(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】ロボットの位置補正方法およびロボット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220427BHJP
B25J 9/10 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/10 A
(21)【出願番号】P 2020563165
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049822
(87)【国際公開番号】W WO2020137799
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆生
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
(72)【発明者】
【氏名】ヂョング, ダニエル
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168579(JP,A)
【文献】特開2011-183492(JP,A)
【文献】特開2005-118951(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178300(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103292(WO,A1)
【文献】特開2010-284728(JP,A)
【文献】特表2009-506518(JP,A)
【文献】特開2000-024969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの位置補正方法であって、
前記ロボットが、
基台と、
2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、
前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、
検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、
前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、
複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、当該複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれ、
前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記方法は、
前記第2軸が第1側に張り出した第1姿勢となるよう前記アームを駆動し、前記ハンドが予め定められた初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドを前記ターゲットと対向させるステップと、
前記ハンドを前記第3軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第3軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第3軸の位置を補正する、第1補正ステップと、
前記アームを前記第1軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第1軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第1軸、前記第2軸および/または前記第3軸周りに前記アームおよび/または前記ハンドを回転させることで、前記第1軸と前記第3軸と前記ターゲットを同一直線上に位置付ける、第2補正ステップと、
前記第1姿勢にて前記第2補正ステップ後に取得される前記各回転軸の回転角に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求める補正量演算ステップと、を備える、位置補正方法。
【請求項2】
前記補正量演算ステップの前に、前記第2軸が前記第1側とは反対側に張り出した第2姿勢となるよう前記アームを駆動し、前記第1および第2補正ステップを実行する、繰返しステップを更に備え、
前記補正量演算ステップにおいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量が、前記第1姿勢にて前記第2
補正ステップ後に取得される前記各回転軸の回転角と、前記第2姿勢にて前記第2
補正ステップ後に取得される前記各回転軸の回転角とに基づいて求められる、
請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項3】
前記ターゲットが、第1ターゲットおよび第2ターゲットを含み、
前記第1姿勢での前記第1および第2補正ステップが、前記第1ターゲットを用いて実行され、前記第2姿勢での前記第1および第2補正ステップが、前記第2ターゲットを用いて実行され、
前記補正量演算ステップにおいて、前記第1軸の回転角補正量が求められる、
請求項2に記載の位置補正方法。
