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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】ロボットの位置補正方法およびロボット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220427BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J9/06 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020563166
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049824
(87)【国際公開番号】W WO2020137800
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】16/234,084
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆生
(72)【発明者】
【氏名】ヂョング, ダニエル
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168579(JP,A)
【文献】特開2011-183492(JP,A)
【文献】特開2005-118951(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178300(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103292(WO,A1)
【文献】特開2010-284728(JP,A)
【文献】特表2009-506518(JP,A)
【文献】特開2010-110891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの位置補正方法であって、
前記ロボットが、
基台と、
2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、
前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、
検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、
前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、
複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、前記複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれ、
前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記方法は、
前記ハンドが予め定められた第1初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させるステップと、
前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出する、第1位置検出ステップと、
前記ハンドが前記第1初期姿勢とは異なる予め定められた第2初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させるステップと、
前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出する、第2位置検出ステップと、
前記第1初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角と、前記第2初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角との差に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求める補正量演算ステップと、を備える、位置補正方法。
【請求項2】
前記第1位置検出ステップおよび前記第2位置検出ステップにおいて、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角から前記ターゲットの位置が求められ、
前記補正量演算ステップにおいて、求められた2つの位置の差に基づいて回転角補正量が求められる、請求項1に記載の位置補正方法。
【請求項3】
前記ターゲットが、第1ターゲットおよび第2ターゲットを含み、
前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量が加味された状態で、前記第1ターゲットを用いて前記第1位置検出ステップおよび前記第2位置検出ステップのうちのいずれか一方を実行すると共に前記第2ターゲットを用いて前記第1位置検出ステップおよび前記第2位置検出ステップのうちのいずれか他方を実行し、
これら2つの位置検出ステップから取得された前記第1軸からターゲットまでの距離のデータおよび前記第1軸の回転角のデータに基づき、前記第1軸の回転角補正量が求められる、請求項1に記載のロボットの位置補正方法。
【請求項4】
基台と、
2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、
前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、
検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、
前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、
複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、前記複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接
2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれ、
前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記制御装置は、
