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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】金属タンタルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 3/26 20060101AFI20220427BHJP
   C22B 34/24 20060101ALI20220427BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20220427BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
C25C3/26
C22B34/24
H01G9/042
H01G9/052 500
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021034158
(22)【出願日】2021-03-04
(62)【分割の表示】P 2016574427の分割
【原出願日】2015-06-25
(65)【公開番号】P2021105215
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】1411430.0
(32)【優先日】2014-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511185520
【氏名又は名称】メタリシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】メラー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ダウティ グレッグ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/102223(WO,A1)
【文献】米国特許第3188282(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0139667(US,A1)
【文献】特開2008-013793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0295609(US,A1)
【文献】特開2000-212678(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第860335(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C1/00-7/08
C22B1/00-61/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属タンタルの製造方法であって、
第一金属のタンタル酸塩を含む前駆体材料を提供し、前記第一金属はアルカリ金属又はアルカリ土類金属である、ステップと、
電解セル内において、前記前駆体材料を溶融塩と接触する状態に配置し、前記電解セルが、前記溶融塩と接触する状態に配置されたアノード及びカソードを更に含んでいる、ステップと、
前記前駆体材料がタンタルに還元されるように、炭素材料を含まない前記アノードと、前記カソードと、の間に電位を加えるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記前駆体材料が前記カソードと接触する状態に配置され、前記アノードが溶融第二金属を含み、前記第二金属は、前記第一金属とは異なり、かつ前記前駆体材料の還元中に前記第二金属が溶融状態にあるよう十分低い融点を有し、前記アノードと前記カソードとの間に電位が加えられた際に前記前駆体材料から放出された酸素が、前記アノードにて前記溶融第二金属と反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二金属が商業的に純粋な金属であり、又は、前記第二金属が合金である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二金属が、1000℃未満の融点と、1750℃未満の沸点とを有する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二金属が、亜鉛、テルル、ビスマス、鉛、マグネシウム、錫及びアルミニウムからなるリストから選択される任意の金属、又はその合金である、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アノードと前記カソードとの間に前記電位が加えられた際、前記第二金属の一部が前記カソード上に析出され、それにより前記金属タンタルは、一部の前記第二金属を含む、請求項~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記金属タンタルから前記第二金属を分離して、0.1重量%未満の前記第二金属を含む生成物を提供する更なるステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
還元中に前記前駆体材料から除去された酸素が、前記アノードにて前記溶融第二金属と反応して、前記酸素と前記第二金属との間で酸化物を形成する、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アノードが、固体の、非炭素の酸素放出アノードである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一金属がカルシウムであり、前記前駆体材料がタンタル酸カルシウムを含み、又は前記第一金属がリチウムであり、前記前駆体材料がタンタル酸リチウムを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆体材料が、タンタルと前記第一金属との間で形成可能な、熱力学的に最も安定なタンタル酸塩を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記前駆体材料が、化学式Ca(CaTa)Oを有するタンタル酸カルシウムを含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体材料が、前記第一金属のタンタル酸塩からなる、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体材料が、前記第一金属の前記タンタル酸塩と酸化タンタルとの混合物、又は前記第一金属の前記タンタル酸塩と金属タンタルとの混合物、又は前記第一金属の前記タンタル酸塩と酸化タンタルと金属タンタルとの混合物である、