【請求項4】
前記補正量演算ステップにおいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量が、前記第1姿勢にて前記第2
補正ステップ後に取得される前記各回転軸の回転角と併せ、前記アームおよび前記センサの設計パラメータとにも基づいて、求められる、
請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項5】
基台と、
2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、
前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、
検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、
前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、
複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、当該複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれ、
前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記制御装置は、
前記第2軸が第1側に張り出した第1姿勢となるよう前記アームを駆動し、前記ハンドが予め定められた初期姿勢となるように移動させることにより、前記ハンドを前記ターゲットと対向させ、
前記ハンドを前記第3軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第3軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第3軸の位置を補正し、
前記アームを前記第1軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第1軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第1軸、前記第2軸および/または前記第3軸周りに前記アームおよび/または前記ハンドを回転させることで、前記第1軸と前記第3軸と前記ターゲットを同一直線上に位置付け、
前記第1姿勢において
前記検出結果に基づいて前記第1軸、前記第2軸および/または前記第3軸周りに前記アームおよび/または前記ハンドを回転させることで、前記第1軸と前記第3軸と前記ターゲットを同一直線上に位置付けた後に取得される前記各回転軸の回転角に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求める、
ように構成されている、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの位置補正方法およびロボットに関する。位置補正には、ゼロイング補正、あるいは、教示位置補正が含まれ得る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、基板搬送用のロボットには、ハンドの先端に設けられたセンサを備えたものがある。このようなロボットにおいて、位置制御精度の向上のため、ある定められた旋回軸の周りにハンドを揺動することで、センサの実際の位置とロボットによって認識される位置とのズレを修正できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この技術によれば、ある単一の旋回軸で発生しているズレを修正できる。他方、一般にロボットは複数の回転軸を有する。そのため、ズレを修正する技術には、改善の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、ロボットの位置制御精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロボットの位置補正方法においては、前記ロボットが、基台と、2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、当該複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれる。前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記方法は、前記第2軸が第1側に張り出した第1姿勢となるよう前記アームを駆動し、前記ハンドが予め定められた初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドを前記ターゲットと対向させるステップと、前記ハンドを前記第3軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第3軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第3軸の位置を補正する、第1補正ステップと、前記アームを前記第1軸周りに回転させ、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記第1軸周りの回転角を検出し、その検出結果に基づいて前記第1軸、前記第2軸および/または前記第3軸周りに前記アームおよび/または前記ハンドを回転させることで、前記第1軸と前記第3軸と前記ターゲットを同一直線上に位置付ける、第2補正ステップと、前記第1姿勢にて前記第2補正ステップ後に取得される前記各回転軸の回転角に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求める補正量演算ステップと、を備える。
