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7064596機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20220427BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20220427BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20220427BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B41N1/14 ZAB
G03F7/033
G03F7/11 501
G03F7/00 503
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020533546
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029710
(87)【国際公開番号】W WO2020027070
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2018142428
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018205748
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健次郎
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082844(JP,A)
【文献】特開2016-179592(JP,A)
【文献】特開2006-188039(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043259(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027886(WO,A1)
【文献】特開2013-199130(JP,A)
【文献】特開2015-132837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、画像記録層と、オーバーコート層と、をこの順で有し、
前記画像記録層が、重合性化合物、及び、バインダーポリマーを含み、
前記バインダーポリマーが、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を含み、
前記重合性化合物が、オリゴマーを含有し、
前記オーバーコート層が、水溶性ポリマーを含む
機上現像型平版印刷版原版。
【請求項2】
前記オーバーコート層の膜厚が、前記画像記録層の膜厚より厚い、請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含む、請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項4】
前記オリゴマーが、2つ以上の重合性基を有する、請求項1請求項のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記オリゴマーが、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、請求項1請求項のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項6】
前記オリゴマーの含有量が、前記重合性化合物の全質量に対して、30質量%~100質量である、請求項1請求項のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項7】
前記オリゴマーの分子量が600以上10,000以下であり、かつ、1分子中の重合基数が3以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項8】
前記オリゴマーの分子量が1,000以上10,000以下であり、かつ、1分子中の重合基数が7以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項9】
前記重合性化合物として、低分子重合性化合物を更に含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項10】
前記低分子重合性化合物が、イソシアヌル環構造を有する、請求項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項11】
前記低分子重合性化合物の分子量が600未満である、請求項又は請求項10に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項12】
前記重合性化合物の全質量に対する前記バインダーポリマーの含有量が、0質量%を超え5,000質量%以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項13】
前記バインダーポリマーが、N-ビニルピロリドン化合物により形成される構成単位を更に含む、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項14】
前記画像記録層が、赤外線吸収剤を更に含む、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項15】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤である、請求項14に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項16】
前記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤である、請求項14又は請求項15に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項17】
前記赤外線吸収剤が、シアニン色素である、請求項14~請求項16のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項18】
前記赤外線吸収剤が、下記式1で表される化合物である、請求項14~請求項17のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化1】

式1中、Rは赤外線露光によりR-L結合が開裂する基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【請求項19】
前記式1におけるRが、下記式2で表される基である、請求項18に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化2】

式2中、Rは、アルキル基を表し、波線部分は、前記式1中のLで表される基との結合部位を表す。
【請求項20】
請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【請求項21】
請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
また、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境課題がクローズアップされている。
上記の環境課題に対して、現像あるいは製版の簡易化、無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。すなわち、平版印刷版原版を露光後、従来の現像は行わず、そのまま印刷機に装着して、画像記録層の不要部分の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
本開示において、このような機上現像に用いることができる平版印刷版原版を、「機上現像型平版印刷版原版」という。
従来の平版印刷版原版又は平版印刷版原版を用いた印刷方法としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、下記式(I)で表わされる単量体単位を有するアルカリ可溶性樹脂と、少なくとも1種以上のシランカップリング剤と、赤外線吸収剤と、ラジカル重合性開始剤と、エチレン性二重結合を有する重合性化合物とを少なくとも含有する感光性組成物が記載されている。
【0005】
【化1】
【0006】
上式中、R及びRは水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示し、L及びLは置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基、又は置換基を有してもよい炭素数6~15のアリール基を示す。
【0007】
特許文献2には、支持体上に、一つ以上の層を有する平版印刷版原版であって、上記支持体の対向する2辺又は4辺の端部のダレ量Xが20μm~150μmであり、上記一つ以上の層は、画像記録層を含み、上記一つ以上の層のうち、少なくとも一つの層がキレート剤を含み、上記一つ以上の層のうち、少なくとも一つの層が酸発色剤を含むことを特徴とする平版印刷版原版が記載されている。
【0008】
特許文献1:特開2014-048569号公報
特許文献2:特開2016-179592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した機上現像時には、現像カス(機上現像カス)が発生する場合がある。
このような機上現像カスが発生すると、湿し水の汚染、非画像部の汚染による印刷汚れの発生等の原因ともなるため、平版印刷版原版の分野においては、機上現像カスが抑制された機上現像型平版印刷版原版が求められている。
本発明者らは、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版(以下、単に「平版印刷版原版」ともいう。)は、特許文献1~3に記載の平版印刷版原版よりも、機上現像時の現像カスが抑制されることを見出した。
【0010】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、機上現像時の現像カスの抑制性に優れた機上現像型平版印刷版原版、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 支持体と、画像記録層と、オーバーコート層と、をこの順で有し、
上記画像記録層が、重合性化合物、及び、バインダーポリマーを含み、
上記バインダーポリマーが、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を含み、
上記重合性化合物が、オリゴマーを含有する
機上現像型平版印刷版原版。
<2> 上記オーバーコート層の膜厚が、上記画像記録層の膜厚より厚い上記<1>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<3> 上記オーバーコート層が、水溶性ポリマーを含む、上記<1>又は<2>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<4> 上記水溶性ポリマーが、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含む、上記<3>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<5> 上記オリゴマーが、2つ以上の重合性基を有する、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<6> 上記オリゴマーが、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有す、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<7> 上記オリゴマーの含有量が、上記重合性化合物の全質量に対して、30質量%~100質量である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<8> 上記重合性化合物として、低分子重合性化合物を更に含む、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<9> 上記低分子重合性化合物が、イソシアヌル環構造を有する、<8>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<10> 上記低分子重合性化合物の分子量が600未満である、上記<8>又は<9>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<11> 上記重合性化合物の全質量に対する上記バインダーポリマーの含有量が、0質量%を超え400質量%以下である、上記<1>~<10>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<12> 上記バインダーポリマーが、N-ビニルピロリドンにより形成される構成単位を更に有する、上記<1>~<11>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<13> 上記画像記録層が、赤外線吸収剤を更に含む、上記<1>~<12>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<14> 上記赤外線吸収剤が、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤である上記<13>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<15> 上記赤外線吸収剤が、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤である、上記<13>又は<14>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<16> 上記赤外線吸収剤が、シアニン色素である、上記<13>~<15>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<17> 上記赤外線吸収剤が、下記式1で表される化合物である、上記<13>~<16>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0012】
【化2】
【0013】
式1中、Rは赤外線露光によりR-L結合が開裂する基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0014】
<18> 上記式1におけるRが、下記式2で表される基である、上記<17>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0015】
【化3】
【0016】
式2中、Rは、アルキル基を表し、波線部分は、上記式1中のLで表される基との結合部位を表す。
<19> 上記<1>~<18>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む
平版印刷版の作製方法。
<20> 上記<1>~<18>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程と、
印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた平版印刷版により印刷する工程と、を含む
平版印刷方法。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一実施形態によれば、現像カスの抑制性に優れた機上現像型平版印刷版原版、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷版の作製方法、及び、上記機上現像型平版印刷版原版を用いた平版印刷方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」の用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。また、「平版印刷版」の用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
また、本開示において、化学構造式における「*」は、他の構造との結合位置を表す。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0019】
(機上現像型平版印刷版原版)
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、支持体と、画像記録層と、オーバーコート層と、をこの順で有し、上記画像記録層が、重合性化合物、及び、バインダーポリマーを含み、上記バインダーポリマーが、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を含み、上記重合性化合物が、オリゴマーを含有する。
本開示に係る機上現像型平版印刷版原版は、オーバーコート層の膜厚が、上記画像記録層の膜厚より厚いことが好ましい。
【0020】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成を採用することにより機上現像カスの抑制性に優れた平版印刷版が得られる平版印刷版原版を提供することができることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
【0021】
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体と、画像記録層と、オーバーコート層と、をこの順で有する。また、上記画像記録層は、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を有するバインダーポリマー(以下、「特定バインダーポリマー」ともいう。)と、オリゴマーを含有する重合性化合物を含み、これらの全ての構成要件が協奏的に働くことにより現像カスの発生が抑制されると推測されるが、そのメカニズムは定かではない。