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融塩が、前記第一金属の塩を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融塩がCaClを含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆体材料が、粉末、粒塊、若しくは顆粒の形態、又は多孔質ペレット若しくは成形プレフォームの形態である、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第一金属の前記タンタル酸塩を形成する更なるステップを含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第一金属の前記タンタル酸塩が、酸化タンタルと、前記第一金属、又は前記第一金属を含む化合物との間の反応により形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第一金属の前記タンタル酸塩が、タンタル酸カルシウムであり、酸化タンタルとカルシウムとの間の反応により形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第一金属の前記タンタル酸塩が、化学的共沈又はゾルゲル反応により形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記酸化タンタルが、所定の平均粒子サイズを有し、又は、前記金属タンタル酸塩を形成するのに先立って、所定の平均粒子サイズを生じるように処理される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項23】
前記セル内に配置するのに先立って、前記前駆体材料を処理して、所定の前駆体平均粒子サイズ又は所定の前駆体粒子サイズ分布を提供するステップを更に含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記前駆体材料が、0.1~100マイクロメートルの平均粒子サイズを有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記前駆体材料が、0.5~10マイクロメートルの平均粒子サイズを有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記前駆体材料の還元中、前記溶融塩が炭素材料と接触していない、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記金属タンタルが、250ppm未満の炭素含有率を有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記金属タンタルをキャパシタに形成する更なるステップを含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セル内で前駆体材料を還元することによる、金属タンタル、特に粉末化タンタルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタルは、16.6g/cmの密度と、3017℃の融点とを有する希少遷移金属である。タンタルは、堅く、高い耐食性を有し、例えば高強度合金鋼、又は超合金、又は炭化物強化工具の作製において合金材料として広く使用されている。タンタルの卓越した耐食性は、タンタルが化学プロセス設備、並びに医療器具及びインプラントの作製に有用であることを意味する。しかしながら、タンタルは、キャパシタ製造において最も大量に使用されている。タンタルキャパシタは、小型で大容量を有する傾向があり、携帯電話及びパーソナルコンピュータの極めて重要な部品となっている。
【0003】
タンタル粉末の標準的な調製方法は、フッ化タンタルカリウム(KTaF)をナトリウムで還元した後、生成物を水洗及び酸浸出して、処理塩を除去することによる。次いで、この粉末を乾燥し、この段階の粉末は一次又は生タンタル粉末として知られる。長年に亘り、この基本的なプロセスには、プロセス条件及びコスト、並びに粉末の表面積の改善を目的とする多数のバリエーションが存在している。この方法は通常、0.2~3.0μmの範囲の平均一次粒子サイズと、1~3m/gのオーダーの表面積とを有する粉末を生成する。この段階で、粉末の酸素含有率は、3000~7000ppmを上回る可能性がある。不純物含有率を更に低下させるために(揮発性元素の除去によって)、また粉末の取り扱い及び焼結特性を改善するために、生タンタル粉末を1200℃までの温度での真空加熱処理に供する。このプロセスは微粉を熱的に凝集させ、その粒子サイズを低下させるためには、次いで得られた粒塊をふるい分けする必要がある。これは、10~100μmの領域の平均粒子サイズを有する粒状材料を生成する。真空加熱処理及び熱凝集のステップは、不純物含有率を低下させ、かつTa粉末の取り扱い及び焼結特性を改善するために必要であるが、酸素含有率がかなり増大するという大きな欠点を有し;そのレベルは、12000ppmもの高さに達し得る。
【0004】
従って、凝集したタンタル粉末は更なる処理を経て、酸素レベルを低下させる必要がある。一般に、粉末は、マグネシウム金属を用いた脱酸素と、その後の、酸化生成物(即ちMgO)を除去するための酸浸出と、に供され、更に乾燥及び分級の段階に供される。標準的なフッ化タンタルカリウム方法(上述した)により生成され、熱凝集及び脱酸素された粉末は、通常、およそ1m/gのBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積と、ほぼ400nmの、比表面積に基づいた平均一次粒子サイズと、およそ50,000CV/gの比容量(specific capacitance)とを有する。そのような粉末は、製作手順の複雑さ及びコストにも関わらず、大量に製造されている。
【0005】
カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム等の活性金属を用いた酸化タンタルの還元による自由エネルギー変化は好都合であるため、上述した周知の欠点のいくつかを除外する、標準的なKTaFプロセスの代替的プロセスを発明する多くの努力が為されてきた。今日までで最も成功しているのは、気体マグネシウムとの反応による、酸化タンタルの還元である。しかしながら、そのような方法は依然として、不利益な、複雑な多ステップのプロセスであり、所望の酸素レベルを達成するために、最初の相当な還元ステップと、その後の、類似した試薬(気体マグネシウム)を使用した1つ以上の脱酸素ステップとが存在する。
【0006】
その結果として、タンタルを製造するためのより単純なプロセス、好ましくはキャパシタ等級(低い酸素含有率及び大きい表面積)タンタル又はTa合金を製造可能なプロセスが、長い間必要とされている。