【0007】
前記構成によれば、第3軸だけでなく第2軸の位置も修正でき、ロボットの位置制御精度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るロボットを示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るハンドを示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るロボットの制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るロボットの位置補正方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5Aは、理想状態でのハンドとターゲットの位置関係を示す図、
図5Bは第1姿勢での対向ステップを示す図、
図5Cおよび5Dは第1姿勢での第1補正ステップを示す図である。
【
図6】
図6A-Dは、第1姿勢での第2補正ステップを示す図である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、第2姿勢での対向ステップから第2補正ステップを示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る位置補正方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。全図を通じて同一または対応の要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
図1はロボット1を示す。ロボット1は、半導体素子を製造する半導体処理設備において、基板Sを搬送するために利用され得る。基板Sは、ウェハと呼ばれる半導体素子の材料であり、円盤状に形成されている。半導体処理設備には、熱処理、不純物導入処理、薄膜形成処理、リソグラフィー処理、洗浄処理、あるいは平坦化処理といった様々な処理を基板Sに施すため、複数の処理装置が設置されている。
【0011】
ロボット1は、例えばカセット2に収納された基板Sを処理装置へ搬送する。カセット2は、例えば正面開口式一体型ポッド (FOUP) である。なお、単一のカセット2が図示されているが、半導体処理設備には、複数(例えば、2又は3)のカセット2を集約的に備えたEFEM (Equipment Front End Module) が設置されていてもよい。この場合、好ましくは、ロボット1は、走行装置なしで各カセット2内にアクセス可能に構成される。
【0012】
ロボット1は、基台10、アーム12、ハンド14、センサ17、および制御装置20を備えている。
【0013】
基台10は、半導体処理設備の適所(例えば、水平な床面)に固定される(あるいは、走行装置を介して設備床面に支持されてもよい)。以降では、基台10が水平な床面に適正に設置されているものとして、方向を説明する。
【0014】
アーム12は、昇降軸11を介して基台10に連結されている。昇降軸11は基台10に対して上下方向(Z方向)に動作でき、それによりアーム12およびハンド14を上下方向に移動させる。アーム12は、2以上のリンクを連結することによって構成されている。ハンド14は、アーム12に連結される。ロボット1あるいはアーム12は、いわゆる水平多関節型である。ロボット1には、複数の回転軸A1,A2…が、複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定されている。いずれの回転軸A1,A2…も上下方向(Z方向)に向けられる。
【0015】
「複数の連結部」には、基台10とアーム12との連結部、アーム12を構成するリンクのうち隣接する2リンク同士の連結部、および、アーム12とハンド14との連結部が含まれる。ロボット1における回転軸の個数は、基台10からハンド14までに設けられた連結部の個数と対応する。例えば、本実施形態では、アーム12が第1リンク13aおよび第2リンク13bの2リンクを有し、ロボット1に3つの連結部および3つの回転軸が設定されている。(リンク本数が3以上であれば、ロボット1に4以上の回転軸が設定されることになる。)
【0016】
第1リンク13aの基端部は、基台10に回転軸A1周りに回転可能に連結されている。第2リンク13bの基端部は、第1リンク13aの先端部に回転軸A2周りに回転可能に連結されている。ハンド14は、第2リンク13bの先端部に回転軸A3周りに回転可能に連結されている。リンク13a,13bおよびハンド14は、水平面(XY平面)内で揺動できる。ハンド14は、アーム12の姿勢(各回転軸A1~A3周りの回転角)に応じて水平面内で任意の軌跡(直線および曲線を含む)に沿って移動できる。