平版印刷版を用いた印刷においては、版の印刷可能な枚数が多いことが求められている。版の印刷可能な枚数が多いことを、「耐刷性に優れる」という。
また、平版印刷版を用いた印刷においては、例えば印刷中にプレートクリーナー等を用いて版面を洗浄することが行われる。そのため、プレートクリーナー等の薬品に対する耐薬品性に優れた平版印刷版が得られる機上現像型平版印刷版原版が求められている。
平版印刷版原版において、オーバーコート層の形成により酸素が遮断され、かつ、画像記録層が重合性化合物としてオリゴマーを含むことにより画像部におけるポリマー生長がより促進されやすくなり、耐薬品性及び耐刷性が向上すると考えられる。また、重合性化合物としてオリゴマーを用いることで、例えば機上現像における水付け時に、画像部が取れ難くなるので、機上現像性に優れ、かつ、現像カスが抑制されると考えられる。
【0022】
また、一般的には、機上現像型平版印刷版において、プレートクリーナー等の薬剤による画像部の溶解性を低下させることにより得られる耐薬品性、又は、薬剤であるインキに対する耐性を向上させることにより得られる耐刷性と未露光部がインキとの親和性に優れることにより得られる機上現像性とを両立することは困難であると考えられ、本開示に係る平版印刷版原版はこれらの両立が可能である点で非常に有用であると考えられる。
このように、バインダーポリマーと、上記オーバーコート層と、上記重合性化合物と、の全てを含むことによる相乗的な効果により、耐刷性、耐薬品性及び機上現像カスの抑制性の両立が可能となるが、そのメカニズムは定かではない。また、上記要件の1つでも欠けた場合、これらの効果のうち少なくとも1つが低下すると考えられる。
以下、本開示に係る平版印刷版原版における各構成要件の詳細について説明する。
【0023】
<支持体>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体を有する。
支持体としては、親水性表面を有する支持体(「親水性支持体」ともいう。)が好ましい。親水性表面としては、水との接触角が10°より小さいものが好ましく、5°より小さいものがより好ましい。
本開示における水接触角は、協和界面化学(株)製DM-501によって、25℃における表面上の水滴の接触角(0.2秒後)として測定される。
本開示に係る平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001-253181号公報及び特開2001-322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
支持体は、中心線平均粗さが0.10μm~1.2μmであることが好ましい。
【0024】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0025】
<画像記録層>
本開示に係る平版印刷版原版は、支持体上に形成された画像記録層を有する。
本開示に用いられる画像記録層は、耐刷性、及び、感光性の観点から、重合性化合物を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、耐刷性、及び、感光性の観点から、電子受容型重合開始剤を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、露光感度の観点から、赤外線吸収剤を更に含むことが好ましい。
本開示に用いられる画像記録層は、露光部を現像前に確認するために、酸発色剤を更に含んでもよい。
本開示に係る平版印刷版原版は、機上現像性の観点から、画像記録層の未露光部が湿し水及び印刷インキよりなる群から選ばれた少なくとも1つにより除去可能であることが好ましい。
以下、画像記録層に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0026】
〔特定バインダーポリマー〕
本開示において用いられる画像記録層は、特定バインダーポリマーを含む。
本開示において、特定バインダーポリマーとは、粒子形状ではない結着樹脂であって、後述するポリマー粒子は本開示における特定バインダーポリマーには含まれないものとする。
特定バインダーポリマーは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を有する。
【0027】
-芳香族ビニル化合物により形成される構成単位-
特定バインダーポリマーは、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位を有する。
芳香族ビニル化合物としては、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよいが、スチレン化合物、ビニルナフタレン化合物等が挙げられ、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましく挙げられる。
ビニルナフタレン化合物としては、1-ビニルナフタレン、メチル-1-ビニルナフタレン、β-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メチル-1-ビニルナフタレン、4-メトキシ-1-ビニルナフタレン等が挙げられ、1-ビニルナフタレンが好ましく挙げられる。
【0028】
また、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位としては、下記式A1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0029】
【化4】
【0030】
式A1中、RA1、RA2及びRA2'はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Arは芳香環基を表し、RA3は置換基を表し、nはArの最大置換基数以下の整数を表す。
式A1中、RA1、RA2及びRA2'はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、いずれも水素原子であることが更に好ましい。
式A1中、Arはベンゼン環又はナフタレン環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。
式A1中、RA3はアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、メチル基又はメトキシ基であることが更に好ましい。
式A1中、RA3が複数存在する場合、複数のRA3は同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
式A1中、nは0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
【0031】
特定バインダーポリマーにおける、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、特定バインダーポリマーの全質量に対し、20質量%~70質量%であることが好ましく、30質量%~60質量%であることがより好ましい。
【0032】
-アクリロニトリル化合物により形成される構成単位-
特定バインダーポリマーは、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位を有する。
アクリロニトリル化合物としては、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好ましく挙げられる。
【0033】
また、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位としては、下記式B1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0034】
【化5】
【0035】
式B1中、RB1は水素原子又はアルキル基を表す。
式B1中、RB1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0036】
特定バインダーポリマーにおける、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位の含有量は、特定バインダーポリマーの全質量に対し、20質量%~70質量%であることが好ましく、30質量%~60質量%であることがより好ましい。
【0037】
-N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位-
特定バインダーポリマーは、耐刷性及び耐薬品性の観点から、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位をさらに有することが好ましい。
N-ビニル複素環化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルフェノチアジン、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、及びN-ビニルイミダゾールが挙げられ、N-ビニルピロリドンが好ましい。
【0038】
また、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位としては、下記式C1で表される構成単位が好ましく挙げられる。
【0039】
【化6】
【0040】
式C1中、Arは窒素原子を含む複素環構造を表し、Ar中の窒素原子が*で示した炭素原子と結合する。
式C1中、Arにより表される複素環構造は、ピロリドン環、カルバゾール環、ピロール環、フェノチアジン環、スクシンイミド環、フタルイミド環、カプロラクタム環、及びイミダゾール環であることが好ましく、ピロリドン環であることがより好ましい。
また、Arにより表される複素環構造は公知の置換基を有していてもよい。
【0041】
特定バインダーポリマーにおける、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有量は、特定バインダーポリマーの全質量に対し、5質量%~40質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0042】
-エチレン性不飽和基を有する構成単位-
特定バインダーポリマーは、エチレン性不飽和基を有する構成単位を更に有していてもよい。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されないが、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
エチレン性不飽和基を有する構成単位は、高分子反応又は共重合により特定バインダーポリマーに導入することができる。具体的には、例えば、メタクリル酸等のカルボキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(例えば、グリシジルメタクリレートなど)を反応させる方法、ヒドロキシ基等の活性水素を有する基を有する構成単位を導入した重合体に対し、イソシアネート基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(2-イソシアナトエチルメタクリレートなど)を反応させる方法等により導入することができる。
また、エチレン性不飽和基を有する構成単位は、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する構成単位を導入した重合体に対し、カルボキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させる等の方法により特定バインダーポリマーに導入されてもよい。
更に、エチレン性不飽和基を有する構成単位は、例えば下記式d1又は下記式d2により表される部分構造を含む単量体を用いることにより特定バインダーポリマー中に導入されてもよい。具体的には、例えば、上記単量体を少なくとも用いた重合後に、下記式d1又は下記式d2により表される部分構造に対し、塩基化合物を用いた脱離反応によってエチレン性不飽和基を形成することにより、エチレン性不飽和基を有する構成単位が特定バインダーポリマー中に導入される。
【0043】
【化7】
【0044】
式d1及び式d2中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Aはハロゲン原子を表し、Xは-O-又は-NR-を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
式d1及び式d2中、Rは水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Aは塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子であることが好ましい。
式d1及び式d2中、Xは-O-であることが好ましい。Xが-NR-を表す場合、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0045】
エチレン性不飽和基を有する構成単位としては、例えば、下記式D1により表される構成単位が挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】
式D1中、LD1は単結合又は二価の連結基を表し、LD2はm+1価の連結基を表し、XD1及びXD2はそれぞれ独立に、-O-又は-NR-を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、RD1及びRD2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、mは1以上の整数を表す。
【0048】
式D1中、LD1は単結合であることが好ましい。LD1が二価の連結基を表す場合、アルキレン基、アリーレン基又はこれらの2以上が結合した二価の基が好ましく、炭素数2~10のアルキレン基又はフェニレン基がより好ましい。
式D1中、LD2は下記式D2~下記式D6のいずれかにより表される基が好ましい。
式D1中、XD1及びXD2はいずれも-O-であることが好ましい。また、XD1及びXD2の少なくとも一つが-NR-を表す場合、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式D1中、RD1はメチル基であることが好ましい。
式D1中、m個のRD2のうち少なくとも1つはメチル基であることが好ましい。
式D1中、mは1~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0049】
【化9】
【0050】
式D2~式D6中、LD3~LD7は二価の連結基を表し、LD5とLD6は異なっていてもよく、*は式D1中のXD1との結合部位を表し、波線部は式D1中のXD2との結合部位を表す。
【0051】
式D3中、LD3はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D4中、LD4はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、LD5はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D5中、LD6はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
式D6中、LD7はアルキレン基、アリーレン基、又はこれらが2以上結合した基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキレン基、フェニレン基又はこれらが2以上結合した基であることがより好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和基を有する構成単位の具体例を下記に示すが、本開示に係るバインダーポリマーに含まれるエチレン性不飽和基を有する構成単位は、これに限定されるものではない。下記具体例中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0053】
【化10】
【0054】
特定バインダーポリマーにおける、エチレン性不飽和基を有する構成単位の含有量は、特定バインダーポリマーの全質量に対し、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましい。
【0055】
-酸性基を有する構成単位-
特定バインダーポリマーは、酸性基を有する構成単位を含有してもよいが、機上現像性及びインキ着肉性の観点からは、酸性基を有する構成単位を含有しないことが好ましい。
具体的には、特定バインダーポリマーにおける酸性基を有する構成単位の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
また、特定バインダーポリマーの酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、180mgKOH/g以下であることがより好ましく、150mgKOH/g以下であることが更に好ましい。上記酸価の下限は特に限定されず、0mgKOH/gであってもよい。
本開示において、酸価はJIS K0070:1992に準拠した測定法により求められる。
【0056】
-疎水性基を有する構成単位-
特定バインダーポリマーは、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を含有してもよい。
上記疎水性基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