【0007】
最近、酸化タンタル供給原料の直接還元によって、タンタルを製造することが可能であると証明された。タンタルを製造可能な1つのこうした還元プロセスは、FFCケンブリッジ法電気分解プロセスである(特許文献1に記載されている)。この方法では、固体酸化タンタル化合物は、融解塩を収容する電解セル内のカソードと接触する状態で配置される。酸化タンタルが還元されるようにセルのカソードとアノードとの間に電位を加える。FFCプロセスでは、酸化タンタルを還元する電位は、融解塩からのカチオンに関する析出電位よりも低い。例えば、融解塩が塩化カルシウムである場合、酸化タンタルが還元されるカソード電位は、塩から金属カルシウムが析出する析出電位よりも低い。
【0008】
カソードに接続される酸化タンタルの形態の供給原料を還元するための、特許文献2に記載されている電極プロセスのような他の還元プロセスが提案されている。
【0009】
電気化学的還元によるタンタル粉末の特定の製造方法が、特許文献3に記載されている。この特許出願は、酸化タンタル供給原料からキャパシタ等級タンタルを製造するためのプロセスを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第99/64638号
【文献】国際公開第03/076690号
【文献】国際公開第2008/041007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タンタルは、FFCケンブリッジプロセスを用いて、その酸化物の直接電解還元によって首尾よく製造されているが、形態及び粒子サイズ等のタンタル粉末特性の一貫した、かつ予想可能な制御を達成することは困難であった。本発明の目的は、一貫した形態及び粒子サイズを有するタンタル、好ましくはタンタル粉末の改良された製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ここで参照がなされるべき添付の独立請求項において定義される場合の金属タンタルの製造方法を提供する。本発明の好ましい又は有利な特徴は、従属請求項に定義される。
【0013】
従って、第一態様において、本発明は、金属タンタルの製造方法を提供することができ、該方法は、第一金属のタンタル酸塩を含む前駆体材料を提供し、第一金属はアルカリ金属又はアルカリ土類金属である、ステップと、電解セル内において、前駆体材料を溶融塩と接触する状態に配置し、電解セルが、溶融塩と接触する状態で配置されたアノード及びカソードを更に含んでいる、ステップと、前駆体材料が金属タンタルに還元されるように、アノードとカソードとの間に電位を加えるステップと、を含む。アノードは、炭素アノードではない。有利には、金属タンタルは、粉末として形成され得る。金属タンタルは、タンタル合金又は商業的に純粋な金属タンタルであってもよい。金属タンタルは、キャパシタを製造するのに好適な粉末の形態であってもよい。
【0014】
第一金属タンタル酸塩、又は金属タンタル酸塩は、第一族又は第二族の金属、タンタル、及び酸素を含む化合物である。それ故、第一金属タンタル酸塩は、第一族/第二族金属タンタル酸塩と称することができる。こうしたタンタル酸塩は、酸化タンタルを、第一族又は第二族金属を含む溶融塩と接触させた際に、化学反応により自然に生成され得る。従って、五酸化タンタル(Ta)が溶融塩化リチウム(LiCl)中に入れた際、タンタル酸リチウム(例えばLiTaO)が形成し得る。同様に、五酸化タンタルが溶融塩化カルシウム(CaCl)中に導入された際、1種以上のタンタル酸カルシウム(例えばCaTa)が形成し得る。こうしたタンタル酸塩の生成は、FFCプロセスのような電解還元プロセス中に促進される場合があり、五酸化タンタル(Ta)からなる前駆体材料は、多数の異なる中間金属タンタル酸塩相を経由して金属タンタルに還元され得る。好ましくは、第一金属タンタル酸塩は、タンタル酸カルシウム又はタンタル酸リチウムであり得る。
【0015】
電位が加えられない状態で五酸化タンタルが溶融塩化カルシウム中に入れた場合、以下の反応が順に起こり得ることが以前に注目された。
【0016】
Ta→CaTa11→CaTa→CaTa
【0017】
溶融塩化カルシウム中で行われるFFC電気分解反応中、五酸化タンタル(これはFFC電解セルのカソードの一部を形成する)に電位が加えられ、反応経路は、以下のように進行することが観察された。
【0018】
Ta→CaTa11→CaTa→CaTa→Ca(CaTa)O→Ta
【0019】
従って、電位を加えることにより、更なるタンタル酸カルシウム、次いでタンタル金属への還元がもたらされ得ることが理解できる。
【0020】
様々な異なるタンタル酸塩は、異なる結晶構造及び形態を有する。例えば、いくつかは針状結晶構造のものであり、いくつかは立方晶結晶構造を有する。様々なタンタル酸塩の成長速度もまた様々であり得る。
【0021】
FFCプロセスを用いて五酸化物が還元される際の五酸化タンタルからタンタル金属へのこの反応経路の結果、材料構造内の異なる場所で、異なる時間の間に異なる金属タンタル酸塩が形成される場合があり、これらの異なるタンタル酸塩は、異なる成長速度及び形態を有する。それ故、五酸化タンタルの金属タンタルへの還元によって生成されたタンタル粉末は、一貫していない又は予測不可能な粒径分布を有し得る。タンタルの多くの用途、特にキャパシタ用途では、還元プロセスによって生成される金属タンタル粉末の粒径及び形態を制御又は予測できることが重要である。従って、前駆体材料と所望のタンタル生成物との間の反応経路における中間の構造的変化の数を低減するように、金属タンタル酸塩、例えばタンタル酸リチウム又はタンタル酸カルシウムを含む前駆体材料を還元することによって、金属タンタルを生成することが相当有利であり得る。
【0022】
本発明者らは、例えばFFCタイプの反応を用いて金属タンタル酸塩を溶融塩中で電解的に還元する際に生じ得る問題を発見した。金属タンタル酸塩供給原料は、タンタル、第一族又は第二族金属(即ち、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、これはカルシウム又はリチウムが好ましい)、及び酸素を含む。金属タンタル酸塩の還元によって第一族/第二族金属及び酸素の両方が溶融塩中に解放される。電解セルは、一般に、炭素材料、例えば炭素アノードを備える。前駆体材料から解放された第一族/第二族金属(又は、第一族/第二族金属酸化物)は、炭素アノードにて放出された二酸化炭素と反応することが可能であり、溶融塩中で第一族/第二族金属炭酸塩の形成をもたらし得ると考えられる。
【0023】
2-+CO→CO 2-
【0024】