【0017】
3つの回転軸A1~A3を基台10に近いものから順に、第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3と呼ぶ。第1軸A1周りの回転角を第1回転角φ1、第2軸A2周りの回転角を第2回転角φ2、第3軸A3周りの回転角を第3回転角φ3と呼ぶ。中央の第2軸A2が設定されている連結部(2リンク式の本実施形態では、第1リンク13aと第2リンク13bとの連結部)について、説明の便宜上「肘関節」と呼ぶ場合がある。
【0018】
図1において、上から見て(換言すれば、回転軸A1~A3の軸方向に上から見たときに)、肘関節Jeが第1側(例えば、左側あるいはX方向マイナス側)に張り出している姿勢を仮に「第1姿勢」、上から見て肘関節が第1側とは反対側の第2側(例えば、右側あるいはX方向プラス側)に張り出した姿勢を仮に「第2姿勢」と呼ぶ。第1姿勢では第1回転角φ1が正値をとり、第2姿勢では第1回転角φ1が負値をとる。
【0019】
図2はハンド14を示す。ハンド14は、薄板状である。ハンド14は、アーム12の先端部から水平に延びている。ハンド14は、円盤状の基板Sをその上面で保持でき、それにより基板Sは概ね水平な姿勢に保たれる。保持のための構成は、特に限定されず、エッジグリップ式あるいは吸引式を採用できる。ハンド14が基板Sを保持する状態でアーム12およびハンド14が昇降および/または揺動することによって、ロボット1は、X、Yおよび/またはZ方向に任意の軌跡に沿って基板Sを水平姿勢に保ちながら搬送できる。
【0020】
ハンド14は、上から見てU状に形成されている。ハンド14は、単一の基端部15、および、基端部15から二股に分かれて延びる第1先端部16aおよび第2先端部16bを有する。ハンド14は、上から見て基準線Cに対して左右対称である。回転軸A3が基準線C上に位置するようにして、ハンド14の基端部15はアーム12に連結されている。
【0021】
センサ17は、ハンド14の第1先端部16aと第2先端部16bとの間の空間を伝播する検出光Lを形成する。検出光Lはビーム状である。センサ17は、物体が検出光Lを遮ったか否か、換言すると、前記空間内に物体が存在するか否かを検出する。本実施形態では、センサ17を透過型で構成しているが、反射型で構成してもよい。センサ17は、発光素子18aおよび受光素子18bを有する。発光素子18aは、制御装置20により駆動されて検出光Lを発生し、検出光Lは、光ファイバ19aを介して第1先端部16aに導かれて第1先端部16aから前記空間に出射される。前記空間に物体がなければ、検出光Lは、前記空間内を直線的に進んで第2先端部16bに入射し、光ファイバ19bを介して受光素子18bに導かれる。受光素子18bは、受光量に応じた信号を制御装置20に出力する。物体が検出光Lを遮っているか否かによって、センサ17から出力される信号の特性が変わる。制御装置20は、この信号特性の違いに基づいて、検出光Lが遮られたか否かを判断できる。
【0022】
図3はロボット1の制御系を示している。制御装置20は、アーム12およびハンド14の動作を制御する。制御装置20は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラであり、単一の装置とは限らず複数の装置で構成されていてもよい。
【0023】
制御装置20は、演算部21、記憶部22およびサーボ制御部23を備える。記憶部22は、制御装置20の基本プログラム、ロボット1の動作プログラム等の情報を記憶する。この動作プログラムには、ロボット1が半導体処理設備で実用されて基板Sの搬送作業を自動的に行うための作業プログラムだけでなく、作業前にロボット1の加工誤差、組付誤差および/または据付誤差等の誤差に起因した位置ずれを補正するためのプログラムも含まれる。この「位置ずれ」とは、制御装置20が認識しているアーム12あるいはハンド14の位置、姿勢あるいは座標(以下、ソフトウェア値と呼ぶことがある)と、誤差によって生じた実際のアーム12あるいはハンド14の位置、姿勢あるいは座標(以下、実際値と呼ぶことがある)との差である。この補正のためのプログラムを実行することで、実施形態に係る位置補正方法が実行される。記憶部22は、動作プログラムの他、プログラム実行中に取得されたデータを一時的に記憶することもできる。
【0024】
演算部21は、ロボット制御のための演算処理を実行し、ロボット1の制御指令を生成する。サーボ制御部23は、演算部21により生成された制御指令に基づいて、ロボット1の駆動装置26を制御するように構成されている。この駆動装置26には、例えば、昇降軸11を昇降させる昇降アクチュエータ27a(例えば、ボールスクリュー)、回転軸A1~A3それぞれに対応する複数の回転アクチュエータ28a,28b,28c(例えば、電気モータ)が含まれる。駆動装置26は、制御装置20からの制御指令に従って、ハンド14を移動させる。以下の説明において、アーム12およびハンド14の姿勢あるいは位置の変化は、制御装置20により実行される制御を通じて実現される。
【0025】