疎水性基を含む構成単位としては、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記アリール(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。また、上記アリール基は公知の置換基を有していてもよい。アリール(メタ)アクリレート化合物としては、フェニル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。また、上記アラルキル(メタ)アクリレート化合物におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。アラルキル(メタ)アクリレート化合物としては、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
【0057】
-親水性基を有する構成単位-
特定バインダーポリマーは、耐刷性、耐薬品性及び機上現像性の向上の観点から、親水性基を有する構成単位を含んでもよい。
上記親水性基としては、-OH、-CN、-CONR、-NRCOR(R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基を表す。RとRは結合して環を形成してもよい。)-NR、-N(R~Rは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を表し、Xはカウンターアニオンを表す)、下記式POにより表される基等が挙げられる。
これら親水性基の中でも、-CONR又は式POにより表される基が好ましく、式POにより表される基がより好ましい。
【0058】
【化11】
【0059】
式PO中、Lはそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、nは1~100の整数を表す。
式PO中、Lはそれぞれ独立に、エチレン基、1-メチルエチレン基又は2-メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
式PO中、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
式PO中、nは1~10の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましい。
【0060】
-その他の構成単位-
特定バインダーポリマーは、その他の構成単位を更に含有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位を特に限定なく含有することができ、例えば、アクリルアミド化合物、ビニルエーテル化合物等により形成される構成単位が挙げられる。
アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル、などが挙げられる。
【0061】
-特定バインダーポリマーの製造方法-
特定バインダーポリマーの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、スチレン化合物と、アクリロニトリル化合物と、必要に応じて上記N-ビニル複素環化合物、上記エチレン性不飽和基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記酸性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、上記疎水性基を有する構成単位の形成に用いられる化合物、及び、上記その他の構成単位の形成に用いられる化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、とを、公知の方法により重合することにより得られる。
【0062】
特定バインダーポリマーの重量平均分子量は、3,000~300,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましい。
【0063】
-具体例-
特定バインダーポリマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられる特定バインダーポリマーはこれに限定されるものではない。
【0064】
【化12】
【0065】
【化13】
【0066】
上記具体例中、例えばP1-4における「40/30/10/20」の記載は、左から1番目の構成単位、2番目の構成単位、3番目の構成単位、及び、4番目の構成単位の含有比(質量比)をそれぞれ表す。
また、上記具体例中、各構成単位の含有比は、上述の各構成単位の含有量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
また、上記具体例に示す各化合物の重量平均分子量は、上述の特定バインダーポリマーの重量平均分子量の好ましい範囲に従って、適宜変更可能である。
【0067】
-含有量-
画像記録層は、特定バインダーポリマーを1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
画像記録層の全質量に対する特定バインダーポリマーの含有量は、5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、7質量%以上80質量%以下がより好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0068】
〔重合性化合物〕
本開示における画像記録層は、重合性化合物を含み、重合性化合物は、オリゴマーを含有する。本開示において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物をいう。
重合性基としては、特に限定されず公知の重合性基であればよいが、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
また重合性基としては、ラジカル重合性基であってもカチオン重合性基であってもよいが、ラジカル重合性基であることが好ましい。
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、ビニル基等が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
本開示において、重合性基を有する化合物であっても、上述の特定バインダーポリマー、後述するポリマー粒子、及び、後述する特定バインダーポリマー以外のバインダーポリマーに該当する化合物は、重合性化合物には該当しないものとする。
【0069】
-オリゴマー-
本開示においてオリゴマーとは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、重合性基を少なくとも1つ含む重合性化合物を表す。
耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、オリゴマーの分子量としては、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
【0070】
また、耐薬品性及び耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、6以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。
また、オリゴマーにおける重合性基の上限値は、特に制限はないが、重合性基の数は20以下であることが好ましい。
【0071】
耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性により優れる観点から、オリゴマーとしては、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であることがより好ましい。
【0072】
耐薬品性及び耐刷性により優れる観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
本明細書においてエポキシ残基とは、エポキシ基により形成される構造を指し、例えば酸基(カルボン酸基等)とエポキシ基との反応により得られる構造と同様の構造を意味する。
【0073】
<<ウレタン結合を有する化合物>>
ウレタン結合を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物との反応により得られる化合物が挙げられる。
【0074】
ポリイソシアネート化合物としては、2官能~5官能のポリイソシアネート化合物が挙げられ、2官能~3官能のポリイソシアネート化合物が好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、9H-フルオレン-2,7-ジイソシアネート、9H-フルオレン-9-オン-2,7-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,5-ジイソシアナトナフタレン、これらのポリイソシアネートのダイマー、トリマー(イソシアヌレート結合)等が好ましく挙げられる。また、上記のポリイソシアネート化合物と公知のアミン化合物とを反応させたビウレット体を用いてもよい。
【0075】
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、1つのヒドロキシ基と、1以上の重合性基とを有する化合物が好ましく、1つのヒドロキシ基と、2以上の重合性基とを有する化合物がより好ましい。
ヒドロキシ基及び重合性基を有する化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
ウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
【0077】
【化14】
【0078】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L~Lはそれぞれ独立に、炭素数2~20の二価の炭化水素基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
~Lとしては、それぞれ独立に、炭素数2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数4~8のアルキレン基であることが更に好ましい。また、上記アルキレン基は、分岐や環構造を有していてもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0079】
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部はそれぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
【0080】
【化15】
【0081】
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rはそれぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は式(Ac-1)及び式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
【0082】
また、ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
【0083】
<<エステル結合を有する化合物>>
また、エステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3以上であることが好ましく、6以上であることが更に好ましい。
【0084】
<<エポキシ残基を有する化合物>>
エポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。
また、エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2~6であることが好ましく、2~3であることがより好ましい。
上記エポキシ残基を有する化合物としては、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
【0085】
耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記オリゴマーの含有量は、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0086】
重合性化合物は、上記オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。
オリゴマー以外の重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端にエチレン性不飽和基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、末端にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
オリゴマー以外の重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物としては、単量体、2量体、3量体又は、それらの混合物などの化学的形態であってもよい。
また、低分子重合性化合物としては、耐薬品性の観点から、エチレン性不飽和基を3つ以上有する重合性化合物及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選ばれる少なくとも一方の重合性化合物であることが好ましい。
【0087】
本開示において低分子重合性化合物とは、分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)50以上600未満の重合性化合物を表す。
低分子重合性化合物の分子量としては、耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが更に好ましい。
重合性化合物が、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合(2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)、耐薬品性、耐刷性及び機上現像カスの抑制性の観点から、上記オリゴマーと低分子重合性化合物との比(オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが更に好ましい。
【0088】
重合性化合物の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報等に記載されている。
【0089】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0090】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(RM4)COOCHCH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0091】
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0092】
オリゴマーの具体例を下記表に示すが、本開示において用いられるオリゴマーはこれに限定されるものではない。
【0093】
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、UA510H、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学(株)製)、UV-1700B、UV-6300B、UV7620EA(いずれも日本合成化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、EBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス(株)製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0094】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが更に好ましい。
【0095】
また、上記画像記録層における上記重合性化合物の全質量に対する上記特定バインダーポリマーの含有量は、0質量%を超え5,000質量%以下であることが好ましく、80質量%~1,000質量%であることがより好ましく、100質量%~500質量%であることが更に好ましい。
【0096】
画像記録層において、特定バインダーポリマーと上記重合性化合物とは、海島構造をとることが好ましい。例えば、特定バインダーポリマーの海(連続相)の中に、上記重合性化合物が島状に分散(不連続層)した構造を採用することができる。上記重合性化合物の全質量に対する上記特定バインダーポリマーの含有量を上記範囲内の値とすることにより、海島構造を形成しやすいと考えられる。
【0097】
〔ポリマー粒子〕
上記画像記録層は、ポリマー粒子を含むことが好ましい。
ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)よりなる群から選ばれることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子又はミクロゲルが好ましい。特に好ましい実施形態では、ポリマー粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を含む。このようなポリマー粒子の存在により、露光部の耐刷性及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
また、ポリマー粒子は、熱可塑性ポリマー粒子であることが好ましい。
【0098】
熱可塑性ポリマー粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー粒子が好ましい。
