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特許7064627石油、石油留分、又は天然ガスの処理方法、そのような処理方法によって得られる石油製品(石油、石油留分、又は天然ガス)、それらに対する添加剤の製造方法、及び、それらに対する添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】石油、石油留分、又は天然ガスの処理方法、そのような処理方法によって得られる石油製品(石油、石油留分、又は天然ガス)、それらに対する添加剤の製造方法、及び、それらに対する添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10G 32/00 20060101AFI20220427BHJP
   C10L 1/14 20060101ALI20220427BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20220427BHJP
   C12P 1/02 20060101ALN20220427BHJP
【FI】
C10G32/00 A
C10L1/14
C12N1/14 A
C12P1/02 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020571473
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019066138
(87)【国際公開番号】W WO2019243393
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】18179399.3
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520496453
【氏名又は名称】テシュ レイナー
【氏名又は名称原語表記】TESCH,Rainer
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】テシュ レイナー
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06156946(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104542835(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 32/00
C10L 1/10
C10L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油、又は石油留分の少なくとも一つを処理するための処理方法であって、石油、又は石油留分の少なくとも一つに対して、
)共生関係にあるアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)を含むカンゾウ属(Glycyrrhiza)植物の根、及び/又はカンゾウ属植物の根と共生できるアーバスキュラー菌根菌から選択される第1の成分、及び
)圧搾又は抽出により得られるホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物成分である第2の成分を、添加することを含むことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
処理される石油又は石油留分に添加される、前記第1の成分及び第2の成分が、第1の石油又は第1の石油留分に含まれており、当該第1の石油又は第1の石油留分を、処理される石油又は石油留分に対して添加することを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
以下の工程c)及び工程d)を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
c)第1の成分及び第2の成分を追加することによって処理された石油又は石油留分の少なくとも一つを、まだ処理されていない別の石油又は別の石油留分の少なくとも一つに添加する工程
d)工程cを1回又は複数回繰り返す工程
【請求項4】
前記第1の成分及び第2の成分を添加することによって処理された後、水性液相で石油又は石油留分の少なくとも一つを洗浄する工程を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記第2の成分が由来する植物が、エラエオカルプス属(Elaeocarpus)の植物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記第2の成分が由来する植物が、ホルトノキ科ホルトノキ属(Elaeocarpaceae hygrophilus)であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
石油、又は石油留分の少なくとも一つであって、請求項1~6のいずれか一項に記載の処理方法によって得られてなる石油製品。
【請求項8】
添加剤として、
a)共生関係にあるアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)を含むカンゾウ属(Glycyrrhiza)植物の根、及び/又はカンゾウ属植物の根と共生できるアーバスキュラー菌根菌から選択される第1の成分、及び
b)圧搾又は抽出により得られるホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物成分である第2の成分を
含む石油、又は石油留分の少なくとも一つであることを特徴とする石油製品。
【請求項9】
石油、又は石油留分の少なくとも一つに対する添加剤の製造方法であって、
共生関係にあるアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)を含むカンゾウ属(Glycyrrhiza)植物の根、及び/又はカンゾウ属植物の根と共生できるアーバスキュラー菌根菌から選択される第1の成分と、圧搾又は抽出により得られるホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物成分である第2の成分との混合工程を含むことを特徴とする添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記第1の成分及び第2の成分の混合中、及び/又は前記第1の成分及び第2の成分の混合後、以下の工程a)及び工程b)を任意の順序で行うことを特徴とする請求項9に記載の添加剤の製造方法。
a)混合物を第1の期間、第1の照度に曝露する工程
b)混合物を第2の期間、第2の照度に曝露する工程(但し、工程a)の第1の照度は、工程b)の第2の照度よりも高くする。)
【請求項11】
前記混合は、以下の工程i)~iii)により行われることを特徴とする請求項9又は10に記載の添加剤の製造方法。
i)前記第1の成分と、少なくとも1つの第1の液体化合物とを混合して、第1の液体組成物を調製する工程
ii)前記第2の成分と、少なくとも1つの第2の液体化合物とを混合して、第2の液体組成物を調製する工程
iii)得られた第1の液体組成物と、第2の液体組成物とを混合して、第1の液体組成物と第2の液体組成物との混合物を得る工
【請求項12】
前記第1の液体化合物及び第2の液体化合物が、置換又は非置換の液体炭化水素であることを特徴とする請求項11に記載の添加剤の製造方法。
【請求項13】
石油、又は石油留分の少なくとも一つに対する添加剤であって、共生関係にあるアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)を含むカンゾウ属(Glycyrrhiza)植物の根、及び/又はカンゾウ属植物の根と共生できるアーバスキュラー菌根菌から選択される第1の成分と、圧搾又は抽出により得られるホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物成分である第2の成分を含むことを特徴とする添加剤。
【請求項14】
置換又は非置換の液体炭化水素を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の添加剤。
【請求項15】
石油、又は石油留分の少なくとも一つの添加剤であって、請求項9~12のいずれか一項に記載の製造方法で得られてなることを特徴とする請求項14に記載の添加剤。
【請求項16】
石油、又は石油留分の少なくとも一つの添加剤の使用方法であって、
請求項13~15のいずれか一項に記載の添加剤を、石油、又は石油留分の少なくとも一つに対して添加することを特徴とする添加剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の石油製品を得るための石油、石油留分、又は天然ガスの処理方法、そのような処理方法によって得られる石油製品(石油、石油留分、又は天然ガス等の少なくとも一つ、以下、単に、石油製品と称する場合がある。)、それらに対する添加剤の製造方法、及び、それらに対する添加剤、更には、そのような添加剤の使用方法(使用)に関する。
【背景技術】
【0002】
原油に含まれる硫黄及び硫黄含有化合物は、油の品質(API比重、粘度、塩分、底質、及び水)を低下させることが知られている。
このような硫黄含有化合物、特に硫化物、特に可溶性硫化物(HS、HS、S2-、又はそれらの組み合わせ)は、硫酸塩還元細菌(SRB)が活動(繁殖)する結果として、石油及び油田のブラインで頻繁に検出され、深刻な問題を引き起こす。すなわち、それらの硫酸塩還元細菌の毒性、臭気、腐食性、及び坑井の詰まりの可能性がある。
【0003】
そこで、硫化物除去の現在の処理技術には、蒸気又は煙道ガスによるストリッピング、空気酸化、及び沈殿等の物理的/化学的方法がある。
しかしながら、硫化物除去に際して、微生物処理であれば、硫化物レベルを低減するため、より効率的で費用対効果の高い代替手段となる可能性がある。
【0004】
そこで、原油、ナフサ及び誘導体から硫黄含有生成物を除去するために、微生物学的手法を見つけるための試みが長い間行われてきた。
例えば、1978年に、マリクによって発表された包括的な論文(本明細書の最後の参照(1))に報告されたように、デスルフォビブリオ・デスルフリカン(Desulfovibrio desulfuricans)、アルスロバクター属(Arthrobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、緑膿菌、アシネトバクター属、リゾビウム属(Rhizobium)が、微生物学的手法の対象として、調査研究されてきた。
【0005】
又、特許文献1(EP0409314A1)によれば、微生物及び/又はその一部を含む油中水型マイクロエマルションの安定な単相溶液を開示している。
それらは、原油及び/又は微生物及び/又はその一部の濃縮水溶液の精製の少なくとも1つの生成物に、前記水溶液が原油又は精製された生成物に可溶化されるように添加することによって、所定のブレンド物が得られる。
このようにして得られたブレンド物は、安定した、単一相からなる溶液の形態をしていると言える。
【0006】
