(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】レーザ加工システムの焦点位置を特定する装置、それを備えたレーザ加工システム、および、レーザ加工システムの焦点位置の特定方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20220427BHJP
【FI】
B23K26/00 M
(21)【出願番号】P 2020547142
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2019054141
(87)【国際公開番号】W WO2019170411
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】102018105319.3
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラケス サンチェス ダビッド
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0042133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工システム(100)におけるレーザビーム(10)の焦点位置(F)を特定する装置(200)であって、
少なくとも1つの光学素子(210,220)の少なくとも2つの表面を備え、前記表面のそれぞれが、レーザビーム(10)の一部分を反射することでサブビーム(12,14,16,18)を分離させるように構成され、その少なくとも2つサブビームが、実質的に同軸に重ね合わされた第1のサブビーム(12)と第2のサブビーム(14)とを含み、
前記装置(200)がさらに、
前記重ね合わされたサブビーム(12,14)の強度分布を検知する高空間分解能センサ(230)と、
前記高空間分解能センサ(230)によって検知された前記サブビーム(12,14)の前記強度分布に基づいて前記レーザビーム(10)の焦点位置(F)を特定するように構成された判定ユニット(240)と、
を備える、装置(200)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(200)であって、前記少なくとも1つの光学素子(210,220)が透過型光学素子および/または保護ガラスである、装置(200)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置(200)であって、前記少なくとも1つの光学素子(210,220)が、前記レーザ加工システム(100)の光軸(2)に直交するように配置される、装置(200)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置(200)であって、一方の前記表面(212)および他方の前記表面(214,222,224)が、前記レーザ加工システム(100)の光軸(2)に直交するように配置されること、および/または、前記レーザビーム(10)の焦点領域内に配置されることを特徴とする、装置(200)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置(200)であって、前記サブビームの数および/または前記サブビームの光路長間の差異が既知である、装置(200)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(200)であって、
前記少なくとも1つの光学素子(210,220)が、第1の表面(212)を有する第1の光学素子(210)を含むとともに、前記第1のサブビーム(12)が、前記第1の光学素子(210)の前記第1の表面(212)から反射されること、
および/または、
前記少なくとも1つの光学素子(210,220)が、第1の表面(222)を有する第2の光学素子(220)を含むとともに、前記第2のサブビーム(14)が、前記第2の光学素子(220)の前記第1の表面(222)から反射されること
を特徴とする、装置(200)。
【請求項7】
請求項6に記載の装置(200)であって、
前記第1の光学素子(210)がさらに、前記第1の表面(212)の反対側に位置して第3のサブビーム(16)を反射するように構成される第2の表面(214)を有すること、
および/または、
前記第2の光学素子(220)がさらに、前記第1の表面(222)の反対側に位置して第4のサブビーム(18)を反射するように構成される第2の表面(224)を有すること
を特徴とする、装置(200)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(200)であって、前記判定ユニット(240)が、前記高空間分解能センサ(230)によって検知された前記重ね合わされたサブビーム(12,14)の前記強度分布に基づいて前記サブビーム(12,14)の直径を検出するとともに、それに基づいて、前記レーザビーム(10)の前記焦点位置(F)を特定するように構成される、装置(200)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(200)であってさらに、前記レーザビーム(10)をワークピースに向けて透過するとともに、前記サブビーム(12,14)を前記高空間分解能センサ(230)に向けて反射するように構成されたビームスプリッタ(250)を備える、装置(200)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(200)であってさらに、前記サブビーム(12,14)を前記高空間分解能センサ(230)上に結像させる光学系を備える、装置(200)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(200)であってさらに、前記少なくとも1つの光学素子(210,220)と前記高空間分解能センサ(230)との間に配置された、前記サブビーム(12,14)のための少なくとも1つの光学フィルタを備える、装置(200)。
【請求項12】