熱可塑性ポリマー粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、又は、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は0.01μm~3.0μmが好ましい。
【0099】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性ポリマー粒子は熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0100】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好ましく挙げられる。
【0101】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の少なくとも一部をマイクロカプセルに内包させたものである。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有する構成が好ましい態様である。
【0102】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有する反応性ミクロゲルは、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0103】
画像記録層の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するには、公知の方法が適用できる。
【0104】
また、ポリマー粒子としては、耐刷性、耐汚れ性及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られるものが好ましい。
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
上記活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又は、ポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物がより好ましく、プロピレングリコール、グリセリン及びトリメチロールプロパンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物が更に好ましい。
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、特開2012-206495号公報の段落0032~0095に記載のポリマー粒子が好ましく挙げられる。
【0105】
更に、ポリマー粒子としては、耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含むことが好ましい。
上記疎水性主鎖としては、アクリル樹脂鎖が好ましく挙げられる。
上記ペンダントシアノ基の例としては、-[CHCH(C≡N)-]又は-[CHC(CH)(C≡N)-]が好ましく挙げられる。
また、上記ペンダントシアノ基を有する構成ユニットは、エチレン系不飽和型モノマー、例えば、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルから、又は、これらの組み合わせから容易に誘導することができる。
また、上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。
上記親水性ポリアルキレンオキシドセグメントにおけるアルキレンオキシド構造の繰り返し数は、10~100であることが好ましく、25~75であることがより好ましく、40~50であることが更に好ましい。
疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたペンダントシアノ基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む樹脂の粒子としては、特表2008-503365号公報の段落0039~0068に記載のものが好ましく挙げられる。
【0106】
ポリマー粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmが好ましく、0.03μm~2.0μmがより好ましく、0.10μm~1.0μmが更に好ましい。この範囲で良好な解像度と経時安定性が得られる。
本開示における上記各粒子の平均一次粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とする。
また、本開示における平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
ポリマー粒子の含有量は、画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%が好ましい。
【0107】
〔酸発色剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、酸発色剤を含むことが好ましい。
本開示で用いられる「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより、発色する性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0108】
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0109】
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド等のフタリド類、
【0110】
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0111】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0112】
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0113】
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0114】
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0115】
その他、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
【0116】
中でも、本開示に用いられる酸発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及び、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0117】
酸発色剤としては上市されている製品を使用することも可能であり、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0118】
これらの酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上の成分を組み合わせて使用することもできる。
酸発色剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0119】
〔特定バインダーポリマー以外のバインダーポリマー〕
画像記録層は、特定バインダーポリマー以外のバインダーポリマー(以下、「他のバインダーポリマー」ともいう。)を含んでもよい。
上記特定バインダーポリマー、及び、上記ポリマー粒子に該当するポリマーは、上記他のバインダーポリマーに該当しない。すなわち、他のバインダーポリマーは、スチレン化合物により形成される構成単位、及び、アクリロニトリル化合物により形成される構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも一方を有しない、粒子形状ではない重合体である。
他のバインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又は、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0120】
中でも、他のバインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0121】
また、他のバインダーポリマーの他の好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0122】
星型高分子化合物は、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。重合性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基(スチリル基)などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルフェニル基(スチリル基)が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。これらの基は併用してもよい。
【0123】
他のバインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが更に好ましい。
【0124】
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0125】
本開示において用いられる画像記録層においては、他のバインダーポリマーを1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
他のバインダーポリマーは、画像記録層中に任意な量で含有させることができるが、バインダーポリマーの含有量は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
また、本開示における画像記録層が他のバインダーポリマーを含む場合、上述の特定バインダーポリマーと他のバインダーポリマーとの合計質量に対する他のバインダーポリマーの含有量は、0質量%を超え99質量%以下であることが好ましく、20質量%~95質量%であることがより好ましく、40質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0126】
〔連鎖移動剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオール化合物がより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。上記チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0127】
連鎖移動剤として具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0128】
【化16】
【0129】
【化17】

【0130】
【化18】
【0131】
【化19】
【0132】
連鎖移動剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%が好ましく、0.05質量%~40質量%がより好ましく、0.1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0133】
〔感脂化剤〕
画像記録層は、着肉性を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、オーバーコート層に無機層状化合物を含有させる場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0134】
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
【0135】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0136】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5mol%~80mol%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0137】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,0000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
【0138】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。
(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)
(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)
(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)
(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)
(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)
(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)
(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)
(9)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート/2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0139】
感脂化剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.01質量%~30.0質量%が好ましく、0.1質量%~15.0質量%がより好ましく、1質量%~10質量%が更に好ましい。
【0140】
〔現像促進剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、現像促進剤を含んでもよい。
現像促進剤としては、親水性高分子化合物又は親水性低分子化合物が好ましい。
本開示において、親水性高分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000以上の化合物をいい、親水性低分子化合物とは分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が3,000未満の化合物をいう。
【0141】
-親水性高分子化合物-
親水性高分子化合物としては、セルロース化合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、セルロース化合物が好ましい。
セルロース化合物としては、セルロース、又は、セルロースの少なくとも一部が変性された化合物(変性セルロース化合物)が挙げられ、変性セルロース化合物が好ましい。
変性セルロース化合物としては、セルロースの水酸基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種により置換された化合物が好ましく挙げられる。
上記セルロースの水酸基の少なくとも一部が、アルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれた少なくとも一種により置換された化合物の置換度は1~3であることが好ましく、1.5~2であることがより好ましい。
変性セルロース化合物としては、アルキルセルロース化合物又はヒドロキシアルキルセルロース化合物が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロース化合物がより好ましい。
アルキルセルロース化合物としては、メチルセルロースが好ましく挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロース化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく挙げられる。
【0142】
親水性高分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、3,000以上であることが好ましい。
【0143】
-親水性低分子化合物-
親水性低分子化合物としては、グリコール化合物、ポリオール化合物、有機アミン化合物、有機スルホン酸化合物、有機スルファミン化合物、有機硫酸化合物、有機ホスホン酸化合物、有機カルボン酸化合物、ベタイン化合物等が挙げられ、ポリオール化合物、有機スルホン酸化合物又はベタイン化合物が好ましい。
【0144】
グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びこれらの化合物のエーテル又はエステル誘導体類が挙げられる。
ポリオール化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
有機アミン化合物としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等及びその塩が挙げられる。
有機スルホン酸化合物としては、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等及びその塩が好ましく挙げられる。
有機スルファミン化合物としては、アルキルスルファミン酸等及びその塩が挙げられる。
有機硫酸化合物としては、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等及びその塩が挙げられる。
有機ホスホン酸化合物としては、フェニルホスホン酸等及びその塩、が挙げられる。
有機カルボン酸化合物としては、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸等及びその塩が挙げられる。