又、特許文献2(GB2303127A)は、好ましくはカンピロバクター種を含む細菌培養物との接触による、ブライン、油及び/又はガス中の硫化物化合物の酸化のためのプロセスを開示している。
なお、ブライン、オイル、又はガスにも、硝酸塩が含まれている場合がある。
【0007】
以上のことから、本発明の目的は、内部に含まれる硫黄、特に硫化物を、好適に低減するための、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに対する処理方法、そのような処理方法によって得られる、少なくとも一つの石油製品、それに対する添加剤を用いた所定の石油製品の製造方法、及び、所定の石油製品に対する添加剤や使用方法、更には、所定の添加剤等を、有効に提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP0409314A1(特許請求の範囲及び図面等)
【文献】GB2303127A(特許請求の範囲及び図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、所定の石油製品を得るべく、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための主請求項(請求項1)に記載の所定の処理方法によって解決され、達成される。
又、本発明の更なる目的は、別な独立請求項に規定された態様により達成されており、そのような処理方法によって得られる石油又は天然ガス、石油、更には、石油留分又は天然ガスのための添加剤を製造するための方法を提供する。
そして、所定の添加剤もまた、石油、石油留分、又は天然ガスを処理するために、特に硫黄又は硫黄化合物を低減し、所定効果を発揮するために使用されることから、そのような処理方法で得られる石油又は天然ガスに対する発明の一つである。
【0010】
本発明は、特に石油、石油留分、又は天然ガス中の硫黄及び硫黄化合物を処理するための方法(以下、プロセスと称する場合もある。)を提供するが、このプロセスは、以下の第1の化合物及び/又は第2の化合物を添加する工程を含むことを特徴とする。
a)第1の化合物は、カンゾウ属(Glycyrrhiza)に由来した植物材料(以下、単に植物原料や植物成分と称する場合がある。)、特に根から採取されるカンゾウ属に由来した植物成分、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)から選択される成分を添加する工程
b)第2の化合物は、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)に由来した植物材料又は植物成分から選択される成分を添加する工程
したがって、所定植物系や所定菌類を含む第1の化合物及び/又は別な所定植物系を含む第2の化合物を配合することから、本発明は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つにおいて、当該石油(以下、原油と称する場合ある。)、石油留分、及び天然ガスの少なくとも一つを処理するための化学生物学的プロセス又は発酵プロセスと呼ばれることがある。
【0011】
又、石油及び石油留分において、本発明は、一般的又は特定の実施形態において、石油及び/又は石油留分について以下の結果のうちの1つ又は複数の効果をもたらすことができる。
-硫酸塩還元細菌(SRB)を低減する。
-硫黄及び硫黄化合物を低減する。
-特に、HS濃度を、好ましくは無害なレベル(<10ppm)まで下げるか、HSを実質的に排除する。
-塩分を減らす。
-重金属含有量を減らす。
-井戸貯留層又は処理施設(上流又は下流)のいずれかでAPI比重を増加させる。
-粘度を下げる。
-石油又は石油留分のエネルギー密度を増加させる。
-API比重の高い、とりわけ環境に優しいラフィネートを生成する。
-処理施設及び、ガスタービン等のアプリケーション装置の腐食の減少につなげる。
-パイプラインやタンクにおいて、特に微生物の影響を受けた腐食(MIC)を低減する。
-生物付着を防止又は低減する。
【0012】
更に、天然ガスにおいて、本発明は、一般的又は特定の実施形態において、以下の1つ又は複数の結果をもたらすことができる。
-硫黄を低減する(酸味のあるサワーガスをスイート化する。)。
-硫黄又は硫黄化合物は、特にガスから沈殿する。
-熱量を増やす。
-比重を下げる。
-体積を増やす。
-HS濃度を、できれば無害なレベル(<10ppm)に下げる。
-パイプライン又は貯蔵タンクの腐食を低減する。
【0013】
更に、本発明は、一般的又は特定の実施形態において、以下の1つ又は複数の効果(利点)をもたらすことができる。
-油井介入に適しており、生産量を増加させる。
-石油及び/又は石油留分の製油所プロセスゲインを向上させ、製油所プラントの全体的な効率、特に生産率及び軽/中留分収率を向上させる。
-輸送エネルギーの必要性を減らし、原油の輸送コストを削減する。
-低温及び高温腐食による機器の機械的故障を低減する。
-世界的な原油の「劣化防止」と「枯渇防止」の概念を促進する。
【0014】
更に、本発明は、一般的又は特定の実施形態において、以下の1つ又は複数の補助的効果(利点)を発揮することができる。
-API比重の高い石油ラフィネートの直接生産である。
-燃料消費量を削減し、排出量を削減する、より実行可能なエネルギー源として、燃焼エンジンのクリーンな燃料として使用できる。
-効率の向上と純度により、石油又は天然ガスの生産、処理、製品消費の排出量と温室効果ガスの観点から環境への影響を軽減する。
【0015】
本発明の処理方法を適用できる、例示的かつ非限定的な石油留分としては、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、ガソリン(petrol)、ナフサ、灯油、ディーゼル燃料、燃料油、潤滑油、パラフィンワックス、アスファルト、重油、タール、ビチューメンの少なくとも一つである。
【0016】
又、本発明の処理方法としてのプロセスは、地下貯留層の上流、表面回収プラント、及び精製及び処理施設の下流において、適用することができる。
【0017】
又、本発明の処理方法としてのプロセスは、オイルサンドに含まれる石油又は石油留分、特にビチューメンの処理に適用できる。
【0018】
又、本発明の処理方法は、オイルサンドを処理するために使用することができる。
ここで、オイルサンドとは、タールサンド又は粗瀝青、又はより技術的には瀝青質の砂としても知られ、石油鉱床の一種である。
又、オイルサンドは、緩い砂、又は砂、粘土、水の自然発生混合物を含み、技術的にビチューメンと呼ばれる高密度で粘性のある形態の石油で飽和した部分的に固結した砂岩のいずれかである。
【0019】
本発明の処理方法としてのプロセスは、重油又は重油から生じるスラッジの処理についても適用できる。
すなわち、船舶等の燃料タンク、工業用炉、又は工業用燃焼プラント等に用いられる、特に重い燃料油又はスラッジの処理に適用することができる。
【0020】
すなわち、本発明の処理方法を適用した場合、このプロセスは、重油の残留物、特にスラッジを液化するのに役立つ。
したがって、本発明の処理方法である、このプロセスは、代替として、重油を精製するために使用できる。
【0021】
したがって、本発明によれば、上記の石油、石油留分、天然ガスの少なくとも一つの処理方法によって、又は、上記の処理方法によって得られる石油製品(石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つ)、更には、それらに対する添加剤として、上記の第1の化合物及び/又は第2の化合物を含んでなる石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを提供することができる。
【0022】
又、本発明は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに好適な添加剤を製造するための方法に関する発明であるが、この方法は、以下の混合工程を含むことを特徴とする。
すなわち、第1の化合物として、カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特にカンゾウ属の植物の根、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)から選択される成分と、第2の化合物として、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物材料又は植物成分から選択される成分と、の混合工程を含むプロセスである。
【0023】
又、本発明は、上記の方法によって得られるか又はそれによって得られる更なる又は追加の定義としての、第1の化合物及び第2の化合物を含む、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つのための添加剤についての発明でもある。
したがって、かかる添加剤は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための方法において、好適に使用することができる。
【0024】
より一般的な態様では、本発明は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための処理方法を提供し、この処理方法としてのプロセスは、以下の工程を含むことを特徴とする。
すなわち、カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特にカンゾウ属の植物の根、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)から選択される成分を、石油、石油留分、又は天然ガスに対して添加する工程を含むプロセスである。
ここでは、上記の第1の化合物(以下、第1のコンポーネントと称する場合がある。)のみが添加される工程である。
【0025】
更に一般的な態様では、本発明は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための方法発明であって、この処理方法としてのプロセスは、以下の工程を含むことを特徴とする。
すなわち、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物成分を、石油、石油留分、又は天然ガスに添加する工程である。
ここでは、上記の第2の化合物(以下、第2のコンポーネントと称する場合がある。)のみが添加される工程である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、「第1の化合物(第1のコンポーネント)」や「第2の化合物(第2のコンポーネント)」等の番号付けは、各成分(コンポーネント)を互いに区別するために、略語の種類によって各成分に名前を付けることを意図している。
したがって、このような番号付けは、追加又は使用のシーケンスの順番等を限定する意味ではない。
【0027】
又、本発明の実施形態では、相互に区別するための番号付けは、炭化水素又は1つ又は複数の置換基(例えば、炭素数1~20のアルキル基や、炭素数6~30の芳香族基等)又は官能基(例えば、水酸基、ハロゲン基、アミノ基等)を有する炭化水素についても適用することができる。
ここで、炭化水素は、完全に水素と炭素からなる化合物である。