レーザ加工システム(100)であって、
レーザビーム(10)を供給するレーザ装置(110)と、
前記レーザビーム(10)をワークピース(1)上に集束させる集束光学系(120)と、
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(200)と
を備える、レーザ加工システム(100)。
【請求項13】
請求項12に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記少なくとも1つの光学素子(210,220)が、前記レーザ加工システム(100)のビーム経路内において前記集束光学系(120)の下流に配置されている、レーザ加工システム(100)。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザ加工システム(100)であって、前記レーザ加工システム(100)がレーザ切断ヘッドまたはレーザ溶接ヘッド(101)を備えること、および/または、前記レーザ加工システム(100)がレーザ切断ヘッドまたはレーザ溶接ヘッド(101)であることを特徴とする、レーザ加工システム(100)。
【請求項15】
レーザ加工システム(100)におけるレーザビーム(10)の集束位置(F)を特定する方法であって、
レーザビーム(10)のビーム経路内に配置された少なくとも1つの光学素子(210,220)からの少なくとも第1
の再帰反射光を第1のサブビーム(12)として、第2の再帰反射光を
第2のサブビーム(14)として分離させ、
前記第1のサブビーム(12)および前記第2のサブビーム(14)が実質的に同軸に重ね合わされていることと、
前記第1のサブビーム(12)および前記第2のサブビーム(14)の高空間分解度の強度分布を検知することと、
検知された前記高空間分解度の強度分布に基づいて前記レーザビーム(10)の焦点位置(F)を特定することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置と、そのような装置を備えたレーザ加工システムと、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置の特定方法とに関する。本開示は特に、加工レーザビームの焦点位置をリアルタイムで特定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばレーザ溶接用またはレーザ切断用のレーザ加工ヘッドなどの、レーザを用いて材料を加工する装置において、レーザ光源またはレーザファイバの端部から出射されたレーザビームは、ビーム誘導および集束光学系によって、加工対象のワークピース上に集束またはコリメートされる。標準的には、コリメータ光学系および集束光学系を備えたレーザ加工ヘッドが使用され、レーザ光は光ファイバを通じて供給される。
【0003】
レーザ材料加工における1つの問題は、いわゆる「熱レンズ」であり、これは、特に数キロワットレベルでのレーザ出力光によるレーザビーム誘導および集束用光学素子の加熱と、光学ガラスの屈折率の温度依存性とに起因する。レーザ材料加工において、熱レンズは、ビームの伝播方向に沿って焦点をシフトさせてしまい、そのことは、加工品質に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
レーザ材料の加工プロセス中に、主に2つのメカニズムが、光学素子の加熱を引き起こす。その一方はレーザ出力の上昇であり、他方は光学素子の汚染である。さらに、光学素子が機械的変形を経る場合があり、それは屈折率の変化につながる。機械的変形は、たとえば、光学素子のソケットの熱膨張によって引き起こされ得る。
【0005】
高品質のレーザ加工を確実に行うためには、それぞれの焦点位置を検出し、焦点位置のシフトを補償する必要がある。すなわち、高速かつ正確な焦点位置制御を実施する必要がある。
【0006】
特許文献1には、レーザビームをワークピース上に集束する装置が記載されている。その装置は、レーザビームのビーム軸に直交する平面に対してチルト角を成すように配置された少なくとも一つの透過型光学素子と、透過型光学素子にて再帰反射されたレーザ放射を検知する高空間分解能検知器とを備える。当該検知器によって得られた画像から、画像判定装置が、当該検知器における反射レーザ放射のサイズまたは直径を検出し、それに基づき、焦点位置制御のために焦点位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】ドイツ特許第10 2007 053 632号
【0008】
しかしながら、熱レンズ(すなわち、熱的に誘導された屈折力または屈折力の変化)は、焦点をシフトさせるだけでなく、ビーム品質の劣化にもつながり、たとえば収差を引き起こす可能性がある。それにより、焦点直径などの、ビームコースティクス全体に変化が生じる。したがって、参照値との単純な比較による焦点位置の特定は、不正確である。特に、それでは、リアルタイムでの焦点位置の測定値が表されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置と、そのような装置を備えたレーザ加工システムと、レーザビームの現在の焦点位置を確実に特定できるレーザ加工システムにおいてレーザビームの焦点位置を特定する方法とを提供することを目的とする。本開示は特に、レーザ加工プロセス中にリアルタイムでレーザビームの焦点位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、独立請求項の記載内容によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に明記されている。
【0011】
本開示の実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置が提供され、その装置は、レーザビームの一部分を反射することでレーザビームの第1のサブビームを分離するように構成された第1の光学素子と、レーザビームの別の部分を反射することで、レーザビームの第2のサブビームを第1のサブビームと実質的に同軸に分離するように構成された第2の光学素子と、第1のサブビームおよび第2のサブビームを向ける先とすることができる高空間分解能センサと、高空間分解能センサに当たる第1のサブビームおよび第2のサブビームに基づいてレーザビームの焦点位置を特定するように構成された判定ユニットとを備える。