この炭酸塩は、次いで電解的に分解され、セルのカソードにおいて炭素を電気化学的にめっきすることが可能であり得る。
【0025】
CO 2-+4e→C+3O2-
【0026】
還元によって生成されるタンタル粒子の粒子サイズは、金属タンタル酸塩を含む供給原料を使用してより制御可能であるが、炭素汚染という新たな問題がもたらされ得る。炭素はカソードにて生成された金属生成物を汚染し得るのみでなく、炭素汚染はまた電流効率を低下させる。
【0027】
生成される金属タンタルの品質を最適化するために、アノードは、非炭素アノードである。即ち、アノードは、黒鉛等の炭素材料から形成されていない。溶融塩は、前駆体材料の還元中、いかなる炭素材料とも接触していないことが好ましい。即ち、溶融塩と接触する状態で配置されているアノード、カソード、るつぼ、又は電解装置の任意の他の構成要素のいずれも、黒鉛等の炭素材料から形成されていないことが有利であり得る。
【0028】
前駆体材料はカソードと接触する状態で配置されてもよく、電位がアノードとカソードとの間に加えられた際に酸素が前駆体材料から放出され得ることが有利である。かくして、還元はFFCタイプの電気分解反応によって有利に進行し得る。
【0029】
アノードは、溶融金属を含むことが特に有利であり得る。この溶融金属は第二金属であることが好ましく、該第二金属は、前駆体材料の還元中に該第二金属が溶融状態にあるよう十分低い融点を有する。アノードとカソードとの間に電位が加えられた際、前駆体材料から放出される酸素の少なくとも一部は、アノードにて溶融第二金属と反応することが好ましい。それ故、酸素は、アノードにて溶融金属と反応し及び該溶融金属に組み込まれ得る。かくして、アノードにおける溶融金属は、タンタル酸塩の還元中に消費され得る。
【0030】
電解中にアノードにて形成される酸化物は、溶融金属中に埋没し得る粒子を形成し、酸化のためにより多量の溶融金属を暴露し得る。アノードにて形成される酸化物は、溶融塩中に分散する粒子を形成し、続く酸化のためにより多量の溶融金属を暴露し得る。アノードにて形成される酸化物は、金属中に溶解された液相として形成され得る。酸化物は溶融アノードの表面で急速に形成されることができ、溶融アノードの表面から離れるように分散することができる。それ故、酸化物の形成による、酸化反応の有意な動的阻止がもたらされない。
【0031】
アノードにおける第二金属は、過剰な気化によるアノード材料の損失を低減するために、装置の作動中、その融点付近、及び融点を僅かに超えた温度にあることが好ましい。
【0032】
装置の作動中、アノードからの一部の第二金属が、カソードに析出する可能性があり、該カソードにおいて該一部の第二金属は、還元された供給原料上に析出し、又は該還元供給原料と相互作用し得る。換言すれば、第二金属は、金属タンタル酸塩の還元によって形成された金属タンタル上に析出し、又は該金属タンタルと相互作用し得る。それ故、還元された供給原料は、タンタルと、更に一部の第二金属との両方を含み得る。
【0033】
本方法は、金属タンタルから第二金属を分離して、20ppm未満の第二金属を含むタンタル生成物、例えば実質的に純粋なタンタル生成物を提供する更なるステップを含むことが望ましい可能性がある。そのような分離は、熱蒸留等の熱プロセスによって都合よく実行することができる。例えば、タンタルの沸点は5,000℃を超え、溶融アノードとして使用される任意の第二金属の沸点よりも相当高いであろう。それ故、第二金属を含む還元生成物は加熱されて、第二金属をタンタルから蒸発させ得る。蒸発した第二金属を凝縮して第二金属を回収し、アノード材料を補充することができる。
【0034】
酸洗浄液中での処理等のプロセスによって、タンタルから第二金属を除去することができる。
【0035】
タンタルから第二金属を分離する場合、第二金属は、高い安定性を有する合金又は金属間化合物をタンタルと形成しない金属であることが望ましい。タンタルと第二金属とが合金又は金属間化合物を形成する場合、該合金又は金属間化合物は、第二金属の沸点を超える温度で安定ではなく、第二金属を熱処理により除去することが可能であることが好ましい。そのような情報は、当業者は相図を調べた後、容易に得ることができる。例えば、溶融アノードが溶融亜鉛を含む場合、還元供給原料は、一部の亜鉛を有するタンタルを含むであろう。亜鉛は、905℃の沸点を有し、905℃を超えて加熱して亜鉛を気化させることにより、タンタルから除去することができる。第二金属が、亜鉛等の容易に除去され得る金属である装置を使用することにより、カソードにおける還元生成物の汚染は一時的汚染として説明することができる。
【0036】
第二金属、即ち溶融アノード金属は、商業的に純粋な金属であってもよい。代替的に、第二金属は、二種以上の元素からなる合金、例えば共晶組成の合金であってもよい。アノード金属の融点を低下させることによって、より好ましい、より低い温度でプロセスを稼働させるように、共晶組成の合金を有することが望ましい可能性がある。
【0037】
第二金属は、それ以下で電解プロセスが行われる可能性がある温度で融解するように、1000℃未満の融点を有し、且つ、熱処理によってタンタルから第二金属が除去されることが可能であるように、1750℃未満の沸点を有することが好ましい。融点が600℃未満であり、沸点が1000℃未満であることが好ましい可能性がある。
【0038】
第二金属は、亜鉛、テルル、ビスマス、錫、鉛及びマグネシウムからなるリストから選択される任意の金属である金属、又はその合金であることが好ましい可能性がある。
【0039】
第二金属は、亜鉛又は亜鉛合金であることが特に好ましい。亜鉛は、相対的に低コストの材料であり、他の多数の金属と比較して相対的に無害である。
【0040】
溶融金属アノードを使用する代わりに、炭素材料の溶融塩との接触及び相互作用を排除するために、アノードは固体不活性アノード、又は固体非炭素アノード、例えば固体酸素放出アノードであってもよい。
【0041】
溶融金属アノード又はいくつかの他の非炭素アノードのいずれを使用する場合でも、溶融塩と接触している炭素材料が殆ど存在しないことによって、有意に低いレベルの炭素を有するタンタル生成物の形成が可能となる。キャパシタ用途等のいくつかの用途では、生成物が低い炭素レベルを有するという事実は重要であり得る。それ故、金属タンタルは、250ppm未満、例えば150ppm若しくは100ppm若しくは50ppm未満、又は25ppm未満の炭素レベルを有し得る。
【0042】
FFCプロセス等の電解還元プロセスでの使用に都合のよい塩は、塩化カルシウムであり、前駆体材料は、タンタル酸カルシウムを含んで形成されることが有利であり得る。
【0043】
FFCプロセス等の電解還元プロセスでの使用に都合のよい更なる塩は、塩化リチウムであり、前駆体材料は、タンタル酸リチウムを含んで形成されることが有利であり得る。