又、炭化水素及び1つ以上の置換基又は官能基を有する炭化水素は、本発明において、要約すると、「炭化水素」又は「置換又は非置換の炭化水素」とも称する場合がある。
したがって、この説明で略語として「炭化水素」という用語が使用されている場合、可能な置換が明示的に言及されていない場合であっても、1つ又は複数の置換基又は官能基を有する炭化水素が含まれるものとする。
そして、1つ又は複数の置換基を有する炭化水素は、「置換炭化水素」と称する場合がある。
このような炭化水素は、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素のうちの1つ又は複数から選択することができる。
【0028】
又、1つ又は複数の置換基を有する脂肪族炭化水素の好適例として、アルコールが挙げられる。
このようなアルコールは、もう1つの特定の実施形態では、脂肪族アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はペンタノール等の炭素数1~10個を有するアルコールであり、又、それらのすべての異性体についても含まれる。
又、2つ以上の異なるアルコールの混合物を使用することもできる。
これらのアルコールの態様は、アルコールの使用につき言及されている、本発明のすべての実施形態において適用される。
【0029】
又、本発明の芳香族炭化水素の好適例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びそれらの1つ又は複数の任意の混合物であって、それらから少なくとも一つを選択することができる。
これは、芳香族炭化水素の使用につき言及されている、本発明のすべての実施形態において適用される。
【0030】
液体炭化水素は、好ましくは、トリグリセリド又は植物油を含まず、これではないことが好ましい。
「液体」という用語又は状態は、特に、本発明の方法を実施するための常温、特に室温、更により具体的には20℃又は少なくとも20℃での液体状態を指す。
【0031】
(第1の化合物)
第1の化合物は、第1のコンポーネントと称する場合もあるが、下記化合物から選択することができる。
-カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特に、カンゾウ属の根に由来した植物成分、及び/又は
-アーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)。
【0032】
すなわち、カンゾウ属の植物材料、特に根の部分は、特定の実施形態では、カンゾウ属から得られる植物材料の一つとして、好適である。
カンゾウ属は、アーバスキュラー菌根菌(Arbuscular mycorrhizal fungi、AMFとも略され、グロムス門とも呼ばれる。)と共生することが知られている。
したがって、本発明で使用されるカンゾウ属の植物材料、特に根に由来した植物材料が好ましく、更には、共生関係にあるAMFを含んでいることを意味する場合がある。
【0033】
又、カンゾウ属の植物の具体例は次のとおりである。
カンゾウアカンソカルパ(Glycyrrhiza acanthocarpa)、
カンゾウアスペラ(Glycyrrhiza aspera)、
カンゾウアストラガリナ(Glycyrrhiza astragalina)、
カンゾウアストブカリカ(Glycyrrhiza bucharica)、
カンゾウエキナータ(ロシアカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza echinata)、
カンゾウエグランデュローサ(Glycyrrhiza eglandulosa)、
カンゾウフォエチダ(Glycyrrhiza foetida)、
カンゾウフェティディッシマ(Glycyrrhiza foetidissima)、
カンゾウグラブラ L(スペインカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza glabra L)、
カンゾウグラブラヴァーグラブラ(Glycyrrhiza glabra var. glabra)、
カンゾウグランダリフェラ(Glycyrrhiza glabra glandulifera)、
カンゾウゴンチャロヴィ(Glycyrrhiza gontscharovii)、
カンゾウイコニカ(Glycyrrhiza iconica)、
カンゾウインフラタ(新疆カンゾウとも称する)(Glycyrrhiza inflata)、
カンゾウコルシンスキー(黄色カンゾウとも称する)(Glycyrrhiza korshinskyi)、
カンゾウスクアムローサ(Glycyrrhiza squamulosa)、
カンゾウレピドタ(アメリカカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza lepidota)、
カンゾウパリディフローラ(イヌカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza pallidiflora)、
カンゾウトリフィラ(シンメリストトロプシストリフィラとも称する)(Glycyrrhiza triphylla(syn. Meristotropsis triphylla))、
カンゾウウラレンシス(ウラルカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza uralensis)、
カンゾウユンナネンシス(ウンナンカンゾウとも称する)(Glycyrrhiza yunnanensis)。
【0034】
そして、カンゾウ属(Glycyrrhiza)、特に、カンゾウグラブラ(Glycyrrhiza glabra)の植物の1つ又は複数に対して、アーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi、AMF)として、グロムス属(Glomus)、アカウロスポラ属(Acaulospora)、グロムスモッサエ(Glomus mossae)又はアカウロスポララエビス(Acaulospora laevis)からなる1つ又は複数、特に、本明細書に記載のAMFの単独又は全ての組み合わせを、適宜混合使用することができる。
【0035】
カンゾウ属の植物材料は、植物全体又は茎、葉、根に由来した植物部分、及び植物部分の任意の混合物のような任意の材料であっても良い。
そして、より好適な実施形態は、カンゾウ属の根に由来した植物材料である。
このような植物材料は、例えば、乾燥、製粉、細砕、粉砕、又はそれらの組み合わせによって処理された材料とすることが好ましい。
又、このような植物材料は、代替的又は追加的に、液体、特に、限定されないが、置換又は非置換の液体炭化水素、好ましくはエタノール、プロパノール、エタノール等のアルコール、及び/又は液体芳香族炭化水素に懸濁及び/又は浸漬され、置換して使用することができる。
このような芳香族炭化水素の好適例は、トルエン又はキシレンである。
又、灯油等の液体炭化水素混合物を使用することもできる。
【0036】
アーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi、AMF)は、任意のソースから提供できる。
又、かかるAMFは、分離された形式で提供される場合がある。
又、かかるAMFは、液体、特に、限定されるものではないが、置換又は非置換の炭化水素、好ましくは、置換又は非置換の液体アルコール及び/又は、置換又は非置換の液体芳香族炭化水素に懸濁及び/又は浸漬され得る状態であっても良い。
更に又、このような芳香族炭化水素は、トルエン又はキシレンが好ましい。そして、灯油等の液体炭化水素混合物を使用することもできる。
【0037】
本発明の一実施形態では、アーバスキュラー菌根菌(AMF)は、グロムス属(Glomus)及び/又はアカウロスポラ属(Acaulospora)から選択され、特にグロムスモッサエ(Glomus mossae)又はアカウロスポララエビス(Acaulospora laevis)から選択される。
そのような真菌及びそれらを入手するための方法は、ヤダブら(Yadav et. al)の著作、アグリカルチャーリサーチ誌(Agricultural Research)、第2巻(第1号)、ページ43-47、2013年に記載されており、その記載内容は、それを参照することにより、本発明に組み込むことができる。
【0038】
本発明で使用できる好適なAMFは、以下の属から選択される少なくとも一つである。
すなわち、好適なAMFとして、アカウロスポラ(Acaulospora)、アンビスポラ(Ambispora)、アーケオスポラ(Archaeospora)、ディバーシスポラ(Diversispora)、エントロフォスポラ(Entrophospora)、ファンネルフォルミス(Funneliformis)、ゲオシフォン(Geosiphon)、ギガスポラ(Gigaspora)、グロムス(Glomus)、クラロイデオグロムス(Claroideoglomus)、オトスポラ(Otospora)、パシスポラ(Pacispora)、パラグロムス(Paraglomus)、ラコセトラ(Racocetra)、リーデクラ(Redeckera)、ライゾファガス(Rhizophagus)、スクテルロスポラ(Scutellospora)、及びスクレロキスティス(Sclerocystis)の少なくとも一つが挙げられる。
【0039】
その他のAMFに関する情報は、タンクレード スーザ(Tancredo Souza)の著作、アーバスキュラー菌根菌ハンドブック(Handbook of Arbuscular Mycorrhizal Fungi)、シュプリンガーインターナショナルパブリッシング・スイス(Springer International Publishing Switzerland)、2015年、ISBN978-3-319-24848-6、ISBN978-3-319-24850-9(eBook)、DOI 10.1007/978-3-319-24850-9、米国議会図書館管理番号:2015953773に記載があるが、これを参照することにより、その全体を本発明に組み込むことができる。
【0040】
(第2の化合物)
第2の化合物は、第2のコンポーネントと称する場合もあるが、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物材料又は植物成分から選択することができる。
第2の化合物としての植物材料は、エラエオカルプス属(Elaeocarpus)の植物であることが、より好ましいと言える。
又、第2の化合物としての植物材料として、ホルトノキ科ホルトノキ属(Elaeocarpaceae hygrophilus)に由来した植物成分がより好適である。
【0041】
なお、「植物材料又は成分」という用語は、果実、葉、根、又は茎等の植物の任意の部分を包含し得る。
又、このような植物成分は、例えば、圧搾又は抽出によって限定されないが、植物に存在するか、又は植物から得られる任意の成分を意味するものとする。
更に、好適な植物成分としては、油又はジュース等であるが、これらに限定されることなく、例えば、油又は、油又はジュース等の果実からの抽出物であっても良い。
【0042】
又、植物成分は、以下の化合物や物質のうちの少なくとも1つ又は複数を含み得る。