【0012】
さらなる実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置が提供され、その装置は、レーザビームの一部分を反射することでレーザビームの第1のサブビームを分離するように構成された第1の光学素子の第1の表面と、レーザビームの別の部分を反射することで、第1のサブビームと実質的に同軸に重ね合わされたレーザビームの第2のサブビームを分離するように構成された、第1の光学素子の第2の表面または第2の光学素子の第1の表面と、重ね合わされた第1および第2のサブビームの強度分布を検知する高空間分解能センサと、高空間分解能センサによって検知された第1および第2のサブビームの強度分布に基づいてレーザビームの焦点位置を特定するように構成された判定ユニットとを備える。
【0013】
さらなる実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置が提供され、その装置は、少なくとも1つの光学素子の2つの表面を備え、一方の表面が、レーザビームの一部分を反射することで第1のサブビームを分離するように構成され、他方の表面が、レーザビームの別の部分を反射することで、第1のサブビームと実質的に同軸に重ね合わされた第2のサブビームを分離するように構成される。当該装置はさらに、重ね合わされた第1および第2のサブビームの強度分布を検知するように構成された高空間分解能センサと、高空間分解能センサによって検知された第1および第2のサブビームの強度分布に基づいてレーザビームの焦点位置を特定するように構成された判定ユニットとを備える。上記2つの表面は、単一の光学素子の互いに反対側に位置する表面であること、または、2つの別個の光学素子の表面であることが可能である。さらに、光学素子のさらなる表面が、さらなるサブビームを再帰反射によって分離するように構成されている場合がある。焦点位置の特定のために、2つより多い再帰反射光またはサブビームを用いると、精度を向上させることができる。
【0014】
さらなる実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置が提供され、その装置は、少なくとも1つの光学素子の少なくとも2つの表面を備え、それらの各表面は、レーザビームの一部分を反射することでサブビームを分離するように構成され、それらの少なくとも2つのサブビームは、実質的に同軸に重ね合わされた第1のサブビームと第2のサブビームとを含む。当該装置はさらに、重ね合わされたサブビームの強度分布を検知する高空間分解能センサと、高空間分解能センサによって検知されたサブビームの強度分布に基づいてレーザビームの焦点位置を特定するように構成された判定ユニットとを備える。
【0015】
少なくとも2つの重ね合わされた再帰反射光または少なくとも2つのサブビームの強度分布を検知および分析することにより、ビーム軸に沿った2つの異なる位置に対応する2つの測定が同時に実施される。たとえば強度分布内におけるサブビームの数が、既知である場合がある。サブビームの光路長および/または複数サブビームの光路長間の差異も、既知であり得る。サブビームのビーム径は、強度分布から検出できる。ビーム径間の距離は、サブビームの光路長の差異に対応する場合がある。これらのことに基づき、モデルまたは関数を用いてレーザビームのビームコースティクスを特定することができる。強度分布の代わりに、高空間分解能センサによるサブビームの他のパラメータの測定値を使用することも考えられる。
【0016】
上記センサは、焦点位置に対応する位置に配置される必要はなく、焦点位置に関係なく配置されることができる。
【0017】
本開示の好適なオプションの実施形態および特別な態様は、従属請求項、図面、および本明細書から明らかである。
【0018】
本発明によれば、少なくとも1つの光学素子または少なくとも2つの光学素子を使用して、レーザビームのビーム経路から少なくとも2つの実質的に同軸の再帰反射光を分離する。それらの同軸の再帰反射光を高空間分解能センサに向けることで、レーザビームの焦点位置を、高空間分解能センサによって測定されたデータからリアルタイム(オンライン)で特定できる。具体的には、モデルまたはモデル関数を使用して、ビームのコースティクスを判定し焦点位置を推定することが可能である。
【0019】
第1の光学素子および/または第2の光学素子は、好ましくは透過型光学素子である。透過型光学素子は、レーザビームの第1の部分を透過させるとともにレーザビームの少なくとも第2の部分を反射するように構成される場合がある。たとえば素子の表面から反射されたレーザビームの第2の部分は、第1のサブビームまたは第2のサブビームを形成することができる。それにより、加工レーザビームであり得るレーザビームの一部分が、ビーム経路から分離され、レーザビームの焦点位置を特定するために使用される。
【0020】
第1の光学素子および第2の光学素子は、好ましくはレーザビームのビーム経路内に直列に配置され、特に、直に連続して配置されることが好ましい。第1の光学素子および第2の光学素子は、互いに平行に、且つ、光軸に直交するように配置されることができる。第1の光学素子および第2の光学素子は、ビーム経路に沿って互いに距離を隔てて配置された別個の光学素子であり得る。これらの2つの別個の光学素子により、第1のサブビームおよび第2のサブビームは、互いに実質的に同軸に方向づけられることができる。
【0021】
実施形態によれば、第1の光学素子および第2の光学素子は、レーザビームの焦点領域に配置される場合がある。具体的には、第1の光学素子および第2の光学素子は、集束光学系と焦点位置(またはワークピースなどのレーザビームの加工領域)との間に配置することができる。
【0022】