【0044】
未使用の塩は、残留炭酸塩を含む場合があり、これらの炭酸塩は炭素をカソード上に析出させ、それによって生成物の炭素含有率を増大させ得る。従って、タンタル酸塩の還元に先立って、塩を予備電解して、残留炭酸塩を除去することが有利であり得る。使用後、塩は多数回の還元のために再使用されることが好ましい。予備電解された塩又は使用済み塩の使用により、炭酸塩含有率のより低い塩がもたらされる可能性があり、炭素含有率の非常に低いタンタルの生成に役立つ可能性がある。
【0045】
任意の中間タンタル酸塩を含む前駆体の低減により、生成物の粒径を制御する点でのいくつかの利点が存在し得るが、前駆体材料は、酸化タンタルと第一金属との間で形成可能な、熱力学的に最も安定なタンタル酸塩を含むことが好ましい。例えば、タンタル酸カルシウムの場合、酸化タンタルと第一金属、即ちカルシウムとの間で形成可能な、熱力学的に最も安定なタンタル酸塩は、化学式Ca(CaTa)O又はCaTaを有するOタンタル酸塩である。熱力学的に最も安定なタンタル酸塩から出発することにより、前駆体材料と所望のタンタル生成物との間の中間の構造的変化が避けられる。
【0046】
前駆体材料を完全に金属タンタル酸塩から形成することが有利であり得る。金属タンタル酸塩が熱力学的に最も安定なタンタル酸塩、例えばCa(CaTa)Oである実施例では、この最終的なタンタル酸塩とタンタル生成物との間に構造的関係が存在する可能性がある。従って、最終的なタンタル酸塩粒子サイズのサイズを制御することによって、タンタル生成物のサイズを正確に制御することができる。代替的に、タンタル酸塩は、Oタンタル酸塩、CaTa等の他のタンタル酸塩であってもよく、これはOタンタル酸塩を経由して金属タンタルに還元する。
【0047】
前駆体材料として中間タンタル酸塩、特に前駆体材料として最終的なタンタル酸塩から出発する更なる利益として、タンタル粉末生成のための還元時間が有意に低減され得る。電解セル内で前駆体材料を還元するのに要する時間の低減は、コスト関連において有意な利益を有し得る。
【0048】
ある状況において、前駆体材料が金属タンタル酸塩と酸化タンタルとの混合物から形成されることが有利であり得る。そのような混合物は、粉末化金属タンタル酸塩と粉末化酸化タンタルとを混合し、混合された粉末をプレスして前駆体材料を形成することにより作製されてもよい。そのような実施例では、酸化タンタルは、金属タンタル酸塩の還元に対する調節物として機能し得る。
【0049】
そのような前駆体材料の還元中に、タンタル酸塩の還元によって放出された酸化カルシウムは、酸化タンタルと反応して、前駆体の酸化タンタル成分をタンタル酸塩に変換し得る。このタンタル酸塩は、次いで電解的に還元されてタンタルとなり得る。金属タンタル酸塩と酸化タンタルが前駆体材料全体に適切に分配されている場合、酸化タンタルの粒子は、互いに効果的に隔離し得るため、暴走した及び/又は制御されていない結晶成長が最小限となり、形成される中間タンタル酸塩が所望のサイズを超えて成長する能力が低下する。かくして、前駆体材料の一部が酸化タンタルであっても、還元により形成されるタンタル粒子のサイズが制御され得る。
【0050】
金属タンタル酸塩と共に酸化タンタルが存在することにより、前駆体材料からの酸素及びカルシウムの放出を調節することができ、このことは処理上の利益を有し得る。この調節は、タンタル酸塩の還元によって放出されたカルシウム及び酸素を酸化タンタルが吸い取ることにより生じる。最終的に、前駆体材料から酸素及びカルシウムの全部が解放されるが、これが起こる速度は、酸化タンタルに対するタンタル酸塩の比によって制御することができる。
【0051】
前駆体材料が金属タンタル酸塩と金属タンタルとの混合物で構成されていることが有利であり得る。この場合、金属タンタルは、前駆体材料の全体に亘る電気伝導及び電荷分布を改善するように機能して、還元反応の一貫性を向上させ得る。金属タンタルはまた、金属タンタル酸塩の粒子又は粒塊を隔離させ、還元プロセス中のタンタル酸塩の大きな成長を防止し得る(酸化タンタルと金属タンタル酸塩を含む前駆体材料に関連して上述したように)。
【0052】
ある特定の状況では、金属タンタル酸塩と、酸化タンタルと、金属タンタルとの混合物を含む前駆体材料を提供することが有利であり得る。そのような前駆体材料は、上述したような様々な利点を組み合わせ得る。例えば、前駆体材料中に金属タンタル酸塩を使用することにより、生成されるタンタルの粒径及び形態をある程度制御することができる。前駆体材料を通した電流分布は、前駆体材料中にタンタル金属が存在することにより改善され得る。反応の速度は、前駆体材料中に酸化タンタルが存在することにより調節され得る。酸化タンタル粒子の周りに金属タンタル酸塩及び金属が分布することにより、酸化タンタルの還元中の、望ましくないタンタル酸塩成長が防止され得る。
【0053】
タンタル酸塩中の金属が溶融塩中の金属種と異なることは可能であり得るが、塩は、タンタル酸塩を形成している金属、又はタンタル酸塩を形成している複数の金属のうちの1種の塩を含むことが好ましい。好ましい塩は、金属のハロゲン化物塩、好ましくは、金属の塩化物塩であろう。そのような塩は容易に入手することができ、電解用の良好な特性を有する。特に塩化カルシウムは、FFCプロセスの前の電解還元、及び該プロセスに従った電解還元等の電解還元における使用に有利な塩である。そのような塩化カルシウム塩は、他の元素及び種を含んでもよく、例えばFFCプロセスに使用される塩化カルシウム塩は、多くの場合、ごく一部の酸化カルシウムを含む。
【0054】
前駆体材料は、粉末、粉末粒子の粒塊、若しくは顆粒の形態、又は代替的に、多孔質ペレット若しくは成形されたプレフォームの形態であり得ることが有利である。前駆体材料が多孔質ペレット又は成形プレフォームの形態で生成される場合、このプロセスは、標準的な粉末加工方法、例えば粉末のプレス及び焼結、又は粉末スラリーの押出しにより達成され得る。
【0055】
前駆体材料は、溶融塩及び電解セルの使用に関する任意の既知の方法により還元され得るが、アノード及びカソードは、電解セル内の溶融塩と接触する状態で配置され、前駆体材料は、カソードと接触する状態で配置されることが好ましい。次いで、前駆体材料をタンタルに還元するのに十分な電位がアノードとカソードとの間に加えられ得る。
【0056】
本方法は、前駆体材料の金属タンタル酸塩の要素を形成する更なるステップを含み得る。そのような金属タンタル酸塩の粉末は、多数の周知のプロセスによって作製することができる。かくして形成された金属タンタル酸塩は、次いで更に加工されて前駆体材料が形成され、又は前駆体材料に組み込まれてもよい。
【0057】
