS200と、
前記裏面電極と光吸収層を覆い、前面電極に接触して接続するまで延びている絶縁層を成膜により製造するステップS300と、
絶縁層上に、前面電極に接触するまで延びている金属補助電極を成膜してエッチングする、ステップS400と、を含み、
前記絶縁層の製造過程において、前記絶縁層の外周と前面電極との間に、角度範囲35°~75°のTaper角を形成することを特徴とする。
【0006】
好ましくは、ステップS200では、前記裏面電極と光吸収層には、ビア領域がさらに開口しており、ステップS300では、前記絶縁層は、ビア領域において前面電極に接触するまで延びている。
【0007】
好ましくは、前記絶縁層は、ビア領域を不完全に充填することで、前記金属補助電極をビア領域で前面電極に接触させる。
【0008】
好ましくは、前面電極を製造する前に、透明基板に対してセル分割ラインの遮蔽層を製造する。
【0009】
好ましくは、前記金属補助電極を製造した後、前記金属補助電極を覆う反射防止層を製造する。
【0010】
薄膜太陽電池であって、透明基板と、前記透明基板上に設けられ、表示モジュールに向かって配置される太陽光ユニットと、を備え、前記太陽光ユニットは、前記透明基板上に設けられる前面電極、前記前面電極上に設けられる光吸収層、及び前記光吸収層上に設けられる裏面電極を備え、金属補助電極と絶縁層をさらに備え、前記絶縁層は、前記裏面電極及び光吸収層を覆い、前面電極に接触して接続するまで延びており、前記金属補助電極は、前面電極に接触して接続され、絶縁層まで延びており、前記絶縁層の外周と前面電極との間に、角度範囲35°~75°のTaper角が形成される。
【0011】
好ましくは、前記裏面電極と光吸収層には、ビア領域がさらに開口しており、前記絶縁層は、ビア領域において前面電極に接触して接続される。
【0012】
好ましくは、前記絶縁層は、ビア領域を不完全に充填し、そして、前記金属補助電極は、ビア領域で前面電極に接触する。
【0013】
好ましくは、前記金属補助電極には、前記金属補助電極を覆う反射防止層がさらに設けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の利点を有する。
1、前記絶縁層の外周と前面電極との間に角度範囲35°~75°のTaper角を形成することで、最大の太陽光吸収面積と最低の金属補助電極の反射視認性を両立させ、且つ製品の信頼性を確保することができる。
2、裏面電極と光吸収層にビア領域が開口し、前記絶縁層がビア領域を不完全に充填することで、前記金属補助電極をビア領域で前面電極と接触させ、それによって、前面電極の抵抗をさらに低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明における薄膜太陽電池の平面構造模式図である。
【
図2】
図1のA-A部の一実施形態の断面構造模式
図1(大Taper角)である。
【
図3】
図1のA-A部の一実施形態の断面構造模式
図2(小Taper角)である。
【
図4】
図1のA-A部の別の実施形態の断面構造模式
図1(大Taper角)である。
【
図5】
図1のA-A部の別の実施形態の断面構造模式
図2(小Taper角)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明を詳しく説明し、前記実施例の例示は図面に示され、図面を通じて同じ又は類似した符号は、同じ又は類似した素子又は同じ又は類似した機能を有する素子を表す。以下、図面を参照しながら説明する実施例は、例示的なものである。実施例は、本発明を解釈するものではあるが、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。
【0017】
なお、本発明の説明では、用語「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などにより示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、説明の便宜及び説明の簡素化のために過ぎず、示される装置又は素子が、必ず特定の方位を有したり、特定の方位で構成・操作されたりすることを指示又は示唆するものではなく、このため、本発明を制限するものとして理解されるべきではない。
【0018】