ベタイン化合物としては、ホスホベタイン化合物、スルホベタイン化合物、カルボキシベタイン化合物等が挙げられ、トリメチルグリシンが好ましく挙げられる。
【0145】
親水性低分子化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、100以上3,000未満であることが好ましく、100~1,000であることがより好ましい。
【0146】
-含有量-
画像記録層の全質量に対する現像促進剤の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0147】
〔電子供与型重合開始剤〕
本開示において用いられる画像記録層は、電子供与型重合開始剤を含有してもよい。電子供与型重合開始剤は、平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。電子供与型重合開始剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。
(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。
(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。
(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。
(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
【0148】
これら電子供与型重合開始剤の中でも、画像記録層は、ボレート化合物を含有することが好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物の安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましく、テトラフェニルボレート化合物が特に好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオン、又は、テトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、テトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。
【0149】
ボレート化合物として具体的には、ナトリウムテトラフェニルボレートが好ましく挙げられる。
【0150】
以下に電子供与型重合開始剤の好ましい具体例として、B-1~B-8を示すが、これらに限定されないことは、言うまでもない。また、下記化学式において、Buはn-ブチル基を表し、Zは対カチオンを表す。
Zで表される対カチオンとしては、Na、K、N(Bu)等が挙げられる。上記Buはn-ブチル基を表す。
また、Zで表される対カチオンとしては、後述する電子受容型重合開始剤におけるオニウムイオンも好適にあげられる。
【0151】
【化20】
【0152】
電子供与型重合開始剤は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。
電子供与型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%が好ましく、0.05質量%~25質量%がより好ましく、0.1質量%~20質量%が更に好ましい。
【0153】
〔電子受容型重合開始剤〕
上記画像記録層は、電子受容型重合開始剤を含んでもよい。
本開示に用いられる電子受容型重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。
また、電子受容型重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
電子受容型重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
【0154】
(a)有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
(b)カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
(d)有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
(e)メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
(f)アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
(i)ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
(j)オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
【0155】
上記電子受容型重合開始剤の中でも好ましいものとして、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物及びオニウム塩化合物が挙げられる。中でも、耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
これら化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0156】
ヨードニウム塩化合物の例としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0157】
スルホニウム塩化合物の例としては、トリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、特に電子求引性基、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩化合物が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩化合物が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0158】
また、ヨードニウム塩化合物及びスルホニウム塩化合物の対アニオンとしては、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0159】
【化21】
【0160】
また、本開示における好ましい態様の一つは、上記電子受容型重合開始剤と、上記電子供与型重合開始剤とが、塩を形成している態様である。
具体的には、例えば、上記オニウム化合物が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤におけるアニオン(例えば、テトラフェニルボレートアニオン)との塩である態様が挙げられる。また、より好ましくは、後述するヨードニウム塩化合物におけるヨードニウムカチオン(例えば、ジ-p-トリルヨードニウムカチオン)と、上述の電子供与型重合開始剤におけるボレートアニオンとが塩を形成した、ヨードニウムボレート化合物が挙げられる。
本開示において、画像記録層が、オニウムイオンと、上述の電子供与型重合開始剤における陰イオンとを含む場合、画像記録層は電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤を含むものとする。
【0161】
電子受容型重合開始剤の含有量は、画像記録層の全質量に対して、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0162】
〔赤外線吸収剤〕
上記画像記録層は、赤外線吸収剤を含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、顔料及び染料が挙げられる。
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が挙げられる。中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0163】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018号公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物、特開2012-206495号公報の段落0105~0113に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
【0164】
また、上記赤外線吸収剤が、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤(以下、「分解性赤外線吸収剤」ともいう。)であることが好ましい。
上記赤外線吸収剤として、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤を用いることにより、上記赤外線吸収剤又はその分解物が重合を促進し、また、特定バインダーポリマーを用いることにより極性の高い膜を得ることができ、更に、上記赤外線吸収剤の分解物と上記バインダーポリマーとが相互作用することにより、耐刷性、及び、UVインクを用いた場合であっても耐刷性(UV耐刷性)に優れると推定している。
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して、発色する機能を有する赤外線吸収剤であることが好ましい。ここで、「発色」とは、赤外線露光前は可視光領域(400nm以上750nm未満の波長域)にほとんど吸収がないが、赤外線露光により可視光領域に吸収を生じることを意味し、可視光領域よりも低波長領域の吸収が可視光領域に長波長化することも包含する。
以降、分解性赤外線吸収剤が、赤外線露光により、赤外線を吸収し、分解して形成される発色した化合物を、「分解性赤外線吸収剤の発色体」ともいう。
また、分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光により、赤外線を吸収し、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有することが好ましい。
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線波長域(波長750nm~1mm)の少なくとも1部の光を吸収し、分解するものであればよいが、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収を有する赤外線吸収剤であることが好ましい。
【0165】
上記分解性赤外線吸収剤は、赤外線露光に起因する熱、電子移動又はその両方により分解する赤外線吸収剤であることが好ましく、赤外線露光に起因する電子移動により分解する赤外線吸収剤であることがより好ましい。ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって分解性赤外線吸収剤のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
【0166】
上記分解性赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、赤外線露光により分解する、シアニン色素が好ましい。
上記赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、下記式1で表される化合物であることがより好ましい。
【0167】
【化22】
【0168】
式1中、Rは赤外線露光によりR-L結合が開裂する基を表し、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReを表し、Ra~Reはそれぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A及び複数のR11~R18が連結して単環又は多環を形成してもよく、A及びAはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、n11及びn12はそれぞれ独立に、0~5の整数を表し、但し、n11及びn12の合計は2以上であり、n13及びn14はそれぞれ独立に、0又は1を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0169】
式1で表されるシアニン色素は、赤外線で露光されると、R-L結合が開裂し、Lは、=O、=S又は=NR10となって、分解性赤外線吸収剤の発色体が形成される。Rは離脱して、ラジカル体又はイオン体を形成する。これらは、画像記録層に含まれる重合性を有する化合物の重合に寄与する。
【0170】
式1において、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、-Ra、-ORb、-SRc又は-NRdReが好ましい。
Ra~Reにおける炭化水素基は、炭素数1~30の炭化水素基が好ましく、炭素数1~15の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~10の炭化水素基が更に好ましい。上記炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
【0171】
式1におけるR11~R14はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
また、Lが結合する炭素原子と結合する炭素原子に結合するR11及びR13は、アルキル基が好ましく、両者が連結して環を形成することがより好ましい。上記形成される環は5員環又は6員環が好ましく、5員環がより好ましい。
が結合する炭素原子に結合するR12及びAが結合する炭素原子に結合するR14は、それぞれ、R15及びR17と連結して環を形成することが好ましい。
【0172】
式1におけるR15は、炭化水素基が好ましい。また、R15と、A が結合する炭素原子に結合するR12とが連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドリウム環、ピリリウム環、チオピリリウム環、ベンゾオキサゾリン環又はベンゾイミダゾリン環が好ましく、発色性の観点から、インドリウム環がより好ましい。
式1におけるR17は、炭化水素基が好ましい。また、R17と、Aが結合する炭素原子に結合するR14とが連結して環を形成することが好ましい。形成される環としては、インドール環、ピラン環、チオピラン環、ベンゾオキサゾール環、又は、ベンゾイミダゾール環が好ましく、発色性の観点から、インドール環がより好ましい。
式1におけるR15及びR17は同一の基であることが好ましく、それぞれが環を形成する場合、同一の環を形成することが好ましい。
【0173】
式1におけるR16及びR18は同一の基であることが好ましい。
更に、式1により表される化合物の水溶性を向上させる観点から、R16及びR18はそれぞれ独立に、(ポリ)オキシアルキレン基を有するアルキル基又はアニオン構造を有するアルキル基が好ましく、アルコキシアルキル基、カルボキシレート基又はスルホネート基を有するアルキル基がより好ましく、末端にスルホネート基を有するアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
上記アニオン構造の対カチオンは、式1中のR-Lに含まれうるカチオン又はA であってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
上記スルホネート基の対カチオンは、式1中のR-Lに含まれうるカチオン又はA であってもよいし、アルカリ金属カチオンやアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
また、式1により表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、R16及びR18はそれぞれ独立に、アルキル基又は芳香環を有するアルキル基が好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。芳香環を有するアルキル基としては、末端に芳香環を有するアルキル基が好ましく、2-フェニルエチル基、2-ナフタレニルエチル基又は2-(9-アントラセニル)エチル基がより好ましい。
【0174】
式1におけるn11及びn12は同一の0~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1又は2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0175】
式1におけるA及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、窒素原子が好ましい。
式1におけるA及びAは同一の原子であることが好ましい。
【0176】
式1におけるZaは、電荷を中和する対イオンを表す。アニオン種を表す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。カチオン種を表す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンがより好ましい。
11~R18及びR-Lは、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R11~R18及びR-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R11~R18及びR-Lに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
また、式1で表されるシアニン色素が、化合物の全体において電荷的に中性な構造であれば、Zaは存在しない。
【0177】
式1において、Rで表される赤外線露光によりR-L結合が開裂する基については、後で詳細に記載する。
【0178】
上記分解性赤外線吸収剤としては、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、下記式1-Aで表されるシアニン色素がより好ましい。