第1の光学素子および/または第2の光学素子は、好ましくは保護ガラスである。保護ガラスは、レーザ加工ヘッドなどのレーザ加工システムのビーム出力側に配置することができる。保護ガラスは、レーザ加工システム内の(光学)素子(特に集束光学系)を、たとえば飛沫または煙によって引き起こされる可能性のある汚染から保護するために設けることが可能である。
【0023】
通常、第1の光学素子は、第1の表面と、第1の表面の反対側に位置する第2の表面とを有し、第1のサブビームが第1の表面から反射される。第1の光学素子は、第1の光学素子の第2の表面が第3のサブビームを反射するように構成されることがある。それにより、第1の光学素子の2つの反対側に位置する表面において、それぞれ1つの再帰反射光が生じ、その各再帰反射光は、高空間分解能センサに向けることができる。
【0024】
通常、第2の光学素子は、第1の表面と、第1の表面の反対側に位置する第2の表面とを有し、第2のサブビームが第1の表面から反射される。第2の光学素子は、第2の光学素子の第2の表面が第4のサブビームを反射するように構成されることがある。それにより、第2の光学素子の互いに反対側に位置する表面において、それぞれ1つの再帰反射光が生じ、その各再帰反射光は、高空間分解能センサに向けることができる。
【0025】
反射を増大または減少させるために、少なくとも1つの光学素子の1つまたは複数の表面がコーティングされている場合がある。たとえば、光学素子が第1の表面および第2の表面を有するとともに、その2つの表面のうちの少なくとも一方に、反射を増大または減少させるコーティングが施されていることが可能である。その結果、それらの表面のうちの一方からの(減少した)再帰反射が、他方の表面からの(増大した)再帰反射と比較して無視できるレベルである場合がある。焦点位置の特定において考慮または使用するサブビームの数を、そのようなコーティングによって調節することができる。
【0026】
実施形態によれば、判定ユニットは、高空間分解能センサ上の、少なくとも第1のサブビームおよび第2のサブビームの位置および/または範囲に基づいて、レーザビームの焦点位置を特定するように構成される。たとえば、判定ユニットは、ビーム特性からレーザビームの焦点位置を導出するために、高空間分解能センサによって測定されたビーム特性を、モデルまたはモデル関数を用いて明らかにするように構成され得る。具体的には、焦点位置は、モデル関数によって(たとえば、フィッティングによって)、第1のサブビームおよび第2のサブビームの直径から特定することができる。モデル関数は、レーザビームのビームコースティクスを特定するためのフィット関数を含むことがある。
【0027】
2つの光学素子からの少なくとも4つの再帰反射光を用いて焦点位置を特定することが好ましく、その4つの再帰反射光とは、第1の光学素子からの第1のサブビームおよび第3のサブビーム、ならびに、第2の光学素子からの第2のサブビームおよび第4のサブビームである。具体的には、ビームコースティクスを判定するために、たとえばモデルに基づくターゲット位置および測定された直径をフィッティングすることを通じて、モデル関数を用いて4つの再帰反射光の直径を判定することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、装置は、レーザビームのビーム経路内にビームスプリッタを備え、そのビームスプリッタは、レーザビームを透過するとともに、少なくとも第1のサブビームおよび第2のサブビーム(ならびに、オプションで第3のサブビームおよび第4のサブビーム)を高空間分解能センサに向けて反射するように構成される。ビームスプリッタは、部分透過ミラーであることが可能である。ビームスプリッタは、レーザビームのビーム経路から再帰反射光を偏向させるために、レーザ加工システムの光軸に対して斜めに配置され得る。たとえば、ビームスプリッタは、レーザビームのビーム経路またはレーザ加工システムの光軸に対して実質的に直角に再帰反射光を分離するために、光軸に対して約45°傾けられることができる。
【0029】
実施形態によれば、装置は、第1のサブビームおよび第2のサブビーム(ならびに、オプションで第3のサブビームおよび第4のサブビーム)を高空間分解能センサ上に結像させる光学系を備える。
【0030】
装置は好ましくは、第1のサブビームおよび第2のサブビーム(ならびに、オプションで第3のサブビームおよび第4のサブビーム)のための少なくとも1つの光学フィルタを備える。光学フィルタは、検知のために適切または最適な波長または波長範囲が高空間分解能センサに到達するように、再帰反射光を光学的にフィルタリングすることがある。それにより、たとえば、センサ信号中のバックグラウンドまたはノイズを低減することができる。代替的または追加的に、減衰フィルタなどのフィルタを使用して、センサにおける信号強度を調節することもできる。
【0031】
本開示のさらなる態様によれば、レーザ加工システムが提供される。そのレーザ加工システムは、レーザビームを供給するレーザ装置と、レーザビームをワークピース上に集束させる集束光学系と、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する上記装置とを備える。レーザ加工システムは、レーザ切断ヘッドまたはレーザ溶接ヘッドであり得る。
【0032】
レーザ加工システムは、好ましくは、レーザ装置によって供給されるレーザビームをコリメートするコリメータ光学系を備える。具体的には、焦点位置を特定する装置の第1の光学素子および第2の光学素子は、集束光学系の集束領域内、すなわち集束光学系の下流側のビーム経路内に配置されることができる。ビームスプリッタは、集束光学系とコリメータ光学系との間のレーザビームのビーム経路に配置されることが可能である。
【0033】
本開示のさらなる実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの集束位置を特定する方法が提供され、その方法は、レーザビームのビーム経路内に配置された第1の光学素子で第1の再帰反射光を分離することと、レーザビームのビーム経路内に配置された第2の光学素子で第2の再帰反射光を分離することとを含み、第1の再帰反射光と第2の再帰反射光とは実質的に同軸である。当該方法はさらに、第1の再帰反射光および第2の再帰反射光の直径に基づいて、レーザビームの焦点位置を特定することを含む。