以下、制御装置20によるプログラムの実行、それに伴うロボット1の動作によって実現される位置補正方法について説明する。位置補正方法を実施する前提として、ターゲット40が、ロボット1の可動範囲内に(ハンド14がアクセス可能な位置に)設置される。ターゲット40は、作業者によって半導体処理設備で取外し可能に設置されてもよいし、カセット2の内部あるいは外面に予め設置されてもよい。
【0026】
なお、ターゲット40の形状および設置時姿勢は任意である。一例として、ターゲット40は円柱状に形成され、「ピン」と呼ばれるものであってもよい。この場合、ターゲット40の水平断面は円となる。他の例として、ターゲット40はその水平断面の一部のみが円弧とされてもよい。一例として、ターゲット40は、上下方向に延びる姿勢で設置される。
【0027】
以下の説明において、ハンド14の中心線C(または単に中心線C)は第3軸A3を通り検出光Lに垂直な線であるとする。また以下の説明において、ターゲット40の中心とは、ターゲット40の水平断面の円または円弧の中心であるとする。位置補正方法では、まず、アーム12が第1初期姿勢となる状態でハンド14をターゲット40に対向させる(S1)。例えば、アーム12およびハンド14の姿勢を、誤差が存在しないと仮定した場合に、上から見てターゲット40の中心と第1軸A1が中心線C上に位置するような姿勢とする。具体的には、制御装置20は、アーム12およびハンド14の姿勢が
図5Aに示す第1初期姿勢となるように、駆動装置を制御する。
図5Aは、このステップの実行によって、制御装置20が実現しようとしている理想的な位置関係を示す。しかし、実際には誤差の累積により、アーム12およびハンド14を第1初期姿勢としても、
図5Bに示すように、ターゲット40の中心が中心線Cからズレる。
【0028】
そこで、まず、このズレを矯正して中心線C上にターゲット40の中心を位置づけるために必要な補正を行う(S2)。この補正では、上述した特許文献1で教示された技術を好適に適用でき、当該文献に教示される技術をここに援用する。概要を述べると、第1軸A1と第2軸A2の回転軸を動作させない状態で、ハンド14を第3軸A3周りに揺動する。第1初期姿勢から時計回りに回転してターゲット40が検出光Lを遮ったときの第3軸A3の回転角と、第1初期姿勢から反時計回りに回転してターゲット40が検出光Lを遮ったときの第3軸A3の回転角とを取得する。ターゲット40の中心線Cからのズレが大きいと回転角の差も大きくなることから、回転角の差からズレの程度を判断できる。制御装置20は、判断されるズレの程度に基づいて、ハンド14を移動し、それにより上から見てターゲット40の中心を中心線C上に位置させる。(
図5Dを参照)。
【0029】
上記の第1補正ステップを実行しても上から見て第1軸A1が中心線C上に位置しない可能性がある。そこで、次に第2補正ステップS3を実行する。
【0030】
第2補正ステップS3では、まず、第2軸A2と第3軸A3の回転軸を動作させない状態で、第1軸A1周りにアーム12およびハンド14を揺動する。そして、時計回りに回転してターゲット40が検出光Lを遮ったときの第1軸A1の回転角と、反時計回りに回転してターゲット40が検出光Lを遮ったときの第1軸A1の回転角を取得する。取得された回転角に基づいて、ターゲット40の中心周りにハンド14を回転させるように第1軸、第2軸および第3軸を回転させる。ターゲット40の中心周りの回転移動量は、取得された第1軸A1の回転角に応じて決定されるものであり、上から見てハンド14の中心線Cを第1軸A1とターゲット40の中心とを結ぶ直線と重ねるために必要な回転移動量である。この回転移動を終えると、ハンド14を中心線Cに沿ってターゲット40に向けて直線移動させる。ターゲット40が検出光Lを遮るまで直線移動で進め、そこから所定距離Ldだけハンド14を直線移動で戻す。Ldは0としてもよい。そして、ハンド14をターゲット40に対向させる処理からハンド14を所定距離Ldだけ直線移動させる処理までの一連の処理を、上から見てターゲット40の中心と第1軸A1が中心線C上に位置するまで繰り返す。そして、上から見てターゲット40の中心と第1軸A1が中心線C上に位置し、ターゲット40と検出光Lの距離が所定距離Ldになったときの第2軸A2の回転角および第3軸A3の回転角を記憶する。これにより、第1姿勢における第2補正ステップが終了する。第2補正ステップにおいて、上から見てターゲット40の中心と第1軸A1が中心線C上に位置することには、ターゲット40の中心と中心線Cとの距離と第1軸A1と中心線Cとの距離が0以外の所定の許容値以下となることを含む。所定の許容値はロボット1による基板Sの搬送が行える程度に小さい値とされる。
【0031】
次に、アーム12が第2初期姿勢となる状態でハンド14をターゲット40に対向させる(S4)。そして、上記第1初期姿勢にしてから進めていった一連の処理を、同様にして実行する(S5、S6)。第2姿勢でも、第2補正ステップにおいて、第2軸A2の回転角および第3軸A3の回転角が記憶される。
【0032】