本発明では、特に明確な規定や限定がない限り、用語「取り付け」、「連結」、「接続」、「固定」、「設置」などの用語は、広義で理解すべきであり、たとえば、固定して接続されてもよく、取り外し可能に接続されてもよく、一体にしてもよい。機械的に接続してもよく、電気的に接続してもよい。直接連結してもよく、中間物を介して間接的に連結してもよく、また、2つの素子の内部が連通してもよく、2つの素子が互いに作用してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明での上記用語の意味を把握できる。
【0019】
実施例1
図1-
図3に示されるように、本発明の実施例は、薄膜太陽電池の製造方法を提供し、薄膜太陽電池は、透明基板10と、前記透明基板10上に設けられ、表示モジュールに向かって配置される太陽光ユニットと、を備え、前記太陽光ユニットは、前記透明基板上に設けられる前面電極20、前記前面電極20上に設けられる光吸収層30、及び前記光吸収層30上に設けられる裏面電極40を備え、絶縁層50と金属補助電極60をさらに備え、前記絶縁層50は、前記裏面電極40及び光吸収層30を覆い、前面電極20に接触して接続するまで延びており、前記金属補助電極60は、前面電極20に接触して接続され、絶縁層50まで延びている。
【0020】
前記薄膜太陽電池の製造方法は、ステップS100~ステップS400を含む。
【0021】
ステップS100:透明基板10を提供し、表示モジュールに向かう透明基板10の一方側に、前面電極20、光吸収層30及び裏面電極40を順次堆積して成膜する。
【0022】
あるいは、太陽エネルギーの吸収を向上させるために、前面電極20をテクスチャリングして凹凸のある面を形成するステップをさらに含んでもよい。前記前面電極20、光吸収層30及び裏面電極40の堆積成膜プロセスは従来の一般的な技術であり、特に限定しない。
【0023】
ステップS200:裏面電極40、光吸収層30及び前面電極20を順次エッチングしてパターニングする。
【0024】
前記ステップS200のエッチング・パターニングには、上から下へ、裏面電極40、光吸収層30及び前面電極20を順次エッチングしてパターニングし、それによって、裏面電極40、光吸収層30及び前面電極20の性能を確保するとともに、エッチング中に別の層へダメージを与えることを回避する。
【0025】
ステップS300:前記裏面電極40上に、前記裏面電極40及び光吸収層30を覆い、前面電極20に接触して接続するまで延びている絶縁層50を成膜により製造する。前記絶縁層50は、前記裏面電極40及び光吸収層30を保護し、且つ、裏面電極40と前面電極20の接触による短絡を防止できる。
【0026】
ステップS400:絶縁層50上に、前面電極20に接触するまで延びている金属補助電極60を成膜してエッチングする。
【0027】
前記絶縁層50の製造には、前記絶縁層50の外周と前面電極20との間に、角度範囲35°~75°Taper角を形成する。
【0028】
前記絶縁層のTaper角をこのような角度範囲に設定することで、最大の太陽光吸収面積と最低の金属補助電極60の反射視認性を両立できる。
【0029】
図4-
図5に示されるように、本発明のさらなる改良として、ステップS200では、前記裏面電極40及び光吸収層30には、ビア領域がさらに開口しており、ステップS300では、前記絶縁層50は、ビア領域において前面電極20に接触するまで延びている。前記開口ステップは、裏面電極40、光吸収層30をエッチングするときに、マスクを用いてこの領域をエッチングにより除去することでビアを形成することができるが、それに制限されない。
【0030】
本発明のさらなる改良として、前記絶縁層50は、ビア領域を不完全に充填することで前記金属補助電極60をビア領域で前面電極20に接触させ、それによって、金属補助電極60と前面電極20との接触面積を増大し、前面電極20の抵抗をさらに低減させる。
【0031】
前記絶縁層50と透明基板10との間のTaper角の形成の原理は、以下のとおりである。
図2-