【0034】
本開示のさらなる実施形態によれば、レーザ加工システムにおけるレーザビームの集束位置を特定する方法が提供され、その方法は、レーザビームのビーム経路内に配置された少なくとも第1の光学素子において第1および第2の再帰反射光のうちの少なくとも一方を分離することと、第1のサブビームおよび第2のサブビームの高空間分解度の強度分布を検知することと、検知された高空間分解度の強度分布に基づいてレーザビームの焦点位置を特定することとを含む。第1および第2の再帰反射光または反射されたサブビームは、同一の光学素子の別個の面(すなわち表面)において、あるいは、2つの異なる光学素子の表面において、生じ得る。また、複数の光学素子における別個の表面からの3つ以上の再帰反射光を使用することも可能である。それにより、焦点位置の特定精度を高められる場合がある。
【0035】
好ましくは、上記方法はさらに、特定された焦点位置に基づき、且つ、オプションでターゲット焦点位置を用いて、焦点位置を調整または制御することを含む。
【0036】
上記方法は、本明細書に記載された実施形態に係る、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置と、レーザ加工システムとの、特徴および特性を有し且つ実現することができる。
【0037】
強度分布から第1および第2のサブビームのビーム径を検出でき、それらのビーム径を用いて焦点位置を特定できる。焦点位置を特定するために、ビームコースティクスのための関数またはモデルを使用して、ビーム伝播方向に沿った位置の関数としてのビーム径の変化を記述することが可能である。焦点位置の特定のために使用される再帰反射光またはサブビームの数は、既知であるか事前に指定される場合がある。また、サブビーム(すなわち再帰反射光)が生じる表面間の距離は、既知であるか指定されることがある。当該距離は、たとえば、少なくとも1つの光学素子の厚さ、または複数の光学素子間の距離、またはそれらの組み合わせに対応することがある。当該距離から、第1および第2のサブビームの検出されたビーム径間の距離を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本開示の実施形態を図に示し、以下でさらに詳しく説明する。
【
図1】本開示の実施形態に係る、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置を備えた、レーザ加工システムを示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る、レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置と、レーザ加工システムの集束光学系とを示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るレーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置の高空間分解能検知器で記録されたレーザビームの分離再帰反射光の、シミュレーション結果を示す図である。
【
図4A】
図3のシミュレーション結果の分析を示す図である。
【
図4B】
図3のシミュレーション結果の分析を示す図である。
【
図5】レーザ加工システムにおけるレーザビームの焦点位置を特定する装置の高空間分解能検知器で記録されたレーザビームの分離再帰反射光の、別の焦点位置またはコリメーション位置についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図6A】
図5のシミュレーション結果の分析を示す図である。
【
図6B】
図5のシミュレーション結果の分析を示す図である。
【
図7】レーザビームの概略的なビームコースティクスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下において、特記しない限り、同一および同等の要素には同じ参照符号を使用する。
【0040】
図1は、本開示の実施形態に係るレーザ加工システム100を示す。レーザ加工システム100は、切削ヘッドまたは溶接ヘッドなどの加工ヘッド101を備えることがある。
図1には、例として、レーザ加工システム100またはレーザビーム10のビーム経路が直線構造である場合を示しているが、たとえば90°の角度を成す角度付き構造であることも可能であると理解される。レーザビーム10は、明確化のために示しているだけであり、そのビーム経路は完全には図示されていない。
【0041】
レーザ加工システム100は、レーザビーム10(「加工ビーム」または「加工レーザビーム」とも呼ばれる)を供給するレーザ装置110を備える。レーザ装置110は、光ファイバを含むこと、あるいは、光ファイバであることが可能であり、それを通じてレーザビーム10が加工ヘッド101に送られる。レーザ加工システム100は、コリメータレンズ、または複数のレンズから成るズームシステムなどの、レーザビーム10をコリメートするコリメータ光学系115を備えることがある。レーザビーム10は、コリメータ光学系の前段に位置する保護ガラス、レンズまたは絞り、あるいはそれらの組み合わせであり得るオプションの光学装置140を介して、レーザ装置110からコリメータ光学系115に伝搬することができる。
【0042】
レーザ加工システム100は通常、集束レンズなどの、ワークピース1上にレーザビーム10を集束させる集束光学系120を備える。コリメータ光学系115および集束光学系120は、加工ヘッド101に一体化されることが可能である。たとえば、加工ヘッド101は、加工ヘッド101に組み込みまたは取り付けされたコリメータモジュールを含むことができる。
【0043】