仮にソフトウェア値が実際値と一致していれば、第1姿勢で取得された第2回転角と第2姿勢で取得された第2回転角は、その絶対値が互いに等しくなり、かつ、第1姿勢で取得された第3回転角と第2姿勢で取得された第3回転角も、その絶対値が互いに等しくなる。このように各絶対値が等しくならなければ、制御装置20が認識していた位置と実際の位置とにズレがあったことを意味する。そこで、これら絶対値を等しくするために必要な角度値を演算する(S7)。この角度値が第2軸A2周りの回転角のズレを補正する補正量であり、第3軸A3周りの回転角のズレを補正する補正量である。当初設定されているソフトウェア値にこの補正量を加味することで、初期位置を矯正でき(ゼロイング補正)、また、作業プログラムで指定されている教示位置を補正できる(教示位置補正)。例えば、第1初期姿勢を当初定めていたソフトウェア値に当該補正量を加味してアームが第1初期姿勢となるように駆動装置26を駆動することで、上から見てターゲット40の中心と第1軸A1が中心線C上に位置すると共に、ハンド14をターゲットから想定される距離だけ離れた位置に位置づけることができる。
【0033】
本実施形態によれば、第3軸のみに着目するのではなく、第1軸との位置関係も含めて矯正するので、位置補正の精度が向上するし、補正を加味した位置制御の精度も向上する。
【0034】
また、
図8に示すように、ターゲットが2つある場合、第1軸の回転角についても補正可能となる。ここで、2つのターゲットを第1ターゲット40a,第2ターゲット40bと呼ぶこととする。理想的な配置では、第1軸A1から第1ターゲット40aまでの距離と、第1軸A1から第2ターゲット40bまでの距離とが等しくなるようにして、2つのターゲット40a,40bが設置される。2以上のカセット2を有するEFEMでは、このようなターゲット40a,40bの配置が容易である。第1ターゲット40aがある一つのカセット2に設置され、第2ターゲット40bが別のカセット2に設置される。しかし、ロボット1の誤差に起因して、2つの距離は必ずしも等しくならない。第2軸A2および第3軸A3に関する矯正は上記した第1補正ステップ、第2補正ステップおよび補正量演算ステップを通じてなされていることから、ここでは第1軸A1に関するソフトウェア値に補正をかけることで、最終的な位置補正が行われる。
【0035】
具体的には、上記した第1姿勢での対向ステップから第2補正ステップまでを第1ターゲット40aを用いて実行し、第2姿勢での対向ステップから第2補正ステップまでをターゲット40bを用いて実行する。そして、第1姿勢において第1軸から第1ターゲットまでの距離Bと、第1軸の回転角φ1を取得する。また、第2姿勢において第1軸から第2ターゲットまでの距離B´と、第1軸の回転角φ1´を取得する。
【0036】
仮に現実に第1軸から第1ターゲットまでの距離と、第1軸から第2ターゲットまでの距離とが等しければ、取得された2つの距離が互いに等しく、また、第1姿勢で取得された第1回転角と、第2姿勢で取得された第2回転角とが等しくなる。異なる場合は、2つの距離および/または第1回転軸周りのアクチュエータ28aの取付け等に誤差が存在することを意味する。そのため、距離が異なる場合は、距離を補正するための補正量を演算する。第1回転角の絶対値に差があれば、その差を解消するための補正量を演算する。
【0037】
このように本実施形態によれば、第2軸A2および第3軸A3だけでなく、第1軸A1の回転角および2つのターゲット40a,40bまでの距離を補正でき、位置制御の精度を更に向上できる。
【0038】
次に第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1姿勢での対向ステップ、第1補正ステップおよび第2補正ステップを行った後、補正量演算ステップに進んで第2回転角および第3回転角に関する補正量が演算される。第2姿勢での対向ステップから第2補正ステップまでの一連の工程は省略される。そのため、補正量演算ステップでは、第1実施形態とは別のパラメータ、具体的にはアームおよびセンサ17の設計パラメータに基づいて、補正量が演算される。設計パラメータであるので、予め記憶部に記憶されており、演算に際して記憶部内のデータが参照される。設計パラメータとしては、具体的には、第1軸からターゲット40の検出光遮光部までの距離、第1軸から第2軸までの距離(第1リンクの長さ)、第2軸から第3軸までの距離(第2リンクの長さ)、第3軸から検出光Lまでの最短距離である。これら設計パラメータを考慮することで、第2姿勢での繰返しステップを省略して第2回転角および第3回転角に関する補正量を求めることができる。
【0039】
これまで実施形態について説明したが、上記構成および方法は本発明の趣旨の範囲内で追加、変更および/または削除可能である。
【0040】
例えば、上述したように、3以上のリンクを有するアームでも同様にして適用可能である。3リンク式の場合には回転軸が4つとなる。その場合、上記方法を適用するに際しては、例えば、まず、ハンド14側から順に3つの回転軸を第3軸、第2軸および第1軸とし、基台10とアーム12との連結部における回転軸については動作させないでおく。これにより、ここで定義された第1~第3軸の回転角について補正できる。次に、基台10側から順に3つの回転軸を第1軸、第2軸および第3軸とし、ハンド14とアーム12との連結部における回転軸については動作させないでおく。これにより、4以上の回転軸が存在するロボットにおいても、補正精度を向上でき、位置制御精度が向上する。