-顔料
-トリグリセリド
-脂肪酸
-グルコシド
-アキネート
これらは、単独で、又はそれらの任意の組み合わせ、あるいは部分的な組み合わせのいずれかである。
【0043】
植物材料又は成分は、例えば、乾燥、粉砕、粉砕、粉砕、植物又は植物部分の抽出、又はそれらの組み合わせによって得られる加工材料である。
植物材料又は成分は、代替的又は追加的に、液体、特に、限定されないが、置換又は非置換の液体炭化水素、好ましくは置換又は非置換の液体芳香族炭化水素に懸濁、溶解、乳化及び/又は浸漬され得る。
芳香族炭化水素の好適例は、トルエン又はキシレンであり得る。
又、灯油等の液体炭化水素混合物を使用することもできる。
【0044】
更なる植物材料又は成分は、特に、従前の実施形態と組み合わせることができる。
したがって、フェニルエタノイド(phenylethanoids)のクラスに属する化合物、特にエレノール酸のチロソールエステル(a tyrosol ester of elenolic acid)を含み、これは更にヒドロキシル化又はグリコシル化され得る。
【0045】
特に好適な化合物は、10-ヒドロキシオレウロペイン(10-hydroxyoleuropein)、リグストロシド(ligstroside)、10-ヒドロキシリグストロシド(10-hydroxyligstroside)、オレオカンタール(Oleocanthal)及びオレウロペイン(Oleuropein)、(4S,5E,6S)-4-[2-[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エトキシ]-2-オキソエチル]-5-エチリデン-6-[[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)-2-テトラヒドロピラニル]オキシ]-4H-ピラン-3-カルボン酸、メチルエステル((4S,5E,6S)-4-[2-[2-(3,4-dihydroxyphenyl)ethoxy]-2-oxethyl]-5-ethylidene-6-[[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-trihydroxy-6-(hydroxymethyl)-2-tetrahydropyranyl]oxy]-4H-pyran-3-calboxylic acid、methyl ester)の少なくとも一つである。
このような化合物は、SRBに有害であると考えられている。そのような化合物は、好ましくは、それがオリーブオイルである場合、植物材料又は成分に含まれる。
【0046】
一実施形態では、植物材料又は成分は、植物油や植物抽出物が好ましく、特に葉又は果実抽出物であることが好ましい。
そして、第1の化合物及び第2の化合物は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに順次、又は同時に添加することができる。
有益な実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物は互いに混合され、次いで、それらが石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに添加される前に、所定時間、静置されることが好ましい。
【0047】
そして、添加剤は、添加剤を製造するための本発明の方法に従って、第1の化合物及び第2の化合物から製造することができ、この添加剤は、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに添加することができる。
【0048】
又、本発明における、「混合」という用語は、任意の種類の混合、又は第1の化合物を第2の化合物に加えること、又はその逆を含む。
更に、「混合」という用語は、必ずしも攪拌を必要としないが、好適には、攪拌等の攪拌処理を含み得る。
又、理論的に拘束されることを望まず、本発明の範囲を制限することなく、第1の化合物及び第2の化合物は、例えば、化学的及び/又は生物学的性質であり得る。したがって、互いに反応及び/又は会合を起こすと考えられる。生物学的反応は、例えば、複合生物の形成であり得る。
そして、反応及び/又は会合によって、本来分離独立した第1の化合物及び第2の化合物の特性を変える可能性がある。
【0049】
又、本発明は、又、第1の化合物及び第2の化合物の間の反応及び/又は会合が起こった、又は起こったかもしれない方法及び生成物(以下、コンポーネントと称する場合がある。)を包含することができる。
したがって、本発明は、所定の処理方法、及びその処理方法で得られてなる生成物、特に、石油製品(石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つ)であって、又は添加剤を包含することができる。
ここで、第1の化合物及び第2の化合物の間の反応及び/又は会合が起こった、又は起こった可能性がある、又は、このような反応及び/又は会合の任意の種類の生成物が形成される、又は含まれる。
【0050】
又、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための方法の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物の添加は、以下の工程(以下、ステップと称する場合もある。)で行われることが好ましい。
-石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに対して、第2の化合物を添加する工程。
-石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを静置し、例えば、不連続又は連続プロセスでの滞留時間を調整し、静置する工程。
-石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに対して、第1の化合物及び第2の化合物の混合物を添加する工程。
【0051】
この実施形態では、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つは、第1の化合物なしで、第2の化合物のみで処理される第1のステップ、すわなち、前のステップの状態にある。
したがって、前のステップにおける第2の化合物である第2のコンポーネントの濃度は、第1の化合物である第1のコンポーネントも追加された場合のステップにおける第2の化合物である第2のコンポーネントの濃度と異なっていることが好ましい。
【0052】
又、第1の化合物及び第2の化合物の混合物による処理が行われる前に、API比重はすでに増加され、硫黄含有量及び/又は塩含有量を事前に減少することが好ましい。
第2の化合物として、第2のコンポーネントを追加する、いわゆる前のステップはSRBに有害であると考えられている。
【0053】
本発明の方法の別の実施形態では、処理される石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに添加される第1の化合物及び第2の化合物は、第1の石油(前の石油と称する場合もある。)、第1の石油留分(前の石油留分と称する場合もある。)、又は第1の天然ガス(前の天然ガスと称する場合もある。)で構成されている。そして、ここで、第1の石油、第1の石油留分、又は第1の天然ガスが、処理される石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに添加される。
この実施形態では、第1又は前の石油/石油留分/天然ガスの少なくとも一つは、先に本発明の方法によって処理された石油/石油留分/天然ガスの少なくとも一つであり得る。
【0054】
又、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理するための方法の一実施形態では、石油、石油留分、又は天然ガスに更なる成分を添加することを含み、更なる成分は、殺生物剤から選択され、少なくとも1つのアミン、特に、少なくとも1つの第4級アンモニウム化合物、又はそれらの混合物を含む。
この更なる成分を添加するステップは、好ましくは、第1の化合物及び第2の化合物が添加される前、又は第2の化合物が、前述の実施形態に従って添加される前に行われることが好ましい。
【0055】
そして、更なる成分を添加した後、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを、所定条件下に静置することが好ましい。
【0056】
したがって、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを処理する方法は、以下の順序で以下の工程を含むことが好ましい。
-更なる成分として、殺生物剤から選択され、少なくとも1つのアミン、特に、少なくとも1つの第4級アンモニウム化合物、又はそれらの混合物を、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに添加する工程。
-石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを静置する工程。
-任意工程として、静置した石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに対して、第2の化合物を添加する工程。
-任意工程として、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つを更に静置する工程。
-静置した石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つに対して、第1の化合物及び第2の化合物の混合物を添加する工程。
【0057】
ここで、「静置する」という表現は、攪拌せずに、あるいは攪拌しながら、そのまま置いておき、所定時間待つことを意味する。
又、「静置を開始する」という表現は、連続的、不連続的、及びバッチプロセスを含む。
例えば、連続プロセスにおいて許容される静置時間は、物質が滞留することが許される時間としての滞留時間、特に平均滞留時間、例えば、タンク反応器又は管反応器における滞留時間である。
【0058】
又、本発明の一実施形態では、アミン又は第4級アンモニウム化合物は水溶性である。
したがって、殺生物剤は、SRBに有害である任意の殺生物剤から選択することができる。有益な殺生物剤はグルタルアルデヒドである。
【0059】
ここで、殺生物剤、少なくとも1つのアミン、特に、第4級アンモニウム化合物であって、又はそれらの混合物から選択される。そして、殺生物剤としての更なる成分は、好ましくは水性媒体中で使用される。
したがって、更なる成分である殺生物剤は、好ましくは、水性媒体中に、例えば溶液、乳濁液、又は懸濁液として存在する。よって、この状態で石油、石油留分、又は天然ガスに添加される。
水性媒体を使用すると、石油、石油留分、又は天然ガスからSRB、特に不活化したSRBを少なくとも部分的に抽出することができる。
【0060】
本発明の方法に従って処理された石油又は石油留分は、以下の特性のうちの1つ又は複数を示す製品(以下、生成物と称する場合がある。)である。
-高いAPI比重(API=American Petroleum Institute比重のこと)、特に、華氏59度で35APIより高い場合、高いAPI比重と言える。