実施形態によれば、レーザ加工システム100またはその一部分(加工ヘッド101など)は、加工方向20に沿って移動可能である。加工方向20とは、ワークピース1に対する、レーザ加工システム100(加工ヘッド101など)の溶接方向および/または移動方向であり得る。具体的には、加工方向20は、水平方向である場合がある。加工方向20は、「送り方向」と呼ばれることもある。
【0044】
レーザ加工システム100またはレーザ加工ヘッド101は、本開示の実施形態に係る、レーザビーム10の焦点位置を特定する装置200を備える。
図1および
図2に示す装置200は、レーザビーム10の第1のサブビーム12を反射するように構成された第1の光学素子210と、レーザビーム10の第2のサブビーム14を(好ましくは第1のサブビーム12と実質的に同軸に)反射するように構成された第2の光学素子220と、第1のサブビーム12および第2のサブビーム14を向ける先とすることができる高空間分解能センサ230と、高空間分解能センサ230に当たる第1および第2のサブビーム12および14に基づいてレーザビーム10の焦点位置Fを特定するように構成された判定ユニット240とを含む。第1の光学素子210および第2の光学素子220は、好ましくは、加工ヘッド101のビーム経路内に互いに平行に配置される。光学素子210および220は、ビーム経路内において集束光学系120の下流に配置されることができる。あるいは、当該光学装置が、2つの表面を有する1つの光学素子210のみを備える場合もあり、その第1の表面212は、レーザビーム10の第1のサブビーム12を反射するように構成され、第1の表面212の反対側に位置する第2の表面214は、レーザビーム10の第2のサブビーム14を反射するように構成される。また、以下で説明するように、焦点位置の特定のために、3つ以上の再帰反射光を使用することが可能である。
【0045】
詳細には、第1の光学素子210は、レーザビーム10のビーム経路内に配置され、第1のサブビーム12(および後述するオプションの第3のサブビーム)を形成するレーザビーム10の一部分を、レーザビーム10から分離する。第2の光学素子220も、レーザビーム10のビーム経路内に配置され、第2のサブビーム14(および後述するオプションの第4のサブビーム)を形成するレーザビーム10の別の部分を、レーザビーム10から分離する。詳細には、第2の光学素子220は、第2のサブビーム14(および後述するオプションの第4のサブビーム)を形成する、第1の光学素子210によって透過されたレーザビームの一部分を分離する。
【0046】
本発明によれば、少なくとも1つの光学素子を使用して、レーザビームのビーム経路からの少なくとも2つの実質的に同軸の再帰反射光を分離する。同軸の再帰反射光は高空間分解能センサに向けられ、高空間分解能センサによって測定されたデータから、レーザビームの焦点位置をリアルタイム(オンライン)で特定できる。光学素子は、たとえば、集束光学系の後段に配置された保護ガラスであり得る。このような構成により、リアルタイムでの焦点位置測定が可能であるとともに、それによりリアルタイムでの焦点位置制御も可能であるレーザ材料加工システムが、構造的にコンパクトでモジュール式の形態で提供される。
【0047】
レーザビーム10の焦点位置Fは、レーザ加工システム100の光軸2に対して実質的に平行に規定または特定される場合がある。
図1では、例として、焦点位置Fがワークピース1の表面の上方に示されている。実施形態によれば、レーザ加工システム100は、焦点位置を調節する機構を備えることができる。装置200によって特定された焦点位置Fに基づいて、当該機構は、焦点位置Fを変更すること、またはそれを目標値に合わせることが可能である。たとえば、焦点位置Fを調節して、ワークピース1の表面上またはその内部などのワークピース1の領域内に位置させることができる。焦点位置Fを調節する機構はたとえば、焦点位置制御のために、コリメータ光学系115および/または集束光学系120などのビーム誘導光学系の少なくとも1つの光学素子の位置を変更させるアクチュエータを含むことがある。
【0048】
いくつかの実施形態では、装置200は、レーザビーム10のビーム経路内にビームスプリッタ250を備える。そのビームスプリッタ250は、レーザビーム10を透過するとともに、再帰反射光(すなわち、少なくとも第1のサブビーム12および第2のサブビーム14)を高空間分解能センサ230に向けて反射するように構成される。言い換えれば、ビームスプリッタ250は、光学素子210および220からの同軸の再帰反射光を分離して、それらを高空間分解能センサ230に向けるように構成されることができる。ビームスプリッタ250は通常は、部分透過ミラーである。ビームスプリッタ250は、レーザビーム10のビーム経路から再帰反射光を偏向させるために、レーザ加工システム100の光軸2に対して斜めに配置され得る。たとえば、ビームスプリッタ250は、レーザビーム10のビーム経路またはレーザ加工システム100の光軸2に対して実質的に直角に再帰反射光を偏向させるとともに、それらを高空間分解能センサ230に向けるために、光軸2に対して約45°傾けられることができる。ビームスプリッタ250は通常、レーザビーム10のビーム経路内において、集束光学系120とコリメータ光学系115との間に配置される。
【0049】
装置200の第1の光学素子210および第2の光学素子220は、集束光学系120の焦点領域内、すなわち、レーザビーム10のビーム経路内であって集束光学系120の後段に配置されることがある。詳細には、第1の光学素子210および第2の光学素子220は、集束光学系120と焦点位置Fとの間に配置されることができる。第1の光学素子210および第2の光学素子220は通常、加工ヘッド101の内部(特に集束光学系120)を汚染から保護するために、集束光学系120とビームノズル130との間に配置される。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の光学素子210および/または第2の光学素子220は、透過型光学素子である。透過型光学素子は、レーザビーム10の第1の部分を透過するとともにレーザビーム10の少なくとも第2の部分を反射するように構成され得る。レーザビーム10の第1の部分は、材料加工のためにワークピース1上に向けられることができる。レーザビームの第2の部分は、ビーム経路から分離されるとともに、レーザビーム10の焦点位置Fの特定のために使用されることができる。言い換えれば、レーザビームのサブビームは、「メインビーム」とも呼ばれるレーザビーム10の、分離部分またはビーム部分である。