例えば、金属タンタル酸塩は、酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の粉末の混合物を焼成することにより行われる固相熱反応によって形成されてもよい。
【0058】
金属タンタル酸塩がタンタル酸カルシウムの場合、金属タンタル酸塩は、五酸化タンタルと炭酸カルシウム(CaCO)との間、又は五酸化タンタルと炭酸リチウム(LiCO)との間の熱反応により形成され得る。
【0059】
他の製造方法は、酢酸タンタル及びカルシウム等の有機金属塩のミックスの熱分解/酸化を含み得る。
【0060】
代替的に、金属タンタル酸塩は、任意の適切な溶媒ベースの化学合成技術、例えば化学的共沈又はゾルゲル反応と、その後の熱及び/又は焼成ステップによって形成されてもよい。理想的には、化学プロセスは水性プロセスであろうが、有機溶媒/媒質の使用を必要とする場合がある。
【0061】
水性ベースの製造プロセスに好適な前駆体としては、酢酸塩、硝酸塩又は塩化物等のタンタル化合物を挙げることができる。有機溶媒/媒質に好適な前駆体としては、エトキシド、アセチルアセトネート等の有機タンタル化合物を挙げることができる。
【0062】
概して、溶媒ベースの化学合成技術は、2種の既存の前駆体酸化物の間の熱固相反応と比較して、より微細で、より制御可能な微結晶サイズを有するタンタル酸塩を生成するであろう。
【0063】
前駆体材料が酸化タンタルを含む場合、金属タンタル酸塩の形成に先立って、該酸化タンタルが所定の平均粒子サイズを有し、又は所定の平均粒子サイズを生じるように処理されることが好ましい。そのような処理としては、粒子が所定のサイズに達するまで該粒子を成長させること、又は粉末をふるい分けして、所望の粒子サイズ及び粒子サイズ分布を有する、ふるい分けされた粉末を生成すること、又は酸化物を粉砕して所望の特性を有する粉末を生成すること、を挙げることができる。
【0064】
前駆体材料はまた、電解セル内に配置される前に処理されて、所定の平均粒子サイズ又は所定の前駆体粒子サイズ分布を有する前駆体を提供してもよい。そのような処理としては、前駆体材料の焼結等のステップを挙げることができる。代替的に、前駆体材料の成分は、適宜ふるい分けされ、又は粉砕され、又は摩砕されて、前駆体材料中で所望の粒子サイズ及び分布を提供してもよい。前駆体材料が2種以上の成分、例えば金属タンタル酸塩及び酸化タンタルを含む場合、好適な混合によってこれらの成分の前駆体材料中での相対的な分布を制御してもよい。
【0065】
前駆体材料が1種を超える成分を有する場合、各成分は実質的に同じ粒子サイズを有してもよく、又は粒子の多峰性(例えば、二峰性又は三峰性)分布が存在してもよく、例えば金属タンタル酸塩粒子は、前駆体材料の他の構成成分よりも大きいサイズのものであってもよい。
【0066】
前駆体材料は、0.1~100マイクロメートルの平均粒子サイズを有することが好ましい。このようなサイズ範囲は、多数の用途にて許容可能なサイズ範囲のタンタル生成物を提供する。平均粒子サイズは、0.5~10マイクロメートル、例えば1マイクロメートル~8マイクロメートル、又は実質的に5若しくは6マイクロメートルであってもよい。
【0067】
第二態様において、本発明は、タンタルの製造方法を提供することができ、該方法は、前駆体材料を提供するステップであって、前駆体材料が酸化タンタルと金属タンタルとの混合物を含む、ステップと、前駆体材料を電池内の溶融塩と接触させるステップと、前駆体材料をタンタルに還元するステップと、を含む。
【0068】
この方法は、金属タンタル粒子による前駆体材料中の各酸化タンタル粒子の束縛を可能にすることによって、予測可能かつ制御可能な粒子サイズのタンタル生成物を生成することができる。従って、還元中の酸化タンタル粒子の成長の範囲と、その結果のタンタル酸塩の連続を経由した転換とが低減される。更に、金属タンタルは、前駆体材料を通した導電性及び電流分布を補助し、還元プロセスがより均一かつ急速に進行することを可能にし得る。例えば、金属酸化物に対してFFC電気分解を行う場合、反応は、金属と、金属酸化物と、溶融塩との間の三重地点で開始すると考えられる。金属タンタルを酸化物と混合することによって、分解反応の初期段階において三重地点の数が増大し得る。急速な還元によって、材料が高温の還元セル内で費やす時間が短縮されるため、還元中の粒子の成長が低下され得る。
【0069】
第三態様において、本発明は、タンタルの製造方法を提供することができ、該方法は、酸化タンタルと金属タンタル酸塩との混合物を含む前駆体材料を提供し、金属はアルカリ金属又はアルカリ土類である、ステップと、前駆体材料を電解セル内の溶融塩と接触させるステップと、前駆体材料をタンタルに還元するステップと、を含む。
【0070】
前駆体材料は、20~95重量%の酸化タンタル、特に好ましくは40~90重量%の酸化タンタルを含むことが好ましい。
【0071】
第四態様において、本発明は、タンタルの製造方法を提供することができ、該方法は、金属タンタル酸塩と金属タンタルとの混合物を含む前駆体材料を提供するステップと、前駆体材料を電池内の溶融塩と接触させるステップと、前駆体材料をタンタルに還元するステップと、を含む。
【0072】
第二、第三又は第四態様の方法は、酸化タンタルと、タンタル金属と、金属タンタル酸塩との混合物を含む前駆体材料を用いて行うことができ、金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類である。本発明の第一態様に関して上述した好ましい特徴は、変更すべきところは変更して、本発明の第二、第三及び第四態様にも適用することができる。従って、例えば、第二、第三及び第四態様の方法は、溶融金属アノード、又は不活性アノードを使用して行うことができる。
【0073】
本発明の様々な態様により製造されたタンタルは、粉末であってもよく、キャパシタに形成するのに特に好適であり得る。それ故、本発明は、タンタル生成物をキャパシタに形成する更なるステップを含む、上記の任意の態様による方法を更に提供することができる。
【0074】
キャパシタの形成方法は、上述した任意の方法を用いて金属タンタル粉末を形成するステップと、タンタル粉末を5~6g/cmの密度にプレスするステップと、プレスされた粉末をアノードリードに結合することによって、タンタルアノードを形成するステップと、を含み得る。次いでタンタルアノード上に誘電体層を形成して、キャパシタを形成する。
【0075】