図5に示されるように、太陽光ユニットの総幅をW/W’、太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域)内の前面電極20と光吸収層30が設置されていない部位の幅をγ/γ’とすれば、金属補助電極60と前面電極の接触面積の設計値(接触幅又はビアのサイズφ)が一定である場合、絶縁層50のTaper角(θ/θ’)の大きさは、金属補助電極60と太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域内)にある前面電極との接触信頼性に影響する要因である。また、Taper角は、太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域)の周辺にある光吸収層30の面積に影響する主因でもあり、θが大きいほど、その周辺に残った太陽光吸収有効面積が大きく、ただし、θ値が75°を超えると、前面電極20の太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域の底面の円周)での金属補助電極60の金属堆積層が薄くなり、接合効果が悪くなり(異なる平面の境界では、結晶粒堆積にはずれが存在する)、逆には、Taper角が小さいほど、前面電極20の太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域の底面の円周)での金属補助電極60の金属堆積層が厚くなり、接合効果が良好であり(結晶粒の堆積接合状態が平面領域での効果にほぼ相当)、前面電極20との接合効果もより良好であり、ただし、裏面電極40を完全に覆うために(光吸収層30と裏面電極40の総堆積厚さが一定である場合、絶縁層50の塗布厚さが十分でなければならない)、また、その周辺にある太陽光吸収有効幅[(W-γ)=(W’-γ’)]を一定に保持するために、この位置での太陽光吸収層の寸法を広くする必要がある。さらに、θ値が減少するのに伴い、太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域内)領域の金属反射面積が倍増し、透明基板10側から金属が視認されることが明らかになり、製品の信頼性を確保するとともに、太陽光ユニットの外エッジ(又はビア領域内)の金属の反射視認性を制御するために、絶縁層50のTaper角を35°~75°にする必要がある。
【0032】
本発明の実施例では、前記絶縁層50は、好ましくは有機類の感光材料を用いるが、無機類のSiO2、SiNx、α-Siなどを用いてもよい。有機感光材料を用いる場合、前記絶縁層50の製造プロセスは、S1塗布、S2予備硬化、S3露光、S4現像、S5本硬化である。前記有機感光材料を製造するときに、現像と本硬化との間には、退色ステップをさらに含む。
【0033】
無機類のSiO2、SiNx、α-Siなどの材料を用いる場合、前記絶縁層50の製造プロセスは、S1 CVD化学気相成膜/マグネトロンスパッタリング成膜、S2 PR塗布、S3予備硬化、S4露光、S5現像、S6ケミカルドライエッチング、S7剥離である。
【0034】
本発明の実施例1の薄膜太陽電池の製造には、材料の種類及び特性によって、この角度要件を満たすために異なるプロセス条件が設定されなければならない。ネガティブ有機感光材料を用いる場合、製造プロセスの露光及び本硬化条件はTaper角に影響する要因である。一般には、正常な露光プロセスのパラメータに対して、低露光量を用いる場合、小さなTaper角が得られ、逆に、高露光量を用いる場合、大きな(シャープ)Taper角が得られる。ポジティブフォトレジストを用いる場合、露光パラメータの設定とTaper角の大きさの関係は逆になる。デバイスの構造及び材料の許容温度範囲で、本硬化温度の上昇及び時間の経過に伴い、Taper角も適切に減少する(勾配が小さくなる)。
【0035】
無機材料及びケミカルドライエッチング方式を用いて絶縁層50を製造する場合、所望の角度を得るために、CVDの成膜速度及びケミカルドライエッチング速度を調整する必要がある。小さなTaper角が必要である場合、膜層が厚くなるのに伴い、CVDチャンバーの堆積間隔と堆積圧力値を徐々に増大し(増大すると、成膜速率が高くなる)、それによって、膜層の緻密性を徐々に減少させ、ケミカルドライエッチングの場合、最初にエッチングされる絶縁層50の膜層がよりエッチングされやすくなり、前面電極20に近い一方側の絶縁層50がより緻密になり、エッチングによる除去量が少なくなり、エッチングの異方性の結果、小さなTaper角が形成される。
【0036】
大きなTaper角が必要である場合、CVDチャンバーの堆積間隔と堆積圧力値を増大する程度をその分低減させ、最初にエッチングされる層の緻密性を高めると、好ましい結果が得られる。