【0051】
第1の光学素子210および第2の光学素子220は、レーザビーム10のビーム経路内に直列に配置されることがあり、特に、直に連続して配置されることができる。直に連続するとは、第1の光学素子210と第2の光学素子220との間に、他の光学素子が存在せず且つ配置されていないことを意味する。第1の光学素子210および第2の光学素子220は、特に、ビーム経路に沿って互いに距離を隔てて配置された別個の光学素子であり得る。これらの2つの別個の光学素子により、第1のサブビーム12および第2のサブビーム14は、互いに実質的に同軸に方向づけられることができる。
【0052】
第1の光学素子210および/または第2の光学素子220は、通常はガラスから成り、特に保護ガラスであることが可能である。保護ガラスは、ビーム出口側において、ビームノズル130に配置され得る。保護ガラスは、レーザ加工システム内の(光学)素子(特に集束光学系120)を、たとえば飛沫または煙によって引き起こされる可能性のある汚染から保護するために設けることができる。
【0053】
第1の光学素子210は、第1の表面212と、第1の表面212の反対側の第2の表面214とを有する。それらの表面は、平面である場合がある。通常、第1の表面212および第2の表面214は、互いに実質的に平行である。第1のサブビーム12は、第1の表面212または第2の表面214から反射されることができる。第2の光学素子220は、第1の表面222と、第1の表面222の反対側の第2の表面224とを有する。それらの表面は、平面である場合がある。通常、第1の表面222および第2の表面224は、互いに実質的に平行である。第2のサブビーム14は、第1の表面222または第2の表面224から反射されることができる。
【0054】
第1のサブビーム12および第2サブビーム14が反射される表面は、同じ方向に沿って配置されることが可能である。たとえば、それらの表面は、同一の光学素子の上面または第1の表面と、下面または第2の表面とである場合がある。2つの光学素子を用いる場合は、それらの表面は、レーザ装置110からワークピース1に至るレーザビーム10の伝搬方向に対する、第1の光学素子210および第2の光学素子220のそれぞれの上面または第1の表面であり得る。別の例では、それらの表面は、第1の光学素子210および第2の光学素子220のそれぞれの下面または第2の表面である場合がある。
【0055】
実施形態によれば、第1の光学素子210および/または第2の光学素子220は、レーザ加工システム100の光軸2に実質的に直交する向きに配置される。言い換えれば、第1の光学素子210および第2の光学素子は、互いに実質的に平行に配置されることができる。詳細には、第1の光学素子210の第1の表面212および第2の表面214のうちの少なくとも一方、ならびに/あるいは、第2の光学素子220の第1の表面222および第2の表面224のうちの少なくとも一方が、光軸に対して実質的に直交する向きに配置されることができる。ただし、本開示は上記に限定されず、第1の光学素子210および/または第2の光学素子220は、光軸2に対して斜めに配置されることがあり、あるいは、光軸2に対して90°以外の角度を成す向きに配置された表面を有することがある。
【0056】
高空間分解能センサ230としては、たとえばその高空間分解能センサ230に入射するビーム(すなわち、サブビーム12または14)の直径を測定可能なものであれば、いずれのセンサを使用することもできる。たとえば、高空間分解能センサ230としてカメラが用いられ、そのセンサ面は、たとえばCCDセンサで構成される。
【0057】
実施形態によれば、判定ユニット240は、高空間分解能センサ230に当たるレーザビーム10の焦点位置Fを、少なくとも第1のサブビーム12および第2のサブビーム14の位置および/または範囲(特に直径)に基づいて特定するように構成される。たとえば、判定ユニット240は、ビーム特性からレーザビームの焦点位置Fを導出するために、高空間分解能センサ230によって測定されたビーム特性を、モデルまたはモデル関数を用いて明らかにするように構成され得る。特に、焦点位置Fは、モデル関数によって(たとえば、フィッティングによって)、第1のサブビーム12および第2のサブビーム14の直径から特定することができる。言い換えれば、焦点位置Fは、それらの直径から計算することが可能である。
【0058】
モデルまたはモデル関数は、製造公差に対してロバストである場合がある。製造公差とは、すなわち、ビーム径同士の同心性が完全でない場合、コーティングの残留反射に変動がある場合、および、関連性のある厚さまたは距離に偏差が存在する場合などである。
【0059】
いくつかの実施形態において、装置200は、たとえば第1のサブビーム12および第2のサブビーム14などの再帰反射光を高空間分解能センサ230上に結像させるための光学系を備えることがある。
【0060】
さらなる実施形態において、装置200はオプションで、たとえば第1のサブビーム12および第2のサブビーム14などの再帰反射光のための少なくとも1つの光学フィルタを備える。光学フィルタは、オプションで、検知に適切または最適な波長が高空間分解能センサ230に到達するように再帰反射光を光学的にフィルタリングする場合がある。それにより、たとえば、センサ信号中のバックグラウンドまたはノイズを低減することができる。光学フィルタは、信号強度を高空間分解能センサ230に適合させるフィルタを含むこともある。
【0061】
図2は、本開示の実施形態に係る、焦点位置を特定する装置200と、集束光学系120とを示す図である。
【0062】