-低硫黄含有量、特に0.5%未満である。
-低塩含有量、特に10PTB(1000バレル当たりのポンド)未満である。
-製品は、軽質スイート原油の品質に対応する。
-API比重の高いラフィネートを生成する
-製品は、たとえば内燃機関で直接使用できる。
【0061】
又、本発明の方法に従って処理された天然ガスは、以下の特性のうちの1つ又は複数を示す製品である。
-HSの抽出により比重を減少させる。
-洗浄とスイート化により発熱量を増加させる。
-処理された天然ガスの腐食性を低減させる。
そして、石油、石油留分、又は天然ガスの原料、又は前記原料の一部は、不連続的又は連続的に処理することができる。
処理方法は、好ましくは連続法である。
【0062】
別の実施形態では、処理方法の生成物は、方法に従って処理されなかった更なる石油、更なる石油留分とブレンドすることができる。
このような混合物は、API比重を減少させ、硫黄含有量を増加させ、塩含有量を増加させる可能性がある。しかしながら、適切な混合比を選択することにより、これらのパラメータを望ましい、依然として有益な範囲に設定できる。
【0063】
したがって、石油、石油留分を処理するための本発明の処理方法は、以下の内容を更に含むことができる。
すなわち、特に硫黄及び硫黄化合物を低減するために、第1の化合物及び第2の化合物を添加することによって処理された石油又は石油留分の少なくとも一つを、当該方法によってまだ処理されていない別の石油又は別の石油留分の少なくとも一つに添加えることができる。
したがって、オプションで、前のステップを1回以上繰り返すことにより、以前に処理されていない更に別の石油又は石油留分の少なくとも一つを処理することができる。
【0064】
すわなち、この処理方法により、更に別の石油(留分)において、先にこの処理方法で説明した1つ又は複数の利点に到達し、所定効果を得ることができる。例えば、更に別の石油(留分)においても、硫黄及び硫黄化合物の低減、API比重の増加等の効果を得ることが可能である。
【0065】
この実施形態では、処理の生成物につき、処理の利益向上に寄与するため、更なる石油(留分)の更なる処理に使用することができる。
したがって、この処理方法を実施するために本発明の添加剤を製造することは、厳密には必要ではないとも言える。
そして、かかる添加剤の使用は、処理方法の1つの代替手段であると言える。
他の代替手段は、更なる石油(留分)の処理方法を継続するための方法により得られた生成物を使用することである。
これはオプションで、必要に応じて何度でも続行することができる。
【0066】
-上記の添加ステップを1回以上繰り返すことにより、これまで処理されていなかった更に別の石油又は石油留分を処理する。
【0067】
数世代に分けて行われる、このような反復処理方法のスキームは、以下のように説明することができる。
1)第1及び第2の化合物による石油(留分)(第1世代)の処理工程。
2)処理済み石油(留分)(第1世代の生成物)の入手工程。
第1世代の生成物は、第1及び第2の化合物、及び/又は第1及び第2の化合物から形成された生成物を含む。
3)石油(留分)(第2世代)の第1世代の生成物による処理工程。
4)処理済み石油(留分)(第2世代の生成物)の入手工程。
第2世代の生成物は、第1及び第2の化合物、及び/又は第1及び第2の化合物から形成された生成物を含む。
5)上記3)と4)を必要な数の世代にわたって繰り返す工程。
ここでは、前世代の生成物又は任意の前世代の生成物で処理することができる。
【0068】
本発明の一実施形態では、この方法は以下の工程を含むことが好ましい。
すなわち、置換又は非置換の炭化水素、特にアルコール又は液体芳香族炭化水素を、第1の化合物及び第2の化合物(この方法の生成物と呼ばれる)を加えることによって処理された石油又は石油留分に加える工程である。
この処理方法の生成物は、更なる目的のために、例えば、まだ処理されていない更なる石油(留分)の後の処理のために保存することができる。
置換又は非置換の液体芳香族炭化水素を添加することは、それが更なる石油又は更なる石油留分の処理に使用されるときに生成物の効果を促進することが示されている。
ここで、理論に拘束されることを望まないが、置換又は非置換の液体芳香族炭化水素は、第1及び第2の化合物によって形成される生物学的複合体の維持、成長及び/又は増殖のための基質として機能すると考えられる。
【0069】
(成分)
本発明は、生物学的複合体の維持、成長及び/又は増殖は、更なる石油(留分)の可能な更なる処理に役立つ。
置換又は非置換の液体芳香族炭化水素は、純粋な液体芳香族炭化水素であり得るか、又は本発明の方法の任意の目的のために処理されるべき留分ではない石油留分、例えば硫黄及び硫黄化合物を低減するための留分に含まれ得る。
特に、液体芳香族炭化水素は、ディーゼル燃料に含まれる。
したがって、ディーゼル燃料は、第1の化合物及び第2の化合物を添加することによって処理された石油又は石油留分に添加され得る。
【0070】
本発明の一実施形態において、この処理方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
すなわち、第1の化合物及び第2の化合物を添加することによって処理された石油又は石油留分の少なくとも一つに、置換又は非置換の液体芳香族炭化水素を添加し、次いで、この混合物を、処理されていない更なる石油又は更なる石油留分の少なくとも一つに添加する工程である。
又、液体芳香族炭化水素を添加する効果はすでに前に述べた通りである。
すわなち、置換又は非置換の液体芳香族炭化水素を添加すると、それが更なる石油又は更なる石油の処理に使用されるときに、製品の効果を促進することが示されている。
【0071】
上記の実施形態のように、液体芳香族炭化水素は、純粋な液体芳香族炭化水素であり得るか、又は本発明の方法の任意の目的のために処理されるべき留分ではない石油留分、例えば、硫黄及び硫黄化合物を低減するための留分に含まれ得る。
特に、液体芳香族炭化水素は、ディーゼル燃料に含まれ得る。したがって、ディーゼル燃料は、処理されていない更なる石油、又は更なる石油留分の少なくとも一つに添加される前に、第1の化合物及び第2の化合物を添加して既に処理された石油又は石油留分に添加され得る。
【0072】
本発明の更なる実施形態において、処理方法は、以下の工程を含むことが好ましい。
すなわち、第1の化合物及び第2の化合物を添加することによって処理された後、水性液相で石油又は石油留分を洗浄する工程である。
このような洗浄によれば、処理された石油(留分)から/中の硫黄及び硫黄化合物を除去するか、少なくとも減少させることを意図しており、その効果を発揮することができる。
例えば、石油中のHSは、硫黄又は他の硫黄化合物に変換され得、これらは、処理された石油(留分)中に沈殿するか、又はある程度まで残る可能性がある。
このような硫黄又は他の硫黄化合物は、洗浄することによって石油(留分)から除去することができる。
水性液相は、水からなるか、水を含むか、又は水に基づくことができる(水性液相中に、水が>50体積%)。
洗浄は、室温、特に20~25℃で、又は高温、例えば30~60℃で行うことができる。水性液相は、必要に応じて、硫黄又は硫黄化合物を結合するための結合剤を含み得る。好適な結合剤は、NaOH等の水酸化物である。
【0073】
本発明の更なる一実施形態において、以下を含む油製品の製造方法を提供する。
I)石油又は石油留分の原料の一部を転用する。
II)上記のように、石油又は石油留分を処理するための方法に従って原料の一部分を処理する。
III)II)で得られた生成物を、石油の処理方法に従って処理されなかった原料の残りの部分、又は石油留分とブレンドする。
【0074】
この製造方法は、地下貯留層の上流及び表面回収プラントのみならず、精製及び処理施設の下流に適用できる連続法である可能性がある。
【0075】
又、かかる製造方法は、以下の工程のうちの1つ又は複数を含むことが好ましい。
-原料の一部を油/水セパレーターに分流し、水を分離する工程。
-分離された油流を加熱する工程。
【0076】
(添加剤)
以下の説明は、上記の更なる態様に関連しており、発明の概要で参照した石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つのための添加剤を得るための製造方法である。
【0077】
かかる添加剤は、第1の化合物としての下記a)及び、第2の化合物としての下記b)の構成である。
a)カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特に根から選択されるカンゾウ属の植物材料、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)を含む第1の化合物としての添加剤
b)ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物材料又は植物成分から選択される成分を含む第2の化合物としての添加剤
その一般的及び特定の実施形態によるが、カンゾウ属の植物成分として、第1及び/又は第2の化合物は、すでに液体成分を含み得る。
又、代替的又は追加的に、添加剤を製造するために、少なくとも1つの液体化合物を添加することができる。
そのような液体化合物は、一実施形態では、置換又は非置換の液体炭化水素から選択され得る。
任意に置換された液体炭化水素は、液体アルコール及び/又はベンゼン、トルエン又はキシレン等の液体芳香族炭化水素が好適である。
又、灯油等の液体炭化水素混合物を使用することもできる。
そして、このような液体化合物は、添加剤に含まれ得る。
【0078】
又、添加剤は、置換又は非置換の少なくとも1つの液体炭化水素を含むことができる。
任意に置換された液体炭化水素は、液体アルコール及び/又はベンゼン、トルエン又はキシレン等の液体芳香族炭化水素が好適である。
そして、灯油等の液体炭化水素混合物を使用することができる。
【0079】
又、本発明の一実施形態において、第1の化合物及び第2の化合物は、混合中及び/又は混合後に光に曝露されることが好ましい。
かかる光は、好ましくは可視光であり、これは1つ又は複数の波長から構成され得る。又、光は、白色光源又は昼光からの光であり得る。
【0080】
又、本発明の一実施形態において、光は昼光であることが好ましい。
更なる成分を混合するとき、及び/又は更なる成分を混合した後に、光への曝露を行うこともできる。
【0081】
又、本発明の一実施形態において、この製造方法は以下の工程(ステップ)を含むことが好ましく、第1及び第2の化合物の混合中、及び/又は第1及び第2の化合物の混合後に、以下の工程a)及びb)のシーケンスを任意の順序で、すなわち、a)、b)、又はb)、a)の順序で実行しても良い。
a)混合物を第1の期間、第1の照度に曝露する工程。
b)混合物を第2の期間、第2の照度に曝露する工程。
ここで、工程a)の第1の照度を、工程b)の第2の照度よりも高くすることが好ましい。
【0082】
すなわち、本発明の製造方法は、任意工程ではあるが、以下の光照射工程を含むことも好ましい。
-工程a)と工程b)のシーケンスを少なくとも1回繰り返す工程。
【0083】
ここで、光照射における第1の照度と第2の照度の値は、第1の照度が第2の照度よりも高いという条件の下で、初期値又は前の値と異なる場合がある。