組成のバリエーションに起因して、アノードリードと、プレスされた粉末との間の接続部に電気化学的接合が形成され得る。これは望ましくない可能性がある。それ故、キャパシタの形成方法は、上述した任意の方法を用いて金属タンタル粉末を形成するステップと、タンタル粉末の第一部分を利用し、アノードリードとしての使用に好適なタンタルワイヤを形成するステップと、タンタル粉末の第二部分を利用し、このタンタル粉末の第二部分を5~6g/cmの密度にプレスするステップと、タンタル粉末の第二部分から形成されたプレスされた粉末を、タンタル粉末の第一部分から形成されたアノードリードに結合することによって、アノードリードとアノード本体とが同じ組成を有するタンタルから形成されているタンタルアノードを形成するステップと、を含み得る。次いでタンタルアノード上に誘電体層を形成して、キャパシタを形成する。
【0076】
本明細書に記載した任意の方法を用いて形成されたキャパシタも提供することができる。例えば、アノード本体とアノードリードとが同じ組成のタンタルから形成されているキャパシタを提供することができる。
【0077】
本明細書に記載した金属粉末から形成されているキャパシタは、約0.3m/gの比表面積を有する粉末の場合、9~13.5kCV/gの電気容量を有し、約10m/gの比表面積を有する粉末の場合、310~565kCV/gの電気容量を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
ここで図面を参照して本発明の特定の実施例及び実施形態を説明する。
【0079】
図1図1は、種々のサイズ及び形状の中間タンタル酸カルシウムを示す、部分的に還元された五酸化タンタル粉末のSEM像である。
図2図2は、種々のサイズ及び形状の中間タンタル酸カルシウムを示す、部分的に還元された五酸化タンタル粉末のSEM像である。
図3図3は、消耗溶融金属アノードを使用したFFCプロセスによって、金属タンタル酸塩の還元を行うのに好適な電解セルの概略図である。
図4図4は、Ca(CaTa)O粉末のSEM像である。
図5図5は、CaTa粉末のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1は、FFCプロセスを用いて、塩化カルシウム塩中で部分的に還元された五酸化タンタル粉末を示すSEM像である。初期の五酸化物粉末は、還元に先立って、25マイクロメートルメッシュを通してふるい分けされていた。図1に示す部分的に還元された粉末は、タンタル酸カルシウム相の様々な粒子からなる。理解され得るように、これらのタンタル酸塩は、サイズ及び形態がかなり様々である。タンタル酸塩相のいくつかは他の相とは異なる成長速度を有するため、得られた部分的に還元された材料は、いくつかの非常に大きい粒子を含む非均質構造を有する。還元をその最終的な結末、即ちタンタル金属の生成まで進行させた場合、形成されたTa粉末もまた非均質構造を有するであろう。
【0081】
溶融塩中での電解中の五酸化タンタルとタンタル金属との間の反応経路は容易に制御することができないため、本発明者らは、中間タンタル酸塩の1種から直接還元するための、又は、該中間タンタル酸塩の1種を含む、前駆体材料の生成から相当の利益が得られる筈であり得ることを理解した。従って、中間タンタル酸塩の粒子サイズ及び粒子形態を制御して、還元タンタルの特性の全体の制御を向上させることができる。
【0082】
中間タンタル酸塩は、反応経路における最終的なタンタル酸塩になることが好ましく、これは、タンタル金属への五酸化タンタルの還元の場合、Oタンタル酸塩と思われる。
【0083】
図3は、前駆体材料又は供給原料の電解還元による、金属タンタルを製造するための電解装置10を示す。装置10は、溶融塩30を収容するるつぼ20を備える。前駆体材料50から形成されたペレットを含むカソード40は、溶融塩30中に配置されている。アノード60も溶融塩中に配置されている。アノードは、溶融金属62を収容するるつぼ61と、一端が溶融塩62と接触する状態で配置され、他端が電源に結合されたアノード接続ロッド63とを含む。アノード接続ロッド63は、絶縁シース64で覆われているため、接続ロッド63は溶融塩30に接触していない。
【0084】
るつぼ20は、任意の好適な絶縁耐火材料から形成されてもよい。本発明の目的は、炭素による汚染を避けることであり、従ってるつぼは炭素材料から形成されていない。溶融塩と接触し得る、装置の構成要素はいずれも、炭素材料から形成されていない。好適なるつぼ材料は、アルミナであり得る。前駆体材料50は金属タンタル酸塩であり、金属は、第一族金属又は第二族金属である。溶融金属62を収容するるつぼ61は、任意の好適な材料であってもよいが、ここでもアルミナが好ましい材料であり得る。アノードリードロッド63は、任意の好適な絶縁材料64により遮蔽されてもよく、アルミナはこの目的に好適な耐火材料であり得る。
【0085】
溶融金属62は、作動温度にて溶融塩中で液体である任意の好適な金属である。好適な溶融金属であるために、溶融金属62は、金属酸化物から除去された酸素イオンと反応して、溶融金属種の酸化物を形成することが可能である必要がある。特に好ましい溶融金属は、亜鉛であり得る。更に好ましい溶融金属は、アルミニウムであり得る。溶融塩30は、電解還元に用いられる任意の好適な溶融塩であってもよい。塩は、例えば、塩化物塩であってもよいし、例えば、酸化カルシウムの一部分を含む塩化カルシウム塩であってもよい。本発明の好ましい実施形態は、塩化リチウム、又は一部の酸化リチウムを含む塩化リチウム等の、リチウム系の塩を使用し得る。アノード60及びカソード40は、電源に接続されて、一方ではカソード40及びその関連した前駆体材料50と、他方ではアノード60及びその関連した溶融金属62との間に、電位を加えることを可能にする。
【0086】
図3に示した装置の図は、供給原料ペレットがカソードに取り付けられた配置を示しているが、他の構成も本発明の範囲内に含まれることは明らかであり、例えば、金属タンタル酸塩供給原料は結晶粒又は粉末の形態であってもよく、電解セル内のカソード板の表面上に単に保持されてもよい。
【0087】
ここで本方法を、図3を参照して一般的な用語にて説明する。前駆体材料50から酸素が除去されるように、アノードとカソードとの間に電位が加えられる。この酸素は前駆体材料50からアノードに向かって送られ、該アノードにおいて酸素は溶融金属62と反応して、溶融金属62と酸素との酸化物を形成する。従って、酸素は酸化物から除去され、溶融金属の第二酸化物中に保持される。
【0088】
酸素を帯びる非金属供給原料から酸素が除去される、このような電解セルの作動に関するパラメータは、例えばFFCプロセス等のプロセスによって既知である。電位は、溶融塩30の実質的な分解が全く存在することなく、前駆体材料50から酸素が除去され、アノードの溶融金属62へ送られるようなものであることが好ましい。このプロセスの結果、前駆体材料50は金属に変換され、溶融金属62は、少なくとも部分的に金属酸化物に変換される。次いで、還元の金属タンタル生成物が電解セルから除去されてもよい。
【0089】