【0179】
【化23】
【0180】
式1-A中、Rは赤外線露光によりR-L結合が開裂する基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R及びRが互いに連結して環を形成してもよく、Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR-又はジアルキルメチレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、-COM基又は-PO基を表し、Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表し、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、Lは酸素原子、硫黄原子又は-NR10-を表し、R10は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表す。
【0181】
式1-Aにおいて、R~R及びRにおけるアルキル基は、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基が挙げられる。
アルキル基の中で、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。
【0182】
上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0183】
におけるアリール基は、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-メチルチオフェニル基、p-フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
アリール基の中で、フェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基又はナフチル基が好ましい。
【0184】
及びRは、連結して環を形成していることが好ましい。
及びRが連結して環を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、5員環が特に好ましい。
【0185】
及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR-又はジアルキルメチレン基を表し、-NR-又はジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。
【0186】
又はRで表されるアルキル基は、置換アルキルであってもよい。R又はRで表される置換アルキル基としては、下記式(a1)~式(a4)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0187】
【化24】
【0188】
式(a1)~式(a4)中、RW0は炭素数2~6のアルキレン基を表し、Wは単結合又は酸素原子を表し、nW1は1~45の整数を表し、RW1は炭素数1~12のアルキル基又は-C(=O)-RW5を表し、RW5は炭素数1~12のアルキル基を表し、RW2~RW4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基を表し、Mは水素原子、Na原子、K原子又はオニウム基を表す。
【0189】
式(a1)において、RW0で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基が好ましく、n-プロピレン基が特に好ましい。
W1は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。
W1で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基等が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
W5で表されるアルキル基は、RW1で表されるアルキル基と同様であり、好ましい態様もRW1で表されるアルキル基の好ましい態様と同様である。
【0190】
式(a1)で表される基の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0191】
【化25】
【0192】
式(a2)~式(a4)において、RW2~RW4で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチレン基、n-ドデシレン基等が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基が特に好ましい。
式(a3)において、2つ存在するMは同じでも異なってもよい。
【0193】
式(a2)~式(a4)において、Mで表されるオニウム基としては、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。
【0194】
式(a1)~式(a4)で表される基の中で、式(a1)又は式(a4)で表される基が好ましい。
【0195】
式1-Aにおいて、R及びRはそれぞれ無置換アルキル基であることが好ましい。R及びRは、同じ基であることが好ましい。
【0196】
~Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、ホスホン酸基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。置換基としては、アルキル基が好ましい。
また、式1-Aで表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、発色性及び平版印刷版の耐刷性を向上させる観点から、Ar及びArはそれぞれ独立に、ナフタレン環、又は、アルキル基もしくはアルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が好ましく、ナフタレン環、又は、アルコキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基がより好ましく、ナフタレン環、又は、メトキシ基を置換基として有するベンゼン環を形成する基が特に好ましい。
【0197】
式1-Aにおいて、Ar又はArが、下記式(b1)で表される基を形成する基であることが好ましい。
【0198】
【化26】
【0199】
式(b1)中、R19は炭素数1~12のアルキル基を表す。n3は1~4の整数を表す。*は結合部位を表す。
【0200】
Zaは、電荷を中和するための対イオンを表す。但し、式1-Aで表される化合物が、その構造中に対応するイオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZaは必要ない。Zaがアニオン種を示す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられ、ヘキサフルオロホスフェートイオン又はヘキサフルオロアンチモン酸イオンが好ましい。Zaがカチオン種を示す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンがより好ましい。
~R、R、Ar、Ar、Y及びYは、アニオン構造やカチオン構造を有していてもよく、R~R、R、Ar、Ar、Y及びYの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R~R、R、Ar、Ar、Y及びYに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
【0201】
上記式1及び式1-Aにおいて、Rで表される赤外線露光によりR-L結合が開裂する基について以下に説明する。
式1又は式1-AにおいてLが酸素原子である場合、Rは、発色性の観点から、下記式(1-1)~式(1-7)のいずれかで表される基が好ましく、下記式(1-1)~式(1-3)のいずれかで表される基がより好ましい。
【0202】
【化27】
【0203】
式(1-1)~(1-7)中、●は、式1又は式1-A中のLで表される酸素原子との結合部位を表し、R20はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR24、-NR2526又は-SR27を表し、R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R22はアリール基、-OR24、-NR2526、-SR27、-C(=O)R28、-OC(=O)R28又はハロゲン原子を表し、R23はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R24~R27はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R28はアルキル基、アリール基、-OR24、-NR2526又は-SR27を表し、Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
【0204】
20、R21及びR24~R28がアルキル基である場合の好ましい態様は、R~R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
20及びR23におけるアルケニル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。
20~R28がアリール基である場合の好ましい態様は、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
【0205】
発色性の観点から、式(1-1)におけるR20は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR24、-NR2526又は-SR27が好ましく、アルキル基、-OR24、-NR2526又は-SR27がより好ましく、アルキル基又は-OR24が更に好ましく、-OR24が特に好ましい。
また、式(1-1)におけるR20がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールスルホニル基を有するアルキル基であってもよく、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基が好ましい。
式(1-1)におけるR20が-OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、イソプロピル基又はtert-ブチル基が更に好ましく、t-ブチル基が特に好ましい。
式(1-1)におけるR20がアルケニル基である場合、上記アルケニル基は、アリール基、又はヒドロキシアリール基を有するアルケニル基であってもよい。
【0206】
発色性の観点から、式(1-2)におけるR21は、水素原子が好ましい。
また、発色性の観点から、式(1-2)におけるR22は、-C(=O)OR24、-OC(=O)OR24又はハロゲン原子が好ましく、-C(=O)OR24又は-OC(=O)OR24がより好ましい。式(1-2)におけるR22が-C(=O)OR24又は-OC(=O)OR24である場合、R24は、アルキル基が好ましい。
【0207】
発色性の観点から、式(1-3)におけるR21はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基が好ましく、また、式(1-3)における少なくとも1つのR21は、アルキル基がより好ましい。
また、R21におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数3~10のアルキル基がより好ましい。
更に、R21におけるアルキル基は、分岐又は環構造を有するアルキル基が好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、tert-ブチル基がより好ましい。また、R21におけるアルキル基は、第二級又は第三級アルキル基であることが好ましい。
また、発色性の観点から、式(1-3)におけるR23は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基が好ましく、p-ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基がより好ましく、ピリジニウム基が更に好ましい。
23におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基が好ましい。
中でも、ピリジニウム基が好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、N-ベンジル-3-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-3-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-3-ピリジニウム基、N-アルキル-4-ピリジニウム基、N-ベンジル-4-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-4-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-4-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-3,5-ジメチル-4-ピリジニウム基がより好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-4-ピリジニウム基が更に好ましく、N-メチル-3-ピリジニウム基、N-オクチル-3-ピリジニウム基、N-メチル-4-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が特に好ましく、N-オクチル-3-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が最も好ましい。
また、R23がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン等が挙げられ、p-トルエンスルホネートイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン又はヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
【0208】
発色性の観点から、式(1-4)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、2つのR20のうち、一方はアルキル基、他方はアリール基がより好ましい。上記2つのR20は、連結して環を形成していてもよい。
発色性の観点から、式(1-5)におけるR20は、アルキル基又はアリール基が好ましく、アリール基がより好ましく、p-メチルフェニル基が更に好ましい。
発色性の観点から、式(1-6)におけるR20はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
発色性の観点から、式(1-7)におけるZは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンがより好ましい。
【0209】
式1又は式1-AにおいてLが酸素原子である場合、発色性の観点から、更に好ましくは、Rは下記式(5)で表される基である。
【0210】
【化28】
【0211】
式(5)中、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Eはオニウム基を表し、*は式1又は式1-A中のLで表される酸素原子との結合部位を表す。
【0212】
15又はR16で表されるアルキル基は、R~R及びRにおけるアルキル基と同様であり、好ましい態様もR~R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
15又はR16で表されるアリール基は、Rにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様も、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
Eで表されるオニウム基は、R23におけるオニウム基と同様であり、好ましい態様もR23におけるオニウム基の好ましい態様と同様である。
【0213】
式(5)において、Eで表されるオニウム基は、下記式(6)で表されるピリジニウム基が好ましい。
【0214】
【化29】
【0215】
式(6)中、R17はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を表し、R17が複数存在する場合、複数のR17は同じでも異なってもよく、あるいは複数のR17が連結して環を形成してもよい。n2は0~4の整数を表す。R18はアルキル基又はアリール基を表す。Zは電荷を中和するための対イオンを表す。
【0216】
17又はR18で表されるアルキル基又はアリール基は、R~R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基と同様であり、好ましい態様もR~R及びRにおけるアルキル基又はRにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
17で表されるアルコキシ基は、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
n2は、好ましくは、0である。
で表される電荷を中和するための対イオンは、式(1-7)におけるZと同様であり、好ましい態様も式(1-7)におけるZの好ましい態様と同様である。
【0217】