そして、第1の期間及び第2の期間は、最初又は前の第1の期間/第2の期間とは異なる場合がある。
これは、工程a)の第1の照度が、工程b)の第2の照度よりも高い限り、工程a)及び工程b)の1回又は複数回の繰り返しにおいて、照度及び期間が変化し得るということを意味している。
【0084】
又、繰り返しを伴う実施形態は、特に以下のシーケンスを意味し得る。
a)、b)、a)、b)、a)、b)....、又は
b)、a)、b)、a)、b)、a)。
ここで、工程a)の第1の期間及び工程b)の第2の期間は、同じであっても異なっていてもよい。
又、工程a)の第1の期間及び/又は工程b)の第2の期間は、少なくとも0.5時間又は少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間である。
更に、工程a)及び工程b)につき、好ましくは、最大48時間又は72時間行われ、これらの上限時間については、任意の組み合わせであって、かつ、前に記載された下限時間のいずれかと組み合わせることができる。
【0085】
又、このような照明(照射)に関する工程は、光を用いて行うことが好ましい。
かかる光は、好ましくは可視光であり、これは1つ又は複数の波長から構成され得る。又、光は、白色光源又は昼光からの光(太陽光)であり得る。
【0086】
工程a)の第1の照度が、工程b)の第2の照度よりも高いという特徴は、a)とb)との間の照度の差が少なくとも10ルクスである。
そして、a)とb)との間の照度の差につき、より好ましくは少なくとも100ルクス、更により好ましくは少なくとも500ルクス、更により好ましくは少なくとも1000ルクスである。
よって、a)とb)との間の照度の差を最大450000ルクスとすることが好ましいと言える。
【0087】
工程a)の照度は、10ルクス又は10ルクスを超えるか、少なくとも100ルクス、好ましくは少なくとも500ルクス、より好ましくは少なくとも1000ルクス、更により好ましくは少なくとも5000ルクスであり得る。
又、下限のいずれかと任意の組み合わせで組み合わせることができる上限は、100000ルクス、又は200000ルクス、又は450000ルクスであることが好ましい。
【0088】
工程b)において、照度は、最大で10ルクス、より好ましくは最大で1ルクス、更により好ましくは最大で0.1ルクス、更により好ましくは、最大で0.01ルクスである。
上限のいずれかを任意の組み合わせで組み合わせることができる下限は、0.001ルクス、又は0.0001ルクス、又は0.00001ルクス、又は0ルクス(ゼロ)とすることが好ましい。
【0089】
又、本発明の一実施形態において、添加剤を製造するための方法は、更なる成分としてカルコノイド化合物を混合又は添加することを含む。
ここで、カルコノイド化合物という用語は、カルコン及びカルコンの誘導体(1,3-ジフェニルプロプ-2-エン-1-オン)、例えば、芳香環の1つで置換された置換カルコンを含む。
典型的であるが非限定的な置換基は、ヒドロキシ、アルコキシ、特にメトキシ又はエトキシ、ハロゲン又はアルケニルである。
より具体的な例としては、2,4,4´-トリメトキシカルコンである。
【0090】
又、本発明の一実施形態において、添加剤を製造するための方法は、キク科(Asteraceae)又はオオホザキアヤメ科(Costaceae)、特にトウヒレン属(Saussurea)、特にモッコウ属(Saussurea costus)、又は更なる成分としてモッコウ属からの植物材料を混合又は添加することを含む。
【0091】
これに関しては、https://en.wikipedia.org/wiki/Costus及びhttps://en.wikipedia.org/wiki/Saussurea_costusが参照される。そして、これらを参照して、本発明の明細書中や権利範囲に完全に組み込むことができる。
【0092】
この植物材料は、置換又は非置換の液体炭化水素、好ましくは液体アルコール及び/又は液体芳香族炭化水素で処理され、特に浸漬され得る。
【0093】
又、各種成分の混合は、工程毎に順次行うことができる。
更に別の実施形態では、中間混合物は、各混合工程の後、すなわち任意の成分の添加後に静置することができる。
静置時間は、少なくとも1時間、好ましくは、少なくとも2時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも8時間、又は8~16時間、又は10~12時間であることが好適である。
【0094】
又、添加剤を製造するための方法のより具体的な実施形態では、第1及び第2の化合物の混合は、以下の工程i)~iii)を実行することによって行われる。
i)第1の化合物と少なくとも1つの第1の液体化合物とを混合して、第1の液体組成物を調製する工程。
ii)第2の化合物と少なくとも1つの第2の液体化合物とを混合して、第2の液体組成物を調製する工程。
iii)第1の液体組成物と第2の液体組成物とを混合して、第1の液体組成物と第2の液体組成物の混合物を得る工程。
【0095】
なお、第1の液体化合物及び第2の液体化合物は、内容的に、同じであっても、異なっていてもよい。
第1及び第2の液体化合物は、置換又は非置換の液体炭化水素、好ましくは液体アルコール及び/又は液体芳香族炭化水素であることが好ましい。
アルコールは、ある特定の実施形態では、脂肪族アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はペンタノール等の炭素数(C)が1~10個のアルコールであり、又、それらのすべての異性体が含まれる。
又、液体芳香族炭化水素は、トルエン、キシレン、灯油から選択することが好ましい。
【0096】
工程i)は、上記の第1の液体化合物がアルコールではない場合、1つ又は複数のアルコールを添加することを更に含み得る。
工程i)は、カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料の一部、特に根を、連続工程で、所定量の第1の液体化合物に連続的に添加し、各工程の間に、1時間、好ましくは少なくとも2時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも8時間、又は8~16時間、又は10~12時間、静置することによって行うことができる。
【0097】
第1の液体組成物及び/又は第2の液体組成物は、第1の液体組成物及び第2の液体組成物を混合する前に、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも8時間、又は8~16時間、又は10~12時間、静置することができる。
カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特に根は、第1の液体化合物に懸濁及び/又は浸漬され得る。
【0098】
又、本発明の一実施形態において、この方法は、次の一連の工程a)及び工程b)を任意の順序で実行する。
a)第1の液体組成物を第1の期間、第1の照度に曝露する工程。
b)第1の液体組成物を第2の期間、第2の照度に曝露する工程。
【0099】
ここで、工程a)の第1の照度は、工程b)の第2の照度よりも高いことが好ましい。
オプションで、工程a)及び工程b)のシーケンスを少なくとも1回繰り返す、及び/又は、次の一連の工程a´)及び工程b´)を任意の順序で実行することが好ましい。
a´)第2の液体組成物を第1の期間、第1の照度に曝露する工程。
b´)第2の液体組成物を第2の期間、第2の照度に曝露する工程。
【0100】
ここで、工程a´)の第1の照度は、工程b´)の第2の照度よりも高いことが好ましい。
又、オプションとして、工程a´)及び工程b´)のシーケンスを少なくとも1回繰り返す、及び/又は、次の一連の工程a´´)及び工程b´´)を任意の順序で実行することも好ましい。
a´´)第1の液体組成物と第2の液体との混合物を、第1の期間、第1の照度に曝露する工程。
b´´)第1の液体組成物と第2の液体との混合物を、第2の期間、第2の照度に曝露する工程。
【0101】
ここで、工程a´´)の第1の照度が工程b´´)の第2の照度よりも高いことが好ましい。
又、オプションとして、工程a´´)及びb´´)のシーケンスを少なくとも1回繰り返すことが好ましい。
このプロセスでは、上記の照度と時間の値及び範囲が参照され、ここでも同様の方法が適用できる。
【0102】
第1の照度と第2の照度は、第1の照度と第2の照度を比較したとき、これらの照度に差があることを示すことを目的としている。
但し、工程a)、a´)、及びa´´)の第1の照度が、部分的又は完全に同じであるか、あるいは、部分的又は完全に異なる可能性もある。
又、工程b)、b´)、及びb´´)の第2の照度が、部分的又は全体的に同じであるか、あるいは部分的又は完全に異なる可能性もある。
【0103】
このような照明(照射)に関する工程は、光を用いて行うことが好ましい。
かかる光は、好ましくは可視光であり、これは1つ又は複数の波長から構成され得る。又、光は、白色光源又は昼光からの光(太陽光)であり得る。
工程a)、a´)、又はa´´)の第1の照度が、工程b)、b´)、又はb´´)の第2の照度よりも高いという特徴は、a)/b)、a´)/b´)、又は、a´´)/b´´)のいずれかの間の照度の差が、通常、少なくとも10ルクス、好ましくは少なくとも100ルクス、より好ましくは少なくとも500ルクス、更により好ましくは少なくとも1000ルクスであることを意味することができる。
したがって、この照度の差は、最大450000ルクスであることが最も好適であると言える。
したがって、工程a)/b)、a´)/b´)、又はa´´)/b´´)の差は、部分的に又は完全に異なっていてもよく、工程a)、a´)又はa´´)の照度は、10ルクス又は10ルクスを超えるか、少なくとも100ルクス、好ましくは少なくとも500ルクス、より好ましくは少なくとも1000ルクス、更により好ましくは少なくとも5000ルクスであり得る。
下限のいずれかと任意の組み合わせができる好適な上限としては、100000ルクス、又は200000ルクス、又は450000ルクスであり得る。
【0104】
工程b)、b´)又はb´´)の照度は、通常、最大で10ルクス、より好ましくは最大で1ルクス、更により好ましくは最大で0.1ルクス、更により好ましくは最大で0.01ルクスであり得る。
上限のいずれかを任意の組み合わせで組み合わせることができる下限は、0.001ルクス、又は0.0001ルクス、又は0.00001ルクス、又は0ルクス(ゼロ)であり得る。
【0105】
又、工程a)及び/又はb)の期間は、部分的又は完全に同じであっても良く、あるいは、部分的又は完全に異なっていてもよい。
又、工程a´)及び/又はb´)の期間についても、部分的又は完全に同じであっても、あるいは、部分的又は全体的に異なっていてもよい。
更に又、工程a´´)及び/又はb´´)の期間についても、部分的又は全体的に同じであっても良く、あるいは、部分的又は全体的に異なっていてもよい。
【0106】
又、工程a)、a´)、及びa´´)の第1の期間についても、部分的又は完全に同じであっても、あるいは、部分的又は完全に異なっていてもよい。
更に又、b)、b´)、及びb´´)の第2の期間についても、部分的又は全体的に同じであっても、あるいは、部分的又は完全に異なっていてもよい。