第1の光学素子は、第1の表面212と、第1の表面212の反対側に位置する第2の表面214とを有する。第2の光学素子220は、第1の表面222と、第1の表面222の反対側に位置する第2の表面224とを有する。いくつかの実施形態では、第1または第2の光学素子の2つの反対側に位置する表面のそれぞれから、高空間分解能センサ230に向けられる再帰反射光(サブビーム)が生じる。それにより、保護ガラスの4つの全ての平面からの再帰反射光を、ビームスプリッタを用いてメインビームから分離し、(オプションで結像光学系を用いて)高空間分解能センサに向けることができる。高空間分解能センサからの画像は、レーザビームの焦点位置を特定するために、判定ユニットにおいて4つの同軸のビーム径に基づくモデル(関数)を使用して判定することができる。
【0063】
第1の光学素子210は、第1のサブビーム12および第3のサブビーム16を反射するように構成されることがある。第1のサブビーム12は、第1の光学素子210の第1の表面212から反射される場合があり、第3のサブビーム16は、第1の光学素子210の第2の表面214から反射される場合がある。第2の光学素子220は、第2のサブビーム14および第4のサブビーム18を反射するように構成されることがある。第2のサブビーム14は、第2の光学素子220の第1の表面222から反射される場合があり、第4のサブビーム18は、第2の光学素子220の第2の表面224から反射される場合がある。
【0064】
このようにして、焦点位置の特定のために、2つの光学素子の少なくとも4つの再帰反射光、すなわち、第1の光学素子210の第1のサブビーム12および第3のサブビーム16と、第2の光学素子220の第2のサブビーム14および第4のサブビーム18とを使用することができる。具体的には、焦点位置を特定するために、4つの再帰反射光の直径を、モデル関数を用いて、たとえばフィッティングによって判定することができる。第1のサブビーム12、第2のサブビーム14、第3のサブビーム16、および第4のサブビーム18は、実質的に同軸である場合があり、特に、実質的に同軸で高空間分解能センサに当たることがある。
【0065】
図3は、高空間分解能センサまたは検知器で記録されたレーザビームの分離再帰反射光の、シミュレーション結果を示す。これらの図形は、重ね合わされた状態でセンサに到達する再帰反射光またはサブビームの強度分布を、mW/cm
2または任意の単位で表したものに相当する。
図3(a)は、高空間分解能センサのシミュレーションされた信号の反転グレースケール画像を、線形スケールで示す。
図3(b)は、高空間分解能センサのシミュレーションされた信号の反転グレースケール画像を、対数スケールで示す。
図3(c)は、シミュレーションされた信号の着色画像を、線形スケールで示す。
図3(d)は、シミュレーションされた信号の着色画像を、対数スケールで示す。
【0066】
図4は、
図3のシミュレーション結果の分析を示す。特に、再帰反射光の直径がはっきりと見て取れる部分を示す。2つの光学素子の4つの平面において生じる4つの再帰反射光の、合計4つの直径(矢印部分)がある。
図4Aは、線形スケール、すなわち、
図3(a)および(c)に示されるシミュレーション結果の分析を示す。
図4Bは、対数スケール、すなわち、
図3(b)および(d)に示されるシミュレーション結果の分析を示す。
【0067】
図5および
図6は、
図3および
図4に示されたシミュレーション結果で使用されたものとは異なる焦点位置またはコリメーション位置についての、比較シミュレーション結果を示す。
【0068】
図5は、高空間分解能検知器で記録されたレーザビームの分離再帰反射光の、シミュレーション結果を示す。これらの図形は、入射する再帰反射光または入射するサブビームの強度分布を、任意の単位で表したものに相当する。
図5(a)は、シミュレーションされた信号の反転グレースケール画像を、線形スケールで示す(
図3aと同様)。
図5(b)は、シミュレーションされた信号の反転グレースケール画像を、対数スケールで示す(
図3bと同様)。
図5(c)は、シミュレーションされた信号の着色画像を、線形スケールで示す(
図3cと同様)。
図5(d)は、シミュレーションされた信号の着色画像を、対数スケールで示す(
図3dと同様)。
【0069】
図6は、
図5のシミュレーション結果の分析を示す。特に、再帰反射光の直径がはっきりと見て取れるシミュレーション結果の部分を示す。2つの光学素子の4つの平面において生じる4つの再帰反射光の、合計4つの直径がある。
図6Aは、線形スケール、すなわち、
図5(a)および(c)に示されるシミュレーション結果の分析を示す。
図6Bは、対数スケール、すなわち、
図5(b)および(d)に示されるシミュレーション結果の分析を示す。
【0070】
ビームの伝搬方向に応じたビーム径の変化は、いわゆるビームコースティクスによって数学的に記述される。
図7は、レーザビームの概略的なビームコースティクスを示す。ビームの特徴を明らかにし、特に、焦点位置(すなわち、ビームの最小直径の位置)を特定するために、測定データを用いて判定されたビーム径(
図7中の円に相当する)とモデルとを用いてフィッティングすることによりビームコースティクス(
図4の包絡線)を形成する。モデルは、たとえば、少なくとも2つの再帰反射光の光路の差異を記述する。結像光学系がセンサ230の前に配置されている場合、これをモデルにおいて考慮に入れることが可能である。
【0071】
本発明によれば、レーザビームから少なくとも2つの実質的に同軸の再帰反射光を分離するために、少なくとも1つの光学素子を使用する。あるいは、少なくとも2つの実質的に同軸の再帰反射光またはサブビームを生成するために、2つの光学素子を使用することもある。光学素子として、保護ガラスを用いることができる。それにより、レーザ加工ヘッドへの簡単なモジュール統合が可能になる。分離のためにビームスプリッタを使用することがある。同軸の再帰反射光が高空間分解能センサに向けられ、高空間分解能センサによって測定されたデータから、レーザビームの焦点位置をリアルタイム(オンライン)で特定できる。特に、ビームコースティクスを判定するとともに焦点位置を推定するために、モデルまたはモデル関数を使用することができる。