前記ハンドが予め定められた第1初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させ、
前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出し、
前記ハンドが前記第1初期姿勢とは異なる予め定められた第2初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させ、
前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出し、
前記第1初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角と、前記第2初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角との差に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求めるように構成されている、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの位置補正方法およびロボットに関する。位置補正には、ゼロイング補正、あるいは、教示位置補正が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、基板搬送用のロボットには、ハンドの先端に取り付けられたセンサを備えたものがある。このようなロボットにおいて、教示精度の向上のため、ある定められた旋回軸の周りにハンドを揺動することで、センサの実際の位置とロボットによって認識される位置とのズレが修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9796086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この技術によれば、ある単一の旋回軸で発生しているズレを修正できる。他方、一般にロボットは複数の回転軸を有する。そのため、ズレを修正する技術には、改善の余地がある可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、ロボットの位置制御精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るロボットの位置補正方法は、前記ロボットが、基台と、2以上のリンクを連結することで構成され、前記基台に連結されるアームと、前記アームに連結され、二股に分かれた第1先端部および第2先端部を有するハンドと、検出光が前記第1先端部と前記第2先端部との間で伝播するよう構成され、ターゲットが当該検出光を遮ったか否かを検出するセンサと、前記アームおよび前記ハンドの動作を制御する制御装置と、を備え、複数の回転軸が複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定され、前記複数の連結部には、前記基台と前記アームとの連結部、前記アームを成すリンクのうち隣接2リンクの連結部、および、前記アームと前記ハンドとの連結部が含まれ、前記回転軸のうち3つについて、前記基台に近いものから順に第1軸、第2軸および第3軸とした場合に、前記方法は、前記ハンドが予め定められた第1初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させるステップと、前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出する、第1位置検出ステップと、前記ハンドが前記第1初期姿勢とは異なる予め定められた第2初期姿勢となるよう前記ハンドを移動させることにより、前記ハンドをターゲットと対向させるステップと、前記ハンドを揺動し、前記ターゲットが前記検出光を遮ったときの前記回転軸の回転角を検出する、第2位置検出ステップと、前記第1初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角と、前記第2初期姿勢で取得された前記回転軸の回転角との差に基づいて、前記第2軸および前記第3軸の回転角補正量を求める補正量演算ステップと、を備える。
【0007】
前記構成によれば、第3軸だけでなく第2軸の位置も修正でき、ロボットの位置制御精度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るロボットを示す概念図である。
図2図2は、実施形態に係るハンドを示す平面図である。
図3図3は、実施形態に係るロボットの制御系を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係るロボットの位置補正方法を示すフローチャートである。
図5図5Aは、理想状態でのハンドとターゲットの位置関係を示す図、図5Bは現実に起こり得るハンドとターゲットの位置関係を示す図、図5Cは第2軸の補正量を説明する図、図5Dは第3軸の補正量を説明する図である。
図6図6は、第2実施形態に係る位置補正方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。全図を通じて同一または対応の要素には同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
図1はロボット1を示す。ロボット1は、半導体素子を製造する半導体処理設備において、基板Sを搬送するために利用され得る。基板Sは、ウェハと呼ばれる半導体素子の材料であり、円盤状に形成されている。半導体処理設備には、熱処理、不純物導入処理、薄膜形成処理、リソグラフィー処理、洗浄処理、あるいは平坦化処理といった様々な処理を基板Sに施すため、複数の処理装置が設置されている。
【0011】
ロボット1は、例えばカセット2に収納された基板Sを処理装置へ搬送する。カセット2は、例えば正面開口式一体型ポッド (FOUP) である。なお、単一のカセット2が図示されているが、半導体処理設備には、複数(例えば、2又は3)のカセット2を集約的に備えたEFEM (Equipment Front End Module) が設置されていてもよい。この場合、好ましくは、ロボット1は、走行装置なしで各カセット2内にアクセス可能に構成される。
【0012】
ロボット1は、基台10、アーム12、ハンド14、センサ17および制御装置20を備えている。