【0107】
言い換えれば、期間に関して、「第1」及び「第2」は、他の期間を示すだけであり、それらの長さについては何も述べていない。
工程a)、a´)又はa´´)の任意の第1の期間は、少なくとも0.5時間又は1時間、好ましくは少なくとも2時間であり得る。
上限は、最大48時間又は72時間までであり、これらの上限は、前に示した下限のいずれかと任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0108】
工程b)、b´)、又はb´´)の任意の第2の期間は、通常、少なくとも0.5時間又は1時間、好ましくは少なくとも2時間であり得る。
又、上限としては、通常、最大48時間又は72時間までであり、これらの上限は、前に示した下限のいずれかと任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0109】
又、工程a)と工程b)、及び/又は工程a´)と工程b´)、及び/又は工程a´´)と工程b´´)のシーケンスを少なくとも1回繰り返す場合、第1の照度及び第2の照度の値は、第1の照度が第2の照度よりも高いという条件の下で、初期値又は前の値から変化してもよい。
更に、工程a)と工程b)、及び/又は工程a´)と工程b´)、及び/又は工程a´´)と工程b´´)のシーケンスを繰り返す場合、第1の期間と第2の期間は、最初の期間又は前の第1/第2の期間から変化させてもよい。
【0110】
更に又、工程a)と工程b)、及び/又は工程a´)と工程b´)、及び/又は工程a´´)と工程b´´)のシーケンスを繰り返す場合、第1の照度と第2の照度が、第1の照度が第2の照度よりも高いことを条件に、初期値又は前の値から変化してもよい。
これは、工程a)と工程b)、及び/又は工程a´)と工程b´)、及び/又は工程a´´)と工程b´´)のシーケンスの1つ又は複数の繰り返しにおいて、工程a)、工程a´)又は工程a´´)の第1の照度が工程b)、工程b´)又は工程b´´)の第2の照度よりも高い限り、照度及び期間が変化する可能性があることを意味する。
【0111】
本発明は又、独立した(すなわち、前述の方法から独立した)石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つのための添加剤を得るための製造方法であって、カンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特にカンゾウ属の植物材料の根、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)から選択される第1の化合物と、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物材料又は植物成分から選択される第2の化合物との混合工程を含むことができる。
【0112】
ここで、かかる混合は、以下の工程i)~iii)を実行することによって行われる。
i)第1の化合物と少なくとも1つの第1の液体化合物とを混合して、第1の液体組成物を調製する工程。
ii)第2の化合物と少なくとも1つの第2の液体化合物とを混合して、第2の液体組成物を調製する工程。
iii)第1の液体組成物と第2の液体組成物とを混合して、これら第1の液体組成物と第2の液体組成物との混合物を得る工程。
【0113】
なお、この混合方法においても、前述の添加剤を製造する方法と同じ特定の実施形態を適用することができる。
【0114】
一実施形態では、添加剤を製造するための方法は、置換又は非置換の炭化水素、好ましくはトルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素、又はアルコールを更なる成分として混合又は添加することが好ましい。
一実施形態では、添加剤を製造するための本発明の方法は、1つ又は複数のアルコールを更なる成分として混合又は添加することが好ましい。
このようなアルコールは、もう1つの特定の実施形態では、脂肪族アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はペンタノール等の炭素数が1~10のアルコールであり、それらのすべての異性体が含まれる。
【0115】
一実施形態では、添加剤を製造するための方法は、更なる成分として、逆解乳化剤及び/又は凝集剤を混合又は添加することが好ましい。
一実施形態では、第1の化合物と第2の化合物の混合物、又は第1の液体組成物と第2の液体組成物の混合物、又は一般にいずれかの方法のいずれかの生成物は、成分を混合した後、又は第1の液体組成物と第2の液体組成物とを混合した後に、所定時間、静置することが好ましい。
有益な実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物は、いわゆる添加剤を形成するために、それらを石油、石油留分又は天然ガスに添加する前に接触させられる。
更に有益なことに、第1の化合物、第2の化合物、及び存在する場合には更なる成分の混合物は、それが石油、石油留分、又は天然ガスに添加される前に、所定時間、静置することができる。
【0116】
又、特定の実施形態では、第1の化合物と第2の化合物の混合物、又は第1の液体組成物と第2の液体組成物の混合物、又は一般にいずれかの方法の生成物は、成分又は成分を含む液体組成物を混合した後、通常、少なくとも1時間、好ましくは、少なくとも2時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも6時間、又は少なくとも8時間、又は8~16時間、又は10~12時間、静置することが好ましい。
【0117】
本発明は、更なる態様において、以下のa)第1の化合物及びb)第2の化合物の混合物の使用方法(使用)、特に、石油、石油留分又は天然ガスの少なくとも一つの処理に対する使用方法(使用)である。
a)第1の化合物としてのカンゾウ属(Glycyrrhiza)の植物材料、特にカンゾウ属の植物の根、及び/又はアーバスキュラー菌根菌(arbuscular mycorrhizal fungi)から選択される化合物
b)第2の化合物として、ホルトノキ科(Elaeocarpaceae)の植物材料又は植物成分から選択される化合物
【0118】
本発明は、更なる態様においても、石油、石油留分、又は天然ガスの少なくとも一つの処理のための、カンゾウ属の植物材料、特にカンゾウ属の植物の根、及び/又はアーバスキュラー菌根菌から選択される化合物の使用に関する。
この態様は、第1の化合物のみの使用方法(使用)に関連する発明の一つである。
【0119】
本発明は、更なる態様において、石油、石油留分又は天然ガスの少なくとも一つの処理のための、ホルトノキ科の植物材料又は植物成分から選択される成分の使用にも関する。
この態様は、第2の化合物のみの使用方法(使用)に関連する発明の一つである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1図1は、地下石油貯留層の処理のための本発明のプロセスの概略フロー図を示す。
図2図2は、表面回収プラント及び下流の精製及び処理施設における石油及びその留分を処理のための本発明のプロセスの概略フロー図を示す。
図3図3は、地下天然ガス貯留層を処理するための本発明のプロセスの概略フロー図を示す。
図4図4は、下流の精製及び処理施設における天然ガスの処理のための本発明のプロセスの概略フロー図を示す。
【実施例
【0121】
[実施例1]
(本発明の添加剤の製造)
(第1の化合物)
マメ科カンゾウ属の植物であるリコリス(Licorice)の任意の部分は、エタノール等のアルコール、又は芳香族、好ましくはトルエン又はキシレンと、例えば25/75(vol/vol)の比率で、又は具体的には以下の手順によって混合される。
【0122】
「カンゾウグラブラ/リコリス(Glycyrrhiza glabra/licorice)」の浸軟の準備
A.2000gのリコリスをキシレンであるC10(約500ml)等の適切な芳香族溶剤435gに浸漬する。
B.浸漬は、10ステップにて行われ、各ステップで200gのリコリスを同量のキシレンに浸漬する。
C.反応時間は、各ステップ間で10~14時間である。したがって、総反応時間は、下記の通りである。
総反応時間=(10~14時間)x10=100~140時間
【0123】
得られた混合物は、必須要件ではないものの、次のように明暗(ライト/ダーク)状態、すなわち、自然光の曝露状態(ライト)及び非曝露状態(ダーク)に置かれることが好ましい。
1日目:ダーク8時間/ライト16時間
2日目:ダーク10時間/ライト14時間
3日目:ダーク12時間/ライト12時間
【0124】
(第2の化合物)
ホルトノキ科ホルトノキ属(Elaeocarpaceae hygrophilus)に由来した植物成分、好ましくは果実から圧搾された液体(油)を、アルコール、好ましくはエタノール、又は芳香族、好ましくはトルエン又はキシレンと25/75(vol/vol)の比率で混合する。
次いで、得られた混合物は、必須要件ではないものの、次のように明暗(ライト/ダーク)状態、すなわち、自然光の曝露状態(ライト)及び非曝露状態(ダーク)に置かれることが好ましい。
1日目:ダーク8時間/ライト16時間
2日目:ダーク10時間/ライト14時間
3日目:ダーク12時間/ライト12時間
【0125】
次に、第1の化合物と、第2の化合物を1:1の割合で混合する。
次いで、得られた混合物は、必須要件ではないものの、次のように明暗(ライト/ダーク)状態、すなわち、自然光の曝露状態(ライト)及び非曝露状態(ダーク)に置かれることが好ましい。
1日目:ダーク6時間/ライト18時間
2日目:ダーク8時間/ライト16時間
3日目:ダーク10時間/ライト14時間
4日目:ダーク12時間/ライト12時間
5日目:ダーク14時間/ライト10時間
6日目:ダーク16時間/ライト8時間
7日目:ダーク18時間/ライト6時間
8日目:ダーク20時間/ライト4時間
9日目:ダーク22時間/ライト2時間
10日目:ダーク24時間/ライト0時間
【0126】
[実施例2]
実施例2は、次の地下石油貯留層の処理例であって、同封の参照記号のリストも参照することができる。
この処理の特定の実施形態は、ダウンホール注入による地下石油貯留層RV(以下、貯留槽RVと称する場合がある。)(図1)の処理である。
処理液は、PV110、PV120、PV130の各容器で調製される。
PV110は、ホルトノキ科ホルトノキ属(Elaeocarpaceae hygrophilus)に由来した植物成分(果物から抽出された油等)(CF110)を、灯油(SF110)と混合する。
又、PV120は、殺生物剤(グルタルアルデヒド、Nova Star LP社製のNovaCide1125TM)、及びアミン/第4級アンモニウム化合物(Nova Star LP社製のNova Star NS-1435TM、NS-1442TM、NS-1471TM、NS-2129TM、NS-1445TMの1つ又は複数の腐食防止剤)(CF120)と、水(SF120)と、を混合する。
更に、PV130は、上記の実施例1で製造された添加剤(CF130)を、灯油(SF130)と混合する。
次に、PV130での混合物が、発酵槽PV140に供給される。そして、実際の処理は2段階で行われる。