以下に、式1又は式1-AにおいてLが酸素原子の場合、Rで表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、TsOはトシレートアニオンを表し、●は式1又は式1-AのLで表される酸素原子との結合部位を表す。
【0218】
【化30】
【0219】
【化31】
【0220】
【化32】

【0221】
【化33】
【0222】
【化34】
【0223】
【化35】
【0224】
【化36】
【0225】
【化37】
【0226】
【化38】
【0227】
Lが酸素原子である場合、Rがアリール基又は直鎖のアルキル基であると、赤外線露光によるR-O結合の開裂は起こらない。
【0228】
式1又は式1-AにおいてLが硫黄原子である場合、Rは、下記式(2-1)で表される基が好ましい。
【0229】
【化39】
【0230】
式(2-1)中、●は、式1又は式1-A中のLで表される硫黄原子との結合部位を表し、R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R22はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表す。
【0231】
式1又は式1-AにおいてLが-NR10-である場合、Nに結合するRは、下記式(3-1)で表わされる基が好ましい。
【0232】
【化40】
【0233】
式(3-1)中、●は、式1又は式1-A中のLに含まれる窒素原子との結合部位を表し、X及びXはそれぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、上記式(2-1)で表される基を表す。
【0234】
上記式(2-1)において、R21及びR22で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基及びオニウム基については、上記式(1-1)~式(1-7)において記載したアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基及びオニウム基に関する記載を援用することができる。
【0235】
式1又は式1-Aにおいて、Lが硫黄原子又は-NR10-を表し、R10が水素原子、アルキル基又はアリール基を表すことが、耐刷性の向上という観点から好ましい。
【0236】
上記式1及び式1-AにおけるRは、下記式2で表される基であることが好ましい。
また、上記式2で表される基は、赤外線露光により、式2中のR-O結合が開裂する基であることが好ましい。
【0237】
【化41】
【0238】
式2中、Rは、アルキル基を表し、波線部分は、式1又は式1-A中のLで表される基との結合部位を表す。
で表されるアルキル基としては、上述のR~R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、上記アルキル基としては、第二級アルキル基又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることが好ましい。
また、発色性、及び、得られる平版印刷版のUV耐刷性の観点から、上記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基又はtert-ブチル基が特に好ましく、t-ブチル基が最も好ましい。
【0239】
以下に、上記式2で表される基の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記構造式中、●は式1又は式1-AのLとの結合部位を表す。
【0240】
【化42】
【0241】
以下に、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤の具体例を挙げるが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0242】
【化43】
【0243】
【化44】
【0244】
【化45】
【0245】
また、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008-544322号公報、又は、国際公開第2016/027886号に記載のものを好適に用いることができる。
【0246】
赤外線吸収剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、赤外線吸収剤として顔料と染料とを併用してもよい。
上記画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
【0247】
〔その他の成分〕
画像記録層には、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159の記載を参照することができる。
【0248】
〔画像記録層の形成〕
本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を公知の溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性が得られる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1質量%~50質量%であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3g/m~3.0g/mが好ましい。
また、本開示に係る平版印刷版原版における画像記録層の膜厚は、0.8μm~3μmであることが好ましく、1μm~2μmであることがより好ましい。
本開示において、平版印刷版原版における各層の膜厚は、平版印刷版原版の表面に対して垂直な方向に切断した切片を作製し、上記切片の断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察することにより確認される。
【0249】
<オーバーコート層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層の、支持体側とは反対の側の面上にオーバーコート層(「保護層」と呼ばれることもある。)を有する。
上記オーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚よりも厚い。
オーバーコート層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0250】
このような特性のオーバーコート層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。オーバーコート層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできるが、機上現像性の観点から、水溶性ポリマーを含むことが好ましい。
本開示において、水溶性ポリマーとは、70℃、100gの純水に対して1g以上溶解し、かつ、70℃、100gの純水に対して1gのポリマーが溶解した溶液を25℃に冷却しても析出しないポリマーをいう。
オーバーコート層において用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0251】
☆請求項4☆
上記水溶性ポリマーの中でも、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールを含むことが更に好ましい。
上記けん化度は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましい。けん化度の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。
上記けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法に従い測定される。
また、オーバーコート層の一態様として、ポリビニルアルコールと、ポリエチレングリコールとを含む態様も好ましく挙げられる。
【0252】
本開示におけるオーバーコート層が水溶性ポリマーを含む場合、オーバーコート層の全質量に対する水溶性ポリマーの含有量は、30質量%~100質量%であることが好ましく、40質量%~100質量%であることがより好ましく、50質量%~100質量%であることが更に好ましい。
【0253】
オーバーコート層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有してもよい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-510(OH,F,O)〔ただし、Aは、K、Na、Caのいずれか、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vのいずれかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0254】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0255】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、膨潤性合成雲母は、10Å~15Å(1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0256】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0257】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3μm~20μm、より好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは1μm~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1nm~50nm程度、面サイズ(長径)が1μm~20μm程度である。
【0258】
無機層状化合物の含有量は、オーバーコート層の全固形分に対して、1質量%~60質量%が好ましく、3質量%~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0259】
オーバーコート層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。また、画像記録層において記載した感脂化剤をオーバーコート層に含有させてもよい。
【0260】
オーバーコート層は公知の方法で塗布される。オーバーコート層の塗布量(固形分)は、0.01g/m~10g/mが好ましく、0.02g/m~3g/mがより好ましく、0.02g/m~1g/mが特に好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、0.8μm~3μmであることが好ましく、1μm~2μmであることがより好ましい。
本開示に係る平版印刷版原版におけるオーバーコート層の膜厚は、上記画像記録層の膜厚に対し、1.1倍~5倍であることが好ましく、1.1倍~3倍であることがより好ましい。
【0261】
<下塗り層>
本開示に係る平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある。)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性の低下を抑制しながら現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐ効果も有する。
【0262】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0263】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、-COCHCOCHが好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0264】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0265】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
【0266】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0267】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m~100mg/mが好ましく、1mg/m~30mg/mがより好ましい。
【0268】
(平版印刷版の作製方法、及び、平版印刷方法)
本開示に係る平版印刷版原版を画像露光して現像処理を行うことで平版印刷版を作製することができる。
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含むことが好ましい。
本開示に係る平版印刷方法は、本開示に係る機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光する工程(露光工程)と、印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して印刷機上で非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(機上現像工程)と、得られた平版印刷版により印刷する工程(印刷工程)と、を含むことが好ましい。
以下、本開示に係る平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法について、各工程の好ましい態様を順に説明する。なお、本開示に係る平版印刷版原版は、現像液によっても現像可能である。
以下、平版印刷版の作製方法における露光工程及び機上現像工程について説明するが、本開示に係る平版印刷版の作製方法における露光工程と、本開示に係る平版印刷方法における露光工程とは同様の工程であり、本開示に係る平版印刷版の作製方法における機上現像工程と、本開示に係る平版印刷方法における機上現像工程とは同様の工程である。
【0269】
<露光工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、本開示に係る平版印刷版原版を画像様に露光し、露光部と未露光部とを形成する露光工程を含むことが好ましい。本開示に係る平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通してレーザー露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光されることが好ましい。
光源の波長は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10mJ/cm~300mJ/cmであるのが好ましい。また、露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、及びフラットベッド方式等のいずれでもよい。
画像露光は、プレートセッターなどを用いて常法により行うことができる。機上現像の場合には、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光を行ってもよい。
【0270】
<機上現像工程>
本開示に係る平版印刷版の作製方法は、印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも一方を供給して非画像部の画像記録層を除去する機上現像工程を含むことが好ましい。
以下に、機上現像方式について説明する。
【0271】
〔機上現像方式〕
機上現像方式においては、画像露光された平版印刷版原版は、印刷機上で油性インキと水性成分とを供給し、非画像部の画像記録層が除去されて平版印刷版が作製されることが好ましい。
すなわち、平版印刷版原版を画像露光後、何らの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、あるいは、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で画像露光し、ついで、油性インキと水性成分とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された油性インキ及び水性成分のいずれか又は両方によって、未硬化の画像記録層が溶解又は分散して除去され、その部分に親水性の表面が露出する。一方、露光部においては、露光により硬化した画像記録層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。最初に版面に供給されるのは、油性インキでもよく、水性成分でもよいが、水性成分が除去された画像記録層の成分によって汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。油性インキ及び水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が好適に用いられる。
【0272】
上記本開示に係る平版印刷版原版を画像露光するレーザーとしては、光源の波長は300nm~450nm又は750nm~1,400nmが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源の場合は、この波長領域に吸収極大を有する増感色素を画像記録層に含有する平版印刷版原版が好ましく用いられ、750nm~1,400nmの光源は上述したものが好ましく用いられる。300nm~450nmの光源としては、半導体レーザーが好適である。
【0273】
<印刷工程>
本開示に係る平版印刷方法は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体を印刷する印刷工程を含む。
印刷インキとしては、特に制限はなく、所望に応じ、種々の公知のインキを用いることができる。また、印刷インキとしては、油性インキ又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が好ましく挙げられる。