【0013】
基台10は、半導体処理設備の適所(例えば、水平な床面)に固定される(あるいは、走行装置を介して設備床面に支持されてもよい)。以降では、基台10が水平な床面に適正に設置されているものとして、方向を説明する。
【0014】
アーム12は、昇降軸11を介して基台10に連結されている。昇降軸11は基台10に対して上下方向(Z方向)に動作でき、それによりアーム12およびハンド14を上下方向に移動させる。アーム12は、2以上のリンクを連結することによって構成されている。ハンド14は、アーム12に連結される。ロボット1あるいはアーム12は、いわゆる水平多関節型である。ロボット1には、複数の回転軸A1,A2…が、複数の連結部それぞれにおいて互いに平行に向くよう設定されている。いずれの回転軸A1,A2…も上下方向(Z方向)に向けられる。
【0015】
「複数の連結部」には、基台10とアーム12との連結部、アーム12を構成するリンクのうち隣接する2リンク同士の連結部、および、アーム12とハンド14との連結部が含まれる。ロボット1における回転軸の個数は、基台10からハンド14までに設けられた連結部の個数と対応する。例えば、本実施形態では、アーム12が第1リンク13aおよび第2リンク13bの2リンクを有し、ロボット1に3つの連結部および3つの回転軸が設定されている。(リンク本数が3以上であれば、ロボット1に4以上の回転軸が設定されることになる。)
【0016】
第1リンク13aの基端部は、基台10に回転軸A1周りに回転可能に連結されている。第2リンク13bの基端部は、第1リンク13aの先端部に回転軸A2周りに回転可能に連結されている。ハンド14は、第2リンク13bの先端部に回転軸A3周りに回転可能に連結されている。リンク13a,13bおよびハンド14は、水平面(XY平面)内で揺動できる。ハンド14は、アーム12の姿勢(各回転軸A1~A3周りの回転角)に応じて水平面内で任意の軌跡(直線及び曲線を含む)に沿って移動できる。
【0017】
3つの回転軸A1~A3を基台10に近いものから順に、第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3と呼ぶ。第1軸A1周りの回転角を第1回転角φ1、第2軸A2周りの回転角を第2回転角φ2、第3軸A3周りの回転角を第3回転角φ3と呼ぶ。中央の第2軸A2が設定されている連結部(2リンク式の本実施形態では、第1リンク13aと第2リンク13bとの連結部)について、説明の便宜上「肘関節Je」と呼ぶ場合がある。
【0018】
図2はハンド14を示す。ハンド14は、薄板状である。ハンド14は、アーム12の先端部から水平に延びている。ハンド14は、円盤状の基板Sをその上面で保持でき、それにより基板Sは概ね水平な姿勢に保たれる。保持のための構成は、特に限定されず、エッジグリップ式あるいは吸引式を採用できる。ハンド14が基板Sを保持する状態でアーム12およびハンド14が昇降および/または揺動することによって、ロボット1は、X、Yおよび/またはZ方向に任意の軌跡に沿って基板Sを水平姿勢に保ちながら搬送できる。
【0019】
ハンド14は、平面視でU状に形成されている。ハンド14は、単一の基端部15、および、基端部15から二股状に分かれて延びる第1先端部16aおよび第2先端部16bを有する。ハンド14は、平面視で中心線Cに対して左右対称である。回転軸A3が中心線C上に位置するようにして、ハンド14の基端部15はアーム12に連結されている。
【0020】
センサ17は、ハンド14の第1先端部16aと第2先端部16bとの間の空間を伝播する検出光Lを形成する、光学センサである。検出光Lは、ビーム状であり、空間内で直線的に形成される。センサ17は、物体が検出光Lを遮ったか否か、換言すると、前記空間内に物体が存在するか否かを検出する。本実施形態では、センサ17を透過型で構成しているが、反射型で構成してもよい。センサ17は、発光素子18aおよび受光素子18bを有する。発光素子18aは、制御装置20により駆動されて検出光Lを発生し、検出光Lは、光ファイバ19aを介して第1先端部16aに導かれて第1先端部16aから前記空間に出射される。前記空間に物体がなければ、検出光Lは、前記空間内を直線的に進んで第2先端部16bに入射し、光ファイバ19bを介して受光素子18bに導かれる。受光素子18bは、受光量に応じた信号を制御装置20に出力する。物体が検出光Lを遮っているか否かによって、センサ17から出力される信号の特性が変わる。制御装置20は、この信号特性の違いに基づいて、検出光Lが遮られたか否かを判断できる。
【0021】
図3はロボット1の制御系を示している。制御装置20は、アーム12およびハンド14の動作を制御する。制御装置20は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラであり、単一の装置とは限らず複数の装置で構成されていてもよい。
【0022】
制御装置20は、演算部21、記憶部22およびサーボ制御部23を備える。記憶部22は、制御装置20の基本プログラム、ロボット1の動作プログラム、および、動作プログラムの実行中に取得されるデータ等の情報を記憶する。動作プログラムには、ロボット1が半導体処理設備で実用されて基板Sの搬送作業を自動的に行うための作業プログラムだけでなく、ロボット1の加工誤差、組付誤差および/または据付誤差等の誤差に起因した位置ずれを作業前に補正するためのプログラムも含まれる。この「位置ずれ」とは、制御装置20が認識しているアーム12あるいはハンド14の位置、姿勢あるいは座標(以下、ソフトウェア値と呼ぶことがある)と、誤差によって生じた実際のアーム12あるいはハンド14の位置、姿勢あるいは座標(以下、実際値と呼ぶことがある)との差である。この補正のためのプログラムを実行することで、実施形態に係る位置補正方法が実行される。
【0023】
演算部21は、ロボット制御のための演算処理を実行し、ロボット1の制御指令を生成する。サーボ制御部23は、演算部21により生成された制御指令に基づいて、ロボット1の駆動装置26を制御するように構成されている。この駆動装置26には、例えば、昇降軸11を昇降させる昇降アクチュエータ27a(例えば、エアシリンダ)、回転軸A1~A3それぞれに対応する複数の回転アクチュエータ28a,28b,28c(例えば、電気モータ)が含まれる。駆動装置26は、制御装置20からの制御指令に従って、ハンド14を移動させる。以下の説明において、アーム12およびハンド14の姿勢あるいは位置の変化は、制御装置20により実行される制御を通じて実現される。