【0127】
1.シャットイン坑口を備えたバッチシーケンシャルインジェクション
最初に、約2%と約5%の濃度のPV120からの抽出処理溶液が、高圧ポンプでダウンホールDHに送り込まれ、注入管ITを介して貯留槽RVに順次注入される。
反応間隔時間は、各注入後、約12時間である。この初期サイクルは4つのステップで構成され、サンプルラボラトリーの分析結果に基づいて必要に応じて繰り返すことができる。
【0128】
次に、約20%の濃度のPV110からの反応器処理溶液が、高圧ポンプでダウンホールDHに送り込まれ、注入管ITを介して貯留槽RVに注入される。
この段階では、SRBの成長が阻害され、生物活性が低下する。原油中の硫黄含有量は原油内のSRBコロニー数に比例するため、この段階で、HSと硫黄は約50%減少する。
【0129】
2.自噴井による連続部分注入
生産原油ストリームの一部(5%から15%)は、約16%の濃度の化学生物学的発酵溶液を約10%添加して処理するために、発酵槽PV140に転送される。
又、PV140での典型的な発酵時間は約72時間である。
更に又、PV140からの発酵生成物は、高圧ポンプでダウンホールDHに送り込まれ、注入管ITを介して、貯留槽RVに連続的に注入され、必要に応じて生産管PTを通る原油ストリームを改善する。
【0130】
この段階では、炭化水素鎖を強化し、API比重を増加させ、粘度を低下させ、硫黄含有量とHS濃度を約90%減少させ、貯留槽RV形成部におけるエネルギーの生物学的抗分解反応を開発する。
注入する処理液の量とサイクル数は、原油の組成、生産量、処理目標などの様々な要因に依存するため、各坑井ごとに個別に決定される。
貯留槽RVでの最初の生体反応保持時間は最低24時間である。
【0131】
図1による本発明の実施形態は、特に硫黄、塩及び重金属含有量を低減し、HS濃度を無害なレベル(<10ppm)に低下させ、API比重を増加させ、製品PR(Product PR)の粘度を低下させる。
【0132】
[実施例3]
実施例3は、表面回収プラント及び下流の精製及び処理施設での石油又は石油留分の少なくとも一つの処理例である。
この処理の別の特定の実施形態は、表面回収プラント及び下流の精製及び処理施設における石油及び石油留分の少なくとも一つの処理(図2)である。
処理液は、PV240、P250、PV290の容器で調製される。
PV240は、ホルトノキ科ホルトノキ属(Elaeocarpaceae hygrophilus)に由来した植物成分(果物から抽出された油等)(CF210)を灯油(SF210)と混合する。
又、PV250は、殺生物剤及びアミン(上記の実施例2の生成物)(CF220)を水(SF220)と混合する。
又、PV290は、上記の実施例1で製造された添加剤(CF230)を灯油(SF230)と混合する。
【0133】
次いで、PV290での混合物が、発酵槽PV260に供給される。実際の処理は次のように行われる。
すなわち、生産マニホールド又は貯蔵施設からの原料FSの一部(約20%)は、重力分離によって原油からガスと水(水はドレインDRを介して抽出される。)を分離するためにPV210に送られる。
【0134】
分離された原油ストリームは、HE210で摂氏約80℃に加熱された後、抽出器PV220に転送される。
PV220における加熱された原油ストリームには、PV250からの抽出処理溶液(加熱された原油量の約20%)を、それぞれ約2%と5%の濃度で順次注入される。
反応間隔時間は、各注入後、約12時間である。この初期サイクルは4つのステップで構成され、サンプルラボラトリーの分析結果に基づいて必要に応じて繰り返すことができる。
PV220の底水(スラッジ)で抽出されたSRBは、各反応サイクルの最後にブローダウンBDを介して除去される。
次いで、反応が完了すると、下流の生成物は反応器PV230に転送される。
【0135】
ここでは、PV240からの反応器処理溶液(中間生成物の量の約5~10%)が約20%の濃度で注入される。
反応器PV230での生物反応時間は約12時間である(排水なし)。
次いで、反応が完了すると、下流の生成物は発酵槽PV260に転送される。
【0136】
又、ここでは、PV290からの化学生物学的発酵溶液(中間生成物の量の約15%)が約16%の濃度で注入される。
PV260での典型的な発酵時間は約72時間である。
又、下流生成物の量に対するPV260での発酵プロセスの増加は、30%から50%の範囲である。
【0137】
次いで、反応が完了すると、発酵生成物は、プロダクトミキサーPV270に転送される。あるいは、発酵生成物は、製品として、直接使用することができ、例えば、これらのラフィネートRA(Raffinates RA)のより高い発熱量に対応する燃料噴射システムの変更と組み合わせて、燃焼エンジン又はタービンのための高エネルギーでクリーンな燃料として使用することができる。
又、PV270では、発酵生成物は残りの80%の原料FSと混合される。
更に、PV270における発酵油の生体反応性は、非常に効率的で動的である。
例えば、炭化水素のギブズエネルギー(発熱量)を増加させるエネルギーフローは、SRBが完全に抑制されることで発生し、その蓄積されたエネルギー(分解された死細胞からでも)を新しい炭化水素鎖の同化作用に利用する。
【0138】
ここで、PV270の典型的な反応時間は約72時間である。
又、反応が完了すると、完成品としての製品はPV280に転送され、出荷の準備が整う。
又、製品タンクPV280からの完成品としての製品PRの一部は、必要に応じて発酵槽PV260のメイクアップ(makeup)として機能する場合がある。
すなわち、発酵槽PV260は、サイクル時間を短縮するために1つ又は複数の物理的容器の組み合わせで構成することができる。
例えば、発酵槽の1つは反応完了状態、別の発酵槽の1つはメイクアップ状態、もう1つ発酵槽は、発酵生成物デリバリー状態とすることもできる。
【0139】
又、原料と処理パラメータを以下の表に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
上記表中、いわゆるラフィネートRA(Raffinates RA)は、軽質スイート原油の品質に対応する。
又、上記表中、製品PRは超軽量スイート原油の品質に対応している。
又、図2の実施形態の利点は、図1に匹敵する。すなわち、1つ又は複数の上記の利点に到達することができ、更に、高エネルギーでクリーンなラフィネートRAを生成することができる。
又、注入される処理液の量とサイクル数は、原油の組成、生産量、処理目標等のさまざまな要因に依存するため、アプリケーションごとに特別に決定される。
【0142】
[実施例4]
実施例4は、地下の天然ガス貯留層における、サワー天然ガスの処理例である。
図3に天然ガス貯留層RV(以下、貯留槽RVと称す場合がある。)を示す。そして、発酵槽溶液ミキサーPV310によって、上記の実施例1で製造された添加剤(CF310)をメタノール(SF310)と混合する。
すると、混合物は、注入管ITを介して天然ガス貯留層RVに供給される。したがって、処理された、すなわち、スイート化されたサワー天然ガスは、生産管PTから製品PRとして得られる。
【0143】
[実施例5]
実施例5は、下流精製工程施設における天然ガスの処理例である。
例えば、実施例5を実施するに際して、図4に示すように、発酵槽溶液ミキサーPV410は、上記の実施例1で製造された生成物(CF410)とメタノール(SF410)とを混合する。
得られた混合物は、ドレインDRを介して抽出された液体(黒色水と凝縮液)とともに、原料FSとセパレーターPV420の間のパイプラインに供給される。そのため、原料FSからの天然ガスは、パイプラインを流れる間に処理される。
更に、PV410からの混合物は、セパレーターPV420自体にも供給され、セパレーター内の天然ガスを処理する。
上記の手順に加えて、殺生物剤及びアミン処理の溶液を適用することもできる。
【0144】
図3及び4の実施形態は、硫黄を低減し、酸味のあるサワーガスをスイート化し、加熱速度を増加させ、比重を減少させ、HS濃度を無害なレベル(<10ppm)に低下させることを示している。
すなわち、上記の実施形態に基づく実施例が、本発明の本質を説明していることを強調しなければならない。
より具体的には、量及び濃度等の詳細は、本発明の範囲及び思想に沿っており、例えば、原料の種類、処理対象、人工植物又は天然の貯留層の用途ごとに、異なる可能性があるものの、本質的には変わらない点に、留意すべきである。
【0145】
[実施例6]
実施例6は、オイルサンドの処理方法例である。
すなわち、採掘されたオイルサンドを、所定容器に収容した。
次いで、実施例1で製造された本発明の添加剤を所定容器に添加した。
又、このプロセスは、攪拌又はタンブリング処理(振動処理)によって加速されることが判明した。
上記の混合物を静置する1時間の保持時間の後、容易に採取可能な炭化水素(>50%)が非有機固体から分離され、原油様生成物に変換された。
【0146】
得られた原油様生成物を吸い上げ、収容した。
次いで、残りの固化炭化水素の原油様生成物への変換を加速するために、熱水(>80℃)を加えた。この変換には約24時間かかった。
又、このプロセスは、攪拌又はタンブリングによって加速されることが判明した。
【0147】
残りの非有機固体から、炭化水素を完全に取り除いた。
クリーンな原油のような生成物が吸い上げられた後、必要に応じて、おそらく何らかの処理、例えば、硫酸塩抽出後に、洗浄水を再循環させられることが判明した。
【符号の説明】
【0148】
IT:注入管
PT:生産管
PR:製品
DH:ダウンホール
RV:貯留槽
PV110:反応器溶液ミキサー(Reactor Solution Mixer)
PV120:抽出器溶液ミキサー(Extractor Solution Mixer)
PV130:発酵槽溶液ミキサー(Fermentor Solution Mixer)
PV140:発酵槽
CF110:反応器化学薬品原料(Reactor Chemicals Feed)
CF120:抽出器化学薬品原料(Extractor Chemicals Feed)
CF130:発酵槽化学薬品原料(Fermentor Chemical Feed)
SF110:反応器溶剤原料(Reactor Solvent Feed)
SF120:抽出器溶剤原料(Extractor Solvent Feed)
SF130:発酵槽溶剤原料(Fermentor Solvent Feed)
FS:原料
DR:ドレイン
BD:ブローダウン
RA:ラフィネート
PV210:セパレーター
HE210:ヒーター
PV220:抽出器
PV230:反応器
PV240:反応器溶液ミキサー
PV250:抽出器溶液ミキサー
PV260:発酵槽
PV270:製品ミキサー
PV280:製品タンク
PV290:発酵槽溶液ミキサー
CF210:反応器化学薬品原料
CF220:抽出器化学薬品原料
CF230:発酵槽化学薬品原料
SF210:反応器溶剤原料
SF220:抽出器溶剤原料
SF230:発酵槽溶剤原料
PV310:発酵槽溶液ミキサー
CF310:発酵槽化学薬品原料
SF310:発酵槽溶剤原料
PV410:発酵槽溶液ミキサー
PV420:セパレーター
CF410:発酵槽化学薬品原料
SF410:発酵槽溶剤原料
図1
図2
図3
図4