本発明者らは、この一般的方法に基づいて特定の実験を行っており、それらを以下に説明する。実施例で生成した金属生成物は、多数の技術を用いて分析された。以下の技術を用いた。
【0090】
炭素分析は、Eletra CS800分析器を使用して行った。
酸素分析は、Eltra ON900分析器を使用して行った。
表面積は、Micromeritics Tristar表面積分析器を使用して測定した。
【0091】
塩化カルシウム塩中での還元に使用された1種の前駆体材料は、Ca(CaTa)Oであった。このタンタル酸塩は、以下の方法に従った焼成によって生成された。
【0092】
焼成用の出発材料は、一次微結晶サイズが約0.3マイクロメートルのTaと、CaCO粉末であった。Ta酸化物粉末に関するD50は、粒子の凝集に起因して9マイクロメートルである。次いで、Ta粉末を25マイクロメートルでふるい分けした。CaCO粉末を、106マイクロメートルでふるい分けした。
【0093】
これらの材料をCaCOに対するTa=1.1244の割合で混合し、ターブラーミキサー内で1時間混合した。この五酸化タンタル対炭酸カルシウムの割合は、タンタル酸塩粉末中に過剰な酸化カルシウムが残留するのを防ぐためにOタンタル酸塩の形成に必要なモル比よりも僅かに低い。焼成を1200℃の温度で2時間行い、Ca(CaTa)Oタンタル酸塩粉末の形成をもたらした。
【0094】
塩化カルシウム塩中での還元に使用した更なる前駆体材料は、CaTaであった。CaTaを作製するために、五酸化タンタル及び炭酸カルシウムをCaCOに対するTa=2.2075の割合で混合し、タンブラーミキサー内で1時間混合した。焼成を1200℃の温度で2時間行い、CaTaタンタル酸塩粉末の形成をもたらした。
【0095】
タンタル酸塩粉末を、還元のためにペレットに形成した。タンタル酸塩粉末を次いで106マイクロメートルのふるいに通し、20バール(およそ2×10パスカル)の圧力でプレスして粉末からペレットとした。プレス後、ペレットを1100℃の温度で6時間焼結した。
【0096】
図4は、焼結したCa(CaTa)Oペレットの微細構造を示す。図5は、焼結したCaTaペレットの微細構造を示す。タンタルへの五酸化タンタルの還元中に形成されたもの(図1及び2に示した)と比較して、構造及び微細スケールでの粒子サイズの均一性を明らかに理解し得る。
【0097】
形成されるペレットの多孔性と、ペレット中のタンタル酸塩の粒子サイズとを、焼結の温度及び/又は時間を変化させることによって制御して、還元に先立ってペレットの特性に対して幾分かの制御を行うことができる。
【実施例
【0098】
以下の条件を用いて、実施例のそれぞれを生成した。
図3を参照して、タンタル酸塩ペレット35をFFCセル5のカソード30上に載置し、FFCプロセスを用いて650℃の温度で還元した。電解セル5内で使用した塩20は、主に、0.1~1.0重量%の酸化リチウムを含む塩化リチウムであった。セルのアノード40は、溶融亜鉛、又は、還元比較のために炭素を含んでいた。
【0099】
実施例1
炭素アノードを使用して、Ca(CaTa)Oの38gペレットを金属に還元した。3.5アンペアの電流で277330クーロンを通した。生成したタンタルを回収し、分析し、5.1m/gの表面積、17000ppmの酸素含有率、及び5719ppmの炭素含有率を有することを見出した。
【0100】
実施例2
溶融亜鉛アノードを使用して、Ca(CaTa)Oの20gペレットを金属に還元した。2アンペアの電流で42458クーロンを通した。生成したタンタルを回収し、分析し、5.6m/gの表面積、21000ppmの酸素含有率、及び493ppmの炭素含有率を有することを見出した。炭素含有率は、炭素アノード(実施例1)を使用して生成した比較例よりもかなり低いことが理解され得る。
【0101】
実施例3
炭素アノードを使用して、CaTaの38gペレットを金属に還元した。3.5アンペアの電流で270389クーロンを通した。生成したタンタルを回収し、分析し、11.04m/gの表面積、34000ppmの酸素含有率、及び1817ppmの炭素含有率を有することを見出した。
【0102】
実施例4
溶融亜鉛アノードを使用して、CaTaの38gペレットを還元した。3.5アンペアの電流で271492クーロンを通した。生成したタンタルを回収し、分析し、6.74m/gの表面積、13000ppmの酸素含有率、及び651ppmの炭素含有率を有することを見出した。炭素含有率は、炭素アノード(実施例3)を使用して生成した比較例よりもかなり低いことが理解され得る。
【0103】
実施例5
650℃の温度での予備電解作業を経た溶融塩中の溶融電解アノードを使用して、CaTaの20gペレットを金属に還元した。2アンペアの電流で46218クーロンを通した。生成したタンタルは、5.01m/gの表面積、14000ppmの酸素含有率、及び386ppmの炭素含有率を有していた。この実施例は、実施例4と殆ど同一であるが、炭素含有率は更に低い。これは、塩から残留炭酸塩を除去することによって炭素汚染を更に低減する、塩の予備電解に起因し得る。非常に低い炭素レベルを有するタンタルを生成するためには、タンタル酸塩を導入するのに先立って、塩を電解して、炭素化合物を除去することが有利であり得る。
【0104】
上述した還元により、予測可能かつ制御可能なBET表面積を有するタンタル粉末を形成することが可能になる。例えば、タンタル粉末のBET表面積を低下させるためには、例えば粉末をより長時間焼結し、又は、粉末を長期間焼成して、タンタル酸塩粒子を成長させることによって、前駆体材料中のタンタル酸塩の粒子サイズを増大させてもよい。同様に、増大されたBET表面積を有するタンタル粒子は、出発タンタル酸塩の粒子サイズを低下させることによって生成し得る。
【0105】
電解還元中、カルシウム及び酸素が前駆体材料から放出され、形成されたタンタル粉末は、出発タンタル酸塩と比較して、より微細な粒径と、増大された表面積とを有することが明らかであった。
【0106】
電解中、アノードにて放出された気体は存在しなかった。これは、溶融亜鉛アノード62中での酸化亜鉛の形成に起因した。
【0107】
キャパシタは、上述した任意のタンタル粉末から、以下の例示的な方法に従って形成することができる。タンタル粉末の第一部分を選択し、引き抜きプロセスを用いてタンタルワイヤとし得る。タンタル粉末の第二部分をワイヤ上にて5.5g/cmの密度にプレスして、タンタルアノードを形成し得る。次いで、タンタルアノードを真空下にて1000~1600℃の温度で10分間熱処理し得る。次いで、リン酸溶液中、85℃にて150mA/gの電流を使用して10~100Vで電解することによりアノード上に誘電体層(Alの一部分を有するTa)を形成し、それによってキャパシタを形成し得る。
図1
図2
図3
図4
図5