また、上記印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。
また、上記印刷工程は、印刷機を停止することなく、上記機上現像工程に連続して行われてもよい。
記録媒体としては、特に制限はなく、所望に応じ、公知の記録媒体を用いることができる。
【0274】
本開示に係る平版印刷版原版からの平版印刷版の作製方法、及び、本開示に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。このような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化等の利点が生じ得る。現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記態様であると、非画像部が硬化してしまう等の問題を防ぐことができる。現像後の加熱には非常に強い条件を利用することが好ましく、100℃~500℃の範囲であることが好ましい。上記範囲であると、十分な画像強化作用が得られまた、支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【実施例
【0275】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、「%」、「部」とは、特に断りのない限り、それぞれ「質量%」、「質量部」を意味する。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量は重量平均分子量(Mw)であり、構成繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値として測定した値である。
【0276】
(実施例1~52及び比較例1~3)
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス-水懸濁液(比重1.1g/cm)とを用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0277】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0278】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を形成した後、水洗、乾燥して支持体を作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM(走査型電子顕微鏡、(株)日立製作所製S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差は平均値の±10%以下であった。
【0279】
<平版印刷版原版の形成>
上記支持体上に、下記組成の下塗り液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布し、100℃30秒間オーブンで乾燥し、下塗り層を有する支持体を作製した。
下塗り層上に、下記画像記録層塗布液(1)又は(2)をバー塗布し、表1~表4に記載の膜厚になるように100℃で60秒間オーブン乾燥して画像記録層を形成し、平版印刷版原版を得た。
更にその後、画像記録層上に、下記組成のオーバーコート層塗布液(1)を塗布し、表1~表4に記載の膜厚になるように100℃で60秒間オーブン乾燥してオーバーコート層(疎水部を含む)を形成し、平版印刷版原版を得た。
【0280】
〔下塗り液(1)〕
・下記の下塗り化合物1:0.18部
・メタノール:55.24部
・蒸留水:6.15部
【0281】
-下塗り化合物1の合成-
<<モノマーM-1の精製>>
ライトエステル P-1M(2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製)420部、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部及び蒸留水1,050部を分液ロートに加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄した後、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部を加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄してモノマーM-1の水溶液(固形分換算10.5質量%)を1,300部得た。
【0282】
<<下塗り化合物1の合成>>
三口フラスコに、蒸留水を53.73部、以下に示すモノマーM-2を3.66部加え、窒素雰囲気下で55℃に昇温した。次に、以下に示す滴下液1を2時間掛けて滴下し、30分撹拌した後、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート(VA-046B、富士フイルム和光純薬(株)製)0.386部を加え、80℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応液を室温(25℃)に戻した後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを8.0に調整したのち、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-OH-TEMPO、Aldrich社製)を0.005部加えた。以上の操作により、下塗り化合物1の水溶液を180部得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算値とした重量平均分子量(Mw)は17万であった。
【0283】
【化46】
【0284】
<<滴下液1>>
・上記モノマーM-1水溶液:87.59部
・上記モノマーM-2:14.63部
・VA-046B(2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、富士フイルム和光純薬(株)製):0.386部
・蒸留水:20.95部
【0285】
<画像記録層塗布液(1)>
・下記の赤外線吸収剤4:0.030部
・下記構造を有するジ-p-トリルヨードニウム(Aldrich社製):0.032部
・表1~表4に記載の重合性化合物:表1~表4に記載の量
・特定バインダーポリマー:表1~表4に記載の量
・BYK306(Byk Chemie社):0.008部
・1-メトキシ-2-プロパノール:8.609部
・メチルエチルケトン:1.091部
【0286】
<画像記録層塗布液(2)>
・下記の赤外線吸収剤4:0.030部
・下記構造を有するジ-p-トリルヨードニウム(Aldrich社製):0.032部
・表4に記載の重合性化合物:表4に記載の量
・下記合成方法により得られたバインダーポリマー(P3-1):表4に記載の量
・BYK306(Byk Chemie社):0.008部
・1-メトキシ-2-プロパノール:8.609部
・メチルエチルケトン:1.091部
【0287】
【化47】
【0288】
【化48】
【0289】
<オーバーコート層塗布液>
・表1~表4に記載の水溶性ポリマー:表1~表4に記載の量
・PEG4000(東京化成(株)製):0.39質量部
・界面活性剤(ラピゾールA-80、日油(株)製):0.01質量部
・水:全体が10質量部となる量
【0290】
<<水溶性ポリマー>>
ポバールPVA105:ポリビニルアルコール(けん化度=98mol%~99mol%)、クラレ(株)製
ポバールPVA405:ポリビニルアルコール(けん化度=80mol%~83mol%)、クラレ(株)製
PEG2000:ポリエチレングリコール、東京化成工業(株)製
PVP:ポリビニルピロリドン K-85:ポリビニルピロリドン、(株)日本触媒製
【0291】
〔特定バインダーポリマー(バインダー1(P2-1))の合成〕
三口フラスコに、メチルエチルケトン300gを入れ、窒素気流下、80℃に加熱した。この反応容器に、下記化合物1:50.0g、化合物2:50.0g、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.7g、及び、メチルエチルケトン100gからなる混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、更に7.5時間反応を続けた。その後、AIBN0.3gを加え、更に12時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却しバインダー1を得た。得られたバインダー1の重量平均分子量(Mw)は、75,000であり、バインダー1中の構成単位の組成比は、質量基準で50:50であった。
【0292】
【化49】
【0293】
〔特定バインダーポリマー(バインダー2(P2-2))の合成〕
三口フラスコに、メチルエチルケトン300gを入れ、窒素気流下、80℃に加熱した。この反応容器に、化合物1:50.0g、化合物2:30.0g、化合物3:20.0g、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.7g及びメチルエチルケトン100gからなる混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、更に7.5時間反応を続けた。その後、AIBN0.3gを加え、更に12時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却し、バインダー2を得た。得られたバインダー2の重量平均分子量(Mw)は、75,000であった。
【0294】
【化50】
【0295】
〔バインダーポリマー(バインダー3(P3-1))の合成〕
三口フラスコに、メチルエチルケトン300gを入れ、窒素気流下、80℃に加熱した。この反応容器に、メチルメタクリレート50g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート30g、メタクリル酸20g、AIBN 0.7g、メチルエチルケトン100gからなる混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、更に7.5時間反応を続けた。その後、AIBN 0.3gを加え、更に12時間反応を続けた。反応終了後、室温まで反応液を冷却し、重合体を含む溶液を得た。得られた重合体を含む溶液に、メタクリル酸グリシジル70gを添加し、80℃、12時間反応させて反応終了後、室温まで反応液を冷却しP3-1を得た。得られたP3-1の重量平均分子量は45,000であった。
【0296】
【化51】
【0297】
表4中、バインダーポリマーの「P2-2-1」~「P2-2-8」の詳細は以下の通りである。
【0298】
【化52】
【0299】
(実施例53及び実施例54)
実施例1において、赤外線吸収剤4を表5に記載の赤外線吸収剤に変更した以外は、実施例1と同様の方法で平版印刷版原版を得た。
【0300】
<評価>
〔耐刷性〕
各実施例及び比較例において得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm(revolutions per minute)、レーザー出力70%、解像度2,400dpi(dot per inch、1 inch=2.54cm)の条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含んだ。
得られた露光済み平版印刷原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。版胴に対して給水ローラーを5%減速させた上で、Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とスペースカラーフュージョンG墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を50,000枚行った。
印刷枚数の増加にともない、徐々に画像記録層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン3%網点の網点面積率をX-Rite(X-Rite社製)で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。上記刷了枚数が多いほど好ましい。
【0301】
〔耐薬品性〕
各実施例又は比較例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光および印刷を行った。5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム(株)製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加えた以外は、上記耐刷性の評価と同様にして、耐薬品性を評価した。
具体的には、上記耐刷性の評価における刷了枚数に対する、上記版面を拭く工程を加えた場合の刷了枚数の割合を指標値とし、下記評価基準により評価した。
上記指標値が大きいほど、クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷性の変化が小さいといえ、耐薬品性に優れるものといえ、評価3以上が好ましい。
【0302】
-評価基準-
評価5:指標値が95%以上100%以下である
評価4:指標値が80%以上95%未満である
評価3:指標値が60%以上80%未満である
評価2:指標値が40%以上60%未満である
評価1:指標値が40%未満である
【0303】
〔機上現像カスの抑制性〕
得られた平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1,000rpm、レーザー出力70%、解像度2,400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像、20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートおよび非画像部を含むようにした。
得られた露光済み原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とスペースカラーフュージョンG黄インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート(三菱製紙(株)製、連量:76.5kg)紙に印刷を500枚行った。上記機上現像性の評価を3回繰り返し、印刷機中の水付けローラーに付着した現像カスをセロハンテープに転写させ、OKトップコート紙+(王子製紙(株)製)に貼り付け、色濃度計X-Rite(X-Rite社製)でシアン色濃度D(C)を計測した。シアン色濃度D(C)の値が小さいほど、機上現像カスの抑制性に優れる。
【0304】
-評価基準-
評価5:D(C)が0.1未満
評価4:D(C)が0.1以上0.3未満
評価3:D(C)が0.3以上0.5未満
評価2:D(C)が0.5以上1.0未満
評価1:D(C)が1.0以上
【0305】
【表1】
【0306】
【表2】
【0307】
【表3】
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
表1~表5中、重合性化合物の詳細は下記の通りである。なお、表1~表5中、「-」とは該当する成分を含まないことを意味する。
【0311】
<<ウレタン結合を有するオリゴマー(ウレタンオリゴマー)>>
・UA510H:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(重量平均分子量;1,217)、共栄社化学(株)製
・UA-306H:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(重量平均分子量;2,078)、共栄社化学(株)製
・UA-306I:ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー(重量平均分子量;818)、共栄社化学(株)製
・UA-306T:ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー(重量平均分子量;770)、共栄社化学(株)製
・UV-1700B:(日本合成化学工業(株)製)
・UV-6300B:(日本合成化学工業(株)製)
・UV7620EA:(日本合成化学工業(株)製)
・U-15HA:(新中村化学工業(株)製)
【0312】
<<エステル結合を有するオリゴマー(ポリエステルオリゴマー)>>
・EBECRYL450:(ダイセルオルネクス(株)製)
・EBECRYL657:(ダイセルオルネクス(株)製)
・EBECRYL885:(ダイセルオルネクス(株)製)
・EBECRYL800:(ダイセルオルネクス(株)製)
【0313】
<<エポキシ残基を有するオリゴマー(ポリエポキシオリゴマー)>>
・EBECRYL3416:(ダイセルオルネクス(株)製)
・EBECRYL860:(ダイセルオルネクス(株)製)
【0314】
<<モノマー>>
・A9300:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業(株)製)
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)製)
【0315】
〔赤外線吸収剤〕
表5中の赤外線吸収剤の詳細は以下のとおりである。
赤外線吸収剤5:下記構造の化合物
赤外線吸収剤6:下記構造の化合物
【0316】
【化53】
【0317】
表1~表5に記載した結果から、実施例に係る平版印刷版原版によれば、機上現像カスの抑制性に優れ、更に、機上現像性及び着肉性に優れた平版印刷版が得られることがわかる。
【0318】
2018年7月30日に出願された日本国特許出願第2018-142428号、及び、2018年10月31日に出願された日本国特許出願第2018-205748号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。