【0024】
以下、制御装置20によるプログラムの実行、それに伴うロボット1の動作によって実現される位置補正方法について説明する。位置補正方法を実施する前提として、ターゲット40が、ロボット1の可動範囲内に(ハンド14がアクセス可能な位置に)設置される。ターゲット40は、作業者によって半導体処理設備で取外し可能に設置されてもよいし、カセット2の内部あるいは外面に予め設置されてもよい。
【0025】
なお、ターゲット40の形状、設置時姿勢および設置先は任意である。一例として、ターゲット40は円柱状に形成されてもよく、「ピン」と呼ばれるものであってもよい。この場合、ターゲット40の水平断面は円となる。他の例として、ターゲット40はその水平断面の一部のみが円弧とされてもよい。一例として、ターゲット40は上下方向に延びる姿勢で設置される。ターゲット40は、カセット2の内部または外面に設置されてもよいし、ウェハを模した治具に設置されてもよい。治具はカセット2内に収納された状態であってもよい。以下の説明において、ターゲット40の中心とは、ターゲット40の水平断面の円または円弧の中心であるとする。
【0026】
位置補正方法では、まず、アーム12が第1初期姿勢となる状態でハンド14をターゲット40に対向させる(S1)。次に、ハンド14を揺動して複数の回転軸周りの回転角に基づいてターゲット40の中心の位置を検出する(S2)。この検出では、上述した特許文献1で教示された技術を好適に適用でき、当該文献に教示される技術をここに援用する。概要を述べると、ハンド14の揺動のため、第3軸A3周りにハンド14を回転させる。位置の検出のため、センサ17の出力を監視してターゲット40が検出光Lを遮ったか否かを判断し、遮ったときの第1軸A1、第2軸A2および第3軸A3の回転角を取得する。そして、第1初期姿勢とは異なる第2初期姿勢でハンド14をターゲット40に対向させる(S3)。先と同様、ハンド14を揺動して複数の回転軸周りの回転角に基づいてターゲット40の中心の位置を検出する(S4)。
【0027】
検出された2つのターゲット40の中心の位置は、上述の誤差に起因して完全には一致せず、2つの位置の差が生じる。そして、その差を解消するための補正量が誤差を解消するための補正量となる。例えば、2つの位置の差に基づいて、誤差を解消するための補正量を演算する(S5)。補正量は第2軸A2の回転角および第3軸A3の回転角に関して求められる。具体的には、第1初期姿勢および第2初期姿勢それぞれから第2軸A2周りに同じ補正量Δφ2だけ回転させ(図5C参照)、更に、第1初期姿勢および第2初期姿勢それぞれから第3軸A3周りに同じ補正量Δφ3だけ回転させたときに(図5D参照)、ハンド14の先端が同じ位置となるような補正量Δφ2,Δφ3が求められる。
【0028】
ソフトウェア値にこのように求められた補正量Δφ2,Δφ3が加味されることで、初期の誤差を吸収してロボット1の初期位置を校正でき、位置制御精度が向上する。
【0029】
図6に示すように、ターゲットが2つある場合、第1軸A1の回転角についても補正可能となる。ここで、2つのターゲットを第1ターゲット40a,第2ターゲット40bと呼ぶこととする。理想的な配置では、第1軸A1から第1ターゲット40aまでの距離と、第1軸A1から第2ターゲット40bまでの距離とが等しくなるようにして、2つのターゲット40a,40bが設置される。2以上のカセット2を有するEFEMでは、このようなターゲット40a,40bの配置が容易である。第1ターゲット40aがある一つのカセット2に設置され、第2ターゲット40bが別のカセット2に設置される。しかし、上述の誤差に起因して、2つの距離は必ずしも等しくならない。第2軸A2および第3軸A3に関する矯正は上記の補正量演算ステップを通じてなされていることから、ここでは第1軸A1に関するソフトウェア値に補正をかけることで、最終的な位置補正が行われる。
【0030】
具体的には、ハンド14を第1ターゲット40aに向けて移動させ、センサ17を監視して第1ターゲット40aに検出光Lを遮らせる。遮ったときの第1軸A1から第1ターゲット40aまでの距離Bと、第1軸A1の回転角φ1を取得する。これと同様にして、ハンド14を第2ターゲット40bに向けて移動させ、第1軸A1から第2ターゲット40bまでの距離B´と第1軸A1の回転角φ1´を取得する。
【0031】
仮に現実に第1軸から第1ターゲットまでの距離と、第1軸から第2ターゲットまでの距離とが等しければ、取得された2つの距離が互いに等しく、また、第1姿勢で取得された第1回転角と、第2姿勢で取得された第2回転角とが等しくなる。異なる場合は、2つの距離および/または第1回転軸周りのアクチュエータの取付け等に誤差が存在することを意味する。そのため、距離が異なる場合は、距離を補正するための補正量を演算する。第1回転角の絶対値に差があれば、その差を解消するための補正量を演算する。
【0032】
このように本実施形態によれば、第2軸A2および第3軸A3だけでなく、第1軸A1の回転角および2つのターゲット40a,40bまでの距離を補正でき、位置制御の精度を更に向上できる。
【0033】
これまで実施形態について説明したが、上記構成および方法は本発明の趣旨の範囲内で追加、変更および/または削除可能である。
【0034】
例えば、上述したように、3以上のリンクを有するアームでも同様にして適用可能である。3リンク式の場合には回転軸が4つとなる。その場合、上記方法を適用するに際しては、例えば、まず、ハンド14側から順に3つの回転軸を第3軸、第2軸および第1軸とし、基台10とアーム12との連結部における回転軸については動作させないでおく。これにより、ここで定義された第1~第3軸の回転角について補正できる。次に、基台10側から順に3つの回転軸を第1軸、第2軸および第3軸とし、ハンド14とアーム12との連結部における回転軸については動作させないでおく。これにより、4以上の回転軸が存在するロボットにおいても、補正精度を向上でき、位置制御精度が向上する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6