【0037】
本発明のさらなる改良として、前面電極20を製造する前に、透明基板10に対してセル分割ラインの遮蔽層を製造し、この分割ラインは、直列接続された複数の薄膜太陽電池の分割に用いられる。
【0038】
本発明のさらなる改良として、前記金属補助電極60を製造した後(ステップS6後)、反射防止層をさらに製造し、前記反射防止層は、前記金属補助電極60を覆い、金属補助電極60による光の反射を防止する。
【0039】
なお、前記薄膜太陽電池の製造には、最外層となる保護層の製造がさらに含まれ、前記保護層は、裏面電極40、光吸収層30、前面電極20及び金属補助電極60を保護する。前記保護層の製造には、従来技術の任意の常法が利用できるが、本実施例では、特に説明したり限定したりしない。
【0040】
本発明の実施例1の前記前面電極20、光吸収層30、裏面電極40、金属補助電極60、絶縁層50、セル分割ラインの遮蔽層及び反射防止層の製造方法は、従来技術のいずれも利用でき、したがって、詳しく説明しない。前記光吸収層30、裏面電極40及び絶縁層50上の孔の構造は、それぞれのプロセスによって製造され、本発明では特に制限がない。
【0041】
実施例2
図1-
図3に示されるように、本発明の実施例2は、薄膜太陽電池を提供し、前記薄膜太陽電池は、表示モジュールの表示面側に設けられ、透明基板10と、前記透明基板10上に設けられ、表示モジュールに向かって配置される太陽光ユニットと、を備え、前記太陽光ユニットは、前記透明基板10上に設けられる前面電極20、前記前面電極20上に設けられる光吸収層30、及び前記光吸収層30上に設けられる裏面電極40を備える。
【0042】
前記薄膜太陽電池は、絶縁層50と金属補助電極60をさらに備え、前記絶縁層50は、前記裏面電極40と光吸収層30を覆い、前面電極20に接触して接続するまで延びており、前記金属補助電極60は、前面電極20に接触して接続され、絶縁層50まで延びており、前記絶縁層50の外周と前面電極20との間に、角度範囲35°~75°のTaper角が形成される。
【0043】
本発明の実施例の前記薄膜太陽電池では、前記絶縁層のTaper角の角度範囲を設定することで、最大の太陽光吸収面積と最低の金属補助電極60の反射視認性を両立できる。
【0044】
図4-
図5に示されるように、本発明の実施例2のさらなる改良として、前記裏面電極40と光吸収層30には、ビア領域がさらに開口しており、前記絶縁層50は、ビア領域において前面電極20に接触するまで延びている。
【0045】
本発明の実施例2のさらなる改良として、前記絶縁層50は、ビア領域を不完全に充填し、前記金属補助電極60はビア領域で前面電極20に接触し、それによって、絶縁層50と前面電極20の接触面積を増大し、前面電極20の抵抗をさらに低減させる。
【0046】
本発明の実施例2のさらなる改良として、前記金属補助電極60には、前記金属補助電極60を覆う反射防止層(未図示)が設けられる。
【0047】
本発明の実施例の前記薄膜太陽電池は、単体として利用してもよく、複数を直列接続したものとして利用してもよく、本発明では限定しない。複数の薄膜太陽電池を直列接続して使用する場合、前記薄膜太陽電池の間には、セル分割ラインが設けられる。
【0048】
本発明の実施例では、前記前面電極20は、SnO2、ITO、AZO、BZO、GZO又はZnO等の金属酸化物材質を利用できるが、これらに制限されない。
【0049】
前記裏面電極40は、好ましくは、単層電極膜又は多層電極膜を用いるが、単体金属材質、合金材質又は金属酸化物/窒化物/ハライド材質などを用いるが、それに制限されず、これら単体金属材質、合金材質又は金属酸化物/窒化物/ハライド材質に含有される金属元素は、低抵抗率の金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル又はモリブデンなどのうちの1種である。
【0050】
なお、以上の実施例は、本発明の実施例の技術案を説明するものに過ぎず、制限するものではなく、好適実施例を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の実施例の技術案を修正したり同等置換を行ったりすることができ、これら修正又は同等置換により、修正された技術案が本発明の実施例の技術案の範囲を逸脱することはない。